【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
プロペラの前方でかつバトックライン
が船体の右舷及び左舷の平行部と交差する位置より後方であって、船の中心線の左右対称位置に、それぞれ舵を設け、
かつ、スターンスラスターを設け、このスターンスラスターのプロペラ軸線が、前記各舵面を通る関係にあることを特徴とするシングルプロペラ、前置きツインラダー船。
【0011】
(作用効果)
船の中心線の左右対称位置に、それぞれ舵を設けた。ある大きさの船における必要な旋回性及び保針性(針路安定性)を確保するために必要な舵面積は、2つの舵による場合における各舵の面積は、一つの舵による場合より、1つの舵面積当たり25%〜50%程度に小さくできる。2つの舵の総面積では、従来の一つの舵と同一面積または少し大きくなる。舵は、プロペラ前方、船底線とのクリアランス極力小さくするように設けることが望ましい。
一般に航海時に舵は海水面より没していることが必要である。本発明に従って舵
高さを小さくできることは、航海時に喫水深さを浅くすることができることを意味し、その結果、同一船速に対して主機関の出力を低減することができ、燃費が改善する。
他方、プロペラの前方にスターンスラスター(
stern thuster)を設けることにより、スターンスラスターによる効果を期待できる。
なお、「バトックライン」(buttock line)とは、船体中央縦断面に平行な鉛直面で切った船尾の形状線を意味する。特に船体の
右舷及び左舷の平行部との交差線とがなす線を言う。
さらに、船尾側にスターンスラスターを設けることにより、狭い港内での軌道修正や離着岸における操船性を高めることができる。
他方、港内など船が低速で航行している場合、舵の効きは極めて悪い。そこで、スターンスラスターを起動させ、その水流を舵板面に流入させることにより、操船性が高まる。
【0012】
【0013】
【0014】
<
請求項2記載の発明>
前記スターンスラスターは、前記プロペラより3〜25m前方に位置する
請求項1記載のシングルプロペラ、前置きツインラダー船。
【0015】
(作用効果)
スターンスラスターは、プロペラより3〜25m前方に位置するのが好ましい。プロペラより3〜25m前方に位置する場合には、狭い港内での軌道修正や離着岸におけるスターンスラスターによる操船性が好適な位置であることが判った。
【0016】
<
請求項3記載の発明>
舵は、左右対称の舵面を有する請求項1記載のシングルプロペラ、前置きツインラダー船。
【0017】
(作用効果)
本発明は舵の面形状に特徴を有するものではなく、一般的な舵を使用することを念頭に置いている。舵が、左右対称の舵面を有すると、二つの舵を同期使用、単独使用、組み合わせ使用等により操船性を高めることができる。
【0018】
<
請求項4記載の発明>
操作舵機がプロペラの前方でかつバトックライン
が船体の右舷及び左舷の平行部と交差する位置より後方の船体内に設けられている請求項1記載のシングルプロペラ、前置きツインラダー船。
【0019】
(作用効果)
舵のほかその操作舵機をプロペラの前方に設けると、たとえば船のアフターピークタンク室、操作舵室(ステアリング室)などの後方への張出しが不要となり、従来の一つのプロペラに対してその後方に一つの舵を有する船に比較して、たとえば約5m〜20m短くすることができる。
その結果、貨物船の場合、同一の全長当たり、貨物槽の容積を約5%〜15%増加できるので、船の利用価値が高まる。また船の全長を短縮でき建造船価が低減する。
【0020】
<
請求項5記載の発明>
前記プロペラのほか、追加プロペラ及びその駆動手段
を設け、前記追加プロペラは、前記プロペラの配置位置とは異なる位置であって、船底又は船底立ち上がり部に一台または複数台配置し、プロペラを駆動して推進力を得る常用運転状態と、追加プロペラを駆動して推進力を得る運転状態とを選択可能とした請求項1記載のシングルプロペラ、前置きツインラダー船。
【0021】
(作用効果)
前記プロペラ、すなわち常用プロペラ以外に、小型の追加プロペラ及びその駆動手段を設ける。追加プロペラの駆動手段の出力は、前記主機の駆動手段の出力の35%以下、より好ましくは25%以下とすることができる。
載荷(積荷)時には、計画満載喫水に近い喫水状態で、常用プロペラを駆動して運行する。必要あれば追加プロペラを併用して運航する。
荷下ろし後の帰港航海、小型の追加プロペラで主として運航する。とりわけ天候が穏やかな日においては、船舶の航海時の安定性につき過度に厳格とする必要性に乏しい。そこで、喫水線を下げた状態で、小型の追加プロペラにて走行させる。
その結果、喫水線を下げることにより、見掛け上の排水量の低下となり、外板の水との接触面積が小さくなり、水線面積係数の改善を図ることができ、燃料消費の低減効果が大きいものとなる。
また、小型の追加プロペラを駆動するので、駆動装置の出力(主機の駆動手段の出力の35%以下、より望ましくは25%以下)は小さいもので足り、この観点からも、燃料消費の低減効果が大きいものとなる。
船舶が積荷を満載した後に出港し、通常の航海に移行する場合には、常用プロペラを駆動し、深い喫水で航海する。また、揚荷後バラストで航海する場合は通常航海状態に移行後に追加プロペラ運航とする。ただし天候が悪い場合には、たとえ空船であっても、バラスト水を張り、安定化させた状態で、小型の追加プロペラ又は常用プロペラにて走行させることができる。また必要な場合、追加プロペラ及び常用プロペラを併用することも可能である。
バラスト航海時に主として追加小型ダクトプロペラを使用することにより、主プロペラのプロペラ没水率の制限が少なくなり、常用プロペラのプロペラ直径を、従来の設計基準によるプロペラの直径より大きくできる。これによりプロペラ効率アップが可能となり、約5〜7%の効率アップとなる。かくして、より大きな直径の常用プロペラ採用により、プロペラ効率がアップし同一船速に対し主機関の必要出力は減少し。これにより大きな燃費改善となる。
【0022】
<請求項7記載の発明>
前記追加プロペラは、船外への張出し状態と船内への引き込み状態とを選択可能である請求項6記載のシングルプロペラ、前置きツインラダー船。
【0023】
(作用効果)
ダクトプロペラが船外へ張出し状態にある場合には、深い喫水において抵抗になるので、ダクトプロペラは、船内へ引き込み状態とすることが望ましいのである。