(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1熱交換対象流体の通過が可能な管体が螺旋状にN回(Nは、2以上の自然数)巻回されてN個の環状部が形成された管体巻回部を有する伝熱コイルと、第2熱交換対象流体の通過が可能に筒状に形成されると共に前記伝熱コイルが収容された容器体とを備え、前記第1熱交換対象流体と前記第2熱交換対象流体とが前記容器体内において相互に熱交換可能に構成された熱交換器であって、
前記第1熱交換対象流体の流路をM本(Mは、2以上の自然数)の流路に分岐させる流体分岐部と、前記M本の流路を合流させる流体合流部とを備えると共に、前記M本の流路毎に前記伝熱コイルがそれぞれ配設され、
前記各伝熱コイルは、前記管体の巻回中心軸の軸線方向において連続する2つの前記環状部の一方における一部が当該連続する2つの環状部の他方に対して当該軸線方向において重ならない非重なり部が少なくとも1箇所生じるように前記管体巻回部がそれぞれ構成されると共に、前記管体の巻回ピッチ、前記各環状部の巻形および巻径、並びに前記非重なり部の変位の向きおよび角度が互いに等しくなるように当該各管体巻回部が構成されて前記軸線方向が前記容器体の筒長方向に沿うようにして当該筒長方向に沿って並んで当該容器体内に収容され、かつ、前記軸線方向に沿って見たときに、前記容器体内における前記第2熱交換対象流体の移動方向の上流側に配置された当該伝熱コイルにおける最下流側の環状部と、当該上流側に配置された伝熱コイルの下流側に並んで配置された当該伝熱コイルにおける最上流側の環状部とが当該軸線方向において重ならない前記非重なり部が少なくとも1箇所生じ、かつ当該上流側に配置された伝熱コイルにおける最下流側の前記非重なり部に対して、当該上流側に配置された伝熱コイルにおける最下流側の環状部と当該下流側に並んで配置された伝熱コイルにおける最上流側の環状部との前記非重なり部が、前記巻回中心軸を中心として、前記各伝熱コイルの前記管体巻回部における前記非重なり部の変位の向きおよび変位の角度と同じ向きに同じ角度だけ変位すると共に、当該上流側に配置された伝熱コイルにおける当該最下流側の環状部と、当該下流側に並んで配置された伝熱コイルにおける当該最上流側の環状部との配置間隔が前記各管体巻回部における前記管体の巻回ピッチと等しくなるように配置されている熱交換器。
前記伝熱コイルは、前記各環状部の巻形が互いに等しい非正円形で、かつ当該各環状部における最大径部の巻径が互いに等しくなるように前記管体巻回部が構成されると共に、前記軸線方向に沿って見たときに、前記連続する2つの環状部の一方における前記最大径部の径方向に沿った仮想線と、前記連続する2つの環状部の他方における前記最大径部の径方向に沿った仮想線とが交差するように前記管体巻回部が構成されることで前記非重なり部が設けられている請求項1記載の熱交換器。
前記伝熱コイルは、前記管体が等しい巻回ピッチでN回としての3回以上巻回されてN個としての3個以上の前記環状部を有するように前記管体巻回部が構成されると共に、前記軸線方向に沿って見たときに、当該軸線方向の一方から他方に向かって前記非重なり部の位置が前記巻回中心軸を中心として同じ向きに同じ角度ずつ変位するように前記管体巻回部が構成されている請求項1または2記載の熱交換器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記の特許文献に開示されている熱交換器には、以下のような問題点が存在する。すなわち、上記の熱交換器では、第1水素ガス冷却管および第2水素ガス冷却管内を通過させられる水素ガスと、プロペラの回転によって両水素ガス冷却管の周囲(管体が螺旋状に巻回されている管体巻回部の内周側)を上昇させられるブラインとの熱交換によって水素ガスが冷却される構成が採用されている。このため、上記の特許文献に開示されている熱交換器では、容器内でブラインを流動させるためのプロペラ、およびプロペラを回転させるための回転軸が必須となっており、これらの存在に起因して熱交換器の小形化が困難となっているだけでなく、プロペラや回転軸の部品コストおよび組立てコストに起因して熱交換器の製造コストが高騰しているという問題点がある。
【0007】
また、上記の熱交換器では、水素ガスを冷却する処理の実行中に、プロペラ(回転軸)を回転させるためのエアーモータに対して圧縮空気を継続的に供給する必要があることから、圧縮空気生成装置(エアーコンプレッサ)によって消費される電力の分だけ、そのランニングコストが高騰しているという問題点がある。この場合、エアーモータに変えて電動モータを採用した場合においても、同様の問題が生じる。さらに、上記の熱交換器では、回転軸と蓋との隙間からブラインが流出することのないようにシーリング部材を配設する必要があり、その部品コストに起因して熱交換器の製造コストが一層高騰すると共に、ブラインに常時接した状態のシーリング部材が劣化してブラインが漏出する前にこれを定期的に交換する必要があり、そのランニングコストが一層高騰しているという問題点がある。
【0008】
さらに、上記の熱交換器では、容器内に貯留したブラインによって水素ガスを冷却する処理と並行して、容器内のブラインを容器内において冷却する処理を実行する構成が採用されている。このため、上記の熱交換器では、大量の水素ガスを冷却する際に、容器内に貯留されているブラインが継続的に温度上昇させられるため、このブラインの温度を、冷却対象の水素ガスのすべてを好適に冷却し得る十分に低い温度に維持するのが困難となるおそれがある。
【0009】
これらの問題点に鑑みて、出願人は、上記の特許文献に開示されている熱交換器を用いた水素ガス冷却用の設備の構成を改良した水素ガス冷却装置を試作した。出願人が試作した水素ガス冷却装置では、プロペラおよび回転軸や、ブライン冷却用の冷媒管を熱交換器から除外すると共に、熱交換器とは別体に構成した冷却装置によって冷却したブラインを熱交換器における容器の底部から容器内に導入し、このブラインとの熱交換によって両水素ガス冷却管内の水素ガスを冷却する構成が採用されている。この場合、出願人が試作した水素ガス冷却装置では、水素ガスとの熱交換によって温度上昇したブラインが、熱交換器(容器)内に順次導入されるブラインに押し上げられるようにして容器内を上昇し、容器の上部に設けられた排出口から排出されて冷却装置に戻されて再び冷却される構成が採用されている。
【0010】
このような構成の水素ガス冷却装置(熱交換器)によれば、プロペラ、回転軸および冷媒管などの収容が不要となる分だけ小さな容器体で熱交換器を構成することができる結果、水素ガス冷却装置を小形化することが可能となる。また、部品コストや組立てコストの低減によって熱交換器の製造コストを十分に低減することができると共に、シーリング部材の交換作業も不要となり、しかも、動作時に圧縮空気等を供給する必要もなくなることから、ランニングコストも十分に低減することが可能となる。この場合、出願人が試作した熱交換器では、上記の特許文献に開示されている熱交換器と同様にして、両水素ガス冷却管の管体巻回部(コイル部)が、互いに等しい巻径となるように平面視円形の螺旋状に形成されている。また、出願人が試作した熱交換器では、上記の特許文献に開示されている熱交換器と同様にして、両水素ガス冷却管の管体巻回部の全体が、平面視において重なった状態となるように配置されている。
【0011】
したがって、この熱交換器では、水素ガスの冷却に際して容器の底部から容器の上方に向かって移動させられるブラインが、下方に配置されている第2水素ガス冷却管の管体巻回部における最下部の管体に対して移動方向(上向き)で当接する結果、第2水素ガス冷却管の管体巻回部における最下部においては、ブラインと水素ガスとが好適に熱交換させられる。しかしながら、第2水素ガス冷却管(管体巻回部)の最下部よりも上方に移動したブラインは、容器内に順次導入されるブラインに押し上げられるようにして容器内を上方に向かって直進しようとするため、第2水素ガス冷却管の管体巻回部における最下部の管体以外の管体や、第2水素ガス冷却管の管体巻回部の管体に当接することなく、両管体巻回部の内側を素通りして容器の最上部に到達してしまうおそれがある。
【0012】
このため、出願人が試作した熱交換器では、上記の特許文献に開示されている熱交換器のようにプロペラの回転によってブラインを旋回させつつ移動させる熱交換器よりも、ブラインと水素ガスとの熱交換効率が低下するおそれがあり、水素ガスを十分に冷却することができるように、水素ガスおよびブラインの流路長を十分に長くする(熱交換可能な有効面積を十分に広くする)必要が生じている。この結果、出願人が試作した熱交換器には、水素ガスの冷却効率を低下させることなく熱交換器を一層小形化するのが困難となっているという現状があり、これを改善するのが好ましい。
【0013】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、製造コストおよびランニングコストの高騰や熱交換効率の低下を招くことなく小形化を図り得る熱交換器および水素ガス冷却装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成すべく、請求項1記載の熱交換器は、第1熱交換対象流体の通過が可能な管体が螺旋状にN回(Nは、2以上の自然数)巻回されてN個の環状部が形成された管体巻回部を有する伝熱コイルと、第2熱交換対象流体の通過が可能に筒状に形成されると共に前記伝熱コイルが収容された容器体とを備え、前記第1熱交換対象流体と前記第2熱交換対象流体とが前記容器体内において相互に熱交換可能に構成された熱交換器であって、
前記第1熱交換対象流体の流路をM本(Mは、2以上の自然数)の流路に分岐させる流体分岐部と、前記M本の流路を合流させる流体合流部とを備えると共に、前記M本の流路毎に前記伝熱コイルがそれぞれ配設され、前記
各伝熱コイルは、前記管体の巻回中心軸の軸線方向において連続する2つの前記環状部の一方における一部が当該連続する2つの環状部の他方に対して当該軸線方向において重ならない非重なり部が少なくとも1箇所生じるように前記管体巻回部が
それぞれ構成されると共に、
前記管体の巻回ピッチ、前記各環状部の巻形および巻径、並びに前記非重なり部の変位の向きおよび角度が互いに等しくなるように当該各管体巻回部が構成されて前記軸線方向が前記容器体の筒長方向に沿うようにして
当該筒長方向に沿って並んで当該容器体内に収容され
、かつ、前記軸線方向に沿って見たときに、前記容器体内における前記第2熱交換対象流体の移動方向の上流側に配置された当該伝熱コイルにおける最下流側の環状部と、当該上流側に配置された伝熱コイルの下流側に並んで配置された当該伝熱コイルにおける最上流側の環状部とが当該軸線方向において重ならない前記非重なり部が少なくとも1箇所生じ、かつ当該上流側に配置された伝熱コイルにおける最下流側の前記非重なり部に対して、当該上流側に配置された伝熱コイルにおける最下流側の環状部と当該下流側に並んで配置された伝熱コイルにおける最上流側の環状部との前記非重なり部が、前記巻回中心軸を中心として、前記各伝熱コイルの前記管体巻回部における前記非重なり部の変位の向きおよび変位の角度と同じ向きに同じ角度だけ変位すると共に、当該上流側に配置された伝熱コイルにおける当該最下流側の環状部と、当該下流側に並んで配置された伝熱コイルにおける当該最上流側の環状部との配置間隔が前記各管体巻回部における前記管体の巻回ピッチと等しくなるように配置されている。
【0015】
請求項2記載の熱交換器は、請求項1記載の熱交換器において、前記伝熱コイルは、前記各環状部の巻形が互いに等しい非正円形で、かつ当該各環状部における最大径部の巻径が互いに等しくなるように前記管体巻回部が構成されると共に、前記軸線方向に沿って見たときに、前記連続する2つの環状部の一方における前記最大径部の径方向に沿った仮想線と、前記連続する2つの環状部の他方における前記最大径部の径方向に沿った仮想線とが交差するように前記管体巻回部が構成されることで前記非重なり部が設けられている。
【0016】
請求項3記載の熱交換器は、請求項1または2記載の熱交換器において、前記伝熱コイルは、前記管体が等しい巻回ピッチでN回としての3回以上巻回されてN個としての3個以上の前記環状部を有するように前記管体巻回部が構成されると共に、前記軸線方向に沿って見たときに、当該軸線方向の一方から他方に向かって前記非重なり部の位置が前記巻回中心軸を中心として同じ向きに同じ角度ずつ変位するように前記管体巻回部が構成されている。
【0019】
請求項
4記載の熱交換器は、請求項1から
3のいずれかに記載の熱交換器において、前記伝熱コイルとしての外側伝熱コイル、および当該外側伝熱コイルの内側に配置された前記伝熱コイルとしての内側伝熱コイルを備え、前記外側伝熱コイルおよび前記内側伝熱コイルは、前記管体の巻回ピッチ、並びに前記非重なり部の変位の向きおよび角度が互いに等しくなるように前記管体巻回部がそれぞれ構成されると共に、当該管体巻回部における前記巻回中心軸が同一軸線上に位置するように前記容器体内に収容されている。
【0020】
請求項
5記載の熱交換器は、請求項
1から
4のいずれかに記載の熱交換器において、前記各流路は、流路長が互いに等しくなるように構成されている。
【0021】
請求項
6記載の熱交換器は、請求項1から
5のいずれかに記載の熱交換器において、前記容器体内に前記第2熱交換対象流体を導入する流体導入部にエゼクターが取り付けられている。
【0022】
請求項
7記載の熱交換器は、請求項1から
6のいずれかに記載の熱交換器において、前記第1熱交換対象流体としての水素ガスと、前記第2熱交換対象流体としての熱媒液とを相互に熱交換可能に構成されている。
【0023】
請求項
8記載の水素ガス冷却装置は、請求項
7記載の熱交換器と、前記熱媒液を冷却する冷凍回路とを備え、前記冷凍回路によって冷却された熱媒液と前記水素ガスとを前記熱交換器内において相互に熱交換させることで当該水素ガスを冷却可能に構成されている。
【発明の効果】
【0024】
請求項1記載の熱交換器によれば、管体の巻回中心軸の軸線方向において連続する2つの環状部の一方における一部が他方の環状部に対して軸線方向において重ならない非重なり部が少なくとも1箇所生じるように管体巻回部を構成すると共に、軸線方向が容器体の筒長方向に沿うようにして容器体内に伝熱コイルを収容したことにより、管体巻回部を構成する管体の巻回中心軸の軸線方向に沿って直進しようとする第2熱交換対象流体が非重なり部に当接することで、この非重なり部内の第1熱交換対象流体と好適に熱交換させることができるだけでなく、非重なり部に当接することで第2熱交換対象流体の移動方向が軸線方向から反らされて乱流が生じる結果、管体巻回部における最上流部の管体だけでなく、最上流部の管体よりも下流側の各管体に対しても第2熱交換対象流体を好適に当接させることができ、管体巻回部内の第1熱交換対象流体と好適に熱交換させることができるため、管体巻回部内の第1熱交換対象流体と一層好適に熱交換させることができる。これにより、部品コストや組立てコストの高騰を招いたり、大きな容器体を必要としたりするプロペラ等を備えることなく、第1熱交換対象流体と第2熱交換対象流体との熱交換効率を十分に向上させることができるため、その製造コストを十分に低減することができると共に、十分に小形化することができる。また、プロペラを回転させるためのモータ等が不要となるため、そのランニングコストも十分に低減することができる。
また、M本の流路を合流させる流体合流部とを備え、M本の流路毎に伝熱コイルをそれぞれ配設したことにより、第1熱交換対象流体の流路を分岐させない構成とは異なり、第1熱交換対象流体の流路を過剰に長くすることなく第2熱交換対象流体と第1熱交換対象流体とを十分に熱交換させることができ、かつ、第1熱交換対象流体の流動抵抗が大きくなる事態を好適に回避することができ、しかも、第1熱交換対象流体が熱交換器を通過するのに要する時間を充分に短縮することができる。さらに、軸線方向に沿って見たときに、容器体内における第2熱交換対象流体の移動方向の上流側に配置された伝熱コイルにおける最下流側の環状部と、上流側に配置された伝熱コイルの下流側に並んで配置された伝熱コイルにおける最上流側の環状部とが軸線方向において重ならない非重なり部が少なくとも1箇所生じ、かつ上流側に配置された伝熱コイルにおける最下流側の非重なり部に対して、上流側に配置された伝熱コイルにおける最下流側の環状部と下流側に並んで配置された伝熱コイルにおける最上流側の環状部との非重なり部が、巻回中心軸を中心として、各伝熱コイルの管体巻回部における非重なり部の変位の向きおよび変位の角度と同じ向きに同じ角度だけ変位するように配置されている。したがって、非重なり部の変位の向きおよび角度が、1つの伝熱コイル内から、その下流側の他の伝熱コイル内まで一定となるため、第2熱交換対象流体の通過抵抗が過剰に大きくなる事態を好適に回避することができる。
【0025】
請求項2記載の熱交換器によれば、各環状部の巻形が互いに等しい非正円形で、かつ各環状部における最大径部の巻径が互いに等しくなるように管体巻回部を構成すると共に、軸線方向に沿って見たときに、連続する2つの環状部の一方における最大径部の径方向に沿った仮想線と、連続する2つの環状部の他方における最大径部の径方向に沿った仮想線とが交差するように管体巻回部を構成したことにより、巻形や巻径が相違する複数種類の環状部を製作して非重なり部を生じさせる構成とは異なり、同じ巻形で同じ巻径の環状部を形成することで管体巻回部を製作することができるため、伝熱コイルの製造コストを一層低減することができる。
【0026】
請求項3記載の熱交換器によれば、N=3個以上の環状部を有すると共に、軸線方向に沿って見たときに、軸線方向の一方から他方に向かって非重なり部の位置が巻回中心軸を中心として同じ向きに同じ角度ずつ変位するように管体巻回部を構成したことにより、非重なり部の変位の向きおよび角度を揃えない構成では、管体巻回部の製作時における管体の折曲げ加工が煩雑となって製造コストが高騰するおそれがあり、また、第2熱交換対象流体の通過抵抗が過剰に大きくなって第2熱交換対象流体の移動速度が低下し、これに起因して第2熱交換対象流体と第1熱交換対象流体との熱交換効率がやや低下するおそれがあるのに対し、変位の向きおよび角度を揃えたことで、管体の折曲げ加工が容易となり、製造コストを十分に低減できると共に、第2熱交換対象流体の通過抵抗が過剰に大きくなる事態を好適に回避することができる。
【0030】
請求項
4記載の熱交換器によれば、管体の巻回ピッチ、並びに非重なり部の変位の向きおよび角度が互いに等しくなるように管体巻回部をそれぞれ構成すると共に、管体巻回部における巻回中心軸が同一軸線上に位置するように外側伝熱コイルおよび内側伝熱コイルを容器体内に収容したことにより、各流路毎に外側伝熱コイルおよび内側伝熱コイルのいずれか一方だけを配設した構成と比較して、容器体内における第1熱交換対象流体の流路長が十分に長くなり、これにより、第2熱交換対象流体と第1熱交換対象流体との熱交換処理時間が十分に長くなるため、第1熱交換対象流体と第2熱交換対象流体とを一層好適に熱交換させることができると共に、管体の巻回ピッチ、並びに非重なり部の変位の向きおよび角度等を揃えない構成や、管体巻回部の巻回中心軸を同一軸線上に位置させない構成とは異なり、第2熱交換対象流体の通過抵抗が過剰に大きくなる事態を好適に回避することができる。
【0031】
請求項
5記載の熱交換器によれば、流路長が互いに等しくなるように各流路を構成したことにより、各流路の流路長が互いに相違する構成では、第1熱交換対象流体が流体合流部に到達する時間に時間差が生じ、これに起因して、熱交換器からの第1熱交換対象流体の単位時間当りの排出量に変化が生じるのに対し、各流路の流路長を等しくしたことで、第1熱交換対象流体が各流路を通過して流体合流部に到達するまでの時間が等しくなるため、熱交換器から第1熱交換対象流体が排出され始めてから排出が完了するまで、その排出量を一定に保つことができる。
【0032】
請求項
6記載の熱交換器によれば、流体導入部にエゼクターを取り付けたことにより、攪拌用のプロペラや、プロペラを回転させるための動力源を備えることなく、容器体内に第2熱交換対象流体を噴出させるだけで乱流を生じさせることができるため、製造コストやランニングコストの高騰を招くことなく、伝熱コイルの周囲を第2熱交換対象流体が直進して管体巻回部を素通りする事態を好適に回避することができ、これにより、伝熱コイルにおいて第1熱交換対象流体と第2熱交換対象流体とを好適に熱交換させることができる。
【0033】
請求項
7記載の熱交換器では、第1熱交換対象流体としての水素ガスと、第2熱交換対象流体としての熱媒液とを相互に熱交換可能に構成されている。また、請求項
8記載の水素ガス冷却装置では、請求項
7記載の熱交換器と、熱媒液を冷却する冷凍回路とを備え、冷凍回路によって冷却された熱媒液と水素ガスとを熱交換器内において相互に熱交換させることで水素ガスを冷却可能に構成されている。したがって、請求項
7記載の熱交換器、および請求項
8記載の水素ガス冷却装置によれば、給気対象に対する水素ガスの給気コストを十分に低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面を参照して、熱交換器および水素ガス冷却装置の実施の形態について説明する。
【0036】
最初に、水素ガス冷却用熱交換器30および水素ガス冷却装置1の構成について、添付図面を参照して説明する。
【0037】
図1に示す水素ガス給気システム100は、水素ガス燃料電池自動車等の給気対象Xに水素ガスを給気する水素ガスステーション用の設備であって、水素ガス冷却装置1、ガスタンク2およびディスペンサー3などを備えて構成されている。なお、同図では、水素ガス冷却装置1に関する理解を容易とするために、水素ガス給気システム100における水素ガス冷却装置1以外の構成要素に関して、ガスタンク2およびディスペンサー3や、水素ガス配管4a〜4cだけを図示し、その他の構成要素についての図示を省略している。
【0038】
水素ガス冷却装置1は、「水素ガス冷却装置」の一例であって、冷凍回路11、ブラインタンク12、ブライン配管13a〜13d、液送ポンプ14a,14b、温度センサ15、制御部16および水素ガス冷却用熱交換器30を備え、「第2熱交換対象流体」としての「熱媒液」の一例であるブラインを冷却すると共に、冷却したブラインを水素ガス冷却用熱交換器30に供給することにより、「第1熱交換対象流体」の一例である水素ガスとブラインとの熱交換によって水素ガスを冷却することができるように構成されている。
【0039】
冷凍回路11は、「冷凍回路」の一例である一元冷凍回路であって、圧縮機21、凝縮器22、膨張弁23および蒸発器24を備え、後述するように、「冷媒」としてのフロンと「熱媒液」としてのブラインとの熱交換によってブラインを冷却することができるように構成されている。この場合、本例の水素ガス冷却装置1では、一例として、圧縮機21からの冷媒の吐出圧力を検出してセンサ信号S25を出力する圧力センサ25が圧縮機21と凝縮器22とを接続する冷媒配管に配設されている。なお、実際の冷凍回路11には、各種の冷媒バイパス回路、再熱回路、および圧縮機21からフロンと共に排出された潤滑油を圧縮機21に戻す潤滑油配管等の各種の構成要素が配設されているが、水素ガス冷却装置1についての理解を容易とするために、これらの構成要素についての図示および説明を省略する。
【0040】
ブラインタンク12は、後述するように冷凍回路11(蒸発器24)によって冷却されて水素ガス冷却用熱交換器30に供給されるブラインを貯留可能に構成されている。ブライン配管13a,13bは、冷凍回路11の蒸発器24とブラインタンク12とを相互に接続する。この場合、本例の水素ガス冷却装置1では、ブラインタンク12内のブラインがブライン配管13aを介して蒸発器24に供給されて冷却された後に、ブライン配管13bを介してブラインタンク12に案内されることにより、ブラインタンク12と蒸発器24との間をブラインが循環させられる構成が採用されている。ブライン配管13c,13dは、ブラインタンク12と水素ガス冷却用熱交換器30とを相互に接続する。この場合、本例の水素ガス冷却装置1では、ブラインタンク12内のブラインがブライン配管13cを介して水素ガス冷却用熱交換器30に供給されて水素と熱交換させられた後に、ブライン配管13dを介してブラインタンク12に案内されることにより、ブラインタンク12と水素ガス冷却用熱交換器30との間をブラインが循環させられる構成が採用されている。
【0041】
液送ポンプ14aは、制御部16の制御に従ってブラインタンク12内のブラインを蒸発器24に向けて圧送する。この場合、本例の水素ガス冷却装置1では、液送ポンプ14aがブラインタンク12内のブラインを蒸発器24に圧送することにより、蒸発器24内のブライン(蒸発器24において冷却されたブライン)がブラインタンク12に案内される構成が採用されている。液送ポンプ14bは、制御部16の制御に従ってブラインタンク12内のブラインを水素ガス冷却用熱交換器30に向けて圧送する。この場合、本例の水素ガス冷却装置1では、液送ポンプ14bがブラインタンク12内のブラインを水素ガス冷却用熱交換器30に圧送することにより、水素ガス冷却用熱交換器30内のブラインがブラインタンク12に案内される構成が採用されている。
【0042】
なお、上記の水素ガス冷却装置1の構成に代えて、例えば、「貯液槽(ブラインタンク)」内のブラインを冷凍回路11(蒸発器24)に供給して冷却した後に水素ガス冷却用熱交換器30に直接供給して水素ガスを冷却すると共に、水素ガスの冷却によって温度上昇したブラインを「貯液槽」に回収するように「貯液槽」を配設することもできる(図示せず)。また、大量の水素ガスを連続して冷却する可能性がない環境下、すなわち、大量のブラインを備えている必要がない環境下で使用するときには、「貯液槽(ブラインタンク)」を不要として冷凍回路11(蒸発器24)と水素ガス冷却用熱交換器30との間でブラインを直接循環させる構成を採用することもできる(図示せず)。
【0043】
温度センサ15は、一例として、ブラインタンク12内のブラインを水素ガス冷却用熱交換器30に供給するための上記のブライン配管13cに配設されてブライン配管13c内のブラインの温度(すなわち、水素ガスと熱交換させられるブラインの温度)を検出してセンサ信号S15を出力する。
【0044】
制御部16は、水素ガス冷却装置1を総括的に制御する。具体的には、制御部16は、冷凍回路11(蒸発器24)によってブラインを冷却するブライン冷却処理の実行時に、圧力センサ25からのセンサ信号S25などに応じて冷凍回路11の圧縮機21を制御してブラインの冷却に必要かつ十分な量の冷媒を圧縮させると共に、膨張弁23を制御してブラインの冷却に必要かつ十分な量の冷媒を蒸発器24に供給させる。
【0045】
また、制御部16は、冷凍回路11によるブライン冷却処理と並行して液送ポンプ14aを制御することにより、ブラインタンク12と蒸発器24との間でブラインを循環させてブラインタンク12内のブラインの温度を規定温度(水素ガスの冷却に適した温度)に維持させる。また、制御部16は、液送ポンプ14bを制御してブラインタンク12と水素ガス冷却用熱交換器30との間でブラインを循環させることにより、ガスタンク2からディスペンサー3に向かって移動させられている水素ガスを、水素ガス冷却用熱交換器30においてブラインと熱交換させて冷却させる。
【0046】
一方、水素ガス冷却用熱交換器30は、「熱交換器」の一例であって、水素ガス配管4bを介してディスペンサー3に接続されると共に水素ガス配管4cを介して給気対象Xに接続され、かつブライン配管13c,13dを介してブラインタンク12に接続されており、ガスタンク2から水素ガス配管4aおよびディスペンサー3を通過して給気対象Xに向かって流動させられる水素ガスをブラインとの熱交換によって予め規定された温度(一例として、−33℃〜−40℃の温度範囲内の温度)まで冷却する。なお、本例では、水素ガス冷却用熱交換器30を水素ガス冷却装置1の構成要素として備えた例について説明するが、水素ガス冷却用熱交換器30を外部機器として「水素ガス冷却装置」に接続して使用することもできる。
【0047】
この水素ガス冷却用熱交換器30は、
図2に示すように、容器体40、外側伝熱コイル50oa〜50odおよび内側伝熱コイル50ia〜50id(以下、「外側伝熱コイル50oa〜50od」を区別しないときには「外側伝熱コイル50o」ともいい、「内側伝熱コイル50ia〜50id」を区別しないときには「内側伝熱コイル50i」ともいう)を備えている。
【0048】
容器体40は、「容器体」に相当し、一例として、円筒状の筒状部41と、筒状部41の下端部を閉塞する蓋部42b、および筒状部41の上端部を閉塞する蓋部42tと、筒状部41および蓋部42b,42tによって形成される熱交換処理空間S内にブラインを導入するブライン導入部43(「流体導入部」の一例)と、熱交換処理空間Sからブラインを排出するブライン排出部44(流体排出部)と、熱交換処理空間S内におけるブラインの流速を上昇させるための増速用シャフト45と、水素ガスを導入するための水素ガス導入部46と、水素ガスを排出するための水素ガス排出部47とを備えている。
【0049】
この場合、容器体40におけるブライン導入部43やブライン排出部44を構成するブライン配管、および筒状部41や蓋部42b,42tからなる容器体の本体部は、図示しない断熱材によって覆われて外気に対して断熱されている。また、
図3に示すように、蓋部42tには、外側伝熱コイル50oa〜50odにおける水素ガス流入側端部を接続可能な外側コイル接続部60oai〜60odiと、外側伝熱コイル50oa〜50odにおける水素ガス排出側端部を接続可能な外側コイル接続部60oao〜60odoとが設けられると共に、内側伝熱コイル50ia〜50idにおける水素ガス流入側端部を接続可能な内側コイル接続部60iai〜60idiと、内側伝熱コイル50ia〜50idにおける水素ガス排出側端部を接続可能な内側コイル接続部60iao〜60idoとが設けられている。
【0050】
また、
図3,4に示すように、外側コイル接続部60oaiは、水素ガス配管61baを介して水素ガス導入部46に接続され、外側コイル接続部60obiは、水素ガス配管61bbを介して水素ガス導入部46に接続され、外側コイル接続部60ociは、水素ガス配管61bcを介して水素ガス導入部46に接続され、外側コイル接続部60odiは、水素ガス配管61ad,61baを介して水素ガス導入部46に接続されている。なお、以下の説明において各水素ガス配管61ad,61ba,61bb,61bcを区別しないときには「水素ガス配管61」ともいう。
【0051】
さらに、外側コイル接続部60oaoは、水素ガス配管62aaを介して内側コイル接続部60iaiに接続され、外側コイル接続部60oboは、水素ガス配管62bbを介して内側コイル接続部60ibiに接続され、外側コイル接続部60ocoは、水素ガス配管62ccを介して内側コイル接続部60iciに接続され、外側コイル接続部60odoは、水素ガス配管62ddを介して内側コイル接続部60idiに接続されている。なお、以下の説明において各水素ガス配管62aa,62bb,62cc,62ddを区別しないときには「水素ガス配管62」ともいう。
【0052】
また、内側コイル接続部60iaoは、水素ガス配管63ad,63dbを介して水素ガス排出部47に接続され、内側コイル接続部60iboは、水素ガス配管63bbを介して水素ガス排出部47に接続され、内側コイル接続部60icoは、水素ガス配管63cbを介して水素ガス排出部47に接続され、内側コイル接続部60idoは、水素ガス配管63dbを介して水素ガス排出部47に接続されている。なお、以下の説明において各水素ガス配管63ad,63bb,63cb,63dbを区別しないときには、「水素ガス配管63」ともいう。
【0053】
さらに、
図2に示すように、ブライン導入部43における熱交換処理空間S内の端部には、容器体40の上方に向かってブラインを噴出しつつ筒状部41の径方向にブラインを拡散させるための噴出ノズル43aが取り付けられている。この場合、噴出ノズル43aは、「エゼクター」の一例であって、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、容器体40における筒状部41の平面視中央部に位置するようにブライン導入部43(ブライン導入部43を構成するブライン配管の端部)に取り付けられている。
【0054】
また、ブライン導入部43は、上記のブライン配管13cを介してブラインタンク12のブライン排出口に接続されると共に、ブライン排出部44は、上記のブライン配管13dを介してブラインタンク12のブライン流入口に接続されている。これにより、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、ブライン配管13cを介して供給されるブラインが、ブライン導入部43の噴出ノズル43aから熱交換処理空間S内に噴出され、容器体40の熱交換処理空間S内を矢印Aの向き(「第2熱交換対象流体の移動方向」の一例)に移動させられた後に、ブライン排出部44からブライン配管13dを介してブラインタンク12に流入させられる。また、水素ガス導入部46は、上記の水素ガス配管4bを介してディスペンサー3に接続されると共に、水素ガス排出部47は、上記の水素ガス配管4cを介して給気対象Xに接続される。
【0055】
外側伝熱コイル50oおよび内側伝熱コイル50iは、それぞれ「伝熱コイル」に相当し、容器体40内に収容されて水素ガス導入部46および水素ガス排出部47に接続されている。この場合、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、外側伝熱コイル50oa〜50odのM=4個の「外側伝熱コイル」と、外側伝熱コイル50oの内側に配置された内側伝熱コイル50ia〜50idのM=4個の「内側伝熱コイル」との合計8個の「伝熱コイル」を備えて水素ガスを冷却することができるように構成されている。
【0056】
また、
図5,6に示すように、各外側伝熱コイル50oは、水素ガスの通過が可能な管体が等しい巻回ピッチ(一定の巻回ピッチ)で螺旋状にN=16回巻回されてN=16個の環状部Ro01〜Ro16(「環状部」の一例:以下、区別しないときには「環状部Ro」ともいう)が形成された管体巻回部51oを備えている。さらに、各外側伝熱コイル50oは、各管体巻回部51oにおける各環状部Roの巻形が互いに等しい非正円形(本例では、丸みを帯びた略四角形)で、かつ各環状部Roにおける最大径部の巻径(一例として、
図8に示す外側伝熱コイル50obの管体巻回部51oにおける環状部Ro01の実線Lo01に沿った方向の直径、および環状部Ro02の破線Lo02に沿った方向の直径)が互いに等しくなるように構成されている。
【0057】
また、各内側伝熱コイル50iは、水素ガスの通過が可能な管体が螺旋状にN=16回巻回されてN=16個の環状部Ri01〜Ri16(「環状部」の他の一例:以下、区別しないときには「環状部Ri」ともいう)が形成された管体巻回部51iを備えている。さらに、各内側伝熱コイル50iは、各管体巻回部51iにおける各環状部Riの巻形が互いに等しい非正円形(本例では、丸みを帯びた略四角形)に形成されると共に、各環状部Riにおける最大径部の巻径(一例として、
図8に示す内側伝熱コイル50icの管体巻回部51iにおける環状部Ri01の実線Li01に沿った方向の直径、および環状部Ri02の破線Li02に沿った方向の直径)が、互いに等しく、かつ上記の各環状部Roの最大径部の巻径よりも小径となるように構成されている。
【0058】
また、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、
図2に示すように、管体巻回部51oにおける管体の巻回中心軸Oの軸線方向(同図における上下方向)が容器体40の筒長方向(同図における上下方向)に沿うようにして各外側伝熱コイル50oが容器体40内に並んで収容されている。さらに、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、管体巻回部51iにおける管体の巻回中心軸Oの軸線方向(同図における上下方向)が容器体40の筒長方向(同図における上下方向)に沿うようにして各内側伝熱コイル50iが容器体40内に並んで収容されている。この場合、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、各外側伝熱コイル50oの管体巻回部51o内や、各内側伝熱コイル50iの管体巻回部51i内を矢印Bの向き(容器体40内をブラインが移動する矢印Aの向きと対向する向き)で水素ガスが移動させられるように各外側伝熱コイル50oおよび各内側伝熱コイル50iが水素ガス導入部46や水素ガス排出部47に接続されている。
【0059】
また、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、前述したように、各水素ガス配管61を介して水素ガス導入部46に接続されている各外側コイル接続部60oai〜60odiに各外側伝熱コイル50oの水素ガス流入側端部がそれぞれ接続され、各水素ガス配管62を介して各内側コイル接続部60iai〜60idiに接続されている各外側コイル接続部60oao〜60odoに各外側伝熱コイル50oの水素ガス排出側端部がそれぞれ接続され、各内側コイル接続部60iai〜60idiに各内側伝熱コイル50iの水素ガス流入側端部がそれぞれ接続され、各水素ガス配管63を介して水素ガス排出部47に接続されている各内側コイル接続部60iao〜60idoに各内側伝熱コイル50iの水素ガス排出側端部がそれぞれ接続されている。
【0060】
これにより、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、水素ガス配管4bを介して水素ガス導入部46に導入される水素ガスが、
図7に示す水素ガス流路L50a〜L50dの4本の流路を経て水素ガス排出部47から水素ガス配管4cに排出される(M=4本の「流路」が設けられている構成の例)。なお、この水素ガス冷却用熱交換器30では、上記の各水素ガス配管61が「流体分岐部」に相当し、上記の各水素ガス配管63が「流体合流部」に相当する。
【0061】
この場合、水素ガス流路L50aは、水素ガス導入部46から、水素ガス配管61ba、外側コイル接続部60oai、外側伝熱コイル50oa、外側コイル接続部60oao、水素ガス配管62aa、内側コイル接続部60iai、内側伝熱コイル50ia、内側コイル接続部60iaoおよび水素ガス配管63ad,63dbを介して水素ガス排出部47に至るように構成されている。また、水素ガス流路L50bは、水素ガス導入部46から、水素ガス配管61bb、外側コイル接続部60obi、外側伝熱コイル50ob、外側コイル接続部60obo、水素ガス配管62bb、内側コイル接続部60ibi、内側伝熱コイル50ib、内側コイル接続部60iboおよび水素ガス配管63bbを介して水素ガス排出部47に至るように構成されている。
【0062】
さらに、水素ガス流路L50cは、水素ガス導入部46から、水素ガス配管61bc、外側コイル接続部60oci、外側伝熱コイル50oc、外側コイル接続部60oco、水素ガス配管62cc、内側コイル接続部60ici、内側伝熱コイル50ic、内側コイル接続部60ico、および水素ガス配管63cbを介して水素ガス排出部47に至るように構成されている。また、水素ガス流路L50dは、水素ガス導入部46から、水素ガス配管61ba,61ad、外側コイル接続部60odi、外側伝熱コイル50od、外側コイル接続部60odo、水素ガス配管62dd、内側コイル接続部60idi、内側伝熱コイル50id、内側コイル接続部60idoおよび水素ガス配管63dbを介して水素ガス排出部47に至るように構成されている。
【0063】
さらに、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、
図2に示すように、容器体40の最下部に外側伝熱コイル50obおよび内側伝熱コイル50icを配置し、その上方に外側伝熱コイル50oaおよび内側伝熱コイル50idを配置し、その上方に外側伝熱コイル50odおよび内側伝熱コイル50iaを配置し、かつその上方に外側伝熱コイル50ocおよび内側伝熱コイル50ibを配置すると共に、各水素ガス配管61,62,63の管長を調整することにより、
図7に示すように、水素ガス流路L50aの水素ガス導入部46から水素ガス排出部47までの流路長と、水素ガス流路L50bの水素ガス導入部46から水素ガス排出部47までの流路長と、水素ガス流路L50cの水素ガス導入部46から水素ガス排出部47までの流路長と、水素ガス流路L50dの水素ガス導入部46から水素ガス排出部47までの流路長とが互いに等しくなるように構成されている。
【0064】
この場合、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、
図8に示すように、外側伝熱コイル50o(同図では外側伝熱コイル50ob)を管体の巻回中心軸Oの軸線方向に沿って見たときに、環状部Ro01(「軸線方向において連続する2つの環状部の一方」の一例)における最大径部の径方向に沿った仮想線(この例では、実線Lo01)と、環状部Ro02(「軸線方向において連続する2つの環状部の他方」の一例)における最大径部の径方向に沿った仮想線(この例では、破線Lo02)とが、一例として18°の交差角度で交差するように管体が巻回されて管体巻回部51oが構成されている。
【0065】
これにより、この水素ガス冷却用熱交換器30では、環状部Ro01を構成する管体の周方向の一部が環状部Ro02を構成する管体に対して軸線方向において重なり合う部分である「重なり部(軸線方向において連続する環状部Ro,Roの一方を構成する管体の周方向の一部が他方を構成する管体に対して軸線方向において重なっている部分)」と、軸線方向において重ならない部分である「非重なり部(軸線方向において連続する環状部Ro,Roの一方を構成する管体の周方向の一部が他方を構成する管体に対して軸線方向において重なっていない部分)」とが生じた状態となっている。具体的には、
図8に示す環状部Ro01,Ro02の例では、「重なり部」および「非重なり部」が交互に設けられて8箇所の「重なり部」と8箇所の「非重なり部」が生じた状態となっている。
【0066】
また、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、
図9に示すように、外側伝熱コイル50o(同図では外側伝熱コイル50ob)を管体の巻回中心軸Oの軸線方向に沿って見たときに、環状部Ro02(「軸線方向において連続する2つの環状部の一方」の他の一例)における最大径部の径方向に沿った仮想線(この例では、破線Lo02)と、環状部Ro03(「軸線方向において連続する2つの環状部の他方」の他の一例)における最大径部の径方向に沿った仮想線(この例では、実線Lo03)とが18°の交差角度で交差するように管体が巻回されて管体巻回部51oが構成されている。
【0067】
これにより、この水素ガス冷却用熱交換器30では、環状部Ro02を構成する管体の周方向の一部が環状部Ro03を構成する管体に対して軸線方向において重なり合う部分である「重なり部」と、軸線方向において重ならない部分である「非重なり部」とが生じた状態となっている。具体的には、
図9に示す環状部Ro02,Ro03の例では、「重なり部」および「非重なり部」が交互に設けられて8箇所の「重なり部」と8箇所の「非重なり部」が生じた状態となっている。
【0068】
さらに、上記のように、環状部Ro01における最大径部の径方向に沿った仮想線(実線Lo01)と、環状部Ro02における最大径部の径方向に沿った仮想線(破線Lo02)とが18°の交差角度で交差し、かつ環状部Ro02における最大径部の径方向に沿った仮想線(破線Lo02)と、環状部Ro03における最大径部の径方向に沿った仮想線(実線Lo03)とが18°の交差角度で交差するように管体が巻回されて管体巻回部51oが構成されている本例の管体巻回部51oでは、軸線方向に沿って見たときに、環状部Ro01,Ro02における上記の8つの「非重なり部」のうちの1つである非重なり部Poa(
図8参照)に対して、環状部Ro02,Ro03における上記の8つの「非重なり部」のうちの1つである非重なり部Pob(環状部Ro01,Ro02における非重なり部Poaと同じ位置関係の「非重なり部」:
図9参照)が、巻回中心軸Oを中心として時計回りに18°変位している。
【0069】
また、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、
図10に示すように、外側伝熱コイル50o(同図では外側伝熱コイル50ob)を管体の巻回中心軸Oの軸線方向に沿って見たときに、環状部Ro03(「軸線方向において連続する2つの環状部の一方」のさらに他の一例)における最大径部の径方向に沿った仮想線(この例では、実線Lo03)と、環状部Ro04(「軸線方向において連続する2つの環状部の他方」のさらに他の一例)における最大径部の径方向に沿った仮想線(この例では、破線Lo04)とが18°の交差角度で交差するように管体が巻回されて管体巻回部51oが構成されている。
【0070】
これにより、この水素ガス冷却用熱交換器30では、環状部Ro03を構成する管体の周方向の一部が環状部Ro04を構成する管体に対して軸線方向において重なり合う部分である「重なり部」と、軸線方向において重ならない部分である「非重なり部」とが生じた状態となっている。具体的には、
図10に示す環状部Ro03,Ro04の例では、「重なり部」および「非重なり部」が交互に設けられて8箇所の「重なり部」と8箇所の「非重なり部」が生じた状態となっている。
【0071】
さらに、上記のように、環状部Ro02における最大径部の径方向に沿った仮想線(破線Lo02)と、環状部Ro03における最大径部の径方向に沿った仮想線(実線Lo03)とが18°の交差角度で交差し、かつ環状部Ro03における最大径部の径方向に沿った仮想線(実線Lo03)と、環状部Ro04における最大径部の径方向に沿った仮想線(破線Lo04)とが18°の交差角度で交差するように管体が巻回されて管体巻回部51oが構成されている本例の管体巻回部51oでは、軸線方向に沿って見たときに、環状部Ro02,Ro03における上記の8つの「非重なり部」のうちの1つである非重なり部Pob(
図9参照)に対して、環状部Ro03,Ro04における上記の8つの「非重なり部」のうちの1つである非重なり部Poc(環状部Ro01,Ro02における非重なり部Poaや、環状部Ro02,Ro03における非重なり部Pobと同じ位置関係の「非重なり部」:
図10参照)が、巻回中心軸Oを中心として時計回りに18°変位している。
【0072】
なお、詳細な説明および図示を省略するが、外側伝熱コイル50obにおける管体巻回部51oの環状部Ro04,Ro05、環状部Ro05,Ro06・・環状部Ro15,Ro16についても、上記の環状部Ro01,Ro02、環状部Ro02,Ro03および環状部Ro03,Ro04の関係と同様に構成されている。したがって、この外側伝熱コイル50obの管体巻回部51oでは、軸線方向に沿って見たときに、軸線方向の一方(この例では、
図2における下方)から他方(この例では、
図2における上方)に向かって非重なり部Poa,Pob,Poc・・の位置が巻回中心軸Oを中心として同じ向き(本例では、平面視において時計回りの向き)に同じ角度ずつ(本例では、18°ずつ)変位している。
【0073】
また、筒状部41の筒長方向に沿って外側伝熱コイル50obの上方(容器体40内におけるブラインの移動方向の下流側)に配置される外側伝熱コイル50oa,50od,50ocの管体巻回部51oは、管体の巻回ピッチ、各環状部Ro01〜Ro16の巻形および巻径、並びに「非重なり部」の変位の向きおよび角度等が上記の外側伝熱コイル50obの管体巻回部51oと同様に構成されている。
【0074】
さらに、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、
図11に示すように、外側伝熱コイル50ob,50oaを管体の巻回中心軸Oの軸線方向に沿って見たときに、外側伝熱コイル50obの環状部Ro16(「容器体内における第2熱交換対象流体の移動方向の上流側に配置された伝熱コイルにおける最下流側の環状部」の一例)における最大径部の径方向に沿った仮想線(この例では、破線Lo16)と、外側伝熱コイル50oaの環状部Ro01(「上流側に配置された伝熱コイルの下流側に並んで配置された伝熱コイルにおける最上流側の環状部」の一例)における最大径部の径方向に沿った仮想線(この例では、実線Lo01)とが18°の交差角度で交差するように管体が巻回されて管体巻回部51oが構成されている。
【0075】
これにより、この水素ガス冷却用熱交換器30では、外側伝熱コイル50obの環状部Ro16を構成する管体の周方向の一部が外側伝熱コイル50oaの環状部Ro01を構成する管体に対して軸線方向において重なり合う部分である「重なり部」と、軸線方向において重ならない部分である「非重なり部」とが生じた状態となっている。具体的には、
図11に示す外側伝熱コイル50ob,50oaの例では、「重なり部」および「非重なり部」が交互に設けられて8箇所の「重なり部」と8箇所の「非重なり部」が生じた状態となっている。
【0076】
また、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、軸線方向に沿って見たときに、外側伝熱コイル50obの環状部Ro15,Ro16における8つの「非重なり部」のうちの1つである非重なり部Poo(上記の環状部Ro01,Ro02における非重なり部Poaなどと同じ位置関係の「非重なり部」:「上流側に配置された伝熱コイルにおける最下流側の非重なり部」の一例:図示せず)に対して、外側伝熱コイル50obの環状部Ro16と外側伝熱コイル50oaの環状部Ro01との8つの「非重なり部」のうちの1つである非重なり部Pop(「上流側に配置された伝熱コイルにおける最下流側の環状部と下流側に並んで配置された伝熱コイルにおける最上流側の環状部との非重なり部」の一例:
図11参照)が、巻回中心軸Oを中心として、各管体巻回部51oの管体巻回部51oにおける「非重なり部」の変位の向きおよび変位の角度(本例では、平面視において時計回りの向きで18°)と同じ向きに同じ角度だけ変位するように外側伝熱コイル50ob,50oaが配置されている。
【0077】
なお、詳細な説明および図示を省略するが、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、外側伝熱コイル50oa,50odにおける管体巻回部51o,51oの位置関係や、外側伝熱コイル50od,50ocにおける管体巻回部51o,51oの位置関係についても、外側伝熱コイル50ob,50oaにおける管体巻回部51o,51oの上記の位置関係と同様となるように各外側伝熱コイル50oが配置されている。したがって、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、最上流側に配置されている外側伝熱コイル50obの管体巻回部51oにおける最上流側の非重なり部Poaから、最下流側に配置されている外側伝熱コイル50ocの管体巻回部51oにおける最下流側の非重なり部Pooまでのすべての「非重なり部(以下、区別しないときには「非重なり部Po」ともいう)」が、上流側から下流側に向かって巻回中心軸Oを中心として時計回りに18°ずつ変位するように、各管体巻回部51oが配置されている。
【0078】
また、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、
図8に示すように、内側伝熱コイル50i(同図では内側伝熱コイル50ic)を管体の巻回中心軸Oの軸線方向に沿って見たときに、環状部Ri01(「軸線方向において連続する2つの環状部の一方」の一例)における最大径部の径方向に沿った仮想線(この例では、実線Li01)と、環状部Ri02(「軸線方向において連続する2つの環状部の他方」の一例)における最大径部の径方向に沿った仮想線(この例では、破線Li02)とが、一例として18°の交差角度で交差するように管体が巻回されて管体巻回部51iが構成されている。
【0079】
これにより、この水素ガス冷却用熱交換器30では、環状部Ri01を構成する管体の周方向の一部が環状部Ri02を構成する管体に対して軸線方向において重なり合う部分である「重なり部(軸線方向において連続する環状部Ri,Riの一方を構成する管体の周方向の一部が他方を構成する管体に対して軸線方向において重なっている部分)」と、軸線方向において重ならない部分である「非重なり部(軸線方向において連続する環状部Ri,Riの一方を構成する管体の周方向の一部が他方を構成する管体に対して軸線方向において重なっていない部分)」とが生じた状態となっている。具体的には、
図8に示す環状部Ri01,Ri02の例では、「重なり部」および「非重なり部」が交互に設けられて8箇所の「重なり部」と8箇所の「非重なり部」が生じた状態となっている。
【0080】
また、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、
図9に示すように、内側伝熱コイル50i(同図では内側伝熱コイル50ic)を管体の巻回中心軸Oの軸線方向に沿って見たときに、環状部Ri02(「軸線方向において連続する2つの環状部の一方」の他の一例)における最大径部の径方向に沿った仮想線(この例では、破線Li02)と、環状部Ri03(「軸線方向において連続する2つの環状部の他方」の他の一例)における最大径部の径方向に沿った仮想線(この例では、実線Li03)とが18°の交差角度で交差するように管体が巻回されて管体巻回部51iが構成されている。
【0081】
これにより、この水素ガス冷却用熱交換器30では、環状部Ri02を構成する管体の周方向の一部が環状部Ri03を構成する管体に対して軸線方向において重なり合う部分である「重なり部」と、軸線方向において重ならない部分である「非重なり部」とが生じた状態となっている。具体的には、
図9に示す環状部Ri02,Ri03の例では、「重なり部」および「非重なり部」が交互に設けられて8箇所の「重なり部」と8箇所の「非重なり部」が生じた状態となっている。
【0082】
さらに、上記のように、環状部Ri01における最大径部の径方向に沿った仮想線(実線Li01)と、環状部Ri02における最大径部の径方向に沿った仮想線(破線Li02)とが18°の交差角度で交差し、かつ環状部Ri02における最大径部の径方向に沿った仮想線(破線Li02)と、環状部Ri03における最大径部の径方向に沿った仮想線(実線Li03)とが18°の交差角度で交差するように管体が巻回されて管体巻回部51iが構成されている本例の管体巻回部51iでは、軸線方向に沿って見たときに、環状部Ri01,Ri02における上記の8つの「非重なり部」のうちの1つである非重なり部Pia(
図8参照)に対して、環状部Ri02,Ri03における上記の8つの「非重なり部」のうちの1つである非重なり部Pib(環状部Ri01,Ri02における非重なり部Piaと同じ位置関係の「非重なり部」:
図9参照)が、巻回中心軸Oを中心として時計回りに18°変位している。
【0083】
また、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、
図10に示すように、内側伝熱コイル50i(同図では内側伝熱コイル50ic)を管体の巻回中心軸Oの軸線方向に沿って見たときに、環状部Ri03(「軸線方向において連続する2つの環状部の一方」のさらに他の一例)における最大径部の径方向に沿った仮想線(この例では、実線Li03)と、環状部Ri04(「軸線方向において連続する2つの環状部の他方」のさらに他の一例)における最大径部の径方向に沿った仮想線(この例では、破線Li04)とが18°の交差角度で交差するように管体が巻回されて管体巻回部51iが構成されている。
【0084】
これにより、この水素ガス冷却用熱交換器30では、環状部Ri03を構成する管体の周方向の一部が環状部Ri04を構成する管体に対して軸線方向において重なり合う部分である「重なり部」と、軸線方向において重ならない部分である「非重なり部」とが生じた状態となっている。具体的には、
図10に示す環状部Ri03,Ri04の例では、「重なり部」および「非重なり部」が交互に設けられて8箇所の「重なり部」と8箇所の「非重なり部」が生じた状態となっている。
【0085】
さらに、上記のように、環状部Ri02における最大径部の径方向に沿った仮想線(破線Li02)と、環状部Ri03における最大径部の径方向に沿った仮想線(実線Li03)とが18°の交差角度で交差し、かつ環状部Ri03における最大径部の径方向に沿った仮想線(実線Li03)と、環状部Ri04における最大径部の径方向に沿った仮想線(破線Li04)とが18°の交差角度で交差するように管体が巻回されて管体巻回部51iが構成されている本例の管体巻回部51iでは、軸線方向に沿って見たときに、環状部Ri02,Ri03における上記の8つの「非重なり部」のうちの1つである非重なり部Pib(
図9参照)に対して、環状部Ri03,Ri04における上記の8つの「非重なり部」のうちの1つである非重なり部Pic(環状部Ri01,Ri02における非重なり部Piaや、環状部Ri02,Ri03における非重なり部Pibと同じ位置関係の「非重なり部」:
図10参照)が、巻回中心軸Oを中心として時計回りに18°変位している。
【0086】
なお、詳細な説明および図示を省略するが、内側伝熱コイル50icにおける管体巻回部51iの環状部Ri04,Ri05、環状部Ri05,Ri06・・環状部Ri15,Ri16についても、上記の環状部Ri01,Ri02、環状部Ri02,Ri03および環状部Ri03,Ri04の関係と同様に構成されている。したがって、この内側伝熱コイル50icの管体巻回部51iでは、軸線方向に沿って見たときに、軸線方向の一方(この例では、
図2における下方)から他方(この例では、
図2における上方)に向かって非重なり部Pia,Pib,Pic・・の位置が巻回中心軸Oを中心として同じ向き(本例では、平面視において時計回りの向き)に同じ角度ずつ(本例では、18°ずつ)変位している。
【0087】
また、筒状部41の筒長方向に沿って内側伝熱コイル50icの上方(容器体40内におけるブラインの移動方向の下流側)に配置される内側伝熱コイル50id,50ia,50ibの管体巻回部51iは、管体の巻回ピッチ、各環状部Ri01〜Ri16の巻形および巻径、並びに「非重なり部」の変位の向きおよび角度等が上記の内側伝熱コイル50icの管体巻回部51iと同様に構成されている。
【0088】
さらに、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、
図11に示すように、内側伝熱コイル50ic,50idを管体の巻回中心軸Oの軸線方向に沿って見たときに、内側伝熱コイル50icの環状部Ri16(「容器体内における第2熱交換対象流体の移動方向の上流側に配置された伝熱コイルにおける最下流側の環状部」の一例)における最大径部の径方向に沿った仮想線(この例では、破線Li16)と、内側伝熱コイル50idの環状部Ri01(「上流側に配置された伝熱コイルの下流側に並んで配置された伝熱コイルにおける最上流側の環状部」の一例)における最大径部の径方向に沿った仮想線(この例では、実線Li01)とが18°の交差角度で交差するように管体が巻回されて管体巻回部51iが構成されている。
【0089】
これにより、この水素ガス冷却用熱交換器30では、内側伝熱コイル50icの環状部Ri16を構成する管体の周方向の一部が内側伝熱コイル50idの環状部Ri01を構成する管体に対して軸線方向において重なり合う部分である「重なり部」と、軸線方向において重ならない部分である「非重なり部」とが生じた状態となっている。具体的には、
図11に示す内側伝熱コイル50ic,50idの例では、「重なり部」および「非重なり部」が交互に設けられて8箇所の「重なり部」と8箇所の「非重なり部」が生じた状態となっている。
【0090】
また、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、軸線方向に沿って見たときに、内側伝熱コイル50icの環状部Ri15,Ri16における8つの「非重なり部」のうちの1つである非重なり部Pio(上記の環状部Ri01,Ri02における非重なり部Piaなどと同じ位置関係の「非重なり部」:「上流側に配置された伝熱コイルにおける最下流側の非重なり部」の一例:図示せず)に対して、内側伝熱コイル50icの環状部Ri16と内側伝熱コイル50idの環状部Ri01との8つの「非重なり部」のうちの1つである非重なり部Pip(「上流側に配置された伝熱コイルにおける最下流側の環状部と下流側に並んで配置された伝熱コイルにおける最上流側の環状部との非重なり部」の一例:
図11参照)が、巻回中心軸Oを中心として、各管体巻回部51iの管体巻回部51iにおける「非重なり部」の変位の向きおよび変位の角度(本例では、平面視において時計回りの向きで18°)と同じ向きに同じ角度だけ変位するように内側伝熱コイル50ic,50idが配置されている。
【0091】
なお、詳細な説明および図示を省略するが、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、内側伝熱コイル50id,50iaにおける管体巻回部51i,51iの位置関係や、内側伝熱コイル50ia,50ibにおける管体巻回部51i,51iの位置関係についても、内側伝熱コイル50ic,50idにおける管体巻回部51i,51iの上記の位置関係と同様となるように各内側伝熱コイル50iが配置されている。したがって、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、最上流側に配置されている内側伝熱コイル50icの管体巻回部51iにおける最上流側の非重なり部Piaから、最下流側に配置されている内側伝熱コイル50ibの管体巻回部51iにおける最下流側の非重なり部Pioまでのすべての「非重なり部(以下、区別しないときには「非重なり部Pi」ともいう)」が、上流側から下流側に向かって巻回中心軸Oを中心として時計回りに18°ずつ変位するように、各管体巻回部51iが配置されている。
【0092】
さらに、本例の水素ガス冷却用熱交換器30における各外側伝熱コイル50oおよび各内側伝熱コイル50iは、管体の巻回ピッチや、「非重なり部」の変位の向きおよび角度が互いに等しくなるように各管体巻回部51o,51iがそれぞれ構成されると共に、各管体巻回部51o,51iの巻回中心軸Oが同一軸線上に位置するように容器体40内に収容されている。
【0093】
この場合、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、
図8に示すように、例えば容器体40の最下部(最上流部側)に配置されている外側伝熱コイル50obおよび内側伝熱コイル50icを巻回中心軸Oの軸線方向に(容器体40の筒長方向)に沿って上方から見たときに、外側伝熱コイル50obの管体巻回部51oにおいて最上流側の環状部Ro01における最大径部の径方向に沿った実線Lo01と、内側伝熱コイル50icの管体巻回部51iにおいて最上流側の環状部Ri01における最大径部の径方向に沿った実線Li01とが45度の角度で交差するように外側伝熱コイル50obおよび内側伝熱コイル50icが配置されている。したがって、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、容器体40の筒長方向(巻回中心軸Oの軸線方向)において同じ位置に配置されている環状部Ro,Riに関し、それぞれの最大径部の径方向に沿った仮想線が45°の交差角度で交差している。
【0094】
なお、本例の水素ガス冷却用熱交換器30とは相違するが、軸線方向において連続する環状部Ro,Roの最大径方向に沿った2本の仮想線が18°の交差角度で交差する構成に代えて、18°以外の任意の角度で交差するように管体巻回部51oを構成したり、軸線方向において連続する環状部Ri,Riの最大径方向に沿った2本の仮想線が18°の交差角度で交差する構成に代えて、18°以外の任意の角度で交差するように管体巻回部51iを構成したりすることもできる(図示せず)。また、軸線方向で隣り合う2つの「非重なり部」が平面視において時計回りの向きに変位する構成に代えて、軸線方向で隣り合う2つの「非重なり部」が平面視において反時計回りの向きに変位するように管体巻回部51o,51iを構成することもできる(図示せず)。
【0095】
さらに、本例の水素ガス冷却用熱交換器30とは相違するが、容器体40内の高さ向(筒長方向:軸線方向)において同じ位置に配置されている環状部Ro,Riに関し、それぞれの最大径部の径方向に沿った仮想線が45°以外の交差角度で交差するように各外側伝熱コイル50oおよび各内側伝熱コイル50iを配置することもできる。また、容器体40内の高さ方向(筒長方向:軸線方向)において同じ位置に配置されている環状部Ro,Riに関し、それぞれの最大径部の径方向に沿った仮想線が一致する(または平行となる)ように各外側伝熱コイル50oおよび各内側伝熱コイル50iを配置することもできる。
【0096】
次に、水素ガス冷却装置1による水素ガスの冷却処理について説明する。
【0097】
この水素ガス冷却装置1では、水素ガス冷却用熱交換器30において水素ガスを冷却する水素ガス冷却処理を実行していないときに、ブラインタンク12と水素ガス冷却用熱交換器30との間で少量のブラインを循環させる構成が採用されている。具体的には、制御部16は、水素ガス冷却処理の非実行時に、液送ポンプ14bを制御することにより、予め規定された時間間隔でブラインタンク12から水素ガス冷却用熱交換器30に少量のブラインを断続的に供給させる。これにより、後述するブライン冷却処理によって冷却された低温のブラインがブラインタンク12からブライン配管13cを介して水素ガス冷却用熱交換器30に供給され、水素ガス冷却用熱交換器30内のブラインがブライン配管13dを介してブラインタンク12に戻される結果、地熱等で温度上昇したブラインがブライン配管13cや水素ガス冷却用熱交換器30内に滞留した状態、すなわち、水素ガス冷却処理の開始時に水素ガスを好適に冷却可能な状態となるまでに長い時間を要する状態となるのを好適に回避することが可能となっている。
【0098】
また、制御部16は、ブラインタンク12と水素ガス冷却用熱交換器30との間でブラインを循環させる上記の処理と並行して、ブラインタンク12内のブラインを冷凍回路11によって冷却するブライン冷却処理を実行することでブラインタンク12内のブラインの温度を水素ガスの冷却に適した温度範囲内の温度に維持する。具体的には、上記のようなブラインの循環処理を実行することにより、ブラインタンク12から水素ガス冷却用熱交換器30に供給されるブラインの温度、すなわち、ブラインタンク12内のブラインの温度が温度センサ15によって検出される。したがって、制御部16は、温度センサ15からのセンサ信号S15に基づいて特定したブラインの温度が規定温度範囲内の温度であるか否かを判別する処理を繰り返し実行する(ブライン温度の監視処理)。
【0099】
また、制御部16は、特定したブラインの温度が上記の規定温度範囲の上限値よりも高温であると判別したときに、冷凍回路11によるブライン冷却処理を開始すると共に、液送ポンプ14aを制御してブラインタンク12と冷凍回路11(蒸発器24)との間でブラインを循環させる。この際に、本例の水素ガス冷却装置1では、制御部16が、一例として、特定したブライン温度に応じて圧縮機21の回転数を変化させることにより、蒸発器24においてブラインを好適に冷却するのに必要な量のフロンを圧縮させる。
【0100】
これにより、圧縮機21から吐出されて凝縮器22において凝縮されたフロンが膨張弁23を介して蒸発器24に供給され、気化したフロンとの熱交換によってブラインが冷却される。なお、本例の水素ガス冷却装置1では、圧縮機21の運転状態の変更と並行して膨張弁23の開弁率を変更する公知の処理(蒸発器24へのフロンの供給量を変化させる処理)が行われるが、水素ガス冷却装置1の動作に関する理解を容易とするために、膨張弁23の開弁率を変更する処理についての説明を省略する。このような処理を、センサ信号S15に基づいて特定されるブラインの温度が規定温度範囲内の温度となるまで継続することにより、ブラインタンク12内のブラインの温度が水素ガスの冷却に適した目標温度範囲内の温度に維持される。
【0101】
一方、給気対象Xへの水素ガスの充填(給気)に際しては、一例として、水素ガス給気システム100の主制御装置(図示せず)から水素ガス冷却装置1の制御部16に給気開始信号が出力され、これに伴い、制御部16が、液送ポンプ14bを制御してブラインタンク12から水素ガス冷却用熱交換器30へのブラインの供給量を増加させる。これにより、水素ガスの冷却に必要な量のブラインがブラインタンク12からブライン配管13cを介して水素ガス冷却用熱交換器30に供給される。この結果、ガスタンク2からディスペンサー3を通過して給気対象Xに向かって移動させられる水素ガスが水素ガス冷却用熱交換器30の通過時にブラインと熱交換させられて冷却され、十分に温度低下した水素ガス(一例として、−33℃〜−40℃の温度範囲内の温度の水素ガス)が給気対象Xの燃料タンク(ガスタンク)内に充填される。これにより、給気対象Xへの水素ガスの充填効率を十分に向上させることができる。
【0102】
この場合、本例の水素ガス冷却装置1(水素ガス冷却用熱交換器30)では、上記のような水素ガスの冷却に際してブラインタンク12内のブラインが液送ポンプ14bによってブライン配管13cを介して水素ガス冷却用熱交換器30に圧送されたときに、圧送されたブラインがブライン導入部43の噴出ノズル43aから熱交換処理空間S内に噴出された後に、
図2に示す矢印Aの向き(容器体40の底部から上方に向かう向き)で容器体40内を移動させられる。
【0103】
具体的には、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、
図12に示すように、液送ポンプ14bによってブライン配管13cを介して水素ガス冷却用熱交換器30に圧送されたブラインがブライン導入部43の噴出ノズル43aから矢印C1で示すように熱交換処理空間S内に上向きで噴出される際に、噴出ノズル43aの近傍のブラインが、噴出ノズル43aにおける流体吸込口から噴出ノズル43a内に吸い込まれて、液送ポンプ14bによって圧送されたブラインと共に矢印C2で示すように熱交換処理空間S内に上向きで再び噴出される。なお、同図では、液送ポンプ14bによって圧送されたブラインの流れ、およびエゼクター効果によって流体吸込口から吸い込まれるブラインの流れについての理解を容易とするために、矢印C1,C2,C2を区別して図示しているが、実際には、上記の2つの流れが噴出ノズル43a内において入り交じった状態で噴出ノズル43aからブラインが噴出される。これにより、噴出ノズル43aから噴出されたブラインに乱流が生じる。
【0104】
一方、噴出ノズル43aから噴出されたブラインは、まず、熱交換処理空間Sの最下部(最上流部)に配置されている外側伝熱コイル50obの管体巻回部51oの各環状部Ro、および内側伝熱コイル50icの管体巻回部51iにおける各環状部Riに当接する。これにより、外側伝熱コイル50ob内(各環状部Ro内)の水素ガス(水素ガス導入部46から導入されて水素ガス流路L50bを流れている水素ガス)、および内側伝熱コイル50ic内(各環状部Ri内)の水素ガス(水素ガス導入部46から導入されて水素ガス流路L50cを流れている水素ガス)との熱交換によってこれらの水素ガスが冷却される。
【0105】
この場合、ブライン導入部43に噴出ノズル43aが配設されている本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、容器体40の底部に導入された直後のブラインが、噴出ノズル43aからの噴出された時点において生じる上記の乱流の影響により、筒状部41の径方向に拡散しつつ外側伝熱コイル50obおよび内側伝熱コイル50icに到達する。したがって、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、外側伝熱コイル50obの管体巻回部51oや内側伝熱コイル50icの管体巻回部51iの周囲をブラインが上向きに直進して管体巻回部51o,51iを素通りする事態、すなわち、外側伝熱コイル50obおよび内側伝熱コイル50icにおけるブラインと水素ガスとの熱交換効率が低下する事態が好適に回避される。
【0106】
また、前述したように、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、軸線方向で連続する環状部Ro,Roに「非重なり部」が生じるように外側伝熱コイル50obの管体巻回部51oが構成されると共に、軸線方向で連続する環状部Ri,Riに「非重なり部」が生じるように内側伝熱コイル50icの管体巻回部51iが構成されている。このため、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、外側伝熱コイル50obの管体巻回部51oにおける各「非重なり部」や内側伝熱コイル50icの管体巻回部51iにおける各「非重なり部」において熱交換処理空間Sを上昇するブラインが環状部Ro,Riを構成する管体に対して好適に当接させられる。
【0107】
この結果、外側伝熱コイル50obや内側伝熱コイル50icの管体巻回部51o,51iにおいてブラインの移動方向が変化させられて(上向きに直進する方向から反らされて)乱流が生じ、「非重なり部」よりも下流側の環状部Ro,Riに対してブラインが一層好適に当接する。これにより、管体巻回部51o,51iの周囲をブラインが上向きに直進して管体巻回部51o,51iを素通りする事態、すなわち、外側伝熱コイル50oaおよび内側伝熱コイル50idにおけるブラインと水素ガスとの熱交換効率が低下する事態が一層好適に回避される。
【0108】
さらに、前述したように、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、外側伝熱コイル50obの管体巻回部51oにおける各「非重なり部」が、軸線方向における上流側から下流側に向かって、巻回中心軸Oを中心として反時計回りの向きに18°ずつ変位するように構成されている。また、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、内側伝熱コイル50icの管体巻回部51cにおける各「非重なり部」が、軸線方向における上流側から下流側に向かって、巻回中心軸Oを中心として反時計回りの向きに18°ずつ変位するように構成されている。したがって、外側伝熱コイル50oおよび内側伝熱コイル50icの周囲を容器体40の筒状方向に沿って移動するブラインが、上流側の「非重なり部」から下流側の「非重なり部」のすべてに対して好適に当接させられる結果、外側伝熱コイル50oaおよび内側伝熱コイル50idにおけるブラインと水素ガスとの熱交換効率が低下する事態が一層好適に回避される。
【0109】
また、外側伝熱コイル50obの管体巻回部51o、および内側伝熱コイル50icの管体巻回部51iにおいて水素ガスを冷却したブラインは、熱交換処理空間S内に順次導入される新たなブラインに押し上げられるようにして矢印Aの向きで容器体40内をさらに移動させられ、外側伝熱コイル50oaおよび内側伝熱コイル50idの部位、外側伝熱コイル50odおよび内側伝熱コイル50iaの部位、並びに外側伝熱コイル50ocおよび内側伝熱コイル50ibの部位に順次到達する。
【0110】
この場合、前述したように、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、外側伝熱コイル50oa,50od,50ocにおける各管体巻回部51oが最上流側の外側伝熱コイル50obにおける管体巻回部51oと同様に構成されている。また、各外側伝熱コイル50oは、上流側の外側伝熱コイル50oの管体巻回部51oにおける最下流側の「非重なり部」に対して、上流側の外側伝熱コイル50oの最下流側の環状部Roとその上流側の外側伝熱コイル50oの最上流側の環状部Roとの「非重なり部」が変位している向きおよび角度が、各管体巻回部51oにおける「非重なり部」の変位の向きおよび角度と同じ向きおよび同じ角度となるように配置されている。
【0111】
さらに、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、内側伝熱コイル50id,50ia,50ibにおける各管体巻回部51iが最上流側の内側伝熱コイル50icにおける管体巻回部51iと同様に構成されている。また、各内側伝熱コイル50iは、上流側の内側伝熱コイル50iの管体巻回部51iにおける最下流側の「非重なり部」に対して、上流側の内側伝熱コイル50iの最下流側の環状部Roとその上流側の内側伝熱コイル50iの最上流側の環状部Roとの「非重なり部」が変位している向きおよび角度が、各管体巻回部51iにおける「非重なり部」の変位の向きおよび角度と同じ向きおよび同じ角度となるように配置されている。
【0112】
したがって、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、外側伝熱コイル50oaおよび内側伝熱コイル50idの部位から外側伝熱コイル50ocおよび内側伝熱コイル50ibの部位までブラインが到達するまで、上記したように外側伝熱コイル50obおよび内側伝熱コイル50icの部位をブラインが流動させられているときと同様にして、ブラインの流れに乱流が生じ、各環状部Ro
,Riに対してブラインが好適に当接する。このため、容器体40内をブラインが上向きに直進して各外側伝熱コイル50oや各内側伝熱コイル50iを素通りする事態、すなわち、下流側の各外側伝熱コイル50oおよび各内側伝熱コイル50iにおけるブラインと水素ガスとの熱交換効率が低下する事態が好適に回避される。
【0113】
また、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、各外側伝熱コイル50oの管体巻回部51oや各内側伝熱コイル50iの管体巻回部51iを貫通するようにして、容器体40の中心部に筒長方向に沿って増速用シャフト45が配設されている。したがって、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、熱交換処理空間S内に導入されて容器体40の筒長方向で上向き(
図2に示す矢印Aの向き)で移動させられるブラインが増速用シャフト45の位置まで到達したときに、ブラインの流路が増速用シャフト45の断面積の分だけ減少することで、その移動速度が上昇させられる。これにより、本例の水素ガス冷却用熱交換器30では、各外側伝熱コイル50oの管体巻回部51oや各内側伝熱コイル50iの管体巻回部51iの部位において単位時間当りに水素ガスと熱交換させられるブラインの量を十分に増加させることができ、これにより、水素ガスを一層好適に冷却することが可能となっている。
【0114】
一方、ブラインとの熱交換によって冷却された水素ガス(水素ガス流路L50a〜L50dを通過して水素ガス排出部47に到達した水素ガス)は、前述したように、水素ガス配管4cを介して給気対象Xに給気され、水素ガス冷却用熱交換器30において水素ガスを冷却することで温度上昇したブラインは、ブライン配管13dを介してブラインタンク12に回収される。この後、水素ガスの給気が完了したときには、水素ガス給気システム100の主制御装置から水素ガス冷却装置1の制御部16に給気終了信号が出力される。これに伴い、制御部16は、水素ガス冷却処理を終了し、液送ポンプ14bを制御して前述したブラインの循環処理を開始する(ブラインタンク12から水素ガス冷却用熱交換器30へのブラインの供給量を減少させる)と共に、ブラインタンク12内のブラインを規定温度範囲内に維持する前述した処理を継続する。
【0115】
このように、この水素ガス冷却用熱交換器30によれば、管体の巻回中心軸Oの軸線方向において連続する2つの環状部Ro,Ro(環状部Ri,Ri)の一方における一部が他方の環状部Ro(Ri)に対して軸線方向において重ならない「非重なり部」が少なくとも1箇所(本例では、8箇所)生じるように管体巻回部51o(51i)を構成すると共に、軸線方向が容器体40の筒長方向に沿うようにして容器体40内に外側伝熱コイル50o(50i)を収容したことにより、管体巻回部51o(51i)を構成する管体の巻回中心軸Oの軸線方向(容器体40の筒長方向)に沿って直進しようとするブラインが「非重なり部」に当接することで、この「非重なり部」内の水素ガスと好適に熱交換させることができるだけでなく、「非重なり部」に当接することでブラインの移動方向が軸線方向(筒長方向)から反らされて乱流が生じる結果、管体巻回部51o(51i)における最上流部の管体だけでなく、最上流部の管体よりも下流側の各管体に対してもブラインを好適に当接させることができ、管体巻回部51o(51i)内の水素ガスと好適に熱交換させることができるため、管体巻回部51o(51i)内の水素ガスと一層好適に熱交換させることができる。これにより、部品コストや組立てコストの高騰を招いたり、大きな「容器体」を必要としたりするプロペラ等を備えることなく、水素ガスとブラインとの熱交換効率を十分に向上させることができるため、その製造コストを十分に低減することができると共に、十分に小形化することができる。また、プロペラを回転させるためのモータ等が不要となるため、そのランニングコストも十分に低減することができる。
【0116】
また、この水素ガス冷却用熱交換器30では、各環状部Roの巻形が互いに等しい非正円形で、かつ各環状部Roにおける最大径部の巻径が互いに等しくなるように管体巻回部51oが構成されると共に、軸線方向に沿って見たときに、連続する2つの環状部Ro,Roの一方における最大径部の径方向に沿った仮想線と、連続する2つの環状部Ro,Roの他方における最大径部の径方向に沿った仮想線とが交差するように管体巻回部51oが構成されている。また、この水素ガス冷却用熱交換器30では、各環状部Riの巻形が互いに等しい非正円形で、かつ各環状部Riにおける最大径部の巻径が互いに等しくなるように管体巻回部51iが構成されると共に、軸線方向に沿って見たときに、連続する2つの環状部Ri,Riの一方における最大径部の径方向に沿った仮想線と、連続する2つの環状部Ri,Riの他方における最大径部の径方向に沿った仮想線とが交差するように管体巻回部51iが構成されている。したがって、この水素ガス冷却用熱交換器30によれば、巻形や巻径が相違する複数種類の「環状部」を製作して「非重なり部」を生じさせる構成とは異なり、同じ巻形で同じ巻径の環状部Roを形成することで管体巻回部51oを製作することができ、同じ巻形で同じ巻径の環状部Riを形成することで管体巻回部51iを製作することができるため、外側伝熱コイル50o(管体巻回部51o)および内側伝熱コイル50i(51i)の製造コストを一層低減することができる。
【0117】
さらに、この水素ガス冷却用熱交換器30によれば、N=16個の環状部Ro,Ro・・(Ri,Ri・・)を有すると共に、軸線方向に沿って見たときに、軸線方向の一方から他方に向かって「非重なり部」の位置が巻回中心軸Oを中心として同じ向きに同じ角度ずつ(本例では、反時計回りの向きに18°ずつ)変位するように管体巻回部51o(51i)を構成したことにより、「非重なり部」の変位の向きおよび角度を揃えない構成では、管体巻回部51o(内側伝熱コイル50i)の製作時における管体の折曲げ加工が煩雑となって製造コストが高騰するおそれがあり、また、ブラインの通過抵抗が過剰に大きくなってブラインの移動速度が低下し、これに起因してブラインと水素ガスとの熱交換効率がやや低下するおそれがあるのに対し、変位の向きおよび角度を揃えたことで、管体の折曲げ加工が容易となり、製造コストを十分に低減できると共に、ブラインの通過抵抗が過剰に大きくなる事態を好適に回避することができる。
【0118】
また、この水素ガス冷却用熱交換器30によれば、M=4本の水素ガス流路L50a〜L50d毎に外側伝熱コイル50o,51iをそれぞれ配設したことにより、水素ガスの流路を分岐させない構成とは異なり、水素ガスの流路を過剰に長くすることなくブラインと水素ガスとを十分に熱交換させることができ、かつ、水素ガスの流動抵抗が大きくなる事態を好適に回避することができ、しかも、水素ガスが水素ガス冷却用熱交換器30を通過するのに要する時間を充分に短縮することができる。
【0119】
さらに、この水素ガス冷却用熱交換器30では、軸線方向に沿って見たときに、容器体40内におけるブラインの移動方向の上流側に配置された外側伝熱コイル50o(50i)における最下流側の環状部Ro(Ri)と、上流側に配置された外側伝熱コイル50o(50i)の下流側に並んで配置された外側伝熱コイル50o(50i)における最上流側の環状部Ro(Ri)とが軸線方向において重ならない「非重なり部」が少なくとも1箇(本例では、8箇所)所生じ、かつ上流側に配置された外側伝熱コイル50o(50i)における最下流側の「非重なり部」に対して、上流側に配置された外側伝熱コイル50o(50i)における最下流側の環状部Ro(Ri)と下流側に並んで配置された外側伝熱コイル50o(50i)における最上流側の環状部Ro(Ri)との「非重なり部」が、巻回中心軸Oを中心として、各伝熱コイルの管体巻回部51o(51i)における「非重なり部」の変位の向きおよび変位の角度と同じ向きに同じ角度だけ変位するように配置されている。したがって、この水素ガス冷却用熱交換器30によれば、「非重なり部」の変位の向きおよび角度が、外側伝熱コイル50o(50i)内から、その下流側の外側伝熱コイル50o(50i)内まで一定となるため、ブラインの通過抵抗が過剰に大きくなる事態を好適に回避することができる。
【0120】
また、この水素ガス冷却用熱交換器30によれば、管体の巻回ピッチ、並びに「非重なり部」の変位の向きおよび角度が互いに等しくなるように管体巻回部51o,51iをそれぞれ構成すると共に、管体巻回部51o,51iにおける巻回中心軸Oが同一軸線上に位置するように外側伝熱コイル50oおよび内側伝熱コイル50iを容器体40内に収容したことにより、各「流路」毎に「外側伝熱コイル」および「内側伝熱コイル」のいずれか一方だけを配設した構成と比較して、熱交換処理空間Sにおける水素ガスの流路長が十分に長くなり、これにより、ブラインと水素ガスとの熱交換処理時間が十分に長くなるため、水素ガスとブラインとを一層好適に熱交換させることができると共に、管体の巻回ピッチ、並びに「非重なり部」の変位の向きおよび角度等を揃えない構成や、管体巻回部51o,51iの巻回中心軸O,Oを同一軸線上に位置させない構成とは異なり、ブラインの通過抵抗が過剰に大きくなる事態を好適に回避することができる。
【0121】
さらに、この水素ガス冷却用熱交換器30によれば、流路長が互いに等しくなるようにM=4本の水素ガス流路L50a〜L50dを構成したことにより、各水素ガスの流路の流路長が互いに相違する構成では、水素ガスが「流体合流部」に到達する時間に時間差が生じ、これに起因して、「熱交換器」からの水素ガスの単位時間当りの排出量に変化が生じるのに対し、水素ガス流路L50a〜L50dの流路長を等しくしたことで、水素ガスが各水素ガス流路L50a〜L50dを通過して水素ガス排出部47に到達するまでの時間が等しくなるため、水素ガス冷却用熱交換器30(水素ガス排出部47)から水素ガスが排出され始めてから排出が完了するまで、その排出量を一定に保つことができる。
【0122】
また、この水素ガス冷却用熱交換器30によれば、ブライン導入部43に「エゼクター」としての噴出ノズル43aを取り付けたことにより、攪拌用のプロペラや、プロペラを回転させるための動力源を備えることなく、熱交換処理空間S内にブラインを噴出させるだけで乱流を生じさせることができるため、製造コストやランニングコストの高騰を招くことなく、外側伝熱コイル50obの管体巻回部51oや内側伝熱コイル50icの管体巻回部51iの周囲をブラインが上向きに直進して管体巻回部51o,51iを素通りする事態を好適に回避することができ、これにより、外側伝熱コイル50obや内側伝熱コイル50icにおいてブラインと水素ガスとを好適に熱交換させることができる。
【0123】
さらに、この水素ガス冷却用熱交換器30では、「第1熱交換対象流体」としての水素ガスと、「第2熱交換対象流体」としての「熱媒液」の一例であるブラインとを相互に熱交換可能に構成されている。また、この水素ガス冷却装置1では、上記の水素ガス冷却用熱交換器30と、ブラインを冷却する冷凍回路11とを備え、冷凍回路11によって冷却されたブラインと水素ガスとを水素ガス冷却用熱交換器30内において相互に熱交換させることで水素ガスを冷却可能に構成されている。したがって、この水素ガス冷却用熱交換器30および水素ガス冷却装置1によれば、給気対象Xに対する水素ガスの給気コストを十分に低減することができる。
【0124】
なお、「熱交換器」および「水素ガス冷却装置」の構成は、上記の水素ガス冷却用熱交換器30および水素ガス冷却装置1の構成の例に限定されない。例えば、平面視略四角形状の環状部Roを有する管体巻回部51oを備えた外側伝熱コイル50o、および平面視略四角形状の環状部Riを有する管体巻回部51iを備えた内側伝熱コイル50iを備えた構成を例に挙げて説明したが、「環状部」の巻形は、上記の略四角形状に限定されず、任意の非正円形(一例として、三角形、五角形以上の任意の多角形、および楕円形など)とすることができる。また、軸線方向で連続する環状部Ro,Roや、軸線方向で連続する環状部Ri,Riにそれぞれ8箇所の「非重なり部」を生じさせた構成を例に挙げて説明したが、軸線方向で連続する「環状部」に生じさせる「非重なり部」の数は、これに限定されず、任意の数に規定することができる。
【0125】
さらに、外側伝熱コイル50oおよび内側伝熱コイル50iの2種類の「伝熱コイル」を容器体40内に配設した構成(「管体巻回部」を平面視二重環状に配置した構成)を例に挙げて説明したが、「外側伝熱コイル」および「内側伝熱コイル」のいずれか一方だけを配設した構成や、「外側伝熱コイル」および「内側伝熱コイル」の間に1つ以上の「伝熱コイル」を配設した構成(「管体巻回部」を平面視三重環状以上の環状に配置する構成)を採用することもできる。また、「容器体」内に収容する「伝熱コイル」の数は、上記の水素ガス冷却用熱交換器30の例(4つの外側伝熱コイル50oと、4つの内側伝熱コイル50iの合計8つ)に限定されず
、2つ以上の任意の複数個とすることができる。さらに、複数個の「伝熱コイル」を「容器体」内に収容する構成を採用する場合には、M=2本、またはM=3本の「流路」を有する構成や、M=5本以上の「流路」を有する構成を採用することもできる。
【0126】
また、容器体40における下方部位にブライン導入部43を配設すると共に容器体40における上方部位にブライン排出部44を配設することで容器体40内を下方から上方に向かってブラインを流動させる構成を例に挙げて説明したが、このような構成に代えて、「容器体」の上方から下方に向かって「第2熱交換対象流体(ブライン等)」を流動させる構成を採用することもできる(図示せず)。このような構成を採用する場合には、「伝熱コイル」における「管体巻回部」を下方から上方に向かって「第1熱交換対象流体(水素ガス等)」を流動させる構成を採用することにより、上記の水素ガス冷却用熱交換器30と同様にして、「第1熱交換対象流体」と「第2熱交換対象流体」とを対向する向きに流動させるのが好ましい。また、「第1熱交換対象流体」や「第2熱交換対象流体」が水平方向に移動するように「熱交換器」を横倒しにして使用する構成を採用することもできる(図示せず)。
【0127】
さらに、筒状部41および蓋部42b,42tで構成された「容器体本体」内に各外側伝熱コイル50oの管体巻回部51oや各内側伝熱コイル50iの管体巻回部51iと共に増速用シャフト45を収容した容器体40の構成を例に挙げて説明したが、増速用シャフト45を収容せずに「容器体」を構成することもできる。
【0128】
また、「一元冷凍回路」の一例である冷凍回路11によって「熱媒液」の一例であるブラインを冷却する構成を例に挙げて説明したが、第1冷凍回路(高温側冷凍回路)の蒸発器によって第2冷凍回路(低温側冷凍回路)の凝縮器を冷却することで第2冷凍回路の凝縮器において十分な量の冷媒を短時間で凝縮させると共に、第2冷凍回路の蒸発器によって「熱媒液」を冷却することで、水素ガスの冷却に適した十分に低い温度まで「熱媒液」の温度を低下させ得る「二元冷凍回路」を採用することもできる(図示せず)。
【0129】
さらに、「第1熱交換対象流体」の一例である水素ガスと、「第2熱交換対象流体」の一例である「熱媒液」としてのブラインとの熱交換によって水素ガスを冷却する水素ガス冷却装置1(水素ガス冷却用熱交換器30)を例に挙げて説明したが、「熱交換器」によって相互に熱交換さえる対処の流体は、水素ガスやブラインに限定されず、任意の気体や任意の液体を相互に熱交換させることができる。また、「熱交換器」の用途についても、任意の流体の冷却に限定されず、任意の流体を加熱することを目的として使用することもできる。
【解決手段】水素ガスが通過可能に管体が螺旋状に巻回されて環状部Ro01,Ro02・・(Ri01,Ri02・・)が形成された管体巻回部51o(51i)を有する伝熱コイル50ob(50ic)等と、ブラインが通過可能に筒状に形成されると共に伝熱コイル50ob(50ic)等が収容された容器体40とを備え、水素ガスとブラインとが容器体40内において熱交換可能に構成され、伝熱コイル50ob(50ic)等は、管体の巻回中心軸Oの軸線方向において連続する環状部Ro1,Ro02(Ri01,Ri02)の一方における一部が他方に対して軸線方向において重ならない非重なり部Poa(Pia)が生じるように管体巻回部51o(51i)が構成されると共に軸線方向が容器体40の筒長方向に沿うように容器体40内に収容されている。