特許第6182804号(P6182804)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6182804
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】地盤注入装置および地盤注入工法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   E02D3/12 101
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-143289(P2016-143289)
(22)【出願日】2016年7月21日
【審査請求日】2016年12月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509023447
【氏名又は名称】強化土株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000162652
【氏名又は名称】強化土エンジニヤリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591247798
【氏名又は名称】原工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】島田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】矢口 完洋
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−074720(JP,A)
【文献】 特許第4848553(JP,B2)
【文献】 特開2013−241779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に形成された削孔内のシールグラウト内に設置して孔壁周囲の地盤内に注入材を浸透注入するための注入管を備えてなる地盤注入装置において、前記注入管は、前記削孔内のシールグラウト内に設置された注入外管と当該注入外管内に設置された注入内管とを備え、前記注入外管は管軸方向に間隔をおいて複数の注入材吐出口を有する注入外管本体と、前記注入内管を通して注入された注入材の吐出圧によって前記注入材吐出口を開け、かつ前記注入材の注入が停止されると前記注入外管本体の外周面に密着して前記注入材吐出口を閉じるように取り付けられた逆止弁と、長尺なゴム製チューブからなり、前記注入材の噴射口となる複数の注入材噴射スリットを管軸方向に間隔をおいて有し、前記ゴム製チューブの張力に打ち克つ前記注入材の吐出圧によって前記注入材噴射スリットが開き、かつ前記注入材の注入が停止されると前記ゴム製チューブの張力によってゴム製チューブと注入外管本体の外周面との間の残存注入材が注入外管本体内に逆流することなく前記注入材噴射スリットが閉じると共に、前記注入外管本体および前記逆止弁の外周面に内周面全体が密着するように取り付けられたゴムスリットチューブと、前記ゴムスリットチューブの外周に注入外管本体の管軸方向に間隔をおいて取り付けられ、前記ゴムスリットチューブを管軸方向に複数の区間に区画する複数の固定具とを備えていることを特徴とする地盤注入装置。
【請求項2】
地盤に形成された削孔内のシールグラウト内に設置して孔壁周囲の地盤内に注入材を浸透注入するための注入管を備えてなる地盤注入装置において、前記注入管は、前記削孔内のシールグラウト内に設置された注入外管と当該注入外管内に設置された注入内管とを備え、前記注入外管は複数の一次注入材吐出口と二次注入材吐出口を管軸方向に間隔をおいて交互に有する注入外管本体と、前記注入内管を通して注入された一次注入材の吐出圧によって前記一次注入材吐出口を開け、かつ前記一次注入材の注入が停止されると前記注入外管本体の外周面に密着して前記一次注入材吐出口を閉じるように取り付けられた一次注入材逆止弁と、前記注入内管を通して注入された二次注入材の吐出圧によって前記二次注入材吐出口を開け、かつ前記二次注入材の注入が停止されると前記注入外管本体の外周面に密着して前記二次注入材吐出口を閉じるように取り付けられた二次注入材逆止弁と、長尺なゴム製チューブからなり、前記二次注入材の噴射口となる複数の注入材噴射スリットを管軸方向に間隔をおいて有し、前記ゴム製チューブの張力に打ち克つ前記二次注入材の吐出圧によって前記注入材噴射スリットが開き、かつ前記二次注入材の注入が停止されると前記ゴム製チューブの張力によって前記ゴム製チューブと注入外管本体の外周面との間の残存注入材が注入外管本体内に逆流することなく前記注入材噴射スリットが閉じると共に、前記注入外管本体および前記二次注入材逆止弁の外周面に内周面全体が密着するように取り付けられた複数のゴムスリットチューブと、前記ゴムスリットチューブの管軸方向の両端部に取り付けられ、前記ゴムスリットチューブの端部を注入外管本体の外周面に固定する複数の固定具を備えていることを特徴とする地盤注入装置。
【請求項3】
請求項2記載の地盤注入装置において、二次注入材吐出口は外管本体の管軸方向に間隔をおいて複数設けられ、かつ前記注入外管本体の外周面に密着して各二次注入材吐出口を閉じ、かつ注入内管を通して注入された二次注入材の吐出圧によって前記二次注入材吐出口を開けるように取り付けられた二次注入材逆止弁が取り付けられていることを特徴とする地盤注入装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかひとつに記載の地盤注入装置において、注入内管は、注入内管と外管本体との間に密閉空間を形成する一対のパッカーと、前記密閉空間に連通する吐出口を備えていることを特徴とする地盤注入装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかひとつに記載の地盤注入装置において、注入外管は前記削孔内に充填されたシールグラウト内に埋設されていることを特徴とする地盤注入装置。
【請求項6】
請求項1〜5いずれかひとつに記載の地盤注入装置において、ゴムスリットチューブの外周は透水性材料で覆われていることを特徴とする地盤注入装置。
【請求項7】
請求項1〜のいずれかひとつに記載の地盤注入装置において、複数の注入管は、各注入管のゴムスリットチューブが管軸方向の異なる位置に位置するように配置され、かつ互いに結束されていることを特徴する地盤注入装置。
【請求項8】
請求項1〜7に記載の地盤注入装置による地盤注入工法において、複数の注入地点に形成された各削孔内に注入管をそれぞれ設置して複数の注入地点に同時に、または一または複数の注入地点を選択して注入材を注入することを特徴とする地盤注入工法。
【請求項9】
請求項8記載の地盤注入工法において、注入材は1または複数に分割されたゴムスリットチューブから1または複数の注入ステージに同時に或いは選択的に注入することを特徴とする地盤注入工法。
【請求項10】
請求項8または9記載の地盤注入工法において、既存建物または既存構造物の周囲地盤より当該既存建物または既存構造物の下方の地盤中に削孔を形成し、当該削孔内に注入管を設置して前記既存建物の直下または既存構造物の直下の地盤中に注入材を注入することを特徴とする地盤注入工法。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれかひとつに記載の地盤注入工法において、注入管と孔壁との間隙にシールグラウトを充填することを特徴とする地盤注入工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地盤注入装置および地盤注入工法に関し、特に土粒子の不均質な地盤の止水性向上、強度増大、液状化防止、さらには空洞部の充填や地盤の浄化等を実施するのに適し、大きな吐出量の注入材を孔壁周囲の地盤内に低圧力で広範囲かつ均一に浸透注入できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
薬液注入による地盤改良工法は、地盤内に埋設した注入管を通してセメント系やシリカ系の地盤強化材、あるいは気泡やマイクロバブル等の地盤不飽和材、更には土壌浄化材等を注入して地盤を改良する方法であり、主に地盤の止水性向上、強度増大、液状化防止、さらには空洞部の充填や地盤の浄化等を目的に行われる。
【0003】
例えば、特許文献1には地盤に形成した削孔内に注入管を埋設し、当該注入管を通して地盤内にセメント系またはシリカ系の注入材を注入して地盤を固結強化する地盤改良工法が開示されている。
【0004】
当該地盤改良工法において、注入管は注入管本体と注入管本体の外周に形成された柱状浸透源より構成されている。詳しく説明すると、注入管本体の外周に複数の吐出口が管軸方向の一定範囲にわたり管軸方向に間隔をおいて設けられ、各吐出口にそれぞれ注入材の逆流を防止する逆止弁が取り付けられている。
【0005】
また、柱状浸透源は、織布や不織布、或いはマット等の一定の厚さを有するシート材を注入管本体の外周に吐出口と逆止弁を覆うように取り付け、さらにその上に透水性シートを取り付けることにより形成されている。
【0006】
このような構成された注入管は、削孔内に挿入されその周囲の空隙に低強度のセメントスラリー等からなるシールグラウトが充填されている。そして、地上より注入管本体内に注入された注入材は、注入管本体の各吐出口から柱状浸透源内に吐出され、当該柱状浸透源からシールグラウトを砕いて孔壁周囲の地盤内に浸透注入される。
【0007】
その際、特に吐出口より柱状浸透源内に吐出された注入材は、柱状浸透源の全体に広まり柱状浸透源から孔壁周囲の地盤内に浸透注入されることにより、大きな吐出量の注入材を低圧力で広範囲かつ均一に浸透注入させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4848553号公報
【特許文献2】特許第5870438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記した柱状浸透源は、注入管本体の外周に織布や不織布、或いはマット等の一定の厚さを有する透水性材料を取り付け、更にその外周を透水性シートで被覆することにより構成されていることから外径がかなり太くなるため、注入管を挿入するための削孔をかなり大きい径にする必要があり、コストが嵩む等の課題があった。
【0010】
また、外径が太いことにより曲がりにくく曲線形にボーリングされた削孔内への挿入は困難となり、このため既存の建物の地盤面下に挿入して地盤改良を行うことには不向きであった。
【0011】
さらに、柱状浸透源は織布や不織布、或いはマット等から形成されているため、特にセメントベントナイト等の懸濁型注入材を注入すると、柱状浸透源内の空隙が注入材で目詰まりを起して継続した注入ができなくなるおそれがあり、このため一次注入としてセメントベントナイト等の懸濁型注入材を注入した後、二次注入としての溶液型注入材の注入ができなくなる等の課題があった。
【0012】
さらに、浸透性が良くゲル化時間の長い溶液型注入材を注入すると、孔壁やシールグラウトの強度の弱い部分に注入材が集中しやすく、このため柱状浸透源全体から孔壁周囲の地盤内に注入材が均等に注入されにくいという傾向があった。
【0013】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、特に土粒子の不均質な地盤の止水性向上、強度増大、液状化防止、さらには空洞部の充填や地盤の浄化等を行うのに適し、また注入管の外径を小さくできるために曲線形にボーリングされた削孔内に容易に挿入できるため、小さな削孔径による経済的施工が可能になり、大きな吐出量の注入材を孔壁周囲の地盤中に低圧力で広範囲かつ均一に浸透注入できるようにした地盤注入装置および地盤注入工法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、セメントベントナイト等の懸濁型注入材、または懸濁型注入材を一次注入し、その後から溶液型注入材を二次注入する地盤改良工法を実施するのに適した注入管を備えた地盤注入装置の発明であり、注入管は注入材吐出口と当該注入材吐出口を密閉する逆止弁と柱状浸透源を形成するゴムスリットチューブを備えている。
【0015】
土粒子の不均質な地盤の場合、注入材を大きな柱状浸透源から地盤内に注入すると、注入材は土粒子や透水性の大きな層から逸走しやすい。また、逆止弁を備えた注入材吐出口から地盤内に注入材を注入し、その注入速度を大きくした場合も注入材は逸走しやすく、注入材に大量の無駄が生じて施工能率が低下するという課題がある。
【0016】
しかし、土粒子の不均質な地盤に対してセメントベントナイト等の懸濁型注入材の一次注入により粗詰め注入を行って均質な地盤に改良した後から、大きな柱状浸透源から溶液型注入材の二次注入(土粒子間浸透)を実施することにより、二次注入材を広範囲かつ均質に浸透注入させることができる。また、注入材を大きな柱状浸透源から注入することにより、低圧で大きな吐出速度で注入することができて急速浸透注入が可能になり施工能率が大幅に向上し、また注入材の逸走による無駄をなくすることができる。
【0017】
本発明は、このよう考え方のもとになされたものであり、特に土粒子の不均質な地盤対しては、複数の注入材吐出口と当該注入材吐出口を密閉する逆止弁と柱状浸透源を形成するゴムスリットチューブを備えた注入管によって懸濁型注入材と溶液型注入材の注入を実施することにより、土粒子の不均質な地盤に対しても広範囲かつ均質な急速浸透注入の実現を可能にしたものである。
【0018】
逆止弁にはゴム製チューブを用いることができ、またゴムスリットチューブには逆止弁より管軸方向に長くかつ外周に円周方向に長い複数の注入材噴射スリットを管軸方向に間隔をおいて有する長尺なゴム製チューブを用いる。いずれもゴムの円周方向の強力な張力によって注入管の外周面に密着することにより注入管の注入材吐出口とゴムスリットチューブの注入材噴射スリットを密閉する。
【0019】
また、ゴムスリットチューブによって注入管の外周に管軸方向に長い柱状浸透源を形成し、ゴムスリットチューブの長さを調整することにより地層の深さに応じた最適な長さの柱状浸透源を容易に形成することができる。
【0020】
注入材噴射スリットは、注入管の円周方向に長く(管軸方向に対して直角方向に)形成し、かつ管軸方向に沿って配列するのが好ましい(図1(a),(b)参照)。
【0021】
このように形成することにより、注入後においてもゴムスリットチューブの円周方向の張力の低下を防止することができ、また、注入管と孔壁との間隙内にシールグラウト(低強度の固結体)が充填されている場合に、注入材が管軸方向に所定長に設置された複数のスリットに沿って集中して噴出することにより、管軸方向の全長に連続した亀裂をシールグラウトに形成しその亀裂を柱状浸透源として孔壁周囲の地盤内に注入材を浸透注入させることができる。
【0022】
また、ゴムスリットチューブの管軸方向の上下両端部は、注入管の外周に固定バンドや固定紐などの固定具または接着材によって密閉状態に固定することで、ゴムスリットチューブと注入管との間に吐出した注入材がゴムスリットチューブの上下両端部から漏出する事態を防止することができ、これによりゴムスリットチューブの張力に打ち克つ注入圧を保つ柱状浸透源を形成することができる。
【0023】
また、ゴムスリットチューブは、当該チューブの横断面の接線方向にゴムチューブの強力な張力が全長にわたって生ずるように、ゴムスリットチューブの内周面がゴムの強力な張力によって注入管の外周面に密着すると共に注入材噴射スリットを密閉する。
【0024】
一方、注入管に送液された注入材は、複数の注入材吐出口よりその吐出圧によって逆止弁およびゴムスリットチューブの張力に打ち克って、逆止弁およびゴムスリットチューブを押し広げてゴムスリットチューブと注入管との間に吐出すると共に、ゴムスリットチューブと注入管との間を注入管の管軸方向および円周方向に隙間を確保しながらゴムスリットチューブの各注入材噴射スリットまで圧送される。
【0025】
そして、注入材は各注入材噴射スリットからゴムスリットチューブの外に管軸方向に沿ってゴムスリットチューブの大きな張力に打ち克った液圧をもって孔壁の軸方向全長に噴出して柱状浸透注入する。
【0026】
また、注入管と孔壁との間にシールグラウトが充填してあれば、注入材はその噴射圧によって固化したシールグラウトを管軸方向にキレツを形成する等して破壊し、当該キレツより孔壁周囲の地盤内に柱状浸透する。
【0027】
この場合、特に外管本体の吐出口より吐出された注入材は、円筒状の逆止弁の上下からゴムスリットチューブと外管本体との境界面に沿って上下方向に高圧噴射されることで、各区間のゴムスリットチューブと外管本体間の全長を液送して各噴射スリットからシールグラウト内に水平方向に高圧噴射され、かつシールグラウトを砕いて孔壁周囲の地盤内に柱状にかつ均等に浸透注入される(図2(d)参照)。
【0028】
逆止弁が無いと、外管本体の吐出口6aより吐出された注入材は、吐出口近傍の噴射スリットからのみ孔壁周囲の地盤内に注入され、ゴムスリットチューブ全長の各噴射スリットから孔壁周囲の地盤内に均等に浸透注入されない。
【0029】
一方、注入管への送液を停止すると同時にゴムスリットチューブの内周面全体がその強力な張力によって注入管の外周面に強く密着すると同時に注入材吐出口と注入材噴射スリットを閉じることにより注入管とゴムスリットチューブとの間に注入材が滞ることも削孔内に噴射された注入材が注入管内に逆流することはない。
【0030】
特に、ゴムスリットチューブは、ゴムの強力な張力が作用した薄い筒状シート全面で注入管の外周面に強く密着することにより、注入管の外周面の全面において逆止弁の効果が生じているため、特許文献1開示された織布や不織布などからなる柱状浸透源のように懸濁液型注入材などの注入材が目詰まりすることがない。
【0031】
また、同様の理由により懸濁型注入材の注入後もゴムスリットチューブによって外部からの注入材の逆流を防ぐため、逆止弁の効果がチューブ全体に機能し、懸濁型注入材の再注入、或いは懸濁型注入材を注入後、溶液型注入材を注入することもできる。
【0032】
特に、溶液型注入材はいうまでもなく、懸濁型注入材を所定量注入した段階で注入を停止すると、ゴムスリットチューブと注入管との間に残存する注入材は、ゴムスリットチューブがゴムの強力な張力によって注入管の外周面によく密着することにより、注入材スリットから外部に押し出されてしまうため、ゴムスリットチューブと注入管との間に懸濁液やゲルが残存し固化してその後の再注入を妨げることはないし、逆止効果を妨げることはない。
【0033】
例えば、図1に図示する注入管を備えた地盤注入装置は、セメントベントナイト等の懸濁型注入材を繰り返し継続して注入する場合などに適し、また、図2に図示する注入管を備えた地盤注入装置は、土粒子の不均質な地盤にセメントベントナイト等の懸濁型注入材を一次注入し、その後から溶液型注入材を二次注入する場合に適している。そして、図3に図示する注入管を備えた地盤注入装置は、地盤条件に合わせてこれらを組み合わせて注入する場合に適している。
【0034】
本発明は、地盤に形成された削孔内に設置して孔壁周囲の地盤内に注入材を浸透注入するための注入管を備えてなる地盤注入装置の発明であり、請求項1の発明における注入管は、地盤に形成された削孔内に設置して孔壁周囲の地盤内に注入材を浸透注入するための注入管を備えてなる地盤注入装置において、前記注入管は、前記削孔内に設置された注入外管と当該注入外管内に設置された注入内管とを備え、前記注入外管は管軸方向に間隔をおいて複数の注入材吐出口を有する注入外管本体と、前記注入外管本体の外周面に密着して前記注入材吐出口を密閉し、かつ前記注入内管を通して注入された注入材の吐出圧によって前記注入材吐出口を開けるように取り付けられた逆止弁と、前記注入材の噴射口となる複数の注入材噴射スリットを管軸方向に間隔をおいて有し、前記注入外管本体および前記逆止弁の外周面に密着し、かつ前記注入材の吐出圧によって前記注入材噴射スリットが開くように取り付けられたゴムスリットチューブと、前記ゴムスリットチューブの外周に注入外管本体の管軸方向に間隔をおいて取り付けられ、前記ゴムスリットチューブを管軸方向に複数の区間に区画する複数の固定具とを備えてなることを特徴とするものである。
【0035】
本発明において注入材吐出口がゴムスリットチューブで閉ざされていても、逆止弁が無いと、セメントベントナイト等の懸濁型注入材を長時間継続して注入したり、注入と中断を長時間繰り返すと、ゴムスリットチューブと注入管との間に懸濁型注入材が滞って詰りやすくなり、ゴムスリットチューブの逆止弁効果が不完全になり、その後に実施する溶液型注入材の柱状浸透が困難になることがわかった。
【0036】
しかし、注入管の吐出口を有する位置に円筒状のゴム製逆止弁を取り付け、その上にゴムスリットチューブを重ねて取り付けることにより注入材の逆止効果が著しく向上して、ゴムスリットチューブと注入管との間に懸濁型注入材が滞りにくいことを見出した。
【0037】
本発明(図1-3)は、懸濁型グラウトの柱状注入に適し、ベントナイト等の懸濁型注入材または溶液型注入材を長時間継続して注入したり、あるいは注入と中断を長時間繰り返すことができる。
【0038】
請求項2の発明における注入管は、地盤に形成された削孔内に設置して孔壁周囲の地盤内に注入材を浸透注入するための注入管を備えてなる地盤注入装置において、前記注入管は、前記削孔内に設置された注入外管と当該注入外管内に設置された注入内管とを備え、前記注入外管は複数の一次注入材吐出口と二次注入材吐出口を管軸方向に間隔をおいて交互に有する注入外管本体と、前記注入外管本体の外周面に密着して前記一次注入材吐出口を閉じ、かつ前記注入内管を通して注入された一次注入材の吐出圧によって前記一次注入材吐出口を開けるように取り付けられた一次注入材逆止弁と、前記注入外管本体の外周面に密着して前記二次注入材吐出口を閉じ、かつ前記注入内管を通して注入された二次注入材の吐出圧によって前記二次注入材吐出口を開けるように取り付けられた二次注入材逆止弁と、前記二次注入材の噴射口となる複数の注入材噴射スリットを管軸方向に間隔をおいて有し、前記注入外管本体および前記二次注入材逆止弁の外周面に密着し、かつ前記二次注入材の吐出圧によって前記注入材噴射スリットが開くように取り付けられた複数のゴムスリットチューブと、前記ゴムスリットチューブの管軸方向の両端部に取り付けられ、前記ゴムスリットチューブの端部を注入外管本体の外周面に固定する複数の固定具を備えてなることを特徴とするものである。
【0039】
ゴムスリットチューブがかなり長い場合は、二次注入材吐出口は外管本体の管軸方向に間隔をおいて複数設け、当該各二次注入材吐出口を有する位置に二次注入材逆止弁を外管本体の外周面に密着して各二次注入材吐出口を閉じ、かつ注入内管を通して注入された二次注入材の吐出圧によって前記二次注入材吐出口を開けるように取り付けるのが望ましい(図7(a)〜(c)参照)。
【0040】
一次注入材とはセメントベントナイト等の懸濁型注入であり、二次注入材とは溶液型注入材をいう。
【0041】
本発明(図4-7)は、特に土粒子の不均質な地盤の地盤改良に適し、セメントベントナイト等の懸濁型グラウト材によって粗詰め注入(一次注入)を行って地盤を均質にしたうえで、溶液型注入材を大きな柱状浸透源(ゴムスリットチューブ)から土粒子間浸透(二次注入)を行うことにより、二次注入材を広範囲かつ均質に浸透注入させることができる。また、注入材を大きな柱状浸透源から注入することにより、低圧でも大きな吐出速度で注入することができて急速浸透注入が可能になり施工能率が向上する。
【0042】
一般に地盤は、粒土や透水性の異なる層から成り立っていて、その性質の違いは原地盤強度や透水性において不均質な状態を構成している。このような地盤に対しては、まずセメントベントナイトのような経済的で強度の高い注入材を一次注入して水みちや空隙の粗詰めを行って地盤を均質化することにより、その後に実施する二次注入材の逸走を防止するこができ、また、地下水による希釈化を防止することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明は、特に土粒子の不均質な地盤対して逆止弁を有する注入材吐出口とゴムスリットチューブを有する注入材吐出口を備えた注入管を備えた注入管を備えた地盤注入装置によって地盤注入を実施することにより広範囲かつ均質な浸透注入、急速浸透注入を行うことができる。
【0044】
また、ゴムスリットチューブの全長にわたって同時に柱状浸透注入させることができ、このため注入材を大きな吐出量でかつ低圧力で土粒子間浸透することができるため急速施工による経済性と土粒子間浸透による高品質の施工という相反する効果を得ることができ、さらに小径の簡単な構造の注入管を用いることにより削孔径を小さくすることができ、注入管の製造も削孔も経済的な地盤改良が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の一実施形態の地盤注入装置が備える注入管を図示したものであり、図1(a)はその一部を破断した側面図、図1(b)はその一部拡大図である。
図2図1に図示する注入管において、注入外管内に注入内管が設置された際の注入内管先端部の構造を図示したものであり、図2(a)はその一部縦断面図、図2(b),(c)はそれぞれ図1(a)におけるイ−イ線、ロ−ロ線横断面図、図2(d)は注入内管の先端部における注入材の流れを示す拡大断面図である。
図3】注入外管と注入内管の変形例を図示したものであり、図3(a)はその一部縦断面図、図3(b)は図3(a)におけるハ−ハ線横断面図、図3(c)は注入内管の先端部における注入材の流れを示す拡大縦断面図である。
図4】本発明の他の実施形態の地盤注入装置が備える注入管を図示したものであり、図4(a)はその側面図、図4(b),(c)はその一部拡大縦断面図である。
図5図4に図示する注入管において、注入外管内に懸濁型注入材注入内管が設置された際の注入内管先端部を図示したものであり、図5(a)はその一部縦断面図、図5(b)は図5(a)におけるニ−ニ線横断面図である。
図6図4に図示する注入管において、注入外管内に溶液型注入材注入内管が設置された際の注入内管の先端部を図示したものであり、図6(a)はその一部縦断面図、図6(b)は図6(a)におけるホ−ホ線横断面図、図6(c)は注入内管の先端部における注入材の流れを示す拡大縦断面図である。
図7】注入外管と注入内管の変形例を図示したものであり、図7(a)はその一部縦断面図、図7(b)は図7(a)におけるヘ−ヘ線横断面図、図7(c)は注入内管の先端部における注入材の流れを示す拡大縦断面図である。
図8】本発明の地盤注入装置が備える注入管であり、図8(a)は複数の注入管を束ねて結束注入管として削孔内に設置された姿態を示す側面図、図8(b)は複数の注入管を芯材に束ねて結束注入管として削孔内に設置された姿態を示す側面図である。
図9】本発明の地盤注入装置が備える注入管であり、複数地点の地盤内に注入材を同時に、或いは、一または複数地点に同時にまたは選択して注入可能に配置された注入管の概要図である。
図10】本発明の地盤注入装置の概要を図示したものであり、注入材を複数地点の地盤内に同時に、或いは一または複数地点に同時にまたは選択して、さらには連続して注入可能に構成された地盤注入装置の概要図である。
図11】本発明の地盤注入装置の概要を図示したものであり、注入材を複数地点の地盤内に同時に、或いは一または複数地点に同時にまたは選択して注入可能に構成された地盤注入装置の概要図である。
図12】本発明の地盤注入装置の概要を図示したものであり、既存構造物直下の地盤内に注入材を注入する方法を図示したものであり、図12(a),(b),(c)は側面図、図12(d)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1,2は、本発明の一実施形態の地盤注入装置が備える注入管を図示したものであり、特にセメントベントナイト等の懸濁型注入材を地盤内に継続して浸透注入する場合や継続して繰り返し浸透注入する場合などに適している。
【0047】
詳細について説明すると、注入管1は注入外管2と注入内管3を備え、送液管(図省略)を介して注入材供給プラント(図省略)に接続されている。
【0048】
注入外管2は地盤に形成された削孔4内に設置され、注入内管3は注入外管2内に設置されている。また、削孔4の孔壁と注入外管2との間隙にシールグラウト5が充填されている。
【0049】
注入外管2は、注入外管本体(以下「外管本体」)6と当該外管本体6の外周に装着された逆止弁7およびゴムスリットチューブ8からなる。外管本体6は鋼管、硬質塩ビ管、または軟質プラスチック製細管やナイロン製細管、或いは生分解性プラスチック管などから変形自在に形成され、逆止弁7とゴムスリットチューブ8はゴムチューブから形成されている。
【0050】
外管本体6の周壁に複数の注入材吐出口(以下「吐出口」)6aが形成され、外管本体6の先端部は閉ざされている。吐出口6aは、外管本体6の管軸方向に複数区間に区画された各区間L1、L2、…内の中間部に複数の吐出口6aが周方向に間隔をおいて一または複数列に形成されている。実施形態では、各区間L1、L2、…内のほぼ中間部に複数の吐出口6aが周方向に間隔をおいて一列に形成されている(図1(b)参照)。
【0051】
逆止弁7はゴムチューブから形成され、外管本体6の各区間L1、L2、…内の吐出口6aを有する位置に装着され、ゴムの強力な張力によって外管本体6の外周面に強く密着することにより各吐出口6aを密閉している。
【0052】
ゴムスリットチューブ8は、外管本体6の全長に連続して装着され、ゴムの強力な張力によって外管本体6および逆止弁7の外周面に強く密着している。
【0053】
また、各区間L1、L2、…間に取り付けられた固定具9によって外管本体6の外周面に各区間L1、L2、…を仕切るように固着され、これにより各区間L1、L2、…は、独立した柱状浸透源を形成し、各区間L1、L2、…の間で注入材が相互に流れ込まないようになっている。
【0054】
また、ゴムスリットチューブ8には各区間L1、L2、…ごとに周方向に長い複数の注入材噴射スリット(以下「噴射スリット」)8aが管軸方向および周方向に間隔をおいて形成されている。当該材噴射スリット8aは、ゴムスリットチューブ8の特に周方向の強力な張力によって外管本体6および逆止弁7の外周面に強く密着することにより密閉されている。
【0055】
以上の構成により、固定具9によって仕切られた各区間L1、L2、…は、独立した柱状浸透源を形成している。なお、固定具9には金属製、革製または樹脂製の拘束バンド等が用いられている。
【0056】
注入内管3は、先端部に管軸方向に一定の間隔をいて取付けられた一対の膨縮パッカー3a,3aと当該膨縮パッカー3a,3a間に形成された一または複数の注入材吐出口(以下「吐出口」)3bを備えている(図2(a),(d)参照)。
【0057】
膨縮パッカー3a,3aは、注入内管3の外周にゴムチューブ等を環状に取り付け、かつ地上から別途送液管(図省略)を介してエアまたは液体を封入することにより吐出口3bの上下両側部において膨張することにより、外管本体6と注入内管3との間隙に密閉空間10を形成するように構成されている。また、膨縮パッカー3a,3aは中のエアまたは液体を抜くことにより収縮し、これにより注入内管3は外管本体6内を自由に上下移動できるように構成されている。
【0058】
シールグラウト5は、削孔4内で固化することにより注入外管2を削孔4内に固定すると共に、削孔4の孔壁崩壊を防止し、さらに吐出口6aを通って噴射スリット8aから削孔4内に高圧噴射された注入材が注入外管2の管軸方向に逸走するのを防止する働きをするものである。
【0059】
なお、シールグラウト5には固化しても注入材の吐出圧で容易に砕けるような低強度のセメントモルタルやベントナイト、或いは低アルカリ性セメント、石灰、石膏などが用いられている。
【0060】
このような構成において、削孔4の孔壁周囲の地盤内にセメントベントナイト等の懸濁型注入材を浸透注入する方法について説明する。
【0061】
(1) 最初に、注入外管2内に注入内管3を挿入し、先端の吐出口3bが外管本体6の区間L1、L2、…の一区間内の吐出口6aと対向する位置にセットする。
【0062】
(2) 次に、地上より別途注入管を介して膨縮パッカー3a,3a内にエアまたは液体を封入して膨張させることにより、外管本体6と注入内管3間の間隙を密閉して密閉空間10を形成する(図2(a),(d)参照)。
【0063】
(3) 次に、地上より注入内管3に懸濁型注入材を高圧注入することにより、削孔4の孔壁周囲の一定範囲の地盤内に懸濁型注入材を浸透注入する。この場合、注入内管3に注入された懸濁型注入材は、吐出口3bから密閉空間10を通り、かつ逆止弁7を注入材の吐出圧によって押しのけて吐出口6aを開け、当該吐出口6aから外管本体6とゴムスリットチューブ8との間に吐出される(図2(a),(d)参照)。
【0064】
そして、注入材は、吐出圧によってゴムスリットチューブ8を押し広げながら、外管本体6とゴムスリットチューブ8間を外管本体6の管軸方向および円周方向に流れ、かつ複数の噴射スリット8aを押し拡げ、当該噴射スリット8aから外管本体6の外に高圧噴射される(図2(a)〜(c)参照)。
【0065】
この場合、特に外管本体6の吐出口6aより吐出された注入材は、円筒状の逆止弁7の上下からゴムスリットチューブ8と外管本体6との境界面に沿って上下方向に高圧噴射されるが、ゴムスリットチューブ8の上下両端部が外管本体6の外周面に固定具9によって密閉された状態で固定されているため、注入材はゴムスリットチューブ8と外管本体6との間で加圧力を保持したまま、各区間のゴムスリットチューブ8と外管本体6間の全長に液送されるため、ゴムスリットチューブ全長の各噴射スリット8aからシールグラウト5に向けて水平方向に高圧噴射され、かつシールグラウト5を砕いて孔壁周囲の地盤内に柱状にかつ均等に浸透注入される(図2(c)参照)。
【0066】
上記において、固定金具9がなければ、注入材はゴムスリットチューブ8の上下両端部から逸脱してしまうため、注入材がゴムスリットチューブ8の全長
から同時に水平方向に地盤中に噴射されることはない。
【0067】
逆止弁7が無いと、外管本体6の吐出口6aより吐出された注入材は、吐出口6a近傍の噴射スリット8aからのみ孔壁周囲の地盤内に注入され、ゴムスリットチューブ8全長の各噴射スリット8aから孔壁周囲の地盤内に均等に浸透注入されない。
【0068】
また、外管本体6の外に高圧噴射された注入材は、その強力な噴射圧によって固化したシールグラウト5を砕きながら孔壁4の孔壁側に浸透し、孔壁周囲の一定範囲の地盤内に浸透注入される。さらに、注入内管3を昇降させて注入ステージを変え、各区間L1、L2、…ごとに孔壁周囲の地盤内に注入材を浸透注入することができる。
【0069】
注入内管3からの高圧注入を停止すると、逆止弁7とゴムスリットチューブ8が共にゴムの特にチューブ周方向の強力な張力によって外管本体6の外周面に強く密着することにより、外管本体6と逆止弁7間および外管本体6とゴムスリットチューブ8間の注入材は、全て噴射スリット8aから外管本体6の外に高圧噴射され、また、注入外管本体6内への逆流が完全に阻止される。
【0070】
このため、外管本体6と逆止弁7間、外管本体6とゴムスリットチューブ8間、および注入材噴射スリット8a内に注入材が残って固化するようなことはないため、注入と中断を繰り返したり、継続して浸透注入することも何ら問題なく行うことができる。
【0071】
なお、ゴムスリットチューブ8の各柱状浸透区間L1、L2、…の区間長が長い場合は、各区間L1、L2、…内の吐出口6aは管軸方向に間隔をおいて複数形成し、各吐出口6aに逆止弁7を取り付けることもある(図3(a)〜(c)参照)。
【0072】
また、注入内管3の膨縮パッカー6a,6aは、ゴムスリットチューブ8の区間L1、L2、…の区間長に合わせて管軸方向に一定長の間隔を開けて取り付けられ、吐出口3bは管軸方向および周方向に間隔をおいて複数形成されている(図3(a)〜(c)参照)。
【0073】
図4〜6は、本発明の他の実施形態の地盤注入装置が備える注入管を図示したものであり、特に土粒子や透水性の不均質な地盤内に注入材を浸透注入させる場合に適している。
【0074】
詳細について説明すると、注入管1は注入外管2と注入内管3を備え、注入材供給プラント(図省略)に送液管(図省略)を介して接続されている。
【0075】
注入外管2は地盤に形成された削孔4内に設置され、注入内管3は注入外管2内に設置されている。また、削孔4の孔壁と注入外管2との間隙にシールグラウト5が充填されている。
【0076】
注入外管2は、外管本体6と外管本体6の外周に装着された一次注入材逆止弁(以下「逆止弁」) 7aおよび二次注入材逆止弁(以下「逆止弁」) 7bとゴムスリットチューブ8を備えている。外管本体6は鋼管、硬質塩ビ管、または軟質プラスチック製細管やナイロン製細管、或いは生分解性プラスチック管などから変形自在に形成され、逆止弁7aおよび7bとゴムスリットチューブ8はゴムチューブから形成されている。
【0077】
外管本体6の周壁に複数の一次注入材吐出口(以下「吐出口」)11aと二次注入材吐出口(以下「吐出口」)11bが形成され、外管本体6の先端部は閉ざされている。吐出口11aは各区間L1、L2、…間に周方向に間隔をおいて複数形成されている(図4(a),(c)参照)。また、吐出口11bは外管本体6の管軸方向に複数に区画された各区間L1、L2、…内のほぼ中央に周方向に間隔をおいて複数形成され(図4(a),(b)参照)、
逆止弁7aおよび逆止弁7bはゴムチューブから形成され、外管本体6の吐出口11aと吐出口11bを有する位置にそれぞれゴムの強力な張力によって外管本体6の外周面に強く密着することで吐出口11aと11bを密閉するように装着されている。
【0078】
ゴムスリットチューブ8は、逆止弁7bより長いゴムチューブより形成されている。各ゴムスリットチューブ8には、周方向に長い複数の注入材噴射スリット8aが管軸方向および周方向に間隔をおいて形成され、外管本体6の各区間L1、L2、…に外管本体6の外周面および逆止弁7bの外周面にゴムの強力な張力によって密着することにより吐出口11bおよび噴射スリット8aを密閉するように装着されている。
【0079】
また、各ゴムスリットチューブ8の管軸方向の両端部は、固定具9によって注入材が流出しないように外管本体6の外周面に固着され、これにより各区間L1、L2、…のゴムスリットチューブ8は、管軸方向に長い柱状浸透源を形成している。注入内管3は、図1図3で説明した注入内管とほぼ同一構造に構成されている。
【0080】
なお、ゴムスリットチューブ8の各柱状浸透区間L1、L2、…の区間長が長い場合は、各区間L1、L2、…内の吐出口11bは管軸方向に間隔をおいて複数形成し、各吐出口11bに逆止弁7bを取り付けることもある(図7(a)〜(c)参照)。
【0081】
また、注入内管3の膨縮パッカー6a,6aは、ゴムスリットチューブ8の区間L1、L2、…の区間長に合わせて管軸方向に一定長の間隔を開けて取り付け、吐出口3bは管軸方向および周方向に間隔をおいて複数形成する(図7(a)〜(c)参照)。
【0082】
このような構成において、次に、削孔4の孔壁周囲の地盤内に注入材を注入する方法について説明する。
【0083】
(1) 最初に、注入外管2内に注入内管3を挿入し、先端の吐出口3bを外管本体6の柱状浸透区間L1、L2、…間の一区間内の吐出口11aの位置にセットする(図5(a)参照)。
【0084】
(2) 次に、上下膨縮パッカー3a,3aに別途注入管を通して地上よりエアまたは液体を封入して膨張させることにより、外管本体6と注入内管3間の間隙を密閉して密閉空間10を形成する。
【0085】
(3) 次に、地上より注入内管3を通して地盤内に懸濁型注入材を高圧注入(粗詰め注入)して、削孔4の孔壁周囲の一定範囲の地盤を均質化する。この場合、注入内管3に高圧注入された一次注入材は、吐出口3aから外管本体6と注入内管3間の密閉空間10を通り、逆止弁7aを注入材の吐出圧によって押しのけて吐出口11aを開け、当該吐出口11aから外管本体6の外に吐出される。
【0086】
そして、注入材の吐出圧によって固化したシールグラウト5を砕きながら孔壁周囲の地盤内に浸透し、孔壁周囲の一定範囲の地盤内に浸透注入される。こうして、一区間の粗詰め注入が完了したら注入内管3を昇降させて注入ステージを移動して地盤全体について粗詰め注入を実施して地盤全体を均質化する。
【0087】
なお、注入内管3への高圧注入を停止すると、逆止弁7aがゴムの強力な張力によって外管本体6の外周面に強く密着することにより、外管本体6と逆止弁7a間の注入材は全て、外管本体6の外に押し出されて外管本体6と逆止弁7aとの間に滞留することはない。
【0088】
このため、外管本体6と逆止弁7aとの間に懸濁型注入材が残って固化し、逆止弁7の機能が低下することはないので、懸濁型注入材を継続して注入したり、中断と注入を繰り返しながら注入することも何ら問題なく行うことができる。
【0089】
(4) 全ステージの粗詰め注入が完了したら、次に、外管本体6内に再度注入内管3を挿入し、先端の上下膨縮パッカー3a,3a間を外管本体6の各区間L1、L2、…の一区間内にセットする(図6参照)。
【0090】
(5) 次に、地上より上下膨縮パッカー3a,3a内に別途注入管を通してエアまたは液体封入することによりを膨張させて吐出口3bの上下両側の外管本体6と注入内管3間の間隙を密閉して密閉空間10を形成する。
【0091】
(6) 次に、地上より注入内管3を介して地盤内に溶液型注入材を高圧注入することにより、孔壁周囲の地盤内に二次注入材を浸透注入することができる。
【0092】
この場合、注入内管3に注入された注入材は、吐出口3bから密閉空間10を通り、かつ注入材の吐出圧によってゴムスリットチューブ8を押しのけて吐出口11bから外管本体6とゴムスリットチューブ8との間に吐出される。そして、外管本体6とゴムスリットチューブ8間を外管本体6の管軸方向および円周方向に流れ、かつ注入材噴射スリット8aから外管本体6の外に高圧噴射される。
【0093】
そして、注入材の吐出圧によって固化したシールグラウト5を砕きながら孔壁4の孔壁側に浸透し、孔壁周囲の一定範囲の地盤内に浸透注入される。
【0094】
こうして、一区間の注入が完了したら注入内管3を昇降させて注入ステージを移動しながら地盤全体について溶液型注入材の浸透注入を行うことができる。
【0095】
なお、注入内管3からの高圧注入を停止すると、ゴムスリットチューブ8がゴムの強力な張力によって外管本体6の外周に強く密着することにより、外管本体6とゴムスリットチューブ8間の注入材を全て、外管本体6の外に高圧噴射され、外管本体6とゴムスリットチューブ8との間に滞留することはない。
【0096】
このため、外管本体6とゴムスリットチューブ8との間に二次注入材が残って固化するようなことはないので、ゴムスリットチューブ8の機能が低下することはない。また、中断と注入を繰り返しながら継続して注入することも、継続して浸透注入することも何ら問題なく行うことができる。
【0097】
図8(a),(b)は、図1図7で説明した地盤注入装置の注入管を一地点の削孔内に複数本設置して地盤注入を実施する例を図示したものである。
【0098】
図示するように一地点の削孔4内に複数の注入管1が挿入されている。各注入管1は、特に、先端部の一定長が図1〜7で説明したような構造に構成され(以下、「柱状浸透区間L」)、かつ先端部の柱状浸透区間Lを管軸方向にずらし、固定具12よって互いに結束されている。
【0099】
なお、各注入管1,1間にシールグラウト5が充填されやすいように隙間が設けられている。また、シールグラウトの代わりに砂などの透水性材料が充填されてもよい。してもよい。
【0100】
図8(b)は、注入管1に補強用の芯材(支持棒)13を抱き合わせて注入管1を補強した例を図示したものである。芯材13には鉄筋や鋼棒、または硬質プラスチック棒や生分解性芯材などが用いられている。
【0101】
図9は、図1〜図で説明した地盤注入装置の注入管を複数地点の地盤内に設置して地盤注入を実施する方法を図示したものである。図示するように複数の注入管1が一定領域の地盤内に一定の間隔をおいて設置されている。また、各注入管1は、先端部の一定長Lに図1〜7で説明した構造の柱状浸透区間Lを有し、各注入管の柱状浸透区間Lの深さは違っている。さらに、一地点に複数の注入管が結束して設置されていてもよい(図8(a),(b))。
【0102】
この装置によれば、造成地などの広い面積の地盤改良もきわめて効率的かつ迅速に行うことができる。特に、注入ステージ(地層)の深さに合わせて柱状浸透区間Lの長さを適切に設定することにより、吐出量の大きな注入材を低圧力で浸透注入させることが可能となり、各注入管1どうしの間隔Dを大きくして、造成地など広い地盤の地盤改良をきわめて効率的かつ経済的に行うことができる。
【0103】
図10は、本発明の他の実施形態を図示したものであり、図1〜7で説明した注入管を備えた地盤注入装置によって地盤注入を実施する方法を図示したものであり、当該地盤注入装置によれば、広大な地盤の地盤改良や地盤浄化を効率的にかつ短期間で行うことができる。
【0104】
具体的に説明すると、所定領域の地盤に間隔をおいて形成された各削孔4内に注入管1がそれぞれ設置されている。なお、一地点に複数の注入管が結束して設置されていてもよい(図8(a),(b))。
【0105】
また、各注入管1に注入材供給プラント14から延びる共通の送液管15がそれぞれ接続され、送液管15には注入材供給プラント14から各注入地点の注入管1に注入材を送液するための送液ポンプ16、各注入管1に送液される注入材の流量と圧力を計測するための流量・圧力計17、各注入管1への送液の開始と停止を切り替える流路切替バルブ18、さらに注入管1が複数の注入管からなる結束注入管の場合にあっては、各結束注入管1において各注入管への送液を調整する流量調節バルブ19がそれぞれ接続されている。
【0106】
この流量調節バルブ19は、単なる送液バルブでも、オリフィスでもよいし、また開度を調整できるしぼり部でもよい。オリフィスやしぼり部などの細孔を設けた場合、ポンプの送液圧力と細孔の面積に対応した一定の吐出量が得られるため、一つのポンプから多数の流量調節バルブ19を介して複数の注入管1に同時に注入できる。
【0107】
さらに、送液ポンプ16、各流量調節バルブ19および各流路切替バルブ18にはこれらの機器を適切な状態に制御するための集中管理装置20が接続されている。
【0108】
このような構成において、送液ポンプ16、流量・圧力計17、流路切替バルブ18および流量調節バルブ19を集中管理装置20によって適切に制御することにより、各注入地点に所定流量の注入材を送液すると共に、各注入地点において孔壁周囲の各ステージ内に所定流量の注入材を注入することができる。また、流路切替バルブ18を操作することにより一または複数地点へ連続的に注入したり、選択的に注入したり停止したり或いは流量を調節したりすることができる。
【0109】
図11は、同じく本発明の他の実施形態を図示したものであり、特に独立して駆動するユニットポンプ21、流量・圧力計17および流量調節バルブ19は、各注入管1ごとに注入材供給プラント14から延びる送液管15に接続されていることにより、各注入管1がそれぞれ独立した地盤注入装置を構成し、また各注入管1,1どうしが共通の送液管15によって接続され、かつ各注入管1との接続部に流路切替バルブ18が接続されていることにより、仮に一部の地盤注入装置がユニットポンプ21やバルブ等の故障やメンテナンス等で停止した場合においても、送液管15を介して停止中の注入管1に注入材を送液することにより継続して地盤注入を行うことができる。なお、一地点に複数の注入管が結束して設置されていてもよい(図8(a),(b)参照)。
【0110】
また、ユニットポンプ21からなる多連装ポンプを集中管理装置20で一括管理する注入装置を用いて各ユニットポンプ21に対応した注入管を1経て地盤に注入することができる。なお、注入管1は単管注入管または結束注入細管でもよい。各ニットポンプ21からの送液は注入ステージの複数の注入管にそれぞれ行ってもよく、また1本の注入管の管軸方向の異なる吐出口に同時に或いは選択的に注入してもよい。
【0111】
図12(a)〜(d)は、地上に建物や貯蔵タンク等の構造物が存在する地盤について実施する地盤注入工法を図示したものである。なお、一地点に複数の注入管が結束して設置されていてもよい(図8(a),(b)参照)。
【0112】
施工に際しては、既存建物Aの直下地盤内に複数の削孔を建物Aの周囲から一定の間隔を開けて形成し、次に、各削孔内に図1図7で説明した注入管1で、特に注入外管2の外管本体6と注入内管3が変形自在に形成された注入管
を挿入し、その周囲にシールグラウトが充填する。
【0113】
そして、注入材供給プラント(図省略)から送液管を介して各注入管1に注入材を注入することにより、既存の建物や構造物が建っている地盤について注入地盤改良を容易に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、特に土粒子の不均質な地盤の止水性向上、強度増大、液状化防止、さらには空洞部の充填や地盤の浄化等に適し、大きな吐出量の注入材を孔壁周囲の地盤中に低圧力で広範囲かつ均一に浸透注入させることができる。
【符号の説明】
【0115】
1 注入管
2 注入外管
3 注入内管
3a 膨縮パッカー
3b 注入材吐出口
4 削孔
5 シールグラウト
6 外管本体(注入外管本体)
6a 吐出口(注入材吐出口)
7 逆止弁
7a 一次注入材逆止弁
7a 一次注入材逆止弁
8 ゴムスリットチューブ
8a 噴射スリット(注入材噴射スリット)
9 固定具
10 密閉空間
11a 吐出口(一次注入材吐出口)
11b 吐出口 (二次注入材吐出口)
12 固定具
13 芯材(支持棒)
14 注入材供給プラント
15 送液管
16 送液ポンプ
17 流量・圧力計
18 流路切替バルブ
19 流量調節バルブ
20 集中管理装置
21 ユニットポンプ
【要約】
【課題】土粒子の不均質地盤の強度増大、液状化防止等を行うのに適した地盤注入装置及び地盤注入工法を提供する。
【解決手段】削孔4内に設置された注入外管2と注入外管2内に設置された注入内管3とから構成する。注入外管2は管軸方向に複数の注入材吐出口6aを有する外管本体6と、外管本体6の外周面に密着して注入材吐出口6aを閉じ、かつ注入内管3を通して注入される注入材の吐出圧によって注入材吐出口6aを開ける逆止弁7と、複数の注入材噴射スリット8aを管軸方向に間隔をおいて有し、外管本体6及び逆止弁7の外周面に密着し、かつ注入材の吐出圧によって注入材噴射スリット8aが開くゴムスリットチューブ8と、ゴムスリットチューブ8の外周に外管本体6の管軸方向に間隔をおいて取り付けられ、ゴムスリットチューブ8を管軸方向に複数の区間に区画する複数の固定具9を備えている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12