特許第6182807号(P6182807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182807
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】X線撮影装置及びX線画像選択方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/14 20060101AFI20170814BHJP
   A61B 6/02 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   A61B6/14 311
   A61B6/02 303A
   A61B6/14ZDM
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-133004(P2013-133004)
(22)【出願日】2013年6月25日
(65)【公開番号】特開2015-6259(P2015-6259A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2015年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000117054
【氏名又は名称】朝日レントゲン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100085501
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 静夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128842
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 温
(74)【代理人】
【識別番号】100124132
【弁理士】
【氏名又は名称】渋谷 和俊
(72)【発明者】
【氏名】高田 侑弥
【審査官】 亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/013771(WO,A1)
【文献】 特開2011−112810(JP,A)
【文献】 特開2013−085667(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0268556(US,A1)
【文献】 特開2011−090221(JP,A)
【文献】 特開2007−136163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に対してX線を照射するX線照射部と、
前記被写体を透過したX線を検出するX線検出部と、
前記X線検出部の検出結果に基づく2次元X線画像を生成する画像処理部と、を備え、
前記画像処理部が、
撮影領域に前記被写体の特定の部位が含まれる前記2次元X線画像を複数生成し、
撮影領域に前記被写体の特定の部位が含まれる前記2次元X線画像それぞれに対して、前記特定の部位を撮影した領域の少なくとも一部を含んでいる所定領域を微分して1階微分画像を計算し、さらに前記1階微分画像を微分して2階微分画像を計算し、
撮影領域に前記被写体の特定の部位が含まれる前記2次元X線画像全ての中から、前記2階微分画像の画素値の平均が最大になる前記2次元X線画像を一つ選択することを特徴とするX線撮影装置。
【請求項2】
前記X線照射部と前記X線検出部の対を、前記被写体を挟んで互いに対向させた状態で前記被検者の周りを移動させる旋回手段を備え、
前記画像処理部が、前記旋回手段が前記X線照射部及び前記X線検出部を前記被検者の周りを移動させることに伴って前記X線検出部が出力する信号をフレームデータとして順次記憶する記憶手段を有し、前記フレームデータからトモシンセシス断層画像を再構成する請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項3】
前記画像処理部が、シフト加算法を用いて前記フレームデータから前記トモシンセシス断層画像を再構成する請求項2に記載のX線撮影装置。
【請求項4】
撮影領域に被写体の特定の部位が含まれる2次元X線画像を複数取得する取得ステップと、
撮影領域に前記被写体の特定の部位が含まれる前記2次元X線画像それぞれに対して、前記特定の部位を撮影した領域の少なくとも一部を含んでいる所定領域を微分して1階微分画像を計算し、さらに前記1階微分画像を微分して2階微分画像を計算する計算ステップと、
撮影領域に前記被写体の特定の部位が含まれる前記2次元X線画像全ての中から、前記2階微分画像の画素値の平均が最大になる前記2次元X線画像を一つ選択する選択ステップとを備えることを特徴とするX線画像選択方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線撮影装置に関し、特に撮影領域に被写体の特定の部位が含まれるX線画像を複数生成するX線撮影装置に関する。また、本発明は、X線画像選択方法に関し、特に撮影領域に被写体の特定の部位が含まれる複数のX線画像の中から一つのX線画像を選択するX線画像選択方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯科用のパノラマX線撮影装置においては、複数の断層面が検出器の検出面に平行であると仮定し、パノラマ画像を作成していた。このため、基準断層面に被検者の歯列が位置している場合は、前歯の中心については歪みのない画像を作成することができたが、基準断層面から被検者の歯列が外れた場合は必ず画像に歪みが生じていた。また、被検者の歯列が基準断層面に沿って位置していないと、画像に横方向のぼけも生じていた。
【0003】
そこで、近年、基準断層面から被検者の歯列が外れた場合でもぼけの少ない画像を得ることができる歯科用のパノラマX線撮影装置として、1回の断層撮影で任意裁断高さの断層像を再構成するトモシンセシス(tomosynthesis)を行う歯科用のパノラマX線撮影装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−85667号公報(段落0071乃至段落0087)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数のトモシンセシス断層画像の中で、前歯部に最もフォーカスが合った画像と、臼歯部に最もフォーカスが合った画像とは必ずしも一致しない。このため、従来は関心領域のフォーカスの合い具合をユーザ自身が確認しながら、関心領域に最もフォーカスが合った画像を選択する必要があり、ユーザに負担がかかっていた(例えば特許文献1参照)。また、関心領域をトモシンセシス断層画像の全領域にした場合でも、どのトモシンセシス断層画像が最もフォーカスが合った画像になるかは、被検者の歯列と基準断層面とのずれ具合によって異なるため、やはり関心領域のフォーカスの合い具合をユーザ自身が確認する必要があった。
【0006】
本発明は、上記の状況に鑑み、所定領域(例えば関心領域)におけるフォーカスが最良なX線画像を一つ自動的に選択することができるX線撮影装置を提供することを目的とするものである。また、本発明は、上記の状況に鑑み、撮影領域に被写体の特定の部位が含まれる複数のX線画像の中から、特定の部位を撮影した領域の少なくとも一部を含んでいる所定領域(例えば関心領域)におけるフォーカスが最良なX線画像を一つ選択することができるX線画像選択方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明に係るX線撮影装置は、被写体に対してX線を照射するX線照射部と、前記被写体を透過したX線を検出するX線検出部と、前記X線検出部の検出結果に基づくX線画像を生成する画像処理部と、を備え、前記画像処理部が、撮影領域に前記被写体の特定の部位が含まれる前記X線画像を複数生成し、撮影領域に前記被写体の特定の部位が含まれる前記X線画像それぞれに対して、前記特定の部位を撮影した領域の少なくとも一部を含んでいる所定領域を微分して1階微分画像を計算し、さらに前記1階微分画像を微分して2階微分画像を計算し、撮影領域に前記被写体の特定の部位が含まれる前記X線画像全ての中から、前記2階微分画像の画素値の平均が最大になる前記X線画像を一つ選択する構成(第1の構成)としている。
【0008】
上記第1の構成のX線撮影装置において、前記X線照射部と前記X線検出部の対を、前記被写体を挟んで互いに対向させた状態で前記被検者の周りを移動させる旋回手段を備え、前記画像処理部が、前記旋回手段が前記X線照射部及び前記X線検出部を前記被検者の周りを移動させることに伴って前記X線検出部が出力する信号をフレームデータとして順次記憶する記憶手段を有し、前記フレームデータからトモシンセシス断層画像を再構成する(第2の構成)とすることが望ましい。
【0009】
上記第2の構成のX線撮影装置において、前記画像処理部が、シフト加算法を用いて前記フレームデータから前記トモシンセシス断層画像を再構成する(第3の構成)とすることが望ましい。
【0010】
上記第1〜3のいずれかの構成のX線撮影装置において、前記被写体の特定の部位が被験者の歯列である場合には、前記画像処理部が、前記特定の部位を撮影した領域の少なくとも一部を含んでいる所定領域を横方向にのみ微分して前記1階微分画像を計算し、さらに前記1階微分画像を横方向にのみ微分して前記2階微分画像を計算するようにしてもよい。
【0011】
上記目的を達成するために本発明に係るX線画像選択方法は、撮影領域に被写体の特定の部位が含まれるX線画像を複数取得する取得ステップと、撮影領域に前記被写体の特定の部位が含まれる前記X線画像それぞれに対して、前記特定の部位を撮影した領域の少なくとも一部を含んでいる所定領域を微分して1階微分画像を計算し、さらに前記1階微分画像を微分して2階微分画像を計算する計算ステップと、撮影領域に前記被写体の特定の部位が含まれる前記X線画像全ての中から、前記2階微分画像の画素値の平均が最大になる前記X線画像を一つ選択する選択ステップとを備えるようにしている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るX線撮影装置によると、撮影領域に被写体の特定の部位が含まれる複数のX線画像の中から、特定の部位を撮影した領域の少なくとも一部を含んでいる所定領域におけるフォーカスが最良なX線画像を一つ自動的に選択することができる。したがって、最もフォーカスが合った画像をユーザ自身が選択する必要がなくなり、ユーザに負担がかからなくなる。また、本発明に係るX線画像選択方法によると、撮影領域に被写体の特定の部位が含まれる複数のX線画像の中から、特定の部位を撮影した領域の少なくとも一部を含んでいる所定領域におけるフォーカスが最良なX線画像を明確な基準に基づいて一つ選択することができる。したがって、最もフォーカスが合った画像をユーザ自身が目視して主観的な基準に基づいて選択する必要がなくなり、ユーザに負担がかからなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る歯科用X線撮影装置の基本構成を説明するブロック図である。
図2】パノラマ撮影の軌道図を示す図である。
図3】立位タイプのX線撮影装置本体の外観例を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る歯科用X線撮影装置の画像処理手段を説明するための機能ブロック図である。
図5】5層の断層面を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る画像処理動作を示すフローチャートである。
図7】内側14番目の断層面に基づくトモシンセシス断層画像(パノラマ画像)を示す図である。
図8】標準歯列を含む断層面に基づくトモシンセシス断層画像(パノラマ画像)を示す図である。
図9】外側15番目の断層面に基づくトモシンセシス断層画像(パノラマ画像)を示す図である。
図10】所定領域を指定するための指定枠が重畳されているパノラマ画像を示す図である。
図11】画像を微分する際に用いる各種演算子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る歯科用X線撮影装置の基本構成を説明するブロック図である。本実施形態に係る歯科用X線撮影装置は、歯科用パノラマX線撮影や頭頸部X線CT撮影を行うことができる。本実施形態に係る歯科用X線撮影装置は、X線撮影装置本体1と、X線画像表示装置2を備え、通信ケーブル等によってデータを送受信する構成になっている。
【0016】
X線撮影装置本体1は、被検者(患者)にX線を照射するX線照射部110と、被検者Oを透過したX線を検出するX線検出部120と、X線照射部110及びX線検出部120を対向して有する旋回アーム3とを備える。
【0017】
パノラマ撮影においては、X線照射部110及びX線検出部120が歯列弓の形状に沿った所定の軌跡を描くように、旋回アーム3を水平移動及び水平旋回させながら断層撮影を行う。
【0018】
X線撮影装置本体1は、被検者Oの顎顔面を保持する被検者保持手段(頭部固定部)4と、旋回アーム3を駆動する駆動ユニット部160と、撮影装置本体制御部170とをさらに備えている。撮影装置本体制御部170には操作パネル71aが付加されている。
【0019】
X線照射部110は、X線を照射するX線管等からなるX線発生器112と、X線ビームの広がりを規制するスリット等からなるコリメータ111とを備えている。コリメータ111は、例えば、形状を異ならせた複数のスリットを形成したマスクで構成されており、スリットのいずれかを選択し、選択したスリットによってX線発生器112から照射されたX線ビームの広がりを制限する仕組みになっている。例えば、パノラマ撮影では、パノラマ用スリットが選択され、その選択されたパノラマ用スリットの形状に対応したX線細隙ビームが、X線検出部120のX線検出器121に向かって照射される。
【0020】
X線検出部120は、2次元的に広がったCCDセンサやX線間接変換方式(FPD:フラットパネルディテクタ)センサ等からなるX線検出器121を設けたカセット122を備えている。カセット122はX線検出部120に対して着脱可能であるが、X線検出器121は、カセット122を介さずにX線検出部120に固定的に設けてもよい。なお、本実施形態に係る歯科用X線撮影装置はトモシンセシス法を採用しているため、X線検出器121は、その横(幅)方向にも複数のX線検出素子を有する。X線検出器121は、例えば、300fpsのフレームレート(1フレームは、例えば、64×1500画素)で入射X線を、当該X線の量に応じたデジタル電気量の画像データとして収集することができる。以下、この収集データを「フレームデータ」という。
【0021】
駆動ユニット部160は、パノラマ撮影時に旋回軸3cを歯列弓に沿って移動させたりする旋回軸位置設定手段161と、旋回アーム3を回転させる旋回軸回転手段162とを備えている。旋回軸位置設定手段161は、旋回軸3cをXY方向(水平方向)に移動させるXYテーブルと、X軸モータ及びY軸モータとを備えている。旋回軸回転手段162は、旋回軸位置設定手段161のXYテーブルに設けられた旋回用モータを備えている。旋回用モータには、中空式で減速機を使用せずに負荷をモータに直結して駆動するダイレクトドライブ方式で高精度の位置決め機能を有するモータを用いている。旋回軸3cは、撮影開始時に被検者Oの正中線に一致するように設定される。
【0022】
X線撮影装置本体1は、旋回アーム3を水平方向に直進移動させるための旋回アーム位置設定手段31をさらに備えている。旋回アーム位置設定手段31は、旋回可能な旋回テーブルと、旋回テーブルの上を直動可能なスライドテーブルとを備えている。
【0023】
パノラマ撮影時には、X線照射部110及びX線検出部120の対は、被検者Oの口腔部を挟んで互いに対峙するように位置し、その対毎、一体に口腔部の周りを回転するように駆動される。ただし、この回転は単純な円を画く回転ではない。つまり、X線発生器112及びX線検出器121の対は、その対の回転中心RCが図2に示す如くY軸に沿って移動するように回転駆動される。Y軸は略馬蹄形の標準歯列SSの対称軸である。図2では、旋回アーム3の軌跡を、紙面半分において所定のフレーム数おき(例えば30フレームおき)に1本図示しており、紙面半分において図示を省略している。また、1本の軌跡のみX線照射部110及びX線検出部120を図示し、他の軌跡では図示を省略している。
【0024】
撮影装置本体制御部170は、駆動ユニット部160を制御する制御プログラムを含んだ各種制御プログラムを実行する制御装置(例えばCPU)171と、X線照射部110を制御するX線発生部制御手段172と、X線検出部120を制御するX線検出部制御手段173とを備えている。操作パネル71aは、小型液晶パネルや複数の操作釦で構成されている。操作釦のほか、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力手段を用いることもできる。また、操作パネル71aが液晶モニタ等のディスプレイからなる表示手段を備えるようにしてもよい。
【0025】
例えば、操作パネル71aに設けた表示手段に、X線撮影装置本体1の操作に必要な文字や画像等の情報を表示するように構成してもよい。また、X線パノラマ画像やX線CT画像を表示するX線画像表示装置2と接続して、X線画像表示装置2の表示手段26に表示される表示内容が操作パネル71aに設けた表示手段にも表示されるようにしてもよく、表示手段26に表示される文字や画像の上でマウス等によるポインタ操作などを通してX線撮影装置本体1に各種の指令ができるようにしてもよい。
【0026】
X線撮影装置本体1は、操作パネル71a、あるいはX線画像表示装置2からの指令に従って、歯列弓のパノラマ撮影などを実行する。また、各種指令や座標データ等をX線画像表示装置2から受け取る一方、撮影した画像データをX線画像表示装置2に送る。また、被撮影領域(撮影対象領域)rrの底辺は、X線照射部110から照射されるコーンビームの下縁の線が基準となる。
【0027】
X線撮影装置本体1と接続されるX線画像表示装置2は、表示装置本体20を備えている。表示装置本体20には、例えば、液晶モニタ等のディスプレイ装置からなる表示手段26や、キーボード、マウス等で構成された操作手段25が付加されている。表示手段26にX線画像が表示される。また、表示手段26に表示された文字や画像の上でのマウスでのポインタ操作等を通じて各種指令を与えることができる。表示手段26はタッチパネルで構成することもできるので、この場合、表示手段26は操作手段25を兼ねる。
【0028】
画像表示装置本体20は、各種プログラムを実行する制御装置(例えばCPU)21と、ハードディスク等で構成され各種撮影データや画像等を記憶する記憶部22と、画像再構成を行う画像生成手段23とを備えている。制御装置21、記憶部22、及び画像生成手段23は画像処理手段を構成している。記憶部22には、後述する歯列座標等も記憶される。制御装置21は、記憶部22に格納されたプログラムにより、各種動作を制御し、プログラムに従って画像生成手段23の機能を果たすように動作する。つまり、制御装置21は画像生成手段23を兼ねる。
【0029】
記憶部22は、フレームデータやトモシンセシス断層画像などを記憶することができる。
【0030】
図3は立位タイプのX線撮影装置本体1の外観例を示す図である。なお、ここでは立位タイプについて説明するが、当然の事ながら座位タイプのX線撮影装置本体を備える歯科用X線撮影装置にも本発明を適用することができる。図3(a)は上面図、図3(b)は正面図、図3(c)は側面図である。
【0031】
X線撮影装置本体1は、床面に載置されるベース5と、ベース5から鉛直方向に立設された下部ポール6と、鉛直方向にスライド可能に下部ポール6に接続される上部ポール7と、上部ポール7の上端部に固定されている固定アーム8と、回転可能に固定アーム8に接続される旋回アーム3と、上部ポール7の中央部に固定されており被写体(例えば歯など)を含む人体の頭部を保持する頭部保持部9とを備えている。旋回アーム3はX線照射部110及びX線検出部120を有しており、頭部保持部9は被検者保持手段(頭部固定部)4を有している。実施形態では、固定アーム8が上部ポール7に固定されているが、例えば、X線撮影装置本体1を設置する部屋の壁や天井に固定アーム8が直接あるいは部屋の壁や天井との距離を調整することができる調整機構を介して取り付けられる態様であってもよい。
【0032】
図4に、本実施形態に係るX線撮影装置の制御及び処理のためのブロック図を示す。同図に示す如く、X線撮影装置本体1からのデータは通信ラインを介してX線画像表示装置2に与えられる。
【0033】
X線画像表示装置2は、例えば、大量の画像データを扱うため、大容量の画像データを格納可能な、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーションで構成される。つまり、X線画像表示装置本体20は、その主要な構成要素して、制御装置21と、記憶部22と、画像生成手段23と、インターフェース24及び27とを備えており、それらが内部バス28を介して相互に通信可能に接続されている。制御装置21は、CPU21aと、OS等の制御プログラムが格納されたROM21bとを備えている。記憶部22は、バッファメモリ22aと、画像メモリ22bと、フレームメモリ22cとを備えている。制御装置21には、インターフェース24を介して操作手段25及び表示手段26が接続されている。
【0034】
インターフェース27は、X線撮影装置本体1に接続されており、制御装置21とX線照射部110、X線検出部120との間で交わされる制御情報や収集データの通信を媒介する。また、これにより、制御装置21はX線撮影装置本体1で撮影したパノラマ画像を例えばDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格により外部のサーバに送出できるようになっている。
【0035】
バッファメモリ22aは、インターフェース27を介して受信した、X線検出部120からのデジタル電気量のフレームデータを一時的に記憶する。
【0036】
また、画像生成手段23は、制御装置21の制御下に置かれ、装置側が提供する標準歯列SSを用いたパノラマ画像の作成を行うための処理及びそのパノラマ画像を利用するための処理を操作者との間でインターラクティブに実行する機能を有する。この機能を実現するためのプログラムは、ROM21bに予め格納されている。なお、このプログラムは予めROM21bに格納しておいてもよいが、場合によっては、外部システムから通信回線や持ち運び可能なメモリを介して、ROM21bや図示しない他の不揮発性記録媒体にインストールするようにしてもよい。
【0037】
上述した標準歯列SSは、本実施形態では、装置側で予め用意されているものである。なお、標準歯列SSは、複数の断層面から選択するようにしてもよい。
【0038】
画像生成手段23により処理される又は処理途中のフレームデータ及び画像データは画像メモリ22bに読出し書込み可能に格納される。画像メモリ22bには、例えばハードディスクなどの大容量の記録媒体(不揮発性且つ読出し書込み可能)が使用される。また、フレームメモリ22cは、再構成されたパノラマ画像データ、後処理されるパノラマ画像データなどを表示するために使用される。フレームメモリ22cに記憶される画像データは、インターフェース24を介して表示手段26に与えられ、表示手段26の画面に表示される。
【0039】
制御装置21のCPU21aは、ROM21bに予め格納されている制御及び処理の全体を担うプログラムに従って、装置の構成要素の全体の動作を制御する。かかるプログラムは、操作者からそれぞれに制御項目についてインターラクティブに操作情報を受け付けるように設定されている。このため、CPU21aは、後述するように、フレームデータの収集(スキャン)などを実行可能に構成されている。
【0040】
被検者Oが立位の姿勢で頭部保持部9に顎を置くことにより、被検者Oの頭部(顎部)の位置が旋回アーム3の回転空間のほぼ中央部で固定される。この状態で、旋回アーム3が被検者Oの頭部の周りをXY面に沿って回転する。
【0041】
旋回アーム3が回転している間に、X線照射部110から所定周期でパルス状のX線が曝射される。このX線は、撮影位置に位置する被検者Oの顎部(歯列部分)を透過してX線検出部120に入射する。X線検出部120は、前述したように、非常に高速のフレームレート(例えば、300fps)で入射X線を検出し、対応するデジタル電気量の2次元のデジタルデータ(例えば64×1500画素)をフレーム単位で順次出力する。このフレームデータは、前述したように、通信ラインを介して、X線画像表示装置2のインターフェース27を介してバッファメモリ22aに一時的に保管される。この一時保管されたフレームデータは、その後、画像メモリ22bに転送されて保管される。
【0042】
本実施形態では、パノラマ画像を得るためにトモシンセシス法を用いている。トモシンセシス法では、X線照射部110から被検者Oに対して複数の異なる角度でX線を曝射し、被検者Oを透過したX線をX線検出部120により検出し、複数の撮影画像(フレームデータ)が撮影され、画像メモリ22bに保管される。画像生成手段23は、画像メモリ22bに保管された複数の撮影画像(フレームデータ)から任意の断層面に基づいてトモシンセシス断層画像を再構成する。トモシンセシス断層画像はパノラマ画像として記憶部22に記憶されたり、表示手段26に表示されたりする。本実施形態では、任意の断層面を設定するために必要な断面として、標準歯列SSを含む断面と、標準歯列SSを含む断面に対してY軸の正方向(内側方向)に1mmピッチで設定される15個の断面と、標準歯列SSを含む断面に対してY軸の負方向(外側方向)に1mmピッチで設定される15個の断面との合計31個の断面を設定している。図5では、31個の断面のうち5個の断面を図示している。実線は標準歯列SSを含む断面を示しており、4本の点線は、標準歯列SSを含む断面に対して1mm内側に設定される断面と、標準歯列SSを含む断面に対して2mm内側に設定される断面と、標準歯列SSを含む断面に対して1mm外側に設定される断面と、標準歯列SSを含む断面に対して2mm外側に設定される断面とを示している。
【0043】
また、本実施形態では、シフト加算法を用いてフレームデータからトモシンセシス断層画像を再構成している。シフト加算法は、スキャンによって一定レートで収集されるフレームデータ(画素データ)のうち、XY面に投影される軌跡の各位置について定まる複数のフレームデータを、例えば、その位置に応じた量だけ互いにシフトさせて相互加算する処理である。
【0044】
画像メモリ22bに保存されたパノラマ画像は、表示手段26に様々な態様で表示される。なお、表示態様は例えば操作手段25から与えられるユーザの指示に基づいて設定される。
【0045】
次に、図6のフローチャートを参照して、制御装置21及び画像生成手段23により実行される処理を説明する。
【0046】
まず、制御装置21は、被検者Oの位置決めなど撮影の準備が済むと、操作手段25を介して与えられる操作者の指示に応答し、データ収集のためのスキャンを指令する(ステップS1)。これにより、旋回アーム3及びX線照射部110が予め設定されている制御シーケンスに沿って駆動するように指令される。このため、X線照射部110及びX線検出部120の対を被検者Oの顎部の周囲に回転させながら、その回転動作の間に、X線照射部110からX線を曝射させる。X線検出部110から曝射されたX線は被検者Oを透過してX線検出部120により検出される。したがって、前述したように、X線検出器121から例えば300fpsのレートでX線透過量を反映したデジタル電気量のフレームデータ(画素データ)が出力される。このフレームデータは画像メモリ22bに保管される。
【0047】
このスキャンの指令が済むと、処理の指示は画像生成手段23に渡される。画像生成手段23は、シフト加算法を用いて、画像メモリ22bに保管されたフレームデータから30層のトモシンセシス断層画像を再構成する(ステップS2)。ステップS2の処理で得られた30層のトモシンセシス断層画像は、30層のパノラマ画像として画像メモリ22bに保管される。具体的には、画像生成手段23は、以下のようにして30層のトモシンセシス断層画像を再構成する。
【0048】
画像生成手段23は、標準歯列SSを含む断層面(標準歯列SSを含む断面と、標準歯列SSを含む断面より内側で且つ標準歯列SSを含む断面に対して1mm内側に設定される断面より外側の領域とからなる断層面)に基づいてトモシンセシス断層画像を再構成する。
【0049】
また、画像生成手段23は、内側P番目の断層面(標準歯列SSを含む断面に対してPmm内側に設定される断面と、標準歯列SSを含む断面に対してPmm内側に設定される断面より内側で且つ標準歯列SSを含む断面に対して(P+1)mm内側に設定される断面より外側の領域とからなる断層面)に基づいて、トモシンセシス断層画像を再構成する。ただし、Pは1以上14以下の自然数である。
【0050】
また、外側1番目の断層面(標準歯列SSを含む断面より外側で且つ標準歯列SSを含む断面に対して1mm外側に設定される断面より内側の領域と、標準歯列SSを含む断面に対して1mm外側に設定される断面とからなる断層面)に基づいて、トモシンセシス断層画像を再構成する。
【0051】
また、画像生成手段23は、外側Q番目の断層面(標準歯列SSを含む断面に対して(Q−1)mm外側に設定される断面より外側で且つ標準歯列SSを含む断面に対してQmm外側に設定される断面より内側の領域と、標準歯列SSを含む断面に対してQmm外側に設定される断面とからなる断層面)に基づいて、トモシンセシス断層画像を再構成する。ただし、Qは2以上15以下の自然数である。
【0052】
上述した30層のトモシンセシス断層画像(パノラマ画像)は全て、撮影領域に被験者の歯列が含まれるX線画像である。ここで、画像生成手段23が再構成したトモシンセシス断層画像の例として、内側14番目の断層面に基づくトモシンセシス断層画像(パノラマ画像)を図7に示し、標準歯列SSを含む断層面に基づくトモシンセシス断層画像(パノラマ画像)を図8に示し、外側15番目の断層面に基づくトモシンセシス断層画像(パノラマ画像)を図9に示す。
【0053】
画像生成手段23は次いで、30層のパノラマ画像のうちの1つ(例えば、標準歯列SSを含む断層面に基づくトモシンセシス断層画像)を表示手段26の表示画面26aに表示させる(ステップS3)。
【0054】
ステップS3に続くステップS4において、画像生成手段23は、被験者の歯列を撮影した領域の少なくとも一部を含んでいる所定領域が指定されたか否かを判断する。表示手段26の表示画面26aに表示されたパノラマ画像の上でのマウスでのポインタ操作等によって所定領域が指定されると(ステップS4のYES)、ステップS5に移行する。所定領域の指定態様としては、例えば、図10に示すような指定枠(図中の白線枠)を用いて所定領域を指定する態様を挙げることができる。
【0055】
ステップS5において、画像生成手段23は、所定領域を2階微分した2階微分画像の画素値の平均が最大になるパノラマ画像を選択し、その選択したパノラマ画像を表示手段26の表示画面26aに表示させて処理を終了する。具体的には、画像生成手段23は、(i)1層のパノラマ画像の所定領域を微分して、その所定領域の勾配(横方向の微分と縦方向の微分をベクトルにまとめたもの)のノルムを示す1階微分画像を計算し、(ii)上記(i)で得られた1階微分画像を微分して、さらにその1階微分画像の勾配のノルムを示す2階微分画像を計算し、(iii)残り29層のパノラマ画像についても同様に上記(i)、(ii)の計算を行い、(iv)30層のパノラマ画像全ての中から、2階微分画像の画素値の平均が最大になるパノラマ画像を一つ選択し、その選択したパノラマ画像を表示手段26の表示画面26aに表示させて処理を終了する。なお、2階微分画像の画素値の平均が最大になるパノラマ画像が複数ある場合は、複数表示してもよく、予め定められた規則(例えば最も内側の断層面に基づくトモシンセシス断層画像を選択するという規則)に則って単数表示してもよい。
【0056】
積分領域の面積を
として、上記(i)〜(iv)の処理を数式で表現すると、下記の(1)式のようになる。下記の(1)式において、パノラマ画素の座標を(x,y)と表現し、n層目のパノラマ画像における所定領域を
と表現している。そして、画像生成手段23は、
層目のパノラマ画像を選択する。
【数1】
【0057】
画素値の集合体である画像を微分する方法は従来から様々なものが知られている。それらの微分方法で用いられる演算子の一部を横方向の微分を例に図11に示す。縦方向の微分の場合は図11に示す演算子を時計回りに90度回転させ、上下と左右とを入れ替えればよい。
【0058】
各演算子において、左上の数値は微分対象画素の1つ左1つ上に位置する画素の画素値に乗算され、中央上の数値は微分対象画素の真上で1つ上に位置する画素の画素値に乗算され、右上の数値は微分対象画素の1つ右1つ上に位置する画素の画素値に乗算され、左中央の数値は微分対象画素の真左で1つ左に位置する画素の画素値に乗算され、中央の数値は微分対象画素の画素値に乗算され、右中央の数値は微分対象画素の真右で1つ右に位置する画素の画素値に乗算され、左下の数値は微分対象画素の1つ左1つ下に位置する画素の画素値に乗算され、中央下の数値は微分対象画素の真下で1つ下に位置する画素の画素値に乗算され、右下の数値は微分対象画素の1つ右1つ下に位置する画素の画素値に乗算され、各乗算値の総和が微分対象画素の微分値となる。なお、図11に示す演算子は3×3の演算子であったが、これに限定されることはなくM×N(Mは3以上の奇数、Nは3以上の奇数)の演算子を用いることができる。
【0059】
また、上述した具体例とは異なり、上記(i)の代わりに、(i´)1層のパノラマ画像の所定領域を微分および2乗して、その所定領域の勾配のノルムの2乗を示す1階微分画像を計算し、上記(ii)の代わりに、(ii´)上記(i´)で得られた1階微分画像を微分および2乗して、さらにその1階微分画像の勾配のノルムの2乗を示す2階微分画像を計算してもよい。
【0060】
また、上述した具体例とは異なり、上記(i)の代わりに、(i´´)1層のパノラマ画像の所定領域を微分して、その所定領域の勾配の横方向成分の絶対値とその所定領域の勾配の縦方向成分の絶対値との和を示す1階微分画像を計算し、上記(ii)の代わりに、(ii´´)上記(i´´)で得られた1階微分画像を微分して、さらにその1階微分画像の勾配の横方向成分の絶対値とその1階微分画像の勾配の縦方向成分の絶対値との和を示す2階微分画像を計算してもよい。
【0061】
また、被写体の特定の部位が本実施形態のように被験者の歯列である場合には、歯列の方向を考慮すると、縦方向のフォーカスよりも横法のフォーカスの方がより重要であるため、縦方向の微分を行わず、横方向の微分のみを行うようにしてもよい。
【0062】
また、各層のパノラマ画像の所定領域に属する画素の数が同じであれば、2階微分画像の画素値の和を比較しても、2階微分画像の画素値の平均を比較した場合と同じ比較結果を得ることができる。逆に、各層のパノラマ画像の所定領域に属する画素の数が同じでなければ、各層のパノラマ画像の所定領域に属する画素の数を考慮して、2階微分画像の画素値の平均を求め、2階微分画像の画素値の平均を比較する必要がある。
【0063】
所定領域は、パノラマ画像の一部の領域であってもよく、パノラマ画像の全領域であってもよい。また、所定領域の位置は本実施形態のようにユーザが指定するものに限定されることはなく、所定領域の位置が予め設定され記憶部22に記憶されていてもよい。
【0064】
なお、本発明に係るX線撮影装置は、歯科用X線撮影装置に限らず、撮影領域に被写体の特定の部位が含まれるX線画像を複数生成するX線撮影装置全般に適用することができる。例えば、被写体の特定の部位が被験者の肋骨である医療用X線撮影装置にも適用することができる。
【0065】
また、撮影領域に被写体の特定の部位が含まれるX線画像を複数生成する手法は、上述した実施形態に限定されない。例えば、FBP(Filtered Back Projection)法を用いてトモシンセシス断層画像を再構成する手法、通常のパノラマ撮影を撮影条件を変えて複数回行う手法等であってもよい。
【0066】
本発明に係るX線撮影装置は、所定領域を2階微分して得られる2階微分画像の画素値の平均が最大になるX線画像を選択することで、フォーカスが最良なX線画像を選択している。これにより、単なる1階微分のみではフォーカスが最良なX線画像を選択することが困難な、エッジがはっきりしていない複数のX線画像からフォーカスが最良なX線画像を選択することができる。したがって、本発明は、シフト加算法を用いてトモシンセシス断層画像を再構成することで、エッジがはっきりしていない複数のX線画像を1回の撮影で生成することができるX線撮影装置に特に適している。
【符号の説明】
【0067】
1 X線撮影装置本体
2 X線画像表示装置
3 旋回アーム
110 X線照射部
120 X線検出部
20 画像表示装置本体
21 制御装置
22 記憶部
25 操作手段
26 表示手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11