(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ラインセンサを用いて静脈パターン等といった生体情報を取得する場合、基本的には、ラインセンサと生体との位置関係を順次変えて複数の一次元画像情報を得るとともに、生体の位置情報の変化などに基づいて複数の一次元画像情報を二次元画像情報に展開する必要がある。
【0007】
上述した特許文献1では、ラインセンサに対する生体の移動を検出するために、付加的な検出手段としてロータリーエンコーダを用いている。この構成の装置にあっては、ラインセンサの他にロータリーエンコーダも合わせて実装する必要があり、装置が占有する体積を或る程度にしか小さくすることはできない。従って、一層の小型化が要求される電子機器用途には不向きであるし、ロータリーエンコーダ等のコストも嵩む。
【0008】
また、例えば並んで配置された複数の撮像ラインを備えたラインセンサを用いて、それぞれの撮像ラインの信号(映像)の差分に基づいて生体の位置情報の変化などを取得するといった方法も考えられるが、ラインセンサのコストが嵩み、生体情報を取得する機能を実装した電子機器のコストアップ要因となる。
【0009】
従って、本発明の目的は、小型化が可能であり、低コスト化も図ることができる、生体情報を取得する機能を備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための本発明の電子機器は、
画像を表示する表示部、
表示部の前面側に載置される生体の位置を検出する位置検出部、
表示部の端部に沿って線状に配置された撮像領域を有する撮像部、及び、
位置検出部からの情報と撮像部からの情報とに基づいて生体情報を生成する生体情報生成部を有する制御部、
を備えた電子機器である。
【0011】
本発明に係る電子機器において、撮像部は、近赤外光画像および可視光画像の少なくとも一方を撮像する構成とすることができる。即ち、近赤外光画像を撮像する構成であってもよいし、可視光画像を撮像する構成であってもよいし、近赤外光画像および可視光画像の双方を撮像する構成であってもよい。
【0012】
例えば、生体情報として指の静脈パターンを得るといった場合には、近赤外光画像を撮像する構成とすればよいし、生体情報として指の指紋パターンを得るといった場合には、可視光画像を撮像する構成とすればよい。指の静脈パターンと指紋パターンの双方を得るといった場合には、近赤外光画像および可視光画像の双方を撮像する構成とすればよい。
【0013】
上記の好ましい構成を含む本発明に係る電子機器にあっては、表示部から近赤外光が照射され、撮像部は、生体内で反射した近赤外光に基づく近赤外光画像を撮像する構成とすることができる。
【0014】
表示部から近赤外光が照射される構成の本発明に係る電子機器にあっては、表示部は透過型の表示パネルから成り、表示部の背面には、光を照射する照明部が配置されており、照明部は、可視光を発する第1の光源と、近赤外光を発する第2の光源とを備えており、照明部の発する近赤外光が表示部から照射される構成とすることができる。この場合において、第2の光源は、近赤外光画像を撮像する際に点灯状態とされる構成とすることができる。
【0015】
上記の各種の好ましい構成を含む本発明に係る電子機器において、撮像部は、導光用の光学部材とラインセンサから構成されている構成とすることができる。この場合において、ラインセンサは、電子機器内の空きスペースに配置され、光学部材は、撮像領域から入射する光をラインセンサの受光面に導くように配置されている構成とすることができる。
【0016】
上記の各種の好ましい構成を含む本発明に係る電子機器において、
制御部は、生成した生体情報の登録処理を行う生体情報登録部と、生成した生体情報を用いて認証処理を行う生体情報認証部とを更に備えている構成とすることができる。
【0017】
また、上記の各種の好ましい構成を含む本発明に係る電子機器は、表示部上に載置される生体の移動に対応して所定の動作を行う携帯用の電子機器であり、電子機器に所定の動作を行わせる際の操作と同様の操作により生体情報を生成する構成とすることができる。
【0018】
上記の各種の好ましい構成を含む本発明の電子機器(以下、単に、本発明と呼ぶ場合がある)の種類は特に限定するものではなく、テレビジョン受像機、コンピュータディスプレイ、ノート型コンピュータあるいはタブレット型コンピュータといった比較的大型の電子機器や、携帯情報端末、携帯電話、あるいはこれらを統合した電子機器といった携帯用の電子機器を例示することができる。本発明に用いられる表示部として、例えば自発光型の表示パネルや透過型の表示パネルを用いることができる。表示部は、モノクロ表示であってもよいし、カラー表示であってもよい。後述する実施形態にあっては、表示部として、アクティブマトリクス方式の透過型液晶表示パネルを用いる。
【0019】
表示部の形状は特に限定するものではなく、横長の矩形状であってもよいし縦長の矩形状であってもよい。表示部の画素(ピクセル)の数P
X×P
Yを(P
X,P
Y)で表記したとき、例えば横長の矩形状の場合には、(640,480)、(800,600)、(1024,768)、(1280,720)、(1440,1080)、(1920,1080)等の画像表示用解像度の幾つかを例示することができ、縦長の矩形状の場合には相互に値を入れ替えた解像度を例示することができるが、これらの値に限定するものではない。
【0020】
位置検出部として、例えばタッチパネル(タッチスクリーン)を用いることができる。タッチパネルの方式は特に限定するものではない。例えば、抵抗膜方式であってもよいし、静電容量方式であってもよい。タッチパネルは、表示部を構成する表示パネルと一体の構成(いわゆるインセル方式)であってもよいし、表示部とは別体の構成であってもよい。
【0021】
撮像部を構成するラインセンサの方式は特に限定するものではない。例えば、CCD方式であってもよいし、CMOS方式であってもよい。撮像部によって撮像される生体(例えば指)の部分の長さは、静脈パターン等の認証などの観点からは、少なくとも30[ミリメートル]程度以上の長さであることが好ましい。
【0022】
ラインセンサに光を導く導光用の光学部材として、屈折率分布レンズから成るアレイ、光ファイバ、及び、プリズム等の周知の光学材料を用いることができる。これらの光学部材の仕様は、電子機器の仕様などに応じて適宜設定すればよい。
【0023】
生体情報生成部を有する制御部は、演算回路や記憶装置(メモリ)等といった周知の回路素子などを用いて構成することができる。静脈パターン等の生体情報の登録を行う生体情報登録部や取得した生体情報を用いて認証を行う生体情報認証部についても同様である。
【0024】
生体情報の登録処理および生体情報の認証処理の構成は、特に限定するものではない。例えば生体情報として静脈パターンを用いる場合には、血管の分岐点の位置や方向などの特徴をパラメータ化しこれを登録するといった構成であってもよいし、血管パターンそのものを登録するといった構成であってもよい。また、生体情報の認証は、例えば、周知のパターンマッチングのアルゴリズムから適宜好適なものを選択して行えばよい。
【0025】
表示部の背面に配置される照明部の構成は特に限定するものではない。例えば、照明部は、直下型方式の構成であってもよいし、あるいは又、エッジライト方式の構成であってもよい。照明部の光源として、例えば、発光ダイオード(LED)やエレクトロルミネッセンス(EL)装置を挙げることができる。光源の小型化といった観点からは、中でも、光源として発光ダイオードを用いることが好ましい。
【0026】
照明部は、上述した光源の他、例えば、光拡散シート等の光学機能シートや導光板といった周知の光学材料を備えている構成とすることができる。光学機能シートは、例えば、照明部における表示部側の面に配置される。
【発明の効果】
【0027】
本発明の電子機器にあっては、本来は表示部に表示されるアイコン等の操作対象に対して指示を行うために用いられる位置検出部と、撮像部とを利用して生体情報を生成する。従って、生体情報を取得する機能を備えた電子機器の小型化が可能であり、低コスト化も図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、実施形態に基づき本発明の電子機器を説明する。本発明は実施形態に限定されるものではなく、実施形態における種々の数値や材料は例示である。以下の説明において、同一要素または同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0030】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、本発明の電子機器に関する。
【0031】
図1は、第1の実施形態に係る電子機器の模式的な斜視図である。
図2は、電子機器を仮想的に分離したときの模式的な斜視図である。
【0032】
電子機器1は、例えば、携帯情報端末と携帯電話とを統合した電子機器(いわゆるスマートフォン)である。
図2に示すように、電子機器1は、画像を表示する表示部10、表示部10の前面側に載置される生体の位置を検出する位置検出部20、表示部10の端部に沿って線状に配置された撮像領域44を有する撮像部40、及び、位置検出部20からの情報と撮像部40からの情報とに基づいて生体情報を生成する生体情報生成部51を有する制御部50を備えている。尚、制御部50は、図示せぬ基板上に配置された演算回路や記憶装置(メモリ)等から構成されている。
【0033】
表示部10は、例えば透過型の液晶表示パネルから成り、画素13がマトリクス状に配列された矩形状の表示領域11を有している。符号12A,12B,12C,12Dは、表示領域11の各辺を示す。図においてX方向に延びる辺12B,12Dは短辺、Y方向に延びる辺12A,12Cは長辺である。説明の都合上、電子機器1は、辺12B,12Dが延びる方向が水平方向となり、且つ、辺12Bが操作者側になるようにして使用されるものとする。
【0034】
位置検出部20は、例えば静電容量式のタッチパネルから成り、表示部10上に重ねて配置されている。例えば、表示部10に電子機器1の機能に応じた種々のアイコンを表示した状態でタッチパネルを指で触れアイコンを選択したり、タッチパネル上で指を滑らせるといった動作をすることによって、電子機器1に所望の動作を行わせるといったことができる。
【0035】
このように、電子機器1は、表示部10上に載置される生体の移動に対応して所定の動作を行う携帯用の電子機器である。そして、後述するように、電子機器に所定の動作を行わせる際の操作と同様の操作により生体情報を生成することができる。
【0036】
撮像領域44は、表示部10の辺12A側の端部に沿って線状に配置されている。表示部10の前面(より具体的には、
図2に示す例では位置検出部20の面)は平面状であり、表示部10の前面の延長上に撮像領域44が位置するように配置されている。
図2に示すように、撮像部40は、導光用の光学部材41,42とラインセンサ43から構成されている。ラインセンサ43は、電子機器1内の空きスペースに配置され、光学部材41,42は、撮像領域44から入射する光をラインセンサ43の受光面に導くように構成されている。
【0037】
ラインセンサ43の設定にもよるが、撮像部40は、近赤外光画像および可視光画像の少なくとも一方を撮像する構成とすることができる。具体的には、撮像部40が、近赤外光画像を撮像する構成、可視光画像を撮像する構成、あるいは又、近赤外光画像および可視光画像を撮像する構成とすることができる。可視光画像を撮像することで、例えば指紋といった生体表面のパターンを撮像することができる。また、近赤外光画像を撮像することで、例えば指静脈パターンを撮像することができる。ここでは、撮像部40は、近赤外光画像を撮像するとして説明する。
【0038】
光学部材41は、例えば近赤外光フィルタであり、その一面が撮像領域44に対応する。光学部材42は、例えば小さな屈折率分布レンズが多数集まって成るアレイ(屈折率分布レンズアレイ)であって、近赤外光をラインセンサ43の受光面に導くとともに受光面で結像させる。
図2に示す例では、光学部材42はZ方向の高さが一定である矩形状であって、光学部材41,42及びラインセンサ43は、表示部10の面に対して直交して延在するように配置されている。尚、撮像部40の構成はこれに限るものではない。例えば、近赤外光フィルタをラインセンサの直前に配置するといった構成であってもよい。
【0039】
電子機器1にあっては、表示部10から近赤外光が照射され、撮像部40は、生体内で反射した近赤外光に基づく近赤外光画像を撮像する。表示部10の背面には、光を照射する照明部30が配置されており、照明部30の発する近赤外光が表示部10から照射される。
【0040】
照明部30はエッジライト方式のバックライトから成る。照明部30は、表示部10と略同様の矩形状の導光板31と、例えば白色の可視光を発する第1の光源33(33A,33B,33C,33D)と、例えば波長760ナノメートル前後の近赤外光を発する第2の光源34(34A,34B)を含んでいる。尚、第1の光源33A,33B,33C,33Dを纏めて、単に、「第1の光源33」と表す場合がある。第2の光源34A,34Bについても同様である。導光板31は、例えばアクリル系の透明材料から成る。第1の光源33と第2の光源34は、例えば発光ダイオードから成る。尚、照明部30は、光拡散シート等といった他の光学材料を更に備えていてもよい。
【0041】
表示領域11の辺12A側に位置する導光板31の辺を符号32Aで表し、辺12B側に位置する導光板31の辺を符号32Bで表す。同様に、表示領域11の辺12C側に位置する導光板31の辺を符号32Cで表し、辺12D側に位置する導光板31の辺を符号32Dで表す。
【0042】
第1の光源33A,33Bは導光板の辺32A側の端面に配置されており、第1の光源33C,33Dは導光板の辺32C側の端面に配置されている。第1の光源33が発生する可視光は、導光板31の端面から導光板31内に入射し、導光板31内を伝播した後、導光板31の前面(表示部10と対向する面)から出射し、表示部10を背面から照射する。
【0043】
近赤外光を発する第2の光源34(34A,34B)は、生体内で反射した近赤外光などの検出が良好に行われるように、撮像部40に近い部分に配置されている。図に示す例では、光源34Aは、導光板31の辺32A側の端面に配置されており、光源34Bは、辺32B側の端面に配置されている。第2の光源34が発生する近赤外光も、導光板31の端面から導光板31内に入射し、導光板31内を伝播した後、導光板31の前面から出射し、表示部10を背面から照射する。
【0044】
従って、表示部10から操作者側に向けて、第1の光源33が発生する可視光の他、第2の光源34が発生する近赤外光が照射される。
【0045】
近赤外光は視認されないため、第2の光源34は画像の表示に寄与しない。消費電力の低減化といった観点からは、第2の光源34は、近赤外光画像を撮像する際に点灯状態とされ、それ以外の場合は消灯状態となるように制御されることが好ましい。
【0046】
以上、電子機器1の構成について説明した。次いで、位置検出部20からの情報と撮像部40からの情報とに基づいて生体情報を生成するなどといった動作について、詳しく説明する。説明の都合上、ここでは、第二指(人差し指)の末節から中節にかけての静脈パターンを含む生体情報を生成するものとする。
【0047】
図3は、電子機器の動作を説明するための模式的なフローチャートである。
【0048】
認証や登録などといった「生体情報の取得が必要となる」アプリケーションが起動されると、例えば画面上に、「撮像領域を横切るように、表示領域から撮像領域側に向けて指を滑らせる」といった動作を操作者に促す表示がされる。
【0049】
そして、電子機器1は、例えば所定の時間間隔ΔT毎に、指の位置情報と一次元画像情報を取得し、例えば制御部50が備える記憶装置に保存する(ステップS1)。
図4ないし
図7を参照して、詳しく説明する。
【0050】
図4の(A)、
図5の(A)及び(B)、並びに、
図6の(A)及び(B)は、生体情報を取得するときの動作を説明するための模式的な平面図である。
【0051】
図4の(A)は、指100が載置された初期状態を模式的に示す。表示部10上に指100が載置されると、例えば指100の接触部分の座標値が位置情報として、位置検出部20によって検出される。指100が接触したことが感知されると、例えば制御部50の指示に基づいて、所定の一定時間(より具体的には、通常の動作において指100が撮像領域44を横切るのに足りる時間)の間、照明部30における第2の光源34が点灯状態とされる。
【0052】
図4の(B)は、
図4の(A)に示すA−A断面を模式的に示した図である。尚、図示の都合上、
図4の(B)は拡大図とした。また、表示部10と位置検出部20を一体として表した。更には、照明部30や撮像部40を模式的に示した。尚、符号PCBで示す部分は、制御部50等が実装された回路基板を模式的に示す。
【0053】
照明部30からは、指100を照射するように近赤外光が照射される。近赤外光は、指100内で反射し、その一部が表示部10側に向かう。指100が移動して撮像領域44上に位置すれば、撮像部40によってその位置に応じた一次元画像情報を得ることができる。
【0054】
制御部50は、位置検出部20からの情報(具体的には、座標値(X,Y))、及び、撮像部40からの一次元画像情報を、所定の時間間隔ΔT毎に取得し、制御部50の記憶装置に保存する。説明の都合上、ここでは、座標値(X,Y)及び一次元画像情報の取得などを、N回行うとして説明する。また、第n回目(但し、n=1,2,3・・・,N)の座標値を(X
n,Y
n)で表す。
【0055】
操作者は、
図4の(A)に示す状態から
図6の(B)に示す状態に遷移するように、指100をX方向に移動させる。
図5の(A)は、第(n−1)回目のデータ取得における状態を表す模式図であり、
図5の(B)は、第n回目のデータ取得における状態を表す模式図である。
【0056】
発明の理解を助けるため、
図3に示す次の(ステップS2)に関連する事項であるが、指の移動速度の求め方について説明する。
図5の(A)及び(B)においては、指100の接触点は表示部10上にあるので、位置検出部20による座標値の検出が可能である。
図5の(A)と
図5の(B)との時間差は上述したΔTであるから、指の移動速度のX方向の速度成分VXは、VX=(X
n−X
n-1)/ΔTといった式により求めることができる。また、図示はしていないが、Y方向の速度成分VYは、VY=(Y
n−Y
n-1)/ΔTといった式により求めることができる。
【0057】
尚、n=1の場合は(X
n-1,Y
n-1)に対応するデータがないので、上述の速度成分VX,VYの計算はできない。しかしながら、一次元画像情報を二次元画像情報に展開する際にn=1における速度情報は不要なので、特段の支障はない。
【0058】
また、説明の都合上、Y方向の速度成分VYはX方向の速度成分VXに対して充分に小さく、一次元画像情報を二次元画像情報に展開する際に速度成分VYの影響は無視できるとする。
【0059】
指100が更に撮像部側に移動すると、指100の接触点が表示部10の外となる。この状態を
図6の(A)に示し、最終的な状態を
図6の(B)に示す。指100の接触点の座標値は検出されないので、この場合には、座標値に換えて例えば「接触点は検出されない」といったことを示すデータと、一次元画像情報とを取得して、記憶装置に保存すればよい。
【0060】
図3に示す次の(ステップS2)に関連する事項であるが、この場合の指の移動速度の求め方について説明する。通常、指100を
図4の(A)に示す状態から
図6の(B)に示す状態に遷移させるときの移動速度は、始期と終期を除いて略一定と考えることができる。換言すれば、上述したX方向の速度成分VXは、指100が移動する際には、或る一定値VX
Constに略等しいとして扱うことができる。一定値VX
Constの値は、例えば、指100の接触点のX座標値の変化に基づいて平均速度を算出することで得ることができる。Y方向の速度成分VYについても同様である。
【0061】
あるいは又、接触点が検出されなくなった時点以降の指100の移動速度は、接触点の検出が可能であった最後の状態における移動速度に略等しいとして扱うこともできる。例えば、接触点の座標値の検出が可能であった最後の回が第n’回であったとすれば、VX≒(X
n'−X
n'-1)/ΔTとして扱うこともできる。Y方向の速度成分VYについても同様である。
【0062】
以上、
図3に示す(ステップS1)においてどのようなデータが取得されるのかについて説明した。尚、上述した「ΔT」や「N」の値は、電子機器1の仕様などに応じて、適宜設定すればよい。
【0063】
次いで、電子機器1は、取得した一次元画像情報を二次元画像情報に展開し(ステップS2)、二次元画像情報から静脈パターンを抽出し(ステップS3)、特徴点などを抽出し(ステップS4)、その後、必要に応じて登録処理や認証処理などを実行する(ステップS5)。
【0064】
記憶装置に保存した指100の座標情報に基づいて、上述した一定値VX
Constを算出する。
図7に示すように、第(n−1)回目の一次元画像情報と第n回目の一次元画像情報とは、X方向において(VX
Const×ΔT)離れた位置を撮像したデータであると扱うことができる。これによって、N個の一次元画像情報を二次元画像情報に展開することができる(ステップS2)。
【0065】
尚、N個の一次元画像情報を二次元画像情報に展開する方法は、これに限るものではない。例えば、指100の接触点が検出されていたといった条件下では、VX=(X
n−X
n-1)/ΔTを個別に計算してその値を用い、接触点が検出されなくなった時点以降は、接触点の検出が可能であった最後の状態における移動速度の値を用いるといったこともできる。
【0066】
また、Y方向の速度成分VYの影響が無視できない場合には、速度成分VYも考慮して、一次元画像情報を二次元画像情報に展開すればよい。
【0067】
次いで、得られた二次元画像情報から静脈パターンを抽出する画像処理を行う(ステップS3)。画像処理の方法は特に限定するものではない。例えば、差分法や零交差法を用いた方法やレンジフィルタを用いた方法などといった周知の画像処理方法から、適宜選択して画像処理を行えばよい。これによって、静脈パターンを抽出することができる。
【0068】
その後、例えば、静脈パターンにおける血管の分岐点の位置や方向などの特徴を抽出し、必要なデータ化を行う(ステップS4)。データ化の方法は特に限定するものではない。例えば指紋認証技術と同様に、マニューシャ(細かな枝分かれや途切れている部分)を抽出するといった方法で行うことができる。
【0069】
次いで、必要に応じて、登録処理や認証処理などを実行する(ステップS5)。静脈パターンを新たに登録するといった場合には、
図2に示す生体情報登録部52の動作に基づいて、静脈パターンのデータを新たに登録するといった処理を行えばよい。登録処理の方法は特に限定するものではなく、電子機器1の仕様などに応じて、例えば周知の方法の中から適宜好適な方法を選択して用いればよい。また、静脈パターンの認証を行う場合には、
図2に示す生体情報認証部53の動作に基づいて、既登録の静脈パターンのデータとを対比して認証処理を行えばよい。認証処理の方法は特に限定するものではなく、電子機器1の仕様などに応じて、例えば周知の方法の中から適宜好適な方法を選択して用いればよい(ステップS5)。
【0070】
以上、位置検出部20からの情報と撮像部40からの情報とに基づいて生体情報を生成するなどといった動作について説明した。
【0071】
第1の実施形態の電子機器にあっては、タッチパネル等の位置検出部が生体情報生成のための位置センサを兼ねるため、ラインセンサを付加し制御部に生体情報生成部などを加えることで生体情報を取得する機能を実装することができる。従って、小型化が可能であり、低コスト化も図ることができる。
【0072】
表示部上で指を滑らせるといった動作は、電子機器に所望の動作を行わせる際の通常の動作と同様である。従って、電子機器は、登録や認証といった動作を行う際に、操作者に対して違和感を覚えさせることがないといった利点を備えている。
【0073】
また、画像の表示に用いられる照明部に近赤外光を発生する光源を付加するだけで、生体に近赤外光を照射することができる。従って、撮像のための近赤外光の照射装置を別途設けるといったことが不要である。
【0074】
更には、撮像部によって一次元画像情報が取得される際には、撮像領域は指で覆われた状態である。従って、第1の実施形態の電子機器は、認証などの妨げになる外光の影響を受けにくいといった利点も備えている。
【0075】
以上、本発明を好ましい実施形態に基づいて説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。実施形態における電子機器の構成要素の具体的な構成、構造は例示であり、適宜、変更することができる。
【0076】
例えば指紋といった生体表面のパターンを撮像する構成とする場合には、撮像部が可視光を検出する構成とすればよい。この場合、撮像部付近の表示部を例えば白色表示とすることによって、生体に可視光を照射することができる。
【0077】
また、
図2に示す構成では、撮像部40を構成する光学部材41(赤外線フィルタ)と、光学部材42(屈折率分布レンズから成るアレイ)と、ラインセンサ43が、Z方向に重ねて並ぶように配置されている。この様子を
図8の(A)に示す。尚、
図8の(A)は、
図4の(B)と同様の断面図である。電子機器1の設計上、これらの構成要素をZ方向に重ねて並べる余裕がないといった場合には、スペースの開いた部分に構成要素を配置するため、
図8の(B)に示すように、光学部材(図に示す例では光学部材42)のラインセンサ側の部分を、表示部10の面に沿って延在するように配置するなどといった構成とすることもできる。
【0078】
また、
図1においては、撮像領域44が表示部10の長辺側の端部に沿って線状に配置されているとしたが、短辺側の端部に沿って線状に配置されている構成とすることもできる。
図9の(A)及び(B)は、撮像領域44を辺12B側の端部に沿って配置した構成の電子機器1Aの模式的な平面図である。
【0079】
電子機器1Aにおいて生体情報を生成するといった場合には、例えば、撮像領域44に直交するように指100を載置し、−Y方向に指を滑らせるといった動作をすればよい。
【0080】
また、
図2に示す構成では、撮像部40の撮像領域44は平面上に位置するように配置されるとしたが、例えば、指に倣うように撮像領域44を湾曲面上に位置するように配置するといった構成とすることもできる。この場合の撮像部の模式的な斜視図を
図10に示す。
【0081】
図10では、光学部材42の一面が湾曲する構成とされている。撮像領域44とラインセンサ43の受光面までの距離が一定ではないが、屈折率分布レンズアレイから成る光学部材42において、アレイを構成するレンズの強度が連続して変化するように構成することで、支障なく一次元画像情報を撮像することができる。また、例えば光学部材42を細かな光ファイバを束ねた構造としてもよい。尚、指に倣うように撮像領域44を湾曲面上に位置するように配置するといったことは、本発明に限らず、ラインセンサを用いて撮像を行うといった技術全般に適用することができる。