特許第6182849号(P6182849)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182849
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20170814BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   H01L29/78 652K
   H01L29/78 653A
   H01L29/78 658F
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-249204(P2012-249204)
(22)【出願日】2012年11月13日
(65)【公開番号】特開2014-99449(P2014-99449A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2015年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 保幸
【審査官】 早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−097412(JP,A)
【文献】 特開平11−330466(JP,A)
【文献】 特開平08−274301(JP,A)
【文献】 特開2006−351697(JP,A)
【文献】 特開2004−022941(JP,A)
【文献】 特開2013−120809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 29/739
H01L 21/331
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に溝が形成され、当該溝の各々の中において、表面に形成された酸化膜を介してゲート電極が形成され、当該ゲート電極が並列に接続されその電位が制御されることによって前記溝の側面にチャネルが誘起され、当該チャネルを介して電流が流れることによってスイッチング動作する半導体装置の製造方法であって、
前記溝は、前記ゲート電極の電位が制御されることよってその側面にチャネルが誘起される第1の溝と、前記ゲート電極の電位に関わらずその側面にはチャネルが誘起されない第2の溝と、に区分され、
前記半導体基板に前記溝を形成する溝形成工程と、
前記溝が形成された表面を熱酸化し、複数の前記溝の内面に酸化膜を形成する第1酸化工程と、
前記第2の溝の内面における前記酸化膜を除去せずに、前記第1の溝の内面における前記酸化膜を除去する酸化膜除去工程と、
当該酸化膜除去工程の後で、前記第2の溝の内面において前記酸化膜が残存した状態で再度熱酸化を行い、前記第1の溝の内面に前記酸化膜を再度形成する第2酸化工程と、
内面に前記酸化膜が形成された前記第1の溝及び前記第2の溝の中に前記ゲート電極を形成し、複数の当該ゲート電極を並列に接続するゲート電極形成工程と、
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記溝形成工程と前記第1酸化工程との間において、前記第2の溝の内面に酸化膜を形成した後で、当該酸化膜が前記第2の溝の内面における特定の領域において局所的に残存するように、前記酸化膜を除去する酸化膜厚調整工程を具備し、
前記第2の溝の中において、前記特定の領域において局所的に厚くされた前記酸化膜を前記第2酸化工程で得ることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレンチ構造を複数具備し、特にダミートレンチを具備するトレンチゲート型の半導体装置、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大電流で駆動することのできるパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)や、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:以下、IGBTと略)が、大電力用のスイッチング素子として用いられている。
【0003】
こうしたパワー半導体素子においては、動作電流のオン・オフがゲート電圧によって制御される。この動作電流は、パワーMOSFETにおいては、ソース・ドレイン間の電流であり、IGBTにおいては、パワーMOSFETと同様の動作に加えてバイポーラトランジスタとしても同時に行われ、この動作電流はエミッタ・コレクタ間の電流となる。パワー半導体素子においては、この動作電流が充分大きくとれることが要求される。
【0004】
図4は、パワーMOSFETの構成の一例を示す断面図である。このパワーMOSFETは、半導体基板中に形成された溝(トレンチ)中にゲートが形成されたトレンチゲート型の素子である。図4において、この半導体基板80においては、ドレイン層となるn層81の上に、n層82、p層83、p層84が順次形成されている。半導体基板80の表面側には、p層84、p層83、を貫通する溝(トレンチ)85が形成されている。溝85は、図4における紙面と垂直方向に延伸して平行に複数(図示された範囲では4つ)形成されている。溝85の内面には酸化膜86が一様に形成された上で、ゲート電極87が溝85を埋め込むように形成されている。また、半導体基板80の表面側においては、溝85の両側に、ソース領域となるn層88が形成されている。半導体基板80の裏面全面には、n層(ドレイン層)81と接触してドレイン電極89が形成されている。一方、半導体基板80の表面には、ソース電極90が形成されている。半導体基板80の表面側においては層間絶縁層91が溝85を覆うように形成されているため、ソース電極90は、n層88とp層84の両方に接触し、ゲート電極87とは絶縁される。このため、各溝85毎に、ゲート電極87に印加された電圧によって溝85の側面におけるp層83、p層84でチャネルが形成され、n層82とn層88の間でn型のMOSFETとして動作し、このMOSFETがオンとされる。すなわち、ゲート電極87に印加する電圧によって、ソース電極90とドレイン電極89との間の電流のオン・オフを制御することができる。
【0005】
図4に示されるように、溝85及びその周囲の構造は並列に多数形成され、各ゲート電極87は、図示された範囲外で並列に接続される。このため各溝85毎に形成されたMOSFETは全て並列に接続されており、このために、ソース電極90・ドレイン電極89間に大電流を流すことができ、そのオン・オフをゲート電極87に印加する電圧によって制御することができる。
【0006】
例えば特許文献1に記載されるように、こうしたトレンチゲート型の素子の具体的構成、例えば溝の配列構成等を最適化することによって、素子の特性を向上させることができる。例えば、溝85の間隔が広い場合には、電界集中が発生しやすくなるため、ソース・ドレイン間の耐圧が低下することがある。このため、一般的には溝85の間隔は、要求される耐圧によって適宜設定される。また、図4では単純化して溝85が等間隔で形成されたものとしているが、溝85は等間隔で形成される必要はなく、要求される特性に応じてその配置は適宜設定される。
【0007】
また、全ての溝中(あるいはその周囲)の構造を同一とする必要はなく、溝毎に複数種類の構造を採用することによる最適化も行われる。例えば、図4の構成では全ての溝85に対応してソース領域(n層)88が形成され、全ての溝85においてチャネルが形成される構成としているが、特許文献1の図13等に記載されるように、あえてチャネルが形成されず電流経路としては用いられない溝(ダミートレンチ)を形成する場合もある。この場合、ダミートレンチは、それ自身はMOSFETにおける電流経路としては機能しないが、ダミートレンチを設けることによって、通電損失が低減する、負荷短絡耐量が向上する、等の効果が得られる。このため、ダミートレンチを設けたトレンチゲート型の素子は、パワー半導体素子として広く用いられている。
【0008】
ダミートレンチを1個おきに形成した構成のパワーMOSFETの一例の断面図を図5に示す。ここでは、左から2、4番目の溝85がダミートレンチとなる。実際には、MOSFETとして機能する溝とダミートレンチの組み合わせの構成は特性に応じて各種のものが考えられるが、図5の例では、これを最も単純化して示している。ここで、特許文献1に記載の通り、ダミートレンチ(左から2、4番目の溝85)中のゲート電極87は、MOSFETのゲートとして機能する左から1、3番目の溝85におけるゲート電極87と並列に接続される場合もあり、これによって通電損失が低減する、負荷短絡耐量が向上する、等の効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−22941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
例えば、図5の構成においては、ゲート電極87が全て並列に接続された場合、ゲート容量(ゲート・ソース間容量)は、4つの溝85における各ゲート電極87とソース電極90(あるいは半導体基板80)間の容量の和となる。ここで、本来のゲート容量は、MOSFETとして機能する左から1、3番目の溝85におけるゲート電極87とソース電極90の容量の和であるが、図5の構成においては、ダミートレンチ(左から2、4番目の溝85)における容量がこれに加わる。このため、図5の構成においては、ゲート容量(ゲート・ソース間の容量)が大きくなった。
【0011】
このようにゲート容量が大きくなった場合には、スイッチング動作時におけるゲート電圧の上昇速度や下降速度を高くすることが困難となるため、スイッチング速度を高めることは困難であった。
【0012】
すなわち、ダミートレンチを用いたトレンチゲート型の素子において、ゲート容量を低減することは困難であった。
【0013】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板に溝が形成され、当該溝の各々の中において、表面に形成された酸化膜を介してゲート電極が形成され、当該ゲート電極が並列に接続されその電位が制御されることによって前記溝の側面にチャネルが誘起され、当該チャネルを介して電流が流れることによってスイッチング動作する半導体装置の製造方法であって、前記溝は、前記ゲート電極の電位が制御されることよってその側面にチャネルが誘起される第1の溝と、前記ゲート電極の電位に関わらずその側面にはチャネルが誘起されない第2の溝と、に区分され、前記半導体基板に前記溝を形成する溝形成工程と、前記溝が形成された表面を熱酸化し、複数の前記溝の内面に酸化膜を形成する第1酸化工程と、前記第2の溝の内面における前記酸化膜を除去せずに、前記第1の溝の内面における前記酸化膜を除去する酸化膜除去工程と、当該酸化膜除去工程の後で、前記第2の溝の内面において前記酸化膜が残存した状態で再度熱酸化を行い、前記第1の溝の内面に前記酸化膜を再度形成する第2酸化工程と、内面に前記酸化膜が形成された前記第1の溝及び前記第2の溝の中に前記ゲート電極を形成し、複数の当該ゲート電極を並列に接続するゲート電極形成工程と、を具備することを特徴とする。
本発明の半導体装置の製造方法は、前記溝形成工程と前記第1酸化工程との間において、前記第2の溝の内面に酸化膜を形成した後で、当該酸化膜が前記第2の溝の内面における特定の領域において局所的に残存するように、前記酸化膜を除去する酸化膜厚調整工程を具備し、前記第2の溝の中において、前記特定の領域において局所的に厚くされた前記酸化膜を前記第2酸化工程で得ることを特徴とする
【発明の効果】
【0015】
本発明は以上のように構成されているので、ダミートレンチを用いたトレンチゲート型の素子において、ゲート容量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図(続き)である。
図3】本発明の実施の形態に係る半導体装置の変形例の断面図である。
図4】トレンチゲート型の従来の半導体装置の一例の断面図である。
図5】ダミートレンチを用いた従来の半導体装置の一例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態となる半導体装置の製造方法について説明する。この半導体装置は、ゲートによってチャネルのオン・オフが制御されて電流のオン・オフが制御されるトレンチゲート型のパワーMOSFETである。ゲート電極は、半導体基板の表面に平行に形成された複数の溝(トレンチ)中に形成され、各ゲート電極は並列に接続される。各ゲート電極は、溝の中の表面に酸化膜が形成された上で、溝を埋め込んだ形態で形成される。
【0018】
ただし、全ての溝においてチャネルが形成される構成とはされず、一部の溝(ダミートレンチ)においては、ソース領域が形成されないためにチャネルも形成されない。このため、ダミートレンチは電流経路としては機能しないが、ダミートレンチにおいてもゲート電極が形成され、かつダミートレンチを含む全ての溝中のゲート電極は並列に接続される。ここで、ダミートレンチ中における酸化膜は、チャネルが形成されMOSFETとして機能する溝の中における酸化膜よりも厚くされる。
【0019】
図1(a)〜(e)、図2(g)〜(i)は、この半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。ここで示される断面は、図4に対応する断面となっており、隣接する4つの溝(トレンチ)に対応した領域を示している。ダミートレンチは一つおきに形成されるものとしている。また、特許文献1に記載されるように、ダミートレンチを含んだ溝の構成としては各種のものがあるが、ここでは、図5に対応してダミートレンチを含む最も単純な構成の例について示している。
【0020】
まず、図1(a)に示されるように、ドレイン層となるn層11の上に、n層12、p層13、p層14が順次形成された半導体(Si)基板10の表面におけるp層14中に、後でソース領域となるn層15を局所的かつ周期的に形成する(ソース領域形成工程)。n層15は、例えばイオン注入や不純物拡散等によって、ダミートレンチではない溝に対応する箇所に局所的に形成することができる。あるいは、n層15をp層14の表面全面に形成した後に、n層15の表面を局所的にエッチングして掘り下げることによって2つのn層15の間にp層14を露出させた構成としても、以降の製造工程を同様に行うことができる。
【0021】
次に、図1(b)に示されるように、図示される範囲では4箇所に溝(トレンチ)16を形成する(溝形成工程)。溝16は、第1の溝161と第2の溝(ダミートレンチ)162に区分される。第1の溝161は、n層15の中心(2箇所)に形成され、図示の範囲では左から1、3番目の溝16がこれに相当する。一方、第2の溝162は、第1の溝161と半周期だけずれた位置に形成され、図示の範囲では左から2、4番目の溝16がこれに相当する。各溝16は、図1(b)における紙面と垂直に延伸している。溝16は、例えばフォトレジストをマスクとして、表面(p層14側)からn層12に達するまでドライエッチングを行うことによって形成され、第1の溝161、第2の溝162を同時に形成することができる。
【0022】
次に、図1(c)に示されるように、熱酸化を行い、図1(b)の構造の表面に酸化膜(SiO)17を形成する(第1酸化工程)。熱酸化により、酸化膜17は、全ての溝16(第1の溝161、第2の溝162)の内面を含む表面全体でほぼ一様な厚さで形成される。
【0023】
一般に、ドライエッチングによって形成された溝16の内面の最表面には、ドライエッチングによって多くの結晶欠陥が形成される。一方、酸化膜17が熱酸化によって形成される際には、最表面のSi層が酸素と反応して酸化膜(SiO)17となるため、半導体基板10の最表面近傍のSi層はSiOに変化する。このため、溝16の内部の最表面における結晶欠陥を多く含むSi層は酸化膜(SiO)17に変化する。
【0024】
次に、図1(d)に示されるように、第2の溝162の中とその近傍以外における酸化膜17を選択的に除去する(酸化膜除去工程)。これは、リソグラフィによって第2の溝162の中とその近傍にフォトレジスト層を形成した後に、バッファードフッ酸等を用いたウェットエッチングを行い、その後でフォトレジスト層を除去することによって容易に実現できる。
【0025】
この工程によって、第1の溝161中の酸化膜17は除去される。ここで除去される酸化膜17は、前記の通り、結晶欠陥を多く含んだSi層が変化して形成されたものである。また、ウェットエッチングが行われる際には、ドライエッチングの場合のような結晶欠陥が新たに形成されることはない。このため、第1の溝161内におけるこの酸化膜17が除去されることによって、第1の溝161内においては結晶欠陥のないSi表面が露出する。一方、第2の溝162中の酸化膜17はそのまま残存する。なお、このように、結晶欠陥を多く含むSi層を熱酸化し、形成されたSiO層(犠牲酸化層)をウェットエッチングで除去することによって、結晶欠陥のないSi層を露出させる工程は、犠牲酸化工程として知られており、トレンチゲート型の素子を製造する際には一般的に行われている。
【0026】
次に、この状態で再度熱酸化を行い、図1(e)に示されるように、改めて酸化膜17を全面に形成する(第2酸化工程)。前回の熱酸化時(図1(c):第1酸化工程)においては、形成された酸化膜17の厚さは一様であったのに対し、今回の熱酸化時においては、前回の熱酸化時に形成された酸化膜17が残存した領域と除去された領域が混在するため、最終的に形成された酸化膜17の厚さは一様とはならず、第2の溝162の中及びその近傍の酸化膜17は、第1の溝161の中の酸化膜17よりも厚くなる。すなわち、第2の溝(ダミートレンチ)162中の酸化膜17は、動作時にチャネルが形成される第1の溝161中の酸化膜17よりも厚くなる。具体的には、前者の箇所における酸化膜17の厚さは例えば250nm程度、後者の箇所における酸化膜17の厚さは例えば150nm程度とすることができる。なお、第1酸化工程で形成される酸化膜17の膜厚は、結晶欠陥を多く含む層が酸化されるように適宜設定される。
【0027】
後者の箇所における酸化膜17はゲート酸化膜として機能するため、その厚さは、閾値等、要求されるMOSFETのスイッチング特性に応じて設定される。この際、前記の通り、後者の箇所における酸化膜17は結晶欠陥が除去された表面に形成されるため、この領域におけるSiO/Si界面の結晶欠陥は少ない。このため、この界面における表面準位密度も小さく、この領域では安定して良好なMOS特性を得ることができ、この界面を利用すれば良好なMOSFET特性が得られる。このように、犠牲酸化工程の後で再度酸化膜を熱酸化によって形成すれば、この界面において良好なMOSFET特性が得られることは、周知である。
【0028】
次に、図2(f)に示されるように、各溝16(第1の溝161、第2の溝162)中を埋め込んでゲート電極18を形成する(ゲート電極形成工程)。ゲート電極18は、例えば導電性の多結晶シリコンで構成される。この材料を図1(e)の構造の全面(溝16の中を含む)にCVD法等によって形成した後に、エッチバックを行うことによって、各溝16中においてのみこの材料を残存させて図2(f)の形態とすることができる。なお、複数のゲート電極18は、図示された範囲外で全て電気的に接続されているものとする。
【0029】
次に、図2(g)に示されるように、図2(f)の構造の表面全体に層間絶縁層19を形成する(層間絶縁層形成工程)。層間絶縁層19は、例えば酸化膜17と同様にSiOで構成されるが、酸化膜17は熱酸化で形成されたのに対し、層間絶縁層19はCVD法等によって形成される。このため、層間絶縁層19は、酸化膜17と比べて厚く、充分な絶縁耐圧が得られる程度に厚く形成することができる。
【0030】
次に、図2(h)に示されるように、層間絶縁層19とその下の酸化膜17をパターニングし、各溝16を含む狭い領域のみにこれらが残存した形態とする(層間絶縁層成形工程)。このパターニングは、フォトレジストをマスクとしてSiOをドライエッチングあるいはウェットエッチングをすることによって行うことができる。ここで、第1の溝161周囲においてはn層15が部分的に露出するように、層間絶縁層19、酸化膜17はパターニングされる。
【0031】
次に、図2(i)に示されるように、図2(h)の構造の表面全体を覆ってソース電極20を形成する(ソース電極形成工程)。層間絶縁層19、酸化膜17は前記の通りにパターニングされているため、ソース電極20は、p層14と各n層15(ソース領域)に接続される。また、裏面側におけるn層11(ドレイン層)にはドレイン電極21を形成する。ソース電極20は例えばAl等からなる導体層、ドレイン電極21は例えばTi、Ni、Au等からなる導体層で構成することができ、これらを例えばスパッタリングによって、それぞれ表面、裏面に形成することができる。
【0032】
図2(i)の構成の半導体装置における半導体基板10の構成、溝16(第1の溝161、第2の溝(ダミートレンチ)162)の配置は、図5に示されたパワーMOSFETと同様である。第1の溝161の側面においては、ゲート電極18の電位が制御されることによってチャネルが誘起される一方で、第2の溝(ダミートレンチ)162の側面にはゲート電極18の電位に関わらずチャネルは誘起されない。図1、2ではダミートレンチを含む溝16の構成が最も単純である例について示しているが、特許文献1に記載されるように、電極の接続や溝周囲の構成を適宜変更することによって、様々な効果を得ることができ、例えば、通電損失の低減や、負荷短絡耐量の向上を同様に図ることができる。
【0033】
ここで、前記の通り、第1の溝161中の酸化膜17は結晶欠陥が除去された表面に形成されるため、第1の溝161において形成されるチャネルの特性を良好とすることができる。すなわち、第1酸化工程、酸化膜除去工程、第2酸化工程を行うことによって、動作時にチャネルが形成される第1の溝161において形成されるチャネルの特性を良好とすることができる。また、第1の溝161中の酸化膜17の厚さによって、閾値等、パワーMOSFETのスイッチング特性は影響を受けるが、この厚さは第2酸化工程の酸化条件で設定できる。
【0034】
一方で、図2(i)の構成においては、第2の溝(ダミートレンチ)162における酸化膜17は、チャネルが形成される第1の溝161における酸化膜17よりも厚くなる。このため、第2の溝162におけるゲート電極18と半導体基板10間の容量は、第1の溝161における容量よりも小さくなる。このため、第2の溝162中のゲート電極18が第1の溝161中のゲート電極18と並列に接続された場合でも、図5の構造のパワーMOSFETと比べて全体のゲート容量を小さくすることができる。このため、ゲートの電圧上昇速度を高くし、スイッチング速度を高めることができる。
【0035】
すなわち、上記の製造方法によれば、チャネルが形成される第1の溝161における酸化膜17を良好なMOSFET特性が得られるように最適化し、かつ、第2の溝(ダミートレンチ)162における酸化膜17を厚くすることによってゲート容量の増大を抑制することができる。
【0036】
ここで、前記の通り、犠牲酸化層を形成し、これを除去した後に再度酸化膜を形成する工程は周知であり、特にトレンチゲート型の素子の製造工程においては、良好なMOSFET特性を得るために、これらの工程は一般的に行われている。
【0037】
ただし、ここでは、図1(c)の状態の酸化膜17(犠牲酸化層に相当)を全て除去せず、図1(d)に示されるようにこれを第2の溝162中において残存させている。これによって、この中において最終的に得られる酸化膜17を厚くすることができる。第1の溝161中の酸化膜17の厚さはMOSFETの特性に応じて適宜設定されるために、ゲート容量を小さくするためにこれを厚くすることは困難であるのに対し、第2の溝162はダミートレンチであるため、その中の酸化膜17を厚くすることによるMOSFETの特性の上での悪影響はない。
【0038】
この際、犠牲酸化層を形成してこれを全面において除去する従来の製造方法を実行する場合と比べて、図1(d)の形態を実現するために新たに必要となる作業は、犠牲酸化層を除去する直前におけるフォトレジストパターンの形成、及び除去後におけるフォトレジストパターンの除去だけである。このため、これらの作業を従来の製造方法に追加するだけで、上記のような膜厚構成とされた酸化膜17を得ることができる。すなわち、ダミートレンチを用いた場合でも、ゲート容量の増大が抑制されたパワーMOSFETを容易に得ることができる。
【0039】
なお、図1、2の構成においては、第2の溝(ダミートレンチ)162が1個おきに設けられたものとされたが、ダミートレンチをどういう構成で設けるかは、要求される特性に応じて適宜設定することができる。図3は、この構成の一例を示す、図2(i)に対応する断面図である。
【0040】
この構成においては、4つ形成された溝において、n層15(ソース領域)は、一番左側の溝の右側、左から2番目の溝の左側、左から4番目の溝の右側に形成される。すなわち、これらの溝が第1の溝161となる。これにより、第1の溝161におけるn層15が形成された側の側面にチャネルが形成される。このため、左から1、2、4番目の溝においては、酸化膜17は薄くされ、その厚さはMOSFETの特性に応じて適宜設定される。
【0041】
これに対して、左から3番目の溝においては、n層15(ソース領域)が形成されないため、この中における酸化膜17は厚くされる。すなわち、左から3番目の溝が第2の溝(ダミートレンチ)162となる。これによって、全体のゲート容量の増大を抑制することができる。
【0042】
また、第2の溝の内面における酸化膜厚を、素子領域の全体において均一とする必要はない。例えば、ある程度のゲート容量を維持した状態で、ゲートの耐圧を維持することが必要な場合もある。こうした場合、特に耐圧が懸念される領域において局所的に酸化膜を厚くすることが有効である。例えば、溝(第2の溝)の延伸方向の素子領域端部付近における耐圧が特に低くなる場合がある。この場合には、単一の第2の溝(ダミートレンチ)中においても、素子領域の端部において局所的に酸化膜を厚くすることによって、耐圧を確保することができる。こうした構成の酸化膜は、熱酸化と、酸化膜を局所的に除去する工程を更に追加することによって、上記と同様に形成することができる。
【0043】
このためには、例えば、第1酸化工程の前に、第1酸化工程と同様に表面全体あるいは第2の溝中において均一に酸化膜を形成する。その後、第2の溝の中において、酸化膜を厚くすべき特定の領域以外においてこの酸化膜を除去する(酸化膜厚調整工程)。この工程は、上記の第1酸化工程、酸化膜除去工程と同様に行うことができる。これによって、第2の溝の中において、酸化膜を厚くすべき特定の領域のみに局所的に酸化膜が形成された状態とすることができる。その後で前記の第1酸化工程以降を行うことによって、第2酸化工程の後で得られる酸化膜を、第2の溝の中の特定の領域で局所的に厚くすることができる。こうした工程を経た場合においても、第1の溝中において良好なMOSFET特性が得られることは明らかである。また、酸化膜厚調整工程を複数回組み合わせることにより、第2の溝の中の酸化膜厚を3段階以上に設定することができることも明らかである。
【0044】
なお、上記の例では、この半導体装置がパワーMOSFETである場合について記載したが、溝周辺における構造、動作が同様であるIGBTも同様に製造することができ、同様の効果を奏することは明らかである。
【符号の説明】
【0045】
10、80 半導体基板
11、81 n層(ドレイン層)
12、82 n
13、83 p
14、84 p層
15、88 n層(ソース領域)
16、85 溝
17、86 酸化膜
18、87 ゲート電極
19、91 層間絶縁層
20、90 ソース電極
21、89 ドレイン電極
161 第1の溝
162 第2の溝(ダミートレンチ)
図1
図2
図3
図4
図5