(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記角度調節羽根制御部は、前記吹出口の前記左側部分の少なくとも一部の角度調節羽根及び前記右側部分の少なくとも一部の角度調節羽根を、前記平面視における正面方向を基準としてそれぞれ左右に所定角度に制御することで、前記吹出口の中央部分において前記左側部分の角度調節羽根及び前記右側部分の角度調節羽根を介した空気を合流させる、請求項1に記載の空調室内機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1では、空気は天井壁を伝わって吹出口15に対向する壁面に伝わることを前提としているが、部屋が大きい場合及び吹出口15からの風量が不十分な場合などには空気を天井壁を伝わせた後、吹出口15に対向する壁面に到達させることができない。このような場合には、部屋内全体の空気を循環させて概ね均一に空気調和するサーキュレーション効果を得ることができない。
【0004】
そこで、本発明の目的は、サーキュレーション効果を高めることができる空調室内機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係る空調室内機は、吹出口と、角度調節羽根と、コアンダ羽根と、モード受付部と、角度調節羽根制御部と、コアンダ羽根制御部と
、初期設定部とを備える。吹出口は熱交換された空気を吹き出す。角度調節羽根は、吹出口から吹出される吹出空気の気流の左右方向の角度を調節する。コアンダ羽根は、空気の流れのそばにあってその流れの方向と異なる方向の面に沿った方向に流れようとする現象であるコアンダ効果を利用して吹出空気を自己の外側面に沿った気流に変える。モード受付部は、空調対象空間の空気を循環させるサーキュレーション気流モードを含むモードを受け付ける。角度調節羽根制御部は、モード受付部がサーキュレーション気流モードを受け付けると、吹出口の左側部分から吹き出される空気の平面視方向と、吹出口の右側部分から吹き出される空気の平面視方向とが吹出口の前方において交差するように角度調節羽根を制御する。コアンダ羽根制御部は、サーキュレーション気流モードにおいて、コアンダ羽根を制御して、吹出空気を空調対象空間の天井面に向かわせる。
初期設定部は、空調室内機の初期設定時に、角度調節羽根制御部がサーキュレーション気流モードにおいて左側部分の角度調節羽根からの空気と右側部分の角度調節羽根からの空気とが吹出口の前方において交差するように角度調節羽根を制御するか否かの設定を受け付ける。
【0006】
これにより、吹出口の中央部分の風量を大きくし、空調対象空間の吹出口に対向する奥側にまで、熱交換された空気を到達させることができる。よって、空調対象空間の空気を循環させて概ね均一に空気調和してサーキュレーション効果を高めることができる。
【0007】
また、空調室内機の設定の自由度を高めつつ、サーキュレーション効果を高めることができる。
【0008】
本発明の第2観点に係る空調室内機は、第1観点に係る空調室内機において、角度調節羽根制御部は、吹出口の左側部分の少なくとも一部の角度調節羽根及び右側部分の少なくとも一部の角度調節羽根を、平面視における正面方向を基準としてそれぞれ左右に所定角度に制御することで、吹出口の中央部分において左側部分の角度調節羽根及び右側部分の角度調節羽根を介した空気を合流させる。
【0009】
これにより、吹出口の中央部分の風量を大きくし、サーキュレーション効果を高めることができる。
【0010】
本発明の第3観点に係る空調室内機は、第2観点に係る空調室内機において、所定角度は5°〜10°である。
【0011】
これにより、左右の角度調節羽根に沿った空気が互いに干渉して打ち消し合うのを抑制しつつ、空気を吹出口の中央部分において合流させて風量を大きくすることができる。
【0012】
本発明の第4観点に係る空調室内機は、第1観点に係る空調室内機において、モードには左右風向自動モード及びユーザが左右の風向を指定する左右風向ユーザ設定モードがさらに含まれる。モード受付部がサーキュレーション気流モード及び左右風向自動モードを受け付けると、角度調節羽根制御部は、左側部分の角度調節羽根からの空気と右側部分の角度調節羽根からの空気とが吹出口の前方において交差するように角度調節羽根を制御する。
【0013】
これにより、ユーザによる左右風向の指定を優先してユーザ満足度を維持しつつ、少なくともサーキュレーション気流モード及び左右風向自動モードの際にはサーキュレーション効果を高めることができる。
【0014】
本発明の第
5観点に係る空調室内機は、第
1観点に係る空調室内機において、初期設定部は、空調室内機が設置される空調対象空間の形状に応じて角度調節羽根を制御するか否かの設定を受け付ける。
【0015】
これにより、空調室内機の設定の自由度を高めつつ、空調対象空間の奥側にまで空気を到達させてサーキュレーション効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1観点に係る空調室内機では、サーキュレーション効果を高めることができる。
また、空調室内機の設定の自由度を高めつつ、サーキュレーション効果を高めることができる。
【0017】
本発明の第2観点〜第3観点に係る空調室内機では、吹出口の中央部分の風量を大きくし、サーキュレーション効果を高めることができる。
【0018】
本発明の第4観点に係る空調室内機では、ユーザ満足度を維持しつつ、サーキュレーション効果を高めることができる。
【0019】
本発明の第
5観点に係る空調室内機では、空調室内機の設定の自由度を高めつつ、サーキュレーション効果を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0022】
(1)空調室内機10の外観構成
(1−1)全体構成
図1は、本発明の一実施形態に係る運転停止時の空調室内機10の断面図である。また、
図2は、運転時の空調室内機10の断面斜視図である。
図1及び
図2において、空調室内機10は壁掛けタイプであり、本体ケーシング11、室内熱交換器13、室内ファン14、底フレーム16、及び制御部40が搭載されている。
【0023】
本体ケーシング11は、天面部11a、前面パネル11b、背面板11c及び下部水平板11dを有し、内部に室内熱交換器13、室内ファン14、底フレーム16、及び制御部40を収納している。
【0024】
天面部11aは、本体ケーシング11の上部に位置し、天面部11aの前部には、吸込口(図示せず)が設けられている。
【0025】
前面パネル11bは本体ケーシング11の前面部を構成しており、吸込口がないフラットな形状を成している。また、前面パネル11bは、その上端が天面部11aに回動自在に支持され、ヒンジ式に動作することができる。
【0026】
室内熱交換器13及び室内ファン14は、底フレーム16に取り付けられている。室内熱交換器13は、通過する空気との間で熱交換を行う。また、室内熱交換器13は、側面視において両端が下方に向いて屈曲する逆V字状の形状を成し、その下方に室内ファン14が位置する。室内ファン14は、クロスフローファンであり、室内から取り込んだ空気を、室内熱交換器13に当てて通過させた後、室内に吹き出す。
【0027】
本体ケーシング11の下部には、吹出口15が設けられている。吹出口15には、吹出口15から吹き出される吹出空気の方向を変更する水平フラップ31が回動自在に取り付けられている。水平フラップ31は、モータ(図示せず)によって駆動され、吹出空気の方向を変更するだけでなく、吹出口15を開閉することもできる。水平フラップ31は、傾斜角が異なる複数の姿勢をとることが可能である。
【0028】
また、吹出口15の近傍にはコアンダ羽根32が設けられている。コアンダ羽根32は、モータ(図示せず)によって駆動され前後方向に傾斜した姿勢をとることが可能であり、運転停止時に前面パネル11bに設けられた収容部130に収容される。コアンダ羽根32は、傾斜角が異なる複数の姿勢をとることが可能である。
【0029】
また、吹出口15は、吹出流路18によって本体ケーシング11の内部と繋がっている。吹出流路18は、吹出口15から底フレーム16のスクロール17に沿って形成されている。
【0030】
室内空気は、室内ファン14の稼動によって吸込口、室内熱交換器13を経て室内ファン14に吸い込まれ、室内ファン14から吹出流路18を経て吹出口15から吹き出される。
【0031】
制御部40は、例えば本体ケーシング11を前面パネル11b側から視て室内熱交換器13及び室内ファン14の右側方に位置しており、室内ファン14の回転数制御、水平フラップ31及びコアンダ羽根32の動作制御を行う。
【0032】
また、天面部11aと室内熱交換器13との間にはフィルタ清掃装置70が配置されており、フィルタ71に付着した塵埃を自動で除去することができる。
【0033】
(1−2)各部の構成
(a)前面パネル11b
図1に示すように、前面パネル11bは本体ケーシング11の上部前方からなだらかな円弧曲面を描きながら下部水平板11dの前方エッジに向かって延びている。前面パネル11bの下部に本体ケーシング11の内側に向かって窪んだ領域がある。この領域の窪み深さはコアンダ羽根32の厚み寸法に合うように設定されており、コアンダ羽根32が収容される収容部130を成している。収容部130の表面もなだらかな円弧曲面である。
【0034】
(b)吹出口15
図1及び
図2に示すように、吹出口15は、本体ケーシング11の下部に設けられており、横方向(
図1紙面と直交する方向)を長辺とする長方形の開口である。吹出口15の下端は下部水平板11dの前方エッジに近接しており、吹出口15の下端と上端とを結ぶ仮想面は前方上向きに傾斜している。
【0035】
(c)スクロール17
スクロール17は、室内ファン14に対峙するように湾曲した隔壁であり、底フレーム16の一部である。スクロール17の終端Fは、吹出口15の周縁近傍まで到達している。吹出流路18を通る空気は、スクロール17に沿って進み、スクロール17の終端Fの接線方向に送られる。
【0036】
(d)角度調節羽根20
角度調節羽根20は、
図1及び
図2に示すように、複数の羽根片201と、複数の羽根片201を連結する連結棒203とを有している。また、角度調節羽根20は、吹出流路18において、水平フラップ31よりも室内ファン14近傍に配置されている。
【0037】
角度調節羽根20について
図3を用いてより詳細に説明する。
図3は角度調節羽根を空調室内機10の前面側から見た場合の模式図である。角度調節羽根20の各羽根片201は、吹出口15の長手方向であるW方向に沿って配置されている。
図3では、全ての羽根片201の平面がW方向と概ね直交する方向に向いている。角度調節羽根20は、空調室内機10の前面から見て左側に位置する左側角度調節羽根20Lと、右側に位置する右側角度調節羽根20Rと、を含む。左側角度調節羽根20Lは複数の左側羽根片201Lを含み、右側角度調節羽根20Rは複数の右側羽根片201Rを含む。連結棒203もまた左側連結棒203Lと右側連結棒203Rとを含む。左側角度調節羽根20Lの各左側羽根片201Lは左側接続点CLを介して左側連結棒203Lに連結されており、右側角度調節羽根20Rの各右側羽根片201Rは右側接続点CRを介して右側連結棒203Rに連結されている。
【0038】
本体ケーシング11の左側端面11eには左側角度調節羽根20Lを駆動させる左側駆動モータ50Lが設けられている。左側連結棒203Lの本体ケーシング11側の端部と左側駆動モータ50Lの出力軸とが連結されている。左側駆動モータ50Lは例えばステッピングモータで構成されており、制御部40から与えられるパルス数に応じて回転する。左側角度調節羽根20Lの各左側羽根片201Lには、
図1及び
図3に示す左側回動軸PLが設けられている。よって、左側角度調節羽根20Lの各左側羽根片201Lは、左側駆動モータ50Lの駆動に応じて左側回動軸PLを中心として左右に回動される。同様に、本体ケーシング11の右側端面11fには右側角度調節羽根20Rを駆動させる右側駆動モータ50Rが設けられている。右側連結棒203Rの本体ケーシング11側の端部と右側駆動モータ50Rの出力軸とが連結されている。右側角度調節羽根20Rの各右側羽根片201Rは右側駆動モータ50Rの駆動に応じて右側回動軸PRを中心として左右に回動される。このように左側角度調節羽根20L及び右側角度調節羽根20Rはそれぞれ左側駆動モータ50L及び右側駆動モータ50Rそれぞれにより独立に駆動可能である。
【0039】
このような左側角度調節羽根20L及び右側角度調節羽根20Rの回動により、左右風向が制御された気流が吹出口15から吹き出される。
【0040】
(e)水平フラップ31
水平フラップ31は、
図1及び
図2に示すように、円弧状の部材である。水平フラップ31は、凸状の外側湾曲面を含む外側面31aと、凹状の内側湾曲面を含む内側面31bを有している。
【0041】
水平フラップ31は、吹出口15を塞ぐことができる程度の面積を有している。水平フラップ31が吹出口15を閉じた状態において、その外側面31aは前面パネル11bの曲面の延長上にあるような外側に凸のなだらかな円弧曲面に仕上げられている。また、水平フラップ31の内側面31b(
図2参照)も、外面にほぼ平行な円弧曲面を成している。
【0042】
水平フラップ31は、下端部に回動軸311を有している。回動軸311は、吹出口15の下端近傍で、本体ケーシング11に固定されているステッピングモータ(図示せず)の回転軸に連結されている。ステッピングモータの駆動に応じて水平フラップ31が回転軸を中心として回動し、吹出口15が開閉される。
【0043】
水平フラップ31が吹出口15を開けている状態において、吹出口15から吹き出された吹出空気は、水平フラップ31の内側面31bに概ね沿って流れる。すなわち、スクロール17の終端Fの接線方向に概ね沿って吹き出された吹出空気は、その風向が水平フラップ31によってやや上向きに変更される。
【0044】
(f)コアンダ羽根32
コアンダ羽根32は、
図1及び
図2に示すように、断面形状が円弧状の部材である。コアンダ羽根32は、凸状の外側湾曲面を含む外側面32aと、凹状の内側湾曲面を含む内側面32bを有している。
【0045】
コアンダ羽根32は、空調運転が停止している間や後述する通常吹出モードでの運転では収容部130に収納されている。コアンダ羽根32は回動することによって収容部130から離れる。コアンダ羽根32の回動軸321は、収容部130の下端近傍で且つ本体ケーシング11の内側の位置(吹出流路18上壁の上方の位置)に設けられており、コアンダ羽根32の下端部と回動軸321とは所定の間隔を保って連結されている。それゆえ、回動軸321が回動してコアンダ羽根32が収容部130から離れるほど、コアンダ羽根32の下端の高さ位置は低くなるように回転する。また、コアンダ羽根32が回転して開いたときの傾斜は本体ケーシング11の前面部の傾斜よりも緩やかである。
【0046】
本実施形態では、収容部130は、送風路の外に設けられており、収容時にコアンダ羽根32の全体が送風路の外側に収容される。かかる構造に代えて、コアンダ羽根32の一部のみが送風路の外側に収容され、残りが送風路内(たとえば、送風経路の上壁部)に収容されるようにしてもよい。
【0047】
また、回動軸321が
図1正面視反時計方向に回動することによって、コアンダ羽根32の上端および下端ともに円弧を描きながら収容部130から離れるが、そのとき、コアンダ羽根32の上端と吹出口15より上方の収容部130との最短距離は、下端と収容部130との最短距離より大きい。すなわち、コアンダ羽根32は前方に行くにしたがって前記室内機前面部から離れるような姿勢に制御される。そして、回動軸321が
図1正面視時計方向に回動することによって、コアンダ羽根32は収容部130に近づき、最終的に収容部130に収容される。コアンダ羽根32の運転状態の姿勢としては、収容部130に収納された状態、回転して前方上向きに傾斜した姿勢、さらに回転してほぼ水平な姿勢、さらに回転して前方下向きに傾斜した姿勢がある。
【0048】
また、コアンダ羽根32の長手方向の寸法は、水平フラップ31の長手方向の寸法以上となるように設定されている。この理由は水平フラップ31で風向調節された吹出空気すべてをコアンダ羽根32で受けるためであり、その目的はコアンダ羽根32の側方からの吹出空気がショートサーキットすることを防止することである。
【0049】
(2)空調室内機10のハードウェア構成及び機能構成
制御部40は、空調対象空間の空気を循環させて概ね均一に空気調和してサーキュレーション効果を高めるための制御を行う。制御部40の機能構成及びハードウェア構成について
図4を用いて以下に説明する。
図4は制御部の機能構成及びハードウェア構成を示すブロック図である。
【0050】
制御部40は、CPU(Central Processing Unit)60、RAM(Random Access Memory)61及びROM(Read Only Memory)62を有している。
【0051】
(2−1)ROM62
ROM62は、空調室内機10の全体を制御するための制御プログラム88を格納している。
【0052】
(2−2)RAM61
RAM61は、調節角度記憶部85、モード記憶部86及び初期設定記憶部87を含む。
【0053】
調節角度記憶部85は、角度調節羽根制御部80により制御された左側角度調節羽根20L及び右側角度調節羽根20Rのそれぞれの調節角度を記憶している。
【0054】
モード記憶部86は、モード受付部81が受け付けたモードを記憶している。モードには、サーキュレーション気流モード、左右風向自動モード及び左右風向ユーザ設定モードが含まれる。サーキュレーション気流モードは、水平フラップ31、コアンダ羽根32及び角度調節羽根20を用いて吹出口15から吹き出される空気の流れを制御し、空調対象空間の空気を循環させるモードである。左右風向自動モードは、角度調節羽根20が自動で左右に回動されて左右風向が調節されるモードである。左右風向ユーザ設定モードは、リモコン等を介してユーザが指定した左右風向に基づいて角度調節羽根20の角度が調節されるモードである。その他、モードには、水平フラップ31を自動で上下させる水平フラップ自動モード、ユーザの指定により水平フラップ31を上下させる水平フラップユーザ設定モード等が含まれていてもよい。
【0055】
初期設定記憶部87は、サーキュレーション気流モードにおいて角度調節羽根20の特定の制御を行うか否かの初期設定を初期設定部82が受け付けると、その初期設定を記憶する。
【0056】
(2−3)CPU60
CPU60は、角度調節羽根制御部80、モード受付部81、初期設定部82、水平フラップ制御部83及びコアンダ羽根制御部84を含む。
【0057】
(a)初期設定部82
初期設定部82は、角度調節羽根20の特定の制御を行うか否かの初期設定を例えばサービスマンから受け付ける。なお、特定の制御とは、サーキュレーション効果を高めることができる制御をいうものとする。
【0058】
例えば、空調室内機10の設置時に、設置すべき空調対象空間が角度調節羽根20の制御がなくてもサーキュレーション効果を高めることができる空間であれば、角度調節羽根制御部80による特定の制御を行う必要はない。この場合、初期設定部82は、サービスマンから角度調節羽根制御部80による特定の制御を行わないとの初期設定を受け付ける。逆に、空調対象空間が角度調節羽根20の特定の制御がなければサーキュレーション効果を高めることができない空間であれば、初期設定部82は、サービスマンから角度調節羽根制御部80による特定の制御を行うとの初期設定を受け付ける。
【0059】
ここで、サーキュレーション効果を高めることができない空間か否かは、例えば空調室内機10が設置される空調対象空間の形状に基づいている。例えば、空調対象空間の吹出口15に対向する奥側までの距離が短い場合には、角度調節羽根20の特定の制御がなくても空調対象空間の奥側にまで空気を到達させることが容易である。よって、初期設定部82は、サービスマンから角度調節羽根制御部80による特定の制御を行わないとの初期設定とを受け付ける。逆に、空調対象空間の吹出口15に対向する奥側までの距離が長い場合には、角度調節羽根20の特定の制御がなければ空調対象空間の奥側にまで空気を到達させることが困難である。この場合、初期設定部82は、サービスマンから角度調節羽根制御部80による角度調節羽根20の特定の制御を行うとの初期設定を受け付ける。
【0060】
このような初期設定によって、サーキュレーション効果を高めることができる角度調節羽根20の特定の制御の可否を予め設定することができる。
【0061】
(b)モード受付部81
モード受付部81は、ユーザからリモコン等(図示せず)を介して、サーキュレーション気流モード、左右風向自動モード及び左右風向ユーザ設定モードなどの各種モードを受け付ける。
【0062】
(c)水平フラップ制御部83、コアンダ羽根制御部84
水平フラップ制御部83は水平フラップ31の上下を制御する。コアンダ羽根制御部84はコアンダ羽根32の上下を制御する。特に、サーキュレーション気流モードにおいては、コアンダ効果を利用した「コアンダ気流天井吹き」が用いられている。ここで、コアンダ(効果)とは、気体や液体の流れのそばに壁があると、流れの方向と壁の方向とが異なっていても、壁面に沿った方向に流れようとする現象である(朝倉書店「法則の辞典」)。このようなコアンダ効果を利用モードしたモードには、空気の流れを天井に向かわせる「コアンダ気流天井吹き」が含まれる。
【0063】
以下、モード受付部81がサーキュレーション気流モードを受け付けた場合の水平フラップ制御部83及びコアンダ羽根制御部84の制御について
図5〜
図7を用いて説明する。
図5は、サーキュレーション気流モードにおける水平フラップ31及びコアンダ羽根32の側面図である。
図6、
図7は、吹出空気の方向およびコアンダ気流の方向を示す概念図である。
【0064】
サーキュレーション気流モードでは、水平フラップ制御部83及びコアンダ羽根制御部84は空気の気流を「コアンダ気流天井吹き」に制御する。例えば、水平フラップ制御部83は、水平フラップ31の内側面31bの前方端E1における接線L1が水平になるまで水平フラップ31を回動させる。また、コアンダ羽根制御部84は、コアンダ羽根32の外側面32aの前方端E2における接線L2が前方上向きとなるまでコアンダ羽根32を回動させる。このとき、水平フラップ31で水平吹きに調整された吹出空気は、コアンダ効果によってコアンダ羽根32の外側面32aに付着した流れとなり、この外側面32aに沿ったコアンダ気流に変わる。したがって、水平フラップ31の内側面31bの前方端E1における接線L1方向が前方吹きであっても、コアンダ羽根32の外側面32aの前方端E2における接線L2方向が前方上吹きとなる。つまり、
図6に示すように、吹出口15から吹き出された吹出空気は、水平フラップ31によって方向D1に変更された後、さらにコアンダ効果によって方向D2に変更される。これにより吹出空気は
図7に示すように天井方向に吹き出される。
【0065】
(d)角度調節羽根制御部80
角度調節羽根制御部80は、初期設定部82が特定の制御を行うとの初期設定を受け付けており、モード受付部81がサーキュレーション気流モード及び左右風向自動モードを受け付けると、サーキュレーション効果を高めるための角度調節羽根20の特定の制御を行う。つまり、角度調節羽根制御部80は、吹出口15の左側部分から吹き出される空気の平面視方向と、吹出口15の右側部分から吹き出される空気の平面視方向とが吹出口15の前方において交差するように角度調節羽根20を制御する。
【0066】
角度調節羽根制御部80による角度調節羽根20の特定の制御について
図8を用いてさらに説明する。
図8は角度調節羽根制御部80による角度調節羽根20の制御の様子を示す説明図である。
【0067】
上述した通り、角度調節羽根20は空調室内機10の前面から見て左側に位置する左側角度調節羽根20Lと、右側に位置する右側角度調節羽根20Rと、を含む。角度調節羽根制御部80は、左側角度調節羽根20L及び右側角度調節羽根20Rをそれぞれ独立に制御する。具体的には、角度調節羽根制御部80は、左側角度調節羽根20Lを、正面方向DFを基準として反時計回りにθ1の角度となるように回動させる。一方、角度調節羽根制御部80は、右側角度調節羽根20Rを、正面方向DFを基準として時計回りにθ2の角度となるように回動させる。これにより、左側角度調節羽根20L及び右側角度調節羽根20Rは互いに向き合うように回動される。よって、サーキュレーション気流モードでは、吹出口15の左側角度調節羽根20Lに沿って流れる空気と、吹出口15の右側角度調節羽根20Rに沿って流れる空気とが吹出口15の平面視方向の中央部分において合流する。これにより、吹出口15の中央部分の風量を大きくし、空調対象空間の吹出口15に対向する奥側にまで、熱交換された空気を到達させることができる。よって、空調対象空間の空気を循環させて概ね均一に空気調和し、サーキュレーション効果を高めることができる。
【0068】
ここで、θ1及びθ2の角度は5°〜10°が好ましい。左側角度調節羽根20L及び右側角度調節羽根20Rを回動させる角度を5°〜10°とすることで、左右の角度調節羽根20に沿った空気が互いに干渉して打ち消し合うのを抑制しつつ、空気を吹出口15の平面視方向の中央部分において合流させて風量を大きくすることができる。
【0069】
なお、角度調節羽根制御部80は、モード受付部81が左右風向ユーザ設定モードを受け付けている場合には、ユーザからの指示に基づいて角度調節羽根20の角度を調節する。これにより、ユーザが所望する左右風向で吹出口15から空気が吹き出される。よって、ユーザによる左右風向の指定を優先してユーザ満足度を維持しつつ、少なくともサーキュレーション気流モード及び左右風向自動モードの際には上述のようにサーキュレーション効果を高めることができる。
【0070】
(3)動作
次に角度調節羽根の制御について
図9を用いて説明する。
図9は角度調節羽根の制御における動作を示すフローチャートの一例である。
【0071】
ステップS10:角度調節羽根制御部80は、サーキュレーション効果を高めることができる特定の制御を行うとの初期設定を初期設定部82が受け付けているか否かを確認する。特定の制御とは、サーキュレーション効果を高めるために、角度調節羽根制御部80が角度調節羽根20の角度を調節する制御を言う。
【0072】
ステップS11:角度調節羽根制御部80は、角度調節羽根20の特定の制御を行う場合にはステップS12を実行する。そうでない場合は終了する。
【0073】
ステップS12:角度調節羽根制御部80は、モード受付部81がサーキュレーション気流モードを受け付けているか否かを判断する。モード受付部81がサーキュレーション気流モードを受け付けている場合には、角度調節羽根制御部80はステップS13を実行する。そうでない場合は終了する。
【0074】
ステップS13:角度調節羽根制御部80は、モード受付部81が左右風向自動モードを受け付けているか否かを判断する。モード受付部81が左右風向自動モードを受け付けている場合には、角度調節羽根制御部80はステップS14を実行する。そうでない場合は終了する。
【0075】
ステップS14:角度調節羽根制御部80は、吹出口15の左側部分から吹き出される空気の平面視方向と、吹出口15の右側部分から吹き出される空気の平面視方向とが吹出口15の前方において交差するように角度調節羽根20を制御する。
【0076】
なお、ステップS12,13は順不同であってもよい。
【0077】
(4)特徴
(4−1)
角度調節羽根制御部80は、モード受付部81がサーキュレーション気流モードを受け付けると、吹出口15の左側部分から吹き出される空気の平面視方向と、吹出口15の右側部分から吹き出される空気の平面視方向とが吹出口15の前方において交差するように角度調節羽根20を制御する。これにより、サーキュレーション気流モードでは、左側角度調節羽根20Lに沿って流れる空気と、右側角度調節羽根20Rに沿って流れる空気とが吹出口15の中央部分において合流する。よって、吹出口15の中央部分の風量を大きくし、空調対象空間の吹出口15に対向する奥側にまで、熱交換された空気を到達させることができる。よって、空調対象空間の空気を循環させて概ね均一に空気調和し、サーキュレーション効果を高めることができる。
【0078】
(4−2)
角度調節羽根制御部80は、吹出口15の左側部分の少なくとも一部の左側角度調節羽根20L及び右側部分の少なくとも一部の右側角度調節羽根20Rを、平面視における正面方向を基準としてそれぞれ左右に所定角度に制御することで、吹出口15の中央部分において左側角度調節羽根20L及び右側角度調節羽根20Rを介した空気を合流させる。
【0079】
左側角度調節羽根20L及び右側角度調節羽根20Rの角度を制御することで、左右の角度調節羽根20L、20Rに沿った空気を吹出口15の中央部分において合流させることができる。よって、吹出口15の中央部分の風量を大きくし、サーキュレーション効果を高めることができる。
【0080】
(4−3)
角度調節羽根20を傾ける角度を5°〜10°とすることで、左右の角度調節羽根20L、20Rに沿った空気が互いに干渉して打ち消し合うのを抑制しつつ、空気を吹出口15の中央部分において合流させて風量を大きくすることができる。
【0081】
(4−4)
角度調節羽根制御部80は、モード受付部81が左右風向ユーザ設定モードを受け付けている場合には、ユーザが所望する左右風向で吹出口15から空気を吹き出す。モード受付部81が左右風向自動モードを受け付けている場合、ユーザは吹出口15から任意の左右風向で空気を吹き出すことを許容している。よって、サーキュレーション気流モード及び左右風向自動モードが選択されている場合には、角度調節羽根制御部80は、吹出口15の中央部分の風量を大きくするために左右の角度調節羽根20L、20Rを制御する。よって、ユーザによる左右風向の指定を優先してユーザ満足度を維持しつつ、少なくともサーキュレーション気流モード及び左右風向自動モードの際にはサーキュレーション効果を高めることができる。
【0082】
(4−5)
初期設定部82は、空調室内機10の初期設定時に、サーキュレーション気流モードにおいて、角度調節羽根制御部80が左側角度調節羽根20Lからの空気と右側角度調節羽根20Rからの空気とが吹出口15の前方において交差するように角度調節羽根20を制御するか否かの設定を受け付ける。
【0083】
例えば、空調室内機10の設置時に、設置すべき空調対象空間が角度調節羽根20の制御がなくてもサーキュレーション効果を高めることができる空間であれば、角度調節羽根制御部80による制御を行う必要はない。この場合、初期設定部82は、例えばサービスマンから角度調節羽根制御部80による制御を行わないことを受け付ける。逆に、空調対象空間が角度調節羽根20の制御がなければサーキュレーション効果を高めることができない空間であれば、初期設定部82は、例えばサービスマンから角度調節羽根制御部80による制御を行うことを受け付ける。これにより空調室内機10の設定の自由度を高めつつ、サーキュレーション効果を高めることができる。
【0084】
(4−6)
初期設定部82は、空調室内機10が設置される空調対象空間の形状に応じて角度調節羽根20を制御するか否かの設定を受け付ける。
【0085】
例えば、空調対象空間の吹出口15に対向する奥側までの距離が短い場合には、角度調節羽根20の制御がなくても空調対象空間の奥側にまで空気を到達させることが容易である。よって、初期設定部82は、例えばサービスマンから角度調節羽根制御部80による制御を行わないことを受け付ける。逆に、空調対象空間の吹出口15に対向する奥側までの距離が長い場合には、初期設定部82は、例えばサービスマンから角度調節羽根制御部80による角度調節羽根20の制御を行うことを受け付ける。これにより、空調室内機10の設定の自由度を高めつつ、空調対象空間の奥側にまで空気を到達させてサーキュレーション効果を高めることができる。
【0086】
(5)変形例
(5−1)変形例1A
上記実施形態のサーキュレーション気流モードでは、水平フラップ31、コアンダ羽根32及び角度調節羽根20を制御することにより空調対象空間の空気を循環させる。しかし、水平フラップ31及び角度調節羽根20のみを用いてサーキュレーション気流モードを達成させてもよいし、コアンダ羽根32及び角度調節羽根20のみを用いてサーキュレーション気流モードを達成させてもよい。あるいは、水平フラップ31及びコアンダ羽根32が設けられておらず、吹出口15及び角度調節羽根20が設けられている空調室内機10において、角度調節羽根20のみを用いてサーキュレーション気流モードを達成させてもよい。
【0087】
(5−2)変形例1B
上記実施形態では、初期設定部82が角度調節羽根20の特定の制御を行うとの初期設定を受け付け、かつ、モード受付部81がサーキュレーション気流モード及び左右風向自動モードを受け付けた場合に、角度調節羽根制御部80は角度調節羽根20の特定の制御を行う。しかし、角度調節羽根制御部80は、初期設定の有無にかかわらず、モード受付部81がサーキュレーション気流モード及び左右風向自動モードを受け付けた場合に、角度調節羽根20の特定の制御を行ってもよい。また、角度調節羽根制御部80は、単にモード受付部81がサーキュレーション気流モードを受け付ければ、初期設定の有無にかかわらず、かつ左右風向自動モードであるか左右風向ユーザ設定モードであるかにかかわらず、特定の制御を行ってもよい。
【0088】
(5−3)変形例1C
上記実施形態では、角度調節羽根20を左側角度調節羽根20L及び右側角度調節羽根20Rに分けて独立に制御している。角度調節羽根20の分け方はこれに限定されず、さらに細かなグループに分割しても良い。例えば、角度調節羽根20を4つのグループに分割してもよい。この場合、例えば、角度調節羽根制御部80は、互いに平面視方向の中央において対向する2つのグループの角度調節羽根20のみが互いに中央方向に向かって対向するように角度を制御してもよい。