特許第6182873号(P6182873)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182873
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】アンダーフィル樹脂の接触角の測定方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20170814BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20170814BHJP
   G01N 13/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   H01L21/56 E
   H01L21/60 311S
   G01N13/00
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-7184(P2013-7184)
(22)【出願日】2013年1月18日
(65)【公開番号】特開2014-138149(P2014-138149A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】梅村 優樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 清智
【審査官】 工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−59441(JP,A)
【文献】 特開2001−116675(JP,A)
【文献】 特開平01−152339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/56
H01L21/60
G01N13/00−13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板と、該配線基板上にフリップチップ接続された半導体素子との隙間を、溶融したアンダーフィル樹脂溶液がキャピラリーフロー効果で浸透する際の接触角を推測するためのアンダーフィル樹脂の接触角の測定方法であって、
銅板表面にソルダーレジストを均一に塗布して、プラズマ処理装置にて表面処理を実施した試験片、または、銅板にSn−3.0Ag−0.5Cuのはんだペーストを塗布、溶融させ、はんだを銅板表面に均一に形成した試験片、または、銅板にポリイミドを均一に塗布し、硬化させた試験片のいずれかを、溶融したアンダーフィル樹脂溶液中に、浸漬速度20mm/minで垂直に浸漬させ、浸漬途中のアンダーフィル樹脂溶液と試験片がなす接触角を求めることを特徴とするアンダーフィル樹脂の接触角の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子配線基板に係り、特には半導体素子と配線基板との隙間を、アンダーフィル樹脂で充填する際に、該樹脂の隙間内でのぬれ広がりを規定する樹脂接触角の動的な評価方法および評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、配線基板にICチップやLSIチップ等の半導体素子を実装した半導体装置では、樹脂によって接続部を保護することが多い。例えば、FC−BGA(Flip Chip Ball Grid Array)のような配線基板にICチップを実装する半導体装置においては、ICチップと配線基板とのはんだ接合部の信頼性を確保するために、はんだ接合部をアンダーフィル樹脂で保護することが必須となっている。
【0003】
図1は、この種の半導体装置を製造する工程を説明するための要部断面図である。図1(A)では、配線基板1にICチップ2をアップサイドダウンにして対向させ、はんだ接合部4を介し適正な間隔(以下、隙間、ギャップと記すことがある。)を維持して接続する。図1(B)では、隙間Gにアンダーフィル樹脂3を、表面張力により浸透させて充填する。図1(C)では、充填されたアンダーフィル樹脂3を硬化させている。
【0004】
さて、近年、半導体装置においては、高集積化が進められて配線密度が高まり、ICチップのサイズも大きくなっている。一方高密度化に対応して接続端子数が増大する結果、ICチップの接続端子に割り当てられる面積、及びこれに接続するべきはんだバンプの面積は、微細化され、配置ピッチも狭くなる傾向にある。この結果、アンダーフィル樹脂が充填されるICチップと配線基板間の隙間は狭くなるが、浸透すべき面積は広くなっている。
【0005】
このように大面積、且つ、狭い隙間になっている領域に毛細管現象を利用してアンダーフィル樹脂を浸透させている(キャピラリーフロー方式)。しかしながら、アンダーフィル樹脂の充填は、ICチップと配線基板との隙間が数10μm程度に狭くなると時間がかかるという問題がある。更にまた、ICチップの表面・はんだが塗布された領域・基板表面等それぞれの領域のぬれ性の不足や、違いによる浸透(充填)速度の差により、アンダーフィル樹脂が空気を巻き込んでしまい、それがボイドとなって配線基板とICチップとのはんだ接合部の信頼性低下をきたしている。
【0006】
図2は、配線基板1とICチップ2との隙間にアンダーフィル樹脂3を充填する過程を経時的に説明する断面視の図であり、図1に於いて用いた記号と同じ記号で指示した部分は、同一あるいは同効の部分を表すものとする。
【0007】
溶融させたアンダーフィル樹脂3を、チップ下の一辺側から注入開始した場合、図2(A)のように隙間を構成する上下の部材表面のぬれ性が充分で、ぬれ性の差が小さな場合、ボイドが生じる確率は低くなる。一方、図2(B)のようにぬれ性が不十分な場合、アンダーフィル樹脂3が充填される際にぬれない箇所が発生しボイド5となる可能性が高い。また、ぬれ性が充分であっても、部材によりぬれ性が異なった場合、図2(C)のようにボイド5が発生しやすくなる。このように、アンダーフィル樹脂3のぬれ性を把握し、制御することは重要である。
【0008】
従来、アンダーフィル樹脂のぬれ性を評価する規格化された統一的な方法はなく、図3(A)に示すように液滴法により接触角θを測定し、ぬれ性の指標とすることが多かっ
た。例えば、特許文献1には液滴法により、表面改質の効果を接触角と対比させ、実際にアンダーフィルを充填してボイドの有無を確認した結果が記載されている。
接触角を使用せず、アンダーフィル樹脂を充填してボイドの有無からアンダーフィル樹脂の良否(ぬれ性)を判断することも多かった、
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−059441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、実際にアンダーフィルを隙間に充填してボイドの有無により評価する方法は、ばらつきが生じやすく、評価サンプル数を多く設ける必要があり、多額の費用を要する。また、液滴法によって得られた接触角θは、図3(B)に示すような実際にキャピラリーフローにより隙間Gを浸透しているときの接触角θとは異なり、小さな値を示してしまうため、ぬれ性を正確に評価できない場合が生じる。
【0011】
アンダーフィルがキャピラリーフローにより隙間Gを浸透しているときの接触角θを予め把握できれば、ボイドの発生を防ぐことができるが、実際にキャピラリーフローにより浸透しているときの接触角θを直接観察することは難しく、上記の様に有効な評価方法も確立されていない。
【0012】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたもので、配線基板と、該配線基板にフリップチップ接続された半導体素子(ICチップ)との隙間をアンダーフィル樹脂が浸透している状態を、観察できる形で擬似的に構成し、前記隙間を構成する各種部材表面とアンダーフィル樹脂との接触角θを、個別的に推測する方法およびそのための観察装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を達成するための請求項1に記載の発明は、配線基板と、該配線基板上にフリップチップ接続された半導体素子との隙間を、溶融したアンダーフィル樹脂溶液がキャピラリーフロー効果で浸透する際の接触角を推測するためのアンダーフィル樹脂の接触角の測定方法であって、銅板表面にソルダーレジストを均一に塗布して、プラズマ処理装置にて表面処理を実施した試験片、または、銅板にSn−3.0Ag−0.5Cuのはんだペーストを塗布、溶融させ、はんだを銅板表面に均一に形成した試験片、または、銅板にポリイミドを均一に塗布し、硬化させた試験片を用いた試験片を、溶融したアンダーフィル樹脂溶液中に、浸漬速度20mm/minで垂直に浸漬させ、浸漬途中のアンダーフィル樹脂溶液と試験片がなす接触角を求めることを特徴とするアンダーフィル樹脂の接触角の測定方法としたものである。
【発明の効果】
【0017】
配線基板と、該配線基板上にフリップチップ接続された半導体素子との隙間を、溶融したアンダーフィル樹脂が表面張力により浸透する際の接触角は、直接観察が難しいから評価のしようがないが、それに似た環境は設定できる。
【0018】
本発明は、基板を溶融したアンダーフィル樹脂溶液に垂直に沈ませる構成を採用して、横方向から接触角の観察を可能とし、基板と溶融したアンダーフィル樹脂液の相対速度を、アンダーフィル樹脂が隙間を浸透する速度にできるだけ一致するようにして似た環境とした。したがって、得られるアンダーフィル樹脂の接触角は、実際の接触角に近く信頼性が高いという効果がある。
【0019】
さらに本発明では、基板として、隙間でアンダーフィル樹脂が接触する表面と概ね同じ表面状態を有する試験片を使用することが可能であり、アンダーフィル樹脂の試験片ごとの接触角の測定が可能である。したがって、隙間を構成するどの部材が浸透時の接触角に効いているか総合的に判断できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】半導体装置を作製する標準な工程を説明するための要部断面視の図である。
図2】配線基板と半導体素子との隙間にアンダーフィル樹脂が充填する様子を模式的に説明するための断面視の図である。
図3】接触角θと接触角θの定義を示した図である。
図4】本発明に係る、樹脂接触角測定装置の構成の一例を示す上面視と断面視の図である。
図5】接触角θの測定方法を示した図である。
図6】実施例1におけるアンダーフィル樹脂Jの各評価試料に対する接触角θを示した評価結果である。
図7】3つの構成D”、E”、F”を示した図である。
図8】構成D”、E”、F”それぞれのアンダーフィル樹脂ボイド発生率を示した図である。
図9】実施例2におけるリフロープロファイルL’、M’、N’を示した図である。
図10】実施例2におけるアンダーフィル樹脂Vの各評価試料に対する接触角θを示した評価結果である。
図11】構成L”、M”、N”それぞれのアンダーフィル樹脂中のボイド発生率を示した図である。
図12】実施例3におけるアンダーフィル樹脂Vの各評価試料に対する接触角θを示した評価結果である。
図13】構成S”、T”、U”それぞれのアンダーフィル樹脂中のボイド発生率を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0022】
アンダーフィル樹脂(以下、単に樹脂と記すこともある。)の隙間への浸透のしやすさが、隙間を構成する上下の材料表面に対するアンダーフィル樹脂のぬれ性によって決まると考えられている。アンダーフィル樹脂が被覆する基材自体、あるいは接触する表面の状
態等に対する接触角の大小が問題になるのは、ぬれ性が接触角測定から得られる判断の一つであるからである。一般に接触角が小さいほどぬれ性がよいとみなせる。
したがって、以下では、ぬれ性評価と接触角評価をほぼ同義として記載する。
【0023】
本発明は、加熱溶融されたアンダーフィル樹脂液面に対して、垂直となる方向から深さ方向に試験片を浸漬させ、浸漬途中の接触角を計測できるようにしたものである。そして、試験片の下降(浸漬)速度を、アンダーフィル樹脂が実際のICチップと基板のなす隙間を浸透する速度に近く設定している。速度は、充填するのに必要な時間と充填容積から、算出している。
【0024】
つまり、実際に樹脂封止した時の充填開始時間と充填完了時間、充填する容積から、キャピラリーフロー時の樹脂の平均浸透速度を算出し、それを試験片の浸漬速度vとするものである。試験片を動かすのは、浸透時にはアンダーフィル樹脂が流動する状態を模したものである。接触角は、どちらが動くかにはよらず相対速度によると考えてのものである。
【0025】
アンダーフィル樹脂の接触角測定(ぬれ性評価)を行なう試験片は、樹脂が隙間を浸透する際に接触する表面と同じ表面状態を有している必要がある。一般に隙間を形成する部材は、配線基板としてのFC−BGA基板、半導体素子(シリコンチップ)、または、はんだ、ソルダーレジストが塗布された配線基板であるから、試験片としてはこれらを直接使用するか、表面処理・表面加工が施されていれば同じ表面処理・表面加工を施した前記部材を用いる。別の基材に同じ表面状態を形成してもよい。浸漬速度vは、全ての基板について同じである。vを変化させることは問題ない。
【0026】
したがって、接触部を観察し接触角を算出する測定装置は、少なくとも、アンダーフィル樹脂を溶融するための加熱手段と保持容器、試験片を、保持容器内のアンダーフィル樹脂溶融液中に垂直に深さ方向に所定速度で浸漬させる手段と、試験片の側面と溶融したアンダーフィル樹脂がなす接触状態を撮像する撮像手段と、撮像画像から試験片の側面と溶融したアンダーフィル樹脂がなす接触角を算出する手段とを備えている必要がある。
【0027】
図4は、半導体素子を配線基板にキャピラリー方式で樹脂封止する際の、樹脂の接触角測定を実行するための装置の一例を、上面視(上段)と断面視(下段)で図示したものである。
【0028】
図4において、ヒーター11の中に、容器(以下、樹脂ホルダ10と記す。)が配置されている。樹脂ホルダ10は取外しができ、その中には樹脂Aを入れることができる。また、ヒーター11は温度制御装置12に接続されている。温度制御装置12はヒーター11を制御することで樹脂ホルダ10内の樹脂温度を制御することができる。また、樹脂ホルダ10の上部には試料ホルダ13が設けてあり、試験片Bを取り付けることができる。また、試料ホルダ13は速度コントローラー14にてその速度を制御しながら上下に移動することができる。
【0029】
また、樹脂Aの液面Cを観察できる撮像用カメラ21が設けてありパーソナルコンピュータ(PC)20に接続ざれている。PC20はデータ記録・計算用のPCであり、出力された画像データが記録され、得られたデータから接触角θを算出できる。上記データが記録でき、計算できるものであればPCには限定されない。また、記録計と計算機を別々に設けても良い。
【0030】
本発明においては、上記のような装置用い、半導体素子を配線基板にキャピラリー方式で樹脂封止する際の樹脂の接触角測定が行われる。これからぬれ性に関する知見が得られ
る。
以下に上記装置を用いた場合の接触角測定方法を説明する。
【0031】
まず、評価したいアンダーフィル樹脂を用意する(樹脂A)。樹脂Aは評価したい温度で液状である必要がある。次に樹脂Aを樹脂ホルダ10に液面Cの位置まで入れ、ヒーター11、温度制御装置12で温度制御する。樹脂Aの温度は、実際にICチップと基板間の隙間を浸透する際の温度とする。
【0032】
次に、評価したい半導体素子(ICチップもしくはLSIチップで材料はシリコンである。)と配線基板の表面を構成するいずれかの材料Dと実質的に同等の表面状態を呈する試験片Bを用意する。試験片Bの作成方法は特に限定されるものではないが、材料Dを、半導体素子もしくは配線基板上に同一条件で加工・表面処理したものを分割したものが望ましい。試験片Bの大きさは限定されるものではないが、試験片Bを樹脂Aに浸漬した際に液面の変動がカメラ21の撮影範囲に収まる必要がある。
【0033】
次に、試験片Bを試料ホルダ13に取り付け、速度vで樹脂Aに浸漬させる。速度vは特に限定されるものではないが、評価したい半導体素子と電子配線基板間の隙間を、実際にアンダーフィル樹脂が浸透する時の充填開始時間と充填完了時間、充填する容積から、平均浸透速度vを算出し、その値と同じ速度とすることが望ましい。接触角が速度に大きく依存しないのであればこの限りではない。
【0034】
その際カメラ21にて試験片Bと、樹脂Aの界面を観察し、図5に示すように得られた画像からPC20を用いて接触角θを得る。
【0035】
例えば、ICチップのシリコン表面を被覆するのに使用されるポリイミドと、実装材料としてよく用いられるはんだ皮膜、配線基板の最外層材料として用いられるソルダーレジストを表面に有する試験片B,C,D等をそれぞれ作成し、評価したいアンダーフィル樹脂とのそれぞれのθを求め、その大小を比較し、その値がより小さくかつ、その差がより小さくなるよう表面処理等を改善することで、図2(B),(C)に示すようなぬれ不足によるボイド5発生、構成部材のぬれ性のアンバランスによるボイド5発生の抑制につなげることができる。
【実施例1】
【0036】
FC−BGA用の配線基板の表面処理を検討するため、図4に示す評価装置を用い、以下の評価を行った。
まず、エポキシ樹脂を主剤としたアンダーフィル樹脂Jを用意した。次にアンダーフィル樹脂Jを樹脂ホルダ10に液面Cの位置まで入れ、アンダーフィル樹脂Jを実際に隙間に浸透させる温度である120℃まで加熱した。
【0037】
次に、銅板表面にソルダーレジストを均一に塗布して、プラズマ処理装置にて表面処理を施す効果を調べるために3種類の試験片(D、E、F)を用意した。試験片Dの表面処理D’はプラズマ処理なしとし、試験片Eの表面処理E’は酸素ガスよるダイレクトプラズマ処理を100W×1分処理したものであり、試験片Fの表面処理F’はアルゴンガスによるダイレクトプラズマ処理を、100W×1分処理したものとした。
また、銅板に実装材料であるSn−3.0Ag−0.5Cuはんだペーストを塗布し、リフロー炉にて溶融させ、はんだを銅板表面に均一に形成した試験片Hを用意した。また、ICやLSIのパッシベーション膜としてよく用いられるポリイミドを均一に塗布し、硬化させた試験片Iも用意した。
【0038】
次に、試験片Dを試料ホルダ13に取り付け、20mm/minの浸漬速度で加熱され
たアンダーフィル樹脂Jに浸漬させた。その際撮像用カメラ21にて試験片Dと、アンダーフィル樹脂Jの界面を観察し、得られた画像からPC20における解析ソフトウェアを用いて接触角θを得た。20mm/minの浸漬速度は、図7に示すD”の構成にて実際に樹脂封止した時の充填開始時間と充填完了時間、充填する距離から、キャピラリーフロー時の樹脂の平均浸透速度を算出した値である。
【0039】
同様に、試験片E、F、H、Iを浸漬速度20mm/minで加熱されたアンダーフィル樹脂Jに浸漬させ、それぞれの接触角θを得た。
【0040】
図6の接触角測定の結果から、アンダーフィル樹脂Jの各試験片に対するぬれ性は、D>90°>F>H>E>Iと考えられる。一方、図7に示すように配線基板のソルダーレジスト表面処理条件をD’、E’、F’とした3つのFC−BGA構成D、E、Fのアンダーフィル樹脂のボイド発生率を比較した。ボイドの観察は超音波映像装置を用いて行なった。得られた観察データから、ボイド発生ピース数を作成ピース数で除した値をボイド発生率として算出した。図8に示すとおり、各構成のアンダーフィル樹脂ボイド発生率は、D>F>Eであった。
【0041】
本発明による接触角測定の結果とアンダーフィル樹脂ボイド発生数の関係が一致し、接触角θが充分に小さく、部材間の接触角θの差が小さい構成では樹脂中のボイド発生数が少ないことが確認された。アンダーフィル樹脂のぬれ性の評価指針として、本発明における接触角θの採用が有効であることが確認された。
【実施例2】
【0042】
FC−BGAの表面処理のひとつであるはんだの冷却条件を検討するため、図4に示す評価装置を用い、以下の評価を行った。はんだの表面はリフロー時の冷却条件により、表面粗さに差が生じる。表面粗さの違いにより、アンダーフィル樹脂に対するぬれ性も異なるため、本測定方法を用いて最適化を行った。
【0043】
まず、エポキシ樹脂を主剤としたアンダーフィル樹脂Pを用意した。次にアンダーフィル樹脂Pを樹脂ホルダ10に液面Cの位置まで入れ、アンダーフィル樹脂Pを実際に樹脂封止する際の温度である130℃まで加熱した。
【0044】
次に、銅板表面にソルダーレジストを均一に塗布して、プラズマ処理装置にて表面処理を実施した試験片Kを用意した。試験片Kの表面処理は酸素ガスによるダイレクトプラズマ処理を100W×1分処理したものとした。
また、銅板に実装材料であるSn−3.0Ag−0.5Cuはんだペーストを塗布し、リフロー炉にて、図9に示す3種のプロファイル(L’,M’,N’)にてリフローして溶融させ、はんだを銅板表面に均一に形成した試験片L、M、Nを用意した。また、ICチップのパッシベーション膜としてよく用いられるポリイミドを均一に塗布し、硬化させた試験片Oを用意した。
【0045】
次に試験片K、L、M、N、Oを実施例1と同様に、アンダーフィル樹脂Pに浸漬させて接触角を測定し、図10に示すようなそれぞれの接触角θを得た。
【0046】
接触角測定結果から、アンダーフィル樹脂Pの各試験片に対するぬれ性は、N>90°>L≒M>K>Oと考えられる。一方、リフロー時の冷却条件をL’、M’、N’とした3つのFC−BGA構成L、M、Nのアンダーフィル樹脂におけるボイド発生率を比較した。FC−BGAの材料構成としては、L、M、N共に、試験片Kと同様のソルダーレジスト、表面処理とし、接合材料にはSn−3.0Ag−0.5Cuはんだを用い、パッシベーション膜には試験片Oと同様にポリイミドを使用し、アンダーフィル樹脂Pを用いた
図11に示すとおり、各構成の樹脂中のボイド発生率は、N>L≒Mであった。
【0047】
実施例2においても接触角測定による推測とアンダーフィル樹脂中のボイド発生数の関係が一致し、接触角θが充分に小さく部材間の接触角θ差の小さい構成ではボイド発生数が少ないことが確認された。アンダーフィル樹脂のぬれ性の評価指針として、本発明における接触角θの採用が有効であることが確認された。また、アンダーフィル樹脂PのはんだL、Mに対するぬれ性が同等であったことから、処理時間の短い条件M’を最適条件とした。
【実施例3】
【0048】
FC−BGAにおけるLSIのパッシベーション膜構成材料によるアンダーフィル樹脂ボイド発生傾向を把握するため、図4に示す評価装置を用い、以下の評価を行った。
まず、エポキシ樹脂を主剤としたアンダーフィル樹脂Wを用意した。次にアンダーフィル樹脂Wを樹脂ホルダ10に液面Cの位置まで入れ、アンダーフィル樹脂Wを実際に樹脂封止する際の温度である120℃まで加熱した。
【0049】
次に、銅板表面にソルダーレジストを均一に塗布して、プラズマ処理装置にて表面処理を実施した試験片Qを用意した。試験片Qの表面処理は酸素ガスにてダイレクトプラズマ処理を、100W×1分処理したものとした。
また、銅板に実装材料であるSn−3.0Ag−0.5Cuはんだペーストを塗布し、リフロー炉にてリフローして溶融させ、はんだを銅板表面に均一に形成した試験片Rを用意した。また、異なる3種のパッシベーション膜、ポリイミド系材料で構成されるS’、ポリベンゾオキサゾール系材料で構成されるT’、シリコン系材料で構成されるU’を形成した試験片S、T、Uを用意した。
【0050】
次に試験片Q、R、S、T、Uを実施例1と同様に、アンダーフィル樹脂Wに浸漬させ、それぞれの接触角θを得た。
図12に示す通り、アンダーフィル樹脂Wの各試験片に対する接触角は、U>T>Q>S>Rであった。一方、パッシベーション膜をS’、T’、U’とした3つのFC−BGA構成S、T、Uのアンダーフィル樹脂中におけるボイド発生率を比較した。FC−BGAのその構成としては、S、T、U共に、試験片Qと同様のソルダーレジスト、表面処理とし、接合材料にはSn−3.0Ag−0.5Cuはんだを用い、アンダーフィル樹脂はPを用いた。図11に示すとおり、各構成のアンダーフィル樹脂中のボイド発生率は、U>T>Sであった。
【0051】
実施例3においても本発明による評価とアンダーフィル樹脂ボイド発生数の関係が一致し、接触角θが充分に小さく部材間の接触角θAの小さい構成ではボイド発生数が少ないことが確認された。アンダーフィル樹脂のぬれ性の評価指針として、本発明における接触角θの採用が有効であることが確認された。
【0052】
上記に示すように、本発明が、各部材および各部材の表面処理選定,アンダーフィル樹脂選定の指標として有効な測定・評価手法と成り得ることが示唆された。
【符号の説明】
【0053】
1…配線基板
2…LSIチップ
3…アンダーフィル樹脂
4…はんだ接合部(バンプ)
5…ボイド
G…隙間
θ…液滴法による接触角
θ…キャピラリーフロー時の接触角
10…樹脂ホルダ
11…ヒーター
12…温度制御装置
13…試料ホルダ
14…速度制御装置
20…パーソナルコンピュータ(PC)
21…カメラ
θ…本発明による接触角
D…実施例1におけるソルダーレジストを塗布し表面処理D’を実施した試験片
E…実施例1におけるソルダーレジストを塗布し表面処理E’を実施した試験片
F…実施例1におけるソルダーレジストを塗布し表面処理F’を実施した試験片
D’…実施例1における表面処理(1)
E’…実施例1における表面処理(2)
F’…実施例1における表面処理(3)
H…実施例1におけるはんだペーストを印刷、リフローした試験片
I…実施例1におけるポリイミドを塗布した試験片
J…実施例1におけるアンダーフィル樹脂
K…実施例2におけるソルダーレジストを塗布した試験片
L…実施例2におけるはんだペーストを印刷し、条件L’でリフローした試験片
M…実施例2におけるはんだペーストを印刷し、条件M’でリフローした試験片
N…実施例2におけるはんだペーストを印刷し、条件N’でリフローした試験片
L’…実施例2におけるはんだリフロー条件(1)
M’…実施例2におけるはんだリフロー条件(2)
N’…実施例2におけるはんだリフロー条件(3)
O…実施例2におけるポリイミドを塗布した試験片
P…実施例2におけるアンダーフィル樹脂
Q…実施例3におけるソルダーレジストを塗布した試験片
R…実施例3におけるはんだペーストを印刷、リフローした試験片
S…実施例3におけるS’のパッシベーション膜を塗布した試験片
T…実施例3におけるT’のパッシベーション膜を塗布した試験片
U…実施例3におけるU’のパッシベーション膜を塗布した試験片
S’…実施例3におけるパッシベーション膜構成材料(1)
T’…実施例3におけるパッシベーション膜構成材料(2)
U’…実施例3におけるパッシベーション膜構成材料(3)
W…実施例3におけるアンダーフィル樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13