(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の半導体領域の下側に前記第2の導電型をもつ第4の半導体領域が形成され、前記裏面電極が前記第4の半導体領域と電気的に接続されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
前記第1の半導体領域の下側に前記第2の導電型をもつ第4の半導体領域が形成され、前記裏面電極が前記第4の半導体領域と電気的に接続され、前記溝の中心を基準とした前記第1の溝間領域の間隔(D1)に対する、前記溝の中心を基準とした前記第2の溝間領域の間隔(D2)の比率が、0.5〜3.0の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【背景技術】
【0002】
近年、大電流で駆動することのできるパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)や、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:以下、IGBTと略)が、スイッチング素子として用いられている。
【0003】
こうしたパワー半導体素子においては、動作電流のオン・オフがゲート電圧によって制御される。この動作電流は、パワーMOSFETにおいては、ソース・ドレイン間の電流であり、IGBTにおいては、パワーMOSFETと同様の動作に加えてバイポーラトランジスタ的な動作も同時に行われ、この動作電流はエミッタ・コレクタ間に流れる。
【0004】
図15は、従来のIGBTの構成の一例を示す断面図である。このIGBTは、半導体基板中に形成された溝(トレンチ)中にゲートが形成されたトレンチゲート型の素子である。
図15において、この半導体基板80においては、コレクタ領域となるp
+層(第4の半導体領域)81の上に、バッファ領域となるn
+層82、ドリフト領域となるn
−層(第1の半導体領域)83、電荷(キャリア)を蓄積するn
+層(蓄積層)84、ベース領域となるp
―層(第2の半導体領域)85が順次形成されている。半導体基板80の表面側には、p
―層85を貫通する溝(トレンチ)86が形成されている。溝86は、
図15における紙面と垂直方向に延伸して並行に複数形成されている。溝86の内面(両側面)には酸化膜(ゲート絶縁膜)87が一様に形成された上で、ゲート電極88が溝86を埋め込むように形成されている。半導体基板80の表面側においては、溝86の両側にエミッタ領域となるn
+層89が形成されている。半導体基板80の裏面全面には、p
+層(コレクタ領域)81と接触してコレクタ電極(裏面電極)90が形成されている。半導体基板80の表面には、エミッタ電極(共通電極)91が形成されている。ただし、溝86の表面側においては層間絶縁膜92が溝86を覆うように形成されているため、エミッタ電極91は、n
+層89とp
―層85の両方に接触するが、ゲート電極88とは絶縁される。このため、各溝86毎に、ゲート電極88に印加された電圧によって溝86の側面におけるp
―層85でチャネルが生じ、n
−層83とn
+層89の間でnチャネルのMOSFETとして動作する。
【0005】
このMOSFETがオンとされた場合、通常のMOSFETとしての動作に加え、コレクタ層であるp
+層(第4の半導体領域)81から、ドリフト領域となるn
−層83側にホールが注入されるため、ドリフト領域における伝導度変調が生じ、IGBTのオン抵抗が特に小さくなる。このため、特に大電流を流すことができる。この際、伝導度変調の効果を高くして大電流を流すためには、ホールがエミッタ電極91側に流れにくくすることが有効である。このため、ホールを蓄積しやすい電荷蓄積層として機能するn
+層84がn
−層83の上に形成されている。以上により、ゲート電極88に印加された電圧によって、エミッタ電極91とコレクタ電極90との間に流れる大電流のオン・オフを制御することができる。
【0006】
図15に示されるように、溝86及びその周囲の構造は並列に多数形成され、各ゲート電極88は、図示された範囲外で並列に接続される。このため各溝86毎に形成されたIGBTは全て並列に接続されており、このために、エミッタ電極(共通電極)91・コレクタ電極(裏面電極)90間に大電流を流すことができ、このオン・オフをゲート電極88に印加する電圧によって制御することができる。
【0007】
また、特許文献1に記載されるように、全ての溝中(あるいはその周囲)の構造を同一とする必要はなく、溝毎に複数種類の構造を採用することによる最適化も行われる。例えば、
図15の構成では全ての溝86に対応してn
+層89が形成され、全ての溝86においてチャネルが形成される構成としているが、特許文献1の
図23等に記載されるように、溝86に対応するn
+層89が形成されていない溝(ダミートレンチ)を形成する場合もある。この場合、ダミートレンチは、それ自身はMOSFETにおけるチャネルを生じさせるゲートとしては機能しないが、ダミートレンチを設けることによって、耐圧が向上する、負荷短絡耐量が向上する、等の効果が得られる。
【0008】
図16は、こうした構造の一例を示す断面図である。
図16においては、左側から2、4番目の溝86の周囲においてn
+層89が形成されず、この部分では溝86等は形成されているがチャネルは生じない。なお、こうした構造は、IGBTに限らず、ゲート周辺において同様の構造をもつパワーMOSFETにおいても同様の効果を奏する。
【0009】
このように、複数のトレンチ(溝)を用いたパワー半導体素子の場合には、その周期や各々の構造を最適化することによって、耐圧や負荷短絡耐量を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態となる半導体装置について説明する。この半導体装置は、ゲートによってチャネルのオン・オフが制御されることによって、電流のオン・オフが制御される半導体素子である。また、ゲート等は複数設けられ、複数のチャネルが並列に接続されることによって、大電流を流すことができる構成とされる。より具体的には、この半導体装置は、例えばパワーMOSFET、IGBTである。
【0018】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置について説明する。この半導体装置は、IGBTである。
図1は、この半導体装置10の構成を示す断面図である。また、
図2は、この半導体装置10の上面透視図であり、
図1は、その中のA−A断面に相当する。
【0019】
この半導体装置(IGBT)10には、半導体基板中に形成された溝(トレンチ)中にゲートが形成された構成を具備するトレンチゲート型の素子である。
図1において、この半導体基板20においては、コレクタ領域となるp
+層(第4の半導体領域)21の上に、バッファ層となるn
+層22、ドリフト層となるn
−層(第1の半導体領域)23と、電荷蓄積層となるn
+層(蓄積層)24、ベース領域となるp
−層(第2の半導体領域)25が順次形成されている。半導体基板20の表面側には、表面からp
−層25(第2の半導体領域)を貫通してn
−層(第1の半導体領域)23に達する溝(トレンチ)26が形成されている。溝26は、
図1における紙面と垂直方向に延伸して並行に複数形成されている。溝26の内面(側面)には酸化膜(ゲート絶縁膜)27が一様に形成された上で、ゲート電極28が溝26を埋め込むように形成されている。なお、電荷蓄積層となるn
+層24はなくともよいが、これがある場合、溝(トレンチ)26は、n
+層24に達するように形成されている。
【0020】
半導体基板20の表面側においては、溝26の両側に、n
+層(第3の半導体領域)29が形成されている。半導体基板20の裏面全面には、p
+層(コレクタ領域)21と電気的に接続してコレクタ電極(裏面電極)30が形成されている。半導体基板20の表面には、エミッタ電極(共通電極)31が形成されている。ただし、溝26の表面側においては層間絶縁膜32がゲート電極28(溝26)を覆うように形成されているため、エミッタ電極(共通電極)31は、層間絶縁膜32の開口部を通じてn
+層(第3の半導体領域)29とp
−層(第2の半導体領域)25の両方に電気的に接続し、ゲート電極28とは絶縁される。
【0021】
この半導体装置10においては、各溝26毎に、ゲート電極28に印加された電圧によって溝26の側面におけるp
−層25(第2の半導体領域)でチャネルが生じ、このチャネルを介して電流を流すことができる。このため、n
−層23(第1の半導体領域)とn
+層29(第3の半導体領域)の間でnチャネルのMOSFETとして動作する。このMOSFETがオンとされた場合、通常のMOSFETとしての動作に加え、コレクタ領域であるp
+層(第4の半導体領域)21からホールが、ドリフト層となるn
−層23(第1の半導体領域)側に注入されるため、ドリフト層における伝導度変調が生じ、IGBTのオン抵抗が特に小さくなる。このため、特に大電流を流すことができる。すなわち、ゲート電極28に印加する電圧によって、エミッタ電極(共通電極)31とコレクタ電極(裏面電極)30との間の電流のオン・オフを制御することができる。
【0022】
上面からの透視図である
図2においては、エミッタ電極31、層間絶縁膜32を透視した構成が示されており、層間絶縁膜32における開口部であるエミッタ接続開口部321が破線で示されている。エミッタ電極31と半導体基板20とは、このエミッタ接続開口部321で直接接する。なお、
図1、2においては、構造を模式的に示すために、溝26の幅とその間隔、各半導体層の厚さ等の比率が実際とは異なって示されている。
【0023】
また、隣接する2つの溝26の周囲における構成が同一となっていない点については
図16の構造と同様であるが、隣接する2つの溝26の間の領域(溝間領域)は、その構造に応じて2種類に大別される。その一つ目の領域(第1の溝間領域)は、
図1における左から1番目の溝26とこれに隣接する左から2番目の溝26の間、左から2番目の溝26に隣接する左から3番目の溝26とこれに隣接する左から4番目の溝26の間の領域である。その2つ目の領域(第2の溝間領域)は、2つの第1の溝間領域に挟まれた溝26の間の領域である、
図1における左から2番目の溝26とこれに隣接する左から3番目の溝26の間の領域である。第1の溝間領域と第2の溝間領域は
図1における紙面の左右方向において交互に設けられる。
【0024】
具体的には、一番左側の溝26と左から3番目の溝26においては、右側のみにn
+層29が形成されており、左から2番目の溝26と一番右側の溝26においては、左側のみにn
+層29が形成されている。この構成により、第1の溝間領域においてはn
+層29が形成された側同士が相対し、第2の溝間領域においてはn
+層29が形成されない側同士がそれぞれ相対する。
【0025】
また、層間絶縁膜32におけるエミッタ接続開口部321は、第1の溝間領域においてのみ形成され、第2の溝間領域においては形成されていない。このため、エミッタ電極(共通電極)31は、第1の溝間領域においてのみn
+層29及びp
−層25と接続され、第2の溝間領域におけるp
−層25とは接続されない。なお、ここで、「接続される」とは、実質的に低抵抗で接続される、例えばオーミック接触する場合を意味し、ショットキー接触する場合や、絶縁層を介して接触する場合、動作時にpn接合が逆バイアスとなるように接合される場合等を含まないものとする。例えば、第1の溝間領域におけるp
−層25とエミッタ電極31との間の抵抗を下げるために、第1の溝間領域におけるp
−層25の表面に局所的に他の層(例えばp
+層)を形成し、この層を介して第1の溝間領域におけるp
−層25とエミッタ電極31とが電気的に接続される構成とすることもできる。ここでは、こうした場合も、「エミッタ電極31が第1の溝間領域におけるp
−層25と接続される」場合に含むものとする。
【0026】
この場合、第1の溝間領域におけるp
−層25の電位は、エミッタ電極31の電位と等しくなる。一方、第2の溝間領域におけるp
−層25は、仮に図示された範囲外(例えば溝26が延伸する方向の端部側)で第1の溝間領域のp
−層25と繋がっていたとしても、p
−層25の不純物濃度が低く、かつエミッタ接続開口部321から沿面距離は長くなる。このため、第2の溝間領域におけるp
−層25の電位は、第1の溝間領域におけるp
−層25の電位とは必ずしも一致しない。すなわち、第2の溝間領域におけるp
−層25は、第1の溝間領域におけるp
−層25あるいはエミッタ電極31から浮遊したものと近似的に考えることができる。このため、以下では、第1の溝間領域におけるp
−層25をそれぞれ電位固定p
−層251(第2の半導体領域の第1の部分)と呼称し、第2の溝間領域におけるp
−層25を浮遊p
−層252(第2の半導体領域の第2の部分)と呼称する。
【0027】
この構成と
図16の構成において、コレクタ電極とエミッタ電極との間の電圧VCEを上昇させて所定の高電圧を印加した後に、ゲート電極の電圧(エミッタ電極を基準とする)VGEを零から閾値以上に上昇させた場合における、コレクタ電極に流れる電流ICをシミュレーションによって調べた。
【0028】
図16の構成(比較例)における上記の特性を
図3(a)、
図1の構成(実施例)における上記の特性を
図3(b)にそれぞれ示す。ここで、上段は上記の動作の際のVCEの変化を示し、下段はVGE、ICの変化を示している。ここで、VCE、VGEは共に電圧を示しているが、VCEの最大値は100V以上、VGEの最大値は10V以下であり、上段と下段における電圧のスケールは大きく異なる。このため、実際にはVCEの絶対値、その変化率は、VGEと比べて大きくなっている。
【0029】
この結果より、実施例(
図3(b))においては、VGEの立ち上がり速度が比較例(
図3(a))と比べると、より速く閾値電圧に達し、そのためにICの立ち上がり時間(オン時間)が大幅に短縮されることが明らかである。VCEは、ICの立ち上がりに応じて急激に減少している。すなわち、
図1の構成においては、オン時間を大幅に短くすることができる。
【0030】
ここで、このオン時間は、
図3における期間I(VGEが閾値VTまで上昇するまでの期間)と、期間II(VGEが閾値に達してからICが充分な値となるまでの期間)に分けて考えることができ、オン時間は期間Iと期間IIの和となる。
図3(b)の場合(実施例)においては、期間I、II共に
図3(a)の場合(比較例)と比べて短縮しているために、オン時間が短くなっている。
【0031】
この理由は、以下の通りに説明される。
図4は、
図1における溝26の左右における構成を模式的に示す図である。溝26の右側が第1の溝間領域、左側が第2の溝間領域となっている。ここでは、単純化のために、上記の動作において本質的でないn
+層22、n
+層24の記載は省略している(あるいは、これらはドリフト層であるn
−層23に含まれるものとしてもよい)。この動作においては、
図4におけるコレクタ端子Cとエミッタ端子Eの電位差が
図3におけるVCE、ゲート端子Gとエミッタ端子Eの電位差がVGEとなり、コレクタ端子C又はエミッタ端子Eに流れる電流がICとなる。ゲート端子Gに流れる電流は無視できる程度である。前記の通り、VGEを閾値以上に上昇させることによって、電位固定p
−層251における溝26(酸化膜(ゲート絶縁膜)27)と接する側において、チャネル50が生じ、MOSFETがオンとなる。
【0032】
この動作においては、チャネル50の生成は、ゲート電極28とその右側の電位固定p
−層251との間の寄生容量C1に依存する。一方、ゲート電極28とその左側の浮遊p
−層252との間には寄生容量C3が存在する。電位固定p
−層251の電位は、エミッタ端子Eと等しくなる一方、前記の通り、ゲート電極28の左側にある浮遊p
−層252の電位は、電位固定p
−層251の電位とは等しくならない。この浮遊p
−層252の電位は、p
+層(コレクタ層)21と接したドリフト層であるn
−層23と浮遊p
−層252との間のpn接合によって生じる空乏層による寄生容量C2、ゲート電極28と浮遊p
−層252との間のゲート絶縁膜27によって生じる寄生容量C3の直列接続を含む等価回路によって定まると考えることができる。このため、
図3に示された過程においては、エミッタ端子Eと電気的に接続された電位固定p
−層251の電位は一定であると考えることができるのに対して、浮遊p
−層252の電位は変動する。
【0033】
ここで、上記の期間I、IIは、いずれも、ゲート電極28に接続された寄生容量(C1、C2、C3)を(充)放電する時間に対応する。このため、どちらの期間においても、これらの寄生容量に蓄積された電荷が素速く変化できる(変位電流が流れる)状況とすれば、この期間を短縮することができる。
【0034】
ここで、上記の動作において、実施例(
図3(b)においては、VGEの上昇よりも先にVCEが上昇しているため、VCG(コレクタ端子Cとゲート端子Gの間の電位差)に対応した電荷がC2、C3に蓄積される。
【0035】
その後、期間Iにおいて、VGEが上昇を始めると、これに伴ってVCGも変化する。これによって、C2、C3に蓄積された電荷が減少する(変位電流が流れる)。これによって、ゲート電極28の電位の上昇速度が高まる。すなわち、期間Iが短縮する。
【0036】
次に、期間IIにおいて、VGがVTに達した場合、ICが増大を始め、これによって、VCEは減少を始める。これによって、VCGが変化するため、更にC2、C3に蓄積された電荷が減少し、変位電流が流れる。このため、期間IIが短縮する。
【0037】
特に、前記の通り、VCEの最大値はVGEの最大値よりも大きいために、VCGもVGEの最大値よりも大きくなる。このため、VCGによってC2、C3に蓄積された電荷量はC1に蓄積される電荷量よりも大きく、C2、C3を流れる上記の変位電流の寄与は大きくなる。
【0038】
これに対して、比較例の場合には、
図4における浮遊p
−層252が存在せず、
図4における溝26の左側と右側の構造は同じであり、その電位は常に左右で等しくなり、エミッタ端子Eと等しい。このため、上記のようなC2、C3における変位電流の寄与は発生し得ない。
【0039】
すなわち、
図1の構成の半導体装置10においては、VCEを所望の高電圧まで上昇させた後でVGEを閾値以上に上昇させる動作を行うことによって、オン時間を短くすることができる。
【0040】
この半導体装置10はIGBTであるものとしたが、周知のように、コレクタ層となるp
+層21(第4の半導体領域)を除いたトレンチゲート型のパワーMOSFETにおいても、同様の構成によって、同様の効果を奏することは明らかである。ただし、特にIGBTにおいては、以下に説明する効果も奏する。
【0041】
図5は、
図1の構成においてコレクタ領域(p
+層21)からドリフト領域(n
−層23)に注入されたホールの状況を模式的に示す図である。このホールの注入によってn
−層23で伝導度変調が起こり、オン抵抗を減少させ、大電流を流すことができる。あるいは、コレクタ−エミッタ飽和電圧(VCE(sat))を低下することができる。しかしながら、n
−層23側に注入されたホールは、図中の実線の矢印で示されるように、電位固定p
−層251を介して上側に形成されたエミッタ電極31に流れるため、このホールがn
−層23に残存する量は限定される。前記の通り、このホールを蓄積するためにn
+層24が設けられている。しかしながら、
図16におけるエミッタ電極91はIGBTの動作に不可欠ではあるが、n
−層23中のホールを制限する要因となっていることも明らかである。
【0042】
これに対して、上記の半導体装置10においては、第2の溝間領域における浮遊p
−層252にはエミッタ電極31が接続されないため、浮遊p
−層252下のn
−層23とn
+層24との界面近傍の領域におけるホールはエミッタ電極31側には流れ出ることが困難であり、
図5中の破線で示された領域に蓄積されやすくなる。この蓄積されたホールは、n
−層23における伝導度変調に寄与する。このため、
図15や
図16の構成と比べて、n
−層23における伝導度変調の効果を大きくすることができ、VCE(sat)を低下させることができる。なお、この効果は電荷蓄積層であるn
+層24がない場合でも同様であるため、n
+層24を形成することは必須ではない。
【0043】
ここで、この効果は、第1の溝間領域の幅と第2の溝間領域の幅の比率に依存することは明らかである。
図1において、第1の溝間領域の幅がD
1、第2の溝間領域の幅がD
2として示されている。ここで、これらの値は、各領域における隣接する各溝26の中央を基準とした間隔(トレンチ間隔)として示されている。D
1に対してD
2が小さいと、ホールを蓄積できるという前記の効果が小さくなることが明らかである。
【0044】
一方、電子がコレクタ領域(p
+層21)側に向かって(下側に向かって)流れることによって、逆にホールがコレクタ領域から
図1において上側に流れて蓄積される。この電子は、エミッタ電極31と接続された第1の溝間領域(幅D
1)から注入される。このため、半導体装置のチップサイズが同じ場合、比率D
2/D
1が大きくなると、下側に向かって流れる電子の量が少なくなるため、結局ホールが蓄積される量も少なくなる。
【0045】
このため、比率D
2/D
1は、1から大きくは外れず、0.5〜3.0の範囲とすることが、オン抵抗を低減するという観点からは好ましい。具体的には、例えばD
1=4.2μm、D
2=6.2μm程度とすることができる。
【0046】
なお、トレンチゲート型の素子の構造において、溝や浮遊p
−層等の構成としては、各種のものが可能である。
図6は、この一例の構成(第1の変形例)を示す断面図である。この構造においては、
図1の構造における左から2番目と3番目の溝26の間に、n
+層29が両側に形成されない溝26が更に設けられている。このため、
図6の構成においては、左から1、2番目の溝26の間の領域が第1の溝間領域となり、左から2、3番目の溝26の間、左から3、4番目の溝26の間の領域が第2の溝間領域となる。この構成の場合には、第1の溝間領域と第2の溝間領域とは交互に形成されていないが、同様の効果を奏することは明らかである。
【0047】
また、
図1、6中においては、全ての溝26は紙面と垂直に延伸しているものとし、n
+層29、電位固定p
−層251、浮遊p
−層252等、半導体基板20の上層側における構成も溝26の延伸方向と並行であるとした。しかしながら、溝26の延伸方向において、例えばn
+層29と電位固定p
−層251の構成が交互に設けられた構成とすることもできる。こうした構成の半導体装置(第2の変形例)の断面図を
図7、上面透視図を
図8に示す。ここで、
図7は
図1に対応し、
図8は
図2に対応する。
図7(a)、(b)はそれぞれ
図8におけるB−B断面、C−C断面に相当する。
【0048】
この半導体装置においては、第1の溝間領域において、B−B断面の箇所では左右方向の全面にわたりn
+層29が形成されているのに対し、C−C断面の箇所ではn
+層29は全く形成されていない。すなわち、n
+層29が第1の溝間領域の溝26の延伸方向においてエミッタ接続開口部321に対応して周期的に形成されている。こうした構成においても、第1の溝間領域におけるp
−層25は電位固定p
−層251として機能し、第2の溝間領域におけるp
−層25は浮遊p
−層252として機能するため、前記と同様の効果を奏することは明らかである。
【0049】
また、特許文献1等に記載の技術と同様に、その他の具体的構成、例えば溝の配列構成等を最適化することによって、素子の特性を向上させることができる。例えば、溝26の間隔D
1、D
2の比率は上記の通りであるが、これらの絶対値を最適化することによって耐圧を調整する、等が可能である。
【0050】
また、IGBTとして充分な特性が得られる限りにおいて、バッファ層となるn
+層22や蓄積層となるn
+層24を設ける必要はない。また、第1の半導体領域、第2の半導体領域は、前記の例ではそれぞれ一様な厚さをもつ半導体層(n
−層、p
−層)であり、これらが積層されて半導体基板が形成されるものとしたが、これらが積層されず、例えば
図2における異なる領域において存在するようにしてIGBT、パワーMOSFETを構成することもできる。
【0051】
更に、上記と同様に、電位固定p
−層(第2の半導体領域の第1の部分)と浮遊p
−層(第2の半導体領域の第2の部分)を具備し、ゲート電極が浮遊p
−層(第2の半導体領域の第2の部分)と容量結合した構成であれば、トレンチゲート型以外の素子においても、同様の効果を奏する。
図9は、この構造をプレーナゲート型のIGBTにおいて用いた例である半導体装置60(第3の変形例)の断面図である。
【0052】
この構成においては、コレクタ領域となるp
+層(第4の半導体領域)21の上に、ドリフト領域となるn
−層(第1の半導体領域)23が形成されている。このn
−層23の表面において、選択的不純物拡散あるいはイオン注入によって、電位固定p
−層(第2の半導体領域の第1の部分)251、及び電位固定p
−層251上において離間して2つのn
+層(第3の半導体領域)29が形成されている。更に、隣合う電位固定p
−層251間に浮遊p
−層252(第2の半導体領域の第2の部分:図中の中央の一つ)が形成されている。この半導体装置においては、半導体基板の表面に露出したn
+層29から、同様に露出した電位固定p
−層251、n
−層23を介して、浮遊p
−層252までの範囲を、酸化膜(ゲート絶縁膜)26を介してゲート電極28が覆っている。また、ゲート電極28上や半導体基板上を覆って層間絶縁膜32、エミッタ電極(共通電極)31が順次形成されている。電位固定p
−層251中における2つのn
+層29の間においては、p
+層251aが形成され、エミッタ電極31とp
+層251a及び2つのn
+層29とが電気的に接続するように、エミッタ接続開口部321が層間絶縁膜32に形成されている。
【0053】
また、
図10は、上記の半導体装置60における電位固定p
−層251と浮遊p
−層252の配置の一例を示す上面から見た平面図である。このように、浮遊p
−層252は、隣接する電位固定p
−層251の間に形成され、電位固定p
−層251が浮遊p
−層252に囲まれる形態とされる。ただし、
図10においては分離された浮遊p
−層252が複数形成された形態としたが、電位固定p
−層251同士、浮遊p
−層252同士を繋げた構成とすることもできる。電位固定p
−層251、浮遊p
−層252の平面形状は円形ではなく、こうした配列に好適な六角形の形状とすることもできる。
【0054】
この半導体装置(IGBT)60においては、エミッタ電極(共通電極)31とコレクタ電極30との間に所定の電位が与えられ、動作する。この際、浮遊p
−層252は、その周囲のn
−層23とはpn接合によってpn接合分離され、
図4と同様に、浮遊p
−層252とn
−層23との間に寄生容量C2、浮遊p
−層252とゲート電極28との間に寄生容量C3が生じ、これらの寄生容量C2、C3に電荷が充電される。その後、ゲート電極28の電位を上げるように制御することによってチャネルが形成され、この半導体装置60がオンとなる。
【0055】
ここで、この半導体装置60においても、
図4と同様の等価回路が形成されるため、寄生容量C2、C3に充電されていた電荷が寄与してゲート電極28と寄生容量C1における電荷の充電が早まり、
図3(b)と同様の動作を行った場合には、オン時間を短くすることができる。
【0056】
この構成においても、電位固定p
−層251と浮遊p
−層252とを形成し、ゲート電極28がMOSFETのゲートとして機能することができる限りにおいて、上記と異なる各種の配置を実現することができる。また、IGBTだけでなく、パワーMOSFETにおいても同様の構造を実現し、同様の効果を得ることができることは明らかである。また、同様の機能が維持される限りにおいて、
図9において示されていない層を適宜形成してもよい。
【0057】
(第2の実施の形態)
このように、第1の実施の形態となる半導体装置10は、オン動作の高速化が図れる、IGBTの場合には、更に、オン抵抗を小さくすることができるという効果を奏する。しかしながら、一方で、浮遊p
−層252(第2の半導体領域の第2の部分)が電気的に浮遊している場合においては、ノイズの影響を受けやすくなることは明らかである。特に、素子全体において浮遊p
−層252の占める面積が大きい場合には、この影響は大きくなり、ゲート電極の電位(スイッチング動作)がノイズの影響を受けやすくなる。このため、前記の
図3(b)に示されたオン時の動作は、ノイズの影響を受けやすく、誤動作の確率が高くなる。
【0058】
また、前記の通り、浮遊p
−層252(第2の半導体領域の第2の部分)と電位固定p
−層251(第2の半導体領域の第1の部分)が実際には素子の端部で接続されており、浮遊p
−層252が厳密には電気的に浮遊していない場合もある。こうした場合には、素子の面内で多数形成された浮遊p
−層252の状態は均一とはならず、素子の面内で複数並列に形成されたIGBTやパワーMOSFETの特性も均一とはならない。この場合、例えば、
図3(b)におけるVGEの上昇の度合いが各IGBT毎にばらつき、これらを並列に接続した場合には、結局、オン動作の高速化という効果は低減することになる。
【0059】
このため、第2の実施の形態に係る半導体装置110においては、電位固定p
−層(第2の半導体領域の第1の部分)については前記と同様の構成とするが、浮遊p
−層(第2の半導体領域の第2の部分)については、浮遊状態とはせずに、これも共通電極と接続された形態とする。ただし、電位固定p
−層と共通電極との間の接続は、これらの間で大電流を流すために、接触抵抗が小さくなるように行われるのに対して、この場合の浮遊p
−層と共通電極との間の接続は、大きく制限された状態で行われる。以下では、新たに共通電極と接続された浮遊p
−層を疑似浮遊p
−層と呼称する。また、この疑似浮遊p
−層を、新たに、第2の半導体領域の第2の部分と呼称する。
【0060】
図11は、この半導体装置110の構成を示す断面図であり、
図12は、その上面透視図である。ここで、
図11、
図12(a)はそれぞれ第1の実施の形態における
図1、2に対応しており、
図11は、
図12(a)におけるD−D断面を示している。
図12(b)においては、
図12(a)をより広範囲で示した構成における層間絶縁層32の開口部が実線で示されている。
【0061】
図11に示されるように、この半導体装置110においては、前記の浮遊p
−層252に対応した疑似浮遊p
−層(第2の半導体領域の第2の部分)253が、層間絶縁膜32に設けられた浮遊層電位調整開口部322を介して、エミッタ電極(共通電極)31と接続されている。このために、前記の浮遊p
−層252とは異なり、疑似浮遊p
−層253の電位はエミッタ電極(共通電極)31によって調整される。
【0062】
ここで、第1の実施の形態の構成(
図1)と同様に、電位固定p
−層251は、エミッタ接続開口部321を介してエミッタ電極31と接する。この接触面積(第1の接触面積)と比べて、疑似浮遊p
−層253とエミッタ電極31との接触面積(浮遊層電位調整開口部322の開口面積:第2の接触面積)は小さく設定されている。
図11においては、第1の接触面積は、第1の溝間領域におけるn
+層29の間隔に対応する。この半導体装置110の動作電流を大きくするためには、第1の接触面積は大きいことが必要である。
【0063】
このため、エミッタ電極31と疑似浮遊p
−層253との間の抵抗は、エミッタ電極31と電位固定p
−層251との間の抵抗と比べて高くなる。この抵抗が高い場合には、オン動作時においては、疑似浮遊p
−層253の電位が電位固定p
−層251の電位と常時等しくはならない。このため、
図3(b)のVCE、VGEにおける過渡期間(オン動作の時間)の短い期間内においては、第1の実施の形態の半導体装置10と同様に、
図4に示された等価回路が形成されていると考えることができ、参考例と同様の効果、すなわち、オン時間の短縮やIGBTにおけるオン抵抗の低下の効果が得られる。
【0064】
また、エミッタ電極31と疑似浮遊p
−層253との間の抵抗が高ければ、ホールの引き抜きがされにくくなるため、IGBTにおけるオン抵抗を低下するという第1の実施の形態と同様の効果が得られることも明らかである。一方で、第1の実施の形態とは異なり、疑似浮遊p
−層253は完全な浮遊状態とはされないため、ノイズの影響は低減される。
【0065】
このため、上記の構成において、これらの効果を得るためには、エミッタ電極31と疑似浮遊p
−層253との間の抵抗の、エミッタ電極31と電位固定p
−層251との間の抵抗に対する比率が大きいことが好ましい。この比率は、第1の接触面積、第2の接触面積だけでなく、それぞれ複数設けられたエミッタ接続開口部321と浮遊層電位調整開口部322の構成によっても調整することができる。ここで、面内において複数形成された各素子の特性を均一とするためには、エミッタ接続開口部321、浮遊層電位調整開口部322を、共に周期的に形成することが好ましい。
【0066】
図12(a)に示されるように、エミッタ接続開口部321は第1の溝間領域M
1においてのみ形成され、その横方向(溝26の延伸方向と垂直な方向)における間隔はαとされる。また、エミッタ電極31と電位固定p
−層251との間の抵抗を小さくするためには、
図12の上下方向におけるエミッタ接続開口部321の間隔は狭くされる。
【0067】
一方、浮遊層電位調整開口部322も周期的に設けることが好ましいことは前記の通りであるが、エミッタ電極31と疑似浮遊p
−層253との間の抵抗を高めるためには、この周期を大きくすることが有効である。このため、
図12における上下方向(溝26の延伸方向)における浮遊層電位調整開口部322の間隔βをαよりも大きくとることが有効である。具体的には、比β/αを、25〜70の範囲とすることが好ましい。この比が25よりも小さいと、上記のオン時間の短縮、IGBTにおけるオン抵抗の低下等の効果が小さくなる。この比が70よりも大きいと、疑似浮遊p
−層25が電気的に浮遊した状態に近づくため、ノイズの影響が大きくなる。具体的には、例えばαは12μm程度とされ、βは上記の範囲内で適宜設定される。
【0068】
なお、トレンチゲート型の素子の構造において、溝や浮遊p
−層の構成としては、各種のものが可能である。
図13は、この一例の構成(第1の変形例)を示す断面図であり、第1の実施の形態における
図6の構成に対応する。
図13の構造においては、図中左から2番目と3番目の溝26の間に、n
+層29が両側に形成されない溝26が更に設けられている。このため、
図13の構成においては、左から1、2番目の溝26の間の領域が第1の溝間領域M
1となり、左から2、3番目の溝26の間、左から3、4番目の溝26の間の領域が第2の溝間領域M
2となる。2つの第2の溝間領域M
2において、浮遊層電位調整開口部322が設けられている。この浮遊層電位調整開口部322は、溝26が延伸する方向においてβ/α=25〜70となる間隔βをもって周期的に形成すればよい。この構成の場合には、第1の溝間領域M
1と第2の溝間領域M
2とは交互に形成されていないが、同様の効果を奏することは明らかである。
【0069】
また、第1の半導体層、第2の半導体層の構成も、IGBTあるいはパワーMOSFETとして動作する限りにおいて、任意である。例えば、第1の半導体層において、コレクタ層となるp
+層21と接する側(n
−層22の下側)にバッファ層となるn
+層を更に設けてもよい。
【0070】
また、IGBTとして充分な特性が得られる限りにおいて、バッファ層となるn
+層22や蓄積層となるn
+層24を設ける必要はない。また、第1の半導体領域、第2の半導体領域は、前記の例ではそれぞれ一様な厚さをもつ半導体層(n
−層、p
−層)であり、これらが積層されて半導体基板が形成されるものとしたが、これらが積層されず、例えば
図12における異なる領域において存在するようにしてIGBT、パワーMOSFETを構成することもできる。
【0071】
更に、第1の実施の形態と同様に、電位固定p
−層(第2の半導体領域の第1の部分)と疑似浮遊p
−層(第2の半導体領域の第2の部分)を具備し、ゲート電極が疑似浮遊p
−層(第2の半導体領域の第2の部分)と容量結合した構成であれば、トレンチゲート型以外の素子においても、同様の効果を奏する。
図14は、第1の実施の形態における
図9と同様に、この構造をプレーナゲート型のIGBTにおいて用いた例である半導体装置120(第2の変形例)の断面図である。
【0072】
この構成においては、コレクタ領域となるp
+層(第4の半導体領域)21の上に、ドリフト領域となるn
−層(第1の半導体領域)23が形成されている。このn
−層23の表面において、選択的不純物拡散あるいはイオン注入によって、電位固定p
−層(第2の半導体領域の第1の部分)251、及び電位固定p
−層251上において離間して2つのn
+層(第3の半導体領域)29が形成されている。更に、隣合う電位固定p
−層251間に疑似浮遊p
−層253(第2の半導体領域の第2の部分:図中の中央の一つ)が形成されている。この半導体装置においては、半導体基板の表面に露出したn
+層29から、同様に露出した電位固定p
−層251、n
−層23を介して、浮遊p
−層252までの範囲を、酸化膜(ゲート絶縁膜)26を介してゲート電極28が覆っている。また、ゲート電極28上や半導体基板上を覆って層間絶縁膜32、エミッタ電極(共通電極)31が順次形成されている。電位固定p
−層251中における2つのn
+層29の間においては、p
+層251aが形成され、エミッタ電極31とp
+層251a及び2つのn
+層29とが電気的に接続するように、エミッタ接続開口部321が層間絶縁膜32に形成されている。
【0073】
また、電位固定p
−層251と同様の伝導型、キャリア濃度をもつ疑似浮遊p
−層253は、隣接する電位固定p
−層251の間に形成される。疑似浮遊p
−層253は、層間絶縁膜32における浮遊層電位調整開口部322を介してエミッタ電極31と接する。
【0074】
この半導体装置(IGBT)120においては、エミッタ電極(共通電極)31とコレクタ電極30との間に所定の電位が与えられ、動作する。この際、疑似浮遊p
−層253は、その周囲のn
−層23とはpn接合によってpn接合分離され、
図4と同様に、疑似浮遊p
−層253とn
−層23との間に寄生容量C2、疑似浮遊p
−層253とゲート電極28との間に寄生容量C3が生じ、これらの寄生容量C2、C3に電荷が充電される。その後、ゲート電極28の電位を上げるように制御することによってチャネルが形成され、この半導体装置120がオンとなる。
【0075】
ここで、この半導体装置120においても、
図4と同様の等価回路が形成されるため、寄生容量C2、C3に充電されていた電荷が寄与してゲート電極28と寄生容量C1における電荷の充電が早まり、
図3(b)と同様の動作を行った場合には、オン時間を短くすることができる。
【0076】
一方、疑似浮遊p
−層253は、エミッタ接続開口部321よりも面積が小さな浮遊層電位調整開口部322を介してエミッタ電極31と接するため、疑似浮遊p
−層253は電気的に完全に浮遊した状態とはならず、その電位はエミッタ電極31の電位で制御される。
【0077】
このため、この半導体装置120においても、前記の半導体装置110と同様の効果が得られる。すなわち、オン時間の短縮や、IGBTにおけるオン抵抗の低下が得られる一方で、ノイズの影響は低減される。
【0078】
この構成においても、電位固定p
−層251と疑似浮遊p
−層253とを形成し、ゲート電極28がMOSFETのゲートとして機能することができる限りにおいて、上記と異なる各種の配置を実現することができる。また、IGBTだけでなく、パワーMOSFETにおいても同様の構造を実現し、同様の効果を得ることができることは明らかである。また、同様の機能が維持される限りにおいて、
図14において示されていない層を適宜形成してもよい。
【0079】
また、上記の例と同様にしてpチャネル型のIGBT、パワーMOSFETを実現することができることも明らかである。例えば、上記の例では第1、第3の半導体領域をn型(第1の導電型)とし、第2、第4の半導体領域をこれと逆のp型(第2の導電型)としたが、pチャネル型の素子を実現するためには、第1、第3の半導体領域をp型(第1の導電型)、第2、第4の半導体領域の導電型をn型(第2の導電型)として同様の構造を形成すればよい。この場合には、VCE、VGE等の符号を正負逆転させた動作を行わせることによって、同様にオン時間を短縮させることができる。