特許第6182897号(P6182897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182897
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】光受信器および光受信方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/61 20130101AFI20170814BHJP
   H03G 3/30 20060101ALI20170814BHJP
   H03G 3/20 20060101ALI20170814BHJP
   H03F 3/08 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   H04B10/61
   H03G3/30 B
   H03G3/20 Z
   H03F3/08
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-34645(P2013-34645)
(22)【出願日】2013年2月25日
(65)【公開番号】特開2014-165644(P2014-165644A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】野田 有秀
【審査官】 前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−224111(JP,A)
【文献】 特開平06−338746(JP,A)
【文献】 特開平11−088087(JP,A)
【文献】 特開平07−283784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/61
H03F 3/08
H03G 3/20
H03G 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力した信号光を光電変換して電気信号を出力する受光部と、
前記電気信号の振幅値が一定となるように制御する出力制御部、とを有し、
前記出力制御部は、制御速度が低速である第1の自動出力制御フィードバックループと、制御速度が高速である第2の自動出力制御フィードバックループを備え、
局部発振光源と、前記局部発振光源が出力する局部発振光と入力信号光を混合して干渉信号光を出力する光混合部、とをさらに有し、
前記受光部は、前記信号光としての前記干渉信号光を光電変換して電気信号を出力し、
前記第1の自動出力制御フィードバックループは、フィードバックループを構成し、前記フィードバックループ内に
前記電気信号を入力する第1の可変利得増幅器と、
前記第1の可変利得増幅器の出力の一部を入力する第1のフィルタと、
前記第1のフィルタを通過した第1の電気信号のピーク値である第1のピーク値を検出する第1のピーク検出器と、
前記第1のピーク値を第1の基準値と比較し、前記第1のピーク値が前記第1の基準値と一致するように前記第1の可変利得増幅器の利得を制御する第1の制御部、とを有し、
前記第2の自動出力制御フィードバックループは、フィードバックループを構成し、前記フィードバックループ内に
前記第1の可変利得増幅器の出力の一部を入力する第2のフィルタと、
前記第2のフィルタを通過した第2の電気信号のピーク値である第2のピーク値を検出する第2のピーク検出器と、
前記第2のピーク値を第2の基準値と比較し、前記第2のピーク値が前記第2の基準値と一致するように前記局部発振光源の出力を制御する第2の制御部を有する
受信器。
【請求項2】
前記第1のフィルタは、低域通過フィルタであり、
前記第2のフィルタは、高域通過フィルタである
請求項に記載した光受信器。
【請求項3】
信号光を光電変換して電気信号を取得し、
前記電気信号を増幅し、前記電気信号の振幅値が一定となるように増幅率を制御し、
前記増幅率の制御は、フィードバックの制御速度が低速である第1の制御ステップと、フィードバックの制御速度が高速である第2の制御ステップとにより行い、
局部発振光と入力信号光を混合して干渉信号光を取得し、
前記干渉信号光を前記信号光とし、
前記第1の制御ステップは、
前記電気信号を第1の増幅率で増幅して第1の増幅電気信号を取得し、
前記第1の増幅電気信号のうち第1の通過帯域に含まれる第1の電気信号を取り出し、
前記第1の電気信号のピーク値である第1のピーク値を検出し、
前記第1のピーク値を第1の基準値と比較し、前記第1のピーク値が前記第1の基準値と一致するように前記第1の増幅率を制御し、
前記第2の制御ステップは、
前記第1の増幅電気信号のうち第2の通過帯域に含まれる第2の電気信号を取り出し、
前記第2の電気信号のピーク値である第2のピーク値を検出し、
前記第2のピーク値を第2の基準値と比較し、前記第2のピーク値が前記第2の基準値と一致するように前記局部発振光の出力を制御する
受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光受信器および光受信方法に関し、特に、自動出力制御手段を備えた光受信器および光受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネット内の情報量(トラフィック)の増大等に伴い基幹伝送システムの更なる大容量化が求められている。大容量化とともに受信感度の向上が重要となっており、受信感度に優れたコヒーレント光通信方式が注目されている。コヒーレント光通信方式における光受信器においては、伝送されてきた光信号を受信し、局部発振光源を用いたヘテロダイン検波により復調する。その後、復調信号をデジタル処理し、データ信号の再生を行う。
【0003】
このような光受信器においては、伝送されてきた光信号の強度(レベル)が変化した場合であっても、光受信器内におけるデジタル処理への入力電気信号の振幅(レベル)は一定であることが望ましい。これはLSI(Large Scale Integration)などで構成されるデジタル信号処理回路の入力電気信号の振幅(レベル)が変動すると、エラーを発生する可能性があるからである。そのため光受信器では、出力電気信号の振幅(レベル)が次段のデジタル信号処理回路への入力電気信号として常に最適な振幅(レベル)となるように、信号増幅器の利得を可変できる構成としている。このような利得可変できる信号増幅器は自動利得制御(Automatic Gain Control:AGC)増幅器と呼ばれ、外部からの制御信号によりその増幅利得を可変することができる。
【0004】
図9に、コヒーレント光通信方式で用いられる関連する光受信器の構成の一例を示す。関連する光受信器500は、光カプラ502、局部発振光源(LO−LD)503、受光素子504、505、トランスインピーダンス増幅器(TIA)506、可変利得増幅器(AGC)507、ピーク検出器(PDET)508、および制御回路(CONT)509を有する。
【0005】
伝送された光入力信号501は、光カプラ502において局部発振光源(LO−LD)503が出力する局部発振光と混合され、受光素子504、505においてヘテロダイン検波される。ヘテロダイン検波によって生成されたビート電気信号は、トランスインピーダンス増幅器(TIA)506で増幅され、次段の可変利得増幅器(AGC)507に送られる。ビート電気信号は可変利得増幅器(AGC)507においてさらに増幅され、出力電気信号511として出力される。
【0006】
ここで関連する光受信器500では、出力電気信号511の一部を分岐し、ピーク検出器(PDET)508において、その振幅(レベル)を検出する構成としている。検出された信号は、制御回路(CONT)509において外部基準電圧(REF)510と比較され、その誤差信号が可変利得増幅器(AGC)507に入力される。ここで、可変利得増幅器(AGC)507からピーク検出器(PDET)508および制御回路(CONT)509を経由して、可変利得増幅器(AGC)507に帰還する自動利得制御(AGC)ループが形成されている。可変利得増幅器(AGC)507は、制御回路(CONT)509の誤差信号が常にゼロとなるように増幅利得を変化させる。この動作により、外部基準電圧(REF)510の設定に応じて、出力電気信号511の振幅(レベル)が常に一定となるように制御することができる。
【0007】
関連する光受信器500においては、光入力信号501または局部発振光の強度(レベル)が変動すると、これに応じてトランスインピーダンス増幅器(TIA)506が出力するビート電気信号の強度(レベル)も変化する。しかし、上述した構成とすることにより、可変利得増幅器(AGC)507はビート電気信号の強度(レベル)に応じて増幅利得を可変するので、関連する光受信器500は出力電気信号511の振幅(レベル)が一定となるように動作することが可能となる。
【0008】
また、パッシブ・ダブル・スター光加入者伝送方式で用いられる関連するバーストモード光受信器の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されたバーストモード光受信器は、pinフォトダイオード、トランスインピーダンスアンプ、第1の自動利得制御回路、第2の自動利得制御回路、および識別回路を有する。pinフォトダイオードで光電変換されて生成したバースト信号光電流は、トランスインピーダンスアンプで電圧に変換される。そして第1の自動利得制御回路、第2の自動利得制御回路を経て識別回路に導かれ、ロジックレベルの2値符号に変換される。
【0009】
ここで、第1の自動利得制御回路は、一定時間内において入力パワー最大のバーストの振幅を検出し、入力パワー最大のバーストの出力振幅を一定とする。また第2の自動利得制御回路は、第1の自動利得制御回路出力に対して、全バーストの出力振幅を一定とする利得制御をバーストごとに行うこととしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−334609号公報(段落「0022」〜「0025」)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した関連するコヒーレント光受信器のように、光受信器における自動利得制御では利得の可変範囲が大きく、また制御の速度は早い方が好ましい。
【0012】
具体的に説明すると例えば、図9に示した関連する光受信器500における光入力信号501は、種々の光伝送路系の条件(伝送距離、光ファイバの特性など)に依存して、その強度(レベル)が異なる。また、時間による揺らぎや経年的な変化、およびシステムの保守などによってもその強度(レベル)に変化が生じる。そして、この変化量や変化時間は原因となる条件によって異なる。したがって、光入力信号501の大きな変化にも対応できるように、利得の可変範囲が大きいことが必要である。さらに、急峻な時間変化、例えば数ミリ秒(ms)から数10ミリ秒(ms)の変化にも追従できるように、制御の速度が十分に速いことが必要となる。
【0013】
しかしながら、光受信器において利得の可変範囲を大きくするために、可変利得増幅器(AGC)507の利得を大きくすると、その動作が不安定となる。これに加え、制御ループの速度が速いという条件が加わると、制御ループ系そのものが自己微動するなどして不安定となり、発振などを引き起こす可能性がある。すなわち、自動出力制御手段として用いる自動利得制御の利得の可変範囲を拡大し、制御速度を増大すると、安定した制御を行うことが困難となる。
【0014】
このように、関連する光受信器においては、自動出力制御手段を用いて入力光の変動に対応しようとすると、安定した制御を行うことが困難になる、という問題があった。
【0015】
本発明の目的は、上述した課題である、関連する光受信器においては、自動出力制御手段を用いて入力光の変動に対応しようとすると、安定した制御を行うことが困難になる、という課題を解決する光受信器および光受信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の光受信器は、入力した信号光を光電変換して電気信号を出力する受光部と、電気信号の振幅値が一定となるように制御する出力制御部、とを有し、出力制御部は、第1の自動出力制御ループと、第1の自動出力制御ループと制御速度が異なる第2の自動出力制御ループを備える。
【0017】
本発明の光受信方法は、信号光を光電変換して電気信号を取得し、電気信号を増幅し、電気信号の振幅値が一定となるように増幅率を制御し、増幅率の制御は、制御速度が異なる複数の制御ステップにより行う。
【発明の効果】
【0018】
本発明の光受信器および光受信方法によれば、自動出力制御手段を備えた光受信器において、入力光の変動があった場合であっても、安定した制御を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施形態に係る光受信器の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る光受信器の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第2の実施形態に係る光受信器が備える自動利得制御ループの制御ループ帯域を示す概略図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る光受信器の光入力信号波形の一例を示す概略図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る光受信器の光入力信号波形の別の一例を示す概略図である。
図6】本発明の第3の実施形態に係る光受信器の構成を示すブロック図である。
図7】本発明の第3の実施形態に係る光受信器の別の構成を示すブロック図である。
図8】本発明の第4の実施形態に係る光受信器の構成を示すブロック図である。
図9】関連する光受信器の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0021】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光受信器10の構成を示すブロック図である。光受信器10は、入力した信号光を光電変換して電気信号を出力する受光部20と、この電気信号の振幅値が一定となるように制御する出力制御部30とを有する。ここで、出力制御部30は、第1の自動出力制御ループ31と、第1の自動出力制御ループと制御速度が異なる第2の自動出力制御ループ32を備える。
【0022】
このように、本実施形態による光受信器10は、出力電気信号の振幅(レベル)が一定となるように動作する出力制御部30を備えている。そのため、入力した信号光(光入力信号)の強度(レベル)が変動した場合であっても一定レベルの出力電気信号が得られる。ここで、出力制御部30は、制御速度が互いに異なる第1の自動出力制御ループ31と第2の自動出力制御ループ32を備えている。したがって、光入力信号の強度(レベル)の種々の変動状況や条件に応じて、各自動出力制御ループをそれぞれ独立に最適動作させることができる。
【0023】
このような構成とすることにより、本実施形態による光受信器10によれば、自動出力制御手段としての自動出力制御ループを備えた光受信器において、入力光の変動があった場合であっても、安定した制御を行うことが可能となる。
【0024】
具体的には例えば、第1の自動出力制御ループ31は、大きな可変利得の範囲を有し、かつ制御速度が低速である構成とし、第2の自動出力制御ループ32は、小さな可変利得の範囲を有し、かつ制御速度が高速である構成とすることができる。
【0025】
また、第1の自動出力制御ループ31は、第1のフィルタを含むフィードバックループを構成し、第2の自動出力制御ループ32は、第1のフィルタと通過帯域が異なる第2のフィルタを含むフィードバックループを構成することとしてもよい。具体的には、第1のフィルタには、高域通過フィルタおよび低域通過フィルタのいずれか一方、例えば低域通過フィルタを用いることができる。このとき、第2のフィルタは、高域通過フィルタおよび低域通過フィルタのうち第1のフィルタと異なる方、上述の場合は高域通過フィルタとすることができる。
【0026】
次に、本実施形態による光受信方法について説明する。本実施形態による光受信方法においては、信号光を光電変換して電気信号を取得し、この電気信号を増幅する。このとき、電気信号の振幅値が一定となるように増幅率を制御する。ここで、増幅率の制御は、制御速度が異なる複数の制御ステップにより行う。
【0027】
このように、本実施形態の光受信方法においては、増幅率の制御は制御速度が異なる複数の制御ステップにより行うこととしているので、光入力信号の強度(レベル)の種々の変動状況や条件に応じて、各制御ステップをそれぞれ独立に最適化することができる。そのため、入力光の変動があった場合であっても、安定した制御を行うことが可能となる。
【0028】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図2は、本発明の第2の実施形態に係る光受信器100の構成を示すブロック図である。光受信器100はコヒーレント光通信方式に用いられる構成とした。
【0029】
光受信器100は、光入力信号101を入力する光混合部としての光カプラ102、局部発振光源(LO−LD)103、受光素子104、105、およびトランスインピーダンス増幅器(TIA)106を有し、これらが受光部を構成している。
【0030】
さらに、光受信器100は第1の自動出力制御ループとしての第1の自動利得制御ループ150と、第2の自動出力制御ループとしての第2の自動利得制御ループ160を備えている。
【0031】
第1の自動利得制御ループ150はフィードバックループを構成し、フィードバックループ内に、第1の可変利得増幅器(AGC1)107、低域通過フィルタ(LPE)108、第1のピーク検出器(PDET1)109、および第1の制御回路(CONT1)110を備える。ここで、第1の可変利得増幅器(AGC1)107は、トランスインピーダンス増幅器(TIA)106が出力する電気信号を入力し、増幅して出力する。第1のフィルタとしての低域通過フィルタ(LPE)108は、第1の可変利得増幅器(AGC1)107の出力の一部を入力する。第1のピーク検出器(PDET1)109は、低域通過フィルタ(LPE)108を通過した第1の電気信号のピーク値である第1のピーク値を検出する。第1の制御部としての第1の制御回路(CONT1)110は、第1のピーク値を第1の基準値としての第1の外部基準電圧(REF1)111と比較し、第1のピーク値が第1の外部基準電圧(REF1)111と一致するように第1の可変利得増幅器(AGC1)107の利得を制御する。
【0032】
第2の自動利得制御ループ160はフィードバックループを構成し、フィードバックループ内に、第2の可変利得増幅器(AGC2)112、高域通過フィルタ(HPF)113、第2のピーク検出器(PDET2)114、および第2の制御回路(CONT2)115を備える。ここで、第2の可変利得増幅器(AGC2)112は、第1の可変利得増幅器(AGC1)107の出力の一部を入力する。第2のフィルタとしての高域通過フィルタ(HPF)113は、第2の可変利得増幅器(AGC2)112の出力の一部を入力する。第2のピーク検出器(PDET2)114は、高域通過フィルタ(HPF)113を通過した第2の電気信号のピーク値である第2のピーク値を検出する。第2の制御部としての第2の制御回路(CONT2)115は、第2のピーク値を第2の基準値としての第2の外部基準電圧(REF2)116と比較し、第2のピーク値が第2の外部基準電圧(REF2)116と一致するように第2の可変利得増幅器(AGC2)112の利得を制御する。
【0033】
このような構成とすることにより、本実施形態の光受信器100では、自動出力制御ループとして第1の自動利得制御ループ150と第2の自動利得制御ループ160という2つの特性が異なる制御ループが構成される。すなわち、第1の自動利得制御ループ150は、高利得で制御範囲が大きく、かつ低速度な制御ループである。一方、第2の自動利得制御ループ160は、低利得で制御範囲が小さく、かつ高速度な制御ループである。
【0034】
具体的には、第1の自動利得制御ループ150では、第1の可変利得増幅器(AGC1)107は高い増幅利得を有し、かつ可変利得の範囲が大きい、つまりダイナミックレンジが広い特性を備えた構成としている。しかし、制御ループの速度は低域通過フィルタ(LPE)108の帯域で制限されるため、より低速に設定されている。逆に、第2の自動利得制御ループ160では、第2の可変利得増幅器(AGC2)112は低い増幅利得を有し、かつ可変利得の範囲も小さい、つまりダイナミックレンジが狭い特性を備えた構成としている。一方、制御ループの速度は高域通過フィルタ(HPF)113の帯域により、第1の自動利得制御ループ150よりも高速に設定される。
【0035】
このような構成とすることにより、本実施形態による光受信器100によれば、光入力信号の強度(レベル)の種々の変動状況や条件に応じて、各自動利得制御ループをそれぞれ独立に最適動作させることができる。そのため、入力光の変動があった場合であっても、安定した制御を行うことが可能となる。
【0036】
次に、本実施形態による光受信器100の動作について説明をする。
【0037】
光ファイバを伝送した光入力信号101は、光カプラ102において局部発振光源(LO−LD)103から出力された局部発振光と混合され、さらに1/2ずつ分岐されて2つの受光素子104、105に出力される。この混合光は受光素子104、105においてヘテロダイン検波され、光入力信号101と局部発振光とのわずかな光波長(光周波数)の差分に応じたビート電気信号が生成される。このビート電気信号は、トランスインピーダンス増幅器(TIA)106で増幅される。なおこのトランスインピーダンス増幅器(TIA)106までは、線形増幅となるよう構成されている。
【0038】
増幅されたビート電気信号は、次段の第1の可変利得増幅器(AGC1)107と第2の可変利得増幅器(AGC2)112によって、光受信器100の出力電気信号117があらかじめ決められた振幅(レベル)になるまで増幅される。ここで、本実施形態の光受信器100では上述したように、第1の自動利得制御ループ150と第2の自動利得制御ループ160の2つの自動利得制御ループが構成されている。
【0039】
第1の自動利得制御ループ150では、第1の可変利得増幅器(AGC1)107の出力電気信号(増幅されたビート電気信号)の一部を分岐し、低域通過フィルタ(LPF)108で低域周波数成分のみ通過させる。これにより、制御ループの速度が低速に制限される。低域通過フィルタ(LPF)108を通過した電気信号について、第1のピーク検出器(PDET1)109は振幅(レベル)のピークを検出する。ピーク検出された電気信号のレベルは、第1の可変利得増幅器(AGC1)107から出力される出力電気信号の強度(レベル)に比例している。
【0040】
ピーク検出された信号のレベルは、第1の制御回路(CONT1)110において第1の外部基準電圧(REF1)111と比較される。比較された結果は、ピーク検出された信号のレベルと第1の外部基準電圧(REF1)111との誤差信号である。第1の制御回路(CONT1)110は、この誤差信号によって第1の可変利得増幅器(AGC1)107の利得制御を行う。
【0041】
光入力信号101や局部発振光源(LO−LD)103の強度(レベル)が変動すると、トランスインピーダンス増幅器106からのビート電気信号の強度(レベル)も変動する。しかし、第1の自動利得制御ループ150の動作により、第1の可変利得増幅器(AGC1)107の利得は第1の制御回路(CONT1)110が検出する誤差信号が常にゼロとなるよう変化する。そのため、第1の可変利得増幅器(AGC1)107の出力電気信号の強度(レベル)は一定に保たれる。なお、第1の外部基準電圧(REF1)111を変更することによって、第1の可変利得増幅器(AGC1)107の一定となる出力電気信号の強度(レベル)を変えることが可能である。
【0042】
第1の自動利得制御ループ150の後段には、低利得で制御範囲が小さく、高速度な第2の自動利得制御ループ160が配置されている。第2の自動利得制御ループ160の動作は、上述した第1の自動利得制御ループ150の動作と同様である。ただし、第2の自動利得制御ループ160では、低域通過フィルタ(LPF)108の替わりに高域通過フィルタ(HPF)113が用いられる。これにより高域周波数成分のみが通過するので、第2の自動利得制御ループ160の速度は高速となる。
【0043】
図3に、第1の自動利得制御ループ150の制御ループ帯域(領域1)および第2の自動利得制御ループ160の制御ループ帯域(領域2)をそれぞれ示す。縦軸はピーク検出器の出力、横軸は周波数である。
【0044】
第1の自動利得制御ループ150は、ループ速度そのものは遅いが、第1の可変利得増幅器(AGC1)107の利得が大きいことから、その利得可変範囲も大きい(領域1)。そのため、図4に例示したように、光入力信号101のレベルが約10dBから約100dBの範囲で大きく変化する場合であっても、追従することが可能である。
【0045】
一方、第2の自動利得制御ループ160は、図3の領域2に示したように、第2の可変利得増幅器(AGC2)112の利得が小さく、その利得可変範囲も小さいが、ループ速度は速い。そのため、図5に例示したように、光入力信号101のレベルが瞬時変動のように約1msから約100msの範囲で急峻に変化する場合であっても、追従することが可能である。
【0046】
次に、本実施形態による光受信方法について説明する。本実施形態による光受信方法においては、まず、信号光を光電変換して電気信号を取得し、この電気信号を増幅する。このとき、電気信号の振幅値が一定となるように増幅率を制御する。増幅率の制御は、制御速度が異なる複数の制御ステップにより行う。
【0047】
ここで、複数の制御ステップは第1の制御ステップと第2の制御ステップを含む。
【0048】
第1の制御ステップは、電気信号を第1の増幅率で増幅して第1の増幅電気信号を取得し、第1の増幅電気信号のうち第1の通過帯域に含まれる第1の電気信号を取り出す。そして、第1の電気信号のピーク値である第1のピーク値を検出する。この第1のピーク値を第1の基準値と比較し、第1のピーク値が第1の基準値と一致するように第1の増幅率を制御する。
【0049】
また、第2の制御ステップは、第1の増幅電気信号を第2の増幅率で増幅して第2の増幅電気信号を取得し、第2の増幅電気信号のうち第1の通過帯域と異なる第2の通過帯域に含まれる第2の電気信号を取り出す。そして、第2の電気信号のピーク値である第2のピーク値を検出する。この第2のピーク値を第2の基準値と比較し、第2のピーク値が第2の基準値と一致するように第2の増幅率を制御する。
【0050】
このように、本実施形態の光受信方法においては、増幅率の制御は制御速度が異なる第1の制御ステップと第2の制御ステップにより行うこととしている。そのため、光入力信号の強度(レベル)の種々の変動状況や条件に応じて、各制御ステップをそれぞれ独立に最適化することができる。これにより、入力光の変動があった場合であっても、安定した制御を行うことが可能となる。
【0051】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図6は、本発明の第3の実施形態に係る光受信器200の構成を示すブロック図である。光受信器200はコヒーレント光通信方式に用いられる構成とした。
【0052】
光受信器200は、光入力信号101を入力する光カプラ102、局部発振光源(LO−LD)103、受光素子104、105、およびトランスインピーダンス増幅器(TIA)106を有し、これらが受光部を構成している。この受光部の構成は第2の実施形態による光受信器100と同様である。
【0053】
本実施形態の光受信器200では、出力制御部を構成する、第1の自動出力制御ループとしての第1の自動利得制御ループ250と、第2の自動出力制御ループとしての第2の自動利得制御ループ260の構成が、第2の実施形態によるものと異なる。すなわち、第2の実施形態による光受信器100においては、第1の自動利得制御ループ150と第2の自動利得制御ループ160は従属接続されている。それに対して、本実施形態の光受信器200では、第1の自動利得制御ループ250の中に第2の自動利得制御ループ260が含まれた構成とした。
【0054】
次に、本実施形態による光受信器200が備える第1の自動利得制御ループ250と第2の自動利得制御ループ260の構成について、さらに詳細に説明する。
【0055】
第1の自動利得制御ループ250はフィードバックループを構成し、フィードバックループ内に、第1の可変利得増幅器(AGC1)207、低域通過フィルタ(LPE)208、第1のピーク検出器(PDET1)209、および第1の制御回路(CONT1)210を備える。ここで、第1の可変利得増幅器(AGC1)207は、トランスインピーダンス増幅器(TIA)106が出力する電気信号を入力する。
【0056】
第1のピーク検出器(PDET1)209は、第1のフィルタとしての低域通過フィルタ(LPE)208を通過した第1の電気信号のピーク値である第1のピーク値を検出する。第1の制御部としての第1の制御回路(CONT1)210は、第1のピーク値を第1の基準値としての第1の外部基準電圧(REF1)211と比較し、第1のピーク値が第1の外部基準電圧(REF1)211と一致するように第1の可変利得増幅器(AGC1)207の利得を制御する。
【0057】
一方、第2の自動利得制御ループ260はフィードバックループを構成し、フィードバックループ内に、第2の可変利得増幅器(AGC2)212、高域通過フィルタ(HPF)213、第2のピーク検出器(PDET2)214、および第2の制御回路(CONT2)215を備える。ここで、第2の可変利得増幅器(AGC2)212は、第1の可変利得増幅器(AGC1)207の出力を入力する。第2のフィルタとしての高域通過フィルタ(HPF)213は、第2の可変利得増幅器(AGC2)212の出力の一部を入力する。第2のピーク検出器(PDET2)214は、高域通過フィルタ(HPF)213を通過した第2の電気信号のピーク値である第2のピーク値を検出する。そして、第2の制御部としての第2の制御回路(CONT2)215は、第2のピーク値を第2の基準値としての第2の外部基準電圧(REF2)216と比較し、第2のピーク値が外部基準電圧(REF2)216と一致するように第2の可変利得増幅器(AGC2)212の利得を制御する。
【0058】
ここで、第1の自動利得制御ループ250に含まれる第1のフィルタとしての低域通過フィルタ(LPE)208は、第2の可変利得増幅器(AGC2)212の出力の一部を入力する構成としている。
【0059】
ここで、初段に配置された第1の自動利得制御ループ250は、図5に例示した光入力信号101のレベルが瞬時変動するような急峻な変化には反応しない。そのため、第1の可変利得増幅器(AGC1)207の出力電気信号は変動を起こす。しかし、このような場合であっても、次段の第2の自動利得制御ループ260が動作するので、光受信器200の出力電気信号217の振幅(レベル)は一定に保たれる。
【0060】
このように、本実施形態による光受信器200によれば、光入力信号の強度(レベル)の種々の変動状況や条件に応じて、各自動利得制御ループをそれぞれ独立に最適動作させることができる。そのため、入力光の変動があった場合であっても、安定した制御を行うことが可能となる。
【0061】
図7に、本実施形態の別の構成による光受信器300のブロック図を示す。光受信器300においても第1の自動利得制御ループ350の中に第2の自動利得制御ループ360が含まれた構成である。しかし、可変利得増幅器は一個だけであり、第1の自動利得制御ループ350と第2の自動利得制御ループ360で第1の可変利得増幅器(AGC1)307を共有する構成とした。ここで、各自動利得制御ループにおける2個の誤差信号を加算器316で合成し、合成した誤差信号によって可変利得増幅器(AGC1)307の利得を制御することとした。
【0062】
次に、本実施形態による別の光受信器300が備える第1の自動利得制御ループ350と第2の自動利得制御ループ360の構成について、さらに詳細に説明する。
【0063】
第1の自動出力制御ループ350はフィードバックループを構成し、フィードバックループ内に、第1の可変利得増幅器(AGC1)307、低域通過フィルタ(LPE)308、第1のピーク検出器(PDET1)309、および第1の制御回路(CONT1)310を備える。ここで、第1の可変利得増幅器(AGC1)307は、トランスインピーダンス増幅器(TIA)106が出力する電気信号を入力する。第1のフィルタとしての低域通過フィルタ(LPE)308は、第1の可変利得増幅器307の出力の一部を入力する。第1のピーク検出器(PDET1)309は、低域通過フィルタ(LPE)308を通過した第1の電気信号のピーク値である第1のピーク値を検出する。そして、第1の制御部としての第1の制御回路(CONT1)310は、第1のピーク値を第1の基準値としての第1の外部基準電圧(REF1)311と比較し、第1のピーク値と第1の外部基準電圧(REF1)311との差分に基づく第1の誤差信号を出力する。
【0064】
第2の自動出力制御ループ360はフィードバックループを構成し、フィードバックループ内に、第1の可変利得増幅器(AGC1)307、高域通過フィルタ(HPF)312、第2のピーク検出器(PDET2)313、および第2の制御回路(CONT2)314を備える。ここで、第2のフィルタとしての高域通過フィルタ(HPF)312は、第1の可変利得増幅器(AGC1)307の出力の一部を入力する。第2のピーク検出器(PDET2)313は、高域通過フィルタ(HPF)312を通過した第2の電気信号のピーク値である第2のピーク値を検出する。第2の制御部としての第2の制御回路(CONT2)314は、第2のピーク値を第2の基準値としての第2の外部基準電圧(REF2)315と比較し、第2のピーク値と第2の外部基準電圧(REF2)315との差分に基づく第2の誤差信号を出力する。
【0065】
ここで、第1の自動出力制御ループ350内に加算器316が配置され、この加算器316は第1の誤差信号と第2の誤差信号の和を第1の可変利得増幅器(AGC1)307に出力する。そして、第1の可変利得増幅器(AGC1)307は、第1の誤差信号と第2の誤差信号の和に基づいて利得を可変する構成とした。
【0066】
このような構成とした光受信器300によっても、光入力信号の強度(レベル)の種々の変動状況や条件に応じて、各自動利得制御ループをそれぞれ独立に最適動作させることができる。そのため、入力光の変動があった場合であっても、安定した制御を行うことが可能となる。また、光受信器300では可変利得増幅器は一個だけであるので、回路面積を縮小し、消費電力を低減することができる。
【0067】
なお、第1の可変利得増幅器(AGC1)307は利得が高く可変利得の範囲も大きい構成としていることから、動作が不安定となり発振などを引き起こすことも考えられる。しかし、第2の自動利得制御ループ360の第2の制御回路(CONT2)314が出力する第2の誤差信号の出力範囲を制限することによって、動作を安定させることができる。
【0068】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。図8は、本発明の第4の実施形態に係る光受信器400の構成を示すブロック図である。光受信器400はコヒーレント光通信方式に用いられる構成とした。
【0069】
光受信器400は、光入力信号101を入力する光カプラ102、局部発振光源(LO−LD)403、受光素子104、105、およびトランスインピーダンス増幅器(TIA)106を有し、これらが受光部を構成している。光混合部としての光カプラ102は、局部発振光源(LO−LD)403が出力する局部発振光と入力信号光としての光入力信号101を混合して干渉信号光を出力する。ここで、局部発振光源(LO−LD)403は出力を制御可能な構成とした。それ以外の受光部の構成は第2の実施形態による光受信器100と同様であり、受光部は信号光としての干渉信号光を光電変換して電気信号を出力する。
【0070】
本実施形態の光受信器400では、出力制御部を構成する、第1の自動出力制御ループとしての第1の自動利得制御ループ150は第2の実施形態によるものと同様である。しかし、第2の自動出力制御ループとしての第2の自動利得制御ループ460の構成が第2の実施形態によるものと異なる。すなわち、第2の自動利得制御ループ460では、自動利得制御の手段として可変利得増幅器(AGC)を用いずに、局部発振光源(LO−LD)403の出力を制御する構成とした。
【0071】
局部発振光源(LO−LD)403の光出力レベルは、例えば、レーザダイオードの駆動電流を制御することにより、または可変光アッテネータを制御すること等によって可変させることができる。これにより、受光素子404、405へ入力する光入力信号101と局部発振光との混合光のレベルを変化させ、ヘテロダイン検波によって生成されるビート電気信号の強度(レベル)を変化させることが可能である。
【0072】
次に、本実施形態による光受信器400が備える第1の自動利得制御ループ150と第2の自動利得制御ループ460の構成について、さらに詳細に説明する。
【0073】
第1の自動利得制御ループ150はフィードバックループを構成し、フィードバックループ内に、第1の可変利得増幅器(AGC1)107、低域通過フィルタ(LPE)108、第1のピーク検出器(PDET1)109、および第1の制御回路(CONT1)110を備える。ここで、第1の可変利得増幅器(AGC1)107は、トランスインピーダンス増幅器(TIA)106が出力する電気信号を入力する。
【0074】
第1のフィルタとしての低域通過フィルタ(LPE)108は、第1の可変利得増幅器(AGC1)107の出力の一部を入力する。第1のピーク検出器(PDET1)109は、低域通過フィルタ(LPE)108を通過した第1の電気信号のピーク値である第1のピーク値を検出する。第1の制御部としての第1の制御回路(CONT1)110は、第1のピーク値を第1の基準値としての第1の外部基準電圧(REF1)111と比較し、第1のピーク値が第1の外部基準電圧(REF1)111と一致するように第1の可変利得増幅器(AGC1)107の利得を制御する。
【0075】
第2の自動利得制御ループ460はフィードバックループを構成し、フィードバックループ内に、高域通過フィルタ(HPF)412、第2のピーク検出器(PDET2)413、および第2の制御回路(CONT2)414を備える。
【0076】
第2のフィルタとしての高域通過フィルタ(HPF)412は、第1の可変利得増幅器(AGC2)107の出力の一部を入力する。第2のピーク検出器(PDET2)413は、高域通過フィルタ(HPF)412を通過した第2の電気信号のピーク値である第2のピーク値を検出する。第2の制御部としての第2の制御回路(CONT2)414は、第2のピーク値を第2の基準値としての第2の外部基準電圧(REF2)415と比較し、第2のピーク値が第2の外部基準電圧(REF2)415と一致するように局部発振光源(LO−LD)403の出力を制御する。
【0077】
このような構成とすることにより、本実施形態の光受信器400では、自動出力制御ループとして第1の自動利得制御ループ150と第2の自動利得制御ループ460という2つの特性が異なる制御ループが構成される。したがって、光入力信号の強度(レベル)の種々の変動状況や条件に応じて、各自動利得制御ループをそれぞれ独立に最適動作させることができる。そのため、入力光の変動があった場合であっても、安定した制御を行うことが可能となる。
【0078】
図8では、第2の自動利得制御ループ460によって局部発振光源(LO−LD)403の出力を制御する構成を示したが、反対に第1の自動利得制御ループ150を用いて局部発振光源(LO−LD)403の出力を制御することとしてもよい。この場合には、第2の自動利得制御ループ460からの誤差信号によって、第1の可変利得増幅器(AGC1)107の利得を制御することとすればよい。
【0079】
次に、本実施形態による光受信方法について説明する。本実施形態による光受信方法においては、まず、局部発振光と入力信号光を混合して干渉信号光を取得する。そして、信号光としての干渉信号光を光電変換して電気信号を取得し、この電気信号を増幅する。このとき、電気信号の振幅値が一定となるように増幅率を制御する。増幅率の制御は、制御速度が異なる複数の制御ステップにより行う。
【0080】
ここで、複数の制御ステップは第1の制御ステップと第2の制御ステップを含む。
【0081】
第1の制御ステップは、電気信号を第1の増幅率で増幅して第1の増幅電気信号を取得し、第1の増幅電気信号のうち第1の通過帯域に含まれる第1の電気信号を取り出す。そして、第1の電気信号のピーク値である第1のピーク値を検出する。この第1のピーク値を第1の基準値と比較し、第1のピーク値が第1の基準値と一致するように第1の増幅率を制御する。
【0082】
また、第2の制御ステップは、第1の増幅電気信号のうち第2の通過帯域に含まれる第2の電気信号を取り出し、第2の電気信号のピーク値である第2のピーク値を検出する。そして、第2のピーク値を第2の基準値と比較し、第2のピーク値が第2の基準値と一致するように局部発振光の出力を制御する。
【0083】
このように、本実施形態の光受信方法においては、増幅率の制御は制御速度が異なる第1の制御ステップと第2の制御ステップにより行うこととしている。そのため、光入力信号の強度(レベル)の種々の変動状況や条件に応じて、各制御ステップをそれぞれ独立に最適化することができる。これにより、入力光の変動があった場合であっても、安定した制御を行うことが可能となる。
【0084】
上述した第2から第4の実施形態においては、第1の自動利得制御ループを初段に配置し、後段に第2の自動利得制御ループを配置した構成としたが、これに限らず、初段と後段を逆の配置とした構成であってもよい。すなわち、第2の自動利得制御ループを初段に配置し、後段に第1の自動利得制御ループを配置した構成とすることができる。また、上記実施形態においては、自動利得制御ループを2個だけ備えた構成について説明したが、これに限らず、3個以上の自動利得制御ループを備えた構成とすることができる。
【0085】
本発明は上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0086】
10、100、200、300、400 光受信器
20 受光部
30 出力制御部
31 第1の自動出力制御ループ
32 第2の自動出力制御ループ
101 光入力信号
102 光カプラ
103、403 局部発振光源(LO−LD)
104、105 受光素子
106 トランスインピーダンス増幅器(TIA)
107、207、307 第1の可変利得増幅器(AGC1)
108、208、308 低域通過フィルタ(LPE)
109、209、309 第1のピーク検出器(PDET1)
110、210、309 第1の制御回路(CONT1)
111、211、311 第1の外部基準電圧(REF1)
112、212 第2の可変利得増幅器(AGC2)
113、213、312、412 高域通過フィルタ(HPF)
114、214、313、413 第2のピーク検出器(PDET2)
115、215、314、414 第2の制御回路(CONT2)
116、216、315、415 第2の外部基準電圧(REF2)
117、217、317、417 出力電気信号
150、250、350 第1の自動利得制御ループ
160、260、360、460 第2の自動利得制御ループ
316 加算器
500 関連する光受信器
501 光入力信号
502 光カプラ
503 局部発振光源(LO−LD)
504、505 受光素子
506 トランスインピーダンス増幅器(TIA)
507 可変利得増幅器(AGC)
508 ピーク検出器(PDET)
509 制御回路(CONT)
510 外部基準電圧(REF)
511 出力電気信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9