(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接続回路は、一方の端子が、前記基準電位に接続され、他方の端子が、前記第1インピーダンス変換回路及び前記出力端子を結ぶ配線に接続されたトランジスタを含み、
前記トランジスタは、前記第1増幅回路が前記信号を増幅するとき、導通状態となることにより、前記第1インピーダンス変換回路及び前記出力端子を結ぶ配線を、前記基準電位に接続することを特徴とする請求項1に記載の電力増幅器。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、比較例に係る電力増幅器の出力パワーに対する増幅効率の変化及び使用頻度分布を示すグラフである。電力増幅器は、出力パワーが大きいほど、高い増幅効率を示すが、使用頻度分布のピークは、最大出力パワーの半分程度、またはそれ以下の範囲にある(符号N参照)。このため、使用頻度が高い出力パワーの範囲内では、高い増幅効率が得られない。そこで、高効率化を実現するため、サイズが相違する複数の電力増幅器を含むマルチモードアンプが用いられる。
【0016】
図2は、マルチモードパワーアンプの一例の概略的な構成図である。マルチモードパワーアンプは、例えば、共通の出力端子Tに接続された3つの電力増幅器PA1〜PA3を含む。ここで、サイズは、増幅器PA1、増幅器PA2、増幅器PA3の順に大きいと仮定する。
【0017】
図3は、マルチモードパワーアンプの出力パワーに対する増幅効率の変化及び使用頻度分布を示すグラフである。3つの増幅器PA1〜PA3は、最大出力パワーが相違するため、互いに異なる出力パワーにおいて最大増幅効率を示す。増幅器PA1は、高い出力パワーにおいて(符号N1参照)、最大増幅効率を示し、増幅器PA2は、中程度の出力パワーにおいて、最大増幅効率を示す(符号N2参照)。ここで、中程度の出力パワーの範囲は、使用頻度分布がピークとなる範囲Nに一致する。また、増幅器PA3は、低い出力パワーの範囲N3において、最大増幅効率を示す(符号N3参照)。
【0018】
3つの増幅器PA1〜PA3は、所望の出力パワーに応じて、使い分けられる。高い出力パワーの範囲N1では、増幅器PA1が使用され、中程度の出力パワーの範囲N2では、増幅器PA2が使用される。また、低い出力パワーの範囲N3では、増幅器PA3が使用される。
【0019】
使用対象として選択された増幅器は、増幅に必要な動作電圧(例えば内蔵されたトランジスタの閾値電圧を超える電圧)が印加され、入力された信号を増幅して出力端子Tから出力し、それ以外の増幅器は、ローインピーダンス状態に維持される。このように、マルチモードパワーアンプは、所望の出力パワーに応じて、複数の増幅器PA1〜PA3から1つを選択して使用することにより、全体的な増幅効率を高めることができる(点線参照)。
【0020】
以下の実施例に係る電力増幅器は、負荷回路との間のインピーダンス整合特性が向上するように、マルチモードパワーアンプに含まれる各増幅回路の出力インピーダンスを変換するトランスを有する。使用されない増幅回路のトランスは、使用中の増幅回路から負荷回路に流れる電流の一部が流れ込むので、寄生抵抗により電力損失を生ずる要因となる。このため、実施例に係る電力増幅器は、トランスへの電流の流れ込みを抑制するように、当該電流の経路を切り替える手段を備える。
【0021】
(第1実施例)
図4は、第1実施例に係る電力増幅器の回路構成を示す回路図である。電力増幅器は、高パワー増幅回路(第1増幅回路)HPAa,HPAbと、低パワー増幅回路(第2増幅回路)LPAa,LPAbと、高パワー側トランス(第1インピーダンス変換回路)T
Hと、低パワー側トランス(第2インピーダンス変換回路)T
Lとを有する。また、電力増幅器は、整合キャパシタCxと、スイッチ回路(接続回路)SW
Cと、出力端子Toutとを含む。
【0022】
高パワー増幅回路HPAa,HPAb及び低パワー増幅回路LPAa,LPAbは、共通の出力端子Toutに接続されている。高パワー増幅回路HPAa,HPAb及び低パワー増幅回路LPAa,LPAbは、一方がRF信号を増幅するとき、他方がRF信号を増幅しないように制御され、何れか一方が、RF信号を増幅して共通の出力端子Toutから出力する。つまり、高パワー増幅回路HPAa,HPAb及び低パワー増幅回路LPAa,LPAbのうち、使用対象として選択された一方のみが、外部から、増幅に必要な動作電圧を与えられて動作する。出力端子Toutから出力されたRF信号は、例えば50(Ω)の負荷回路R
LDに入力される。なお、高パワー増幅回路HPAa,HPAb及び低パワー増幅回路LPAa,LPAbの出力は、それぞれ、正相の増幅器及び逆相の増幅器の各出力の差分として得られる。
【0023】
高パワー増幅回路HPAa,HPAbは、内蔵するトランジスタ(増幅素子)のサイズが低パワー増幅回路LPAa,LPAbより大きく、低パワー増幅回路LPAa,LPAbより高い出力パワーを有するRF信号を出力する。このため、
図3を参照して述べたように、出力パワーが大きい場合、高パワー増幅回路HPAa,HPAbが使用され、出力パワーが小さい場合、低パワー増幅回路LPAa,LPAbが使用される。なお、本実施例に係る電力増幅器の動作状態として、高パワー増幅回路HPAa,HPAbが使用されるモードを「高パワーモード」と表記し、低パワー増幅回路LPAa,LPAbが使用されるモードを「低パワーモード」と表記する。
【0024】
高パワー側トランスT
Hは、一次側及び二次側が、相互インダクタンスM
Hにより磁気的に結合している。高パワー側トランスT
Hの一次側は、高パワー増幅回路HPAa,HPAb及び電源電圧Vddの給電端子に接続されている。一方、高パワー側トランスT
Hの二次側は、一端が出力端子Toutに接続され、他端が接地されている。
【0025】
高パワー側トランスT
Hは、高パワー増幅回路HPAa,HPAb及び出力端子Toutの間に接続され、高パワー増幅回路HPAa,HPAbの出力インピーダンスを変換する。変換後の出力インピーダンスは、負荷回路R
LDに従って、例えば50(Ω)としてもよい。
【0026】
低パワー側トランスT
Lは、一次側及び二次側が、相互インダクタンスM
Lにより磁気的に結合している。低パワー側トランスT
Lの一次側は、低パワー増幅回路LPAa,LPAb及び電源電圧Vddの給電端子に接続されている。一方、低パワー側トランスT
Lの二次側は、一端が、高パワー側トランスT
H及び出力端子Toutを結ぶ配線Wに、整合キャパシタCxを介して接続され、他端が接地されている。つまり、低パワー側トランスT
Lは、低パワー増幅回路LPAa,LPAbと、配線Wとの間に接続されている。
【0027】
低パワー側トランスT
Lは、低パワー増幅回路LPAa,LPAbの出力インピーダンスを変換する。変換後の出力インピーダンスは、負荷回路R
LDに従って、例えば50(Ω)としてもよい。なお、トランスT
H及びトランスT
Lの各二次側は、一端が接地されているため、高パワー増幅回路HPAa,HPAb及び低パワー増幅回路LPAa,LPAbの出力は、それぞれ、単相出力となるが、これに限定されず、差動出力としてもよい。
【0028】
整合キャパシタCxは、一端が、高パワー側トランスT
H及び出力端子Toutを結ぶ配線Wに接続され、他端が、スイッチ回路SW
C及び低パワー側トランスT
Lに接続されている。整合キャパシタCxは、インピーダンス整合に用いられる。なお、整合キャパシタCxの容量は、例えば、配線Wの配線容量や負荷回路R
LDなどパラメータに応じて決定される。
【0029】
スイッチ回路SW
Cは、整合キャパシタCxを介して、高パワー側トランスT
H及び出力端子Toutを結ぶ配線Wに接続されている。スイッチ回路SW
Cは、高パワーモード、つまり、高パワー増幅回路HPAa,HPAbがRF信号を増幅するとき、高パワー側トランスT
H及び出力端子Toutを結ぶ配線Wを、基準電位であるグランドに接続する。これにより、スイッチ回路SW
Cは、配線Wとグランドの間に、低パワー側トランスT
Lを迂回する電流経路を形成する。
【0030】
このため、高パワーモードにおいて、高パワー増幅回路HPAa,HPAbから高パワー側トランスT
Hを介して出力端子Toutに流れるRF信号の電流の一部は、低パワー側トランスT
Lではなく、スイッチ回路SW
Cに導かれる。すなわち、スイッチ回路SW
Cは、配線Wからグランドに流れ込む電流の経路を制御する。
【0031】
より具体的には、スイッチ回路SW
Cは、トランジスタTR
Cと、インダクタンス素子L
Cと、制御電圧V
Cの入力端子と、調整抵抗R
Cとを含む。インダクタンス素子L
Cは、トランジスタTR
Cと並列に接続されている。つまり、インダクタンス素子L
Cは、一端が、トランジスタTR
Cのソース端子に接続され、他端が、トランジスタTR
Cのドレイン端子に接続されている。
【0032】
トランジスタTR
Cは、ソース端子がグランドに接続され、ドレイン端子が、高パワー側トランスT
H及び出力端子Toutを結ぶ配線Wに接続されている。また、トランジスタTR
Cのゲート端子は、調整抵抗R
Cを介して制御電圧V
Cの入力端子に接続されている。なお、本実施例において、トランジスタTR
Cとして、FET(Field Effect Transistor)を仮定するが、これに限定されず、バイポーラトランジスタであってもよい。
【0033】
制御電圧V
Cは、外部からトランジスタTR
Cのゲート端子に印加される。このとき、制御電圧V
Cは、調整抵抗R
Cにより適切な値に調整される。
【0034】
トランジスタTR
Cは、制御電圧V
Cに応じて導通状態または非導通状態に切り替えられる。より具体的には、トランジスタTR
Cは、高パワー増幅回路HPAa,HPAbがRF信号を増幅するとき、導通状態となり、低パワー増幅回路LPAa,LPAbがRF信号を増幅するとき、非導通状態となる。つまり、制御電圧V
Cは、電力増幅器の動作状態(高パワーモードまたは低パワーモード)に応じて決定される。
【0035】
したがって、高パワーモードにおいて、トランジスタTR
Cが導通状態となることにより、高パワー側トランスT
H及び出力端子Toutを結ぶ配線Wは、整合キャパシタCxと、トランジスタTR
Cのオン抵抗とを介してグランドに接続される。つまり、交流信号の観点で、配線Wはグランドに接続される。
【0036】
図5は、第1実施例に係る電力増幅器の高パワーモードにおける等価回路を示す回路図である。上記の配線Wは、整合キャパシタCxと、トランジスタTR
Cのオン抵抗Ronとを介して接地される。オン抵抗Ronは、トランジスタTR
Cのサイズを大きくすることにより、約0(Ω)となる(Ron<<1)。このため、トランジスタTR
Cのオン抵抗Ronは、低パワー側トランスT
Lの寄生抵抗R
Tより十分に小さい値となり、配線Wは、実質的に、整合キャパシタCxのみを介して接地されている。
【0037】
したがって、高パワーモードにおいて、出力端子Toutに向かって配線Wを流れるRF信号の電流の一部は、整合キャパシタCxを介してトランジスタTR
Cに流れ、低パワー側トランスT
Lには、ほとんど流れない。よって、低パワー側トランスT
Lの寄生抵抗R
Tは、等価回路において無視され(点線参照)、寄生抵抗R
Tより生ずる損失が抑制される。なお、オン抵抗Ronは、インダクタンス素子L
Cの寄生抵抗より小さいので、インダクタンス素子L
Cにも同様に電流は流れない。
【0038】
これに対して、上記の特許文献1に開示された構成では、高出力パワーの増幅器が使用される場合、低出力パワー側のトランス(符号340参照)の寄生抵抗(符号L’
L参照)が無視できないため、当該寄生抵抗による損失が発生する。
【0039】
このように、スイッチ回路SW
Cは、高パワー増幅回路HPAa,HPAbがRF信号を増幅するとき、高パワー側トランスT
H及び出力端子Toutを結ぶ配線Wを、抵抗値がトランスT
Lの寄生抵抗より低い抵抗Ronを介して接地する。本実施例では、抵抗を可能な限り小さくして損失を極小化するために、スイッチ回路SW
CにトランジスタTR
Cを設けたが、これに限定されず、トランジスタTR
Cに代え、スイッチとして機能する他の素子を採用してもよい。
【0040】
また、トランジスタTR
Cのサイズは、上述したように、オン抵抗Ronを小さくするために、大きい方が好ましい。しかし、トランジスタTR
Cは、サイズが大きいほど、ドレイン−ソース間の寄生容量Cdsが大きくなる。この場合、低パワーモードにおいて、トランジスタTR
Cが非導通状態となることにより、RF信号の電力が、寄生容量Cdsを介してグランドに漏れる可能性がある。
【0041】
そこで、本実施例では、トランジスタTR
Cと並列に接続されたインダクタンス素子L
Cのインダクタンスは、インダクタンス素子L
C及び寄生容量Cdsが並列共振回路を構成するように、適切な値に設定されている。つまり、RF信号のキャリア周波数をFc(Hz)としたとき、該インダクタンス(L
C)及び寄生容量Cdsに関して、以下の式(1)が成立する。
【0043】
これにより、低パワーモードにおいて、スイッチ回路SW
Cは、ハイインピーダンス状態となる。したがって、スイッチ回路SW
Cは、オンオフ比(インピーダンスの比)が高められる。
【0044】
図6は、第1実施例に係る電力増幅器の低パワーモードにおける等価回路を示す回路図である。ここで、インピーダンスZ
Hは、高パワー増幅回路HPAa,HPAb及び高パワー側トランスT
Hの等価インピーダンスを示す。
【0045】
低パワー増幅回路LPAa,LPAbからのRF信号は、低パワー側トランスT
L及び整合キャパシタCxを介して、出力端子Toutから出力される。このとき、スイッチ回路SW
Cは、上述したようにハイインピーダンス状態であるため、RF信号の電流が流れ込まず、電力損失が防止される。
【0046】
このように、トランジスタTR
Cは、低パワー増幅回路LPAa,LPAbがRF信号を増幅するとき、非導通状態となり、ドレイン端子及びソース端子の間の寄生容量Cdsが、インダクタンス素子L
Cとともに共振回路を構成する。これにより、低パワーモードにおける増幅効率を向上することができる。
【0047】
図7は、トランジスタTR
Cのフィンガ数に対する損失の変化を示すグラフである。また、
図8は、トランジスタTR
Cのフィンガ数に対するドレイン−ソース間の寄生容量Cdsの変化を示すグラフである。
図7及び
図8のグラフは、トランジスタTR
Cのプロセスとして、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を仮定して行われたシミュレーション結果である。なお、フィンガ数とは、トランジスタTR
Cに含まれる素子数であり、ここでは、トランジスタTR
Cのサイズに相当するパラメータとして示されている。
【0048】
オン抵抗Ron及び寄生容量Cdsは、互いにトレードオフの関係にある。トランジスタTR
Cのフィンガ数が増加するほど、オン抵抗Ronは小さくなるため、損失は0(dB)に近づくが、寄生容量Cdsは線形的に増加する。仮に、フィンガ数を50とした場合、損失は0.05(dB)より小さくなり(符号P1参照)、寄生容量Cdsは約3.5(pF)となる(符号P2参照)。ここで、RF信号のキャリア周波数Fc=2(GHz)とすると、上記の式(1)に基づいて、共振回路を構成するためのインダクタンス素子L
Cのインダクタンスは、約1.8(nH)となり、現実的な値であることがわかる。このように、本実施例に係る電力増幅器は、例えばCMOSプロセスのトランジスタTR
Cを仮定して、容易に実現される。
【0049】
(第2実施例)
第1実施例において、トランジスタTR
Cは、高パワーモードにおいて、配線Wをグランドに接続する手段として用いられるが、これに加え、RF信号を増幅する手段として用いられてもよい。本実施例において、RF信号は、高パワーモードでは、高パワー増幅回路HPAa,HPAbにより増幅され、低パワーモードでは、低パワー増幅回路LPAa,LPAb及びトランジスタTR
C(TR
b)により増幅される。
【0050】
図9は、第2実施例に係る電力増幅器の回路構成を示す回路図である。なお、
図9において、
図4と共通する構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0051】
電力増幅器は、高パワー増幅回路HPAa,HPAbと、低パワー増幅回路LPAa,LPAbと、高パワー側トランスT
Hと、低パワー側トランスT
Lとを有する。また、電力増幅器は、給電用トランジスタTR
Pと、給電用インダクタンス素子L
Pと、整合キャパシタCxと、スイッチ回路(接続回路)SW
bと、給電制御電圧V
Pの入力端子と、出力端子Toutとを含む。
【0052】
本実施例において、スイッチ回路SW
bは、第1実施例とは異なり、低パワーモードにおいてRF信号の増幅手段として機能する。低パワー側トランスT
Lの二次側は、スイッチ回路SW
b及び整合キャパシタCxを介して、配線Wに接続されている。スイッチ回路SW
bは、トランジスタTR
bと、キャパシタC
bと、調整抵抗R
bと、制御電圧V
bの入力端子とを含む。
【0053】
トランジスタTR
bは、ドレイン端子が、整合キャパシタCxを介して配線Wに接続され、ソース端子が、接地されている。トランジスタTR
bのゲート端子は、キャパシタC
b及び低パワー側トランスT
Lの二次側を介して、低パワー増幅回路LPAa,LPAbに接続され、RF信号が入力される。このとき、キャパシタC
bは、RF信号の直流成分を除去するフィルタとして機能する。
【0054】
また、トランジスタTR
bのゲート端子は、調整抵抗R
bを介して制御電圧V
bの入力端子と接続され、外部から制御電圧V
bが印加される。このとき、制御電圧V
bは、調整抵抗R
bにより適切な値に調整される。
【0055】
低パワーモードにおいて、制御電圧V
bは、トランジスタTR
bを例えばB級増幅器として動作させるためのバイアス電圧、つまり、トランジスタTR
bの閾値電圧または該閾値電圧に近い値となる。本実施例では、トランジスタTR
bによる増幅動作の級として、増幅効率の観点からB級が選択されるが、これに限定されず、A級またはC級であってもよい。
【0056】
また、低パワーモードにおいて、トランジスタTR
bは、増幅器として動作するために、給電用トランジスタTR
P及び給電用インダクタンス素子L
Pを介し、ドレイン端子に電源電圧Vddが印加される。給電用トランジスタTR
Pは、外部からゲート端子に印加される給電制御電圧V
Pに応じて、導通状態または非導通状態に制御される。なお、本実施例において、給電用トランジスタTR
Pは、給電制御電圧V
Pを電源電圧Vdd以下にするために、p型チャネルのFETとするが、これに限定されず、n型チャネルのFETであってもよい。
【0057】
給電用トランジスタTR
Pは、ソース端子が、電源、つまり電源電圧Vddの給電端子に接続され、ドレイン端子が給電用インダクタンス素子L
Pの一端に接続されている。また、給電用インダクタンス素子L
Pの他端は、トランジスタTR
bのドレイン端子に接続されている。給電用インダクタンス素子L
Pは、トランジスタTR
bへの給電及びインピーダンス整合の手段として機能する。
【0058】
低パワーモードにおいて、給電用トランジスタTR
Pは、電源電圧VddをトランジスタTR
bに供給するために導通状態となる。このとき、トランジスタTR
Pは、増幅器として動作するように、制御電圧V
bとして、ゲート端子に所定のバイアス電圧が印加される。
【0059】
図10は、第2実施例に係る電力増幅器の低パワーモードにおける等価回路を示す回路図である。低パワー増幅回路LPAa,LPAbにより増幅されたRF信号は、低パワー側トランスT
L及びキャパシタC
bを介してトランジスタTR
bのゲート端子に入力される。トランジスタTR
bは、ゲート端子にバイアス電圧が印加されることにより、入力されたRF信号を、さらに増幅する。
【0060】
このように、本実施例では、低パワーモードにおいて、RF信号を、低パワー増幅回路LPAa,LPAbだけでなく、トランジスタTR
bによっても増幅する。したがって、低パワー増幅回路LPAa,LPAbの増幅素子のサイズを第1実施例の場合より小さくすることが可能となる。
【0061】
一方、高パワーモードにおいて、給電用トランジスタTR
Pは、トランジスタTR
bへの給電が停止されるように非導通状態となる。このとき、トランジスタTR
bのゲート端子には、制御電圧V
bとして、トランジスタTR
bを導通状態とするためのハイレベル電圧(例えば電源電圧Vdd)が印加される。
【0062】
図11は、第2実施例に係る電力増幅器の高パワーモードにおける等価回路を示す回路図である。トランジスタTR
bは、第1実施例のトランジスタTR
Cと同様に、導通状態となることにより、高パワー側トランスT
H及び出力端子Toutを結ぶ配線Wを、自己のオン抵抗Ronを介して接地する。つまり、交流信号の観点で、配線Wはグランドに接続される。オン抵抗Ronは、トランジスタTR
bを適切なサイズとすることにより、約0(Ω)となる。したがって、高パワーモードの等価回路は、第1実施例の場合(
図5参照)と同様の構成であり、また、上述した作用効果も同様に得られる。
【0063】
(第3実施例)
第1実施例及び第2実施例に係る電力増幅器は、高パワーモード及び低パワーモードの2つの動作状態を有するが、高パワーモード及び低パワーモードの中間程度の出力レベルを有する中パワーモードを、さらに有してもよい。これにより、
図3に示された出力パワーの範囲N1〜N3を、より多く設けることができるので、電力増幅器の全体的な増幅効率が向上する。
【0064】
図12は、第3実施例に係る電力増幅器の回路構成を示す回路図である。なお、
図12において、
図9と共通する構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
電力増幅器は、高パワー増幅回路HPAa,HPAbと、低パワー増幅回路LPAa,LPAbと、高パワー側トランスT
Hと、低パワー側トランスT
Lとを有する。また、電力増幅器は、給電用トランジスタTR
Pと、給電用インダクタンス素子L
Pと、整合キャパシタCxと、スイッチ回路SW
bと、補助スイッチ回路(補助接続回路)SW
kと、給電制御電圧V
Pの入力端子と、出力端子Toutとを含む。スイッチ回路SW
bは、トランジスタTR
bと、キャパシタC
bと、調整抵抗R
bと、制御電圧V
bの入力端子とを含む。
【0066】
本実施例において、高パワーモードは、第1実施例及び第2実施例の高パワーモードと同様に、高パワー増幅回路HPAa,HPAbのみがRF信号を増幅する動作状態である。高パワーモードでは、トランジスタTR
bは導通状態に制御され、給電用トランジスタTR
Pは非導通状態に制御される。
【0067】
中パワーモードは、第2実施例の低パワーモードと同様に、低パワー増幅回路LPAa,LPAbと、スイッチ回路SW
bのトランジスタTR
bとがRF信号を増幅する動作状態である。中パワーモードでは、トランジスタTR
bは、RF信号を増幅するために、ゲート端子にバイアス電圧が与えられ、給電用トランジスタTR
Pは、導通状態に制御される。
【0068】
低パワーモードは、第1実施例の低パワーモードと同様に、低パワー増幅回路LPAa,LPAbのみがRF信号を増幅する動作状態である。低パワーモードでは、トランジスタTR
b及び給電用トランジスタTR
Pは、非導通状態に制御される。
【0069】
本実施例に係る電力増幅器は、
図9に示された回路構成に加えて、補助スイッチ回路SW
kを有することにより、低パワーモードを実現する。低パワーモードでは、低パワー増幅回路LPAa,LPAbのみがRF信号を増幅するため、トランジスタTR
bは、制御電圧V
bに従って非導通状態に制御され、給電用トランジスタTR
Pも、給電制御電圧V
Pに従って非導通状態に制御される。
【0070】
補助スイッチ回路SW
kは、低パワー増幅回路LPAa,LPAbがRF信号を増幅する場合にトランジスタTR
bが非導通状態(上記の低パワーモード)であるとき、低パワー側トランスT
Lの二次側を、トランジスタTR
bを迂回して、上記の配線Wに接続する。つまり、補助スイッチ回路SW
kは、低パワーモードにおいて、低パワー増幅回路LPAa,LPAbを、トランジスタTR
bを介さない経路で出力端子Toutに接続する。このため、低パワーモードにおいて、低パワー増幅回路LPAa,LPAbにより増幅されたRF信号は、補助スイッチ回路SW
kを介して負荷回路R
LDに出力される。
【0071】
より具体的には、補助スイッチ回路SW
kは、切替用トランジスタTR
kと、第1キャパシタC
k1と、第2キャパシタC
k2と、調整抵抗R
kと、切替制御電圧V
kの入力端子とを含む。切替用トランジスタTR
kは、ソース端子及びドレイン端子のうち、一方が、第1キャパシタC
k1を介して、低パワー側トランスT
Lに接続され、他方が、第2キャパシタC
k2を介して、整合キャパシタCxに接続されている。
【0072】
第1キャパシタC
k1及び第2キャパシタC
k2は、RF信号の直流成分を除去するフィルタとして機能する。なお、切替用トランジスタTR
kは、損失を抑制するため、例えば低パワー増幅回路LPAa,LPAbと同程度のサイズを有すると好ましい。
【0073】
切替用トランジスタTR
kのゲート端子は、調整抵抗R
kを介して、切替制御電圧V
kの入力端子に接続されている。切替制御電圧V
kは、外部から切替用トランジスタTR
kのゲート端子に印加される。このとき、切替制御電圧V
kは、調整抵抗R
kにより適切な値に調整される。
【0074】
切替用トランジスタTR
kは、切替制御電圧V
kに応じて導通状態または非導通状態に切り替えられる。切替用トランジスタTR
kは、低パワーモードの場合、導通状態となり、他のパワーモードの場合、非導通状態となる。つまり、切替制御電圧V
kは、電力増幅器の動作状態(低パワーモード、または、その他のパワーモード)に応じて決定される。
【0075】
図13は、第3実施例に係る電力増幅器の低パワーモードにおける等価回路を示す回路図である。低パワー増幅回路LPAa,LPAbは、切替用トランジスタTR
kが導通状態であるので、低パワー側トランスT
L、第1キャパシタC
k1、第2キャパシタC
k2、及び整合キャパシタCxを介して、負荷回路R
LDに接続されている。なお、整合キャパシタCx及び負荷回路R
LDの間には、高パワー増幅回路HPAa,HPAb及び高パワー側トランスT
Hの等価インピーダンスZ
Hが接続される。
【0076】
低パワーモードにおいて、トランジスタTR
b及び給電用トランジスタTR
Pは、非導通状態である。このため、トランジスタTR
bは、ドレイン端子及びソース端子の間の寄生容量Cdsが、給電用インダクタンス素子L
Pとともに共振回路RNを構成する。
【0077】
詳細を述べると、低パワーモードにおいて、給電用インダクタンス素子L
Pは、非導通状態の給電用トランジスタTR
Pを介して、電源電圧Vddを供給する電源に接続される。電源は、ノイズ除去用の大容量のデカップリングコンデンサが設けられているため、交流信号の観点では、給電用インダクタンス素子L
Pの一端は、低インピーダンスを介して接地されているとみなされる。
【0078】
一方、給電用インダクタンス素子L
Pの一端は、トランジスタTR
bの寄生容量Cdsを介して接地されている。このため、寄生容量Cds及び給電用インダクタンス素子L
Pは、共振回路RNを構成し、ハイインピーダンス状態となる。したがって、第1実施例の低パワーモードの場合(
図6参照)と同様に、RF信号の電流は、トランジスタTR
bの寄生容量Cdsに流れ込まず、電力損失が防止される。
【0079】
図14は、第3実施例に係る電力増幅器の高パワーモードにおける等価回路を示す回路図である。高パワーモードにおいて、トランジスタTR
bは、導通状態であり、給電用トランジスタTR
P及び切替用トランジスタTR
kは、非導通状態である。
【0080】
トランジスタTR
bは、第1実施例のトランジスタTR
Cと同様に、導通状態となることにより、高パワー側トランスT
H及び出力端子Toutを結ぶ配線Wを、自己のオン抵抗Ronを介して接地する。オン抵抗Ronは、トランジスタTR
bを適切なサイズとすることにより、約0(Ω)となる。したがって、等価回路は、第1実施例の場合(
図5参照)と同様の構成であり、また、上述した作用効果も同様に得られる。
【0081】
図15は、第3実施例に係る電力増幅器の中パワーモードにおける等価回路を示す回路図である。中パワーモードにおいて、切替用トランジスタTR
kは、非導通状態であり、給電用トランジスタTR
Pは、導通状態である。また、トランジスタTR
bは、ゲート端子にバイアス電圧が印加される。
【0082】
低パワー増幅回路LPAa,LPAbにより増幅されたRF信号は、低パワー側トランスT
L及びキャパシタC
bを介してトランジスタTR
bのゲート端子に入力される。トランジスタTR
bは、ゲート端子にバイアス電圧が印加されることにより、入力されたRF信号を、さらに増幅する。したがって、等価回路は、第2実施例の場合(
図10参照)と同様の構成であり、また、上述した作用効果も同様に得られる。
【0083】
上述した電力増幅器は、例えば通信装置に設けられる。
図16には、通信装置における電力増幅器の実装部分の例が示されている。
【0084】
電力増幅器は、例えば、スマートフォンなどの携帯型通信装置のフロントエンド部分Fに設けられる。フロントエンド部分Fは、アンテナ側の送受信回路部分を指す。
【0085】
図17は、実施例に係る通信装置の機構構成を示す構成図である。
図17は、上記のフロントエンド部分Fの構成例を示す。通信装置は、増幅部1と、RF信号処理回路(信号処理部)2と、ベースバンド信号処理回路3と、アンテナ4と、デュプレクサ5とを有する。
【0086】
ベースバンド信号処理回路3は、データ信号の帯域処理を行う。ベースバンド信号処理回路3は、データ信号を変調して、RF信号処理回路2に出力する。変調方式としては、例えば直交周波数分割多重方式(OFDM:Orthogonal Frequency Divisional Multiplexing)が挙げられるが、これに限定されない。
【0087】
RF信号処理回路2は、発振器及び乗算器(ミキサ)を備え、変調されたデータ信号をアップコンバートしてRF信号に変換する。つまり、RF信号処理回路2は、データ信号の周波数を、ベースバンド周波数からキャリア周波数(無線周波数)に変換する。
【0088】
また、RF信号処理回路2は、電力増幅器の動作モードを指示するため、増幅部1にモード指示信号(指示信号)Smdを出力する。モード指示信号Smdは、高パワー増幅回路HPAa,HPAb及び低パワー増幅回路LPAa,LPAbの何れを動作させるかを指示する信号である。RF信号処理回路2は、例えば、基地局との通信結果に基づいて、適切な動作モードを選択する。
【0089】
増幅部1は、上述した電力増幅器10と、制御回路11とを有し、RF信号を増幅してデュプレクサ5に出力する。増幅されたRF信号は、アンテナ4により送信される。
【0090】
制御回路11は、電力増幅器10に動作電圧Vpw、制御電圧V
b、給電制御電圧V
P、及び切替制御電圧V
kを与える。なお、本実施例では、電力増幅器10として、上述した第3実施例に係る電力増幅器を仮定しているが、他の実施例に係る電力増幅器であってもよい。
【0091】
制御回路11は、RF信号処理回路2からのモード指示信号Smdに従って、電力増幅器10に与える動作電圧Vpwを制御する。動作電圧Vpwは、高パワー増幅回路HPAa,HPAb及び低パワー増幅回路LPAa,LPAbに個別に与えられる。これにより、電力増幅器10は、最適な動作モードに制御される。
【0092】
高パワーモードの場合、高パワー増幅回路HPAa,HPAbには、増幅動作に必要な動作電圧Vpwが与えられ、低パワー増幅回路LPAa,LPAbには、増幅動作を停止させる動作電圧Vpwが与えられる。また、中パワーモード及び低パワーモードの場合、逆に、低パワー増幅回路LPAa,LPAbには、増幅動作に必要な動作電圧Vpwが与えられ、高パワー増幅回路HPAa,HPAbには、増幅動作を停止させる動作電圧Vpwが与えられる。
【0093】
また、制御回路11は、RF信号処理回路2からのモード指示信号Smdに従って、電力増幅器10に与える制御電圧V
b、給電制御電圧V
P、及び切替制御電圧V
kを制御する。高パワーモードの場合、制御回路11は、トランジスタTR
bが導通状態となるように制御電圧V
bを与え、給電用トランジスタTR
Pが非導通状態となるように給電制御電圧V
Pを与える。また、制御回路11は、切替用トランジスタTR
kが非導通状態となるように切替制御電圧V
kを与える。
【0094】
中パワーモードの場合、制御回路11は、トランジスタTR
bがRF信号を増幅するように制御電圧V
b(上記のバイアス電圧)を与え、給電用トランジスタTR
Pが導通状態となるように給電制御電圧V
Pを与える。また、制御回路11は、切替用トランジスタTR
kが非導通状態となるように切替制御電圧V
kを与える。
【0095】
低パワーモードの場合、制御回路11は、トランジスタTR
bが非導通状態となるように制御電圧V
bを与え、給電用トランジスタTR
Pが非導通状態となるように給電制御電圧V
Pを与える。また、制御回路11は、切替用トランジスタTR
kが導通状態となるように切替制御電圧V
kを与える。
【0096】
なお、電力増幅器10として、第1実施例に係る電力増幅器を用いる場合、制御電圧V
Cは、高パワーモード及び低パワーモードにおいて、上記の高パワーモード及び低パワーモードにおける制御電圧V
bと同様に制御される。また、第2実施例に係る電力増幅器を用いる場合、制御電圧V
b及び給電制御電圧V
Pは、高パワーモード及び低パワーモードにおいて、上記の高パワーモード及び中パワーモードとそれぞれ同様に制御される。
【0097】
デュプレクサ5は、アンテナ4を介して送受信されるRF信号をフィルタリングする。すなわち、デュプレクサ5は、増幅部1から入力されるRF信号を、送信周波数を通過帯域とするフィルタによりフィルタリングしてアンテナ4に出力する。また、デュプレクサ5は、アンテナ4から入力されたRF信号を、受信周波数を通過帯域とするフィルタによりフィルタリングしてRF信号処理回路2に出力する。
【0098】
実施例に係る通信装置は、上述した電力増幅器を有するので、既に述べた作用効果を同様に奏する。
【0099】
これまで述べたように、実施例に係る電力増幅器は、高パワー増幅回路HPAa,HPAbと、低パワー増幅回路LPAa,LPAbと、高パワー側トランスT
Hと、低パワー側トランスT
Lと、スイッチ回路SW
C、SW
bとを有する。高パワー増幅回路HPAa,HPAb及び低パワー増幅回路LPAa,LPAbは、一方がRF信号を増幅するとき、他方がRF信号を増幅しないように制御され、何れか一方が、RF信号を増幅して共通の出力端子Toutから出力する。
【0100】
高パワー側トランスT
Hは、高パワー増幅回路HPAa,HPAbと、出力端子Toutの間に接続され、高パワー増幅回路HPAa,HPAbの出力インピーダンスを変換する。低パワー側トランスT
Lは、低パワー増幅回路LPAa,LPAbと、高パワー側トランスT
H及び出力端子Toutを結ぶ配線Wとの間に接続され、低パワー増幅回路LPAa,LPAbの出力インピーダンスを変換する。
【0101】
スイッチ回路SW
C、SW
bは、高パワー増幅回路HPAa,HPAbがRF信号を増幅するとき、高パワー増幅回路HPAa,HPAb及び出力端子Toutを結ぶ配線Wを、基準電位であるグランドに接続する。これにより、スイッチ回路SW
C、SW
bは、高パワー側トランスT
H及び出力端子Toutを結ぶ配線とグランドの間に、低パワー側トランスT
Lを迂回する電流経路を形成する。
【0102】
したがって、高パワー増幅回路HPAa,HPAbから高パワー側トランスT
Hを介して出力端子Toutに流れるRF信号の電流の一部は、低パワー側トランスT
Lではなく、スイッチ回路SW
C、SW
bに導かれる。このため、低パワー側トランスT
Lにより生ずる電力損失が抑制されて、電力増幅器の増幅効率が改善される。
【0103】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
【0104】
なお、以上の説明に関して更に以下の付記を開示する。
(付記1) 一方が信号を増幅するとき、他方が信号を増幅しないように制御され、何れか一方が、信号を増幅して共通の出力端子から出力する第1増幅回路及び第2増幅回路と、
前記第1増幅回路と、前記出力端子の間に接続され、前記第1増幅回路の出力インピーダンスを変換する第1インピーダンス変換回路と、
前記第2増幅回路と、前記第1インピーダンス変換回路及び前記出力端子を結ぶ配線との間に接続され、前記第2増幅回路の出力インピーダンスを変換する第2インピーダンス変換回路と、
前記第1増幅回路が前記信号を増幅するとき、前記第1増幅回路及び前記出力端子を結ぶ配線を基準電位に接続することにより、前記第1インピーダンス変換回路及び前記出力端子を結ぶ配線と前記基準電位の間に、前記第2インピーダンス変換回路を迂回する経路を形成する接続回路とを有することを特徴とする電力増幅器。
(付記2) 前記接続回路は、一方の端子が、前記基準電位に接続され、他方の端子が、前記第1インピーダンス変換回路及び前記出力端子を結ぶ配線に接続されたトランジスタを含み、
前記トランジスタは、前記第1増幅回路が前記信号を増幅するとき、導通状態となることにより、前記第1インピーダンス変換回路及び前記出力端子を結ぶ配線を、前記基準電位に接続することを特徴とする付記1に記載の電力増幅器。
(付記3) 前記接続回路は、前記トランジスタと並列に接続されたインダクタンス素子を、さらに含み、
前記トランジスタは、前記第2増幅回路が前記信号を増幅するとき、非導通状態となり、前記一方の端子及び前記他方の端子の間の寄生容量が、前記インダクタンス素子とともに共振回路を構成することを特徴とする付記2に記載の電力増幅器。
(付記4) 前記第2増幅回路は、前記インピーダンス変換回路を介して、前記トランジスタの制御端子と接続され、
前記トランジスタは、前記第2増幅回路が前記信号を増幅するとき、前記制御端子にバイアス電圧が印加されることにより、前記第2増幅回路から前記制御端子を介して入力された前記信号を、さらに増幅することを特徴とする付記2に記載の電力増幅器。
(付記5) 前記第2増幅回路が前記信号を増幅する場合に前記トランジスタが非導通状態であるとき、前記インピーダンス変換回路を、前記トランジスタを迂回して、前記第1インピーダンス変換回路及び前記出力端子を結ぶ配線に接続する補助接続回路を、さらに有することを特徴とする付記4に記載の電力増幅器。
(付記6) 一端が前記トランジスタの前記他方の端子に接続された給電用インダクタンス素子と、
一端が電源に接続され、他端が前記給電用インダクタンス素子の他端に接続されて、前記トランジスタの前記制御端子に前記バイアス電圧が印加されたときに導通状態となる給電用トランジスタとを、さらに有し、
前記トランジスタは、非導通状態である場合に前記給電用トランジスタが非導通状態であるとき、前記一方の端子及び前記他方の端子の間の寄生容量が、前記給電用インダクタンス素子とともに共振回路を構成することを特徴とする付記5に記載の電力増幅器。
(付記7) 前記第1増幅回路は、増幅素子のサイズが前記第2増幅回路より大きく、前記第2増幅回路より高い出力パワーを有する信号を出力することを特徴とする付記1乃至6の何れかに記載の電力増幅器。
(付記8) 前記接続回路と、前記第1インピーダンス変換回路及び前記出力端子を結ぶ配線との間に接続されたキャパシタを、さらに含むことを特徴とする付記1乃至6の何れかに記載の電力増幅器。
(付記9) 前記第2インピーダンス変換回路は、トランスを含み、
前記トランスの一次側は、前記第2増幅回路と接続され、
前記トランスの二次側は、一端が、前記第1インピーダンス変換回路及び前記出力端子を結ぶ配線に接続され、他端が、前記基準電位に接続されていることを特徴とする付記1乃至6の何れかに記載の電力増幅器。
(付記10) 付記1乃至9の何れかに記載の電力増幅器と、
信号を周波数変換して、前記電力増幅器に出力する信号処理部と、
前記電力増幅器により増幅された前記信号を送信するためのアンテナとを有することを特徴とする通信装置。
(付記11)
前記信号処理部は、前記第1増幅回路及び第2増幅回路の何れを動作させるかを指示する指示信号を出力し、
前記電力増幅器は、前記指示信号に従って、前記第1増幅回路及び前記第2増幅回路の動作を制御する制御回路を有することを特徴とする付記10に記載の通信装置。