特許第6182944号(P6182944)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182944
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】音色選択装置
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/18 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   G10H1/18 Z
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-80149(P2013-80149)
(22)【出願日】2013年4月8日
(65)【公開番号】特開2014-202978(P2014-202978A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111763
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆
(72)【発明者】
【氏名】川橋 五月
【審査官】 菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭47−014932(JP,B1)
【文献】 特表平05−504426(JP,A)
【文献】 実開昭53−093120(JP,U)
【文献】 米国特許第06034316(US,A)
【文献】 登録実用新案第3090012(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の音信号が入力される複数のフィルタと、
前記複数のフィルタの出力端に各々接続された複数の固定接点と、操作子と連動する可動接点とを有し、前記可動接点が前記複数の固定接点の中の1つの固定接点と短絡された複数のポジションと、前記可動接点が前記複数の固定接点の中の2つの固定接点と短絡された1または複数のポジションとからなる複数のポジションを有し、前記操作子の操作に応じて前記複数のポジションの中の1つのポジションを選択する第1のスイッチと、
前記第1のスイッチと同様な構成の第2のスイッチとを有し、
前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチは各々k個(kは複数)の固定接点を有し、前記第1のスイッチの可動接点が前記第1のスイッチの第k−1の固定接点と短絡されるポジションにおいて、前記第2のスイッチの可動接点が前記第2のスイッチの第k−1の固定接点と短絡され、前記第1のスイッチの可動接点が前記第1のスイッチの第k−1の固定接点および第kの固定接点の両方と短絡されるポジションにおいて、前記第2のスイッチの可動接点が前記第2のスイッチの第k−1の固定接点および第kの固定接点の両方と短絡されるものであり、
前記複数のフィルタのうち前記第1のスイッチの第kの固定接点に接続されたフィルタの出力端が前記第2のスイッチの第k−1の固定接点に接続され、
前記第1のスイッチの第kの固定接点に接続されたフィルタの任意のノードと前記第2のスイッチの第kの固定接点との間にフィルタ特性調整用の素子または回路が介挿されたことを特徴とする音色選択装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、音色を選択する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトリックベース(以下、単にベースという)などの電気楽器には、ピックアップで検出された信号(以下、ピックアップ信号という)が示す音の音色を各種の音色(例えば高音域を抑えて低音域を強調させた音色など)に変化させる音色選択装置が設けられることがある。
【0003】
図9(A)は、従来の音色選択装置の構成を示す回路図である。図9(A)に示す音色選択装置は、ピックアップ信号が示す音の音色を変化させるフィルタ41、42および43と、3つの固定接点51、52および53と1つの可動接点54を有するスイッチ50とを有している。そして、スイッチ50の固定接点51〜53にはフィルタ41〜43の出力端が各々接続されている。スイッチ50は、例えば、可動接点54が図示しないレバーに連動するレバースイッチ(特許文献1参照)である。このスイッチ50のレバーは、可動接点54が固定接点51と短絡されるポジション、固定接点52と短絡されるポジション、固定接点53と短絡されるポジションを有する。この音色選択装置では、ピックアップ信号がフィルタ41〜43に供給され、フィルタ41〜43の出力信号がスイッチ50の固定接点51〜53に各々供給される。そして、ユーザは、レバーの操作により可動接点54を移動させ、可動接点54を固定接点51〜53のうち所望のものと短絡させ、その固定接点に供給されるフィルタの出力信号を可動接点54から出力させることができる。
【0004】
また、ピックアップ信号が示す音の音色を変化させる他の技術として、図9(B)に示す構成のものもある。この図9(B)に示す装置は、ピックアップ信号が示す音の音色を変化させるフィルタ61および62と、可変抵抗70とを有している。ここで、可変抵抗70は、固定抵抗71と、固定抵抗71に接触し、かつ、その接触位置を手動により摺動可能な摺動子72とを有する。そして、固定抵抗71の両端にフィルタ61および62の出力端が接続されている。この技術では、ピックアップ信号がフィルタ61および62に供給され、フィルタ61を通過した信号とフィルタ62を通過した信号とを合成した信号が可変抵抗70の摺動子72から出力される。そして、固定抵抗71の両端間において摺動子72を摺動させてその位置を変えることにより、フィルタ61を通過した信号とフィルタ62を通過した信号の合成割合を変えることができる。このため、フィルタ61を通過した信号とフィルタ62を通過した信号の合成割合を無段階に変化させることができ、摺動子72から出力される信号が示す音の音色をフィルタ61を通過した信号が示す音の音色とフィルタ62を通過した信号が示す音の音色との間で無段階に変化させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第2503885号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、図9(A)に示すスイッチ50を有する音色選択装置には、スイッチ50の固定接点51〜53に接続されるフィルタ41〜43の数よりも多い種類の音色を得ることができない、という問題がある。
【0007】
また、図9(B)に示す技術には、可変抵抗70の摺動子72の位置を他の位置に変更してしまうと再度元の位置に正確に戻すことが難しく、音色の再現性が良くない、という問題がある。また、フィルタ61および62を可変抵抗70における固定抵抗71の両端に接続する構成であるためフィルタの数が2つに限られフィルタの数を増やすことが難しい、という問題がある。
【0008】
この発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、実装するフィルタの数よりも多い種類の音色を再現良く選択することができる音色選択装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、共通の音信号が入力される複数のフィルタと、前記複数のフィルタの出力端に各々接続された複数の固定接点と、操作子と連動する可動接点とを有し、前記可動接点が前記複数の固定接点の中の1つの固定接点と短絡された1または複数のポジションと、前記可動接点が前記複数の固定接点の中の2つの固定接点と短絡された1または複数のポジションとからなる複数のポジションを有し、前記操作子の操作に応じて前記複数のポジションの中の1つのポジションを選択する第1のスイッチとを具備することを特徴とする音色選択装置を提供する。
【0010】
この発明によれば、可動接点が複数の固定接点の中の1つの固定接点と短絡された1または複数のポジションにおいて選択された固定接点に接続されるフィルタを通過した信号が示す音の音色に加え、可動接点が複数の固定接点の中の2つの固定接点と短絡された1または複数のポジションにおいて選択された2つの固定接点の一方の固定接点に接続されるフィルタを通過した信号と他方の固定接点に接続されるフィルタを通過した信号とが合成された信号が示す音の音色を選択することができるため、実装するフィルタの数よりも多い種類の音色を再現良く選択することができる。
【0011】
好ましい態様において、音色選択装置は、前記第1のスイッチと同様な構成の第2のスイッチを有し、前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチは各々k個(kは複数)の固定接点を有し、前記第1のスイッチの可動接点が前記第1のスイッチの第k−1の固定接点と短絡されるポジションにおいて、前記第2のスイッチの可動接点が前記第2のスイッチの第k−1の固定接点と短絡され、前記第1のスイッチの可動接点が前記第1のスイッチの第k−1の固定接点および第kの固定接点の両方と短絡されるポジションにおいて、前記第2のスイッチの可動接点が前記第2のスイッチの第k−1の固定接点および第kの固定接点の両方と短絡されるものであり、前記複数のフィルタのうち前記第1のスイッチの第kの固定接点に接続されたフィルタの出力端が前記第2のスイッチの第k−1の固定接点に接続され、前記第1のスイッチの第kの固定接点に接続されたフィルタの任意のノードと前記第2のスイッチの第kの固定接点との間にフィルタ特性調整用の素子または回路が介挿されたものである。
【0012】
この態様によれば、第1のスイッチの可動接点と連動する第2のスイッチの可動接点が、第1のスイッチの第kの固定接点に接続された第2のスイッチの第k−1の固定接点と、第1のスイッチの第kの固定接点に接続されたフィルタの任意のノードと接続された第2のスイッチの第kの固定接点との両方と短絡されたときに、第1のスイッチの第kの固定接点と第1のスイッチの第kの固定接点に接続されたフィルタの任意のノードとの間にフィルタ特性調整用の素子または回路が介挿されることにより、第1のスイッチの第kの固定接点に接続されたフィルタの特性が変化する。従って、第1のスイッチの第k−1の固定接点に接続されたフィルタを通過した信号と第1のスイッチの第kの固定接点に接続された特性が変化したフィルタを通過した信号とを合成した出力信号が示す音の音色を所望の音色に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の一実施形態による音色選択装置Sの構成を示す回路図である。
図2】同音色選択装置SのスイッチSW1の可動接点4に連結されるレバーLのポジションと、スイッチSW1における固定接点1〜3と可動接点4との短絡関係について説明する図である。
図3】同音色選択装置SのスイッチSW1の可動接点4に連結されるレバーLのポジションをポジションP1としたときに選択されるフィルタ21の周波数特性を示す図である。
図4】同音色選択装置SのスイッチSW1の可動接点4に連結されるレバーLのポジションをポジションP2としたときに選択されるフィルタ21とフィルタ22を組み合わせたフィルタの周波数特性を示す図である。
図5】同音色選択装置SのスイッチSW1の可動接点4に連結されるレバーLのポジションをポジションP3としたときに選択されるフィルタ22の周波数特性を示す図である。
図6】同音色選択装置SのスイッチSW1の可動接点4に連結されるレバーLのポジションをポジションP4としたときに選択されるフィルタ22とフィルタ23と抵抗30を組み合わせたフィルタの周波数特性を示す図である。
図7】同音色選択装置SのスイッチSW1の可動接点4に連結されるレバーLのポジションをポジションP5としたときに選択されるフィルタ23の周波数特性を示す図である。
図8】同音色選択装置SのスイッチSW1の可動接点4に連結されるレバーLのポジションをポジションP4としたときに抵抗30を介挿しなかった場合におけるフィルタ22とフィルタ23を組み合わせたフィルタの周波数特性を示す図である。
図9】従来の音色選択装置の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し、この発明の実施形態について説明する。
<実施形態>
図1は、この発明の一実施形態による音色選択装置Sの構成を示す回路図である。本実施形態による音色選択装置Sは、例えばベースに搭載される。音色選択装置Sは、ピックアップで検出されアンプを介して放音される音の音色をユーザ(奏者)によって選択された音色にする装置である。音色選択装置Sは、フィルタ21、フィルタ22、フィルタ23、スイッチSW1、スイッチSW2および抵抗30を有している。
【0015】
フィルタ21、22および23は、例えば抵抗およびコンデンサ等から構成されるアナログフィルタである。より詳細に説明すると、フィルタ21は、中域周波数成分を減衰させるノッチフィルタである。フィルタ22は、低域周波数から高域周波数に亙ってゲインがほぼ一定となる(周波数特性がフラットとなる)フィルタである。フィルタ23は、遮断周波数より高い周波数成分を減衰させるローパスフィルタである。また、フィルタ21、22および23の入力端同士は短絡されており、この短絡点にはピックアップ信号が供給される。
【0016】
スイッチSW1は、順次並んだ3つの固定接点1、2および3と1つの可動接点4を有している。スイッチSW1の固定接点1、2および3には、フィルタ21、22および23の出力端が各々接続されている。スイッチSW1の可動接点4は、音色選択装置Sの出力端として機能する。
【0017】
スイッチSW1は、例えば、可動接点4とユーザが操作するレバーLとが連結されたレバースイッチである。図2は、レバーLのポジションと、スイッチSW1における固定接点1〜3と可動接点4との短絡関係(可動接点4のポジション)について説明する図である。図2に示すように、レバーLは、その取り得るポジションとして5つのポジションP1〜P5を有しており、ポジションP1〜P5のうちユーザの操作によって選択された1つのポジションにおいて保持される。また、スイッチSW1の可動接点4は、レバーLと連動する。より詳細に説明すると、レバーLのポジションがポジションP1のとき、スイッチSW1の可動接点4は固定接点1と短絡され、レバーLのポジションがポジションP2のとき、スイッチSW1の可動接点4は固定接点1と固定接点2の両方と短絡され、レバーLのポジションがポジションP3のとき、スイッチSW1の可動接点4は固定接点2と短絡され、レバーLのポジションがポジションP4のとき、スイッチSW1の可動接点4は固定接点2と固定接点3の両方と短絡され、レバーLのポジションがポジションP5のとき、スイッチSW1の可動接点4は固定接点3と短絡される。
【0018】
スイッチSW2は、スイッチSW1と同様、順次並んだ3つの固定接点11、12および13と1つの可動接点14を有するスイッチである。より詳細に説明すると、固定接点11は開放されており、固定接点12はフィルタ23の出力端(すなわちスイッチSW1の固定接点3)に接続されており、固定接点13は、抵抗30を介してフィルタ23の回路内(フィルタ23の任意のノード)に接続されており、可動接点14は開放されている。また、スイッチSW2の可動接点14は、スイッチSW1の可動接点4に連動し(すなわちレバーLに連動し)、固定接点11〜13と短絡される。すなわち、レバーLのポジションがポジションP1のとき、スイッチSW2の可動接点14は固定接点11と短絡され、レバーLのポジションがポジションP2のとき、スイッチSW2の可動接点14は固定接点11と固定接点12の両方と短絡され、レバーLのポジションがポジションP3のとき、スイッチSW2の可動接点14は固定接点12と短絡され、レバーLのポジションがポジションP4のとき、スイッチSW2の可動接点14は固定接点12と固定接点13の両方と短絡され、レバーLのポジションがポジションP5のとき、スイッチSW2の可動接点14は固定接点13と短絡される。従って、スイッチSW2は、レバーLのポジションがポジションP4のときに、フィルタ23の回路内(フィルタ23の任意のノード)とフィルタ23の出力端(スイッチSW1の固定接点3)との間に抵抗30を介挿させる。
【0019】
本実施形態による音色選択装置Sでは、共通のピックアップ信号がフィルタ21〜23に各々供給され、フィルタ21〜23の出力信号がスイッチSW1の固定接点1〜3に各々供給される。そして、ユーザは、レバーLを操作してそのポジションをポジションP1〜P5の中から選択することにより可動接点4を移動させて、所望の固定接点1〜3と短絡させ、その短絡された固定接点1〜3に供給されるフィルタの出力信号を可動接点4から出力させることができる。このときに選択される固定接点1〜3に接続されるフィルタの周波数特性により音色選択装置Sの出力信号が示す音の音色が変化する。
【0020】
図3図7は、レバーLのポジションがポジションP1〜P5の各々のときに選択されるフィルタの周波数特性を示す図である。
【0021】
レバーLのポジションがポジションP1の場合、可動接点4と短絡された固定接点1に接続されたフィルタ21を通過した信号が可動接点4から出力される。この場合に選択された固定接点1に接続されたフィルタ21は、図3に示すように、低域周波数と高域周波数のゲインが押し上げられ、中域周波数のゲインが低下した周波数特性を示す。これにより、フィルタ21を通過した信号、すなわち、音色選択装置Sの出力信号が示す音は、低音域(BASS)と高音域(TREBLE)が強調され、中音域(MIDDLE)が抑えられた音色を示す。この音色は、スラップ奏法(親指で弦を叩く動作と中指等で弦を引っ張って指板に打ちつける動作を組み合わせた奏法)に適したものである。
【0022】
レバーLのポジションがポジションP3の場合、可動接点4と短絡された固定接点2に接続されたフィルタ22を通過した信号が可動接点4から出力される。この場合に選択された固定接点2に接続されたフィルタ22は、図5に示すように、低域周波数から高域周波数に亙ってゲインがほぼ一定となる周波数特性を示す。これにより、フィルタ22を通過した信号、すなわち音色選択装置Sの出力信号が示す音は、低音域から高音域に亙って均一的な音色を示す。
【0023】
レバーLのポジションがポジションP5の場合、可動接点4と短絡された固定接点3に接続されたフィルタ23を通過した信号が可動接点4から出力される。この場合に選択された固定接点3に接続されたフィルタ23は、図7に示すように、低域周波数と中域周波数のゲインが押し上げられ、高域周波数のゲインが低下した周波数特性を示す。これにより、フィルタ23を通過した信号、すなわち、音色選択装置Sの出力信号が示す音は、低音域と中音域が強調され、高音域が抑えられた音色を示す。この音色は、ベースソロを弾くのに適したものである。
【0024】
レバーLのポジションがポジションP2の場合、可動接点4は固定接点1と固定接点2の両方と短絡されるため、フィルタ21とフィルタ22とが並列接続される。この場合、可動接点4と短絡された固定接点1に接続されたフィルタ21を通過した信号と、可動接点4と短絡された固定接点2に接続されたフィルタ22を通過した信号とが合成された信号が可動接点4から出力される。すなわち、この場合に選択された固定接点1に接続されたフィルタ21と固定接点2に接続されたフィルタ22とが並列接続されたフィルタは、フィルタ21の周波数特性とフィルタ22の周波数特性を合成した周波数特性を示す。そして、この場合のフィルタは、図4に示すように、高域周波数のゲインが押し上げられた周波数特性を示す。これにより、フィルタ21を通過した信号とフィルタ22を通過した信号とが合成された信号、すなわち、音色選択装置Sの出力信号が示す音は、高音域が強調された音色を示す。この音色は、ピック奏法(ピック弾き)の場合に適したものである。
【0025】
レバーLのポジションがポジションP4の場合、可動接点14は固定接点12と固定接点13の両方と短絡されるためフィルタ23の回路内とフィルタ23の出力端との間に抵抗30が介挿されるとともに、可動接点4は固定接点2と固定接点3の両方と短絡されるためフィルタ22とフィルタ23とが並列接続される。この場合、フィルタ22を通過した信号と抵抗30が介挿されたフィルタ23を通過した信号とが合成された信号が可動接点4から出力される。すなわち、この場合に選択された固定接点2に接続されたフィルタ22と固定接点3に接続された抵抗30が介挿されたフィルタ23とが並列接続されたフィルタは、フィルタ22の周波数特性と、フィルタ23の回路内とフィルタ23の出力端との間に抵抗30が介挿されたときのフィルタ23の周波数特性とを合成した周波数特性を示す。そして、この場合のフィルタは、図6に示すように、低域周波数のゲインが押し上げられ、高域周波数のゲインが低下された周波数特性を示す。これにより、フィルタ22を通過した信号と抵抗30が介挿されたフィルタ23を通過した信号とが合成された信号、すなわち、音色選択装置Sの出力信号が示す音は、低音域が強調され、高音域が抑えられた音色を示す。この音色は、フィンガー奏法(指弾き)の場合に適したものである。
【0026】
本実施形態による音色選択装置Sでは、レバーLのポジションがポジションP4の場合、フィルタ23の回路内とフィルタ23の出力端との間に抵抗30を介挿する構成としたが、このようにした理由は以下の通りである。レバーLのポジションがポジションP3のときの音色選択装置Sの出力信号が示す音色とレバーLのポジションがポジションP5のときの音色選択装置Sの出力信号が示す音色が各々所望の音色となるようにフィルタ22とフィルタ23の周波数特性を各々決定すると(図5および図7参照)、フィルタ22の周波数特性とフィルタ23の周波数特性を合成した周波数特性(すなわち、レバーLのポジションがポジションP4のときに選択されるフィルタの周波数特性)が所望の音色を示すものとならなかった。図8は、フィルタ22の周波数特性とフィルタ23の周波数特性(抵抗30を介挿しない場合のフィルタ23の周波数特性)を合成した周波数特性を示す図である。図8に示す周波数特性では、高域周波数のゲインは低下しているが、低域周波数のゲインはあまり押し上げられていない。レバーLのポジションがポジションP4のときに選択されるフィルタの周波数特性は、図8に示す周波数特性に対して、さらに低域周波数のゲインが押し上げられたものとしたい。そこで、低域周波数のゲインをさらに押し上げるためにフィルタ23の回路内とフィルタ23の出力端の間に抵抗30を介挿するようにした(図6参照)。すなわち、抵抗30は、フィルタ23の周波数特性を変化させて、フィルタ22の周波数特性と変化させたフィルタ23の周波数特性とを合成した周波数特性が所望の音色を示す周波数特性となるように合成した周波数特性を調整するフィルタ特性調整用素子として機能する。なお、フィルタ21の周波数特性とフィルタ22の周波数特性を合成した周波数特性は所望の音色を示すものであったため、レバーLのポジションがポジションP2のときに選択されるフィルタの周波数特性の調整(フィルタ特性調整用素子の介挿)は行わなかった。
【0027】
次に、本実施形態における音色選択装置Sを搭載したベースをユーザが弾く場合について説明する。ユーザは、例えば、スラップ奏法でベースを弾こうとする場合、音色選択装置SのレバーLを動かしてそのポジションをポジションP1にする。そして、ユーザがスラップ奏法でベースを弾くと、ピックアップ信号が示す音は、音色選択装置Sによってスラップ奏法に適した音色に変化させられてアンプ等から放音される。また、スラップ奏法からピック奏法に奏法を変える場合、ユーザは、音色選択装置SのレバーLを動かしてそのポジションをポジションP1からポジションP2に切り替える。そして、ユーザがピック奏法でベースを弾くと、ピックアップ信号が示す音は、音色選択装置Sによってピック奏法に適した音色に変化させられてアンプ等から放音される。このように、ユーザの奏法によって音色選択装置SのレバーLのポジションP1〜P5を選択することにより、ユーザはその奏法に適した音色を得ることができる。なお、ユーザが音色選択装置SのレバーLのポジションP1〜P5を選択した後にベースを弾くことにより所望の音色を得るだけでなく、ベースを弾いた後(弦を弾いた後)に音色選択装置SのレバーLのポジションP1〜P5を選択して(切り替えて)、音が出ている最中に音色を変更することもできる。
【0028】
このように、本実施形態による音色選択装置Sは、共通のピックアップ信号が入力される3つのフィルタ21〜23と、フィルタ21〜23の出力端に各々接続された順次並んだ固定接点1〜3とレバーLと連動する可動接点4とを有し、可動接点4が固定接点1〜3の中の1つの固定接点1〜3と短絡されたポジション(レバーLのポジションがポジションP1、P3およびP5のときの可動接点4のポジション)と、可動接点4が固定接点1〜3の中の2つの固定接点1〜3と短絡されたポジション(レバーLのポジションがポジションP2およびP4のときの可動接点4のポジション)とからなる複数のポジションを有し、レバーLの操作に応じて複数のポジションの中から1つのポジションを選択するスイッチSW1とを有している。このため、可動接点4が1の固定接点1〜3と短絡されたポジション(すなわちポジションP1、P3およびP5)において選択された固定接点1〜3に接続されるフィルタ21〜23を通過した信号が示す音の音色に加え、可動接点4が固定接点1〜3の中の2つの固定接点1〜3と短絡されたポジション(すなわちポジションP2およびP4)において選択された2つの固定接点1〜3の一方の固定接点1〜3に接続されるフィルタ21〜23を通過した信号と他方の固定接点1〜3に接続されるフィルタ21〜23を通過した信号とが合成された信号が示す音の音色を選択することができる。すなわち、実装するフィルタ21〜23の数よりも多い種類の音色を選択することができる。また、レバーLのポジションP1〜P5を切り替えて音色を変更したとしても、レバーLを元のポジションP1〜P5に戻すことにより元の音色に戻すことができるため、音色の再現性が良い。また、音色の種類よりも実装するフィルタ21〜23の数が少ないため、部品点数を削減することができ、価格を抑えることができる。
【0029】
また、本実施形態による音色選択装置Sでは、可動接点4が固定接点2と固定接点3の両方と短絡されるポジションにおいて、スイッチSW1の可動接点4と連動する可動接点14を有するスイッチSW2により固定接点3に接続されたフィルタ23の回路内と同フィルタ23の出力端との間に抵抗30を介挿している。このため、固定接点2に接続されたフィルタ22を通過した信号と固定接点3に接続されたフィルタ23を通過した信号とを合成した信号が示す音の音色が所望の音色とならない場合であっても、フィルタ23の回路内とフィルタ23の出力端の間に抵抗30を介挿させることにより、フィルタ23の周波数特性を変化させて、固定接点2に接続されたフィルタ22を通過した信号と固定接点3に接続された周波数特性が変化されたフィルタ23を通過した信号とを合成した信号が示す音の音色を所望の音色に調整することができる。また、本実施形態のように、抵抗30を介挿するスイッチSW2の可動接点14をユーザが操作するレバーLに連結されるスイッチSW1の可動接点4と連動させることにより、音色の調整をユーザが意識することなく行うことができる。
【0030】
<他の実施形態>
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態が考えられる。例えば次の通りである。
【0031】
(1)上記実施形態において、スイッチSW1は、可動接点4にレバーLが連結されたレバースイッチであったが、これに限られない。例えば、スイッチSW1をトグルスイッチとしても良い。要は、可動接点が順次並んだ固定接点の中の2つの固定接点の両方と短絡するスイッチであれば良い。
【0032】
(2)上記実施形態において、音色選択装置SのスイッチSW1は、固定接点の数が3であり、可動接点のポジションの数が5であった。しかし、スイッチSW1の固定接点の数および可動接点のポジションの数はこれに限られず、固定接点の数は2以上であり、可動接点のポジションの数は3以上であれば良い。また、音色選択装置Sは、3つのフィルタ21〜23を実装するものに限られず、2以上のフィルタを実装するものであれば良い。
【0033】
(3)上記実施形態において、フィルタ21はノッチフィルタ、フィルタ22は周波数特性がフラットなフィルタ、フィルタ23はローパスフィルタであったが、実装するフィルタはこれらに限られない。例えば、フィルタはこれらのフィルタの他、ハイパスフィルタやバンドパスフィルタなどを用いても良い。また、上記実施形態において、レバーLのポジションがポジションP2のとき、ノッチフィルタと周波数特性がフラットなフィルタが並列接続され、レバーLのポジションがポジションP4のとき、周波数特性がフラットなフィルタとローパスフィルタが並列接続されていたが、並列接続するフィルタの組み合わせはこれらに限られない。例えば、短絡される2つの固定接点の一方の固定接点にノッチフィルタを接続し、他方の固定接点にノッチフィルタ、周波数特性がフラットなフィルタ、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタのいずれかを接続するという具合に、フィルタの組み合わせパターンはマトリクス的に考えられる。
【0034】
(4)上記実施形態では、フィルタ23の回路内とフィルタ23の出力端の間に抵抗30を介挿させることによりフィルタ23の周波数特性を変化させていた。しかし、フィルタ23の周波数特性を変化させる素子は抵抗30に限られない。例えば、抵抗30に代えてコンデンサを用いても良いし、抵抗とコンデンサを組み合わせたもの(回路)を用いても良い。また、上記実施形態では、ローパスフィルタであるフィルタ23に抵抗30を介挿する態様であったが、抵抗30などの周波数特性を変化させる素子または回路を介挿するフィルタはローパスフィルタに限られない。例えばノッチフィルタの周波数特性を変化させたい場合にはノッチフィルタに抵抗30などの素子または回路を介挿すれば良い。従って、上記変形例(3)で示した各種のフィルタに、抵抗、コンデンサ、抵抗とコンデンサを組み合わせたものなどを介挿する自由な組み合わせが考えられる。また、1つのフィルタに対して介挿する素子または回路(抵抗、コンデンサ、抵抗とコンデンサを組み合わせたものなど)を各々切り替えることにより周波数特性を複数種に変化させても良い。また、フィルタの周波数特性を変化させるのは、フィルタを並列接続した場合(レバーLのポジションがポジションP4の場合など)に限られず、1のフィルタを選択した場合でも良い。
【0035】
(5)上記実施形態において、フィルタ23の周波数特性を変化させるためのスイッチSW2の可動接点14は、音色を選択するためのスイッチSW1の可動接点4と連結されていた。しかし、スイッチSW2の可動接点14をスイッチSW1の可動接点4と連結させず、スイッチSW2の可動接点14に別個のレバーを連結して、スイッチSW1から独立してスイッチSW2の可動接点14を操作することができるようにしても良い。
【0036】
(6)上記実施形態において、レバーLにより選択される音色は、ベースの各奏法に適した音色であった。しかし、レバーLにより選択される音色は、ベースの各奏法に適した音色に限られず、各種の音色であっても勿論良い。
【0037】
(7)上記実施形態において、音色選択装置Sはベースに搭載されていたが、これに限られない。例えば、エレクトリックギターやピックアップを搭載したアコースティックギターなどの他の楽器に搭載しても良い。また、楽器ではなく、例えばベースが接続されたアンプなどの他の音響機器に搭載しても良い。
【符号の説明】
【0038】
S…音色選択装置、SW1,SW2…スイッチ、1,2,3,11,12,13…固定接点、4,14…可動接点、21,22,23…フィルタ、30…抵抗、L…レバー、P1,P2,P3,P4,P5…ポジション。
図1
図2
図3
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図5
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図7
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図9