(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明について詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0019】
[積層体]
図1は本実施形態に係る積層体の層構造の一例を示す模式図である。
図1に示すように積層体1は、EPDMゴム組成物層2と、ジエン系ゴム組成物層3とが積層された構造を有している。
【0020】
[EPDMゴム組成物層]
EPDMゴム組成物層2は、EPDMゴムと、ポピロン
(登録商標)改質ポリ塩化ビニルとを少なくとも含んでいる。組成物における各成分の配合率はEPDMゴム100質量部に対して、ポピロン
(登録商標)改質ポリ塩化ビニルを10質量部以上40質量部以下とすることが好ましい。この範囲の配合率において加硫後のEPDMゴム層とジエン系ゴム層との接着性が向上することが本発明者らにより確認された。以下、組成物を構成する各成分について説明する。
【0021】
<EPDMゴム>
EPDMゴムとしては、特に限定されないが、エチレン含量が40質量%以上60質量%以下であることが好ましい。また、100℃試料で測定したムーニー粘度が30以上70以下であることが好ましい。EPDMゴムを構成するジエン成分としてはDCPD(ジシクロペンタジエン)、ENB(5−エチリデン−2−ノルボルネン)、VNB(ビニリデンノルボルネン)等を挙げることができるが、これらに限定されない。また、ジエン成分の含量が好ましくは1質量%以上8質量%以下であるとよい。
【0022】
<ポピロン
(登録商標)改質ポリ塩化ビニル>
EPDMゴム組成物層2には、ポピロン
(登録商標)改質ポリ塩化ビニルが配合される。ポピロン
(登録商標)改質ポリ塩化ビニルとは、ポピロン(
(登録商標):商標登録第4125648号)で改質された塩化ビニル樹脂である。ポピロン
(登録商標)とは、ポピロン化成株式会社から販売されている塩化ビニル樹脂及び/又は合成ゴムの改質剤であり、ポリ塩化ビニル、フタル酸及び脂肪酸ジアルキルを主成分とするグラフトブレンド組成物である(特公昭38−4493号公報)。
【0023】
<その他添加剤>
EPDMゴム組成物層2には、積層体1の用途に応じて他の添加剤を配合してもよい。他の添加剤としては、例えば、充填材、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、有機系活性剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、接着助剤を挙げることができる。
【0024】
充填材としては、例えば、カーボンブラック、シリカ(ホワイトカーボン)、クレー、タルク、酸化鉄、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、硫酸バリウム、マイカ(雲母)、ケイソウ土などを挙げることができる。
【0025】
カーボンブラックとしては、得られる本発明のゴム組成物を加硫して得られるゴム製品の耐摩耗性が良好であることより、HAF級、ISAF級、SAF級等の粒径が小さいカーボンが好ましい。
【0026】
シリカは、特に限定されないが、例えば、結晶性シリカ、沈殿シリカ、非晶質シリカ(例えば、高温処理シリカ)、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカを挙げることができる。特に、シリカは、カーボンブラックと同様に、カーボンゲル(バウンドラバー)を生成することが知られており、必要に応じて好適に用いることができる。
【0027】
クレーは、ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー等を挙げることができる。これらを一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0028】
可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、コハク酸イソデシル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル、オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、トリメリット酸エステル、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル、ナフテンオイルなどを挙げることができる。
【0029】
軟化剤としては、具体的には、例えば、アロマ系オイル、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、石油樹脂、植物油、液状ゴム等を挙げることができ、これらを一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0030】
老化防止剤としては、例えば、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N,N′−ジナフチル−p−フェニレンジアミン(DNPD)、N−イソプロピル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン(IPPD)、スチレン化フェノール(SP)、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物(RD)等を挙げることができる。
【0031】
有機系活性剤としては、具体的には、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸亜鉛等を挙げることができる。
【0032】
酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)を挙げることができる。
【0033】
帯電防止剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物を挙げることができる。
【0034】
難燃剤としては、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテルを挙げることができる。また、非ハロゲン系難燃剤として、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、トリクレジル・ホスフェート、ジフェニルクレジル・ホスフェートを挙げることができる。
【0035】
加硫剤としては、例えば、硫黄系、有機過酸化物系、金属酸化物系、フェノール樹脂、キノンジオキシム等の加硫剤を挙げることができる。
【0036】
硫黄系の加硫剤としては、例えば、硫黄、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド(DPTT)、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイドなどの有機含硫黄化合物を挙げることができる。
【0037】
硫黄としては、粉末硫黄、沈降性硫黄、高分散性硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄を挙げることができる。
【0038】
有機過酸化物系の加硫剤としては、例えば、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パーオキシルベンゾエート)を挙げることができる。
【0039】
その他の加硫剤としては、例えば、亜鉛華、酸化マグネシウム、リサージ、フェノール樹脂などの樹脂、p−キノンジオキシム、p−ジベンゾイルキノンジオキシム、ポリ−p−ジニトロソベンゼン、メチレンジアニリンを挙げることができる。
【0040】
加硫促進剤としては、チアゾール系、チラウム系、ジチオカルバメート系の加硫促進剤等を挙げることができる。
【0041】
チアゾール系加硫促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩(ZnMBT)、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩(CMBT)等を挙げることができる。
【0042】
チラウム系加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、テトラベンジルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。
【0043】
ジチオカルバメート系加硫促進剤としては、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnMDC)、ジエチルジオカルバミン酸亜鉛(ZnEDC)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnBDC)、N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnEPDC)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸テルル(TeEDC)、ジメチルジチオカルバミン酸銅(CuMDC)、ジメチルジチオカルバミン酸第二鉄(FeMDC)、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(NaEDC)等を挙げることができる。
【0044】
加硫遅延剤としては、例えば、無水フタル酸、安息香酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸などの有機酸;N−ニトロソージフェニルアミン、N−ニトロソーフェニル−β−ナフチルアミン、N−ニトロソ−トリメチル−ジヒドロキノリンの重合体などのニトロソ化合物;トリクロルメラニンなどのハロゲン化物;2−メルカプトベンツイミダゾール、N−(シクロヘキシルチオ)フタルイミド(PVI)等を挙げることができる。
【0045】
接着助剤としては、トリアジンチオール系化合物(例えば、2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン、6−ブチルアミノ−2,4−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン)、レゾルシン、クレゾール、レゾルシン−ホルマリンラテックス、モノメチロールメラミン、モノメチロール尿素、エチレンマレイミドを挙げることができる。
【0046】
上述した各種添加剤は、それぞれ、一種単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。また用途に応じて各種添加剤をそれぞれ組み合わせて使用することができる。
【0047】
[ジエン系ゴム組成物層]
ジエン系ゴム組成物層3は、ジエン系ゴムと、レゾルシノールと、ヘキサメチレンテトラミンと、シリカとを少なくとも含んでいる。組成物における各成分の配合率は、ジエン系ゴム100質量部に対し、レゾルシノールを3質量部以上6質量部以下、ヘキサメチレンテトラミンを2質量部以上4.5質量部以下、シリカを1質量部以上20質量部以下とすることが好ましい。この範囲の配合率において加硫後のジエン系ゴム層とEPDMゴム層との接着性が向上することが本発明者らにより確認された。以下、組成物を構成する各成分について説明する。
【0048】
<ジエン系ゴム>
ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)等を挙げることができる。これらのゴム成分は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
これらのゴムのなかでも、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムが特に好ましく、ジエン系ゴムは、40質量部以上60質量部以下の天然ゴムと、60質量部以下40質量部以上のスチレン−ブタジエン共重合体ゴムとで形成されることが好ましい。この範囲の組み合わせにおいて、EPDMゴム組成物層2との接着性が特に向上する。
【0050】
(天然ゴム)
天然ゴムとしては、シス−1,4−ポリイソプレンが頭尾結合する構造を有するポリマーであり、一般に用いられる天然ゴムを使用することができる。
【0051】
(スチレン−ブタジエン共重合体ゴム)
スチレン−ブタジエン共重合体ゴムとしては、乳化重合によるものでも溶液重合によるものでもよい。スチレン−ブタジエン共重合体ゴムとしては、特に限定されないが、スチレン含量が20質量%以上35質量%以下であることが好ましい。また、100℃試料で測定したムーニー粘度が30以上60以下であることが好ましい。
【0052】
<レゾルシノール>
レゾルシノールは、ゴム組成物中でメチレン受容体として機能することによりゴム組成物の硬化反応を促進させる機能を有する。レゾルシノールの添加量はジエン系ゴム100質量部に対し、3質量部以上6質量部以下であることが好ましい。
【0053】
<ヘキサメチレンテトラミン>
ヘキサメチレンテトラミンは、ゴム組成物中でメチレン供与体として機能することによりゴム組成物の硬化反応を促進させる機能を有する。ヘキサメチレンテトラミンの添加量はジエン系ゴム100質量部に対し、2質量部以上4.5質量部以下であることが好ましい。
【0054】
レゾルシノールとヘキサメチレンテトラミンは上記範囲の組み合わせにおいて配合されることによって、加硫後のジエン系ゴム層とEPDMゴム層との接着性を向上させる。
【0055】
<シリカ>
シリカはゴム組成物に添加される無機充填材の一種である。シリカとしては、特に限定されないが、例えば、結晶性シリカ、沈殿シリカ、非晶質シリカ(例えば、高温処理シリカ)、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ等を挙げることができる。
【0056】
シリカの添加量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。この範囲内の添加量において、レゾルシノール及びヘキサメチレンテトラミンとともにジエン系ゴム組成物層3に配合することによって、加硫した後のEPDMゴム層とジエン系ゴム層との接着性が向上する。
【0057】
<その他添加剤>
ジエン系ゴム組成物には、積層体1の用途に応じて他の添加剤を配合してもよい。他の添加剤としては、例えば、充填材、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、有機系活性剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、接着助剤を挙げることができる。
【0058】
上記各種添加剤はEPDMゴム組成物と同様のものを使用することができるが、加硫促進剤については、EPDMゴム組成物で挙げたものの他に、スルフェンアミド系、チオウレア系の加硫促進剤を使用することができる。
【0059】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、N−(tert−ブチル)−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(BBS)、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等を挙げることができる。
【0060】
チオウレア系加硫促進剤としては、2−イミダゾリン−2−チオール(EU)、N,N’−ジエチルチオ尿素(DEU)、N,N’−ジブチルチオ尿素(DBTU)、トリメチルチオ尿素(TMU)等を挙げることができる。
【0061】
[加硫ゴム製品]
図1に例示する積層体1を加硫することによってEPDMゴム組成物層2がEPDMゴム層となり、ジエン系ゴム組成物層3がジエン系ゴム層となって、両ゴム層が架橋接着されたゴム積層体、すなわち加硫ゴム製品が得られる。加硫方法については後述する。
【0062】
[コンベヤベルト]
コンベヤベルトは積層体1の加硫によって得られたゴム積層体、すなわち加硫ゴム製品を少なくとも一部に具備している。
【0063】
[加硫ゴム製品の製造方法]
<積層工程>
加硫ゴム製品は、例えば、上記組成を有するEPDMゴム組成物層2及びジエン系ゴム組成物層3をそれぞれ混錬、押出を経て形成した後、貼り合わせる方法、あるいは一つの連続製造ラインにおいて先に形成した組成物層上にもう一方の組成物層を押出機から直接押し出す方法等によって製造することができる。
【0064】
原料の混錬は、ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等を用いる通常の方法を採用することができる。混練りした原料は、ロール等を用いる通常の方法にて、例えばシート状等に形成することができる。
【0065】
<加硫工程>
上記EPDMゴム組成物層2と上記ジエン系ゴム組成物層3との積層体1は、通常の加硫方法によって加硫することによって、両層の界面が接着される。
【0066】
加硫条件としては、加硫剤の存在下で加熱することにより行うが、加硫温度は160℃以上175℃以下、加硫時間は10分以上60分以下であることが好ましい。この範囲においてEPDMゴム層とジエン系ゴム層との接着性に優れたゴム積層体を得ることができる。
【0067】
また加硫の前に電子線を照射することにより前加硫又は予備加硫を行ってもよい。
【0068】
所定の配合率で調整されたEPDMゴム組成物層2及びジエン系ゴム組成物層3を積層させて加硫することにより、耐熱性、耐候性、耐オゾン性、耐化学薬品性に優れたEPDMゴム層の長所を活かしつつコスト低下の要請も満たすことができるゴム積層体、すなわち加硫ゴム製品を得ることができる。
【0069】
上記の如く得られた加硫ゴム製品をコンベヤベルトの少なくとも一部に用いることにより、耐熱性の他、耐候性、耐オゾン性、耐化学薬品性にも優れた耐熱性ベルトを安価に実現することができる。
【0070】
以上の実施形態においては、積層体を加硫して得られる加硫ゴム製品がコンベヤベルトである場合を例にとって説明したが、本発明に係る積層体から得られる加硫ゴム製品は、EPDMゴムの耐熱性、耐候性、耐オゾン性、耐化学薬品性等の特性を活かしつつ安価な材料が求められる分野で幅広く利用することができる。
【0071】
また、本実施形態に係る積層体から得られる加硫ゴム製品は、ジエン系ゴム層を具備しているので、EPDMゴムのみでは得られない耐油性も有する。
【実施例】
【0072】
以下、本実施形態に係る組成物を実施例により具体的に説明する。ただし、本実施形態に係る組成物はこれらに限定されるものではない。
【0073】
[積層体の製造]
<EPDMゴム組成物の製造>
表1に示す各成分を、同表に示す配合量(質量部)で配合し、バンバリーミキサーによってこれらを均一に混錬してEPDMゴム組成物A1〜A2を得た。得られた押出機によりシート状に形成してEPDMゴム組成物層A1〜A2を得た。得られたEPDMゴム組成物A1〜A2を押出機によりシート状に形成した試験片について、引張強さ(TB)、破断伸び(EB)、引裂強さ(TR)を測定した結果も表1に示した。
【0074】
【表1】
【0075】
表1に記載した各成分の詳細は以下のとおりである。
・EPDM:EPDMゴム、商品名「EPT4045M」、三井化学株式会社製
・ポピロン
(登録商標)改質ポリ塩化ビニル:商品名「ポピロン
(登録商標)R#0715−1」、ポピロン化成株式会社製
・カーボンブラック:商品名「シーストN」、東海カーボン株式会社製
・亜鉛華:加硫促進助剤、商品名「亜鉛華3号」、正同化学工業株式会社製
・ステアリン酸:商品名「ステアリン酸YR」、日本油脂株式会社製
・アロマ油:商品名「A−OMIX」、三共油化工業株式会社製
・加硫促進剤:商品名「ノクセラーDM−PO」、大内新興化学工業株式会社製
・硫黄:加硫剤、油処理硫黄、細井化学工業株式会社製
【0076】
<ジエン系ゴム組成物の調整>
表2に示す各成分を、同表に示す配合量(質量部)で配合し、バンバリーミキサーを用いてこれらを均一に混錬してジエン系ゴム組成物B1〜B5を調製した。得られた各組成物B1〜B5を押出機によりシート状に形成した試験片について、引張強さ(TB)、破断伸び(EB)、引裂強さ(TR)を測定した結果も表2に示した。
【0077】
【表2】
【0078】
表2に記載した各成分の詳細は以下のとおりである。
・NR:天然ゴム「STR−20」、TECK BEE HANG CO.,LTD製
・SBR:スチレン−ブタジエンゴム、商品名「NIPOL 1502」、日本ゼオン株式会社製
・カーボンブラック:商品名「シーストN」、東海カーボン株式会社製
・亜鉛華:加硫促進助剤、商品名「亜鉛華3号」、正同化学工業株式会社製
・ステアリン酸:商品名「ステアリン酸YR」、日本油脂株式会社製
・シリカ:商品名「ニツプシールAQ」、東ソ−・シリカ株式会社製
・レゾルシノール:商品名「RESORCINOL」、住友化学株式会社製
・フェノール樹脂:商品名「PP 5121」、群栄化学工業株式会社製
・アロマ油:商品名「A−OMIX」、三共油化工業株式会社製
・ヘキサメチレンテトラミン:商品名「サンセラーHT−PO」、三新化学工業株式会社製
・加硫促進剤:商品名「ノクセラーDM−PO」、大内新興化学工業株式会社製
・硫黄:加硫剤、油処理硫黄、細井化学工業株式会社製
【0079】
<加硫>
得られたEPDMゴム組成物A1〜A2及びジエン系ゴム組成物B1〜B5をそれぞれ積層し、160℃の加硫装置内で45分間加硫を行った。各組成物の組み合わせを表3に示す。表3に示すように、EPDMゴム組成物A1とジエン系ゴム組成物B1との組み合わせを実施例1、EPDMゴム組成物A2とジエン系ゴム組成物B1との組み合わせを比較例1、EPDMゴム組成物A1とジエン系ゴム組成物B2との組み合わせを比較例2、EPDMゴム組成物A2とジエン系ゴム組成物B2との組み合わせを比較例3、EPDMゴム組成物A1とジエン系ゴム組成物B3との組み合わせを比較例4、EPDMゴム組成物A2とジエン系ゴム組成物B3との組み合わせを比較例5、EPDMゴム組成物A1とジエン系ゴム組成物B4との組み合わせを比較例6、EPDMゴム組成物A2とジエン系ゴム組成物B4との組み合わせを比較例7、EPDMゴム組成物A1とジエン系ゴム組成物B5との組み合わせを比較例8、EPDMゴム組成物A2とジエン系ゴム組成物B5との組み合わせを比較例9とした。
【0080】
【表3】
【0081】
[力学的評価]
上記の如く得られた積層体の接着性を以下の如く評価した。なお、接着性の指標として以下の如く「剥離力」と「ゴム破壊状態」とを用いた。
【0082】
<試験片の作製>
厚さ3mmのEPDMゴム組成物層と厚さ3mmのジエン系ゴム組成物層とを積層した積層体を長さ150mm、幅150mmの型(モールド)に入れて、160℃で45分間保持して加硫を行い、加硫された積層体(以下、加硫積層体又は加硫物と称する。)を得た。加硫積層体を長さ方向に25mm幅で切り出したものを試験片(長さ150mm、幅25mm)とした。
【0083】
<剥離力>
剥離力は、JIS K6256:2006「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの接着試験方法」に準拠して測定した。測定結果を表4に示す。実施例1においては、剥離力が6.8N/mmであり、剥離力の目安となる5N/mmを上回っていたが、比較例1〜9ではいずれも5.0N/mmを下回る値であった。
【0084】
<ゴム破壊評価>
上記剥離力を測定した後、すなわち剥離試験を行った後に、ゴム破壊の状態を目視により評価した。評価基準は以下のとおりである。
・ゴム切れ:界面での剥離が生じず、積層されたままの状態でゴムが破断した状態。
・材料破壊率:界面剥離が生じたサンプルのうち、一方のゴム層が他方のゴム層の表面上に残存している割合を百分率(残存率)で表したもの。
【0085】
剥離力とゴム破壊の評価結果を表4に示した。
【0086】
【表4】
【0087】
表4から明らかなように、実施例1においては、剥離力が6.8N/mmであり、剥離力の目安となる5N/mmを大きく上回っていた。また、実施例1においては、界面剥離が発生せずゴム切れに至っていることからも、界面の接着性が良好であることが判る。
一方、比較例1〜9では、剥離力が、いずれも5N/mm未満の値であった。比較例1においては、完全な界面剥離は生じなかったものの、界面における一方のゴム層の他方のゴム層表面上での残存率を示す材料破壊率が15%であった。また、比較例2〜9においては、完全な界面剥離が生じ、材料破壊率はいずれも0%であった。これらの結果から比較例1〜9に係る試験片においては界面の接着性が不十分であることが判る。