特許第6182971号(P6182971)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182971
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】電動機の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   H02K1/18 E
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-103162(P2013-103162)
(22)【出願日】2013年5月15日
(65)【公開番号】特開2014-225944(P2014-225944A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2016年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 誠司
(72)【発明者】
【氏名】小岩井 一茂
【審査官】 安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−290543(JP,A)
【文献】 特開平07−163081(JP,A)
【文献】 特開2002−262501(JP,A)
【文献】 実開昭54−122303(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00−1/16
H02K 1/18−1/26
H02K 1/28−1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機シャフトを中心として回転するロータと、このロータの外周に配置されたステータと、当該ステータを収容するハウジングと、を備え、上記ステータは、ステータコアとステータコイルから成り、上記ステータコイルは、上記電動機シャフトの軸方向両側の折り返し部分であるコイルエンドが上記ステータコアの両端から軸方向に突出する状態でステータコアに巻装されている電動機を製造するための方法であって、
上記ステータの上記両側コイルエンドに伝熱性を備えたコイルエンドカバーを装着する装着工程と、
上記ハウジング内に上記ステータ及び上記コイルエンドカバーを組み込む組込み工程と、
伝熱性及び電気絶縁性を備えた合成樹脂材料から成る充填材を当該充填材が上記コイルエンドを覆う状態で上記ハウジング内に注入してステータハウジング内に封止する注入工程と、を含み、
上記装着工程では、上記コイルエンドカバーが上記コイルエンド表面を覆い、かつ、当該コイルエンドカバーと当該コイルエンドの表面との間に充填材が流通し得る隙間が形成される状態で、当該コイルエンドカバーが装着され、
上記装着工程では、上記コイルエンドカバーとして、充填材通路を有していて当該充填材通路を通じて上記充填材が上記隙間に充填されることを可能にするものが、用いられ、
上記注入工程では、上記充填材上記充填材通路を通して上記隙間に充填されることによって当該隙間に樹脂層形成されることを特徴とする電動機の製造方法
【請求項2】
上記装着工程では、上記コイルエンドカバーとして、伝熱性及び電気絶縁性を備えた合成樹脂材によって形成されたものが用いられることを特徴とする請求項1記載の電動機の製造方法
【請求項3】
上記装着工程では、上記コイルエンドカバーとして、端面壁と両側壁から成る断面U字形のリング状に形成されたものが用いられ当該コイルエンドカバーが上記ステータの電動機軸方向両側においてそれぞれコイルエンド群を一括して覆う状態で当該コイルエンドカバーが装着されることを特徴とする請求項1または2記載の電動機の製造方法
【請求項4】
上記充填材通路は、上記コイルエンドカバーの端面壁及び側壁の少なくとも一方に設けられた貫通穴であることを特徴とする請求項3記載の電動機の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はステータのコイルエンドが伝熱性及び電気絶縁性を備えた合成樹脂製の充填材で覆われる所謂樹脂モールド式の電動機の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動機は、図5に示すように電動機シャフト1を中心として回転するロータ2と、このロータ2の外周に配置されたステータ3が、電動機軸方向の片面が開口した箱状のハウジング4に収容され、このハウジング4の開口した片面にエンドカバー5が装着されて構成される。
【0003】
ここでは、ショベルの旋回電動機のように電動機シャフト1が鉛直となる縦置き姿勢で設置される電動機であって、ハウジング4の上面側が開口し、この上面開口部にエンドカバー5が装着された電動機を例にとっている。
【0004】
以下、これを前提として、図5,6に示す従来技術、及び後述する本発明の実施形態において、電動機軸方向(電動機シャフト1の軸方向)を上下方向として説明する。また、図の上側、下側をそのまま電動機の「上」「下」として表記する。
【0005】
さらに、この明細書において、「電動機」とは、電動機と同一原理の発電機及び発電電動機を含むものとする。
【0006】
エンドカバー5は、ハウジング4の上端面に図示しないボルトによって取付けられ、電動機シャフト1の上部がこのエンドカバー5に、下部がハウジング4の下部にそれぞれ軸受6,7を介して回転自在に支持される。
【0007】
ステータ3は、電磁鋼板を積層して成るステータコア8と、このステータコア8に上下方向に巻装されたステータコイル9とによって構成される。
【0008】
ステータコイル9は、上下両側の折り返し部分であるコイルエンド9aがステータコア8の上下両端面から突出する状態で巻装される。
【0009】
樹脂モールド式の電動機においては、このコイル巻装後、ステータ3がハウジング4内に挿入され、上型から充填材(電気絶縁性と伝熱性を備えた不飽和ポリエステル等の合成樹脂材料)10が注入・充填される。
【0010】
これにより、ステータ3全体がハウジング4内に充填材10で封止固定され、ステータ3からハウジング4及びエンドカバー5への伝熱性(放熱性)が高められる。
【0011】
なお、ハウジング4には、水等の冷媒が通される冷却通路11が外周側に設けられ、この冷却通路11によってハウジング4が冷却される。冷却通路11は、図示しないポンプによって冷媒がタンク経由で循環する循環流路として構成されている。
【0012】
このような樹脂モールド式電動機において、図6に示すようにコイルエンド9aにコイルエンドカバー12を、互いの間に伝熱性を備えた樹脂層13が形成される状態で装着したものが公知である(特許文献1参照)。
【0013】
この公知技術においては、銅やアルミニウム製のリング状の薄いシート材をコイルエンド9aに被せ、コイルエンド9aの外形に沿うように断面U字形に折り曲げてコイルエンドカバー12を形成している。
【0014】
また、樹脂層13は、予めシート材の片面に溶融樹脂材を0.2mm〜0.3mmの厚みで塗布し、固化させることによってカバー内面に形成している。
【0015】
なお、公知技術においては、コイルエンドカバー12とエンドカバー5の間にさらに波型のスペースを装着しているが、本発明とは直接関係がないためここでは図示及び細かな説明を省略する。
【0016】
このように、コイルエンド9aにコイルエンドカバー12を装着することにより、上下両側それぞれのコイルエンド群について、ステータ輸送時の振動による変形や位置ずれを抑えることができるとともに、ステータ3をハウジング4内に組み込むときのハウジング4との干渉を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平10−290543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記のようにコイルエンド9aにコイルエンドカバー12を装着する構成をとる場合、両者間に空気の隙間(空隙)が生じると、この部分で伝熱抵抗が大きくなるため伝熱性が低下する。すなわち、コイルエンド群からハウジング4またはエンドカバー5への均等かつ高い放熱作用を確保できなくなる。
【0019】
ここで、公知技術によると、シート材の片面に樹脂材を薄膜状に塗布しておくことによって樹脂層13を形成するため、樹脂材の塗布ムラや、コイルエンド9aへの装着時の樹脂層13の剥離が不可避となる。
【0020】
また、コイルエンド寸法は、製作過程での個々のばらつきが大きいため、樹脂層13そのものを均一厚みに形成でき、かつ、剥離が無かったとしても、とくにコイルエンド寸法が小さい部分で樹脂層13とコイルエンド9aとの間に空隙(伝熱性が低い部分)が生じる可能性がある。
【0021】
これらの点により、公知技術によると、樹脂層13による均等な伝熱性の確保は実際には困難となり、部分的に伝熱性が低下してコイルエンド9aからハウジング4またはエンドカバー5に対する放熱性が低くなるおそれがあった。
【0022】
なお、上記空隙の防止策として、コイル巻装段階でコイルエンド寸法を厳密に管理すること、シート材への樹脂材の塗布精度を高めること、コイルエンドカバー装着段階で樹脂層13の剥離防止を講じることが考えられるが、これでは生産性が著しく低下するため現実的でない。
【0023】
そこで本発明は、高い生産性を維持しながら、コイルエンドからの均等かつ高い放熱性を確保することができる電動機を製造するための方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決する手段として、本発明においては、電動機シャフトを中心として回転するロータと、このロータの外周に配置されたステータと、当該ステータを収容するハウジングと、を備え、上記ステータは、ステータコアとステータコイルから成り、上記ステータコイルは、上記電動機シャフトの軸方向両側の折り返し部分であるコイルエンドが上記ステータコアの両端から軸方向に突出する状態でステータコアに巻装されている電動機を製造するための方法が提供される。当該方法は、上記ステータの上記両側コイルエンドに伝熱性を備えたコイルエンドカバーを装着する装着工程と、上記ハウジング内に上記ステータ及び上記コイルエンドカバーを組み込む組込み工程と、伝熱性及び電気絶縁性を備えた合成樹脂材料から成る充填材を当該充填材が上記コイルエンドを覆う状態で上記ハウジング内に注入してステータハウジング内に封止する注入工程と、を含む。上記装着工程では、上記コイルエンドカバーが上記コイルエンド表面を覆い、かつ、当該コイルエンドカバーと当該コイルエンドの表面との間に充填材が流通し得る隙間が形成される状態で、当該コイルエンドカバーが装着される。当該装着工程では、上記コイルエンドカバーとして、充填材通路を有していて当該充填材通路を通じて上記充填材が上記隙間に充填されることを可能にするものが、用いられる。上記注入工程では、上記充填材上記充填材通路を通して上記隙間に充填されることによって当該隙間に樹脂層形成される。
【0025】
この方法によれば、充填材を注入する封止工程でコイルエンドカバーがコイルエンドごと充填材で覆われると同時に、この充填材が充填材通路からコイルエンドカバー内に導入されてコイルエンドとコイルエンドカバーの間(隙間)に充填される。
【0026】
すなわち、コイルエンドとコイルエンドカバーの間に充填材が入り込む隙間さえあれば、すべてのコイルエンドについて、コイルエンドカバーとの間に樹脂層を確実に形成すること、いいかえれば空隙の発生を確実に防止することができる。
【0027】
しかも、充填材が流通し得る隙間が確保されるようにコイルエンドカバー寸法を設定しさえすれば、多少の隙間の大小(コイルエンド寸法の多少のばらつき)に関係なく確実に樹脂層を形成できるため、コイルエンド寸法等の厳密な管理が不要となるとともに、公知技術のように樹脂層を塗布形成する別工程が不要となる。このため、高い生産性を維持することができる。
【0028】
本発明において、上記コイルエンドカバーを、伝熱性及び電気絶縁性を備えた合成樹脂材によって形成するのが望ましい。
【0029】
こうすれば、コイルエンドカバーを金属(導電体)で形成した公知技術のような、コイルエンドとコイルエンドカバーの間の電気絶縁性の問題(絶縁破壊等)がなくなる。
【0030】
上記装着工程では、上記コイルエンドカバーとして、端面壁と両側壁から成る断面U字形のリング状に形成されたものが用いられ、当該エンドコイルカバーが上記ステータの電動機軸方向両側においてそれぞれコイルエンド群を一括して覆う状態で装着されるのが望ましい。
【0031】
この方法によれば、両側コイルエンド群に対するコイルエンドカバーの装着が容易となり、組立性が良いとともに、コイルエンド個々の変形や位置ずれを防止する点の効果がさらに高くなる。
【0032】
この方法では、上記充填材通路が、上記コイルエンドカバーの端面壁及び側壁の少なくとも一方に設けられた貫通穴であるのが望ましい。
【0033】
このようにコイルエンドカバーそのものに充填材通路を形成することにより、たとえばコイルエンドカバーの両側壁端とステータコアとの間に全周に亘るリング状の隙間を残して充填材通路とする場合と比較して、充填材がコイルエンドとコイルエンドカバーの間全域に満遍なく行き渡り易くなり、充填ムラによる空隙が発生しにくい。
【発明の効果】
【0034】
本発明によると、高い生産性を維持しながら、コイルエンドからの均等かつ高い放熱性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の実施形態に係る電動機の断面図である。
図2】同電動機においてコイル巻装後、ステータをハウジング内に組み込む段階を示す断面図である。
図3】組み込み後、充填材を注入する状況を示す部分拡大断面図である。
図4】本発明の第2実施形態を示す図3相当図である。
図5】従来一般的な電動機の断面図である。
図6】コイルエンドカバーを装着した公知技術の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施形態を図1図4によって説明する。
【0037】
実施形態は、背景技術の説明に合わせて、ショベルの旋回電動機のように電動機シャフトが鉛直となる縦置き姿勢で設置される樹脂モールド式の電動機を適用対象としている。
【0038】
実施形態に係る電動機において、次の点は図5,6に示す従来技術と同じである。
【0039】
(A) 電動機シャフト21を中心として回転するロータ22と、このロータ22の外周に配置されたステータ23が、上面が開口した箱状のハウジング24に収容され、このハウジング24の上面にエンドカバー25が装着されて構成される点。
【0040】
(B) エンドカバー25は、ハウジング24の上端面に図示しないボルトによって取付けられ、電動機シャフト21の上部がこのエンドカバー25に、下部がハウジング24の下部にそれぞれ軸受26,27を介して回転自在に支持される点。
【0041】
(C) ステータ23は、電磁鋼板を積層して成るステータコア28と、このステータコア28に上下方向に巻装されたステータコイル29とによって構成される点。
【0042】
(D) ステータコイル29は、上下両側の折り返し部分であるコイルエンド29aがステータコア28の上下両端面から電動機軸方向に突出する状態で巻装される点。
【0043】
(E) コイル巻装後の封止工程において、ステータ23がハウジング24内に挿入され、上型から充填材(電気絶縁性と伝熱性を備えた不飽和ポリエステル等の合成樹脂材料)30が注入・充填されることより、コイルエンド群を含めたステータ23全体が充填材30でハウジング24内に封止固定され、ステータ23からハウジング24及びエンドカバー25への伝熱性(放熱性)が高められる点。
【0044】
(F) ハウジング24の外周側部分に、水等の冷媒を循環させてハウジング24を冷却する冷却通路31が設けられる点。
【0045】
この電動機においても、図6に示す公知技術と同様に、上下両側のコイルエンド群にコイルエンドカバー32が、各コイルエンド表面を覆う状態で装着されている。
【0046】
コイルエンドカバー32は、電気絶縁性と伝熱性を備えた合成樹脂により、端面壁32aと左右両側壁32b,32bとから成る断面U字形であって、一定の剛性と弾性を備えたリング状の枠として形成され、上下両側それぞれのコイルエンド群を一括して覆う状態で装着されている。
【0047】
詳しくは、コイルエンドカバー32は、図示のように装着状態で両側壁32b,32bの先端がステータコア28の電動機軸方向端面に当接し、かつ、この状態で端面壁32a及び両側壁32b,32bとコイルエンド29aとの間に、封止工程で充填材30が流通するのに十分な隙間cが形成されるように断面サイズが設定され、封止工程に先立って両側コイルエンド群に装着される。
【0048】
このコイルエンドカバー32には、円周方向の複数個所(各コイルエンド29aに対応する位置)において、端面壁32a及び両側壁32b,32bのほぼ中央部に厚み方向に貫通する貫通穴33が設けられている。
【0049】
この貫通穴33は、封止工程においてハウジング24内に注入される充填材30が通過するのに十分な直径寸法を持った丸穴(角穴でもよい)として設けられている。
【0050】
いいかえれば、コイルエンドカバー32をコイルエンド群に装着した状態で、貫通穴33によって充填材通路が形成される。
【0051】
なお、貫通穴33は、一つのコイルエンド29aに対して各壁一つずつの割合で設けてもよいし複数ずつの割合で設けてもよい。
【0052】
図2は封止工程のはじめの段階として、コイルエンド群にコイルエンドカバー32を装着した状態でステータ23をハウジング24内に組み込む状況を示す。
【0053】
このとき、上下両側のコイルエンド群は、コイルエンドカバー32の保形作用によって真っ直ぐステータコア端面から電動機軸方向に突出する状態に保持されるため、コイルエンド29aがハウジング24と干渉して損傷したりハウジング24との間に挟まれたりするおそれがない。
【0054】
このステータ組み込み後、ハウジング上方にセットされた図示しない上型から充填材30がハウジング24内に注入・充填される。
【0055】
これにより、図1に示すようにコイルエンド群及びコイルエンドカバー32を含めたステータ23全体が充填材30でハウジング24内に封止固定され、ステータ23からハウジング24、及び封止工程後に装着されたエンドカバー25への伝熱性(放熱性)が高められる。
【0056】
図3は封止工程での充填材30の充填状況を示し、充填材30がコイルエンド29aをコイルエンドカバー32ごと覆うとともに、図中矢印で示すように貫通穴33を通ってコイルエンドカバー32内に流入し、コイルエンド29aとコイルエンドカバー32の間の隙間cにも充填される。
【0057】
すなわち、貫通穴33が充填材通路となり、同通路を通じて隙間cに充填材30が充填される。
【0058】
こうして、隙間cが充填材30が埋められて樹脂層30´が形成され、コイルエンド29aからの熱がこの樹脂層30´、コイルエンドカバー32、充填材30、ハウジング24またはエンドカバー25の経路によって外部に放散され、あるいは冷却通路31に伝達・吸収される。
【0059】
この構成によれば、すべてのコイルエンド29aについて、コイルエンドカバー32との間に良伝熱層としての樹脂層30´を確実に形成することができる。いいかえれば、伝熱抵抗の大きい空隙の発生を確実に防止することができる。
【0060】
このため、コイルエンド29aからハウジング24及びエンドカバー25、または冷却通路31への放熱性を確実に高めることができる。
【0061】
しかも、充填材30が流通し得る隙間cが確保されるようにコイルエンドカバー32の寸法を設定しさえすれば、多少の隙間cの大小(コイルエンド寸法の多少のばらつき)に関係なく樹脂層30´を確保できるため、コイルエンド寸法等の厳密な管理が不要となるとともに、公知技術のように樹脂層を塗布形成する別工程が不要となる。このため、高い生産性を維持することができる。
【0062】
また、コイルエンドカバー32を、伝熱性及び電気絶縁性を備えた合成樹脂材によって形成しているため、図6に示す、コイルエンドカバー12を金属(導電体)で形成した公知技術のような、コイルエンド9aとコイルエンドカバー12の間の電気絶縁性の問題(絶縁破壊等)がなくなる。
【0063】
さらに、コイルエンドカバー32を、端面壁32aと両側壁32b,32bから成る断面U字形のリング状に形成し、ステータ23の上下両側においてそれぞれコイルエンド群を一括して覆う状態で装着しているため、両側コイルエンド群に対するコイルエンドカバー32の装着が容易となり、組立性が良いとともに、コイルエンド個々の変形や位置ずれを防止する点の効果がさらに高くなる。
【0064】
加えて、充填材通路(貫通穴)33を、コイルエンドカバー32の端面壁32a及び両側壁32b,32b、つまりコイルエンドカバー32そのものにて設けているため、充填材がコイルエンドとコイルエンドカバーの間全域に満遍なく行き渡り易くなり、充填ムラによる空隙が発生しにくい。
【0065】
他の実施形態
(1) 充填材通路(貫通穴)33を端面壁32a及び両側壁32b,32bの一方のみに設けてもよい。
【0066】
一方、図4に示すように、両側壁32b,32bの上下方向寸法をコイルエンド29aの突出寸法よりも十分に短く設定しておくことにより、側壁先端とステータコア28の端面との間に全周に亘るリング状の隙間として形成してもよい。
【0067】
あるいは、両側壁32b,32bの先端部に切り欠きを設け、この切り欠き部分でステータコア28の端面との間に形成されるトンネル状部分を充填材通路としてもよい。
【0068】
上記リング状の隙間またはトンネル状部分によって充填材通路33を形成する場合、同通路33(充填材入口)から遠いコイルエンド端面側にも充填材30を確実に行き渡らせるために、隙間cを大きめに設定するのが望ましい。
【0069】
(2) コイルエンドカバー32を銅やアルミニウム等の導電性の金属によって形成してもよい。この場合でも、図6に示すように樹脂層13を塗布形成する公知技術と比較して、格段に高い確率で樹脂層30´を形成でき、かつ、公知技術のように装着時に剥離するおそれもないため、電気絶縁性の問題は生じない。
【0070】
(3) 本発明は、縦置き配置される電動機に限らず、横置き配置される電動機にも、また前記のように同一原理の発電機及び発電電動機にも上記同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
21 電動機シャフト
22 ロータ
23 ステータ
24 ハウジング
25 エンドカバー
26 軸受
28 ステータコア
29 ステータコイル
29a コイルエンド
30 充填材
30´ 樹脂層
32 コイルエンドカバー
32a コイルエンドカバーの端面壁
32b 同、左右両側壁
c 隙間
33 充填材通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6