(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、第1実施形態の並走車検出装置1は、第1距離センサ10R、第2距離センサ10F、報知部30、通信部40、記憶装置50、制御部60を備えている。これらの構成を備える並走車検出装置1は、車両70(
図2参照)に搭載される。
【0018】
一対の第1距離センサ10R、第2距離センサ10Fはいずれも超音波センサであり、車両の左右いずれか一方の側方且つ車両直近を、ともに検出領域とするように配置される。なお、ここでの側方は、前後方向の位置が車両の前端から後端までの範囲に限らず、車両の斜め前方(前側方)や斜め後方(後側方)も含まれる意味である。
【0019】
図2に示す第1距離センサ10R、第2距離センサ10Fの配置例では、第1距離センサ10Rは車両の右後ろのコーナー部に配置され、第2距離センサ10Fは、第1距離センサ10Rよりも車両前方、具体的には、車両の右前のコーナー部に配置されている。
【0020】
また、第1距離センサ10Rが物体を検出する第1検出領域20Rは、その第1距離センサ10Rの設置位置から車両70の右斜め後ろに向かう領域となっている。この第1検出領域20Rは、運転者にとっての死角となる領域を一部または全部含む領域である。例えば、第1検出領域20Rは、車両後方を基準の0度として40〜60度の角度で設置されていることが望ましい。
【0021】
一方、第2距離センサ10Fが物体を検出する第2検出領域20Fは、その第2距離センサ10Fの設置位置から車両70の右側方に向かう領域となっている。よって、第2検出領域20Fは、第1検出領域20Rよりも車両70の進行方向前方に位置している。
【0022】
どちらの検出領域20R、20Fも、距離センサ10R、10Rから遠ざかるほど幅方向(超音波送波方向に直交する方向)の検出範囲が広くなっている。また、これらの検出領域20R、20Fの超音波送波方向の長さは、たとえば、4m程度である。
【0023】
なお、
図2には、第1距離センサ10R、第2距離センサ10Fは、車両の右側にしか設けられていないが、左側にもこれら第1距離センサ10R、第2距離センサ10Fを設けてもよく、また、左側にのみ、これらのセンサ10R、10Fを設けてもよい。
【0024】
図1に戻り、報知部30はスピーカや表示装置であり、並走車を検出した場合に、その旨を車両70の運転者に報知する。但し、スピーカからの報知は常時ではなく、ウインカ動作時のみに限定される。通信部40はCAN80に接続されており、このCAN80を介して、他の車載機器から、車速信号、操舵角信号、ヨーレート信号など種々の信号を受信する。ウィンカ動作時であるか否かを示す信号も、このCAN80を介して受信する。
【0025】
記憶装置50は、ここではRAMを用いている。この記憶装置50には、第1距離センサ10R、第2距離センサ20Fが検出した検出距離d1、d2や、後述するフラグなどが記憶される。
【0026】
制御部60は、第1距離センサ10R、第2距離センサ10Fに送受波指示を出す。この送受波指示の周期は、たとえば、50msec周期である。また、送受波指示を出しつつ、それら第1距離センサ10R、第2距離センサ10Fから信号を取得して並走車90(
図2参照)の検出を行なう。
【0027】
並走車90を検出する処理(以下、並走車検出処理)は
図4に示すフローチャートを用いて後に詳述するが、この並走車検出処理においては、縁石等、並走車ではない物体を並走車であると判定してしまうことを抑制するための並走車判別処理を備えている。
【0028】
この並走車判別処理では、第1距離センサ10Rが物体を検知した場合に、その検知結果から即座に並走車を検出したと決定するのではなく、その物体が並走車であるか否かを判別する。
【0029】
並走車判別処理では、第1距離センサ10Rが検出した距離d1と第2距離センサ10Fが検出した距離d2とを比較して、第1距離センサ10Rが検出した物体が並走車であるか否かを判別する。
【0030】
図3Aに示す原理説明図では、車両70は縁石100と平行に走行している。第1距離センサ10Rからは、第1検出領域20Rに示す広がりで超音波が送波される。ここで、超音波の入射角と反射角とは概ね等しくなる。そのため、第1距離センサ10Rが車両70の斜め後方に向けて超音波を送波しても、送波方向の中心C1上の点P3からの反射波は第1距離センサ10Rの方向に戻らない。縁石100のように車両70の側面に平行な平面を備えている物体の場合、第1距離センサ10Rに反射波が検出されるのは、第1距離センサ10Rから縁石100の平面に垂直(すなわち車両70の幅方向)に入射した超音波が反射して生じる反射波である。よって、第1距離センサ10Rは、P1までの距離d1(以下、第1検出距離という)を検出する。
【0031】
同様の理由により、第2距離センサ10Fも、第2距離センサ10Fと車両70の前後方向における位置が一致するP2までの距離d2(以下、第2距離という)を検出する。
【0032】
また、縁石100等、車両70に平行に物体が連続して存在している場合、
図3Bに示すように、第1距離センサ10Rが出力する信号と、第2距離センサ10Fが出力する信号は、同一タイミングで送波指示を出せば、同一時期に反射波を検出する。上述の
図3A、
図3Bの技術原理を利用した並走車判別処理を行う。
【0033】
制御部60は、並走車判別処理を含む並走車検出処理S10(
図4)を車両70が前進走行しているときに継続して実行する。
【0034】
まず、ステップS11では、第1距離センサ10R、第2距離センサ10Fに対し、送受波指示を出す。
【0035】
ステップS12では、第2距離センサ10Fが物体を検出したか否かを判断する。なお、距離センサ10R、10Fが物体を検出したか否かは、制御部60が、それらのセンサ10R、10Fからの信号を取得して、取得した信号の強度から、例えば閾値判定により判断する。
【0036】
第2距離センサ10Fが物体を検出していない場合(S12:NO)、ステップS13にて未検出回数を+1にする。
【0037】
一方、第2距離センサ10Fが物体を検出した場合(S12:YES)、ステップS14にて、検出した距離(以下、第2検出距離d2)を記憶装置50に記憶するとともに、その第2検出距離d2の属する距離区分の検出回数を+1する。この距離区分は、距離センサ10R、10Fの検出距離範囲を複数に区分したものであり、たとえば、検出距離範囲0〜4mを50cm毎に区分する。
【0038】
ステップS13あるいはステップS14を実行した場合、いずれも、ステップS15を実行する。ステップS15では、縁石フラグをONにするか否かを判断する。この判断は下記式1から判断する。
(式1) (距離区分別の検出回数/(総検出回数+未検出回数))≧所定値N
上記式1において総検出回数とは、全ての距離区分における検出回数の合計値である。また、左辺の分母は一定値とする。よって、式1の左辺は、一定の処理回数のうちで同じ距離にある物体を検出した回数の比率を示している。上記式1の不等式が、いずれか少なくとも一つの距離区分において成立した場合には縁石フラグをONにし、どの距離区分でも成立しなかった場合には縁石フラグをOFFにする。縁石フラグがONである場合、同一距離区分に、縁石等の物体を継続的に検出している状態であることを意味する。
【0039】
続くステップS16では、第1距離センサ10Rが物体を検出したか否かを判断する。第1距離センサ10Rが物体を検出していない場合(S16:NO)には、ステップS17へ進み、物体を未検出と判断する。また、第1距離センサ10Rが物体を検出していても(S16:YES)、それだけでは並走車を検出したとはせず、さらにステップS18の判断を行う。
【0040】
ステップS18では、縁石フラグがONであり、且つ、第1検出距離d1が、縁石フラグONと判定した距離区分に含まれる距離であるかを判断する。なお、縁石フラグONと判定した距離区分が複数ある場合には、それら複数の距離区分をそれぞれ用いて後者の判断を行なう。
【0041】
後者の判断は、実質的に、第1検出距離d1が記憶装置50に記憶している第2検出距離d2と略等しいかを判断するものである。縁石フラグがONであり、第1検出距離d1と第2検出距離d2とが略等しければ、第1距離センサ10Rが検出した物体は、縁石等の並走車以外の物体である可能性が高い。そこで、ステップS18がYESであればステップS19へ進み、第1距離センサ10Rが検出した物体は並走車以外の物体であると判断する。
【0042】
一方、ステップS18がNOである場合には、ステップS20へ進み、第1距離センサ10Rが検出した物体は並走車であると判断する。ステップS18がNOになるのは、(1)縁石フラグがOFFの場合、(2)第1検出距離d1が、縁石フラグONの判定を行った距離区分に含まれる距離ではない場合の少なくともいずれか一方が成立したときである。(1)のときは、縁石等はないと判断していることになるので、第1距離センサ10Rが検出した物体を縁石等と判断せずに、並走車と判断するのである。また、(2)が成立する場合には、縁石等までの距離(第2検出距離d2)と、第1検出距離d1とが異なるので、第1検出距離d1のところに検出した物体は縁石等ではないと考えられる。そこで、(2)が成立する場合にも、並走車と判断するのである。
【0043】
ステップS20で並走車と判断したら、ステップS21にて、並走車を検出したことを、報知部30から報知させる。
【0044】
ステップS17、S19、S21のいずれかを実行したら、ステップS22へ進む。ステップS22では、記憶装置50に記憶されている、縁石フラグをONにするか否かの判断に用いる複数のデータのうち、最も古いデータを削除する。その後、ステップS11へ戻る。
【0045】
以上、説明した第1実施形態の並走車検出装置1は、車両70の後側方に存在する、運転者にとっての死角となる領域に位置する並走車を検出するための第1距離センサ10Rを備えるのみではなく、第2距離センサ10Fも備える。そして、第1距離センサ10Rの物体検出状況に加え、この第2距離センサ10Fの物体検出状況も用いて並走車検出処理(S10)を行なっている。この並走車検出処理においては、第2距離センサ10Fの物体検出履歴により、並走車判別条件を切り替えている。
【0046】
具体的には、第2距離センサ10Fの現在時点を最新とする所定回数分の検出履歴から、縁石等の車両70と平行に連続的に存在する物体が存在すると判断した場合(S15で縁石フラグON)、縁石等を並走車と判別してしまうことを抑制する条件に設定した第1の並走車判別条件で、第1距離センサ10Rが検出した物体が並走車かどうかの判別を行なう。すなわち、縁石等までの距離と考えられる距離区分に第1検出距離d1が入っていれば(S18:YES)、第1距離センサ10Rが物体を検出していても、その物体を並走車とは判断せず、縁石フラグがONであるが、縁石等までの距離と考えられる距離区分に第1検出距離d1が入っていなければ(S18:NO)、並走車と判断する(S20)。
【0047】
一方、車両70と平行に連続的に存在する縁石等の物体が存在しないと判断した場合(S15で縁石フラグOFF)、縁石等が存在しないとして設定した第2の並走車判別条件で、第1距離センサ10Rが検出した物体が並走車かどうかの判別を行なう。すなわち、縁石等までの距離と考えられる距離区分に第1検出距離d1が入っているか否かを問わず、第1距離センサ10Rが物体を検出していれば(S16:YES、S18:NO)、その物体を並走車と判断する(S20)。なお、これら第1、第2の並走車判別条件は、いずれも、非常に単純な判別条件であるが、いずれか一方の判別条件あるいは両方の判別条件を、より複雑な条件としても良い。
【0048】
このように、第1実施形態では、第2距離センサ10Fの物体検出履歴に基づき、縁石フラグをON/OFFしており、縁石フラグのON/OFFにより、並走車判別条件を第1の並走車判別条件とするか第2の並走車判別条件とするかを異ならせているので、やみくもに判断の回数を多く設定することなく、縁石等を並走車であると誤って判断してしまうことを抑制できる。
【0049】
(第2実施形態)
次に第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態以下の説明において、それまでに使用した符号と同一番号の符号を有する要素は、特に言及する場合を除き、それ以前の実施形態における同一符号の要素と同一の要素である。
【0050】
第1実施形態では、第1の並走車判別条件において、縁石等までの距離と考えられる距離区分に第1検出距離d1が入っているか否かを考慮する一方、第2の並走車判別条件は、それを考慮しない条件となっていた。
【0051】
これに対して、この第2実施形態では、第1の並走車判別条件および第2の並走車判別条件ともに、同一の距離区分で物体を検出した検出回数が、所定時間あるいは所定走行距離以内に、所定値を越えたことを条件とする。
【0052】
また、第1の並走車判別条件では、第1検出距離d1が第2検出距離d2と同一の距離区分である場合には、第1検出距離d1が第2検出距離d2とは異なる距離区分である場合よりも、所定値を大きくする。たとえば、第1検出距離d1が第2検出距離d2とは異なる距離区分である場合の所定値を2〜3とする一方、第1検出距離d1が第2検出距離d2と同一の距離区分である場合には、所定値を5〜6とする。
【0053】
この第2実施形態を
図4に当てはめる場合、ステップS18において、縁石フラグがONであれば上記第1の並走車判別条件を用い、縁石フラグがOFFであれば上記第2の並走車判別条件を用いることになる。
【0054】
(第3実施形態)
次に第3実施形態を説明する。第3実施形態は、機械的構成は第1実施形態と同じであり、
図1に示した構成を備える。第1実施形態との相違は制御部60の行なう制御であり、第3実施形態では、前述の
図4の処理に代えて、
図5に示す並走車検出処理S30を実行する。
【0055】
まず、ステップS31では、第1距離センサ10R、第2距離センサ10Fに対し、送受波指示を出す。ステップS32では、第2距離センサ10Fが物体を検出したか否かを判断する。
【0056】
第2距離センサ10Fが物体を検出した場合(S32:YES)、ステップS33にて、静止物フラグをONにするとともに、フラグ設定時間(中断時間に相当)を決定する。
【0057】
フラグ設定時間は、第2検出距離d2に基づいて定まるフラグ設定区間を、現在の車速で割ることにより算出する。フラグ設定区間は、2つの検出領域20R、20Fのうち前方側に位置している第2検出領域20Fに存在した静止物110(
図6A、B参照)が、車両70の前進走行により第1検出領域20Rよりも後方まで相対移動するまでの区間である。
【0058】
図6A、
図6Bに示すように、第1検出領域20R、第2検出領域20Fとも、車両70から離れるほど、車両70の前後方向の長さが長くなる。そのため、静止物110までの距離が長い場合(
図6A)に比べ、静止物110までの距離が短い場合(
図6B)は、フラグ設定区間が短くなる。制御部60は、第2検出距離d2とフラグ設定区間との関係を予め記憶しており、この関係と、第2距離センサ10Fが検出した第2検出距離d2とから、フラグ設定区間を決定する。そして、決定したフラグ設定区間を車速で割ることで、フラグ設定時間を決定する。
【0059】
ステップS33で静止物フラグをONにするとともにフラグ設定時間を決定したら、ステップS34に進む。このステップS34を実行するときは、静止物フラグがONになっているので、第2距離センサ10Fが検出した物体を並走車以外と判断する。
【0060】
続くステップS35では、フラグ残時間から送受波周期を減算する。フラグ残時間とは、フラグ設定時間から送受波周期を、逐次、引いていった時間であり、また、送受波周期は、前述したように、たとえば50msecである。さらに、ステップS35では、フラグ残時間が0となったら静止物フラグをOFFにする。このステップS35を実行した後は、ステップS31へ戻る。
【0061】
ステップS32において第2距離センサ10Fが物体を検出していないと判断した場合(S32:NO)にはステップS36に進む。そして、ステップS36にて、静止物フラグがONとなっているかを判断する。静止物フラグがONであれば、ステップS35へ進み、フラグ残時間の減算およびフラグをOFFにするかの判断を行なう。その後、ステップS31へ戻る。
【0062】
静止物フラグがOFFとなっており、ステップS36がNOとなった場合には、ステップS37で第1距離センサ10Rが物体を検出したか否かを判断する。
【0063】
第1距離センサ10Rが物体を検出した場合(S37:YES)、ステップS38にて、第1距離センサ10Rが検出した物体は並走車であると判断し、ステップS39にて、並走車を検出したことを、報知部30から報知させる。このステップS39を実行後は、ステップS31へ戻る。
【0064】
ステップS16の判断がNOの場合(第1距離センサ10Rが物体を検出していない場合)には、ステップS40へ進み、物体を未検出と判断する。その後、ステップS31へ戻る。
【0065】
以上、説明した第3実施形態によれば、第2距離センサ10Fが物体を検出した場合に(S32:YES)、この物体が静止物であるとして、この物体が第1距離センサ10Rが有する第1検出領域20Rを通過するまでの期間(フラグ設定時間)を設定する(S33)。このフラグ設定時間を経過していない間は、第1距離センサ10Rの検出結果に基づいた判断を行わないので(S36:YES)、第2距離センサ10Fが検出した静止物を並走車として検出してしまうことを抑制できる。また、フラグ設定時間以外においては、誤検出を抑制するために判断回数を多くしていないので、応答性の低下も抑制できる。
【0066】
(第4実施形態)
第4実施形態は、機械的構成は第1実施形態の構成から、第2距離センサ10Fを除いた構成である。また、制御部60は
図7に示す並走車検出処理S50を実行する。
【0067】
図7において、まず、ステップS51では、第1距離センサ10Rに対し、送受波指示を出す。ステップS52では、第1距離センサ10Rが物体を検出したか否かを判断する。
【0068】
第1距離センサ10Rが物体を検出した場合(S52:YES)、ステップS53にて、検出距離d1を記憶装置50に記憶する。次いで、第1距離センサ10Rが検出した物体が接近中か否かを判断する(ステップS54)。この判断は、第1検出距離d1の変化量Δd1(=第1検出距離d1の前回値−今回値)がD1よりも大きいか否かで判断する。
【0069】
物体が接近中と判断した場合(S54:YES)、ステップS55に進み、検出回数n1を+1する。続いて、その検出回数n1が所定の基準値N1以上となったかを判断する(ステップS56)。この判断がNOであれば、そのままステップS51へ戻る。一方、ステップS56の判断がYESであれば、並走車を検出したことを示す検出フラグをONにする(ステップS57)。なお、本実施形態では、この検出フラグがONであると、並走車を検出したことを報知部30から報知する処理を行なう。ステップS57を実行後はステップS51へ戻る。
【0070】
ステップS54で接近中ではないと判断した場合(S54:NO)、ステップS58の判断をさらに行なう。ステップS58では、第1距離センサ10Rが検出した物体が停滞中か否かを判断する。
【0071】
第1検出領域20Rに物体が存在する場合に、必ずその物体を第1距離センサ10Rで検出できれば、物体が接近してきているとき、換言すれば、第1検出領域20Rに物体が入ってくるときにその物体を検出できるので、このステップS58において、物体が停滞中か否かを判断する必要がないようにも思われる。
【0072】
しかし、他車両が後側方から接近中の場合、第1距離センサ10Rが出力する超音波は、その他車両の前側面や横側面で反射しても、入射角と反射角とが等しくなるという反射の法則から、反射方向は、ほとんどの場合、第1距離センサ10Rの方向とはならない。他車両のコーナー部付近で反射した場合には、この第1距離センサ10Rの方向に向かうこともあるが、コーナーという形状により、コーナー部で反射した場合にも、第1距離センサ10Rの方向に反射波が向かわないことも多い。このため、他車両が自車両70に接近中の状態では、この他車両を検出できず、自車両の側方に位置するようになってから、ようやく、他車両すなわち並走車90を検出できることがある。
【0073】
従って、このステップS58にて、停滞中か否かを判断するのである。停滞中か否かの判断は、Δd1の絶対値がD1以下か否かで行なう。
【0074】
停滞中であると判断した場合(S58:YES)、ステップS59へ進み、検出回数n2を+1する。その後、ステップS60の判断を行なう。
【0075】
ステップS60では、検出回数n2が所定の基準値N2以上となったかを判断する。この基準値N2は、ステップS56で用いる基準値N1よりも大きい値に設定される。たとえば、基準値N1を3とし、基準値N2を6とする。
【0076】
基準値N2を基準値N1よりも大きい値に設定するのは、検出回数n2を加算する状況は、検出した物体が並走車である可能性があるものの、並走車でない可能性も高いからである。
【0077】
たとえば、検出した物体が、電柱や縁石等の静止物である可能性もある。しかし、電柱等、道路長手方向に連続しない物体は、当然、停滞中と判断できる状態での検出回数は少ない。また、縁石等の連続的に存在する静止物は、第1検出領域20Rに入っていても、第1距離センサ10Rにより毎回検出できるのではなく、車両との距離や超音波を反射する面の向き等の影響により、比較的低い頻度で検出できることが一般的である。従って、縁石等の連続的に存在する静止物も、停滞中と判断できる状態で連続して検出できるわけではない。
【0078】
その一方で、並走車は、第1距離センサ10Rにより検出でき、且つ、自車両との距離変化が少なければ、停滞中と判断できる状態で多くの回数検出することができる。そこで、静止物を並走車と誤検出してしまうことを抑制しつつ、並走車を検出するため、検出した物体が停滞中である場合に用いる基準値N2を、基準値N1よりも大きくしているのである。
【0079】
ステップS60の判断がNOであれば、そのままステップS51へ戻る。一方、ステップS60の判断がYESであれば、並走車を検出したことを示す検出フラグをONにする(ステップS61)。検出フラグをONにしたときの処理は、ステップS57と同じである。ステップS61を実行後はステップS51へ戻る。
【0080】
ステップS52の判断がNO(第1距離センサ10Rが物体を検出していない場合)、あるいは、ステップS58の判断がNO(物体が遠ざかっている場合)であれば、ステップS62に進み、未検出回数n3を+1する。次いで、ステップS63にて、未検出回数n3が基準値N3以上となったかを判断する。この基準値N3の値はたとえば3とする。この判断がNOであれば、そのままステップS51へ戻る。一方、ステップS63の判断がYESであれば、ステップS64にて、検出フラグをOFFにし、且つ、全ての検出回数n1〜n3をリセットする。ステップS64を実行後はステップS51へ戻る。
【0081】
以上、説明した第4実施形態によれば、第1距離センサ10Rが検出した物体が停滞中であると判断できる場合には(S58:YES)、第1距離センサ10Rが検出した物体が接近中であると判断できる場合(S54:YES)よりも大きい値の第2基準値N2と比較して、その物体が並走車かどうかを判断している(S60)。これにより、停滞中と判断した物体が静止物である場合に、その静止物を並走車として検出してしまうことを抑制できる。また、第2基準値N2を用いて並走車かどうかの判断を行なうのは、その物体が停滞中と判断できる場合(S58:YES)に限っており、その物体が接近中と判断できる場合(S54:YES)には、第2基準値N2よりも小さい第1基準値N1を用いた判断を行なう(S56)ので、検出応答性の低下も抑制できる。
【0082】
(第5実施形態)
第5実施形態は、機械的構成は第1実施形態と同じであり、
図1に示した構成を備える。また、制御部60が行なう並走車検出処理は第4実施形態に類似する。
図8は、第5実施形態において実行する並走車検出処理S50−1である。
【0083】
図8に示す並走車検出処理S50−1は、第4実施形態の並走車検出処理S50に対して、ステップS52−1、S52−2が追加されている。また、
図7のステップS51に代えて、ステップS51−1を実行する。
【0084】
ステップS51−1では、第1距離センサ10Rのみではなく、第2距離センサ10Fにも送受波を指示する。
【0085】
そして、ステップS52において、第1距離センサ10Rが物体を検出したと判断した場合(S52:YES)、ステップS52−1において、第2距離センサ10Fが物体を検出したか否かをさらに判断する。第2距離センサ10Fが物体を検出していない場合(S52−1:NO)、ステップS53へ進む。
【0086】
第2距離センサ10Fも物体を検出したと判断した場合(S52−1:YES)、ステップS52−2に進み、第1検出距離d1<第2検出距離d2+αが成立するか否かを判断する。この判断は、第1距離センサ10Rが検出した物体が、第2距離センサ10Fが検出した物体よりも車両70に近いかどうか(たとえば、d1<d2−0.3m)を判断するものである。なお、αは、検出距離d1、d2の検出誤差等を考慮するための調整値である。上述したように、このステップS52−2は、第1距離センサ10Rが検出した物体が、第2距離センサ10Fが検出した物体よりも車両70に近いかどうかを判断するものであるので、検出距離d1、d2の検出誤差等によっては、αはマイナスの値の場合もある。
【0087】
上記判断に用いる第2検出距離d2は、最新の検出距離を用いても良いし、あるいは、現時点までの過去一定期間内に検出した第2検出距離d2のうちの最小値を用いてもよいし、また、過去一定期間内に検出した第2検出距離d2の平均値を用いてもよい。
【0088】
ステップS52−2がNOの場合には、第1距離センサ10Rが検出した物体は、第2距離センサ10Fが検出した物体よりも車両70からの距離が遠い物体である。第2距離センサ10Fが検出した物体が縁石等の道路長手方向に連続する物体あるとしても、また、電柱等の道路長手方向に連続しない静止物であるとしても、その物体までの第2検出距離d2よりも遠い位置にある物体は、並走車であるとは考えにくい。そこで、ステップS52−2がNOである場合には、そのままステップS51−1に戻るのである。
【0089】
これに対し、ステップS52−2がYESの場合、第1距離センサ10Rが検出した物体は、後側方から接近する2輪車である可能性がある。そこで、ステップS52−2がYESの場合には、ステップS53へ進むのである。
【0090】
以上、説明した第5実施形態によれば、運転者にとって死角となる領域に存在する並走車を検出するための第1距離センサ10Rに加えて、この第1距離センサ10Rとは異なる検出領域を持つ第2距離センサ10Fを備えている。そして、第2距離センサ10Fが物体を検出している場合には、第1距離センサ10Rが検出した物体までの第1検出距離d1が第2距離センサ10Fが検出した物体までの第2検出距離d2よりも小さい場合に限り、ステップS53以下を実行して、第1距離センサ10Rが検出した物体が並走車であるか否かを判断する。よって、自車両のすぐ側方を通過しようとする2輪車を並走車として検出しつつ、縁石や電柱等の静止物を並走車であると誤検出してしまうことを抑制できる。また、このようにして誤検出を抑制できることから、誤検出抑制のために判断回数を多くする必要性が低下するので、応答性の低下も抑制できる。
【0091】
(第6実施形態)
第4実施形態、第5実施形態において、第1基準値N1および第2基準値N2は、いずれも固定値であったが、第6実施形態では、これら第1基準値N1、第2基準値N2を変化させる。
【0092】
具体的には、ある程度の時間、例えば10分間、並走車を検出しなかった場合には、車両70が走行している道路は、複数車線ではなく1車線である可能性が高い。そこで、
図9に示すように、走行中の道路の車線数が1車線か複数車線かを判断するために設定された車線判断時間の間、並走車を検出したと判断しなかったか否かを判断する(ステップS65)。
【0093】
この判断がNOなら、そのままステップS51へ戻るが、YESなら、上記第1基準値N1、第2基準値N2を、ともに、それまでよりも大きい値に変更する(ステップS66)。第1基準値N1、第2基準値N2の具体的数値を例示すると、たとえば、第1基準値N1を3から6に、第2基準値N2を6から9に変更する。ただし、一度並走車を検知したら、第1基準値N1、第2基準値N2を変更前の値に変更する。
【0094】
第1基準値N1、第2基準値N2をそれまでよりも大きい値に変更することにより、1車線の道路を走行しており、並走車が存在しない状況において、並走車でない物体を並走車であると誤検出してしまうことを、一層抑制することができる。
【0095】
なお、上記車線判断時間は実験に基づいて設定する。また、車線判断時間に代えて、車線判断距離を設定してもよい。この車線判断距離や、変更後の第1基準値N1、第2基準値N2も実験に基づいて設定する。
【0096】
また、
図9には示していないが、第1基準値N1、第2基準値N2を変更した後、並走車を検出した場合には、第1基準値N1、第2基準値N2を元の値に戻す。
【0097】
(第7実施形態)
この第7実施形態では、第4実施形態における第1基準値N1および第2基準値N2を、車両70の車速が低いほど大きい値に設定する。
【0098】
すなわち、第7実施形態では、制御部60が備えるROM等の記憶部に車速と第1基準値N1との対応関係、および、車速と第2基準値N2との対応関係を記憶しておく。これら2つの対応関係は、車速によらず、第1基準値N1<第2基準値N2の関係が維持されるようになっており、且つ、車速が低いほど値が大きくなる関係である。ステップS56、ステップS60では、そのときの車速と上記対応関係とから決定した第1基準値N1、第2基準値N2を用いて判断を行なう。
【0099】
車速が低い場合に、車速が高いときと同じ基準値N1、N2で判断を行なうと、静止物についての検出回数n2が基準値N2以上となり、誤検出の恐れがある。また、車速が低い場合には、応答性の要求もそれほど高くない。そこで、車速が低い場合には、第1基準値N1、第2基準値N2を大きくして、応答性よりも検出精度の向上を優先させるのである。なお、この第7実施形態を第6実施形態と組み合わせて用いてもよい。
【0100】
(第8実施形態)
図10に示すように、第8実施形態では、制御部60は並走車検出部61と操舵検出部62(操舵検出手段に相当)を備える。
【0101】
操舵検出部62は、車両70の操舵状態を示す信号を検出する。操舵状態を示す信号は、たとえば、操舵角センサからの信号、ヨーレートセンサからの信号であり、これらの信号は、通信部40を介して取得する。そして、取得した信号を並走車検出部61へ出力する。
【0102】
並走車検出部61は、前述した複数の実施形態で説明した並走車検出処理のいずれかを実行する。ただし、操舵状態を示す信号が、車両70がカーブ中であることを示す場合、例えば操舵角100度より大きい場合には、第1距離センサ10Rの検出結果を破棄し、前述した実施形態において第1距離センサ10Rの検出結果を用いる処理は実行しない。併せて、第1距離センサ10Rの検出履歴も破棄する。
【0103】
カーブ中に、第1実施形態〜第7実施形態に示した並走車検出処理をそのまま実行すると、並走車でない物体を並走車として検出してしまう恐れがある。これに対して、この変形例4のようにすることで、並走車でない物体を並走車であると誤検出してしまうことを一層抑制できる。
【0104】
(第9実施形態)
第1距離センサ10R、第2距離センサ10Fの取り付け位置は、
図2に示した位置に限られない。例えば、
図11に示すように、第2距離センサ10Fも車両70の後端部に取り付けても良い。
【0105】
図11の例では、第2距離センサ10Fは、車両70の後端部において、第1距離センサ10Rよりもやや車両前方側に取り付けられている。一方、第1距離センサ10Rの取り付け位置は
図2と同じである。また、第2検出領域20Fは車両前後方向を基準とした向きは
図2と同じであり、車両側方に向かっている。一方、第1検出領域20Rは車両780の後側方に向かっている。
【0106】
(第10実施形態)
図12は第10実施形態において実行する並走車検出処理を示すフローチャートである。
図12に示すフローチャートは、ステップS31〜S36まで第3実施形態において実行する
図5と同じである。
【0107】
そして、ステップS36がNOとなった場合には、
図7(第4実施形態)のステップS52あるいは
図8(第5実施形態)のステップS52−1へ進む。
図5において、ステップS36がNOとなった場合に実行するステップS37と、
図7のステップS52あるいは
図8のステップS52−1は同一の処理である。よって、ステップS36がNOとなった場合の処理をステップS37に代えて、
図7のステップS52あるいは
図8のステップS52−1とすることができるのである。
【0108】
第10実施形態は、
図5(第3実施形態)から
図7(第4実施形態)あるいは
図8(第5実施形態)へ進むことになるので、それらの実施形態を組み合わせた効果を奏する。
【0109】
ただし、第10実施形態では、
図7、
図8を一部変更して実施する。
図13は、その変更部分を示すフローチャートである。
【0110】
第4、5実施形態では、未検出回数n3が基準値N3(たとえばN3=3)以上となった場合(S63:YES)、ステップS64を実行して検出フラグをOFFにした後は、最初のステップに戻る。すなわち、第4、第5実施形態では、検出フラグをOFFにした場合には、ステップS64で検出フラグをOFFにする前の状態が検出フラグONであってもOFFであっても、同じ処理により並走車検知を行う。
【0111】
しかし、
図3と単純に組み合わせると、第1の並走車の直後に短い車間距離で第2の並走車が走行していたとしても、第1の並走車が自車横を通過することにより、静止物フラグがONになる。そのため、ステップS36がYESとなるので、第2の並走車を検出することができない。
【0112】
そこで、この第10実施形態では、ステップS64に進んだ時点(検出フラグをOFFにする直前)の検出フラグがONであれば、
図13に示すステップS66の条件にて並走車検出判定を行う。このステップS66の判定は、第1の並走車の直後に短い車間距離で走行している第2の並走車を検出するための判定である。
【0113】
図13において、ステップS65は、
図7、
図8のステップS64の後に実行する。ステップS65では、ステップS64で検出フラグをOFFにした直前の検出フラグがONであったか否かを判断する。
【0114】
OFFであった場合(S65:NO)、並走車検出処理の最初のステップに戻る。一方、直前の検出フラグがONであった場合には(S65:YES)、ステップS66へ進む。
【0115】
ステップS66では、3回連続で次の2つの条件が成立したか否かの判断を行う。第1の条件は、第1検出距離d1の変化量Δd1(=第1検出距離d1の前回値−今回値)が−0.45(m)≦Δd1≦0.15(m)であるか否かを判断する。この判断は、第1距離センサ10Rが検出した物体までの距離(
図3Aを用いて説明したように車幅方向における距離)が前回とほとんど変化ないかどうかを判断するものであり、左辺の−0.45(m)、右辺の0.15(m)は一例である。物体が並走車であればこの第1の条件は成立することになる。
【0116】
第2の条件は、直前の並走車とほぼ同じ距離であるという条件である。この条件は、具体的一例は、第1検出距離d1が、直前の並走車の検出距離を中心として±0.15mの範囲内であるという条件である。なお、直前の並走車の検出距離は、検出フラグをONにする直前に第1距離センサ10Rが検出した距離、あるいは、検出フラグをONにする前の複数回分の、第1距離センサ10Rが検出した距離の平均値を用いる。また、第1検出距離d1についても、2回分の平均値を用いてもよい。
【0117】
このステップS66がYESとなれば、ステップS67で検出フラグをONにする。その後、再びステップS66に戻る。ステップS66がNOである場合には、ステップS68へ進む。
【0118】
ステップS68では、4回連続で次の条件が不成立となったか否かを判断する。その条件は、今回検知した第1検出距離d1が、前回の第1検出距離d1(あるいはこの
図13の処理を開始してからの複数回の第1検出距離d1の平均値)を基準として±0.15mの範囲内であることである。このステップS68は、第1距離センサ10Rの検出領域すなわち第1検出領域20Rに、並走車の可能性がある同一物体が存在しなくなったことを確認できたかどうかを判断するものである。なお、ステップS66における回数「3」やステップS68における回数「4」はもちろん一例である。ただし、ステップS68における回数はステップS66における回数よりも大きいことが好ましい。
【0119】
この第10実施形態によれば、並走車を検出した後は、一時的に、
図13のステップS66の条件で並走車判定を行うので、第1の並走車の直後に短い車間距離で走行する第2の並走車も検出することができる。
【0120】
なお、上述の説明では、
図5に、
図7あるいは
図8を組み合わせたものにおいて、
図7、8の一部を
図13のように変更していたが、
図5を組み合わせなくてもよい。この場合においても、第1の並走車の直後に短い車間距離で走行する第2の並走車を迅速に検出することができるという効果を奏する。
【0121】
(第11実施形態)
第11実施形態は、第1距離センサ10R、第2距離センサ10Fの物体検出判定に関する実施形態であり、前述の第1〜第10実施形態、および、後述する実施形態と組み合わせることができる。
【0122】
第1実施形態において説明したように、距離センサ10R、10Fが物体を検出したか否かは、距離センサ10R、10Fの信号の強度と閾値との比較により行う。これまでの実施形態において上記閾値は、上記信号を増幅する回路のゲイン(以下、回路ゲイン)が固定である場合には、
図14に概念図を示すように、超音波を出してから時間の経過に従い段階的に減少する閾値を用いることができる。
【0123】
閾値を段階的に減少させているのは、物体が存在していたとしても、遠いほど(すなわち反射波を検出するまでの時間が長いほど)、距離減衰が大きく反射波は弱くなるため、閾値も時間の経過とともに段階的に減少させるのである。このように段階的に変化する閾値を、時間経過により一義的に定まる値にしてもよい。
【0124】
一方、回路ゲインが、距離減衰を補正する構成になっている場合、すなわち、超音波を送信してからの時間経過に伴い回路ゲインが大きくなる構成である場合には、
図14の例とは異なり、閾値を段階的に変化させる必要はない。
【0125】
回路ゲインを固定する構成であるか、距離減衰は補正する構成であるかによらず、この第11実施形態では、上記閾値を、遠い側(換言すれば、超音波を出力してからの時間が長い側)の閾値については車速が高い場合には小さくする。
【0126】
これにより、車速が高い場合には、他車両を早期に検出することができる。なお、他車両に限らず、路面反射も距離センサ10には検出され、この路面反射の強度が大きいと、それを物体として誤検出してしまう恐れがある。しかし、車速が高い場合には、路面反射は相対速度が大きい、即ち、送信周波数との周波数差が大きい。また、距離センサ10は一般に共振型が用いられる。そのため、送信周波数との周波数差が大きいほど、すなわち、車速が高いほど、路面反射の信号強度は低下する。よって、車速が高い場合に閾値を小さくすることで、誤検出を抑制しつつ、他車両を早期に検出することができる。車速が低い場合にまで閾値を小さくしてしまうと、悪路において誤検知のリスクが高まるので、車速が低い場合の閾値は、車速が高い場合に比較して大きい値としておく。
【0127】
所定距離よりも遠ければ遠い側とし、どの距離以上を遠い側とするか、すなわち、超音波を出力してからの時間が長い側をどの時点以降とするかは実験に基づき適宜設定する。低下後の閾値も予め設定しておけばよい。車速が高いことの判断は、基準車速よりも現在の車速が高いか低いかにより判断する。基準車速は、たとえば、高速走行を判断できるような速度(80km/hなど)とする。
【0128】
(第12実施形態)
今までの説明は走行中並走車検出処理であった。これに対して、第12実施形態は停車中に並走車を検出する。停車中、すなわち、自車両が走行していない状態における並走車とは、自車両のすぐ側方(隣接車線に存在する他車両よりも近い距離)に存在する2輪車を意味する。
【0129】
第12実施形態では、
図15に示すように、第1実施形態の構成(
図1)に加えて第3距離センサ10Mを備える。第3距離センサ10Mは、所謂バックソナーであり、通常、複数個備えられている。ただし、一つのみであってもよい。また、この実施形態では、通信部40、CAN80を介して車速を取得する。
【0130】
図16は、第1、第2、第3距離センサ10R、10F、10Mのそれぞれの検出領域20R、20F、20Mを例示している。第3距離センサ10Mの検出領域20Mは、車幅方向については、自車両の真後から後ろ側方にかけての領域であり、車両前後方向については、自車両の後方直近の領域である。
【0131】
この
図16から分かるように、自車両の真後ろを走行する後続車120は、第1距離センサ10Rおよび第3距離センサ10Mの両方により検出される。また、このとき、両センサ10R、10Mによる検出距離d1、d3はほぼ一致する。第12実施形態では、この特徴を利用して、後続車120と並走車140(
図18)を区別する。
【0132】
図17は、
図16の状態における第1、第2、第3距離センサ10のセンサ出力を示す図である。なお、
図17および後で示す
図19は、反射波のみを概念的に示した図であり、実際には、
図3Bに示したように、送信波や、送信波と反射波との間の、小さい信号などが観測できる。
【0133】
図17からも、後続車120が存在する場合には、第1距離センサ10Rによる検出距離d1と第3距離センサ10Mによる検出距離d3はほぼ一致することが分かる。
【0134】
図18は、自車両とガードレール130との間を、並走車(二輪車)140がすり抜けようとしており、現時点ではその並走車140は自車両の死角領域に存在している状態を示している。
【0135】
図19は、
図18の状態における第1、第2、第3距離センサ10R、10F、10Mのセンサ出力を示す図である。
図19から分かるように、並走車140が自車両とガードレール130の間に存在する場合には、第1距離センサ10Rによる検出距離d1は第2、第3距離センサ10Mによる検出距離d2、d3よりも短い。
【0136】
図20は、第12実施形態において走行中に実行する処理S70である。ステップS71では、第1、第2、第3距離センサ10R、10F、10Mに対して送受波指示を出す。ステップS72では、第1距離センサ10Rの検出距離d1を記憶装置50に記憶する。なお、記憶数が上限値となった場合には、最も古いデータを破棄し、代わりに、今回の第1検出距離d1を記憶する。
【0137】
ステップS73では、これまでの実施形態で説明した、走行中の並走車検出処理を実行することで、並走車の判別・報知を行う。
【0138】
図21は、停車を検知したら開始する処理S80である。なお、停車の検知はCAN80、通信部40を介して取得する車速を用いて行う。
【0139】
ステップS81では、第1、第2、第3距離センサ10R、10F、10Mに対して送受波指示を出す。ステップS82では、第1距離センサ10Rが物体を検出したか否かを判断する。第1距離センサ10Rが物体を検出していない場合(S82:NO)には、ステップS81へ戻る。第1距離センサ10Rが物体を検出していれば(S82:YES)、ステップS83へ進む。
【0140】
ステップS83では、記憶装置50に記憶されている第1検出距離d1と、今回検出した第1検出距離d1との間に差異があるか否かを判断する。この判断は、ステップS82で検出したと判断した物体が、走行中からずっと検出している物体であるか否かを判断するものである。
【0141】
記憶装置50に記憶されている第1検出距離d1と、今回検出した第1検出距離d1との差が検出誤差をもとに設定されている基準値よりも小さい場合には、差異がないと判断する。記憶装置50に記憶されている第1検出距離d1は、走行中からずっと検出している物体の距離を示すようになっていればよい。たとえば、停車を検知した時点を期間の終了時点とする過去一定期間の値の平均値や、過去一定数の平均値などを用いる。また、最新の1つの値のみを用いてもよい。
【0142】
差異がない場合には、第1距離センサ10Rが検出した物体は、走行中からずっと検出している物体であることになる。差異がないと判断した場合には(S83:NO)、ステップS86へ進む。
【0143】
差異がある場合には、第1距離センサ10Rが検出した物体は、走行中は検出していなかった物体であることになる。差異があると判断した場合には(S83:YES)、ステップS84へ進む。
【0144】
ステップS84では、直前のステップS81の処理の結果として得た第1検出距離d1と第3検出距離d3とが同じか否かを判断する。前述したように、ステップS84に進んだ場合、第1距離センサ10Rが検出した物体は、走行中は検出していなかった物体である。つまり、第1距離センサ10Rが検出した物体は移動物体であることになる。自車両が道路で停車中の状態における移動物体は、後続車、並走車、隣接車線を自車両の横まで走行してくる他車両のいずれかであると考えられる。このうち、後続車のみが第1検出距離d1と第3検出距離d3が同じになる。なお、同じとは、完全に同一である場合のみではく、実質的に同一、換言すれば、ほぼ同一も含む。ほぼ同一か否かは、第1検出距離d1と第3検出距離d3との差が、検出誤差を考慮した判定値よりも小さいか否かで判断する。
【0145】
ステップS84の判断がYESである場合、ステップS85へ進み、第1距離センサ10Rが検出した物体は後続車であると判断する。
【0146】
ステップS84の判断がNOである場合には、ステップS86へ進む。ステップS86へ進むのは、第1距離センサ10Rが検出した物体を、(1)走行中から検出していた場合(S83:NO)、あるいは、第1距離センサ10Rが検出した物体が、(2)
図18の状態にある並走車140または(3)隣接車線を自車両の横まで走行してくる他車両である場合(S84:NO)ということになる。また、(1)の走行中から検出している物体としては、(1−1)ガードレール130などの静止物、あるいは、(1−2)先の実施形態で述べた停滞中の状態にある並走車が考えられる。これら(1−1)、(1−2)、(2)、(3)のうち、停車中に報知する必要があるのは、(1−2)、(2)であり、(1−1)、(3)については報知する必要はない。(1−2)、(2)はいずれも第1検出距離d1<第2検出距離d2が成立する一方、(1−1)、(3)はいずれも第1検出距離d1<第2検出距離d2が成立しない。
【0147】
そこで、ステップS86では、第1検出距離d1<第2検出距離d2が成立するか否かを判断する。なお、第2検出距離d2には、直前のステップS81の処理により検出された距離を用いるが、第2距離センサ10Fが物体を検出しなかった場合には、停車前に検出した第2検出距離d2を用いる。なお、停車前の第2検出距離d2を用いる場合には、
図20のステップS72で、第2検出距離d2も記憶装置50に記憶する。
【0148】
ステップS86の判断がNOであれば、第1距離センサ10Rが検出した物体は、(1−1)ガードレール130などの静止物、あるいは、(3)隣接車線を自車両の横まで走行してくる他車両である可能性が高い。そこで、ステップS87に進んで、物体を未検出と判断し、ステップS81へ戻る。
【0149】
ステップS86の判断がYESであれば、第1距離センサ10Rが検出した物体は、(1−2)停滞中の状態にある並走車、あるいは、(2)
図18の状態にある並走車140であると考えられる。そこで、ステップS88に進んで、並走車と判断し、次いで、ステップS89に進み、並走車を検出したことを、報知部30から報知させる。
【0150】
以上、説明した第12実施形態では、停車中において、自車両のすぐ側方に存在する2輪車を並走車として検出して(S88)、報知する(S89)ことができる。停車中においては、後続車120を並走車140として誤検出してしまう恐れがあるが、この第12実施形態では、後続車120であれば第1検出距離d1と第3検出距離d3とがほぼ等しいことから、第1検出距離d1と第3検出距離d3とを比較して、後続車120を判別している(S84)。よって、後続車を並走車として誤検出してしまうことを抑制できる。
【0151】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0152】
たとえば、前述の実施形態では、第1検出領域20Rと第2検出領域20Fは全く重複していなかったが、一部が互いに重複していてもよい(第13実施形態)。
【0153】
また、第3実施形態において、フラグ設定時間に代えてフラグ設定区間(中断距離に相当)を用いてもよい(第14実施形態)。フラグ設定区間を用いる場合、ステップS33でフラグ設定区間を決定し、ステップS35で、フラグ設定時からの走行距離をフラグ残区間から減算する。そして、残区間が0ならフラグOFFとする。
【0154】
また、第1距離センサ10R、第2距離センサ10Fは、超音波式に限定されず、電磁波式、光式などであってもよい(第15実施形態)。