特許第6182994号(P6182994)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6182994-無電解メッキ液の再生方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182994
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】無電解メッキ液の再生方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/36 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   C23C18/36
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-127666(P2013-127666)
(22)【出願日】2013年6月18日
(65)【公開番号】特開2015-1020(P2015-1020A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232863
【氏名又は名称】三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097928
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 数彦
(72)【発明者】
【氏名】▲真▼田 千穂
(72)【発明者】
【氏名】石井 喜樹
【審査官】 内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−195669(JP,A)
【文献】 特開2009−185338(JP,A)
【文献】 特開2010−229449(JP,A)
【文献】 特開平11−262641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C18/00−20/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次亜リン酸塩を還元剤として含有する無電解メッキ浴において、劣化したメッキ液を両性イオン交換樹脂の充填塔に通液し、亜リン酸イオン濃度が高い画分を除去し、次亜リン酸イオン濃度が高い画分を前記メッキ浴に戻すことを特徴とする無電解メッキ液の再生方法。
【請求項2】
亜リン酸が蓄積してメッキ浴中の濃度が少なくとも0.5mol/Lになったときに両性イオン交換樹脂の充填塔に通液する請求項1記載の再生方法。
【請求項3】
劣化したメッキ液の通液速度が空間速度(SV)として2.0〜6.0(hr−1)の範囲から選択される請求項1又は2に記載の再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電解メッキ液の再生方法に関し、詳しくは、還元剤として次亜リン酸塩を含有する無電解メッキ液の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無電解メッキ液の1つとして、還元剤に次亜リン酸塩を使用したものが広く使用されている。斯かるメッキ液は、メッキ槽内に入れられて無電解メッキ浴として使用されるが、長期間使用すると、還元剤である次亜リン酸イオンが酸化して亜リン酸イオンとなって蓄積し、メッキ液の性能が劣化する。そこで、メッキ液中の不要成分である亜リン酸イオン等を除去して再生する方法が提案されている。例えば、電気透析法を利用した方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−37573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、次亜リン酸塩を還元剤として含有し、次亜リン酸塩の酸化によって亜リン酸が生成して蓄積した無電解メッキ液から亜リン酸を効果的に除去して無電解メッキ液を効率よく再生することができる無電解メッキ液の再生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく検討を重ねた結果、亜リン酸イオンと次亜リン酸イオンとは、イオン的性質が類似しているにも拘わらず、吸着剤として両性イオン交換樹脂を使用し、溶離剤として水を使用した、簡単な手法のイオンクロマトグラフにより、それぞれ高濃度の画分として分離可能であるとの知見を得た。
【0006】
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は、次亜リン酸塩を還元剤として含有する無電解メッキ浴において、劣化したメッキ液を両性イオン交換樹脂の充填塔に通液し、亜リン酸イオン濃度が高い画分を除去し、次亜リン酸イオン濃度が高い画分を前記メッキ浴に戻すことを特徴とする無電解メッキ液の再生方法に存する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、無電解メッキ液の再生が図られる。その結果、薬品の補充量を抑えて経費の節減が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1における流出分中の亜リン酸イオン及び次亜リン酸イオンの各濃度と流出水量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
<無電解メッキ液>
【0011】
本発明においては、次亜リン酸塩を還元剤として含有する公知の各種の無電解メッキ液を再生対象とすることが出来る。無電解メッキ液は、金属の供給源として、硫酸ニッケル等のニッケル塩、硫酸銅等の銅塩、シアン化金カリウム等の金塩などの1種を含有する。また、金属イオンの錯化剤として、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸、EDTA等の有機酸、安定剤として、鉛やビスマスなどの負触媒金属などを含有し、更に、必要に応じて、析出促進剤などを含有する。その組成は、特に制限されず、公知の各種組成の無電解メッキ液を処理対象とすることができる。
【0012】
<両性イオン交換樹脂>
両性イオン交換樹脂としては、特に制限されず、従来公知の樹脂を使用することが出来る。両性イオン交換樹脂は、イオン・リターデーションを利用する分離における分離剤として知られている。すなわち、両性イオン交換樹脂は、同一樹脂内の陽イオン交換基と陰イオン交換基とによって内部塩を形成し、イオン排除とは反対に電解質を非電解質よりも強く吸着する性質を有し、電解質と非電解質(例えば食塩と糖)とを分離し得る性質を有する。そして、水で溶離展開を行うと、電解質は、吸着力が強いために非電解質よりも遅れて溶離される(イオン・リターデーション)。
【0013】
本発明において、両性イオン交換樹脂としては、以下の式(1)で表されるイオン交換基を有するイオン交換樹脂が好適に使用される。
【0014】
【化1】
【0015】
上記の式(1)において、R1及びR2は各々メチル基、m及びnは各々1の整数であることが好ましい。斯かるイオン交換樹脂は、例えば、スチレンとジビニルベンゼンとの共重合体の様な芳香族架橋共重合体の芳香核に上記のイオン交換基を直接結合したグリシン型両性イオン交換樹脂として公知であり、「ダイヤイオン(登録商標)AMP03」(三菱化学社製品)として市販されている。斯かるグリシン型両性イオン交換樹脂は、ハロメチル基を有する芳香族架橋共重合体とN,N−ジメチルグリシン誘導体とを反応させた後に加水分解することによって得られる。
【0016】
また、両性イオン交換樹脂は、例えば、三次元構造の陰イオン交換樹脂に酸性基を持った単量体(例えばアクリル酸)と重合開始剤とを吸収させて陰イオン交換樹脂の三次元構造の内部で重合させることによっても得ることが出来る。斯かる方法で得られる両性イオン交換樹脂はスネークケージ型両性イオン交換樹脂と呼ばれ、次の様な構造的特徴を備えている。例えば、上記の例の場合は、陰イオン交換樹脂樹脂の三次元構造の中に陽イオン交換基がヘビの様に絡まった状態で結合している。従って、陽イオン交換基と陰イオン交換基とが独立して別々に存在する。
【0017】
<通液処理>
本発明においては、性能の劣化したメッキ液を両性イオン交換樹脂の充填塔に通液する。メッキ液の劣化の判断は適宜行うことが出来るが、亜リン酸が蓄積してメッキ浴中の濃度が少なくとも0.5mol/Lになったときに劣化と判断して通液を開始するのが好ましい。
【0018】
両性イオン交換樹脂の充填塔に通液する1回の通液量(原液負荷量)は、両性イオン交換樹脂の容積に対する割合(BV:BEDVOLUME)として、通常0.1〜1.0BV、好ましくは0.2〜0.6BVの範囲から選択される。単位は「L/L−R」である。また、通液速度は、空間速度(SV)として、通常2.0〜6.0(hr−1)、好ましくは2.0〜4.0(hr−1)の範囲から選択される。通液温度は、通常10〜80℃、好ましくは20〜40℃である。
【0019】
上記の通液処理により、亜リン酸イオンに富む画分と次亜リン酸イオンに富む画分とに分離される。すなわち、両者を脱塩水によって溶離させることが出来、亜リン酸イオンに富む画分が先に溶出し始める。亜リン酸イオンに富む画分は、原液負荷量によって異なるため、適宜の範囲を選択する必要があるが、原液負荷量が例えば0.1〜1.0BVの場合、亜リン酸イオンに富む画分は0.3〜0.8BVである。
【0020】
本発明においては、亜リン酸イオンに富む画分を除去し、次亜リン酸イオン濃度が高い画分を前記メッキ浴に戻すことにより、無電解メッキ液の再生が図られる。その結果、薬品の補充量を抑えて経費の節減が図られる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0022】
実施例1:
性能の劣化したメッキ液の試料(原液)として、亜リン酸イオン0.5mol/L、次亜リン酸イオン0.5mol/Lの混合液を使用した。両性イオン交換樹脂の充填塔は、内径20mmのガラス製カラムに、ダイヤイオン(登録商標)AMP03(三菱化学社製品)314mLを充填して準備した。
【0023】
先ず、原液94.2mlをカラムの塔頂から通液した。原液負荷量は0.3BVであり、通液速度(SV)は3(hr−1)(15.7ml/min)、通水温度は25℃とした。次に、脱塩水を上記と同様な条件で通水し、カラムの排出側にてフラクションを採取、イオンクロマトグラフィーにて分析し、流出分中の亜リン酸イオン及び次亜リン酸イオンとを測定した。分析条件は次のとおりである。
【0024】
カラム :DIONEX AG19、AS19
溶離液 :KOH
10mmol/L (0−10min)
10−5mmol/L(10−30min)
55mmol/L (30−35min)
流速 :1.0mL/min
カラム温度 :35℃
検出器 :電気伝導度
保持時間 :次亜リン酸 6min
:亜リン酸 21min
【0025】
図1に、流出分中の亜リン酸イオン及び次亜リン酸イオンの各濃度と流出水量との関係を示す。図1中、横軸は脱塩水の通液量(BV)(L/L−R)であり、縦軸は、流出分中の亜リン酸イオン及び次亜リン酸イオンの濃度(mol/L)である。
【0026】
図1に示す結果から、溶離液である脱塩水の通液量が約0.3〜0.8BV程度の範囲は亜リン酸イオン濃度の高い画分であることが分かる。従って、この亜リン酸イオン濃度の高い画分を除去し、次亜リン酸イオン濃度の高い画分をメッキ浴に戻すことにより、メッキ浴の再生が可能である。
図1