(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の集電体コート用組成物は、燃料電池や空気電池の触媒電極に使用される、ガス透過性集電体のコート層を形成するためのものである。
触媒電極は、下記の構成をとることが一般的である。
例えば、ガス透過性の集電体の表面に、
(1)触媒層を直接設けた触媒電極や、
(2)触媒層との間に導電撥水層を設けた触媒電極、
による電極構成であり、触媒層や導電撥水層は、それぞれに必要な材料を液状媒体などに分散した分散体を作製し、塗工することで所定の電極を形成することが可能である。
【0017】
電池の耐久性を向上させるためには、集電体の表面に、炭素材料と水性樹脂型分散剤と水性液状媒体とを含有する集電体コート用組成物を用いて集電体表面にコート層を形成し、該コート層上に、上記の触媒層、あるいは導電撥水層を形成する分散体を塗工し、電極を得ることが出来る。
本発明の集電体コート用組成物は、炭素材料の分散性に優れるため、多孔性の形状である、後述のガス透過性集電体の表面を均一にコートでき、集電体への密着性に優れ、耐水性に優れるコート層を形成することが可能である。
また、本発明の集電体コート用組成物から形成された集電体コート層は、耐水性に優れ、集電体との密着性に優れる。
【0018】
<水性樹脂型分散剤(B)>
本発明の集電体コート用組成物で使用される水性樹脂型分散剤(B)は、炭素材料に対して分散剤として有効に機能し、炭素材料の凝集を緩和することが出来る。
そこで、まず本発明における水性樹脂型分散剤(B)について説明する。
本発明における水性樹脂型分散剤(B)は、芳香環、及び脂肪族骨格の少なくとも一方を有するエチレン性不飽和単量体(b1)と、酸性官能基を有するエチレン性不飽和単量体(b2)と、を必須成分とする共重合体である。
水性樹脂型分散剤(B)は、酸性官能基の少なくとも一部を塩基性化合物で中和したものであることが好ましい。
【0019】
<単量体(b1)>
芳香環、及び脂肪族骨格の少なくとも一方を有するエチレン性不飽和単量体(b1)としては、芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(b1−1)、脂肪族骨格を有するエチレン性不飽和単量体(b1−2)、及び、芳香環と脂肪族骨格の両方を有するエチレン性不飽和単量体が挙げられる。これらは単独もしくは2種類以上を併用して使用することができる。
芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(b1−1)としては、芳香環を有しているものであれば特に限定されない。例えば、スチレン、α−メチルスチレンもしくはベンジル(メタ)アクリレート等を例示することが出来る。
【0020】
脂肪族骨格を有するエチレン性不飽和単量体(b1−2)としては、脂肪族骨格を有しているものであれば特に限定されない。脂肪族骨格としては、飽和または不飽和の炭化水素基、及び1つ以上のヘテロ原子によって結合された飽和または不飽和の炭化水素である脂肪族基等があげられるが、その中でも、飽和炭化水素基、及びエーテル結合を有する飽和脂肪族基が好ましい。
【0021】
飽和炭化水素基としては、鎖式飽和炭化水素基と環式飽和炭化水素基が挙げられる。
鎖式飽和炭化水素基を有する単量体としては、具体的に例示すると、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートがあり、好ましくは炭素数2〜12、さらに好ましくは炭素数3〜8のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのアルキル基は分岐していてもよく、具体例としては、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ブチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、α−オレフィン化合物としては、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン等が挙げられる。
【0022】
環状飽和炭化水素基を有する単量体としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
エーテル結合を有する飽和脂肪族基としてはポリオキシアルキレン構造が挙げられる。ポリオキシアルキレン構造を有する単量体の具体例としては、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の、末端に水酸基を有し、ポリオキシアルキレン鎖を有するモノアクリレートまたはモノメタアクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、及びメトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の、末端にアルコキシ基を有し、ポリオキシアルキレン鎖を有するモノアクリレートまたはモノメタアクリレートがある。また、アルキルビニルエーテル化合物としては、ブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0024】
また、エーテル結合を有する飽和脂肪族化合物は環式でもよく、具体例としては、グリシジル(メタ)クリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
<単量体(b2)>
酸性官能基を有するエチレン性不飽和化合物(b2)が有する酸性官能基としては、例えばカルボキシル基、スルホ基、リン酸基等を挙げることができ、これらのアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩も使用することができる。
【0026】
カルボキシル基を有する単量体としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、または、これらのアルキルもしくはアルケニルモノエステル、フタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、イソフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、テレフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、コハク酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸等を例示することが出来る。特にメタクリル酸、アクリル酸が好ましい。
【0027】
スルホ基を有する単量体としては、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリロイルオキシエチルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルオキシベンゼンスルホン酸等が挙げられる。
【0028】
リン酸基を有する単量体としては、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジフェニル(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、ジフェニル(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート、フェニル(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、アシッド・ホスホオキシエチルメタクリレート、メタクロイル・オキシエチルアシッドホスフェート・モノエタノールアミン塩、3−クロロ−2−アシッド・ホスホオキシプロピルメタクリレート、アシッド・ホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート、アシッド・ホスホオキシポリオキシプロピレングリコールメタクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシ−3−ヒドロキシプロピルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアシッドホスフェート、アリルアルコールアシッドホスフェート等が挙げられる。
【0029】
<単量体(b3)>
前記(b1)〜(b2)以外のその他の単量体(b3)は、特に限定されないが、例えば下記のものが挙げられる。
【0030】
水酸基含有の単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、アリルアルコール等が挙げられる。
【0031】
窒素含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル−(メタ)アクリルアミド等のモノアルキロール(メタ)アクリルアミド、
N,N−ジ(メチロール)アクリルアミド、N−メチロール−N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メトキシメチル)アクリルアミド等のジアルキロール(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系不飽和化合物を例示できる。
【0032】
更にその他の不飽和化合物としては、パーフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基を有するパーフルオロアルキルアルキル(メタ)アクリレート類;
パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、パーフルオロデシルエチレン等のパーフルオロアルキル、アルキレン類等のパーフルオロアルキル基含有ビニルモノマー、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラノール基含有ビニル化合物及びその誘導体などを挙げることができ、これらの群から複数用いることができる。
【0033】
アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノスチレン、ジエチルアミノスチレン等が挙げられる。
【0034】
その他の単量体(b3)の中でも、好ましくはアミノ基を有するエチレン性不飽和単量体である。
【0035】
<単量体(b1)〜(b3)の構成比、及び機能>
本発明で用いられる水性樹脂型分散剤(B)中の共重合体を構成する単量体の比率は、単量体(b1)〜(b3)の合計を100重量%とした場合に、
芳香環及び脂肪族骨格の少なくとも一方を有するエチレン性不飽和単量体(b1):10〜90重量%
酸性官能基を有するエチレン性不飽和単量体(b2):10〜90重量%
前記(b1)〜(b2)以外のその他の単量体(b3):0〜80重量%
好ましくは、(b1):15〜70重量%、(b2):15〜70重量%、(b3):1〜70重量%である。
より好ましくは、(b1):30〜70重量%、(b2):15〜50重量%、(b3):1〜40重量%である。
【0036】
芳香環及び脂肪族骨格の少なくとも一方を有するエチレン性不飽和単量体(b1)由来の芳香環や脂肪族骨格が、後述する炭素材料(A)への主たる吸着部位となると推測している。アミノ基を有するエチレン性不飽和単量(b3)を含む場合は、アミノ基も炭素材料(A)への吸着部位となるため好ましい。
また、酸性官能基を有するエチレン性不飽和単量体(b2)は、共重合体を水性液状媒体に溶解ないし分散させる機能を担う。酸性官能基を中和した場合、その効果がより大きくなるため好ましい。
そして、炭素材料(A)に、芳香環や脂肪族骨格を介してコポリマーが吸着し、好ましくは中和され、イオン化された酸性官能基の電荷反発により、炭素材料(A)の水性液状媒体中における分散状態を安定に保つことが出来るようになったものと考察される。
【0037】
上記単量体(b1)〜(b3)を共重合してなる共重合体の分子量は特に制限はないが、水性樹脂型分散剤(B)の固形分20%水溶液における粘度が、好ましくは5〜100,000mPa・sであり、さらに好ましくは10〜50,000mPa・sである。所定範囲の粘度より低く、水性樹脂型分散剤(B)の分子量が小さすぎる場合、あるいは所定範囲の粘度より高く、水性樹脂型分散剤(B)の分子量が大きすぎる場合には、炭素材料(A)の分散不良を引き起こす可能性がある。
尚、本発明における粘度とは、B型粘度計を用いて25℃の条件下で測定した値である。
【0038】
水性樹脂型分散剤(B)の酸価は、50mgKOH/g以上400mgKOH/g以下の範囲であることが好ましく、更には、酸価が80mgKOH/g以上300mgKOH/g以下の範囲であることが好ましい。
水性樹脂型分散剤(B)の酸価が上記した範囲よりも低いと分散体の分散安定性が低下し、粘度が増加する傾向がある。また、水性樹脂型分散剤(B)酸価が上記した範囲より高いと、炭素表面に対する水性樹脂型分散剤(B)の付着力が低下し、分散体の保存安定性が低下する傾向がある。
尚、本発明における水性樹脂型分散剤(B)の酸価は、JIS K 0070の電位差滴定法に準拠し、測定した酸価(mgKOH/g)を固形分換算した値である。
【0039】
<製造方法>
水性樹脂型分散剤(B)は、種々の製造方法で得ることができる。
例えば、上記単量体(b1)〜(b3)を、水と共沸し得る有機溶剤中で重合する。その後、水に代表される水性液状媒体と、好ましくは中和剤とを加えて酸性官能基の少なくとも一部を中和し、共沸可能な溶剤を留去し、水性樹脂型分散剤(B)の水溶液ないし水性分散液を得ることができる。
重合時の有機溶剤としては、水と共沸するものであれば良いが、コポリマーに対し溶解性の高いものが良く、好ましくはエタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールがあり、さらに好ましくは1−ブタノールがある。
【0040】
あるいは、親水性有機溶剤中で共重合し、水と、好ましくは中和剤を加えて中和し、親水性有機溶剤は留去せず、親水性有機溶剤と水とを含む水性液状媒体に、水性樹脂型分散剤(B)が溶解ないし分散した液を得ることができる。
この場合、用いられる親水性有機溶剤としては、コポリマーに対し溶解性の高いものが良く、好ましくはグリコールエーテル類、ジオール類、さらに好ましくは(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル、炭素数3〜6のアルカンジオール類が良い。
【0041】
コポリマーの中和に使用される中和剤としては、下記のものが挙げられる。
例えば、アンモニア水、ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等の無機アルカリ剤、有機酸や鉱酸等を使用することができる。上記したようなコポリマーは、水性液媒体中に、分散又は溶解される。
【0042】
<炭素材料(A)>
本発明における炭素材料(A)としては、導電性を有する炭素材料であれば特に限定されるものではないが、グラファイト、カーボンブラック、導電性炭素繊維(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンファイバー)、フラーレン等を単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。導電性、入手の容易さ、およびコスト面から、カーボンブラックの使用が好ましい。
【0043】
カーボンブラックとしては、気体もしくは液体の原料を反応炉中で連続的に熱分解し製造するファーネスブラック、特にエチレン重油を原料としたケッチェンブラック、原料ガスを燃焼させて、その炎をチャンネル鋼底面にあて急冷し析出させたチャンネルブラック、ガスを原料とし燃焼と熱分解を周期的に繰り返すことにより得られるサーマルブラック、特にアセチレンガスを原料とするアセチレンブラックなどの各種のものを単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。また、通常行われている酸化処理されたカーボンブラックや、中空カーボン等も使用できる。
【0044】
カーボンの酸化処理は、カーボンを空気中で高温処理したり、硝酸や二酸化窒素、オゾン等で二次的に処理したりすることより、例えばフェノール基、キノン基、カルボキシル基、カルボニル基の様な酸素含有極性官能基をカーボン表面に直接導入(共有結合)する処理であり、カーボンの分散性を向上させるために一般的に行われている。しかしながら、官能基の導入量が多くなる程カーボンの導電性が低下することが一般的であるため、酸化処理をしていないカーボンの使用が好ましい。
【0045】
用いるカーボンブラックの比表面積は、値が大きいほど、カーボンブラック粒子同士の接触点が増えるため、電極の内部抵抗を下げるのに有利となる。具体的には、窒素の吸着量から求められる比表面積(BET)で、20m
2/g以上、1500m
2/g以下、好ましくは50m
2/g以上、1500m
2/g以下、更に好ましくは100m
2/g以上、1500m
2/g以下のものを使用することが望ましい。比表面積が20m
2/gを下回るカーボンブラックを用いると、十分な導電性を得ることが難しくなる場合があり、1500m
2/gを超えるカーボンブラックは、市販材料での入手が困難となる場合がある。
【0046】
また、用いるカーボンブラックの粒径は、一次粒子径で0.005〜1μmが好ましく、特に、0.01〜0.2μmが好ましい。ただし、ここでいう一次粒子径とは、電子顕微鏡などで測定された粒子径を平均したものである。
【0047】
集電体コート用組成物中の炭素材料(A)の分散粒径は、0.03μm以上、5μm以下に微細化することが望ましい。炭素材料の分散粒径が0.03μm未満の組成物は、その作製が難しい場合がある。又、炭素材料の分散粒径が2μmを超える組成物を用いた場合には、コート層塗膜の材料分布のバラつき、電極の抵抗分布のバラつき等の不具合が生じる場合がある。
ここでいう分散粒径とは、体積粒度分布において、粒子径の細かいものからその粒子の体積割合を積算していったときに、50%となるところの粒子径(D50)であり、一般的な粒度分布計、例えば、動的光散乱方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)等で測定される。
【0048】
市販のカーボンブラックとしては、例えば、トーカブラック#4300、#4400、#4500、#5500等(東海カーボン社製、ファーネスブラック)、プリンテックスL等(デグサ社製、ファーネスブラック)、Raven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULTRA等、Conductex SC ULTRA、Conductex 975ULTRA等、PUER BLACK100、115、205等(コロンビヤン社製、ファーネスブラック)、#2350、#2400B、#2600B、#30050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、#5400B等(三菱化学社製、ファーネスブラック)、MONARCH1400、1300、900、VulcanXC−72R、BlackPearls2000等(キャボット社製、ファーネスブラック)、Ensaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、SuperP−Li(TIMCAL社製)、ケッチェンブラックEC−300J、EC−600JD(アクゾ社製)、デンカブラック、デンカブラックHS−100、FX−35(電気化学工業社製、アセチレンブラック)等、グラファイトとしては例えば人造黒鉛や燐片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛などの天然黒鉛が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0049】
導電性炭素繊維としては石油由来の原料から焼成して得られるものが良いが、植物由来の原料からも焼成して得られるものも用いることができる。例えば石油由来の原料で製造される昭和電工社製のVGCFなどを挙げることができる。
【0050】
<水性液状媒体(C)>
本発明に使用する水性液状媒体(C)としては、水を使用することが好ましいが、必要に応じて、例えば、集電体への塗工性向上のために、水と相溶する液状媒体を使用しても良い。
水と相溶する液状媒体としては、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、リン酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類等が挙げられ、水と相溶する範囲で使用しても良い。
【0051】
<集電体コート用組成物>
集電体コート用組成物は、炭素材料(A)と、下記単量体を共重合してなる水性樹脂型分散剤(B)と、水性液状媒体(C)とを少なくとも含有するものである。
集電体コート用組成物は、集電体との密着性を向上させて集電体の耐久性を向上させるために、さらにバインダーを含有することもできる。
本発明の中のバインダーとは、炭素材料などの粒子を結着させるために使用されるものであり、それら粒子を溶媒中へ分散させる効果は小さいものである。
【0052】
バインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、カルボキシメチルセルロース等のセルロース樹脂、スチレン−ブタジエンゴムやフッ素ゴム等の合成ゴム、ポリアニリンやポリアセチレン等の導電性樹脂等、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、及びテトラフルオロエチレン等のフッ素原子を含む高分子化合物が挙げられる。又、これらの樹脂の変性物、混合物、又は共重合体でも良く、水溶性の樹脂であっても、水分散型の樹脂であっても良い。これらバインダーは、1種または複数を組み合わせて使用することも出来る。
【0053】
さらに、集電体コート用組成物には、成膜助剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、pH調整剤、粘性調整剤などを必要に応じて配合できる。
【0054】
集電体コート用組成物の総固形分に占める炭素材料(A)の割合は、20重量%以上、80重量%以下が好ましく、30重量%以上、60重量%以下が更に好ましい。炭素材料(A)が少ないと、下地層の導電性が保てない場合があり、一方、導電助剤である炭素材料(A)が多すぎると、塗膜の耐性が低下する場合がある。
また、集電体コート用組成物中の固形分に占める水性樹脂型分散剤(B)の割合は、1〜70重量%以下であることが好ましい。
さらに、バインダーを含む場合、集電体コート用組成物中の固形分に占めるバインダーの割合は、19〜79重量%であることが好ましい。
また、塗工方法によるが、固形分5〜50重量%の範囲で、集電体コート用組成物の粘度は、1mPa・s以上、20,000mPa・s以下とするのが好ましい。
集電体のコート層の厚みは、一般的には0.2μm以上、20μm以下であり、好ましくは0.5μm以上、5μm以下である。
【0055】
このような集電体コート用組成物は、種々の方法で得ることができる。
炭素材料(A)と水性樹脂型分散剤(B)とバインダーと水性液状媒体(C)とを含有する、集電体コート用組成物の場合を例にとって説明する。
例えば、
(X−1) 炭素材料(A)と水性樹脂型分散剤(B)と水性液状媒体(C)とを含有する炭素材料の水性分散体を得、該水性分散体にとバインダーとを加え、集電体コート用組成物を得ることができる。
(X−2) 炭素材料(A)と水性樹脂型分散剤(B)とバインダーと水性液状媒体(C)と含有する活物質の水性分散体を得、集電体コート用組成物を得ることができる。
(X−3) 水性樹脂型分散剤(C)とバインダーと水性液状媒体(D)とを含有する溶液を得、さらに炭素材料(A)を加え、集電体コート用組成物を得ることができる。
【0056】
(分散機・混合機)
集電体コート用組成物を得る際に用いられる装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機、混合機が使用できる。
例えば、ディスパー、ホモミキサー、若しくはプラネタリーミキサー等のミキサー類;エム・テクニック社製「クレアミックス」、若しくはPRIMIX社「フィルミックス」等のホモジナイザー類;ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、若しくはコボールミル等のメディア型分散機;湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、若しくは奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機;または、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、分散機としては、分散機からの金属混入防止処理を施したものを用いることが好ましい。
【0057】
例えば、メディア型分散機を使用する場合は、アジテーター及びベッセルがセラミック製又は樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーター及びベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。そして、メディアとしては、ガラスビーズ、または、ジルコニアビーズ、若しくはアルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましい。また、ロールミルを使用する場合についても、セラミック製ロールを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用しても良いし、複数種の装置を組み合わせて使用しても良い。また、強い衝撃で粒子が割れたり、潰れたりしやすい正または負極活物質の場合は、メディア型分散機よりは、ロールミルやホモジナイザー等のメディアレス分散機が好ましい。
【0058】
<コート層付き集電体>
本発明のコート層付き集電体は、ガス透過性を有する集電体と、前記集電体コート用組成物から形成された集電体コート層を具備する。
(集電体)
触媒電極に使用する集電体の材質は特に限定されないが、ガス透過性を有する形状が必要であり、該当する集電体を適宜選択することができる。
例えば、集電体の材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、又はステンレス等の金属や合金、および樹脂等が挙げられる。燃料電池、および空気電池の場合、ステンレス、ニッケル、アルミニウムが好ましい。
又、形状としては、一般的に多孔性のものが選択され、パンチングメタル、エキスパンドメタルのような穴あき箔状のもの、発泡金属箔、不織布、及びメッシュ状の集電体が使用できる。
【0059】
(塗工方法)
集電体上に集電体コート用組成物を塗工する方法としては、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。
具体的には、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコティング法、スクリーン印刷法または静電塗装法等が挙げる事ができる。
乾燥方法としては放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。
又、塗布後に平版プレスやカレンダーロール等による圧延処理を行っても良い。
【0060】
<触媒電極>
本発明の触媒電極は、少なくともコート層付き集電体と、触媒層とを具備するものであって、燃料電池または空気電池に使用できる。触媒電極は、コート層付き集電体と触媒層との間に撥水層を有していてもよい。
触媒電極に含まれる触媒層は、触媒材料を少なくとも含むものであり、さらにバインダーを含んでいてもよい。触媒層の形成方法は特に限定されないが、例えば、コート層付き集電体上に、触媒材料とバインダーと溶剤とを少なくとも含む触媒インキ組成物を用いて形成することができる。
触媒インキ組成物の塗布方法及び乾燥方法は、従来公知の塗布方法を用いることができ、上記集電体コート用組成物で例示した方法と同様の方法を用いることができる。
【0061】
<燃料電池>
本発明のコート層付き集電体、及び触媒電極は燃料電池のカソード及びアノードに使用できる。
(燃料電池用触媒材料)
燃料電池用触媒材料は、公知もしくは市販のものを使用することができる。例えば、触媒粒子が、触媒担持体としての炭素粒子、酸化物粒子、あるいは窒化物粒子上に担持してなるものが挙げられる。
【0062】
触媒粒子としては、例えば、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム又はこれらの合金等が挙げられる。
触媒担持体としては、例えば、下記のものが挙げられる。
炭素粒子としては、炭素材料(A)と同様のものが挙げられる。
酸化物粒子としては、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、アルミナ等が挙げられる。
窒化物粒子としては、例えば、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ニオブ、窒化タンタル、窒化クロム、窒化バナジウム等が挙げられる。
これら触媒担持体は、要求性能に合わせて最適な材料を選択することができる。
【0063】
触媒粒子の触媒担持体上への担持率は特に限定されない。触媒粒子として白金、触媒担持体として炭素粒子を用いた場合は、触媒粒子100重量%に対して、通常1〜70重量%程度までの担持が可能である。
【0064】
市販の燃料電池用触媒材料としては、例えば、
TEC10E50E、TEC10E70TPM、TEC10V30E、TEC10V50E、TEC66E50等の白金担持炭素粒子;
TEC66E50、TEC62E58等の白金−ルテニウム合金担持炭素粒子;
をいずれも田中貴金属工業社より購入することができるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
(燃料電池用バインダー)
燃料電池用のバインダーとしては、プロトン伝導性ポリマーが好ましい。プロトン伝導性ポリマーは触媒材料を結着させるためのバインダーとして従来公知のものを使用することができる。プロトン伝導性ポリマーとしては、パーフルオロスルホン酸系等のフッ素系イオン交換樹脂、スルホン酸基などの強酸性官能基を導入したオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられる。例えば電気陰性度の高いフッ素原子を導入する事で化学的に非常に安定し、スルホン酸基の乖離度が高く、高いイオン導電性が実現できる。このようなプロトン伝導性ポリマーの具体例としては、デュポン社製の「Nafion」等が挙げられる。通常、プロトン伝導性ポリマーは、ポリマーを5〜30重量%程度含むアルコール水溶液として使用される。アルコールとしては、例えば、メタノール、プロパノール等が使用される。
【0066】
(燃料電池用触媒インキ組成物)
触媒インキ組成物中に含まれる触媒材料、およびプロトン伝導性ポリマー、溶剤の種類および割合は、限定されるものではなく、広い範囲内で適宜選択することができる。好ましい範囲としては
例えば、触媒材料を100重量部に対して、プロトン伝導性ポリマーが10〜300重量部、好ましくは20〜250重量部である。
【0067】
触媒インキ組成物の調製方法も特に限定されるものではない。調製は、各成分を同時に分散しても良いし、触媒ペースト組成物を分散後、プロトン伝導性ポリマー成分を添加してもよく、使用する触媒材料、プロトン伝導性ポリマーや、溶剤種により最適化することができる。
【0068】
(燃料電池用電極膜接合体)
本発明の燃料電池は、燃料電池用電極膜接合体を含み、燃料電池用電極膜接合体を挟むように、対向配置されたセパレータと集電板より構成される。
燃料電池用電極膜接合体とは、プロトン伝導性の固体高分子電解質膜の片面もしくは両面に、燃料電池用触媒層が密着して形成され、さらに、その片面もしくは両面に、集電体が密着して具備したものである。
【0069】
燃料電池用電極膜接合体の製造方法としては、固体高分子電解質膜の片面もしくは両面に、上記触媒電極を熱圧着する方法が挙げられる。また、固体高分子電解質膜上に、転写基材上に予め形成された触媒層を転写によって形成した後、上記のコート層付集電体を熱圧着する方法も挙げられる。
【0070】
(固体高分子電解質膜)
固体高分子電解質膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系のフッ素イオン交換樹脂等が挙げられる。電気陰性度の高いフッ素原子を導入する事で化学的に非常に安定し、スルホン酸基の乖離度が高く、高いイオン導電性が実現できる。具体例としてはデュポン社製の「Nafion」、旭硝子社製の「Flemion」、旭化成社製の「Aciplex」、ゴア(Gore)社製の「Gore Select」等が挙げられる。電解質膜の膜厚としては、通常20μm〜250μm程度、好ましくは10μm〜80μm程度である。
【0071】
(導電性撥水層)
本発明の電極膜接合体は、触媒層の集電体と接触する側に微多孔質の層を含んでいてもよい。この層は、触媒層の一部として取り扱われたり、あるいは導電性撥水層や撥水層、MPL(micro porous layer、マイクロポーラスレイヤー)とも呼ばれ、触媒層へのガス供給の均一化や、導電性の向上に加え、カソード側で発電時に発生する水の排水性を向上させる等の役割を持つ。導電性撥水層は、例えば、炭素材料と、撥水性材料を含むペースト組成物を集電体上に塗工後、大気中で300℃程度で焼成することにより形成できる。
【0072】
(転写基材)
転写基材は触媒インキ組成物を塗布することで燃料電池用触媒層を形成し、転写基材上にある触媒層をナフィオンなどの固体高分子電解質膜に転写するためのフィルム基材である。転写基材としては、安価で入手が容易な高分子フィルムが好ましく、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート等がより好ましい。具体例としてはテフロンシート等が挙げられる。
【0073】
(セパレータ)
セパレータは、燃料ガス(水素)や酸化剤ガス(酸素)等の反応ガスの供給、排出を行う。そして、アノード及びカソードの触媒粒子にガス拡散基材(集電体)を通じてそれぞれ均一に反応ガスが供給されると、両電極に備えられた触媒粒子とプロトン伝導性ポリマーとの境界において、気相(反応ガス)、液相(プロトン伝導性ポリマー)、固相(両電極が持つ触媒粒子の三相界面が形成される。そして、電気化学反応を生じさせることで直流電流が発生する。
【0074】
上記電気化学反応において、
カソード側:O
2+4H
++4e
−→2H
2O
アノード側:H
2→2H
++2e
−
の反応が起こり、アノード側で生成されたH
+(プロトン)は固体高分子電解質膜中をカソード側に向かって移動し、e
−(電子)は外部の負荷を通ってカソード側に移動する。
【0075】
一方、カソード側では酸化剤ガス中に含まれる酸素と、アノード側から移動してきたH
+及びe
−とが反応して水が生成される。この結果、上述の燃料電池は、水素と酸素とから直流電力を発生し、水を生成することになる。
【0076】
<空気電池>
本発明のコート層付き集電体、及び触媒電極は空気電池のカソードに使用できる。
空気電池は、上記触媒電極からなるカソード電極、負極活物質を有するアノード電極、前記カソード電極と前記アノード電極の間で金属イオンの伝導を行う電解質層、およびセパレータより構成されている。
【0077】
(空気電池カソード用触媒材料)
空気電池用の触媒材料は、触媒粒子と、必要に応じて、触媒粒子を担持する導電性の触媒担持体とを含むものである。
触媒粒子としては、例えば、MnO
2、CeO
2、TiO
2、Co
3O
4、Fe
3O
4等の無機セラミックス材料やコバルトフタロシアニン、鉄ポルフィリン等の有機錯体、およびこれらの複合材料を挙げることができる。また、上記燃料電池で例示した触媒材料と同様のものを使用することもできる。
【0078】
(空気電池用バインダー)
空気電池用のバインダーは、上記の集電体コート用組成物で例示したバインダーと同様のものを使用することができる。
【0079】
(空気電池用アノード電極)
空気電池用アノード電極は、負極活物質を有する負極層を有しており、必要に応じて負極集電体を使用してもよい。上記負極層と接触するように電解質層が配置されている。負極活物質は、通常、伝導するイオンとなる金属元素を有している。上記金属元素としては、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、クロム(Cr)及びバナジウム(V)などを挙げることができる。中でも、エネルギー密度が高い電池を得ることができるため、Liであることが好ましい。また、金属単体だけでなく、合金や金属酸化物、金属窒化物なども挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、空気電池に適用される従来公知のものを適用することができる。
【0080】
(電解質層)
電解質層は、上記の空気電池用カソード電極と上記の空気電池用アノード電極の間で金属イオンの伝導を行うものである。金属イオンの種類は、上述した負極活物質の種類によって異なり、その形態も金属イオン伝導性が有するものであれば特に限定されるものではない。例えば、水溶液や非水溶液を適用することもできるし、それらをポリマーマトリクスで保持したゲル状高分子電解質や、ポリマー電解質及び無機固体電解質を使用してもよい。また、固体電解質やセパレータを使用して、カソード側、アノード側で異なる電解液を使用してもよい。
【0081】
リチウムイオンの伝導を考えた場合、電解液としては、リチウムを含んだ電解質を水または非水系の溶剤に溶解したものを用いる。
電解質としては、LiBF
4、LiClO
4、LiPF
6、LiAsF
6、LiSbF
6、LiCF
3SO
3、Li(CF
3SO
2)
2N、LiC
4F
9SO
3、Li(CF
3SO
2)
3C、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF
2、LiSCN、又はLiBPh
4等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0082】
非水系の溶剤としては特に限定はされないが、例えば、
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジエチルカーボネート等のカーボネート類;
γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、及びγ−オクタノイックラクトン等のラクトン類;
テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,2−メトキシエタン、1,2−エトキシエタン、及び
1,2−ジブトキシエタン等のグライム類;
メチルフォルメート、メチルアセテート、及びメチルプロピオネート等のエステル類;
ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等のスルホキシド類;並びに、
アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。又これらの溶剤は、それぞれ単独で使用しても良いが、2種以上を混合して使用しても良い。
【0083】
さらに上記電解液を、ポリマーマトリクスに保持しゲル状とした高分子電解質とする場合、ポリマーマトリクスとしては、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するアクリレート系樹脂、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリホスファゼン系樹脂、及びポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリシロキサン等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0084】
(セパレータ)
セパレータとしては、例えば、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリアミド不織布及びそれらに親水性処理を施したものが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0085】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。尚、実施例および比較例における「部」は「重量部」を表す。
【0086】
(合成例1)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、n−ブタノール200.0部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱して、スチレン140.0部、アクリル酸60.0部、およびV−601(和光純薬工業社製)12.0部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに110℃で3時間反応させた後、V−601(和光純薬工業社製)0.6部を添加し、さらに110℃で1時間反応を続けて、共重合体(1)溶液を得た。また、共重合体(1)の酸価は219.1(mgKOH/g)であった。
さらに、室温まで冷却した後、ジメチルアミノエタノール74.2部添加し中和した。これは、アクリル酸を100%中和する量である。さらに、水を400部添加して水性化した後、100℃まで加熱し、ブタノールを水と共沸させてブタノールを留去した。
水で希釈し、不揮発分20%の水性樹脂型分散剤(1)の水溶液ないし水性分散体を得た。また、不揮発分20%の水性樹脂型分散剤(1)の水溶液の粘度は、40mPa・sであった。
【0087】
(合成例2〜14)
表1に示す配合組成で、合成例1と同様の方法で合成し、合成例2〜14の分散剤を得た。
【0088】
【表1】
St:スチレン
BA:ブチルアクリレート
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
2−SEMA:2−スルホエチルメタクリレート
HEMA:ヒドロキシルエチルメタクリレート
DM:ジメチルアミノエチルメタクリレート
DMAE:ジメチルアミノエタノール
NaOH:水酸化ナトリウム
【0089】
<集電体コート用組成物の作製>
[実施例1:集電体コート用組成物(1)]
炭素材料としてアセチレンブラック(デンカブラックHS−100)10部、合成例(1)に記載の水性樹脂型分散剤(1)の水溶液ないし水性分散体を10部(固形分として2部)、水66.7部をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散を行った。次に、バインダーとして(ポリテトラフルオロエチレン30−J:三井・デュポンフロロケミカル社製、60%水系分散体)13.3部(固形分として8部)を加えてディスパーで撹拌混合し、集電体コート用組成物(1)を得た。
【0090】
[実施例2〜13、比較例1〜4:集電体コート用組成物(2)〜(17)]
表2に示す炭素材料、分散剤を使用して、集電体コート用組成物(1)と同様の方法で、同じ固形分となるよう水の添加量を調整して集電体コート用組成物(2)〜(17)を得、以下の方法にて、集電体コート用組成物としての分散度を求めた。
【0091】
(分散度の判定)
集電体コート用組成物の分散度は、グラインドゲージによる判定(JISK5600−2−5に準ず)より求めた。
評価結果を表2に示す。表中の数字は粗大粒子の大きさを示し、数値が小さいほど分散性に優れ、均一な集電体コート用組成物であることを示している。
【0092】
【表2】
【0093】
表2に示すように、本発明の集電体コート用組成物(1)〜(13)は、炭素材料の分散性に優れ、均一な集電体コート用組成物であることが明らかとなった。
【0094】
<コート層付き集電体の作製>
[実施例14:コート層付き集電体(1)]
容器中に集電体コート用組成物(1)を加え、その中にアルミ材質で出来たパンチングメタル箔(厚み30μm)を一定時間浸漬して引き上げた後、120℃で30分間乾燥し、コート層付き集電体(1)を得た。また、コート層の厚みは1.5μmであった。
【0095】
[実施例15〜26、比較例5〜8:コート層付き集電体(2)〜(17)]
集電体コート用組成物(2)〜(17)を使用し、コート層付き集電体(1)と同様にしてコート層付き集電体(2)〜(17)を得た。
【0096】
(耐水性評価)
上記で作製したコート層付き集電体(1)〜(17)について、水が含まれた綿布で集電体の表面を擦り耐水性を評価した。評価基準を下記に示し、結果を表3に示す。
【0097】
○:「削れは見られない(実用上問題のないレベル)」
○△:「下地層がわずかに削れて綿布への付着が見られるが、集電体表面は剥き出しにはなっていない(問題はあるが使用可能レベル)」
△:「下地層が削れて、集電体表面が部分的に剥き出しになっている」
×:「下地層が完全に削れ落ちている」
【0098】
(密着性評価)
上記で作製したコート層付き集電体(1)〜(17)に、セロテープを貼り付けて引き剥がし、コート層の脱落の程度を目視判定で判定した。評価基準を下記に示し、結果を表3に示す。
【0099】
○:「剥離なし(実用上問題のないレベル)」
○△:「わずかに剥離(問題はあるが使用可能レベル)」
△:「半分程度剥離」
×:「ほとんどの部分で剥離」
【0100】
【表3】
【0101】
表3に示すように、本発明のコート層付き集電体(1)〜(14)は、耐水性に優れることが明らかであった。耐水性は、水蒸気を含むガスが透過する際や、触媒層や導電撥水層形成用の水性ペーストを途工する際に、コート層が崩壊しないために重要である。
【0102】
<空気電池用触媒電極の作製>
[実施例27]
導電性炭素材料としてファーネスブラック(Cabot社製、vulcan xc−72)75部、PTFE粉末25部、N−メチルピロリドン20部を乳鉢で混合し、導電性炭素材料の目付量が2mg/cm
2となるように、コート層付き集電体(1)へ熱圧着した後、加熱真空乾燥することにより、コート層付き集電体上に導電性撥水層を形成した。
【0103】
続いて、触媒材料として白金触媒担持カーボン4重量部(田中貴金属社製、白金量46%、TEC10E50E)、溶剤としてプロパノール56重量部、およびイオン交換水20重量部をディスパーにて攪拌混合することで触媒ペースト組成物(固形分濃度4重量%)を調製した後、バインダーとして20重量%PTFE分散溶液(PTFE 30−J;三井・デュポンフロロケミカル社製、60%ポリテトラフルオロエチレン水系分散体をイオン交換水にて希釈して使用)20重量部を添加し、ディスパーにて攪拌混合することで空気電池用の触媒インキ組成物(固形分濃度8重量%、触媒インキ組成物100重量%としたときの炭素系触媒材料とバインダーの合計した割合)を作製した。得られた触媒インキ組成物を、上記で作製した導電性撥水層が形成されたコート層付き集電体の導電性撥水層上に、白金触媒担持カーボンの目付け量が0.46mg/cm
2になるように塗布し、加熱真空乾燥することにより、空気電池用の触媒電極(1)を作製した。
【0104】
<空気電池用評価セルの作製>
Li箔上へ、非水系電解液(1M LiPF
6、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート=1/1、体積比)を含ませたセパレータ(多孔質ポリプロピレンフィルム)、固体電解質(オハラ社製、LiCGC Plate 1inch×150μmt)を配置し、アルミラミネートフィルムにて固定した。この際、固体電解質側のアルミラミネートフィルムを16mm角の大きさに切り抜き、固体電解質の露出面を作製し、空気電池用アノード電極を作製した。
空気電池用アノード電極の固体電解質上に、水性電解液として、1MのLiCl水溶液を含浸した不織布を、次いで、触媒電極(1)を配置し、アルミラミネートフィルムにより固定、熱圧着することで、空気電池用評価セルを得た。
【0105】
[実施例28〜39、比較例9〜12]
コート層付き集電体(2)〜(17)を使用した以外は、実施例27と同様にして空気電池用触媒電極(2)〜(17)、及び空気電池用評価セルを作製した。
【0106】
(空気電池の特性評価:容量保持率)
得られた空気電池評価セルを用いて、2.0V―4.8Vのカット電圧、0.5mA/cm
2の電流密度の条件で、3サイクルの慣らし運転を行った。その後、同条件にて、30サイクルの充放電テストを行うことで、容量保持率を求めた。評価結果を表4に示す。
【0107】
【表4】
【0108】
表3に示すように、本発明のコート層付き集電体を用いた触媒電極は、空気電池の充放電における30サイクル後での容量保持率が優れていることが分かった。また、コート層の耐水性や密着性が良好なほど、電池の容量保持率が優れた傾向にあることも分かった。一方、集電体コート用組成物の分散性と、コート層の耐水性や密着性との相関性が見られている。従って、集電体コート用組成物の分散性が良いと集電体コート層の内部構造が密になり、さらに集電体表面を保護することが出来たため、容量保持率の改善に繋がったのではないかと考えている。
【0109】
<燃料電池用触媒電極の作製>
【0110】
[実施例40]
実施例27と同様にして、コート層付き集電体(1)へ導電性撥水層を形成した。続いて、触媒材料として白金触媒担持カーボン4重量部(田中貴金属社製、白金量46%、TEC10E50E)、溶剤としてプロパノール56重量部、およびイオン交換水20重量部をディスパーにて攪拌混合することで触媒ペースト組成物(固形分濃度4重量%)を調製した後、プロトン伝導性ポリマーとして20重量%ナフィオン(Nafion)分散溶液(デュポン社製、CStypeDE2020)20重量部を添加し、ディスパーにて攪拌混合することで燃料電池用触媒インキ組成物(固形分濃度8重量%、触媒インキ組成物100重量%としたときの炭素系触媒材料とプロトン伝導性ポリマーの合計した割合)を作製した。得られた燃料電池用触媒インキ組成物を、上記で作製した導電性撥水層が形成されたコート層付き集電体の導電性撥水層上に、白金触媒担持カーボンの目付け量が0.46mg/cm
2になるように塗布し、加熱真空乾燥することにより、燃料電池用の触媒電極(18)を作製した。
【0111】
触媒電極(18)作製時に使用した燃料電池用触媒インキ組成物を、白金触媒担持カーボンの目付け量が0.46mg/cm
2になるようにテフロンフィルム上に塗布し、加熱真空乾燥することにより、燃料電池用アノード触媒シートを作製した。
【0112】
<燃料電池用評価セルの作製>
燃料電池用の触媒電極(18)と、燃料電池用アノード触媒シートとを、それぞれ固体高分子電解質膜(Nafion NR−212、デュポン社製、膜厚51μm)の両面に密着して、150℃、5MPaの条件で狭持した後、燃料電池用アノード触媒シートのテフロンフィルムを剥離し、その表面に炭素繊維からなるカーボンペーパ基材(TGP−H−090、東レ社製)を密着することで、燃料電池用電極膜接合体を作製した。
得られた燃料電池用電極膜接合体を5cm角の試料とし、その両側からガスケット2枚、次いでグラファイトプレートであるセパレータ2枚ではさみ、更に両側から集電板を2枚装着して燃料電池(単セル)として作製した。
【0113】
[実施例41〜52、比較例13〜16]
コート層付き集電体(2)〜(17)を使用した以外は、実施例40と同様にして燃料電池用触媒電極(18)〜(34)、及び燃料電池(単セル)を作製した。
【0114】
(燃料電池(単セル)の特性評価:電圧維持率)
得られた燃料電池用評価セルを用いて、セル温度を80℃とし、カソード側(触媒電極側)から温度60℃、相対湿度42%で加湿した空気を流量160mL/minで供給し、アノード側から温度77℃、相対湿度88%で加湿した水素ガスを流量110mL/min供給し、電流密度500mA/cm
2で3時間保持した後の電圧を初期電圧とした。また、同条件で24時間保持後の電圧を記録し、電圧維持率を算出した。評価結果を表5に示す。
【0115】
【表5】
【0116】
表5に示すように、本発明のコート層付き集電体を用いた触媒電極は、燃料電池の発電特性における電圧維持率が優れていることが分かった。また、コート層の耐水性や密着性が良好なほど、電池の電圧維持率が優れた傾向にあることも分かった。一方、表2に記した、集電体コート用組成物の分散性と、コート層の耐水性や密着性との相関性が見られており、燃料電池においても集電体コート用組成物の分散性が良いと集電体コート層の内部構造が密になり、さらに集電体表面を保護することが出来たため、電圧維持率の改善に繋がったのではないかと考えている。
【0117】
以上より、水性樹脂型分散剤を使用することで、炭素材料の分散性が高い集電体コート用組成物、耐水性及び密着性に優れるコート層付き集電体、耐久性に優れる触媒電極が作製可能となり、容量保持率の高い空気電池、および電圧維持率の高い燃料電池を作製することが出来たと考えられる。