特許第6182999号(P6182999)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6182999カラーフィルター保護膜用熱硬化性樹脂組成物、及びその硬化膜を備えるカラーフィルター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182999
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】カラーフィルター保護膜用熱硬化性樹脂組成物、及びその硬化膜を備えるカラーフィルター
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20170814BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20170814BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   G02B5/20 101
   C08G59/40
   C08L63/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-132378(P2013-132378)
(22)【出願日】2013年6月25日
(65)【公開番号】特開2015-7687(P2015-7687A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2016年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 沙哉佳
(72)【発明者】
【氏名】澤田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】中島 喜和
【審査官】 大竹 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−276049(JP,A)
【文献】 特開平06−281801(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/031753(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/061910(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/140331(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のA成分〜D成分
(A)(a)炭素−炭素不飽和結合とエポキシ基又はオキセタニル基を有するモノマー10〜90重量部と、(b)(a)以外の炭素−炭素不飽和結合を有するモノマー10〜90重量部とからなる重量平均分子量3,000〜100,000であるエポキシ基又はオキセタニル基含有重合体、
(B)多価カルボン酸化合物のカルボキシル基がビニルエーテル化合物により潜在化された多価カルボン酸ヘミアセタールエステル、
(C)一分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂、
(D)アミノ基を有するシランカップリング剤
を含むカラーフィルター保護膜用熱硬化性樹脂組成物であって、A成分〜C成分の合計100重量部中に、A成分を20〜80重量部、B成分を5〜50重量部、C成分を5〜50重量部含み、D成分はA成分〜C成分の合計100重量部に対して0.1〜8重量部であって、
さらに(E)アミノ基を有さず、エポキシ基を有するシランカップリング剤を、A成分〜C成分の合計100重量部に対して1〜30重量部含有する、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
下記のA成分〜D成分
(A)(a)炭素−炭素不飽和結合とエポキシ基又はオキセタニル基を有するモノマー10〜90重量部と、(b)(a)以外の炭素−炭素不飽和結合を有するモノマー10〜90重量部とからなる重量平均分子量3,000〜100,000であるエポキシ基又はオキセタニル基含有重合体、
(B)多価カルボン酸化合物のカルボキシル基がビニルエーテル化合物により潜在化された多価カルボン酸ヘミアセタールエステル、
(C)一分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂、
(D)アミノ基を有するシランカップリング剤
を含むカラーフィルター保護膜用熱硬化性樹脂組成物であって、A成分〜C成分の合計100重量部中に、A成分を20〜80重量部、B成分を5〜50重量部、C成分を5〜50重量部含み、D成分はA成分〜C成分の合計100重量部に対して0.1〜8重量部であって、
さらに(E)アミノ基を有さず、チオール基を有するシランカップリング剤を、A成分〜C成分の合計100重量部に対して1〜30重量部含有する、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる層を有するカラーフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置などに用いられるカラーフィルター保護膜用熱硬化性樹脂組成物、及びその組成物を硬化してなる層を有するカラーフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置が急速に普及したことに伴い、液晶表示装置に用いられる高品質なカラーフィルターの需要も高まっている。カラーフィルターは、透明基板上に、所定パターンに形成されたブラックマトリックス層や赤、緑、青などの複数の色が所定順序に配列された着色層と、保護膜とを重ねた構造であり、着色層の通過光を赤、緑、青の3つの基本色にし、それらの光を加法混合することにより中間色や白色を含む映像の色を作り出す役割を有している。その保護膜は、液晶表示装置の製造時又は使用時においてカラーフィルターを物理的又は化学的に保護する役割を担っており、カラーフィルターによる発色の再現性を向上するために当該保護膜の透明性あるいは平坦性を改善すると共に、外的衝撃から液晶部を保護するために硬度を高めることが従来から行われてきた(特許文献1参照)。
【0003】
また、カラーフィルターは、酸・アルカリ溶液への浸漬処理等の過酷な工程を経て製造されるため、このような製造過程によりカラーフィルターが劣化したり損傷したりすることによる性能低下や作動不良を防止するために、硬化性、密着性、耐ITO形成プロセス性など、保護膜の様々な性能向上が図られてきた。
【0004】
本出願人も、特許文献2において、カラーフィルター保護膜用熱硬化性樹脂組成物の密着性、ITO形成プロセス性を向上するために、重量平均分子量が5000〜40000であり、且つ、エポキシ当量が140〜600g/molであり、炭素−炭素不飽和結合とエポキシ基を含有するモノマーを少なくとも用いて重合されたエポキシ基含有重合体(A)と、分子量が330〜7000であり、且つ、エポキシ当量が150〜3500g/molであり、エポキシ基を2個以上有しビスフェノールAの誘導体であるエポキシ基含有化合物(B)と、特定構造の構造を有するカルボン酸(c1)がビニルエーテル化合物(c2)により潜在化された多価カルボン酸誘導体(C)とを含有する、カラーフィルター保護膜用熱硬化性樹脂組成物を提案している。
【0005】
しかし、最近の液晶パネルは、液晶ディスプレイの大画面化および小型化に伴い、限られたスペースにより大きな表示面積を実現するため、狭額縁化が図られることが多くなってきている。狭額縁化とは、液晶パネルを囲む枠(額縁)の幅をより狭くすることであり、液晶パネルの額縁の幅が狭ければ狭いほど、同じ液晶パネルサイズでより大きな表示面積の実現、あるいは、表示面積を維持したまま液晶パネルサイズの小型化の実現が可能になるといったメリットがあり、特に携帯情報端末などにおいては、液晶ディスプレイの大画面化や小型化に直結する。この狭額縁化に伴い、TFTアレイ基板とカラーフィルター基板(CF基板)を張り合わせるシール幅(シール面積)が狭くなることから、シール剤とTFTアレイ基板側のガラス部分、シール剤とCF基板側のカラーフィルター保護膜部分、およびこのカラーフィルター保護膜とCF基板側のガラス部分との密着強度の低下、いわゆる液晶パネルのパネル強度の低下が懸念されている。これにより、狭額縁設計の液晶パネルに適用するカラーフィルター保護膜は、高湿度などの過酷な条件下においても、より高い密着性を有することが求められるようになってきている。この要求を実現するためには、従来のカラーフィルター保護膜では十分ではなく、更なる改善が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−350010号公報
【特許文献2】特開2006−276049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的とするところは、密着性が更に向上したカラーフィルター保護膜を形成可能な熱硬化性樹脂組成物と、その硬化物を用いたカラーフィルターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の第1の発明は、下記のA成分〜D成分
(A)(a)炭素−炭素不飽和結合とエポキシ基又はオキセタニル基を有するモノマー10〜90重量部と、(b)(a)以外の炭素−炭素不飽和結合を有するモノマー10〜90重量部とからなる重量平均分子量3,000〜100,000であるエポキシ基又はオキセタニル基含有重合体、
(B)多価カルボン酸化合物のカルボキシル基がビニルエーテル化合物により潜在化された多価カルボン酸ヘミアセタールエステル、
(C)一分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂、
(D)アミノ基を有するシランカップリング剤
を含むカラーフィルター保護膜用熱硬化性樹脂組成物であって、A成分〜C成分の合計100重量部中に、A成分を20〜80重量部、B成分を5〜50重量部、C成分を5〜50重量部含み、D成分はA成分〜C成分の合計100重量部に対して0.1〜8重量部であって、
さらに(E)アミノ基を有さず、エポキシ基を有するシランカップリング剤を、A成分〜C成分の合計100重量部に対して1〜30重量部含有する、熱硬化性樹脂組成物。
【0009】
第2の発明は、下記のA成分〜D成分
(A)(a)炭素−炭素不飽和結合とエポキシ基又はオキセタニル基を有するモノマー10〜90重量部と、(b)(a)以外の炭素−炭素不飽和結合を有するモノマー10〜90重量部とからなる重量平均分子量3,000〜100,000であるエポキシ基又はオキセタニル基含有重合体、
(B)多価カルボン酸化合物のカルボキシル基がビニルエーテル化合物により潜在化された多価カルボン酸ヘミアセタールエステル、
(C)一分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂、
(D)アミノ基を有するシランカップリング剤
を含むカラーフィルター保護膜用熱硬化性樹脂組成物であって、A成分〜C成分の合計100重量部中に、A成分を20〜80重量部、B成分を5〜50重量部、C成分を5〜50重量部含み、D成分はA成分〜C成分の合計100重量部に対して0.1〜8重量部であって、
さらに(E)アミノ基を有さず、チオール基を有するシランカップリング剤を、A成分〜C成分の合計100重量部に対して1〜30重量部含有する、熱硬化性樹脂組成物である。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる層を有するカラーフィルターである。
【0011】
なお、本発明において数値範囲を示す「○○〜××」とは、その下限の数値(○○)及び上限の数値(××)も含む意味である。すなわち、正確に記載すれば「○○以上××以下」となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、透明性と保存安定性に優れると共に、密着性に優れた保護膜を形成可能なカラーフィルター保護膜用熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、当該熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる層を備えるカラーフィルターを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<カラーフィルター保護膜用熱硬化性樹脂組成物>
本発明のカラーフィルター保護膜用熱硬化性樹脂組成物は、(A)エポキシ基又はオキセタニル基含有重合体、(B)多価カルボン酸ヘミアセタールエステル、(C)多官能エポキシ樹脂、(D)アミノ基を有するシランカップリング剤を含む。
【0014】
A.エポキシ基又はオキセタニル基含有重合体
A成分は、エポキシ基又はオキセタニル基含有重合体であって、(a)炭素−炭素不飽和結合とエポキシ基又はオキセタニル基を有するモノマーと、(b)(a)以外の炭素−炭素不飽和結合を有するモノマーとからなる重合体である。
【0015】
(a)炭素−炭素不飽和結合とエポキシ基又はオキセタニル基を有するモノマーは、炭素−炭素不飽和結合と、エポキシ基又はオキセタニル基とを有していれば良く、このような用途に周知のいかなるモノマーも利用することができる。エポキシ基を有するモノマーとして、下記の式(1)〜(3)で表されるモノマー、オキセタニル基を有するモノマーとして、下記の式(4)で表されるモノマーが好ましい例として挙げられる。
【化1】

(式中、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、kは1〜5の整数を示す。)
【化2】

(式中、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、Rは−CHO−基または−CH−基、Rは水素原子または炭素数1〜2のアルキル基、mは1〜7の整数を示す。)
【化3】

(式中、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、nは1〜8の整数を示す。)
【化4】

(式中、R、R、およびRは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、jは1〜8の整数を示す。)
【0016】
一方、(b)(a)以外の炭素−炭素不飽和結合を有するモノマーは、炭素−炭素不飽和結合を有し、上記(a)に該当しない化合物であれば良く、このような用途に周知のいかなるモノマーも利用することができる。下記の式(5)〜(7)で表されるモノマーが(b)の例として挙げられる。
【化5】

(式中、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、R10は炭素数1〜12のアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、またはポリアルキレングリコール残基、もしくは主環構成炭素数3〜12の脂環式炭素水素基を示す。)
【化6】

(式中、R11は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、R12は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基、シロキシアルキル基、または芳香族炭化水素基を示す。)
【化7】

(式中、R13は水素原子または炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、または芳香族炭化水素基を示す。)
【0017】
(A)エポキシ基又はオキセタニル基含有重合体は、(a)成分と、(b)成分とを共重合することによって得ることができ、その重合態様としては直鎖状であっても分岐していても良く、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれであっても良い。
【0018】
(a)成分と(b)成分との重合方法は特に限定されず、ラジカル重合、イオン重合等の重合法を用いることができる。より具体的には、重合開始剤の存在下において、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの重合法を用いることができる。また、必要に応じて重合開始剤、触媒、溶媒などの添加物を重合反応系に添加しても良い。
【0019】
(A)エポキシ基又はオキセタニル基含有重合体は、重合体100重量部中、(a)炭素−炭素不飽和結合とエポキシ基又はオキセタニル基を有するモノマーを10〜90重量部、(b)(a)以外の炭素−炭素不飽和結合を有するモノマーを10〜90重量部含有している。(a)成分が90重量部を超えると、保護膜の密着性等の性能が低下し、10重量部未満であると保護膜の強靭性を損なうため本発明の効果を得ることが困難となる。なお、(a)成分及び(b)成分は、それぞれ単独でも、2種以上を併用しても良い。
【0020】
(A)エポキシ基又はオキセタニル基含有重合体の重量平均分子量(Mw)は、3,000〜100,000であり、好ましくは3,000〜80,000である。重量平均分子量が3,000未満であると、保護膜の硬度の低下が観測され、100,000を超えると塗布硬化後の外観が悪化する恐れがあるため好ましくない。
【0021】
B.多価カルボン酸ヘミアセタールエステル
B成分は、多価カルボン酸ヘミアセタールエステルであって、多価カルボン酸化合物のカルボキシル基がビニルエーテル化合物により潜在化、すなわちブロック化された多価カルボン酸ヘミアセタールエステルである。つまり、(b1)多価カルボン酸のカルボキシル基が(b2)ビニルエーテル化合物(ビニル基およびエーテル基含有化合物)によってブロック化された化合物である。
【0022】
(B)多価カルボン酸ヘミアセタールエステルの(b1)多価カルボン酸の具体例としては、炭素数4〜20で2〜8価のカルボン酸であることが好ましい。好ましい例としてイタコン酸、マレイン酸、コハク酸、シトラコン酸等の直鎖または分岐を有する脂肪族多価カルボン酸;テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環式多価カルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、メリット酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸が挙げられる。また、多価カルボン酸としては、アルコール化合物と酸無水物との反応によって得られるハーフエステル体も利用できる。
【0023】
一方、(B)多価カルボン酸ヘミアセタールエステルの(b2)ビニルエーテル化合物の具体例としては、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等の脂肪族ビニルエーテル化合物が挙げられる。それらの中でも、入手性および硬化温度が保護膜のプロセスに適合する点から、n−プロピルビニルエーテルおよびi−プロピルビニルエーテルが好ましく挙げられる。なお、(b2)ビニルエーテル化合物は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
本発明の(B)多価カルボン酸ヘミアセタールエステルは、(b1)多価カルボン酸と、(b2)ビニルエーテル化合物とを室温ないし150℃の範囲の温度で反応させることによって得ることができる。ブロック化反応は平衡反応であるため、(b1)多価カルボン酸に対して(b2)ビニルエーテル化合物を若干多くすると反応が促進され、収率を向上させることができる。なお、(b1)多価カルボン酸と、(b2)ビニルエーテル化合物との反応には、目的に応じて触媒や溶媒を添加することもできる。
【0025】
C.多官能エポキシ樹脂
本発明の(C)多官能エポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂であれば良く、特に限定されない。1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA含核ポリオール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、脂環式型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂などが挙げられる。また、多官能エポキシ樹脂は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0026】
D.アミノ基を有するシランカップリング剤
シランカップリング剤は、シランを利用して有機材料と無機材料とを結合する連結剤であり、有機材料と反応結合する官能基として一般にビニル基、エポキシ基、アミノ基などを有するが、本発明の(D)シランカップリング剤はアミノ基を有することを特徴とする。アミノ基を有するシランカップリング剤は、例えば、アミノ基が標的分子中のカルボキシル基とペプチド結合を形成することによって、標的分子と結合することができる。
【0027】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、特に限定されず、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン等が挙げられる。また、アミノ基を有するシランカップリング剤は、単独でも、2種以上を併用しても良い。
【0028】
アミノ基を有するシランカップリング剤は、有するアミノ基の種類によって1級、2級、又は3級アミンに分けられる。本発明のカラーフィルター保護膜用熱硬化性樹脂組成物に用いるD成分としては、密着性の観点では、1級アミンが最も好ましく、次に2級アミンが好ましい。一方、透明性及び保存安定性の観点では、3級アミンが最も好ましく、次に2級アミンが好ましい。
【0029】
(カラーフィルター保護膜用熱硬化性樹脂組成物の製造)
本発明のカラーフィルター保護膜用熱硬化性樹脂組成物は、A成分〜C成分の合計100重量部中に、A成分を20〜80重量部、B成分を5〜50重量部、C成分を5〜50重量部含有し、A成分〜C成分の合計100重量部に対し、D成分を0.1〜8重量部含む。A成分が20重量部未満であると、保護膜の強靭性を損なう可能性があり、80重量部を超えると保護膜の密着性等の性能が低下する可能性がある。B成分が5重量部未満であると保護膜として求められる十分な硬度が得られず、50重量部を超えるとカルボン酸が過剰となり透明性が低下することがある。C成分が5重量部未満であると保護膜の密着性等の性能が低下する場合があり、50重量部を超えると保護膜の透明性を損なう可能性がある。D成分が0.1重量部未満であると、密着性の向上効果が得られず本発明の効果を十分に発揮することが出来ず、8重量部を超えると透明性および保存安定性が低下するため本発明の効果を得ることが難しい。
【0030】
樹脂組成物の混合方法は特に限定されず、全成分を同時に混合しても、各成分を順次溶解しても良いが、B成分の多価カルボン酸ヘミアセタールエステルは熱により脱ブロック反応が進行するため、多価カルボン酸ヘミアセタールエステルを含有する組成物を取り扱う際には約80℃より高くしないよう配慮が必要である。
【0031】
(添加剤)
本発明のカラーフィルター保護膜用熱硬化性樹脂組成物には、その製造の際に、目的に応じて様々な添加剤を加えることができる。その代表例が(E)アミノ基を有しないシランカップリング剤である。A〜D成分を含むカラーフィルター保護膜用熱硬化性樹脂組成物に、E成分を添加すると、当該熱硬化性樹脂組成物の硬化物の密着性を向上することができる。
【0032】
(E)アミノ基を有しないシランカップリング剤としては、特に限定されず、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、スルフィドシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。中でも、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのエポキシ基又はチオール基を持つシランカップリング剤が好ましく、特に、エポキシ基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0033】
上記の成分以外にも、本発明の効果を阻害しない範囲で種々の添加剤を添加することができる。具体的には、ベンジルジメチルアミントリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルシクロヘキシルアミン等の3級アミン類;1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;トリフェニルホスフィン、亜リン酸トリフェニル等の有機リン系化合物;テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の4級ホスホニウム塩類;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等やその有機酸塩等のジアザビシクロアルケン類;オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、オクチル酸ジルコニウム、アルミニウムアセチルアセトネート錯体等の有機金属化合物類;テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩類;三フッ化ホウ素、トリフェニルボレート等のホウ素化合物;塩化亜鉛、塩化第二錫等の金属ハロゲン化物等の触媒、メガファックF−410(DIC(株))、同F−430(同)、同F−444(同)、同F−472SF(同)、同F−477(同)、同F−552(同)、同F−553(同)、同F−554(同)、同F−555(同)、同F−556(同)、同F−558(同)、同F−559(同)、同F−561(同)、同R−94(同)、同RS−72−K(同)、同RS−75(同)、ノベックFC−4430(住友スリーエム(株))、FC−4432(同)、サーフロンS−611(AGCセイミケミカル(株))、同S−651(同)、S−386(同)、フタージェント208G(ネオス(株))、同209F(同)、同212P(同)、同220P(同)、同222F(同)、同228P(同)、同240G(同)、同602A(同)、同650A(同)、同710FL(同)、同710FM(同)、FTX−218(同)、BYK―302(ビックケミー・ジャパン(株))、BYK−307(同)、BYK−315(同)、BYK−320(同)、BYK−322(同)、BYK−323(同)、BYK−325(同)、BYK−330(同)、BYK−331(同)、BYK−337(同)、BYK−347(同)、BYK−370(同)、BYK−UV3500(同)、BYK−UV3510(同)、BYK−350(同)、BYK−354(同)、BYK−392(同)、ポリフローKL−400HF(共栄社化学(株))、同KL−401(同)、同KL−402(同)、同KL−403(同)、同KL−404(同)、同KL−100(同)、同KL−600(同)、同KL−700(同)、同WS−30(同)、同No.75(同)、同No.77(同)、同No.90(同)、同No.95(同)、同LE−604(同)等のレベリング剤、ベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベッソ#100(エクソン化学(株)登録商標)等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸メトキシブチル等のエステルおよびエーテルエステル類;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トリエチルホスフェート等のリン酸エステル類、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤;プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコール誘導体等の溶剤などが挙げられる。
【0034】
(カラーフィルター保護膜の形成)
本発明のカラーフィルターは、上記カラーフィルター保護膜用熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物の層を有する。カラーフィルター保護膜用熱硬化性組成物を硬化させてなる硬化物の層は、保護膜と呼ばれている層であることが一般的であるが、当該保護層に限定されず、カラーフィルターの他の層として構成されていてもよい。
【0035】
当該熱硬化性樹脂組成物は、基板上に配置された着色層やブラックマトリックスを覆うように塗布される。その塗布方法は特に限定されることは無く、グラビアコート法、スピンコート法、ダイコート法等の従来公知の塗工方法を採用することができる。
【0036】
得られた塗膜を乾燥し、さらに必要に応じて予備加熱(以下、プリベーク)を行った後、本硬化加熱(以下、ポストベーク)を経て樹脂硬化物の層を形成する。この際には、プリベーク条件として40〜140℃、0〜1時間、ポストベーク条件として150〜280℃、0.2〜2時間が好ましい条件として挙げられる。また、この際の加熱手法としては、特に限定されるものではなく、例えば、密閉式硬化炉や連続硬化が可能なトンネル炉等の硬化装置を採用することができる。加熱源は特に制約されることなく、熱風循環、赤外線加熱、高周波加熱等の方法で行うことができる。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
<重合例−1:エポキシ基またはオキセタニル基を有する重合体(a−1)の合成>
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた容量500mLの4つ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEA)を175重量部仕込み、攪拌しながら加熱して80℃に昇温した。次いで、80℃の温度でグリシジルメタクリレート(以下、GMA)137.4重量部、スチレン(以下、St)55.8重量部、日油(株)製の過酸化物系重合開始剤「パーヘキシルO(以下、PHO)」6.8重量部、およびPGMEA25重量部を予め均一混合したもの(滴下成分)を、2時間かけて滴下ロートより等速滴下した。滴下終了後、80℃の温度を5時間維持した後、反応を終了した。重量平均分子量(Mw)50,000のエポキシ基含有重合体(a−1)の50%PGMEA溶液を得た。
【0038】
<重合例−2〜14:エポキシ基またはオキセタニル基を有する重合体(a−2〜14)の合成>
重合例−1と同様の方法でa−2〜14の重合体溶液を得た。各原料の配合量、反応温度、重量平均分子量を下記表1に示す。
【0039】
【表1】

表1中の略号は次の通りである。
GMA: グリシジルメタクリレート
St: スチレン
DCPMA: ジシクロペンタニルメタクリレート
M−100: 3、4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート
CHMA: シクロヘキシルメタクリレート
OXE−30: メタクリル酸3-メチル-3-オキセタン-イルメチルエステル
CHMI: シクロヘキシルマレイミド
MPS: メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
PHO: 過酸化物系重合開始剤 (商品名:「パーヘキシルO」)
PGMEA: プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0040】
<合成例−1:多価カルボン酸ヘミアセタールエステル(b−1)の合成>
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えた4つ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEA)26.9重量部、シクロヘキサントリカルボン酸(以下、CHTA)27.3重量部、n-プロピルビニルエーテル(以下、nPr−VE)45.7重量部を仕込み、攪拌しながら加熱し80℃に昇温した。次いで、温度を保ちながら攪拌し続け、混合物の酸価が2.0mgKOH/g以下になったところで反応を終了し、溶液の酸価1.2mgKOH/gの多価カルボン酸ヘミアセタールエステル(b−1)の60%PGMEA溶液を得た。
【0041】
<合成例−2〜6:多価カルボン酸ヘミアセタールエステル(b−2〜6)の合成>
合成例−1と同様の方法でb−2〜6の化合物を得た。各原料の配合量、反応温度、酸価を下記表2に示す。
【表2】

表2中の略号は次の通りである。
CHTA: シクロヘキサントリカルボン酸
TMA: トリメリット酸
nPr−VE: n-プロピルビニルエーテル
iPr−VE: i-プロピルビニルエーテル
tBu−VE: t-ブチルビニルエーテル
PGMEA: プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0042】
参考例1−1〜1−5および実施例2−1〜2−9、比較例1〜6>
表3に示す配合量で溶解混合した参考例1−1〜1−5、実施例2−1〜2−9および比較例1〜6のカラーフィルター保護膜用熱硬化性樹脂組成物は、メンブレンフィルター(材質:PE、孔径:0.2μm)で濾過した後、更に中空系フィルター(材質:PP、孔径:0.02μm)で濾過して得た。
得られたカラーフィルター保護膜用熱硬化性樹脂組成物を、スピンコーター(型式1H−DX−2、ミカサ(株)製)により10cm角のガラス基板上に回転塗布した。塗布後、ガラス基板を90℃のクリーンオーブン中にて2分間プリベーク後、230℃のクリーンオーブン中にて30分間ポストベークすることにより膜厚1.5μmの硬化膜を得た。
得られた硬化膜について、密着性および透明性の評価を行い、カラーフィルター保護膜用熱硬化性樹脂組成物について、保存安定性の評価を行った。各成分の配合割合及び物性評価の結果を下記表3、表4に示す。
【0043】
【表3】

【表4】

表3、表4中の略号は次の通りである。
VG3101L: グリシジルエーテル型エポキシ樹脂 (三井化学(株)製、商品名:「テクモアVG3101L」、エポキシ当量 210g/eq)
CG-500: フルオレン系エポキシ樹脂 (大阪ガスケミカル(株)製、商品名:「OGSOLCG-500」、エポキシ当量 311 g/eq)
Ep-828: ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂 (三菱化学(株)製、商品名:「jER828EL」、エポキシ当量 190 g/eq)
Cel-2021p: 3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート (ダイセル化学工業(株)製、商品名:「セロキサイド2021P」、エポキシ当量 130g/eq)
Ep-157: ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂 (三菱化学(株)製、商品名:「jER157S70」、エポキシ当量 210 g/eq)
EHPE-3150: 2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物 (ダイセル化学工業(株)製、商品名:「EHPE-3150」、エポキシ当量 179g/eq)
d-1: 3-アミノプロピルトリエトキシシラン
d-2: 3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン
d-3: 3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン
d-4: 3-トリエトキシシリル-N-(1.3-ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン
d-5: 3-アミノプロピルトリメトキシシラン
d-6: 3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン
e-1: 3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
e-2: 3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
e-3: 3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン
e-4: 3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン
e-5: 3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン
e-6: 3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン
e-7: 3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン
e-8: ビニルトリエトキシシラン
e-9: ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド
BYK-307: シリコーン系レベリング剤 (ビックケミー・ジャパン(株)製、商品名:「BYK-307」)
602A: フッ素系レベリング剤 ((株)ネオス製、商品名:「フタージェント 602A」)
F-554: フッ素系レベリング剤 (DIC(株)製、商品名:「メガファック F-554」)
BYK-355: アクリル系レベリング剤 (ビックケミー・ジャパン(株)製、商品名:「BYK-355」)
F-477: フッ素系レベリング剤 (DIC(株)製、商品名:「メガファック F-477」)
BYK-337: シリコーン系レベリング剤 (ビックケミー・ジャパン(株)製、商品名:「BYK-337」)
F-559: フッ素系レベリング剤 (DIC(株)製、商品名:「メガファック F-559」)
ZrOct: 2-エチルヘキシル酸ジルコニル (日本化学産業(株)製、商品名:「ニッカオクチックスジルコニウム 10%(K)」)
PGMEA: プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
MMBA: 3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート
EDM: エチレンジグリコールメチルエチルエーテル
EEP: エチルエトキシプロピオネート
BCA: ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート
【0044】
[試験方法]
<重量平均分子量>
重量平均分子量(Mw)は、東ソー(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC−8220GPCを用いて、カラムとして昭和電工(株)製SHODEX K−801を用い、THFを溶離液とし、RI検出器により測定してポリスチレン換算により求めた。
【0045】
<酸価>
酸価は、JIS K 0070:1992「化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法」の加水分解酸価測定によって測定した。
【0046】
<密着性>
硬化膜を作製したガラス基板を1cm角に断裁し、硬化膜上にエポキシ樹脂付きスタッドピン(品番:P/N901106、QUADGROUP(株)製)を立てた後、マウントクリップ(QUAD GROUP(株)製)で固定したまま150℃のオーブン中で1時間加熱した。その後、50℃以下になるまでオーブン内で徐冷し、マウントクリップを取り外して評価用サンプルを得た。この評価用サンプルについてプレッシャークッカー試験(以下、PCT)後の密着力を測定することで密着性の評価とした。PCT条件は、「温度120℃、相対湿度100%、気圧2気圧、試験時間2時間」とした。密着力の測定は、オートグラフ(型番:AG−I、(株)島津製作所製)を用いて、引張速度10mm/分にて行った。
判定基準は次の通りである。
密着力X (MPa)が、
1: X<15
2: 15≦X<20
3: 20≦X<25
4: 25≦X<30
5: 30≦X
本願の目的に供するには3以上が必要である。
【0047】
<透明性>
透明性の評価として、透過率を測定した。硬化膜を作製したガラス基板を、紫外-可視光分光光度計((株)島津製作所製UV-3700)を用いて波長380nm〜800nmまでスキャンし、光線透過率を測定した。
判定基準は次の通りである。
波長400nmの光線透過率Y(%)が、
1: Y<80
2: 80≦Y<90
3: 90≦Y<95
4: 95≦Y<98
5: 98≦Y
実用に供するには3以上が必要である。
【0048】
<保存安定性>
当該塗工液を密閉容器中に10℃で放置し、粘度変化を評価することで判断した。
判定基準は次の通りである。
粘度が初期粘度の2倍になるまでの期間Z(日)が、
1: Z<10
2: 10≦Z<20
3: 20≦Z<30
4: 30≦Z<60
5: 60≦Z
実用に供するには3以上が必要である。
【0049】
実施例2−1〜2−9の熱硬化性樹脂組成物は、本発明の全ての条件を満たすため、優れた透明性、保存安定性を有するとともに、優れた密着性を発揮することができた。中でも、(D)アミノ基を有するシランカップリング剤と(E)アミノ基を有しないシランカップリング剤を併用した実施例2−1〜2−9の熱硬化性樹脂組成物は、(D)アミノ基を有するシランカップリング剤単独を含有する参考例1−1〜1−5の熱硬化性樹脂組成物よりも密着性、透明性、保存安定性の少なくとも1つの性能が向上する傾向が見出された。
【0050】
比較例1の熱硬化性樹脂組成物は、(D)アミノ基を有するシランカップリング剤を含んでいないため、密着性が低かった。比較例2の熱硬化性樹脂組成物は、(D)アミノ基を有するシランカップリング剤の含有量が過少であったため、密着性が低かった。比較例3の熱硬化性樹脂組成物は、(D)アミノ基を有するシランカップリング剤の含有量が過多であったため、透明性及び保存安定性が低かった。また、比較例4〜6では、(D)成分を用いる代わりに(E)アミノ基を有しないシランカップリング剤を2種類併用しても、(D)成分と(E)成分とを併用したときのような密着性の大幅な向上は見られなかった。