【実施例】
【0037】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
<重合例−1:エポキシ基またはオキセタニル基を有する重合体(a−1)の合成>
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた容量500mLの4つ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEA)を175重量部仕込み、攪拌しながら加熱して80℃に昇温した。次いで、80℃の温度でグリシジルメタクリレート(以下、GMA)137.4重量部、スチレン(以下、St)55.8重量部、日油(株)製の過酸化物系重合開始剤「パーヘキシルO(以下、PHO)」6.8重量部、およびPGMEA25重量部を予め均一混合したもの(滴下成分)を、2時間かけて滴下ロートより等速滴下した。滴下終了後、80℃の温度を5時間維持した後、反応を終了した。重量平均分子量(Mw)50,000のエポキシ基含有重合体(a−1)の50%PGMEA溶液を得た。
【0038】
<重合例−2〜14:エポキシ基またはオキセタニル基を有する重合体(a−2〜14)の合成>
重合例−1と同様の方法でa−2〜14の重合体溶液を得た。各原料の配合量、反応温度、重量平均分子量を下記表1に示す。
【0039】
【表1】
表1中の略号は次の通りである。
GMA: グリシジルメタクリレート
St: スチレン
DCPMA: ジシクロペンタニルメタクリレート
M−100: 3、4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート
CHMA: シクロヘキシルメタクリレート
OXE−30: メタクリル酸3-メチル-3-オキセタン-イルメチルエステル
CHMI: シクロヘキシルマレイミド
MPS: メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
PHO: 過酸化物系重合開始剤 (商品名:「パーヘキシルO」)
PGMEA: プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0040】
<合成例−1:多価カルボン酸ヘミアセタールエステル(b−1)の合成>
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えた4つ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEA)26.9重量部、シクロヘキサントリカルボン酸(以下、CHTA)27.3重量部、n-プロピルビニルエーテル(以下、nPr−VE)45.7重量部を仕込み、攪拌しながら加熱し80℃に昇温した。次いで、温度を保ちながら攪拌し続け、混合物の酸価が2.0mgKOH/g以下になったところで反応を終了し、溶液の酸価1.2mgKOH/gの多価カルボン酸ヘミアセタールエステル(b−1)の60%PGMEA溶液を得た。
【0041】
<合成例−2〜6:多価カルボン酸ヘミアセタールエステル(b−2〜6)の合成>
合成例−1と同様の方法でb−2〜6の化合物を得た。各原料の配合量、反応温度、酸価を下記表2に示す。
【表2】
表2中の略号は次の通りである。
CHTA: シクロヘキサントリカルボン酸
TMA: トリメリット酸
nPr−VE: n-プロピルビニルエーテル
iPr−VE: i-プロピルビニルエーテル
tBu−VE: t-ブチルビニルエーテル
PGMEA: プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0042】
<
参考例1−1〜1−5および
実施例2−1〜2−9、比較例1〜6>
表3に示す配合量で溶解混合した
参考例1−1〜1−5、
実施例2−1〜2−9および比較例1〜6のカラーフィルター保護膜用熱硬化性樹脂組成物は、メンブレンフィルター(材質:PE、孔径:0.2μm)で濾過した後、更に中空系フィルター(材質:PP、孔径:0.02μm)で濾過して得た。
得られたカラーフィルター保護膜用熱硬化性樹脂組成物を、スピンコーター(型式1H−DX−2、ミカサ(株)製)により10cm角のガラス基板上に回転塗布した。塗布後、ガラス基板を90℃のクリーンオーブン中にて2分間プリベーク後、230℃のクリーンオーブン中にて30分間ポストベークすることにより膜厚1.5μmの硬化膜を得た。
得られた硬化膜について、密着性および透明性の評価を行い、カラーフィルター保護膜用熱硬化性樹脂組成物について、保存安定性の評価を行った。各成分の配合割合及び物性評価の結果を下記表3、表4に示す。
【0043】
【表3】
【表4】
表3、表4中の略号は次の通りである。
VG3101L: グリシジルエーテル型エポキシ樹脂 (三井化学(株)製、商品名:「テクモアVG3101L」、エポキシ当量 210g/eq)
CG-500: フルオレン系エポキシ樹脂 (大阪ガスケミカル(株)製、商品名:「OGSOLCG-500」、エポキシ当量 311 g/eq)
Ep-828: ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂 (三菱化学(株)製、商品名:「jER828EL」、エポキシ当量 190 g/eq)
Cel-2021p: 3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート (ダイセル化学工業(株)製、商品名:「セロキサイド2021P」、エポキシ当量 130g/eq)
Ep-157: ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂 (三菱化学(株)製、商品名:「jER157S70」、エポキシ当量 210 g/eq)
EHPE-3150: 2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物 (ダイセル化学工業(株)製、商品名:「EHPE-3150」、エポキシ当量 179g/eq)
d-1: 3-アミノプロピルトリエトキシシラン
d-2: 3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン
d-3: 3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン
d-4: 3-トリエトキシシリル-N-(1.3-ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン
d-5: 3-アミノプロピルトリメトキシシラン
d-6: 3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン
e-1: 3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
e-2: 3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
e-3: 3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン
e-4: 3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン
e-5: 3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン
e-6: 3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン
e-7: 3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン
e-8: ビニルトリエトキシシラン
e-9: ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド
BYK-307: シリコーン系レベリング剤 (ビックケミー・ジャパン(株)製、商品名:「BYK-307」)
602A: フッ素系レベリング剤 ((株)ネオス製、商品名:「フタージェント 602A」)
F-554: フッ素系レベリング剤 (DIC(株)製、商品名:「メガファック F-554」)
BYK-355: アクリル系レベリング剤 (ビックケミー・ジャパン(株)製、商品名:「BYK-355」)
F-477: フッ素系レベリング剤 (DIC(株)製、商品名:「メガファック F-477」)
BYK-337: シリコーン系レベリング剤 (ビックケミー・ジャパン(株)製、商品名:「BYK-337」)
F-559: フッ素系レベリング剤 (DIC(株)製、商品名:「メガファック F-559」)
ZrOct: 2-エチルヘキシル酸ジルコニル (日本化学産業(株)製、商品名:「ニッカオクチックスジルコニウム 10%(K)」)
PGMEA: プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
MMBA: 3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート
EDM: エチレンジグリコールメチルエチルエーテル
EEP: エチルエトキシプロピオネート
BCA: ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート
【0044】
[試験方法]
<重量平均分子量>
重量平均分子量(Mw)は、東ソー(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC−8220GPCを用いて、カラムとして昭和電工(株)製SHODEX K−801を用い、THFを溶離液とし、RI検出器により測定してポリスチレン換算により求めた。
【0045】
<酸価>
酸価は、JIS K 0070:1992「化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法」の加水分解酸価測定によって測定した。
【0046】
<密着性>
硬化膜を作製したガラス基板を1cm角に断裁し、硬化膜上にエポキシ樹脂付きスタッドピン(品番:P/N901106、QUADGROUP(株)製)を立てた後、マウントクリップ(QUAD GROUP(株)製)で固定したまま150℃のオーブン中で1時間加熱した。その後、50℃以下になるまでオーブン内で徐冷し、マウントクリップを取り外して評価用サンプルを得た。この評価用サンプルについてプレッシャークッカー試験(以下、PCT)後の密着力を測定することで密着性の評価とした。PCT条件は、「温度120℃、相対湿度100%、気圧2気圧、試験時間2時間」とした。密着力の測定は、オートグラフ(型番:AG−I、(株)島津製作所製)を用いて、引張速度10mm/分にて行った。
判定基準は次の通りである。
密着力X (MPa)が、
1: X<15
2: 15≦X<20
3: 20≦X<25
4: 25≦X<30
5: 30≦X
本願の目的に供するには3以上が必要である。
【0047】
<透明性>
透明性の評価として、透過率を測定した。硬化膜を作製したガラス基板を、紫外-可視光分光光度計((株)島津製作所製UV-3700)を用いて波長380nm〜800nmまでスキャンし、光線透過率を測定した。
判定基準は次の通りである。
波長400nmの光線透過率Y(%)が、
1: Y<80
2: 80≦Y<90
3: 90≦Y<95
4: 95≦Y<98
5: 98≦Y
実用に供するには3以上が必要である。
【0048】
<保存安定性>
当該塗工液を密閉容器中に10℃で放置し、粘度変化を評価することで判断した。
判定基準は次の通りである。
粘度が初期粘度の2倍になるまでの期間Z(日)が、
1: Z<10
2: 10≦Z<20
3: 20≦Z<30
4: 30≦Z<60
5: 60≦Z
実用に供するには3以上が必要である。
【0049】
実施
例2−1〜2−9の熱硬化性樹脂組成物は、本発明の全ての条件を満たすため、優れた透明性、保存安定性を有するとともに、優れた密着性を発揮することができた。中でも、(D)アミノ基を有するシランカップリング剤と(E)アミノ基を有しないシランカップリング剤を併用した実施例2−1〜2−9の熱硬化性樹脂組成物は、(D)アミノ基を有するシランカップリング剤単独を含有する
参考例1−1〜1−5の熱硬化性樹脂組成物よりも密着性、透明性、保存安定性の少なくとも1つの性能が向上する傾向が見出された。
【0050】
比較例1の熱硬化性樹脂組成物は、(D)アミノ基を有するシランカップリング剤を含んでいないため、密着性が低かった。比較例2の熱硬化性樹脂組成物は、(D)アミノ基を有するシランカップリング剤の含有量が過少であったため、密着性が低かった。比較例3の熱硬化性樹脂組成物は、(D)アミノ基を有するシランカップリング剤の含有量が過多であったため、透明性及び保存安定性が低かった。また、比較例4〜6では、(D)成分を用いる代わりに(E)アミノ基を有しないシランカップリング剤を2種類併用しても、(D)成分と(E)成分とを併用したときのような密着性の大幅な向上は見られなかった。