特許第6183004号(P6183004)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183004
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】エンジンの制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/18 20060101AFI20170814BHJP
   F02D 41/34 20060101ALI20170814BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20170814BHJP
   F02P 5/15 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   F02B37/18 A
   F02D41/34 C
   F02D43/00 301G
   F02D43/00 301R
   F02D43/00 301B
   F02P5/15 H
【請求項の数】7
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-135288(P2013-135288)
(22)【出願日】2013年6月27日
(65)【公開番号】特開2015-10513(P2015-10513A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】村上 隆
(72)【発明者】
【氏名】平石 文昭
(72)【発明者】
【氏名】川辺 敬
【審査官】 種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−167607(JP,A)
【文献】 特開2011−256805(JP,A)
【文献】 特開昭61−265331(JP,A)
【文献】 特開2007−064030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/34
F02D 43/00
F02P 5/15
F02B 37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポート噴射及び筒内噴射を併用する燃料噴射システムと排気圧を利用する過給システムとを具備したエンジンの制御装置において、
排気通路上の過給用タービンを迂回する通路に介装されたウェストゲートバルブと、
筒内噴射量よりもポート噴射量が多い第一噴射状態において、前記エンジンの負荷が増大するほど開度が減少する第一開度特性に基づき、前記ウェストゲートバルブの開度を制御する制御手段とを備え
前記制御手段は、前記ポート噴射量よりも前記筒内噴射量が多い第二噴射状態において、前記エンジンの負荷が増大するほど開度が増大する第二開度特性に基づき、前記ウェストゲートバルブの開度を制御する
ことを特徴とする、エンジンの制御装置。
【請求項2】
前記エンジンの負荷又は回転速度を含む運転パラメーターに基づき、前記第一噴射状態と前記第二噴射状態との何れかを選択する選択手段を備えた
ことを特徴とする、請求項記載のエンジンの制御装置。
【請求項3】
前記運転パラメーターに基づき、前記エンジンの燃料噴射状態が前記第一噴射状態と前記第二噴射状態との境界状態であるか否かを判定する境界判定手段を備え、
前記制御手段は、前記境界判定手段の判定結果に応じて前記ウェストゲートバルブの開度特性を変更する
ことを特徴とする、請求項記載のエンジンの制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記エンジンの燃料噴射状態が前記境界状態であるときに、前記エンジンの燃料噴射状態が前記境界状態になる前の前記開度特性を維持する
ことを特徴とする、請求項記載のエンジンの制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記エンジンの燃料噴射状態が前記境界状態であるときに、アクセル開度変化率の大きさに基づいて前記開度特性を制御する
ことを特徴とする、請求項3又は4記載のエンジンの制御装置。
【請求項6】
前記選択手段は、前記エンジンの冷却水温に基づいて前記第一噴射状態と前記第二噴射状態との何れかを選択する条件を補正する
ことを特徴とする、請求項2〜5の何れか1項に記載のエンジンの制御装置。
【請求項7】
前記制御手段で制御される前記ウェストゲートバルブの開度特性に応じて点火時期を制御する点火時期制御手段を備えた
ことを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載のエンジンの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポート噴射及び筒内噴射を併用する燃料噴射システムと排気圧を利用する過給システムとを具備したエンジンの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの排気圧を利用する過給システムを備えたエンジンにおいて、排気通路上に介装される過給用タービンを迂回するための迂回路にウェストゲートバルブ(開閉弁)を設け、過給状態に応じてその開閉状態を制御する技術が知られている。すなわち、過給の有無に応じてウェストゲートバルブを開閉することで、過給用タービンの回転速度を制御するものである。
【0003】
例えば、過給時にウェストゲートバルブを閉鎖すると、過給用タービンの回転速度が上昇する。これにより、過給される吸気量が増大し、過給効率が向上する。また、過給を要さないエンジンの始動時にウェストゲートバルブを開放すれば、高温の排気ガスが過給用タービンを通過せずに迂回路を通って下流側に流れる。したがって、過給用タービンの下流側に配置される排気浄化装置の昇温効率や触媒の暖機性が向上する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで近年、ポート噴射及び筒内噴射を併用する燃料噴射システムを備えたエンジンが開発されている。このようなエンジンでは、筒内での燃料混合気の濃度分布を均質にした状態で燃焼させる均質燃焼と、高濃度の混合気が点火プラグの近傍に層状に偏った状態で燃焼させる成層燃焼とが実施される。例えば、均質燃焼時に主にポート噴射が利用され、成層燃焼時には主に筒内噴射が利用される。エンジンの運転状態や負荷に応じて燃料噴射方式を使い分けることで、エンジン出力や安定性を確保しながら燃費を向上させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-228486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような過給システムと燃料噴射システムとを両立させようとした場合、過給制御と燃料噴射制御とのマッチングが困難な場合がある。例えば、筒内噴射の実施中に開閉弁を開放して過給の度合いを弱めると、気筒内での空気流動が緩慢化して燃焼条件が変化し、エミッションが悪化する。また、ポート噴射の実施中に開閉弁を閉鎖した場合には、過給圧の上昇によりポンピングロスが増大し、燃費が低下することがある。
【0007】
このように、従来のエンジン制御システムにおいて、過給状態のみを意識して過給システムを調節すると、燃料噴射システムとの関係で制御が不安定となる場合がある。このような過渡状態を回避するには、車両システム毎に過給システムの制御と燃料噴射システムの制御とを適合させなければならず、車両の生産性を向上させることが困難となる。
【0008】
本件の目的の一つは、上記のような課題に鑑み創案されたもので、ポート噴射及び筒内噴射を併用する燃料噴射制御と排気圧を利用した過給制御との適合性を向上させることができるようにした、エンジンの制御装置を提供することである。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)ここで開示するエンジンの制御装置は、ポート噴射及び筒内噴射を併用する燃料噴射システムと排気圧を利用する過給システムとを具備したエンジンの制御装置である。まず、排気通路上の過給用タービンを迂回する通路に介装されたウェストゲートバルブを備える。また、筒内噴射量よりもポート噴射量が多い第一噴射状態において、前記エンジンの負荷が増大するほど開度が減少する第一開度特性に基づき、前記ウェストゲートバルブの開度を制御する制御手段を備える。前記制御手段は、前記ポート噴射量よりも前記筒内噴射量が多い第二噴射状態において、前記エンジンの負荷が増大するほど開度が増大する第二開度特性に基づき、前記ウェストゲートバルブの開度を制御する。
【0010】
上記の「筒内噴射量よりもポート噴射量が多い第一噴射状態」とは、ポート噴射の割合が筒内噴射の割合よりも大きい状態に相当する。例えば、ポート噴射のみを実施するポート噴射モード時(MPIモード時)は、これに含まれる。
上記の「第一開度特性」は、例えば通常はウェストゲート開度が大きく設定されるとともに、エンジン負荷が大きくなるほどウェストゲート開度が小さく設定されるような特性であることが好ましい。すなわち、上記の「第一開度特性」が、「オープン(開)の状態を標準状態とする特性」や、所定の例外条件が成立しない限り、ウェストゲート開度を所定開度以上(例えば全開や全開に近い開度)とする特性を含むことが好ましい。
【0012】
また、前記ウェストゲートバルブにおける前記第一開度特性と前記第二開度特性との切り換え条件を、前記第一噴射状態と前記第二噴射状態との切り換え条件に一致させることが好ましい。
上記の「前記ポート噴射量よりも前記筒内噴射量が多い第二噴射状態」とは、筒内噴射の割合がポート噴射の割合よりも大きい状態に相当する。例えば、筒内噴射とポート噴射とが併用される併用モード時(DI+MPIモード時)は、これに含まれる。
【0013】
また、上記の「第二開度特性」は、例えば通常はウェストゲート開度が小さく設定されるとともに、エンジン負荷が大きくなるほどウェストゲート開度が大きく設定されるような特性であることが好ましい。すなわち、上記の「第二開度特性」が、「クローズド(閉)の状態を標準状態とする特性」であって、所定の例外条件(上記の例外条件とは異なる条件)が成立しない限り、ウェストゲート開度を所定開度未満(上記の所定開度よりも小さい開度であって、例えば全閉や全閉に近い開度)とする特性を含むことが好ましい。
【0014】
)また、前記エンジンの負荷又は回転速度を含む運転パラメーターに基づき、前記第一噴射状態と前記第二噴射状態との何れかを選択する選択手段を備えることが好ましい。
例えば、前記エンジンの負荷及び回転速度を引数としたマップ上に、前記第一噴射状態に対応する領域と前記第二噴射状態に対応する領域とを設定しておき、このマップを用いて噴射状態を選択することが考えられる。あるいは、このマップと同等の機能を有する演算式を設定しておき、この演算式を用いて噴射状態を選択してもよい。
【0015】
)また、前記運転パラメーターに基づき、前記エンジンの燃料噴射状態が前記第一噴射状態と前記第二噴射状態との境界状態であるか否かを判定する境界判定手段を備えることが好ましい。この場合、前記制御手段は、前記境界判定手段の判定結果に応じて前記ウェストゲートバルブの開度特性を変更することが好ましい。
例えば、前記境界判定手段での判定結果が境界状態である場合には、境界状態でない場合とは異なる開度特性が付与されうるようにすることが好ましい。この場合、前記境界状態で選択されうる複数の開度特性を設定しておき、条件に応じて複数の開度特性のうちの何れかを選択するような制御を実施することが好ましい。
【0016】
)また、前記制御手段は、前記エンジンの燃料噴射状態が前記境界状態であるときに、前記エンジンの燃料噴射状態が前記境界状態になる前の前記開度特性を維持することが好ましい。
例えば、前記エンジンの負荷及び回転速度を引数としたマップ上に、前記第一噴射状態に対応する領域と前記第二噴射状態に対応する領域とを設定しておくとともに、二つの領域の境界線の周囲(上下左右)に境界領域を設定しておくことが考えられる。二つの領域の境界線は、境界領域の内側に含まれるものとする。前記制御手段は、このマップ上での座標が前記エンジンの負荷及び回転速度で表現されるエンジンの運転点を把握し、その運転点が境界領域に進入してから境界領域を脱するまでの間は、進入前の開度特性を維持すればよい。
【0017】
)また、前記制御手段は、前記エンジンの燃料噴射状態が前記境界状態であるときに、アクセル開度変化率の大きさに基づいて前記開度特性を制御することが好ましい。
例えば、上記のエンジンの運転点が境界領域内に位置する状態で、前記アクセル開度変化率が所定変化率以上であれば、前記ウェストゲートバルブに前記第二開度特性を与えることが考えられる。一方、上記のエンジンの運転点が境界領域内に位置する状態で、前記アクセル開度変化率が所定変化率未満であれば、前記ウェストゲートバルブに前記第一開度特性を与えることが考えられる。
【0018】
)また、前記選択手段は、前記エンジンの冷却水温に基づいて前記第一噴射状態と前記第二噴射状態との何れかを選択する条件を補正することが好ましい。
)また、前記制御手段で制御される前記ウェストゲートバルブの開度特性に応じて点火時期を制御する点火時期制御手段を備えることが好ましい。
【0019】
例えば、前記ウェストゲートバルブの開度特性が「第二開度特性」であるときには「第一開度特性」であるときよりも、高負荷時の点火時期を遅角方向に補正することが好ましく、あるいは、低負荷時の点火時期を進角方向に補正することが好ましい。また、前記ウェストゲートバルブの開度特性が「第二開度特性」であるときには「第一開度特性」であるときよりも、エンジン高回転時の点火時期を遅角方向に補正することが好ましく、あるいは、エンジン低回転時の点火時期を進角方向に補正することが好ましい。
これにより、前記点火時期は、前記開度特性だけでなく、前記エンジンの燃料噴射状態にも対応するものとなる。
【発明の効果】
【0020】
開示のエンジンの制御装置によれば、燃料噴射制御と過給制御との適合性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態に係るエンジンの構造を例示する図である。
図2】エンジン制御装置のブロック構成を例示する図である。
図3】エンジン制御装置でのモード選択に係る水温補正用のマップを例示するものである。
図4】エンジン制御装置での燃料噴射モードの選択に係るマップ例であり、(a)は高温時のマップ、(b)は低温時のマップであり、(c)は筒内噴射の比率設定用のマップである。
図5】エンジン制御装置でのウェストゲートバルブの開度モードの選択に係るマップ例であり、(a)は高温時のマップ、(b)は低温時のマップである。
図6】エンジン制御装置でのウェストゲートバルブの開度設定に係るマップを例示するものであり、(a)はノーマルオープン特性の領域での開度マップ、(b)はノーマルクローズ特性の領域での開度マップである。
図7】(a),(b)はエンジン制御装置での点火時期の補正に係るマップを例示するものである。
図8】エンジン制御装置での制御手順を例示するフローチャートである。
図9】エンジン制御装置による制御内容を説明するためのグラフである。
図10】変形例としてのマップ例であり、(a)は燃料噴射モードの選択に係るもの、(b)は開度モードの選択に係るものである。
図11】変形例としてのマップ例であり、(a)はノーマルオープン特性の領域での開度マップ、(b)はノーマルクローズ特性の領域での開度マップである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面を参照して、実施形態としてのエンジンの制御装置について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
【0023】
[1.装置構成]
[1−1.エンジン]
本実施形態のエンジンの制御装置は、図1に示す車載ガソリンエンジン10(以下、単にエンジン10と呼ぶ)に適用される。このエンジン10は、ポート噴射と筒内噴射とを併用する燃料噴射システムを備えるとともに、排気圧を利用した過給システムを備え、さらにEGRシステム(排気再循環システム)を備える。図1では、多気筒のエンジン10に設けられた複数の気筒(シリンダー)のうちの一つを示す。シリンダー内にはピストンが摺動自在に内装され、ピストンの往復運動がコンロッド(コネクティングロッド)を介してクランクシャフトの回転運動に変換される。
【0024】
各シリンダーの頂面には吸気ポート,排気ポートが設けられ、それぞれのポート開口には吸気弁,排気弁が設けられる。また、吸気ポートと排気ポートとの間には、点火プラグ15がその先端を燃焼室側に突出させた状態で設けられる。点火プラグ15での点火のタイミング(点火時期)は、エンジン制御装置1で制御される。
【0025】
[1−2.燃料噴射系]
各シリンダーへの燃料供給用のインジェクターとして、シリンダー内に直接的に燃料を噴射する筒内噴射弁11(直噴インジェクター)と、吸気ポート内に燃料を噴射するポート噴射弁12(ポート噴射インジェクター)とが設けられる。二種類の燃料噴射形態がエンジン10の運転状態に応じて使い分けられ、又は組み合わされて、筒内での燃料混合気の濃度分布を均質にした状態で燃焼させる均質燃焼と、高濃度の混合気が点火プラグ15の近傍に層状に偏った状態で燃焼させる成層燃焼とが実施される。
【0026】
ポート噴射は主に均質燃焼時に利用され、成層燃焼時には主に筒内噴射が利用される。ただし、筒内噴射弁11からの燃料噴射時であっても、均質燃焼を実現可能である。筒内噴射による均質燃焼では、筒内での燃料蒸発時に潜熱が吸収されて体積効率が上昇しやすい。また、燃焼温度が低下するため、ノッキングが発生しにくい。
筒内噴射弁11から噴射された燃料は、例えば筒内に形成される層状の空気流に乗って点火プラグ15の近傍に誘導され、吸入空気中に不均一に分布する。一方、ポート噴射弁12から噴射された燃料は、吸気ポート内で霧化し、吸入空気とよく混ざった状態でシリンダー内に導入される。
【0027】
これらの二種類の燃料噴射弁は、エンジン10に設けられる図示しない他の気筒にも設けられる。筒内噴射弁11及びポート噴射弁12から噴射される燃料量及びその噴射タイミングは、エンジン制御装置1で制御される。例えば、エンジン制御装置1から筒内噴射弁11及びポート噴射弁12に制御パルス信号が伝達され、その制御パルス信号の大きさに対応する期間だけ、各噴射弁11,12の噴孔が開放される。これにより、燃料噴射量は制御パルス信号の大きさ(駆動パルス幅)に応じた量となり、噴射タイミングは制御パルス信号が伝達された時刻に対応したものとなる。
【0028】
筒内噴射弁11は、高圧燃料供給路13Aを介して高圧ポンプ14Aに接続される。一方、ポート噴射弁12は、低圧燃料供給路13Bを介して低圧ポンプ14Bに接続される。筒内噴射弁11には、ポート噴射弁12よりも高圧の燃料が供給される。高圧ポンプ14A及び低圧ポンプ14Bはともに、燃料を圧送するための機械式の流量可変型ポンプである。これらのポンプ14A,14Bは、エンジン10や電動機などから駆動力の供給を受けて作動し、燃料タンク内の燃料を各供給路13A,13Bに吐出する。なお、各ポンプ14A,14Bから吐出される燃料量及び燃圧は、エンジン制御装置1で制御される。
【0029】
[1−3.吸排気系]
吸気弁の上部は、バルブリフト量,バルブタイミングを変化させるための吸気可変動弁機構28に接続され、排気弁の上部は排気可変動弁機構29に接続される。吸気弁,排気弁の動作は、これらの可変動弁機構28,29を介して、後述するエンジン制御装置1で制御される。それぞれの可変動弁機構28,29には、例えばロッカアームの揺動量と揺動のタイミングとを変更する機構として、可変バルブリフト機構及び可変バルブタイミング機構が内蔵される。
【0030】
可変バルブリフト機構は、吸気弁及び排気弁の各々のバルブリフト量を連続的に変更する機構である。この可変バルブリフト機構は、カムシャフトに固定されたカムからロッカアームやタペットに伝達される揺動の大きさ(バルブリフト量)を変更する機能を持つ。また、可変バルブタイミング機構は、吸気弁及び排気弁の各々の開閉タイミング(バルブタイミング)を変更する機構である。この可変バルブタイミング機構は、ロッカアームに揺動を生じさせるカム又はカムシャフトの回転位相を変更する機能を持つ。
【0031】
エンジン10の吸気系20及び排気系30には、排気圧を利用してシリンダー内に吸気を過給するターボチャージャー16(過給機)が設けられる。ターボチャージャー16は、吸気ポートの上流側に接続される吸気通路21と、排気ポートの下流側に接続される排気通路31との両方に跨がって介装される。ターボチャージャー16のタービン16A(過給用タービン)は、排気通路31内の排気圧で回転し、その回転力を吸気通路21側のコンプレッサー16Bに伝達する。これを受けてコンプレッサー16Bは、吸気通路21内の空気を下流側へと圧縮しながら送給し、各シリンダーへの過給を行う。ターボチャージャー16による過給操作は、エンジン制御装置1で制御される。
【0032】
吸気通路21上におけるコンプレッサー16Bよりも下流側にはインタークーラー25が設けられ、圧縮された空気が冷却される。また、コンプレッサー16Bよりも上流側にはエアフィルター22が設けられ、外部から取り込まれる空気が濾過される。さらに、コンプレッサー16Bの上流側,下流側の吸気通路21を接続するように、バイパス通路23が設けられるとともに、バイパス通路23上にバイパスバルブ24が介装される。バイパス通路23を流れる空気量は、バイパスバルブ24の開度に応じて調節される。バイパスバルブ24は、例えば車両の急減速時に開放方向に制御され、コンプレッサー16Bから送給される過給圧を再び上流側へと逃がすように機能する。なお、バイパスバルブ24の開度はエンジン制御装置1で制御される。
【0033】
吸気系20におけるコンプレッサー16Bよりも下流側と、排気系30におけるタービン16Aよりも上流側との間には、EGR(Exhaust Gas Recirculation)通路34が設けられる。EGR通路34は、シリンダーから排出されて間もない排気ガスを再びシリンダーの直上流側へと導く通路である。EGR通路34には、還流ガスを冷却するためのEGRクーラー35が介装される。還流ガスを冷却することでシリンダー内での燃焼温度が低下し、窒素酸化物の発生率が低下する。また、EGR通路34と吸気系20との合流部には、排気ガスの還流量を調節するためのEGRバルブ36が介装される。EGRバルブ36の弁開度は可変であり、エンジン制御装置1で制御される。
【0034】
インタークーラー25の下流側にはスロットルボディが接続され、さらにその下流側にはインマニ(インテークマニホールド)が接続される。スロットルボディは、前述のEGR通路34と吸気系20との合流部よりも上流側に配置される。スロットルボディの内部には、電子制御式のスロットルバルブ26が設けられる。インマニ側へと流れる空気量は、スロットルバルブ26の開度(スロットル開度)に応じて調節される。スロットル開度は、エンジン制御装置1によって制御される。
【0035】
インマニ(インテークマニホールド)には、各シリンダーへと流れる空気を一時的に蓄えるためのサージタンク27が設けられる。前述のEGR通路34と吸気系20との合流部は、サージタンク27よりも上流側に位置する。したがって、サージタンク27内には外気と排気ガスとが混在しうる。サージタンク27よりも下流側のインマニは、各シリンダーの吸気ポートに向かって分岐するように形成され、サージタンク27はその分岐点に位置する。サージタンク27は、各々のシリンダーで発生しうる吸気脈動や吸気干渉を緩和するように機能する。
【0036】
排気通路31上におけるタービン16Aよりも下流側には、触媒装置33が介装される。この触媒装置33は、例えば排気中に含まれるPM(Particulate Matter,粒子状物質)や窒素酸化物(NOx),一酸化炭素(CO),炭化水素(HC)等の成分を浄化,分解,除去する機能を持つ。また、タービン16Aよりも上流側には、各シリンダーの排気ポートに向かって分岐形成されたエキマニ(エキゾーストマニホールド)が接続される。
【0037】
タービン16Aの上流側,下流側の排気通路31を接続するように迂回路32が設けられるとともに、迂回路32上に電子制御式のウェストゲートバルブ17が介装される。ウェストゲートバルブ17は、タービン16A側に流入する排気流量を制御して過給圧を変化させる過給圧調節弁である。このウェストゲートバルブ17にはウェストゲートアクチュエーター18が併設され、弁体の位置(すなわち開度)が電気的に制御される。ウェストゲートアクチュエーター18の動作はエンジン制御装置1で制御される。
【0038】
[1−4.センサー系]
車両の任意の位置には、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度APS)を検出するアクセル開度センサー41が設けられる。アクセル開度APSは、運転者の加速要求や発進意思に対応するパラメーターであり、言い換えるとエンジン10の負荷(エンジン10に対する出力要求)に相関するパラメーターである。
【0039】
吸気通路21内には、吸気流量Qを検出するエアフローセンサー42が設けられる。吸気流量Qは、エアフィルター22を通過した空気の流量に対応するパラメーターである。また、サージタンク27内には、インマニ圧センサー43及び吸気温センサー44が設けられる。インマニ圧センサー43はサージタンク27内の圧力をインマニ圧として検出し、吸気温センサー44はサージタンク27内の吸気温度を検出する。
【0040】
クランクシャフト近傍には、エンジン回転速度Ne(単位時間あたりの回転数)を検出するエンジン回転速度センサー45が設けられる。また、エンジン10の冷却水循環路上における任意の位置には、エンジン冷却水の温度(水温WT)を検出する冷却水温センサー46が設けられる。
【0041】
ウェストゲートアクチュエーター18には、ウェストゲートバルブ17の開度に対応する弁体駆動部材のストロークを検出するホールセンサー47が設けられる。ホールセンサー47で検出されるストロークは、弁体駆動部材の基準位置からの移動量に相当する。また、触媒装置33の内部には、リニア空燃比センサー48及び酸素濃度センサー49が配置される。リニア空燃比センサー48は、触媒装置33に流入する排気の空燃比を検出し、酸素濃度センサー49は触媒装置33から流出する排気の酸素濃度を検出する。各種センサー41〜49で検出された各種情報は、エンジン制御装置1に伝達される。
【0042】
[1−5.制御系]
上記のエンジン10を搭載する車両には、エンジン制御装置1(Engine Electronic Control Unit,制御装置)が設けられる。このエンジン制御装置1は、例えばマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成され、車両に設けられた車載ネットワーク網の通信ラインに接続される。なお、車載ネットワーク上には、例えばブレーキ制御装置,変速機制御装置,車両安定制御装置,空調制御装置,電装品制御装置といったさまざまな公知の電子制御装置が、互いに通信可能に接続される。エンジン制御装置1以外の電子制御装置は、外部制御システムと呼ばれ、外部制御システムによって制御される装置は外部負荷装置と呼ばれる。
【0043】
エンジン制御装置1は、エンジン10に関する点火系,燃料系,吸排気系及び動弁系といった広汎なシステムを総合的に制御する電子制御装置であり、エンジン10の各シリンダーに対して供給される空気量や燃料噴射量,各シリンダーの点火時期,過給圧等を制御するものである。エンジン制御装置1の入力ポートには、前述の各種センサー41〜49が接続される。入力情報は、アクセル開度APS,吸気流量Q,インマニ圧,吸気温度,エンジン回転速度Ne,冷却水温WT,ウェストゲートアクチュエーター18のストローク,排気空燃比,酸素濃度等である。
【0044】
エンジン制御装置1の具体的な制御対象としては、筒内噴射弁11及びポート噴射弁12から噴射される燃料噴射量とその噴射時期,点火プラグ15による点火時期,吸気弁及び排気弁のバルブリフト量及びバルブタイミング,ターボチャージャー16の作動状態,スロットルバルブ26の開度,バイパスバルブ24の開度,ウェストゲートバルブ17の開度等が挙げられる。本実施形態では、噴射領域制御,ウェストゲートバルブ17の開度制御及び点火時期制御の関係について説明する。
【0045】
[2.制御の概要]
[2−1.噴射領域制御]
噴射領域制御とは、エンジン10の運転状態,負荷,エンジン10に要求される出力の大きさ等に応じて、筒内噴射,ポート噴射といった燃料噴射方式を使い分ける制御である。ここでは、例えばエンジン10の回転速度Neやエンジン負荷,空気量,充填効率Ec(目標充填効率,実充填効率など),アクセル開度APS,冷却水温WT等に基づき、ポート噴射のみを実施する「MPIモード」と、ポート噴射と筒内噴射との併用を許容しつつ筒内噴射を優先的に実施する「DI+MPIモード」との何れか一方が選択される。
【0046】
MPIモードは、エンジン10が低負荷,低回転のときに選択される燃料噴射モードである。MPIモードでは、筒内噴射弁11からの燃料噴射が禁止され、要求される出力を得るために噴射すべきすべての燃料がポート噴射弁12から噴射される。したがって、MPIモードでの運転時には、燃料噴射状態が「筒内噴射量よりもポート噴射量が多い第一噴射状態」となる。
【0047】
DI+MPIモードは、エンジン10の運転状態が低負荷,低回転でないとき(中負荷以上、又は中回転以上のとき)に選択される燃料噴射モードである。DI+MPIモードでは、筒内噴射がポート噴射よりも優先して実施される。すなわち、要求される出力を得るために噴射すべき燃料のすべてを筒内噴射弁11からの噴射で賄うことができる場合には、筒内噴射弁11のみで燃料を噴射する。また、例えば噴射期間の制約等により筒内噴射弁11のみの燃料噴射では不十分である場合には、不足分をポート噴射弁12から噴射し、トータルの燃料噴射量を確保する。ただし、ポート噴射量は筒内噴射量よりも少ない。したがって、DI+MPIモードでの運転時には、燃料噴射状態が「ポート噴射量よりも筒内噴射量が多い第二噴射状態」となる。
【0048】
[2−2.開度制御]
開度制御とは、ウェストゲートバルブ17の開度に関しても燃料噴射状態と同様に、エンジン10の運転状態,負荷,エンジン10に要求される出力の大きさ等に応じて、異なる二種類の開度特性を使い分ける制御である。ここでは、例えばエンジン10の回転速度Neやエンジン負荷,空気量,充填効率Ec(目標充填効率,実充填効率など),アクセル開度APS,冷却水温WT等に基づき、ウェストゲートバルブ17にノーマルオープン特性を与える「開モード」と、これとは反対のノーマルクローズ特性を与える「閉モード」との何れか一方が選択される。
【0049】
ノーマルオープン特性とは、「オープン(開)の状態を標準状態とする特性」であって、所定の例外条件が成立しない限り、ウェストゲートバルブ17の開度を所定開度以上(例えば全開や全開に近い開度)とする特性である。本実施形態の開モードでは、ウェストゲートバルブ17の開度が基本的には全開に制御される。燃料噴射モードとの適合性を考慮して、開モードが選択される条件は「MPIモードが選択されていること」とする。ただし、エンジン10の運転状態がDI+MPIモードの選択条件に近い状態である場合には、負荷が増大するに連れて、又は回転速度Neが上昇するに連れて、よりノーマルクローズ特性に近い特性を与えるものとする。
【0050】
ノーマルクローズ特性とは、「クローズド(閉)の状態を標準状態とする特性」であって、所定の例外条件(上記の例外条件とは異なる条件)が成立しない限り、ウェストゲートバルブ17の開度を所定開度未満(上記の所定開度よりも小さい開度であって、例えば全閉や全閉に近い開度)とする特性である。本実施形態の閉モードでは、ウェストゲートバルブ17の開度が基本的にはほぼ全閉に近い状態に制御される。燃料噴射モードとの適合性を考慮して、閉モードが選択される条件は「DI+MPIモードが選択されていること」とする。ただし、エンジン10が高負荷,高回転である場合には、過給圧の過度な上昇を抑制すべく、負荷が増大するに連れて、又は回転速度Neが上昇するに連れて、よりノーマルオープン特性に近い特性を与えるものとする。
【0051】
本実施形態のノーマルオープン特性は、エンジン10の負荷が増大するほどウェストゲートバルブ17の開度を減少させる特性(第一開度特性)である。また、本実施形態のノーマルクローズ特性は、エンジン10の負荷が増大するほどウェストゲートバルブ17の開度を増大させる特性(第二開度特性)である。
【0052】
[2−3.点火時期制御]
点火時期制御とは、上記の開度制御における開度モードに応じて点火プラグ15での点火時期IGを変化させる制御である。ここでは、「開モード」と「閉モード」との切り換えタイミングに合わせて、点火プラグ15での点火時期IGが補正される状態と補正されない状態とが切り換えられる。点火時期IGは、基本的にはエンジン回転速度Neとエンジン10の負荷とに基づいて設定される。このように、エンジン回転速度Neとエンジン10の負荷とに基づいて設定される標準的な点火時期IGのことを、ベース点火時期IGBと呼ぶ。
【0053】
一方、上記の開度制御で「開モード」が選択されている状態と「閉モード」が選択されている状態とでは、筒内での燃焼状態が相違する。例えば「閉モード」では、エンジン10の負荷が増大するほど過給圧が高まりエンジン出力が過大になりやすくなるため、実際の点火時期IGがベース点火時期IGBよりも遅角方向に補正され、エンジン出力が抑制される。また、「閉モード」では、エンジン10の負荷が減少するに連れて排気ポートからシリンダーへと逆流する排気量(内部EGR量)が増加するため、実際の点火時期IGがベース点火時期IGBよりも進角方向に補正され、エンジン出力の上昇が促進される。
【0054】
なお、開度制御における「開モード」及び「閉モード」の切り換えタイミングは、噴射領域制御における「MPIモード」及び「DI+MPIモード」の切り換えタイミングに対応する。したがって、本実施形態における点火時期IGは、ウェストゲートバルブ17の開度特性に応じて制御されるものであるとともに、燃料噴射方式に応じて制御されるものである。
【0055】
[3.制御装置の構成]
図2に示すように、上記の制御を実施するための要素として、エンジン制御装置1には、エンジン負荷算出部2,噴射制御部3,開度制御部4,点火制御部5が設けられる。噴射制御部3は噴射領域制御を実施するものであり、開度制御部4は開度制御を実施するもの、点火制御部5は点火時期制御を実施するものである。これらの各要素は電子回路(ハードウェア)によって実現してもよく、ソフトウェアとしてプログラミングされたものとしてもよいし、あるいはこれらの機能のうちの一部をハードウェアとして設け、他部をソフトウェアとしたものであってもよい。
【0056】
[3−1.エンジン負荷算出部]
エンジン負荷算出部2は、エンジン10の負荷Pの大きさを算出するものである。負荷Pは、シリンダーに導入された空気量に基づいて算出される。あるいは、吸気流量Qや排気流量等に基づいて算出される。その他、吸気圧や排気圧,車速V,エンジン回転速度Ne,アクセル開度APS,充填効率Ec,体積効率Ev,外部負荷装置の作動状態,車両の走行環境に関する情報等に基づいて負荷Pを算出してもよい。本実施形態では、吸気流量Qとエンジン回転速度Neとに基づいて負荷Pが算出される。ここで算出された負荷Pの値は、噴射制御部3及び開度制御部4に伝達される。
【0057】
[3−2.噴射制御部]
噴射制御部3には、噴射モード選択部3a,噴射量設定部3b,噴射制御信号出力部3cが設けられる。噴射モード選択部3aは、エンジン10の運転状態に基づいて燃料噴射モードを選択するものである。噴射制御部3には、エンジン10の運転状態と燃料噴射モードとの対応関係が規定されたマップ,演算式等が記録される。噴射モード選択部3aは、このようなマップ,演算式等に基づいて燃料噴射モードを選択する。ここで選択された燃料噴射モードの情報は、噴射量設定部3b,噴射制御信号出力部3cに伝達される。
【0058】
エンジン10の運転状態は、エンジン回転速度Ne,負荷P,アクセル開度変化率ΔAPS等に基づいて判断される。例えば、縦軸に負荷P,横軸にエンジン回転速度Neをとる座標平面上の領域として、それぞれの燃料噴射モードが設定される。エンジン10の負荷P及びエンジン回転速度Neを引数とした、燃料噴射モードを選択するためのマップのことを、燃料噴射モードマップと呼ぶ。また、このようなマップ上における座標が負荷P及びエンジン回転速度Neで表現される点のことを運転点と呼ぶ。
【0059】
本実施形態の噴射モード選択部3aには、図4(a),(b)に示すように、二種類の燃料噴射モードマップが記録されている。一方は高温時に使用されるHOTマップであり、他方は低温時に使用されるCOLDマップである。本実施形態のHOTマップは、エンジン10が十分に暖機された状態での燃料噴射方式を設定するためのマップであり、COLDマップと比較してDI+MPIモードに対応する領域がやや広めに設定されている。一方、COLDマップでは、低温時の燃焼安定性を向上させるべく、MPIモードに対応する領域がやや広めに設定されている。
【0060】
これらのHOTマップ,COLDマップは、冷却水温WTに応じて、かつ、冷却水温WTの変化履歴を考慮して選択される。例えば図3に示すように、冷却水温WTが第一閾値WT1未満のときにはCOLDマップが選択され、冷却水温WTが第一閾値WT1よりも大きい第二閾値WT2以上のとき(WT1<WT2)にはHOTマップが選択される。また、冷却水温WTが第一閾値WT1以上かつ第二閾値WT2未満のときには、前回の演算周期で選択された一方のマップが選択される。このような設定により、冷却水温WTに基づく二種類の燃料噴射モードマップの選択にヒステリシス特性(ヒステリシス的な履歴特性)が与えられる。
【0061】
上記の第一閾値WT1,第二閾値WT2は、固定値として与えられてもよいが、エンジン10のノッキング学習値に応じて補正される可変値として与えられてもよい。例えば、ノッキングの発生頻度が高ければ、ノッキングが発生しにくい方のマップ(本実施形態ではCOLDマップ)が選択されやすくなるように、第一閾値WT1,第二閾値WT2の値を増大させることが考えられる。反対に、ノッキングの発生頻度が低ければ、第一閾値WT1,第二閾値WT2の値を減少させればよい。続いて、HOTマップ,COLDマップ内に設定されている内容について詳述する。
【0062】
図4(a),(b)に示すように、高温時,低温時の何れのマップにおいても、MPIモード領域,DI+MPIモード領域,境界領域の三種類の領域が設定される。MPIモード領域,DI+MPIモード領域はそれぞれ、MPIモード,DI+MPIモードが選択される領域である。例えば図4(a)では、説明を簡略化すべく、負荷PがP1未満かつエンジン回転速度NeがNe1未満の矩形範囲をMPIモード領域とし、負荷PがP2以上又はエンジン回転速度NeがNe2以上の範囲をDI+MPIモード領域としている。MPIモード領域は、比較的低負荷かつ低回転の状態に対応する運転点を含む領域として設定される。一方、DI+MPIモード領域は、中負荷から高負荷又は中回転から高回転の状態に対応する運転点を含む領域として設定される。
【0063】
MPIモード領域とDI+MPIモード領域との間には、境界領域が設定される。境界領域は、それまでに選択されていたモードの履歴やアクセル開度変化率ΔAPS等に基づいて、MPIモード及びDI+MPIモードの何れか一方が選択される領域である。つまり、上記のエンジン10では、MPIモードが選択されうる運転状態と、DI+MPIモードが選択されうる運転状態とが重複しており、この重複する運転状態に対応するマップ上の領域が境界領域である。つまり、境界領域では、一つの運転点に対して複数の燃料噴射モード領域が設定される。
【0064】
境界領域では、アクセル開度変化率ΔAPSが正の所定値A1以上のとき(すなわち急加速時であって、ΔAPS≧A1のとき)に、DI+MPIモードが選択される。一方、アクセル開度変化率ΔAPSが負の所定値A2未満のときや、ブレーキ液圧変化率が正の所定値以上のとき(すなわち急減速時)には、MPIモードが選択される。また、A2≦ΔAPS<A1の場合には、前回の演算周期で選択された燃料噴射モードがそのまま今回の演算周期でも選択される。
【0065】
ここで、マップ上のMPIモード領域と境界領域との境界線を図4(a),(b)中に符号B1で示し、DI+MPIモード領域と境界領域との境界線を符号B2で示す。また、二本の境界線B1,B2の間を通る境界領域の中央線を符号B0で示す。HOTマップ上の境界線B1,B2及び中央線B0は、COLDマップ上の境界線B1,B2及び中央線B0よりも低負荷,低回転側に位置している。例えば、図4(a),(b)中の負荷の大小関係はP1<P4,P2<P5,P0<P3であり、回転速度の大小関係はNe1<Ne4,Ne2<Ne5,Ne0<Ne3である。
【0066】
境界領域での燃料噴射モードの選択条件は、以下のように言い換えることができる。
・運転点が中央線B0側から境界線B1を超えたらMPIモードを選択する
・運転点が中央線B0側から境界線B2を超えたらDI+MPIモードを選択する
・ΔAPS≧A1のときにDI+MPIモードを選択する
・ΔAPS<A2のときにMPIモードを選択する
(・ブレーキ液圧変化率が正の所定値以上のときにMPIモードを選択する)
・上記以外では、前回のモードを維持する
【0067】
また、前述のノッキング学習値に応じたHOTマップ,COLDマップの選択に係る補正は、各マップ上における境界線B1,B2及び中央線B0の位置を補正することと同等である。したがって、図4(a),(b)中に白抜き矢印で示すように、ノッキング学習値に応じて境界線B1,B2及び中央線B0の位置を移動させることによって、HOTマップ,COLDマップの両方の内容を一つのマップにまとめてもよい。
【0068】
噴射量設定部3bは、噴射モード選択部3aで選択された燃料噴射モードに応じて、筒内噴射弁11からの筒内噴射量F1及びポート噴射弁12からのポート噴射量F2を設定するものである。ここで設定された筒内噴射量F1及びポート噴射量F2は、噴射制御信号出力部3cに伝達される。
【0069】
MPIモードが選択されている場合には、ポート噴射弁12のみが使用されるため、筒内噴射量F1は0である。噴射量設定部3bは、例えばエンジン10の負荷P,エンジン回転速度Neを引数とした燃料噴射量マップに基づいてトータルの燃料噴射量を算出し、これをポート噴射量F2として設定する。
【0070】
また、DI+MPIモードが選択されている場合には、筒内噴射弁11とポート噴射弁12とが併用される。ここでは、エンジン10が高負荷、又は高回転であるほど、ポート噴射量F2に対する筒内噴射量F1の割合が増加するように設定される。この設定には、エンジン10の負荷P,エンジン回転速度Neを引数としたマップが用いられる。例えば図4(c)に示すように、DI+MPIモード及び境界領域に対応する運転領域の運転点について、ポート噴射量F2に対する筒内噴射量F1の割合を与えるマップが使用される。なお、境界領域ではMPIモードが選択されることもあれば、DI+MPIモードが選択されることもある。したがって、境界領域における筒内噴射量F1の割合は、DI+MPIモードが選択された場合にのみ適用されることになる。
【0071】
噴射量設定部3bは、例えばエンジン10の負荷P,エンジン回転速度Neを引数とした燃料噴射量マップに基づいてトータルの燃料噴射量を算出する。また、上記のように設定された筒内噴射量F1の割合に応じて、筒内噴射量F1を設定する。さらに、トータルの燃料噴射量から筒内噴射量F1を減じた値をポート噴射量F2として設定する。
【0072】
トータルの燃料噴射量が、同一の運転点に対応するMPIモード時とDI+MPIモード時とで相違すると、エンジン出力に段差が生じかねない。そのため、トータルの燃料噴射量を与える燃料噴射量マップは、MPIモードの選択時とDI+MPIモードの選択時とで共通化することが好ましい。なお、具体的な燃料噴射量マップの形状,特性については、エンジン10の特性や種類等に応じて設定されるものであり、ここでは記載を省略する。
【0073】
噴射制御信号出力部3cは、噴射モード選択部3aで選択された燃料噴射モードに則り、噴射量設定部3bで設定された燃料噴射量が確保されるように、筒内噴射弁11,ポート噴射弁12に制御信号を出力するものである。これらの制御信号を受けた筒内噴射弁11,ポート噴射弁12は、制御信号に応じたタイミング,開弁期間で駆動される。これにより、所望の筒内噴射量F1,ポート噴射量F2が実現される。なお、筒内噴射弁11,ポート噴射弁12での燃料噴射タイミングは任意に設定可能である。
【0074】
[3−3.開度制御部]
開度制御部4には、開度モード選択部4a,開度設定部4b,開度制御信号出力部4cが設けられる。開度モード選択部4aは、エンジン10の運転状態に基づいてウェストゲートバルブ17の開度特性に関する開度モード、すなわち「開モード」及び「閉モード」の何れかを選択するものである。開度モード選択部4aには、エンジン10の運転状態と開度モードとの対応関係が規定されたマップ,演算式等が記録される。このようなマップ,演算式等に基づいて、開度モードが選択される。ここで選択された開度モードの情報は、開度設定部4b,開度制御信号出力部4cに伝達される。
【0075】
本実施形態の開度モード選択部4aには、図5(a),(b)に示すように、二種類の開度モードマップが記録されている。これらの開度モードマップは、図4(a),(b)に示す燃料噴射モードマップに対応したものである。つまり、燃料噴射モードマップ上に設定された各領域を選択するための条件(エンジン10の負荷P,エンジン回転速度Neに関する条件)と、開度モードマップ上に設定された各領域を選択するための条件とが同一となるように設定されている。
【0076】
二つの開度モードマップのうち、一方は高温時に使用されるHOTマップであり、他方は低温時に使用されるCOLDマップである。本実施形態のHOTマップは、エンジン10が十分に暖機された状態での開度特性を設定するマップであり、COLDマップと比較して閉モードに対応する領域がやや広めに設定されている。一方、COLDマップでは、低温時の燃焼安定性を向上させるべく、開モードに対応する領域がやや広めに設定されている。
【0077】
HOTマップ及びCOLDマップの選択に際し、開度モード選択部4aは、噴射モード選択部3aでの選択と同様の選択を実施する。例えば、噴射モード選択部3aがHOTマップを選択した場合には、開度モード選択部4aもHOT マップを選択する。なお、噴射モード選択部3aでの選択結果を参照する代わりに、開度モード選択部4aが冷却水温WTの値とその履歴とを考慮して、HOT マップ,COLDマップの何れかを選択するような制御構成としてもよい。
【0078】
図5(a),(b)に示すように、高温時,低温時の何れのマップにおいても、開モード領域,閉モード領域,境界領域の三種類の領域が設定される。開モード領域,閉モード領域はそれぞれ、開モード,閉モードが選択される領域である。開モード領域はMPIモード領域に対応して設定され、閉モード領域はDI+MPIモード領域に対応して設定される。例えば、図5(a)中の開モード領域に含まれる全ての運転点が、図4(a)中のMPIモード領域に含まれるように、開モード領域が設定される。同様に、図5(a)中の閉モード領域に含まれる全ての運転点が、図4(a)中のDI+MPIモード領域に含まれるように、閉モード領域が設定される。
【0079】
開モード領域と閉モード領域との間には、境界領域が設定される。境界領域は、例えばアクセル開度変化率ΔAPSに基づいて開モード及び閉モードの何れか一方が選択される領域である。つまり、上記のエンジン10では、開モードが選択されうる運転状態と、閉モードが選択されうる運転状態とが重複しており、その重複する運転状態に対応するマップ上の領域が境界領域である。図5(a),(b)中の境界領域は、図4(a),(b)中の境界領域と座標軸を重ね合わせたときに、形状が一致するように設定されている。
【0080】
境界領域では、アクセル開度変化率ΔAPSが正の所定値A1以上のとき(すなわち急加速時であって、ΔAPS≧A1のとき)に、閉モードが選択される。一方、アクセル開度変化率ΔAPSが負の所定値A2未満のときや、ブレーキ液圧変化率が正の所定値以上のとき(すなわち急減速時)には、開モードが選択される。また、A2≦ΔAPS<A1の場合には、前回の演算周期で選択された燃料噴射モードがそのまま今回の演算周期でも選択される。
【0081】
図5(a),(b)中の符号C0,C1,C2はそれぞれ、境界領域の中央線,開モード領域及び境界領域の境界線,閉モード領域及び境界領域の境界線である。燃料噴射モードマップの場合と同様に、これらの境界線C1,C2及び中央線C0の位置は、冷却水温WTやノッキング学習値に応じて移動させることができる。
【0082】
境界領域での開度モードの選択条件は、以下のように言い換えることができる。
・運転点が中央線C0側から境界線C1を超えたら開モードを選択する
・運転点が中央線C0側から境界線C2を超えたら閉モードを選択する
・ΔAPS≧A1のときに閉モードを選択する
・ΔAPS<A2のときに開モードを選択する
(・ブレーキ液圧変化率が正の所定値以上のときに開モードを選択する)
・上記以外では、前回のモードを維持する
【0083】
このように、開度制御における境界領域での開モード及び閉モードの切り換え条件も、噴射領域制御における境界領域でのMPIモード及びDI+MPIモードの切り換え条件に一致するように設定されている。
【0084】
開度設定部4bは、開度モード選択部4aで選択された開度モードに応じて、ウェストゲートバルブ17にノーマルオープン特性又はノーマルクローズ特性を与えて開度Dを設定するものである。なお、本実施形態では開度モードの選択条件と燃料噴射モードの選択条件とが同一である。したがって、開度設定部4bは、噴射モード選択部3aで選択された燃料噴射モードに応じて、ウェストゲートバルブ17の特性を設定するように機能するものであるともいえる。
【0085】
開度設定部4bには、開モードに対応するマップ(ノーマルオープンマップ)と閉モードに対応するマップ(ノーマルクローズマップ)との二種類の開度マップが記録される。ノーマルオープンマップは、開モード領域及び境界領域内の運転点での開度Dを与えるマップである。一方、ノーマルクローズマップは、閉モード領域及び境界領域の運転点での開度Dを与えるマップである。これらのマップは境界領域で重複しており、重複部分の開度Dの値がそれぞれ異なる値に設定されている。
【0086】
本実施形態におけるノーマルオープンマップ,ノーマルクローズマップをそれぞれ、図6(a),(b)に例示する。
ノーマルオープンマップには、ノーマルオープン特性を実現するための開度Dが設定される。図6(a)では、開モード領域でおおむねウェストゲートバルブ17の開度Dが全開(100[%])に設定されている。一方、境界領域では、閉モード領域に近づくほど開度Dが減少するように設定される。例えば、エンジン回転速度Neが所定値Ne1以上かつ所定値Ne2未満の範囲において、負荷Pが増大するほど開度Dが小さくなるように設定される。また、負荷Pが所定値P1以上かつ所定値P2未満の範囲において、エンジン回転速度Neが上昇するほど開度Dが小さくなるように設定される。
【0087】
ノーマルクローズマップには、ノーマルクローズ特性を実現するための開度Dが設定される。図6(b)の例では、境界領域から閉モード領域の全域にわたって、開度Dが100[%]よりも小さい所定開度未満に設定される。ただし、エンジン10が高負荷,高回転の場合には、過給圧の過度な上昇を抑制すべく、負荷Pが増大するに連れて開度Dが大きく設定される。同様に、エンジン回転速度Neが上昇するに連れて、開度Dが大きく設定される。例えば、エンジン回転速度Neが所定値Ne2以上の範囲において、負荷Pが増大するほど開度Dが大きくなるように設定される。また、負荷Pが所定値P2以上の範囲において、エンジン回転速度Neが上昇するほど開度Dが大きくなるように設定される。なお、負荷Pが高い運転領域では、DI+MPIモードでの筒内噴射量F1の割合が増加する。これに対し、筒内噴射量F1の割合の増加に合わせて開度Dが増大するように設定されるため、過給圧が高くなりすぎることがなくなり、燃費特性が改善される。
【0088】
開度設定部4bは、閉モードが選択されているときにはノーマルクローズマップを用いて、負荷P及びエンジン回転速度Neに基づき開度Dを設定する。また、開モードが選択されているときにはノーマルオープンマップを用いて、負荷P及びエンジン回転速度Neに基づき開度Dを設定する。ここで設定された開度Dの情報は開度制御信号出力部4cに伝達される。また、開度制御信号出力部4cは、ウェストゲートバルブ17の開度が開度設定部4bで設定された開度Dになるように、ウェストゲートアクチュエーター18に制御信号を出力する。制御信号を受けたウェストゲートアクチュエーター18は、制御信号に応じたストロークとなるように弁体駆動部材を駆動する。これにより、ウェストゲートバルブ17の開度が開度設定部4bで設定された開度Dとなる。
【0089】
[3−4.点火制御部]
点火制御部5には、点火時期設定部5a,点火時期制御部5b(点火時期制御手段)が設けられる。
点火時期設定部5aは、エンジン10の運転状態に基づいて点火プラグ15での点火時期を設定するものである。ここでは、エンジン回転速度Ne及び負荷Pに基づいて、標準的な点火時期IG(ベース点火時期IGB)が設定されるとともに、開度制御部4で選択されたモード(すなわち、ウェストゲートバルブ17の開度特性)に応じてベース点火時期IGBが補正される。
【0090】
点火時期設定部5aには、ベース点火時期IGBを設定するためのマップ,数式,関数等が設けられる。ここでは、エンジン回転速度Neが低いほど、あるいは負荷Pが高いほど、点火時期IGが遅角方向に移動するような点火時期特性が設定される。ここで設定されたベース点火時期IGBの情報は、点火時期制御部5bに伝達される。
【0091】
点火時期制御部5bは、ベース点火時期IGBを基準とした点火時期IGの補正量を算出し、補正後の点火時期IGで点火プラグ15を制御するものである。ここでは、開度制御部4で選択された開度モードに応じて点火時期補正マップが選択されるとともに、選択された点火時期補正マップに基づいて補正量が算出される。点火時期補正マップは、エンジン回転速度Neと負荷Pとを引数として補正量を与える三次元マップ,数式,関数等で与えられる。
【0092】
三次元マップとして与えられた点火時期補正マップを、図7(a),(b)に例示する。このマップ上では、例えば図7(a)に示すように、エンジン10の負荷Pが大きいほど点火時期IGが遅角方向に補正され、負荷Pが小さいほど進角方向に補正されるような特性が設定される。あるいは、図7(b)に示すように、エンジン10の負荷Pだけでなくエンジン回転速度Neが高い場合に、点火時期IGが遅角方向に補正されるような特性を設定してもよい。
【0093】
本実施形態の点火時期制御部5bには、図7(a)に示すような点火時期補正マップが用意される。ウェストゲートバルブ17の開度モードが「閉モード」であるとき、点火時期制御部5bは、このマップに従って補正量を算出し、補正後の点火時期IGで点火プラグ15を点火させるための制御信号を出力する。これに対して、ウェストゲートバルブ17の開度モードが「開モード」であるときには、点火時期IGが補正されることはなく、点火時期制御部5bは、ベース点火時期IGBで点火プラグ15を点火させるための制御信号を出力する。
【0094】
[4.フローチャート]
図8は、噴射領域制御及び開度制御の手順を説明するためのフローチャートである。このフローは、エンジン制御装置1において所定の演算周期で繰り返し実施される。
ステップA10では、各種センサー41〜49で検出された各種情報がエンジン制御装置1に入力される。また、ステップA20では、エンジン負荷算出部2において、吸気流量Q,エンジン回転速度Ne等に基づいてエンジン10の負荷Pが算出される。
【0095】
続くステップA30では、冷却水温センサー46で検出された冷却水温WTが上昇傾向にあるか否かが判定される。この判定は、少なくとも噴射モード選択部3a,開度モード選択部4aの何れかにおいて実施される。前回の演算周期で得られた冷却水温WTと比較して、今回の演算周期で得られた冷却水温WTが上昇している場合には、冷却水温WTが上昇傾向にあると判断されてステップA40に進む。一方、冷却水温WTが上昇傾向にない場合にはステップA45に進む。
【0096】
ステップA40では、冷却水温WTが第二閾値WT2以上であるか否かが判定される。この条件の成立時には、エンジン10がより高温になりつつあるものと判断されて、制御がステップA50に進む。このステップA50では、二種類の燃料噴射モードマップのうちHOTマップが選択されるとともに、開度モードマップに関してもHOTマップが選択される。一方、この条件が不成立であればステップA55に進み、前回に選択されたマップが使用される。
【0097】
また、ステップA45では、冷却水温WTが第一閾値WT1未満であるか否かが判定される。この条件の成立時には、エンジン10がより低温になりつつあるものと判断されて、制御がステップA60に進む。このステップA60では、二種類の燃料噴射モードマップのうちCOLDマップが選択されるとともに、開度モードマップに関してもCOLDマップが選択される。一方、この条件が不成立であればステップA55に進み、前回に選択されたマップが使用される。このように、冷却水温WTに基づくマップの選択条件は、燃料噴射モードマップ及び開度モードマップで共通である。
【0098】
ステップA70では、噴射モード選択部3aにおいて、エンジン10の運転状態に基づいて燃料噴射モードが選択されるとともに、開度モード選択部4aにおいて開度モードが選択される。燃料噴射モードの選択では、例えば図4(a),(b)に示すようなマップ上で、その時点の運転点がどの領域内にあるかが判断される。また、開度モードの設定においても、例えば図5(a),(b)に示すようなマップ上での運転点の位置に応じて開度モードが判断される。なお、本実施形態の開度モードの判定に係るマップは、燃料噴射モードの判定に係るマップと一対一で対応しているため、燃料噴射モードがMPIモードであれば、開度モードは開モードとなる。同様に、燃料噴射モードがDI+MPIモードであれば、開度モードが閉モードとなる。
【0099】
ステップA80では、それぞれのモード判定における運転点が境界領域内にあるか否かが判定される。ここでは、燃料噴射モードが境界領域であれば、開度モードも境界領域となる。運転点が境界領域内にある場合には、ステップA90に進む。一方、運転点が境界領域内にない場合には、燃料噴射モード,開度モードがすでに確定しているものと判断されて、ステップA85へと進む。なお、ステップA85では、モードの種類が判断される。例えば、開度モードが開モードの場合や、燃料噴射モードがMPIモードの場合には、ステップA110に進む。一方、開度モードが閉モードの場合や、燃料噴射モードがDI+MPIモードの場合には、ステップA120に進む。
【0100】
ステップA90では、アクセル開度変化率ΔAPSが所定値A1以上であるか否かが判定される。この条件の成立時には、急加速が要求されているものと判断されてDI+MPIモード,閉モードが選択され、ステップA120に進む。一方、この条件の不成立時にはステップA95に進む。
【0101】
ステップA95では、アクセル開度変化率ΔAPSが所定値A2未満であるか否かが判定される。この条件の成立時には、急減速が要求されているものと判断されてMPIモード,開モードが選択され、ステップA110に進む。また、この条件の不成立時にはステップA100に進み、前回の演算周期で選択されたモードの種類に応じて制御の進み先が決定される。例えば、前回の開度モードが開モードであればステップA110に進み、閉モードであればステップA120に進む。なお、ステップA95においてブレーキ液圧変化率を判定し、その値が正の所定値以上のときにステップA110に進むような制御構成としてもよい。
【0102】
ステップA110では、燃料噴射モードがMPIモードで確定しているため、噴射量設定部3bにおいてポート噴射弁12から噴射されるポート噴射量F2が設定される。また、続くステップA115では、開度設定部4bにおいて、ウェストゲートバルブ17にノーマルオープン特性が付与される。ここでは、図6(a)に示すような開度マップに基づいて、開度Dが設定される。この設定では、ウェストゲートバルブ17の開度Dが閉モード領域に近づくにしたがって減少するような開度特性が与えられる。例えば、エンジン10の負荷Pが増大するほど、あるいはエンジン回転速度Neが増大するほど、開度Dが小さく設定される。また、ステップA118では、点火時期設定部5aにおいてベース点火時期IGBが設定される。
【0103】
これに対して、ステップA120では、燃料噴射モードがDI+MPIモードで確定しているため、噴射量設定部3bにおいてトータルの燃料噴射量が設定されるとともに、筒内噴射弁11から噴射される筒内噴射量F1とポート噴射量F2とが設定される。また、続くステップA125では、開度設定部4bにおいて、ウェストゲートバルブ17にノーマルクローズ特性が付与される。ここでは、図6(b)に示すような開度マップに基づいて開度Dが設定される。
【0104】
この開度マップに基づく設定では、エンジン10の負荷P,エンジン回転速度Neが増大するに連れて、ウェストゲートバルブ17の開度Dが増大するような開度特性が与えられる。また、ステップA128では、点火時期設定部5aにおいてベース点火時期IGBが設定されるとともに、点火時期制御部5bにおいて補正量が算出される。点火時期IGの補正量は、例えば図7(a)に示すようなマップに基づき、エンジン10の負荷P及びエンジン回転速度Neを引数として算出される。
【0105】
ステップA130では、噴射制御信号出力部3cにおいて、ステップA110,A120で設定された燃料噴射量が確保されるように、筒内噴射弁11,ポート噴射弁12に対して制御信号が出力される。また、開度制御信号出力部4cにおいて、ステップA115,A125で設定された開度Dに基づく制御信号が出力される。さらに、点火時期制御部5bにおいて、ステップA118,A128で設定された点火時期IGに点火プラグ15を点火させるための制御信号が出力される。
【0106】
[5.作用,効果]
(1)上記のエンジン制御装置1では、筒内噴射よりもポート噴射の割合が大きいMPIモードが選択されているときに、ウェストゲートバルブ17にノーマルオープン特性が付与される。これにより、MPIモード下におけるタービン16Aの回転速度の上昇が抑制され、延いては過給量,過給圧の上昇が抑制される。したがって、シリンダー内に過剰に吸入空気が導入されるようなことを回避することができ、エンジン10の燃焼安定性を向上させることができる。
【0107】
また、過給圧が低下することから、同一の吸入空気量を得るためのスロットル開度を増大させることができる。これにより、エンジン10のポンピングロス(吸排気損失のうち、特に吸気抵抗によって生じる損失)を低減することができる。さらに、燃料噴射モードと開度モードとを一対一で対応させることにより、制御が複雑化することがなくなり、噴射領域制御と開度制御との適合性を向上させることができる。
【0108】
なお、過給状態のみを意識して過給システムが調節するような従来のエンジン制御システムでは、燃料噴射システムとの関係で制御が不安定となる場合がある。これに対し、上記のエンジン制御装置1ではそのような過渡状態の発生を未然に防ぐことができ、燃料噴射制御と過給制御との適合性を向上させることができる。
【0109】
(2)一方、ポート噴射よりも筒内噴射の割合が大きいDI+MPIモードが選択されているときに、ウェストゲートバルブ17にノーマルクローズ特性が付与される。これにより、DI+MPIモード下におけるタービン16Aの回転速度の上昇を促進することができ、過給量,過給圧を上昇させることができる。したがって、シリンダー内に十分な過給空気を供給することができ、筒内噴射によるエンジン10の燃焼安定性を向上させることができるとともに、エミッションを改善することができる。
【0110】
また、筒内への吸入空気量が増加することから、筒内における燃料噴霧と吸入空気との混合性を改善することができ、燃料噴霧のペネトレーション(貫徹力)の影響を小さくすることができる。例えば、シリンダー内面やピストン頂面への燃料付着を抑制することができる。したがって、エンジン10の燃焼安定性をより向上させることができる。
【0111】
また、ウェストゲートバルブ17におけるノーマルオープン特性とノーマルクローズ特性との切り換え条件が、MPIモードとDI+MPIモードとの切り換え条件に一致しているため、タービン16Aに供給される排気流量を燃料噴射方式の変化に対して即座に対応させることができる。したがって、例えばコンプレッサー16Bの作動状態や過給圧,インマニ圧等に応じてウェストゲートバルブ17を制御するような従来の開度制御と比較して、制御応答性を格段に向上させることができ、燃料噴射方式に即した適切な過給を実現することができる。
【0112】
(3)上記のエンジン制御装置1では、エンジン10の負荷P,エンジン回転速度Neといった運転パラメーターに基づいて燃料噴射モードが選択され、その選択された燃料噴射モードに対応する開度モードが選択される。したがって、負荷P,エンジン回転速度Neで表現されるようなエンジン10の運転状態と、ウェストゲートバルブ17の開度特性とを対応させることができる。つまり、ウェストゲートバルブ17の開度特性をエンジン10の運転状態に適合させることができ、過給状態だけでは把握しきれないエンジン10の運転状態をウェストゲートバルブ17の開度に反映させることができる。
【0113】
例えば、エンジン10が搭載される車両には、ブレーキ制御装置,変速機制御装置,車両安定制御装置,空調制御装置,電装品制御装置といったさまざまな外部制御システムが設けられ、外部制御システムによって制御される外部負荷装置の動作は、エンジン10の負荷Pに対して直接的な影響を与える。したがって、ウェストゲートバルブ17の開度特性を過給状態だけで判断したのでは、外部負荷装置の影響を正確に開度特性に反映させることが難しい。これに対し、上記のエンジン制御装置1では、エンジン10の負荷Pの増減がウェストゲートバルブ17の開度特性に反映されるため、従来のエンジン制御システムと比較して、エンジン10の実際の運転状態に適した制御を実施することができる。
【0114】
(4)上記のエンジン制御装置1では、図4(a),(b)に示すように、MPIモード領域とDI+MPIモード領域との間に境界領域が設定されている。一方、これに対応して、図5(a),(b)に示すように、閉モード領域と開モード領域との間にも境界領域が設定されている。そして、境界領域での開度特性は、選択された燃料噴射モードの種類に応じたものとされる。このように、エンジン10の負荷P及びエンジン回転速度Neに基づく一意的な設定をするのではなく、実際の燃料噴射モードに応じてウェストゲートバルブ17の開度特性が設定される。したがって、燃料の供給方式に由来するエンジン10の燃焼安定性の変化を過給制御でカバーすることができ、エンジン10の燃焼安定性を向上させることができる。
【0115】
(5)上記のエンジン制御装置1では、運転点が境界領域内にあるときのモード選択にヒステリシス特性が与えられる。例えば、図5(a)のマップ上で運転点が開モード領域から境界領域に突入した際には、直ちに閉モードが選択されるのではなく、その運転点が境界線C2を超えるまでの間は開モードが維持される。一方、運転点が閉モード領域から境界領域に突入した際には、その運転点が境界線C1を超えるまでの間は閉モードが維持される。このヒステリシス特性は、開度制御のみならず噴射領域制御においても付与される。
【0116】
上記の通り、開度特性がエンジン10の運転点の履歴に基づいて制御されるため、ウェストゲートバルブ17の開度制御に係る制御ハンチングを回避することができ、延いてはエンジン10の燃焼安定性を向上させることができる。また、燃料噴射方式の切り換えに係る制御ハンチングも回避されるため、エンジン10の燃焼安定性を向上させることができる。
【0117】
(6)上記のエンジン制御装置1では、運転点が境界領域内にあるときに、アクセル開度変化率ΔAPSに基づいて燃料噴射方式,開度特性が選択される。例えば、図9に示すように、車両加速時の運転点Aがたとえ境界線C1近傍に位置する状態であっても、アクセル開度変化率ΔAPSが所定値A1以上である場合には、ドライバーが急加速を要求しているものと判断されて、DI+MPIモードが選択されるとともに、閉モードが選択される。これにより、境界領域における車両の加速性を向上させることができる。また、アクセル開度変化率ΔAPSが所定値A1未満であれば、運転点が境界線C2を超えたときにDI+MPIモードが選択される(図9中の運転点B)。つまり、緩加速時にはMPIモードでの運転領域を拡大することができ、高い燃焼安定性を維持することができる。
【0118】
(7)上記のエンジン制御装置1では、エンジン10の冷却水温WTに基づいてモード選択条件が変更される。例えば、噴射領域制御では、図4(a),(b)に示すように、冷却水温WTに応じてHOTマップ,COLDマップの何れかが選択され、あるいは、中央線B0,境界線B1,B2の位置が変更される。開度制御においても同様である。このように、冷却水温WTに基づいて境界領域を変更することで、エンジン10の内部負荷の影響を考慮してウェストゲートバルブ17の開度特性を決定することができ、エンジン10の制御性を向上させることができる。例えば、冷態始動直後のエンジン10の燃焼安定性を高めることができる。
【0119】
(8)上記のエンジン制御装置1では、図6(a)に示すように、開モードでは負荷Pが大きいほど、ウェストゲートバルブ17の開度Dが小さくなるように設定される。このような設定により、シリンダー内に導入される吸気量を増加させることができ、エンジン出力を増大させることができる。一方、図6(b)に示すように、閉モードでは負荷Pが大きいほど、ウェストゲートバルブ17の開度Dが大きくなるように設定される。このような設定により、過給圧の過度な上昇を抑制することができる。
【0120】
(9)また、上記のエンジン制御装置1では、エンジン10の負荷Pの変化に対してウェストゲートバルブ17の開度Dを増減させるだけでなく、エンジン回転速度Neの変化に対しても開度Dを増減させている。例えば、開モードではエンジン回転速度Neが高いほど開度Dが小さくなるように設定され、閉モードではエンジン回転速度Neが高いほど開度Dが大きくなるように設定される。このような設定により、開モードと閉モードとの切り換えや、MPIモードとDI+MPIモードとの切り換えの前後での過給圧の急変を抑制することができ、エンジン10の燃焼安定性をさらに向上させることができる。
【0121】
(10)また、上記のエンジン制御装置1では、ウェストゲートバルブ17の開度特性に応じて点火時期IGが制御される。例えば、開度モードが開モードであるときのベース点火時期IGBを基準として、閉モードであるときには、エンジン10の負荷Pが大きいほど、点火時期IGが遅角方向に補正される。これにより、過給圧が過剰に上昇するような事態を回避しやすくすることができる。
【0122】
一方、エンジン10の負荷Pが小さいほど、点火時期IGが進角方向に補正される。これにより、内部EGR量の増加に伴う不安定な燃焼を抑制することができ、エンジン10の燃焼状態を安定化することができる。また、内部EGR量の増加に伴ってエンジン出力が低下したとしても、点火時期IGの進角設定でエンジン出力を補うことができ、エンジン出力を確保することができる。このように、エンジン10の運転状態に見合った点火時期IGを設定することができ、適切なエンジン出力を得ることができる。
【0123】
また、上記のエンジン制御装置1では、ウェストゲートバルブ17の開度特性と燃料噴射方式とが対応しているため、燃料噴射方式と点火時期IGの制御とを対応させることができる。このように、燃料噴射方式に合わせて点火時期IGのタイミングを相違させることで、エンジン10の燃焼安定性を向上させることができる。
【0124】
[6.変形例]
上述した実施形態に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
上述の実施形態では、開度モードマップと燃料噴射モードマップとが一対一で対応するものを例示したが、これらのモードマップの関係は、厳密に一対一に対応していなくてもよい。ここで、モードマップの関係の変形例を図10(a),(b)に例示する。
【0125】
図10(a)は、エンジン10の負荷P及びエンジン回転速度Neに応じてMPIモード,DI+MPIモードの何れかを選択するための燃料噴射モードマップであり、MPIモード領域,DI+MPIモード領域が隣接するように設定されたものである。ここでは、燃料噴射モードの選択に係る境界領域が設定されない。一方、図10(b)は、エンジン10の負荷P及びエンジン回転速度Neに応じて開モード,閉モードの何れかを選択するための開度モードマップであり、開モード領域と閉モード領域との間に境界領域が設定されたものである。ここで、開度モードマップ中の境界領域は、燃料噴射モードマップにおけるMPIモード領域とDI+MPIモード領域との境界線に対応する線〔図10(b)中の破線〕を含むような範囲で設定される。
【0126】
このような設定により、例えばMPIモードの選択時であっても、MPIモード領域内で負荷Pやエンジン回転速度Neが大きい場合には、ウェストゲートバルブ17を閉鎖してエンジン10に過給傾向を与えることができる。また、DI+MPIモードの選択時であっても、DI+MPIモード領域内で負荷Pやエンジン回転速度Neが小さい場合には、ウェストゲートバルブ17を開放して過給傾向を弱めることができる。したがって、MPIモードとDI+MPIモードとの間の切り換えがスムーズとなり、ドライブフィーリングを向上させることができる。
【0127】
また、上述の実施形態では、図4(a),(b)に示すように、二種類の燃料噴射モードが設定されるエンジン10について詳述したが、ウェストゲートバルブ17の開度特性を設定する上では、燃料噴射モードの具体的な設定はこれに限定されない。少なくとも、筒内噴射量よりもポート噴射量が多い噴射状態において、ウェストゲートバルブ17にノーマルオープン特性を与えて開度を制御する領域が設けられていれば、上述の実施形態と同様の効果を奏するものとなる。同様に、少なくとも、ポート噴射量よりも筒内噴射量が多い噴射状態において、ウェストゲートバルブ17にノーマルクローズ特性を与えて開度を制御する領域が設定されていれば、上述の実施形態と同様の効果を奏するものとなる。
【0128】
また、上述の実施形態では、図6(a),(b)に示すように、ウェストゲートバルブ17の開度Dがエンジン10の負荷P及びエンジン回転速度Neに応じて変化するように設定された開度マップを例示したが、具体的な開度Dの設定は種々考えられる。例えば、図11(a)に示すように、ノーマルオープンマップにおいて、開モード領域及び境界領域での開度Dを全開に近い固定値として設定してもよい。同様に、図11(b)に示すように、ノーマルクローズマップにおいて、閉モード領域及び境界領域での開度Dを全閉に近い固定値として設定してもよい。
【0129】
また、上述の実施形態では、エンジン10の負荷P及びエンジン回転速度Neを引数としたマップを用いて、燃料噴射モード及び開度モードを設定するものを例示したが、これらのモード設定に係るマップ,演算式の設定はこれに限定されない。少なくとも、エンジンの負荷Pに相関するパラメーター、又は、エンジン回転速度Neに相関するパラメーターを用いることで、これらのモードを設定することが可能である。点火時期を設定するためのマップも同様であり、少なくともエンジンの負荷Pに相関するパラメーター、又は、エンジン回転速度Neに相関するパラメーターを用いればよい。
【符号の説明】
【0130】
1 エンジン制御装置
2 エンジン負荷算出部
3 噴射制御部
3a 噴射モード選択部(選択手段,境界判定手段)
3b 噴射量設定部
3c 噴射制御信号出力部
4 開度制御部(制御手段)
4a 開度モード選択部(選択手段,境界判定手段)
4b 開度設定部
4c 開度制御信号出力部
5 点火制御部
5a 点火時期設定部
5b 点火時期制御部(点火時期制御手段)
10 エンジン
11 筒内噴射弁
12 ポート噴射弁
16A タービン
17 ウェストゲートバルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11