【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 刊行物 JOURNAL OF MICROMECHANICS AND MICROENGINEERING、第23巻、第3号、035032 発行日 平成25年2月6日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
通電により発熱し、該熱が前記内部空間(56a)の気体に伝達されるように設けられるヒータ(72)を、さらに備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体パッケージ。
前記内部空間(56a)における相対湿度が所定の相対湿度以下となるように、前記湿度センサ(54)の出力に基づいて、前記ヒータ(72)の通電が制御されることを特徴とする請求項2に記載の半導体パッケージ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
先ず、本発明の実施形態について説明する前に、本発明者が本発明を創作するに至った経緯を説明する。
【0014】
本発明者は、シリコンを材料として形成された可動部を有するMEMS(Micro Electro Mechanical System)デバイスについて、可動部の疲労寿命を評価すべく、
図1及び
図2に示す試験片10を作成し、
図3に示す試験装置30により初期破壊強度を評価した。
【0015】
(試験片)
リソグラフィによりパターニングされ、エッチングされた側壁を有する試験片を用いると、疲労寿命のばらつき、すなわち破壊までの繰り返し数Nのばらつきが大きい。このようにばらつきが大きいのは、エッチングによる側壁の加工面粗さに起因する応力集中係数の影響が大きいと考えられる。
【0016】
そこで、本試験では、
図1及び
図2に示すように、エッチング面をもたない、メンブレン構造の試験片10を作成した。この試験片10は、シリコンからなる基板12と、基板12の一面上に設けられたマスク18と、基板12における一面と反対の裏面上に設けられた多層構造のメンブレン20と、を有する。
【0017】
基板12は、錘部14と、錘部14を所定の間隙を有して取り囲む枠部16と、を有する。一方、メンブレン20は、シリコン窒化膜22(Si
3N
4)、シリコン酸化膜24(SiO
2)、及び多結晶シリコン膜26を有する。Si
3N
4は、多結晶シリコンの約4倍の強度をもつため、シリコン窒化膜22を有することで、錘部14を上下に振動させる試験時において、多結晶シリコン膜26側からメンブレン20を破壊させることができる。また、シリコン窒化膜22は、錘部14及び枠部16の形成時に、エッチングストッパとして機能する。圧縮応力であるシリコン酸化膜24を有することで、共振周波数を振動試験器34の最大周波数である3kHz以下に制御することができる。
【0018】
厚さ400μm、一辺が20mmの平面正方形の基板12を準備し、基板12の一面側に、マスク18として、厚さが2μmのシリコン酸化膜(SIO
2)を形成した。また、基板12の一面と反対の面に、LP−CVD法を用いて、厚さが600nm、内部応力が引張である100MPaのシリコン窒化膜22を形成した。また、シリコン窒化膜22上に、プラズマCVD法を用いて、厚さが300nm、内部応力が圧縮である−200MPaのシリコン酸化膜24を形成した。さらに、シリコン酸化膜24上に、厚さが250nm、内部応力が引張である100MPaの多結晶シリコン膜26を形成した。この多結晶シリコン膜26は、LP−CVD法によりアモルファス状態のシリコンを約540℃で成膜し、その後、窒素雰囲気下で950℃、3時間の熱処理を行うことで結晶化させることで得た。
【0019】
そして、マスク18を用い、シリコン窒化膜22をエッチングストッパとして、基板12をエッチングすることで、錘部14と枠部16を形成した。錘部14については、基板12の中央に配置されるとともに、直径12mmの円柱状をなすようにした。また、枠部16については、一定幅(2mm)の環状をなすとともに、内周端の中心が錘部14の中心と一致するようにした。これにより、錘部14と枠部16との間の最小間隔は2mmとなった。このように、錘部14を有することで、共振周波数を低減することができる。なお、以下においては、錘部14の表面に位置するマスク18も錘部14の一部とし、枠部16の表面に位置するマスク18も枠部16の一部とする。
【0020】
(試験装置)
図3に示す試験装置30は、中央に錘部14を配置したメンブレン20を、外部励振による共振振動で、メンブレン20に対して垂直面外方向に変形させるようになっており、多結晶シリコン膜26が破壊に至る高い応力の印加と、短時間での高サイクル試験を可能とするものである。
【0021】
この試験装置30は、試験片10を収容し、所定の温湿度環境を提供する恒温恒湿槽32と、試験片10に振動を印加する振動試験器34と、相対変位を検出するための加速度計36及びレーザ変位計38を備えている。さらに、試験装置30は、振動試験器34の駆動を制御するコントローラ40と、加速度計36及びレーザ変位計38の出力データを収集するデータロガー42と、を備えている。また、加速度計36は、振動試験器34に内蔵されている。
【0022】
恒温恒湿槽32の内部に、上記した試験片10とともに、加速度計36が内蔵された振動試験器34とレーザ変位計38を配置し、試験片10の枠部16を、マスク18側が接触するように振動試験器34に固定した。そして、コントローラ40から出力される制御信号に基づいて、振動試験器34は基板12の厚み方向に振動させ、これにより、試験片10を、上記厚み方向、すなわち面外方向へ加振させた。
【0023】
共振時には、錘部14と枠部16とが逆位相で変位し、これによりメンブレン20が変形する。また、メンブレン20の多結晶シリコン膜26において、変形により最大応力が印加される最大応力印加点20aは、
図1及び
図2に一点鎖線で囲むように、枠部16の内周端のうち、平面正方形の各辺の中心付近となる。
【0024】
本試験では、メンブレン20に印加される最大応力(以下、印加応力と示す)を、枠部16に対する錘部14の相対変位により、FEM解析を用いて算出した。枠部16の変位は、加速度計36の加速度振幅と振動数から正弦波を仮定して算出し、錘部14の変位は、レーザ変位計38によって計測した。そして、これらの値をデータロガー42で収集し、相対変位からメンブレン20の最大応力に換算した。
【0025】
また、試験中は、錘部14の変位及び枠部16の変位をコントローラ40にもフィードバックさせ、一定の相対変位を保持するようにした。
【0026】
(試験の結果)
先ず、疲労試験で用いる基準応力σ
0を算出するために、ランピング応力試験を実施した。
【0027】
このランピング応力試験では、25℃、50%RHの環境で、振動試験器34の加振加速度を一定とし、加振周波数を300Hzから10Hz/sの割合で上昇させ、共振周波数に近づけた。そして、振動により、メンブレン20(多結晶シリコン膜26)が破壊した瞬間の相対変位から、印加応力を算出した。この試験を14の試験片10について行った。図示を省略するが、周波数の増大とともに相対変位も大きくなり、周波数が1.5kHz、相対変位が300μm付近で、各試験片10についてメンブレン20が破壊に至った。
【0028】
印加応力の算出結果は、ワイブル分布によく一致しており、算出結果をワイブル分布関数でフィッティングして、基準応力σ
0を算出した。具体的には、ワイブル分布関数の累積破壊確率Fが63%となる印加応力を、基準応力σ
0とした。基準応力σ
0は、2.58GPaとなった。また、ワイブル係数mは15.2と、強度ばらつきが小さいものとなった。
【0029】
次いで、基準応力σ
0を用いて、疲労試験を行った。
【0030】
この疲労試験では、所定の温湿度条件において、基準応力σ
0の90%、80%、70%の応力σが発生する相対変位となるように、所定の振動周波数で固定し、破壊までの繰り返し数N、すなわち疲労寿命を算出した。なお、温度を25℃とし、湿度を、95%RH、50%RH、35%RH、5%RHのそれぞれとした。また、疲労試験の最大サイクルを2×10
9とした。
図4〜
図7に疲労試験の結果(S−Nプロット)を示す。
【0031】
図4〜
図7に示すように、疲労寿命のばらつきは、従来のエッチングされた側壁を有する試験片に較べて低減された。特に
図4に示す95%RH、
図5に示す50%RH、
図6に示す35%RHにおいては、疲労寿命のばらつきが10
2未満となり、同温同湿での従来のばらつき10
3よりも大幅に低減された。なお、
図5〜
図7に示す破線は、最大サイクルの2×10
9を示し、図中の矢印は、2×10
9までのサイクルで破壊しなかった試験片10の結果を示している。
【0032】
図8〜
図10は、上記した疲労試験の結果を、破壊までの繰り返し数Nと累積破壊確率Fとの関係、すなわちワイブルプロットとしてまとめた図である。
図8は、σ/σ
0=0.9、
図9は、σ/σ
0=0.8、
図10は、σ/σ
0=0.7について示している。この結果、相対湿度が低いほど破壊までの繰り返し数Nが増加する、すなわち疲労寿命が長くなることが明らかとなった。
【0033】
ここで、疲労寿命は、ワイブル統計とパリス則でモデリングされる。シリコンは脆性材料であり、その強度にばらつきをもつため、破壊強度はワイブル統計に従う。数式1は、ワイブル分布関数を示しており、Fは累積破壊確率、σ
0は基準応力、σは印加される応力、mはワイブル係数である。
【数1】
【0034】
一方、繰り返し応力による亀裂進展を表現したパリス則により、亀裂進展速度vは数式2に示すように定義される。数式2において、aは亀裂の寸法、Nは繰り返し数、Cは定数、nは疲労指数、ΔK
Iは応力拡大係数、K
ICは破壊靭性値である。亀裂進展速度vは、1回の応力印加当たりの亀裂寸法aの進展量として示される。
【数2】
【0035】
ΔK
I/K
IC<1であるため、疲労指数nが小さいほど亀裂進展速度vは大きくなる。ここで、亀裂先端での応力拡散係数ΔK
Iは数式3で示される。数式3において、βは亀裂形状に依存する係数である。
【数3】
【0036】
そして、数式2に数式3を代入すると、数式4を得ることができる。
【数4】
【0037】
数式4を、初期亀裂寸法a
iから、破壊が起こる臨界亀裂寸法a
cまで積分すると、数式5を得ることができる。数式5は、一定の応力σがN回繰り返し印加され、亀裂寸法がa
cに到達し、破壊した場合の初期亀裂寸法a
iを示している。
【数5】
【0038】
ここで、材料強度には、ワイブル統計でモデル化される強度ばらつきがあり、それは初期亀裂寸法a
iのばらつきとして表現できる。数式1に数式3を代入すると、数式6に示すように、初期亀裂寸法a
iに対して、繰り返し応力により進展した任意の亀裂寸法aにおける累積破壊確率Fとすることができる。
【数6】
【0039】
そして、数式5を数式6に代入すると、繰り返し応力による疲労破壊確率モデルを示す数式7を得ることができる。換言すれば累積破壊確率Fを、疲労指数nを用いて示すことができる。
【数7】
【0040】
図8〜
図10に示した疲労試験のワイブルプロットを数式7にフィッティングすることで、各相対湿度における疲労指数nを算出した。
図11は、相対湿度と疲労指数nとの関係を示している。また、
図12は、同様に95℃において疲労試験を行った結果、得られた相対湿度と疲労指数nとの関係を示している。さらに、
図13は、25℃と95℃における、絶対湿度と疲労指数nとの関係を示している。
図12に示すように、95℃の試験では、測定装置の限界から95%RHの測定はできず、代わりに70%RHで測定を行った。
【0041】
図11及び
図12に示すように、相対湿度が低いほど、疲労指数nが大きくなることが明らかとなった。一方、
図13に示すように、絶対湿度と疲労指数nとの関係は不連続となっている。したがって、疲労寿命を支配する疲労特性は、絶対湿度ではなく、相対湿度に依存することが明らかとなった。そして、相対湿度が低いほど疲労寿命が伸長することが明らかとなった。さらには、
図11及び
図12より、35%RH以下において、疲労指数nの相対湿度に対する変化が大きくなっている。すなわち、35%RH以下とすると、疲労寿命を効果的に伸長できることが明らかとなった。
【0042】
なお、上記した試験片10に対し、シリコン酸化膜24の厚さを390nm、多結晶シリコン膜26の厚さを500nmに代えたものを準備し、同様の試験を実施した結果、ワイブル係数mは、相対湿度によらずほぼ一定の値を示し、膜厚によって異なることが明らかとなった。すなわち、ワイブル係数mは、多結晶シリコン膜26の膜厚に依存することが明らかとなった。
【0043】
このように、疲労指数n、すなわち疲労寿命は、相対湿度に依存することが明らかとなった。本発明は、上記試験結果に基づくものであり、以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。なお、各実施形態において、共通乃至関連する要素には同一の符号を付与するものとする。
【0044】
(第1実施形態)
先ず、
図14を用いて、本実施形態に係る半導体パッケージ50の概略構成を説明する。
【0045】
図14に示すように、半導体パッケージ50は、MEMSデバイス52と、湿度センサ54と、収容部56と、を備えている。
【0046】
MEMSデバイス52は、シリコンを材料として形成された可動部52aを有している。このようなMEMSデバイス52としては、センサ、光デバイス、高周波デバイス、発電デバイス、流体・分析デバイスなどを採用することができる。より具体的には、加速度センサ、角速度センサ、圧力センサ、MEMSミラー、可変分光器(ファブリペロー干渉計)、RFスイッチ、可変キャパシタなどがある。
【0047】
本実施形態では、一例として、SOI(Silicon On Insulator)基板を用いて形成された周知構造の静電容量式加速度センサを採用しており、可動部52aとして錘部や可動電極などを有している。
【0048】
湿度センサ54は、後述する内部空間56aに収容され、内部空間56aの相対湿度を検出するものである。このような湿度センサ54としては、抵抗式湿度センサや容量式湿度センサなど、周知のものを採用することができる。本実施形態では、MEMSデバイス52とは別チップとして湿度センサ54を有している。
【0049】
収容部56は、気体が封入される内部空間56aに、MEMSデバイス52の少なくとも可動部52aと、湿度センサ54と、を収容可能に設けられている。換言すれば、収容部56は、可動部52a及び湿度センサ54を中空に保持するように設けられている。
【0050】
内部空間56aにMEMSデバイス52全体が収容されても良いし、MEMSデバイス52のうち、可動部52aを含む一部のみが収容されても良い。また、収容部56の構成材料は特に限定されるものではない。例えば金属、セラミック、シリコンなどの半導体基板、ガラス、樹脂を採用することができる。
【0051】
一例として、本実施形態の収容部56は、略平板状をなす金属製のベース58と、有底筒状をなす金属製のキャップ60を有しており、ベース58とキャップ60とが例えば抵抗溶接されて封止されている。そして、ベース58とキャップ60により形成される閉空間が内部空間56aとされ、この内部空間56aに、MEMSデバイス52全体と湿度センサ54が配置されている。また、内部空間56aには、相対湿度を測定可能な気体が封入されている。相対湿度を測定可能な気体とは、少なくとも水蒸気を含むものである。このように、MEMSデバイス52を中空に保持する構成とすると、可動部52aを異物から保護することができる。また、可動部52aの駆動環境を安定化させることができる。
【0052】
ベース58には、MEMSデバイス52及び湿度センサ54が固定されている。また、ベース58には、MEMSデバイス52と湿度センサ54を、外部と電気的に接続するための端子62が、ガラス封止等により取り付けられている。そして、端子62のうち、ベース58から内部空間56aに突出する部分と、MEMSデバイス52や湿度センサ54のパッドとが、ボンディングワイヤ64を介して電気的に接続されている。
【0053】
MEMSデバイス52及び湿度センサ54が収容された収容部56は、配線基板66の一面に配置されている。この配線基板66は、電気絶縁性の基材に、導電性材料からなる配線68を配置してなる。端子62は、配線基板66(基材)の挿入孔に挿入されており、この挿入状態で、配線68と電気的に接続されている。
【0054】
また配線基板66には、収容部56と異なる位置に、処理回路部70が実装されている。そして、処理回路部70は、配線68を介して、MEMSデバイス52及び湿度センサ54と電気的に接続されている。処理回路部70は、MEMSデバイスの駆動回路や出力処理回路、湿度センサ54の駆動回路や温度補償などの出力処理回路を有している。なお、駆動回路や出力処理回路をMEMSデバイス52や湿度センサ54と同一チップに構成することもできる。
【0055】
次に、本実施形態に係る半導体パッケージ50の効果について説明する。
【0056】
本実施形態では、内部空間56aに収容された湿度センサ54により、内部空間56aにおける相対湿度を検出することができる。上記したように、シリコンの疲労寿命は、相対湿度に依存する。したがって、湿度センサ54の出力から、MEMSデバイス52における可動部52aの疲労寿命を把握することができる。
【0057】
例えば経年劣化により徐々にリークが進行し、これにより内部空間(56a)の相対湿度が少しずつ変化しても、湿度センサ54の出力から、可動部52aの疲労寿命を把握することができる。
【0058】
(第2実施形態)
本実施形態において、第1実施形態に示した半導体パッケージ50と共通する部分についての説明は割愛する。
【0059】
本実施形態では、
図15に示すように、半導体パッケージ50が、通電により発熱するヒータ72を備え、このヒータ72の熱が内部空間56aの気体に伝達されるように、ヒータ72が設けられる点を特徴とする。
図15に示す例では、処理回路部70にヒータ72の駆動回路が形成されており、処理回路部70から出力される駆動信号によって、ヒータ72の通電が制御される。
【0060】
ヒータ72の配置の一例を
図16に示す。
図16において、ヒータ72は、単独の素子として、ベース58に固定され、端子62及び配線68を介して、処理回路部70と電気的に接続されている。
【0061】
次に、本実施形態に係る半導体パッケージ50の効果について説明する。
【0062】
本実施形態では、ヒータ72により、内部空間56aに封入された気体の温度を高くすることができる。相対湿度は、温度が高くなると低下する。したがって、ヒータ72の熱により、内部空間56aにおける相対湿度を低くすることができる。すなわち、ヒータ72の熱により、可動部52aの疲労寿命を伸ばし、所望の疲労寿命を確保することができる。
【0063】
また、ヒータ72によって内部空間56aの温度を変化させながらも、第1実施形態に記載のように、可動部52aの疲労寿命を把握することができる。すなわち、可動部52aの疲労寿命を伸長させながら、その寿命を把握することができる。
【0064】
なお、ヒータ72の通電パターンが特に限定されない。例えば定電流を常時通電としても良いし、オンとオフとを所定周期で繰り返すようにしても良い。
【0065】
また、ヒータ72の配置は、
図16の例に限定されるものではない。ヒータ72を、MEMSデバイス52や湿度センサ54と一体的に(1チップで)形成することもできる。また、収容部56の外壁にヒータ72を配置し、収容部56を通じて内部空間56aの気体を温めるようにしても良い。
【0066】
(第3実施形態)
本実施形態において、第2実施形態に示した半導体パッケージ50と共通する部分についての説明は割愛する。
【0067】
本実施形態では、内部空間56aにおける相対湿度が所定の相対湿度以下となるように、湿度センサ54の出力に基づいて、ヒータ72の通電が制御されることを第1の特徴とする。また、相対湿度が35%RH以下となるように、ヒータ72の通電が制御されることを第2の特徴とする。半導体パッケージ50の構成は、基本的に
図15及び
図16と同じである。
【0068】
湿度センサ54は、上記した温度補償回路により、温度によらずほぼ一定の値を出力する。すなわち、相対湿度が同じであれば温度によらずほぼ一定の値を出力する。
そこで、処理回路部70は、湿度センサ54により検出された相対湿度に基づいて、所定の相対湿度以下をキープするように、ヒータ72への通電をフィードバック制御する。本実施形態では、0%RH以上35%RH以下をキープするように、ヒータ72への通電を制御する。
【0069】
次に、本実施形態に係る半導体パッケージ50の効果について説明する。
【0070】
本実施形態では、内部空間56aにおける相対湿度が所定の相対湿度以下をキープするように、処理回路部70は、ヒータ72への通電をフィードバック制御する。上記したように、相対湿度が低いほど疲労指数nが大きくなる。したがって、ヒータ72の熱により、所定の相対湿度以下をキープするようにすると、可動部52aの疲労寿命を伸長することができる。
【0071】
また、徐々にリークが進行して本来であれば相対湿度が変化するような場合でも、相対湿度に基づいてヒータ72をフィードバック制御するため、内部空間56aにおける相対湿度が所定の相対湿度以下にキープすることができる。これにより、可動部52aの疲労寿命を伸長することができる。
【0072】
さらに本実施形態では、35%RH以下となるように、ヒータ72の通電が制御される。上記(
図11及び
図12参照)したように、疲労指数nは、相対湿度が低いほど大きくなり、特に相対湿度35%以下において、大きく増加する。したがって、35%RH以下となるようにすると、可動部52aの疲労寿命をより効果的に伸長することができる。
【0073】
また、ヒータ72によって内部空間56aの温度を変化させながらも、可動部52aの疲労寿命を把握することができる。
【0074】
なお、本実施形態では、所定湿度が35%RH以下となるように、ヒータ72への通電が制御される例を示したが、基準湿度は35%RH以下に限定されるものではない。相対湿度が低いほど疲労寿命が伸長するので、例えば50%RH以下となるように、ヒータ72への通電が制御されるようにしても良い。
【0075】
(第4実施形態)
本実施形態において、第1実施形態に示した半導体パッケージ50と共通する部分についての説明は割愛する。
【0076】
本実施形態では、
図17に示すように、半導体パッケージ50が、内部空間56aに収容され、内部空間56aの温度を検出する温度センサ74を、さらに備えることを特徴とする。
図17は、第1実施形態に示す構成に、温度センサ74を負荷したものとなっている。
【0077】
ヒータ72の配置の一例を
図18に示す。
図18では、温度センサ74としてチップサーミスタを採用している。温度センサ74は、収容部56を構成するベース58に固定されており、端子62及び配線68を介して処理回路部70と電気的に接続されている。
【0078】
次に、本実施形態に係る半導体パッケージ50の効果について説明する。
【0079】
本実施形態では、内部空間56aの温度を温度センサ74に測定することができるので、この温度測定結果を元に、湿度センサ54の出力を補正することができる。これにより、相対湿度の検出精度がより向上し、ひいては可動部52aの疲労寿命をより正確に把握することが可能となる。
【0080】
また、
図11及び
図12に示すように、35%RH以上では、相対湿度が同じであれば温度によらず疲労指数nがほぼ同じ値を示しているが、5%RHでは、温度によって疲労指数nが異なっている。本実施形態によれば、温度センサ74により内部空間56aの温度を測定することができるので、可動部52aの疲労寿命をさらに精度よく把握することができる。
【0081】
なお、温度センサ74の配置は、
図18の例に限定されるものではない。温度センサ74を、MEMSデバイス52や湿度センサ54と一体的に(1チップで)形成することもできる。
【0082】
また、上記した第2実施形態、第3実施形態において、温度センサ74を備える構成としても良い。
【0083】
(第5実施形態)
本実施形態において、第1実施形態に示した半導体パッケージ50と共通する部分についての説明は割愛する。
【0084】
第1実施形態では、内部空間56aに封入される気体について特に言及しなかった。本実施形態では、内部空間56aに、気体の一部として、窒素、酸素、若しくは希ガスが封入されることを特徴とする。上記ガスは、内部空間56aに封入される気体の一部であり、気体としてはそれ以外にも水蒸気が存在するため、相対湿度を検出することができる。なお、希ガス(不活性ガスともいう)としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトンなどがある。
【0085】
次に、本実施形態に係る半導体パッケージ50の効果について説明する。
【0086】
本実施形態では、気体の一部として、窒素、酸素、若しくは希ガスを封入し、これらガスは水蒸気をほとんど含んでいない。したがって、内部空間56aにおける相対湿度を低くすることができる。これにより、可動部52aの疲労寿命を伸長することができる。
【0087】
なお、相対湿度が低い乾燥空気を封入しても同様の効果を奏することができる。
【0088】
また、上記した第2実施形態、第3実施形態、第4実施形態において、上記ガスを封入する構成としても良い。
【0089】
(第6実施形態)
本実施形態において、第1実施形態に示した半導体パッケージ50と共通する部分についての説明は割愛する。
【0090】
本実施形態では、
図19に示すように、半導体パッケージ50が、内部空間56aに収容される吸湿剤76をさらに備えることを特徴とする。
【0091】
吸湿剤76としては、メソポーラスシリカ、ゼオライト、シリカゲルなどを採用することができる。メソポーラスシリカは、例えばMEMSデバイス52上に成膜することができる。また、ゼオライトやシリカゲルについては、例えば収容部56に固定することができる。
【0092】
本実施形態では、吸湿剤76としてシリカゲルを採用しており、この吸湿剤76は、キャップ60の底部内壁に固定されている。
【0093】
次に、本実施形態に係る半導体パッケージ50の効果について説明する。
【0094】
本実施形態では、内部空間56aに配置された吸湿剤76が水分を保持するため、これにより、内部空間56aにおける相対湿度を低くすることができる。そして、可動部52aの疲労寿命を伸長することができる。
【0095】
なお、上記した第2実施形態、第3実施形態、第4実施形態、第5実施形態において、吸湿剤76を配置する構成としても良い。
【0096】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0097】
中空に可動部52a及び湿度センサ54が保持される構成としては、上記したCANパッケージに限定されるものではない。キャビティ構造を有するセラミックパッケージを採用することもできる。例えば、
図20に示す第1変形例では、収容部56を構成するベース58及びキャップ60が、セラミックからなる。端子62は、ベース58の周縁部に固定されるとともに外部に引き出されている。そして、低融点の封止用ガラス78により、ベース58とキャップ60が接続され、これにより内部空間56aが封止されている。内部空間56aから外部に引き出された端子62は、配線68を介して処理回路部70と電気的に接続されている。
【0098】
また、
図21に示す第2変形例に示すように、キャビティ構造を有するモールドパッケージを採用することもできる。
図21では、MEMSデバイス52を構成する基板に、湿度センサ54も構成されている。そして、可動部52a及び湿度センサ54を中空に保持するように、シリコンからなる収容部56(キャップ)が、NENSデバイス52を構成するシリコンに接合されている。湿度センサ54を備えるMEMSデバイス52は、リードフレームのアイランド80に固定されている。なお、処理回路部70も同一のアイランド80に固定されている。
【0099】
MEMSデバイス52及び湿度センサ54は、ボンディングワイヤ82を介してリード84と電気的に接続されている。そして、湿度センサ54を備えるMEMSデバイス52、収容部56、アイランド80,ボンディングワイヤ82、及びリード84の一部が、封止樹脂体86により、一体的に封止されている。
【0100】
このように、収容部56をMEMSデバイス52に固定して、可動部52aを中空に保持する構成とすると、内部空間56aの容積を小さくすることができる。したがって、ヒータ72や吸湿剤76を備える構成では、ヒータ72や吸湿剤76の効果を高めることができる。この場合、収容部56の空間とMEMSデバイス52における可動部52a周囲の空間とにより、内部空間56aが形成され、この内部空間56aに気体が封入される。
【0101】
それ以外にも、
図21において封止樹脂体86を有さない構成、すなわち、湿度センサ54を備えるMEMSデバイス52に、シリコンからなる収容部56が接合される構成を採用することができる。また、MEMSデバイス52に、ガラスからなる収容部56が接合される構成を採用することもできる。
【0102】
なお、湿度センサ54を備えるMEMSデバイス52、すなわち、MEMSデバイス52と湿度センサ54が同一チップとされる構成を、上記した各実施形態において適用することもできる。
【0103】
また、可動部52aを構成するシリコンとしては、単結晶シリコンに限定されず、多結晶シリコン、アモルファスシリコンを採用することもできる。