(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記腐食防止処理層が、前記化成処理により形成された層上に、アニオン性ポリマーで形成された層と、カチオン性ポリマーで形成された層が積層された複層である、請求項1に記載のリチウム電池用外装材。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のリチウム電池用外装材の一例として、
図1に示すリチウム電池用外装材1(以下、「外装材1」という。)について説明する。
本実施形態の外装材1は、
図1に示すように、バリア基材11と、腐食防止処理層12と、接着層13と、シーラント層14とがこの順に積層された積層体である。
【0011】
[バリア基材]
バリア基材11は、基材層15と、基材層15の第1の面15a側に設けられた蒸着層16と、を有する。また、バリア基材11は、蒸着層16が基材層15よりも腐食防止処理層12側に位置するようになっている。
【0012】
(基材層)
基材層15は、リチウム電池を製造する際のヒートシール工程における耐熱性の付与、成形加工や流通の際に起こり得るピンホールの発生の抑制等の役割を果たす。特に大型用途のリチウム電池の外装材の場合等は、耐擦傷性、耐薬品性、絶縁性等も付与できる。
【0013】
基材層15としては、絶縁性を有する樹脂により形成された樹脂フィルムが好ましい。
該樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルム等の延伸又は未延伸フィルムが挙げられる。
基材層15は、これらの樹脂フィルムのいずれか1種からなる単層でもよく、これらの樹脂フィルムを2種以上積層した複層でもよい。基材層15の具体例としては、例えば、延伸または無延伸ポリアミドフィルム、延伸または無延伸ポリエステルフィルム、延伸ポリアミドフィルムと延伸ポリエステルフィルムとの2層フィルム等が挙げられる。
【0014】
基材層15としては、成形性、耐熱性に優れる点では、延伸ポリアミドフィルムが好ましい。また、基材層15としては、耐酸性に優れる点では、延伸ポリエステルフィルムが好ましい。また、基材層15としては、成形性、耐熱性及び耐酸性を両立しやすい点では、延伸ポリアミドフィルムと延伸ポリエステルフィルムとの積層フィルムが好ましい。前記積層フィルムの場合、延伸ポリエステルフィルムが延伸ポリアミドフィルムよりも外側、すなわち蒸着層16から遠い側に配置されることが好ましい。
【0015】
基材層15の厚みは、成形性、耐熱性、耐ピンホール性、絶縁性の点で、6μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。また、基材層15の厚みは、薄膜化、高放熱性の点では、60μm以下が好ましく、45μm以下がより好ましい。
【0016】
基材層15の最外面(蒸着層16側とは反対側の表面)には、耐酸性付与剤、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等の各種添加剤が塗布されていてもよい。
【0017】
耐酸性付与剤としては、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、セルロースエステル、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
スリップ剤としては、例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド等の脂肪酸アミド等が挙げられる。
アンチブロッキング剤としては、シリカ等の各種フィラー系のアンチブロッキング剤が好ましい。
これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
(蒸着層)
蒸着層16は、リチウム電池内に水分が浸入することを抑制する役割を果たす。
蒸着層16は、アルミニウム、シリカ、アルミナ及びダイヤモンドライクカーボンからなる群から選ばれる少なくとも1種が蒸着された層である。なかでも、防湿性、ラミネート強度の点では、シリカ蒸着が好ましい。また、透明な外装材1とすることで電池内を可視化することができ、研究・開発用途に有利な点では、シリカ、アルミナ及びダイヤモンドライクカーボンからなる群から選ばれる少なくとも1種が蒸着された層が好ましい。電解液などの耐薬品性を考慮すると、ダイヤモンドライクカーボンが好ましい。
【0019】
蒸着層16は、アルミニウム、シリカ、アルミナ又はダイヤモンドライクカーボンのいずれか1種を単独で蒸着した層でもよく、それらの2種以上を複合蒸着した層でもよい。また、蒸着層16は、単層であってもよく、複層であってもよい。
【0020】
蒸着層16の厚さは、100〜800nmが好ましく、150〜600nmがより好ましい。蒸着層16の厚さが下限値以上であれば、優れた防湿性が得られやすい。蒸着層16の厚さが上限値を超えると、クラックなどの恐れがある。
【0021】
[腐食防止処理層]
腐食防止処理層12は、バリア基材11の蒸着層16側に設けられている。腐食防止処理層12は、基本的には、蒸着層16が電解液に侵食されてラミネート強度が低下することを抑制する役割を果たす層である。
腐食防止処理層12は、以下の処理層(α)及び処理層(β)の2種類に分類される。
(α)希土類元素酸化物を含有する層を含む。
(β)化成処理により形成された層を含む。
【0022】
(処理層(α))
処理層(α)は、希土類元素酸化物を含有する層を含む。処理層(α)は、処理層(α)を形成する処理剤がpH条件の制約があまりないことから作業環境に配慮できる点、環境衛生性の点で有利である。
希土類元素酸化物としては、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ネオジウム、酸化ランタン等が挙げられる。なかでも、電解液耐性の点から、酸化セリウムが好ましい。
【0023】
処理層(α)の形成には、例えば、希土類元素酸化物ゾルが使用できる。希土類元素酸化物ゾルは、液体分散媒中に希土類元素酸化物の微粒子(例えば平均粒径100nm以下の粒子)が分散したものである。
希土類元素酸化物ゾルの液体分散媒としては、例えば水系、アルコール系、炭化水素系、ケトン系、エステル系、エーテル系等の各種溶媒が挙げられ、水系溶媒が好ましい。
【0024】
希土類元素酸化物ゾルには、希土類元素酸化物粒子の分散を安定化させるために、分散安定化剤を含有させてもよい。分散安定化剤としては、例えば、無機酸(硝酸、塩酸、リン酸等。)、有機酸(酢酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、乳酸等。)、及びそれらの塩等が挙げられる。
分散安定化剤としては、リン酸又はリン酸塩等のリン酸化合物が好ましい。リン酸化合物は、「ゾルの分散安定化」に加えて、低温でもリン酸の脱水縮合が起きやすいことによる「処理層(α)の凝集力向上」等の効果が期待できる。凝集力が向上することで、外装材1の強度物性が良好になる傾向にある。
【0025】
リン酸化合物としては、例えば、オルトリン酸、ピロリン酸、メタリン酸、又はこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩が挙げられる。また、リン酸化合物としては、その他にも、リン酸アルミニウム、リン酸チタン等の各種塩を用いてもよい。機能発現の点では、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、ヘキサメタリン酸、ウルトラメタリン酸等の縮合リン酸、又はこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩(縮合リン酸塩)が好ましい。
特に、希土類元素酸化物ゾルを用いて処理層(α)を形成する場合、乾燥造膜性(すなわち、乾燥能力や熱量)を考慮すると、低温での反応性に優れる分散安定化剤が好ましい。このことから、リン酸塩を形成する塩としては、低温での脱水縮合性に優れるナトリウム塩が好ましい。また、リン酸化合物は、水溶性の塩が好ましい。
【0026】
腐食防止処理層12を、希土類元素酸化物とリン酸化合物を含有する処理層(α)とする場合、リン酸化合物の含有量は、希土類元素酸化物100質量部に対して、1〜100質量部が好ましく、5〜50質量部がより好ましく、5〜20質量部がさらに好ましい。リン酸化合物の含有量が下限値以上であれば、希土類元素酸化物ゾルの安定性が向上し、充分な機能を備えた外装材1が得られやすい。リン酸化合物の含有量が上限値以下であれば、希土類元素酸化物ゾルの機能が高まり、電解液の浸食を防止する性能に優れた処理層(α)が形成されやすい。
【0027】
処理層(α)は、アニオン性ポリマーを含有させることが好ましい。処理層(α)にアニオン性ポリマーを含有させて複合化することで、処理層(α)の凝集力が高まり、安定性が向上する。
アニオン性ポリマーとしては、例えば、カルボキシ基を有するポリマーが挙げられる。具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸もしくはその塩、又は(メタ)アクリル酸を主成分とするモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体等が挙げられる。
前記単量体混合物に(メタ)アクリル酸とともに用いられるモノマーとしては、以下の化合物が挙げられる。
【0028】
アルキル(メタ)アクリレート系モノマー;
(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N−アルコキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルコキシ(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;
グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有モノマー;
(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシラン等のシラン含有モノマー;
(メタ)アクリロキシプロピルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマー等。
【0029】
前記した化合物におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
前記した化合物におけるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等が挙げられる。
【0030】
アニオン性ポリマーは、処理層(α)の凝集力を高める効果に加えて、リン酸塩由来のイオンコンタミ(特にナトリウムイオン)をトラップする(カチオンキャッチャー)効果も有する。処理層(α)中に、ナトリウムイオン等のアルカリ金属イオンや、アルカリ土類金属イオンが含まれていると、このイオンコンタミを起点にして処理層(α)が侵されるおそれがある。アニオン性ポリマーによってイオンコンタミがトラップされることで、該イオンコンタミを起点として処理層(α)が侵されることを抑制しやすくなる。イオンコンタミをトラップする効果が高い点では、アニオン性ポリマーは、ポリアクリル酸が好ましい。
【0031】
アニオン性ポリマーを用いる場合は、アニオン性ポリマーを架橋することが好ましい。アニオン性ポリマーの架橋は、架橋剤を用いて行うことができる。このような架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシ基、オキサゾリン基等の架橋性基を有する化合物が挙げられる。
【0032】
イソシアネート基を有する化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートもしくはその水素添加物、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその水素添加物、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート類;
前記ジイソシアネート類を、多価アルコール(トリメチロールプロパン等。)と反応させて得られたアダクト体、水と反応させて得られたビューレット体、もしくは三量体であるイソシアヌレート体等のポリイソシアネート類;
又は、前記ポリイソシアネート類をアルコール類、ラクタム類、オキシム類等でブロック化したブロックポリイソシアネート等。
【0033】
グリシジル基を有する化合物としては、例えば、グリコール類とエピクロルヒドリンを作用させたエポキシ化合物、多価アルコール類とエピクロルヒドリンを作用させたエポキシ化合物、ジカルボン酸とエピクロルヒドリンを作用させたエポキシ化合物等が挙げられる。
グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。
多価アルコール類としては、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、シュウ酸、アジピン酸等が挙げられる。
【0034】
カルボキシ基を有する化合物としては、各種の脂肪族又は芳香族ジカルボン酸、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸のアルカリ(土類)金属塩等が挙げられる。
オキサゾリン基を有する化合物としては、オキサゾリンユニットを2つ以上有する低分子化合物等が挙げられる。イソプロペニルオキサゾリンのように重合性モノマーを用いる場合には、アクリル系モノマー((メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル等。)と共重合させたものを用いてもよい。
【0035】
アニオン性ポリマーを架橋する架橋剤の配合量は、アニオン性ポリマー100質量部に対して、1〜50質量部が好ましく、10〜20質量部がより好ましい。架橋剤の配合量が下限値以上であれば、充分な架橋構造が形成されやすい。架橋剤の配合量が上限値以下であれば、コーティング剤(処理剤)のポットライフがより良好になる。
【0036】
また、アニオン性ポリマーは、シランカップリング剤を用いて、シロキサン結合を形成させて架橋してもよい。シランカップリング剤としては、アニオン性ポリマーとの反応性の点から、エポキシシラン、アミノシラン、イソシアネートシランが好ましい。
シランカップリング剤の具体例としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
また、アニオン性ポリマーは、チタニウムやジルコニウム化合物を用いてイオン架橋してもよい。
【0037】
処理層(α)は、カチオン性ポリマーを含有させることも好ましい。処理層(α)にカチオン性ポリマーを含有させて複合化することでも、処理層(α)の凝集力が高まり、安定性が向上する。
カチオン性ポリマーとしては、エチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフトさせた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミン、又はこれらの誘導体、アミノフェノール等が挙げられる。なかでも、ポリアリルアミン又はその誘導体が好ましい。
【0038】
ポリアリルアミンとしては、アリルアミン、アリルアミンアミド硫酸塩、ジアリルアミン、ジメチルアリルアミン等の単独重合体又は共重合体を用いることができる。これらのアミンはフリーのアミンでもよく、酢酸又は塩酸で安定化させたものでもよい。
ポリアリルアミンの共重合体に用いる共重合成分としては、マレイン酸、二酸化イオウ等が挙げられる。また、1級アミンを部分メトキシ化して熱架橋性を付与したポリアリルアミンを用いてもよい。
【0039】
カチオン性ポリマーを用いる場合は、カチオン性ポリマーを架橋することが好ましい。カチオン性ポリマーの架橋は、架橋剤を用いて行うことができる。このような架橋剤としては、カルボキシル基、グリシジル基といったアミン/イミンと反応が可能な官能基を有する化合物が好ましい。
【0040】
また、ポリエチレンイミンとイオン高分子錯体を形成するカルボン酸を有するポリマーも、カチオン性ポリマーの架橋剤として用いることができる。
該ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸もしくはそのイオン塩等のポリカルボン酸(塩)、前記ポリカルボン酸(塩)にコモノマーを共重合させたコポリマー、又はカルボキシメチルセルロースもしくはそのイオン塩等のカルボキシル基を有する多糖類が挙げられる。
【0041】
処理層(α)は、アニオン性ポリマー又はカチオン性ポリマーのいずれか一方を含んでもよく、アニオン性ポリマー及びカチオン性ポリマーの両方を含んでもよい。
【0042】
処理層(α)としては、例えば、以下の処理層(α1)〜(α10)が挙げられる。
(α1)希土類元素酸化物を含有する層、
(α2)希土類元素酸化物とアニオン性ポリマーとの混合層、
(α3)希土類元素酸化物とカチオン性ポリマーとの混合層、
(α4)希土類元素酸化物とアニオン性ポリマーとカチオン性ポリマーとの混合層、
(α5)前記(α1)の層上にアニオン性ポリマーで形成した層が積層された複層、
(α6)前記(α1)の層上にカチオン性ポリマーで形成した層が積層された複層、
(α7)前記(α2)の混合層上にカチオン性ポリマーで形成した層が積層された複層、
(α8)前記(α3)の混合層上にアニオン性ポリマーで形成した層が積層された複層、
(α9)希土類元素酸化物ゾルで形成した層上に、アニオン性ポリマーで形成した層と、カチオン性ポリマーで形成した層が順次積層された複層、
(α10)希土類元素酸化物ゾルで形成した層上に、カチオン性ポリマーで形成した層と、アニオン性ポリマーで形成した層が順次積層された複層等。
【0043】
処理層(α2)〜(α4)は、塗液の安定性を考慮する必要があるが、希土類元素酸化物ゾルと、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの少なくとも一方とを事前に一液化したコーティング剤(処理剤)で形成できる。
【0044】
処理層(α)としては、電解液によって蒸着層16が侵食されることを抑制する効果が高い点から、処理層(α2)〜(α8)が好ましく、処理層(α2)、処理層(α3)、処理層(α7)、処理層(α8)がより好ましい。
また、カチオン性ポリマーは、後述する接着層13で挙げる変性ポリオレフィン樹脂との接着性が良好である。そのため、接着層13に変性ポリオレフィン樹脂を用いる場合は、処理層(α3)、処理層(α4)、処理層(α5)、処理層(α7)がより好ましく、処理層(α3)、処理層(α7)がさらに好ましい。
【0045】
処理層(α)の単位面積あたりの質量は、0.005〜0.200g/m
2が好ましく、0.010〜0.100g/m
2がより好ましい。処理層(α)の単位面積あたりの質量が下限値以上であれば、電解液によって蒸着層16が侵食されることを抑制する効果が得られやすい。処理層(α)の単位面積あたりの質量が上限値以下であれば、乾燥時の熱によるキュアが不十分となることを抑制しやすく、処理層(α)の凝集力を高くしやすい。
【0046】
(処理層(β))
処理層(β)は、化成処理によって形成される層を含む。
化成処理としては、クロメート処理、ジルコニウム処理、チタニウム処理、バナジウム処理、モリブデン処理、リン酸カルシウム処理、水酸化ストロンチウム処理、セリウム処理及びルテニウム処理からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。なかでも、化成処理としては、耐電解液性の点から、クロメート処理が好ましい。
【0047】
処理層(β)には、前記したアニオン性ポリマー及びカチオン性ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有させることが好ましい。これにより、処理層(β)と蒸着層16との密着性が向上する。また、処理層(β)にアニオン性ポリマーやカチオン性ポリマーを含有させる場合は、それらを架橋することが好ましい。アニオン性ポリマーやカチオン性ポリマーを架橋する方法は、処理層(α)の場合と同じ方法が挙げられる。
処理層(β)は、アニオン性ポリマー又はカチオン性ポリマーのいずれか一方を含んでもよく、アニオン性ポリマー及びカチオン性ポリマーの両方を含んでもよい。
【0048】
処理層(β)としては、例えば、以下の処理層(β1)〜(β10)が挙げられる。
(β1)化成処理で形成した層、
(β2)化成処理で形成した層上に、カチオン性ポリマーで形成した層が積層された複層、
(β3)化成処理で形成した層上に、アニオン性ポリマーで形成した層が積層された複層、
(β4)化成処理剤で形成され、アニオン性ポリマーを含有する層、
(β5)化成処理剤で形成され、カチオン性ポリマーを含有する層、
(β6)化成処理剤で形成され、アニオン性ポリマー及びカチオン性ポリマーを含有する層、
(β7)前記(β4)の層上にカチオン性ポリマーで形成した層が積層された複層、
(β8)前記(β5)の層上にアニオン性ポリマーで形成した層が積層された複層、
(β9)化成処理で形成した層上に、アニオン性ポリマーで形成した層とカチオン性ポリマーで形成した層が順次積層された複層、
(β10)化成処理で形成した層上に、カチオン性ポリマーで形成した層とアニオン性ポリマーで形成した層が順次積層された複層等。
処理層(β4)〜(β6)は、アニオン性ポリマー及びカチオン性ポリマーの少なくとも一方を配合した化成処理剤で形成することができる。
【0049】
カチオン性ポリマーは、後述する接着層13で挙げる変性ポリオレフィン樹脂との接着性が良好である。そのため、接着層13に変性ポリオレフィン樹脂を用いる場合は、処理層(β2)、処理層(β5)、処理層(β6)、処理層(β7)、処理層(β9)が好ましい。
【0050】
処理層(β)の単位面積あたりの質量は、0.005〜0.200g/m
2が好ましく、0.010〜0.100g/m
2がより好ましい。処理層(β)の単位面積あたりの質量が下限値以上であれば、電解液によって蒸着層16が侵食されることを抑制する効果が得られやすい。また、処理層(β)の単位面積あたりの質量が上限値を超えても、電解液によって蒸着層16が侵食されることを抑制する効果はほとんど変わらなくなる。
【0051】
[接着層]
接着層13は、腐食防止処理層12における蒸着層16側とは反対側に設けられている。接着層13は、腐食防止処理層12とシーラント層14とを接着する層である。接着層13は、用いる接着成分の種類によって接着層(γ)と接着層(δ)の2種類に分類される。
(γ)熱ラミネートに適した熱接着性樹脂を用いて形成した層。
(δ)ドライラミネートに適した接着剤を用いて形成した層。
【0052】
(接着層(γ))
接着層(γ)を形成する熱接着性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂に対し、不飽和カルボン酸もしくはその酸無水物、又は不飽和カルボン酸もしくはその酸無水物のエステルをラジカル開始剤の存在下でグラフト変性してなる変性ポリオレフィン樹脂が挙げられる。以下、不飽和カルボン酸もしくはその酸無水物と、不飽和カルボン酸もしくはその酸無水物のエステルを合わせてグラフト化合物ということがある。
前記変性ポリオレフィン樹脂は、グラフト化させたグラフト化合物が有する官能基と、各種金属又は官能基を含有するポリマーとの反応性を利用して接着性を付与する。
【0053】
ポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、プロピレン−αオレフィン共重合体等が挙げられる。
【0054】
不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸等が挙げられる。
不飽和カルボン酸の酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物等が挙げられる。
不飽和カルボン酸もしくはその酸無水物のエステルとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、フマール酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、テトラヒドロ無水フタル酸ジメチル、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸ジメチル等が挙げられる。
【0055】
変性ポリオレフィン樹脂中のグラフト化合物の割合は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、0.2〜100質量部が好ましい。
グラフト反応の温度条件は、50〜250℃が好ましく、60〜200℃がより好ましい。
反応時間は製造方法にも左右されるが、二軸押出機による溶融グラフト反応の場合、押出機の滞留時間内が好ましい。具体的には、2〜30分が好ましく、5〜10分がより好ましい。
グラフト反応は、常圧、加圧いずれの条件下においても実施できる。
【0056】
ラジカル開始剤としては、有機過酸化物が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、アルキルパーオキサイド、アリールパーオキサイド、アシルパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシカーボネート、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイド等が挙げられる。これらの有機過酸化物は、温度条件と反応時間によって適宜選択できる。前記した二軸押出機による溶融グラフト反応の場合、アルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステルが好ましく、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシ−ヘキシン−3、ジクミルペルオキシドがより好ましい。
【0057】
変性ポリオレフィン樹脂としては、無水マレイン酸により変性された変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。このような変性ポリオレフィン樹脂としては、三井化学製アドマー、三菱化学製モディック、日本ポリエチレン製アドテックス等が挙げられる。
【0058】
接着層(γ)では、前記変性ポリオレフィン樹脂に熱可塑性エラストマーを配合してもよい。熱可塑性エラストマーを配合することで、変性ポリオレフィン樹脂をラミネートする際に発生する残留応力が開放され、接着性がさらに高まる。
熱可塑性エラストマーとしては、三井化学製タフマー、三菱化学製ゼラス、モンテル製キャタロイ、三井化学製ノティオ、スチレン系エラストマーが好ましい。スチレン系エラストマーとしては、水添スチレン系エラストマー(AKエラストマー製タフテック、クラレ製セプトン/ハイブラー、JSR製ダイナロン、住友化学製エスポレックス、クレイトンポリマー製クレイトンG等。)がより好ましい。
【0059】
また、接着層(γ)には、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等の各種添加剤を配合してもよい。
【0060】
接着層13を接着層(γ)とする場合、接着層13の厚みは、3〜50μmが好ましく、10〜40μmがより好ましい。接着層13の厚みが下限値以上であれば、優れた接着性が得られやすい。接着層13の厚みが上限値以下であれば、外装材1の側端面から透過する水分量が低減される。
【0061】
(接着層(δ))
接着層(δ)を形成する接着剤としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオール等のポリオールからなる主剤と、2官能以上のイソシアネート化合物からなる硬化剤とを含有するポリウレタン系接着剤が挙げられる。
【0062】
接着層(δ)を形成する接着剤は、外装材1において電解液が充填される側に用いられるため、電解液による膨潤や、フッ酸による加水分解に関して注意を払う必要がある。そのため、接着層(δ)を形成する接着剤には、加水分解され難い骨格を有する主剤を用いる、架橋密度を向上させる、等の組成設計を行うことが好ましい。
【0063】
接着剤の架橋密度を向上させる方法の一例としては、例えば、ダイマー脂肪酸もしくはそのエステル、ダイマー脂肪酸もしくはそのエステルの水素添加物、ダイマー脂肪酸もしくはそのエステルの還元グリコール、又はダイマー脂肪酸もしくはそのエステルの水素添加物の還元グリコールと、ジオール化合物によりポリエステルポリオールを得る方法が挙げられる。該方法によれば、ダイマー脂肪酸の嵩高い疎水性ユニットにより架橋密度が向上する。
【0064】
ダイマー脂肪酸とは、各種不飽和脂肪酸を二量体化させたものであり、その構造としては非環型、単環型、多環型、芳香環型が挙げられる。ダイマー脂肪酸の二量化構造は特に限定されない。また、ダイマー脂肪酸の出発物質として使用する不飽和脂肪酸の種類も特に限定されない。
【0065】
不飽和脂肪酸としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸等のモノ不飽和脂肪酸;
リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸等のジ不飽和脂肪酸;
リノレン酸、ビノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ−γ−リノレン酸、エイコサトリエン酸等のトリ不飽和脂肪酸;
ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、アドレン酸等のテトラ不飽和脂肪酸;
ボセオペンタエン酸、エイコサベンタエン酸、オズボンド酸、イワシ酸、テトラコサベンタエン酸等のペンタ不飽和脂肪酸;
ドコサヘキサエン酸、ニシン酸等のヘキサ不飽和脂肪酸等。
【0066】
ダイマー脂肪酸における二量体化する不飽和脂肪酸の組み合わせは、特に限定されず、同一の不飽和脂肪酸であってもよく、異なる不飽和脂肪酸であってもよい。
【0067】
ジオール化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール等の脂肪族系ジオール;
シクロヘキサンジオール、水添キシリレングリーコル等の脂環式系ジオール;
キシリレングリーコル等の芳香族系ジオール等。
【0068】
ポリウレタン系接着剤としては、主剤としてポリエステルポリオールを含むポリウレタン系接着剤が好ましい。ポリエステルポリオールとしては、脂肪族系ジオール、脂環式族系ジオール及び芳香族系ジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いて得られるポリエステルポリオールが好ましい。
【0069】
また、前記ポリエステルポリオールの両末端の水酸基に、2官能以上のイソシアネート化合物の1種以上を反応させて鎖伸長したポリエステルウレタンポリオールを用いてもよい。
2官能以上のイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート等が挙げられる。また、これらイソシアネート化合物のアダクト体、ビューレット体、イソシアヌレート体を用いて鎖伸長したポリエステルウレタンポリオールでもよい。
【0070】
前記主剤に対する硬化剤としては、前記ポリエステルポリオールの鎖伸張剤として挙げたイソシアネート化合物を用いることができる。
電解液耐性(特に電解液に対する溶解性、膨潤性)が向上する点から、硬化剤としては、クルードトリレンジイソシアネート、クルードジフェニルメタンジイソシアネート及びポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート(ε)、又は前記ジイソシアネート(ε)のアダクト体が好ましい。これにより、接着層(δ)は、架橋密度が向上し、電解液に対する溶解性、膨潤性が低くなると共に、ウレタン基濃度が向上して密着性が向上する。
また、主剤として、ポリエステルポリオールを鎖伸長したポリエステルウレタンポリオールを用いる場合、鎖伸長剤としてジイソシアネート(ε)を用いることが好ましい。
【0071】
ポリウレタン系接着剤には、接着を促進するため、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、リン化合物、シランカップリング剤等をさらに配合してもよい。その他、接着剤に求められる性能に応じて、安定剤等も配合しても構わない。
【0072】
さらには、上述したポリウレタン系接着剤だけでなく、以下のドライラミネート用接着剤を用いてもよい。
接着性樹脂を各種有機溶剤に溶解又は分散させた材料に対し、上述した、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、リン化合物、シランカップリング剤などを配合したドライラミネート用接着剤。前記接着性樹脂としては、熱ラミネート構成の接着層(γ)で記載した無水マレイン酸変性ポリオレフィンや、無水マレイン酸変性スチレン系共重合体エラストマーなどが挙げられる。
【0073】
ドライラミネート構成の接着成分における主剤と硬化剤の比率としては、主剤100部に対し硬化剤1〜100質量部が好ましく、5〜50質量部がより好ましい。前記硬化剤の比率が下限値以上であれば、密着性及び電解液耐性に優れる。前記硬化剤の比率が上限値以下であれば、未反応の硬化剤が残留して接着性や硬さに悪影響が生じることを抑制しやすい。
【0074】
接着層13を接着層(δ)とする場合、接着層13の厚みは、1〜10μmが好ましく、3〜5μmがより好ましい。接着層13の厚みが下限値以上であれば、優れた電解液耐性とラミネート強度が得られやすい。接着層13の厚みが上限値以下であれば、外装材1の側端面から透過する水分量が低減される。
【0075】
[シーラント層]
シーラント層14は、接着層13における腐食防止処理層12側とは反対側に設けられている。シーラント層14は、外装材1にヒートシールによる封止性を付与する層である。
シーラント層14を構成する材質としては、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体又はそのエステル化物もしくはイオン架橋物等が挙げられる。
シーラント層14に用いるポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、プロピレン−αオレフィン共重合体等が挙げられる。
【0076】
シーラント層14には、前記した樹脂のいずれか1種又は2種以上を使用した単層であってもよく、要求性能に応じて多層としてもよい。多層構造のシーラント層14としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分もしくは完全ケン化物、ポリ酢酸ビニル共重合体の部分もしくは完全ケン化物等のガスバリア性を有する樹脂を介在させたものが挙げられる。
【0077】
[製造方法]
外装材1は、例えば、以下の工程(X1)〜工程(X3)を有する方法により製造できる。
(X1)基材層15上に蒸着層16を形成してバリア基材11を得る工程。
(X2)バリア基材11の蒸着層16側に腐食防止処理層12を形成する工程。
(X3)腐食防止処理層12上に接着層13を介してシーラント層14を貼り合わせる工程。
【0078】
(工程(X1))
基材層15上に蒸着層16を形成する方法としては、公知の蒸着方法を用いることができ、例えば、化学蒸着(CVD)であってもよく、物理蒸着(PVD)であってもよい。
【0079】
(工程(X2))
腐食防止処理層12を形成する方法としては、腐食防止処理層12が処理層(α)の場合、例えば、希土類元素酸化物を必須として含み、必要に応じてアニオン系ポリマー及びカチオン系ポリマーの少なくとも一方を含むコーティング剤(処理剤)を塗工、乾燥する方法が挙げられる。アニオン系ポリマー又はカチオン系ポリマーを含む層を積層する場合は、それらを含むコーティング剤(処理剤)をさらに塗工、乾燥する。
【0080】
塗工方法としては、グラビアコート、リバースコート、ロールコート、バーコート等の公知の方法を採用できる。
コーティング剤(処理剤)の塗布量は、前述した腐食防止処理層12の単位面積当たりの質量を満たす範囲内が好ましい。
また、乾燥キュアが必要な場合は、例えば、母材温度として60〜300℃の範囲とすることで行える。
【0081】
腐食防止処理層12が処理層(β)の場合は、化成処理のタイプに応じて、浸漬法、スプレー法、コート法等を適宜選択すればよい。アニオン系ポリマー又はカチオン系ポリマーを含む層を積層する場合は、それらを含むコーティング剤(処理剤)をさらに塗工、乾燥する。
【0082】
(工程(X3))
接着層13が接着層(γ)の場合、ドライプロセスでは、例えば、熱接着性樹脂を用いて、腐食防止処理層12上に押出ラミネート法によって接着層13を形成し、サンドイッチラミネーションによってシーラント層14を積層する。
ウェットプロセスでは、例えば、熱接着性樹脂を溶媒に分散させた接着樹脂液を腐食防止処理層12上に塗工する。その後、熱接着性樹脂の融点以上の温度で溶媒を揮発させ、熱接着性樹脂を溶融軟化させて焼き付けを行って接着層13を形成した後、接着層13上にシーラント層14を熱ラミネーション等の熱処理により積層する。
【0083】
接着層13が接着層(δ)の場合、例えば、ポリウレタン系接着剤を使用して、腐食防止処理層12上に、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、ウェットラミネーション等の手法により、接着層13を介してシーラント層14を貼り合わせる。
【0084】
工程(X3)の後には、熱処理を施すことで、各層間の密着性が向上し、電解液耐性及び耐フッ酸性を向上させることができる。
この熱処理温度は、積層体の最高到達温度が、40℃〜220℃となるように設定することが好ましく、80℃〜200℃となるように設定することがより好ましい。
処理時間は処理温度に依存するが、低温で行うほど長時間、高温で行うほど短時間の処理を施すことが好ましい。
【0085】
熱処理方法としては、生産性、ハンドリングの点から、高温(例えば100℃以上)に設定した乾燥炉、ベーキング炉を通過させる方法が好ましい。また、熱ラミネーション(熱圧着)や、ヤンキードラム(熱ドラムに抱かせる)を用いた熱処理方法も好ましい。
【0086】
以上説明した本発明の外装材は、金属箔を用いる代わりに、基材層上に蒸着層を形成したバリア性基材を用いるため、従来の外装材に比べてより薄肉化できる。また、バリア性基材の蒸着層側に特定の組成の腐食防止処理層を形成しているため、蒸着層が電解液によって侵されてラミネート強度が低下することも抑制されている。
【0087】
<他の実施形態>
なお、本発明の外装材は、前記した外装材1には、限定されない。
例えば、
図2に例示したリチウム電池用外装材2(以下、「外装材2」という。)であってもよい。
図2における
図1と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。
外装材2は、基材層15と蒸着層16の間にプライマー層17を形成し、蒸着層16上にオーバーコート層18を形成しているバリア基材11Aを有する以外は、外装材1と同じである。
【0088】
[プライマー層]
プライマー層17を形成することで、基材層15と蒸着層16の密着性が向上する。
プライマー層17としては、フィルム表面に蒸着層を形成する際に形成される通常のプライマー層が挙げられる。
プライマー層17としては、例えば、オキサゾリン基を含有するオキサゾリン基含有樹脂と、ポリ(メタ)アクリル酸、及び/又はポリ(メタ)アクリル酸とコモノマーの共重合体からなるアクリル系樹脂とを反応させて得られる、アミドエステル部位を有する樹脂からなる層が挙げられる。また、下記記載の水酸基含有アクリルモノマーを共重合させたアクリルポリオールに対し、多官能イソシアネートやシランカップリング剤を配合した化合物なども用いることが可能である。
【0089】
オキサゾリン基含有樹脂は、例えば、イソプロペニルオキサゾリン等のオキサゾリン基を含有する重合性モノマーを、各種アクリルモノマーやスチレンモノマー等と共に共重合することで得ることができる。オキサゾリン基含有樹脂としては、例えば、主鎖がアクリル骨格のオキサゾリン基含有樹脂、主鎖がスチレン/アクリル骨格のオキサゾリン基含有樹脂、主鎖がスチレン骨格のオキサゾリン基含有樹脂、及びアクリロニトリル/スチレン骨格のオキサゾリン基含有樹脂等を用いることができる。
オキサゾリン基含有樹脂は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
前記アクリル系樹脂は、オキサゾリン基含有樹脂のオキサゾリン基と反応する官能基を有することが必須であり、オキサゾリン基と反応するカルボキシ基を有していれば、各種コモノマーを共重合させたアクリル系樹脂であっても構わない。
【0091】
コモノマーとしては、以下のモノマーが挙げられる。
アルキル基がメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、又はシクロヘキシル基であるアルキル(メタ)アクリレート等のモノマー;
2−ヒドキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリルモノマー;
(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。)、N−アルコキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルコキシ(メタ)アクリルアミド、(アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等が挙げられる。)、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー等。
【0092】
アクリル系樹脂の具体的としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、マレイン酸、アルキルマレイン酸モノエステル、フマル酸、アルキルフマル酸モノエステル、イタコン酸、アルキルイタコン酸モノエステル、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ブタジエン等のコモノマーをポリ(メタ)アクリル酸に共重合させた樹脂が挙げられる。
【0093】
プライマー層17の厚さは、0.01〜1μmが好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。プライマー層17の厚さが下限値以上であれば、優れた防湿性を外装材2が得られやすい。また、プライマー層17の厚さが上限値以下であれば、表面平滑性に優れたプライマー層17を形成しやすい。この表面平滑性は、防湿性に影響を与える要因となる。
【0094】
[オーバーコート層]
オーバーコート層18を形成することで、防湿性が向上する。
オーバーコート層18としては、フィルム表面に蒸着層を形成する際に形成される通常のオーバーコート層が挙げられる。
オーバーコート層18としては、例えば、成分(A1)と成分(A2)とを必須成分とする2種以上の化合物を含むコーティング組成物により形成された層が挙げられる。
【0095】
成分(A1)としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等の水溶性高分子が挙げられる。なかでも、ポリビニルアルコールが特に好ましい。
成分(A1)は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0096】
成分(A2)は、蒸着層16との密着性、成分(A1)の分子間拘束性等を考慮して配合される成分であり、下記成分(a21)及び/又は成分(a22)を用いることができる。すなわち、成分(a21)のみを用いてもよく、成分(a22)のみを用いてもよく、成分(a21)と成分(a22)の混合物を用いてもよい。
成分(A2)は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0097】
成分(a21)は、一般式R
1−Si(OR
2)
3で表されるオルガノシラン及びその加水分解物、並びにそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種以上である。ただし、前記式中、R
1はアルキル基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基からなる群から選択される1種の有機基であり、R
2はアルキル基である。
成分(a21)は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0098】
成分(a22)は、一般式M
1(OR
3)
mで表される1種以上の金属アルコキシド及び/又はその加水分解物である。ただし、前記式中、R
3はアルキル基であり、M
1は金属イオンであり、mは該金属イオンの価数である。
成分(a22)は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
オーバーコート層18における成分(A2)は、防湿性や成分(A1)の分子間拘束性等の効果が十分に得られるように適宜配合量を決定すればよい。
【0099】
オーバーコート層18の厚さは、0.01〜1μmが好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。
オーバーコート層18の厚さが下限値以上であれば、蒸着層16との密着性及び成分(A1)の分子間拘束性が十分に得られやすく、また優れた防湿性が得られやすい。オーバーコート層18の厚さが上限値以下であれば、クラックを防止しやすい。
【0100】
また、オーバーコート層18は、成分(A1)及び成分(A2)以外の他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、例えば、増粘剤、粘度調整剤、レベリング剤、消泡剤等が挙げられる。
【0101】
また、本発明の外装材は、バリア基材を2層以上積層した外装材であってもよい。バリア基材を2層以上積層することで、さらに優れた防湿性が得られる。具体的には、バリア基材/接着層/バリア基材/腐食防止処理層/接着層/シーラント層が順次積層された外装材が挙げられる。バリア基材同士を接着する接着層は特に限定されず、例えば、腐食防止処理層とシーラント層とを接着する接着層と同じものが挙げられる。
【実施例】
【0102】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
本実施例で用いた材料を以下に示す。
[バリア基材]
(基材層)
基材A−1:ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)。
(プライマー層)
コーティング剤B−1:オキサゾリン含有アクリルポリマーと、ポリアクリル酸からなる組成物。
(蒸着層)
成分C−1:シリカ。
(オーバーコート層)
コーティング剤D−1:ポリビニルアルコールとシランカップリング剤からなる組成物。
【0103】
[腐食防止処理層]
処理剤E−1:酸化セリウム100質量部にリン酸ナトリウム塩を10質量部配合し、蒸留水を用いて固形分濃度を10質量%に調整した「ポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾル」。
処理剤E−2:「ポリアクリル酸アンモニウム塩(東亞合成社製)」と「アクリル−イソプロペニルオキサゾリン共重合体(日本触媒社製)」を質量比90:10で混合し、蒸留水を用いて固形分濃度を5質量%に調整した処理剤。
処理剤E−3:「ポリアリルアミン(日東紡社製)」と「ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製)」を質量比90:10で混合し、蒸留水を用いて固形分濃度を5質量%に調整した処理剤。
処理剤E−4:1質量%リン酸水溶液によって、水溶フェノール樹脂(住友ベークライト社製)の固形分濃度を1質量%に調整した溶液に、フッ化クロム(CrF
3)を最終乾燥皮膜中に存在するCr量が10mg/m
2となるように加えた処理剤。
【0104】
[接着層]
接着剤F−1:トルエン分散型無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(固形分17質量%焼付けタイプ)に、トリレンジイソシアネートのアダクト体(固形分75質量%)と、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(固形分100質量%)とを、72/6/22(固形分換算の質量比)になるように配合した組成物。
【0105】
[シーラント層]
フィルムG−1:無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ40μm)。
【0106】
[実施例1]
グラビアコート法により、コーティング剤B−1を基材A−1の第1の面に塗工し、150〜180℃で乾燥して、ドライ厚0.05μmのプライマー層を形成した。次いで、プライマー層上に、PVD法により成分C−1を蒸着して、厚さ350nmの蒸着層を形成した。次いで、グラビアコート法により、コーティング剤D−1を蒸着層上に塗工し、160〜200℃で乾燥して、ドライ厚0.2μmのオーバーコート層を形成してバリア基材を得た。
得られたバリア基材のオーバーコート層上に、グラビアコート法によって、ドライ塗工量が70mg/m
2となるように処理剤E−1を塗工し、170〜200℃で乾燥して腐食防止処理層を形成した。
次いで、腐食防止処理層上に、グラビアリバースコート法によって、ドライ塗工量が3g/m
2となるように接着剤F−1を塗工し、ラミネートを行ってフィルムG−1を貼り合せた。その後、エージング処理を施して接着剤F−1を熱架橋させ、外装材を得た。
【0107】
[実施例2〜4]
腐食防止処理層を形成する際、処理剤E−1を塗工、乾燥した後に、さらに表1に示すように処理剤E−2、処理剤E−3を塗工、乾燥して腐食防止処理層を形成した以外は、実施例1と同様にして外装材を得た。例えば実施例4では、処理剤E−1、処理剤E−2、処理剤E−3を順次塗工、乾燥して腐食防止処理層を形成した。
腐食防止処理層は、いずれの場合も最終的なドライ塗工量が70mg/m
2となるようにした。
【0108】
[実施例5〜8]
処理剤E−1の代わりに、処理剤E−4を用いた以外は、実施例1〜4と同様にして外装材を得た。
【0109】
[比較例1]
腐食防止処理層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして外装材を得た。
【0110】
各例の外装材の積層構成を表1に示す。なお、表1の腐食防止処理層において、「E−1/E−2」は、処理剤E−1と処理剤E−2を順次塗工、乾燥して腐食防止処理層を形成したことを示す。「E−1/E−3」等の他の欄についても同様である。
【0111】
【表1】
【0112】
[ラミネート強度]
各例で得られた外装材を200mm×100mmの矩形に切断し、シーラント層を内側にして長辺の中央で折り返し、両方の側縁をヒートシールして、100mm×100mmのパウチとした。エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びジメチルカーボネートを質量比1:1:1で混合し、LiPF
6を濃度が1Mとなるように溶解させた電解液を前記パウチ内に注入し、残りの1辺をヒートシールして密封した。
得られたサンプルを85℃で4時間保管した後、該サンプルの外装材から15mm幅の試験片を切り出した。該試験片を用いて、引張速度300mm/分のT型剥離を行って、バリア基材と接着層の間のラミネート強度を測定した。
また、外装材のラミネート強度は、前記したような電解液を封入した状態での保管を行っていない初期の状態でも測定した。
各例の測定結果を表2に示す。
【0113】
【表2】
【0114】
表2に示すように、腐食防止処理層を設けた実施例1〜8の外装材は、電解液を収容した状態で高温保管した後においても充分なラミネート強度を有していた。
一方、腐食防止処理層を設けなかった比較例1の外装材は、電解液を収容した状態で高温保管した後にはデラミネーションが生じていた。