(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183054
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】巻取り紙の補修方法および巻取り紙
(51)【国際特許分類】
D21H 25/00 20060101AFI20170814BHJP
B65H 43/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
D21H25/00
B65H43/00
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-171513(P2013-171513)
(22)【出願日】2013年8月21日
(65)【公開番号】特開2015-40355(P2015-40355A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2015年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 能章
(72)【発明者】
【氏名】今井 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 修
(72)【発明者】
【氏名】三浦 学
(72)【発明者】
【氏名】竹生 諭史
(72)【発明者】
【氏名】高山 哲夫
【審査官】
岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−354760(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3138666(JP,U)
【文献】
特開2003−288021(JP,A)
【文献】
特開2014−185414(JP,A)
【文献】
特開昭58−115191(JP,A)
【文献】
特開平11−263493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 11/00− 27/42
D21B 1/00− 1/38
D21C 1/00− 11/14
D21D 1/00− 99/00
D21F 1/00− 13/12
D21G 1/00− 9/00
D21J 1/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙がロール状に巻き付けられた巻取り紙の補修方法であって、
最外周層の前記紙の欠陥部位の内側に下敷き板を配置する段階と、
前記巻取り紙の外側から前記欠陥部位を切り抜いて、前記紙に切り抜き穴を形成する段階と、
補修用紙を前記紙の外面に貼り付けて、前記補修用紙によって前記切り抜き穴を塞ぐ段階と、を備えていることを特徴とする巻取り紙の補修方法。
【請求項2】
前記補修用紙は円形または楕円形に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の巻取り紙の補修方法。
【請求項3】
前記補修用紙を前記紙に貼り付ける段階において、
前記切り抜き穴の周囲に環状のシールを貼り付けた後に、
前記補修用紙を前記シールの外面に貼り付けることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の巻取り紙の補修方法。
【請求項4】
前記シールの内径は、前記切り抜き穴の内径よりも0.1〜6mm大きく形成され、
前記シールの外径は、前記補修用紙の外径よりも0.1〜6mm小さく形成されていることを特徴とする請求項3に記載の巻取り紙の補修方法。
【請求項5】
紙がロール状に巻き付けられた巻取り紙であって、
前記紙の切り抜き穴の周囲に環状のシールが貼り付けられ、
前記シールの外面に貼り付けられた円形または楕円形の補修用紙によって、前記切り抜き穴が塞がれており、
前記シールの内径は、前記切り抜き穴の内径よりも0.1〜6mm大きく形成され、
前記シールの外径は、前記補修用紙の外径よりも0.1〜6mm小さく形成されていることを特徴とする巻取り紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻取り紙の補修方法および巻取り紙に関する。
【背景技術】
【0002】
輪転印刷機によって新聞用紙に印刷する場合には、
図5に示すように、新聞用紙である紙10をリール2に巻き付けた巻取り紙100が用いられている。この巻取り紙100では、異物の混入した部位や穴が開いた部位などの欠陥部位を除去する必要がある。
【0003】
従来、巻取り紙100の欠陥部位を除去する場合には、欠陥部位を含むように最外周層の紙10を全幅に亘って切除している。これにより、巻取り紙100の紙10が途中で切り離されるため、紙10の端部同士をテープ120によって貼り合わせている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「新聞巻取紙団体規格」 日本製紙連合会 新聞用紙委員会 日本新聞協会 資材委員会 平成12年10月 p.3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5に示すように、紙10の端部同士を貼り合わせる継手方法では、紙10の端部同士の位置合わせが難しいという問題がある。また、紙10の端部同士の重ね代が大きいため、紙10の補修部位に皺が生じ易いとともに、紙10の補修部位が目立つという問題がある。
【0006】
本発明は、前記した問題を解決し、紙の欠陥部位を除去した部位を簡単に塞ぐとともに、紙の補修部位を目立ち難くすることができる巻取り紙の補修方法および巻取り紙を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、紙がロール状に巻き付けられた巻取り紙の補修方法であって、まず、最外周層の前記紙の欠陥部位の内側に下敷き板を配置する段階を備えている。また、前記巻取り紙の外側から前記欠陥部位を切り抜いて、前記紙に切り抜き穴を形成する段階と、補修用紙を前記紙の外面に貼り付けて、前記補修用紙によって前記切り抜き穴を塞ぐ段階と、を備えている。
【0008】
本発明の他の構成としては、紙がロール状に巻き付けられた巻取り紙であって、
前記紙の切り抜き穴の周囲に環状のシールが貼り付けられ、前記シールの外面に貼り付けられた
円形または楕円形の補修用紙によって、前
記切り抜き穴が塞がれて
おり、前記シールの内径は、前記切り抜き穴の内径よりも0.1〜6mm大きく形成され、前記シールの外径は、前記補修用紙の外径よりも0.1〜6mm小さく形成されている。
【0009】
本発明では、巻取り紙の紙から欠陥部位を切り抜いているため、巻取り紙の紙をロール状に連続させたままで欠陥部位を除去することができる。また、紙の欠陥部位を除去するために必要な最小限の領域が切り抜かれているため、紙の補修部位を小さくすることができる。したがって、紙の欠陥部位を除去した部位を簡単に塞ぐとともに、紙の補修部位を目立ち難くすることができる。
また、補修用紙は紙の外面のみに貼り付けられるため、紙の厚さの変化を小さくすることができる。したがって、巻取り紙に印刷したときに、補修部位とその他の紙面とで色の濃さに差が生じるのを防ぐことができ、巻取り紙の印刷品質の劣化を抑えることができる。
【0010】
前記補修用紙は円形または楕円形に形成することが望ましい。この構成では、角部を有する四角形や三角形などの形状の補修用紙に比べて、補修用紙の外周縁部の一部に応力が集中し難いため、補修用紙の外周縁部が紙から剥がれ難くなる。
【0011】
前記補修用紙を前記紙に貼り付ける段階において、前記切り抜き穴の周囲に環状のシールを貼り付けた後に、前記補修用紙を前記シールの外面に貼り付けることが望ましい。
この構成では、切り抜き穴、シールおよび補修用紙の芯合わせを正確に行うことができるため、切り抜き穴および補修用紙からシールがはみ出してしまうのを防ぐことができる。
【0012】
前記シールの内径を前記切り抜き穴の内径よりも0.1〜6mm大きく形成し、前記シールの外径を前記補修用紙の外径よりも0.1〜6mm小さく形成することで、切り抜き穴および補修用紙からシールがはみ出してしまうのを防ぐことが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、巻取り紙の紙から欠陥部位を切り抜いているため、紙の欠陥部位を除去した部位を簡単に塞ぐとともに、紙の補修部位を目立ち難くすることができる。
また、補修用紙は紙の外面のみに貼り付けられるため、紙の厚さの変化を小さくすることができ、巻取り紙の印刷品質の劣化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態の補修方法を示した図で、(a)は巻取り紙を巻き直している状態の斜視図、(b)は巻取り側のリールを固定した状態で、巻取り紙を繰り出した状態の斜視図である。
【
図2】本実施形態の補修方法を示した図で、(a)は下敷き板を配置した状態の斜視図、(b)は紙の切断位置を示した斜視図である。
【
図3】本実施形態の補修方法を示した図で、(a)は切り抜き穴の斜視図、(b)は紙に補修用紙を貼り付ける前の状態の斜視図、(c)は紙に補修用紙を貼り付けた状態の斜視図である。
【
図4】本実施形態の補修方法を示した図で、補修用紙を紙に貼り付けた後に、巻取り紙の弛みを取った状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態の巻取り紙1は、
図1(a)に示すように、新聞用紙である紙10をリール2に対してロール状に巻き付けたものである。
【0016】
巻取り紙1では、異物が混入した部位や穴が開いた部位など、製品に適していない欠陥部位11を紙10から除去する必要がある。
紙10の欠陥部位11は、紙10の製造工程における欠陥部位の位置情報と、リール2に巻き付けられた紙10の表面の手触りとによって探し出すことができる。
【0017】
次に、巻取り紙1の紙10から欠陥部位11を除去し、その除去した部位を塞いで補修する補修方法について説明する。
【0018】
図1(a)に示すように、リール2に巻き付けられた原反から紙10をリール3に巻き直す。このとき、紙10の欠陥部位11が探し出された場合には、巻取り紙1の回転を停止する。
【0019】
そして、
図1(b)に示すように、リール3を固定した状態で、巻取り紙1を繰り出して、欠陥部位11を巻取り紙1の最外周層の上部に配置する。これにより、巻取り紙1とリール3との間で紙10が弛んだ状態となる。
【0020】
続いて、
図2(a)に示すように、最外周層の紙10の欠陥部位11の内側に下敷き板50を配置する。このとき、巻取り紙1は、リール3を固定した状態で繰り出されており、最外周層の紙10の巻き付け力が低下しているため、最外周層の紙10とその下層の紙10との間に下敷き板50をスムーズに挿入することができる。
【0021】
また、中心針の周囲を円周移動可能な刃部を有するコンパス型のカッタを紙10の外側に配置する。そして、カッタの中心針および刃部を最外周層の紙10の外面に押し当て、
図2(b)に示すように、欠陥部位11を中心として刃部を円周移動させることで、切断線Lが形成される。
これにより、欠陥部位11を含む円形の領域が紙10から切り抜かれ、
図3(a)に示すように、紙10に円形の切り抜き穴12が形成される。なお、刃部は下敷き板50に当たるため、最外周層の紙10のみが切り抜かれる。
また、
図1(b)に示すように、欠陥部位11は巻取り紙1の上部に配置されているため、欠陥部位11を切り抜く作業を行い易くなっている。
【0022】
なお、本実施形態では、コンパス型のカッタを用いているが、円筒状の刃部を有するカッタを用いてもよい。この構成では、刃部が欠陥部位11を囲むように、刃部を最外周層の紙10の外面に押し当てることで、欠陥部位11を切り抜くことができる。
【0023】
また、
図3(c)に示すように、切り抜き穴12を塞ぐための補修用紙20を用意する。補修用紙20は紙10と同質および同厚の紙を用いて形成されている。補修用紙20は円形に形成されており、その外径は切り抜き穴12の内径よりも大きく形成されている。
【0024】
補修用紙20は、環状のシール30によって紙10の外面に貼り付けられる。シール30は熱融着性のシールである。
シール30の外径は、補修用紙20の外径よりも僅かに小さく形成されている。したがって、シール30の外周縁部は、補修用紙20の外周縁部よりも内側に配置される。また、シール30の内径は、切り抜き穴12の内径よりも大きく形成されている。
具体的には、シール30の内径は、切り抜き穴12の内径よりも0.1〜6mm大きく形成され、シール30の外径は、補修用紙20の外径よりも0.1〜6mm小さく形成されていることが望ましい。さらに、シール30の内径は、切り抜き穴12の内径よりも1〜4mm大きく形成され、シール30の外径は、補修用紙20の外径よりも1〜4mm小さく形成されていることがより望ましい。このように、補修用紙20が紙10に接着されない余白部位の大きさを設定することで、紙10に印刷したときに、補修用紙20の余白部位がめくれたり切れたりするのを効果的に防ぐことができる。
【0025】
補修用紙20を紙10の外面に貼り付ける場合には、まず、
図3(b)に示すように、切り抜き穴12を囲むように、シール30を紙10の外面に配置し、シール30を紙10の外面に対してアイロン等の加熱装置によって点付けすることで仮止めする。
【0026】
続いて、
図3(c)に示すように、補修用紙20をシール30の外面に重ね合わせる。その後、補修用紙20の外面をアイロン等の加熱装置によって加熱し、シール30を補修用紙20の内面に熱融着させるとともに、シール30を紙10の外面に熱融着させる。これにより、補修用紙20がシール30を介して紙10の外面に貼り付けられ、補修用紙20によって切り抜き穴12が塞がれる。
【0027】
なお、本実施形態では、熱融着性のシール30を用いて補修用紙20を紙10の外面に貼り付けているが、両面粘着性のシールを用いて補修用紙20を紙10の外面に貼り付けてもよい。
【0028】
補修用紙20によって切り抜き穴12を塞いだ後に、巻取り紙1から下敷き板50を取り除き、
図4に示すように、リール2を巻き戻して、巻取り紙1とリール3との間の紙10の弛みを除去して、紙10の補修作業を完了する。そして、リール2から繰り出された紙10をリール3に巻き直す。
これにより、紙10の外面に貼り付けられた補修用紙20によって、紙10の切り抜き穴12(
図3(c)参照)が塞がれている巻取り紙1が形成される。
【0029】
以上のような巻取り紙1の補修方法および巻取り紙1では、
図2(b)に示すように、巻取り紙1の紙10から欠陥部位11を切り抜いているため、巻取り紙1の紙10をロール状に連続させたままで欠陥部位11を除去することができる。また、紙10の欠陥部位11を除去するために必要な最小限の領域が切り抜かれているため、
図4に示すように、紙10の補修部位を小さくすることができる。したがって、紙10の欠陥部位を除去した部位を簡単に塞ぐとともに、紙10の補修部位(補修用紙20)を目立ち難くすることができる。
【0030】
また、補修用紙20は紙10の外面のみに貼り付けられるため、紙10の厚さの変化を小さくすることができる。したがって、巻取り紙1に印刷したときに、補修用紙20とその他の紙面とで色の濃さに差が生じるのを防ぐことができ、印刷品質の劣化を抑えることができる。
【0031】
また、
図3(b)に示すように、シール30を切り抜き穴12の周囲に貼り付けた後に、補修用紙20をシール30に貼り付けている。この構成では、切り抜き穴12、シール30および補修用紙20の芯合わせを正確に行うことができるため、切り抜き穴12および補修用紙20からシール30がはみ出してしまうのを防ぐことができる。
【0032】
また、
図3(c)に示すように、補修用紙20は円形であるため、角部を有する四角形や三角形などの形状の補修用紙に比べて、補修用紙20の外周縁部の一部に応力が集中し難いため、補修用紙20の外周縁部が紙から剥がれ難くなる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
本実施形態では、
図3(c)に示すように、補修用紙20が円形であるが、その形状は限定されるものではない。しかしながら、円形や楕円形のように角部が形成されない形状であることが望ましい。
【0034】
また、本実施形態では、シール30によって補修用紙20が紙10に貼り付けられているが、接着剤を用いて補修用紙20を紙10に貼り付けることもできる。
【0035】
また、本実施形態では、
図1(a)に示すように、新聞用紙である紙10によって巻取り紙1が形成されているが、紙10の用途は限定されるものではない。
【符号の説明】
【0036】
1 巻取り紙
2 リール
3 リール
10 紙
11 欠陥部位
12 切り抜き穴
20 補修用紙
30 シール
50 下敷き板