(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
観測エリアの周囲に複数配置され、落雷によって発生する電磁波を検知する複数のセンサを有し、当該センサの測定結果に基づいて前記観測エリアにおける大まかな落雷位置を標定する落雷位置標定装置と、
複数の変電所の母線の電圧情報を取得して複数の変電所を一括して監視するとともに、変電所及び送電線を停電させる操作を実行する集中制御装置と、
前記落雷位置標定装置及び前記集中制御装置から取得した情報に基づいて作業員に報知する落雷に関連する報知情報を決定し、作業員に報知する落雷情報報知装置と、を備え、
前記落雷情報報知装置は、
前記観測エリア内の所定エリアをマトリクス状に配列される複数の小エリアに分割し、当該小エリアと、前記小エリアの範囲を規定する範囲情報と、前記変電所によって電力供給される配電エリアとを関連付けて記憶してなる位置データベースと、
前記集中制御装置から取得した前記変電所の母線の電圧を監視し、前記母線に落雷による誘電電圧が発生したか否かを判定する変電所落雷判定部と、
前記位置データベースを参照して、前記集中制御装置から取得した停電作業を行う変電所及び送電線を含む小エリアを抽出し、抽出した小エリアを作業エリアとして特定する作業エリア特定部と、
前記位置データベースにおける範囲情報を参照して、前記落雷位置標定装置から取得した落雷位置に対応する小エリアを抽出し、抽出した小エリアを第1落雷位置として特定する第1落雷位置特定部と、
前記変電所落雷判定部が、落雷による誘電電圧が発生したと判定した場合に、前記位置データベースにおける配電エリアを参照して、前記誘電電圧が発生した母線の変電所の配電エリアに含まれる小エリアを抽出し、抽出した小エリアを第2落雷位置として特定する第2落雷位置特定部と、
前記第1落雷位置特定部及び前記第2落雷位置特定部において共通して特定された小エリアと前記作業エリアとの距離に基づいて作業リスクのレベルを判定する作業リスク判定部と、
前記作業リスクのレベルと作業員に報知する報知情報を関連付けてなる報知情報データベースと、
当該作業リスク判定部において判定された作業リスクのレベルを検索条件として、前記報知情報を前記報知情報データベースから検索する報知内容検索部と、
前記報知内容検索部が検索した報知情報を作業員に報知する報知部と、
各種の情報を表示する表示部と、
当該表示部に、前記第1落雷位置特定部及び前記第2落雷位置特定部によって特定された小エリアを強調表示する制御を行う表示制御部と、を有し、
前記表示制御部は、前記第1落雷位置特定部及び前記第2落雷位置特定部によって特定された小エリアを、前記作業エリアからの距離に応じて異なる態様で表示することを特徴とする落雷報知システム。
前記報知情報データベースは、前記作業エリア、前記第1隣接エリア及び前記第2隣接エリアの各項目にそれぞれ停電作業前及び停電作業中の項目が対応付けられており、更に、停電作業前及び停電作業中の項目に、作業員に報知する報知情報が関連付けられており、
前記報知内容検索部は、前記集中制御装置から取得した停電作業前か停電作業中かを検索条件に更に含め、各検索条件を満たす前記報知情報を、前記報知情報データベースから検索することを特徴とする請求項2記載の落雷報知システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、発雷時においては、停電作業の可否の迅速な判断が系統運用者に要求されるが、その一方で、正確な判断を行うために発雷に関する情報収集及び作業状況の確認等複数の作業が必要であり、その分時間を要する。仮に、停電作業の判断が遅れることによって、作業の緊急復旧が遅れた場合は、変電所の配電エリアにおける電力の供給に支障を来すおそれがある。また、停電作業の中止を決定したにもかかわらず、作業位置付近に落雷が発生しなかった場合には、本来、実施可能であった作業が行えなかったことによる停電作業計画の見直しが必要となり、顧客側に対しては再度停電作業を行うことを改めて説明する必要が生じる。このように、作業実施可否の判断は、系統運用者にとって負担が大きい。特許文献1の技術は、系統運用者に対して停電作業の可否を判断するための情報を提供するものであり、停電作業の可否の判断は系統運用者によって行われる。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決し、落雷発生時における作業実施可否の判定を迅速かつ正確に行い、判定結果に対応する指示情報を作業員に報知する落雷報知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、次に記載する構成を備えている。
【0008】
(1) 観測エリアの周囲に複数配置され、落雷によって発生する電磁波を検知する複数のセンサを有し、当該センサの測定結果に基づいて前記観測エリアにおける大まかな落雷位置を標定する落雷位置標定装置と、複数の変電所の母線の電圧情報を取得して複数の変電所を一括して監視するとともに、変電所及び送電線を停電させる操作を実行する集中制御装置と、前記落雷位置標定装置及び前記集中制御装置から取得した情報に基づいて作業員に報知する落雷に関連する報知情報を決定し、作業員に報知する落雷情報報知装置と、を備え、前記落雷情報報知装置は、前記観測エリア内の所定エリアをマトリクス状に配列される複数の小エリアに分割し、当該小エリアと、前記小エリアの範囲を規定する範囲情報と、前記変電所によって電力供給される配電エリアとを関連付けて記憶してなる位置データベースと、前記集中制御装置から取得した前記変電所の母線の電圧を監視し、前記母線に落雷による誘電電圧が発生したか否かを判定する変電所落雷判定部と、前記位置データベースを参照して、前記集中制御装置から取得した停電作業を行う変電所及び送電線を含む小エリアを抽出し、抽出した小エリアを作業エリアとして特定する作業エリア特定部と、前記位置データベースにおける範囲情報を参照して、前記落雷位置標定装置から取得した落雷位置に対応する小エリアを抽出し、抽出した小エリアを第1落雷位置として特定する第1落雷位置特定部と、前記変電所落雷判定部が、落雷による誘電電圧が発生したと判定した場合に、前記位置データベースにおける配電エリアを参照して、前記誘電電圧が発生した母線の変電所の配電エリアに含まれる小エリアを抽出し、抽出した小エリアを第2落雷位置として特定する第2落雷位置特定部と、前記第1落雷位置特定部及び前記第2落雷位置特定部において共通して特定された小エリアと前記作業エリアとの距離に基づいて作業リスクのレベルを判定する作業リスク判定部と、前記作業リスクのレベルと作業員に報知する報知情報を関連付けてなる報知情報データベースと、当該作業リスク判定部において判定された作業リスクのレベルを検索条件として、前記報知情報を前記報知情報データベースから検索する報知内容検索部と、前記報知内容検索部が検索した報知情報を作業員に報知する報知部と、各種の情報を表示する表示部と、当該表示部に、前記第1落雷位置特定部及び前記第2落雷位置特定部によって特定された小エリアを強調表示する制御を行う表示制御部と、を有し、前記表示制御部は、前記第1落雷位置特定部及び前記第2落雷位置特定部によって特定された小エリアを、前記作業エリアからの距離に応じて異なる態様で表示することを特徴とする落雷報知システム。
【0009】
(1)によれば、落雷情報報知装置が、落雷位置標定装置から大まかな落雷位置を取得するとともに、複数の変電所の母線の電圧情報から変電所を中心とした電力の供給区域(配電エリア)で起きた落雷を全て把握する。そして、これら2つの落雷位置の情報に基づいて落雷位置を特定することにより、落雷があった位置をより正確に把握することが可能になる。更に、特定した落雷位置が作業エリアから遠い場合には、作業リスクのレベルが低く、近い場合には作業リスクのレベルが高いというように判定され、そのレベルに応じて作業実施の可否や指示情報等に関する報知情報を設定することにより、作業員に対してより適確な指示を行うことが可能になる。このように、落雷発生時における作業実施可否の判定を迅速かつ正確に行い、判定結果に対応する指示情報等を報知することが可能になる。
【0010】
(2) (1)において、前記落雷情報報知装置は、前記作業エリアに隣接する小エリアを第1隣接エリアとして特定する第1隣接エリア特定部と、前記第1隣接エリアに隣接する小エリアを第2隣接エリアとして特定する第2隣接エリア特定部と、を更に備え、前記報知情報データベースは、前記作業リスクのレベルとして前記作業エリア、前記第1隣接エリア及び前記第2隣接エリアの項目を有し、前記作業エリア、前記第1隣接エリア及び前記第2隣接エリアにそれぞれ前記報知情報が関連付けられており、前記作業リスク判定部は、前記第1落雷位置特定部及び前記第2落雷位置特定部において共通して特定された小エリアが、前記作業エリア、前記第1隣接エリア及び前記第2隣接エリアのいずれに該当するか判定し、前記報知内容検索部は、前記作業リスク判定部において該当すると判定されたエリアを検索条件として前記報知情報を前記報知情報データベースから検索し、前記表示制御部は、前記第1落雷位置特定部及び前記第2落雷位置特定部によって特定された小エリアを、作業エリア、第1隣接エリア及び第2隣接エリアにおいてそれぞれ異なる態様で表示することを特徴とする落雷報知システム。
【0011】
(2)によれば、作業エリアの周辺領域を作業エリアからの距離に応じて、第1隣接エリア及び第2隣接エリアに区画することにより、作業リスクのレベルを、レベル高の作業エリア、レベル中の第1隣接エリア及びレベル小の第2隣接エリアというように対応付けることが可能になる。これにより、作業リスクの判定が容易に可能になる。
【0012】
(3) (2)において、前記報知情報データベースは、前記作業エリア、前記第1隣接エリア及び前記第2隣接エリアの各項目にそれぞれ停電作業前及び停電作業中の項目が対応付けられており、更に、停電作業前及び停電作業中の項目に、作業員に報知する報知情報が関連付けられており、前記報知内容検索部は、前記集中制御装置から取得した停電作業前か停電作業中かを検索条件に更に含め、各検索条件を満たす前記報知情報を、前記報知情報データベースから検索することを特徴とする落雷報知システム。
【0013】
(3)によれば、作業リスクのレベル判定に、停電作業前か停電作業中かの条件を加えることにより、例えば、停電作業前であれば作業中止、停電作業中であれば緊急復旧というように細かい指示を送ることが可能になる。これにより、作業員に対してより適確な指示を行うことが可能になる。
【0014】
(4) (3)において、 前記落雷情報報知装置は、停電作業の作業内容と当該作業内容の重要度を示す複数段階の作業レベルとを関連付けてなる作業レベルテーブルと、当該作業レベルテーブルを参照して、前記集中制御装置から取得した停電作業の作業レベルを判定する作業レベル判定部とを更に備え、前記報知情報データベースは、停電作業前及び停電作業中の項目にそれぞれ前記作業レベルの項目が対応付けられており、更に前記作業レベルにそれぞれ作業員に報知する報知情報が関連付けられており、前記報知内容検索部は、前記作業レベル判定部が判定した作業レベルを検索条件に更に含め、前記報知情報を前記報知情報データベースから検索することを特徴とする落雷報知システム。
【0015】
(4)によれば、作業リスクのレベル判定に、作業内容の重要度を示す複数段階の作業レベルという条件を加えることにより、例えば、停電作業前で作業レベルが高ければ、第1隣接エリアの落雷であれば、早めに作業中止とするというように細かい指示を送ることが可能になる。これにより、作業員に対してより適確な指示を提供することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、落雷発生時における作業実施可否の判定を迅速かつ正確に行い、判定結果に対応する指示情報を作業員に報知する落雷報知システムを提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態における落雷報知システム1の構成を示すブロック図である。落雷報知システム1は、落雷情報報知装置10と、落雷位置標定装置50と、集中制御装置70とを備えている。
【0019】
まず、既設の装置である落雷位置標定装置50及び集中制御装置70について説明する。
【0020】
落雷位置標定装置50は、Evaluation of the Accuracy of the Lightning Location System (略して、LLS)と称されており、落雷時に発生する電磁波を測定する複数の電磁波検知センサ52と、各電磁波検知センサ52から送られる測定データを集約し、位置標定計算を実施して、落雷位置データを作成する位置解析部54とを備えている。電磁波検知センサ52は、落雷位置の観測エリアを囲むように配置されるため、最低3台は必要である。
【0021】
具体的に、観測エリア内に落雷があると、その落雷地点から電磁波が広がる。この電磁波が複数の電磁波検知センサ52によって検知され、電磁波の受信時刻や電磁波の強度等が測定される。電磁波検知センサ52によって測定されたデータは、通信回線を介して位置解析部54に送信される。位置解析部54は、落雷位置から遠いセンサほど電波のキャッチが遅れることを利用して落雷位置を算出し、落雷位置と落雷時間とを関連付けることによって落雷位置情報を作成する。落雷位置は緯度経度によって表される。落雷位置標定装置50によって作成された落雷位置情報は落雷情報報知装置10に配信される。
【0022】
集中制御装置70は、複数の変電所60の一括監視や遠隔操作を行うものである。例えば、各変電所60からは、集中制御装置70に対して変電所60内の各種設備の状況、例えば、各種遮断器や開閉器の開閉状態、回線ごとの電力量、変電所60の母線のV0情報等が送信される。ここで、V0情報とは、雷が発生したときに雷の放電が大地に落ちたり雲間で放電したりした場合に、配電線に発生した誘導電圧を指している。変電所の6kV母線には、この誘導電圧を検知するセンサ(図示せず)が設置されている。
【0023】
また、停電作業を行う際には、集中制御装置70が変電所60内の各種設備を遠隔操作して、例えば、変電所内の各種遮断器や開閉器の開閉することにより、停電作業を実施する区間の停電操作等が実施される。
【0024】
また、集中制御装置70からは、各変電所60の母線のV0情報と、停電作業情報とが落雷情報報知装置10に配信される。停電作業情報には、停電作業中であることを示す作業中情報、停電作業前であることを示す作業予定情報、作業中又は作業予定の発電所名、変電所名及び送電線名等の情報が含まれる。
【0025】
落雷情報報知装置10は、落雷位置標定装置50からの落雷位置情報及び集中制御装置70からのV0情報に基づいて落雷位置を判定して地図表示するとともに、現場の作業員に、作業の可否や今後の作業における各種の指示を作業員に報知するものである。落雷情報報知装置10は、CPU12と、ROM14と、RAM16と、電話回線通信部18と、表示部20と、入出力部22とを備えている。
【0026】
CPU12は、落雷情報報知装置10全体を制御する中央処理装置である。ROM14は、不揮発性メモリからなり、CPU12に各種の機能を実行させるためプログラム、処理に必要な各種のデータをまとめたデータベースやテーブル等が記憶されている。RAM16は、CPU12が各種の処理を実行する際にデータを展開する作業フィールドとして使用される。電話回線通信部18は、電話回線に接続し、電話回線を介して落雷情報報知装置10と作業員が所持する携帯端末機器との間で通信を行うものである。表示部20は、画像表示を行う液晶ディスプレイからなる。入出力部22は、落雷位置標定装置50及び集中制御装置70との間で送受信可能に有線又は無線によって接続するものである。
【0027】
ROM14には、CPU12が、変電所落雷判定部12a、作業エリア特定部12b、第1隣接エリア特定部12c、第2隣接エリア特定部12d、第1落雷位置特定部12e、第2落雷位置特定部12f、作業リスク判定部12g、作業レベル判定部12h、報知内容検索部12i、表示制御部12j及び通信制御部12kとしての機能を果たすようにするためのプログラムが記憶されている。
【0028】
また、ROM14には、位置データベース14aと、報知情報データベース14bと、作業レベル判定テーブル14cとが記憶されている。位置データベース14aは、落雷位置標定装置50の観測エリア内において落雷位置を監視する所定エリアを複数の小エリアにマトリクス状に分割し、各小エリアに、小エリアの範囲を示す緯度経度の情報と、どの変電所の配電エリアに属しているのかを示す情報、小エリア内の配電関連設備の情報、例えば変電所名、電柱名、送電線名等を関連付けて記憶したものである。
【0029】
報知情報データベース14bは、作業員に報知する報知情報を各種の検索条件に関連付けて記憶したものである。詳細については後述する。
【0030】
また、RAM16には、マトリクス状に配置された小エリアの個々に関連付けられる指定情報を記憶する小エリア指定情報記憶部16aが設定されている。指定情報は、詳細については後述するが、小エリアが第1落雷位置として指定されたか、第2落雷位置として指定されたか、作業エリアとして指定されたか、第1隣接エリアとして指定されたか、第2隣接エリアとして指定されたか、といった内容を示す情報である。なお、ROM14には、RAM16に
図6に示す小エリア指定情報記憶部16aを作成するようにCPU12を機能させるプログラムが記憶されている。
【0031】
次に、CPU12の機能について説明する。
変電所落雷判定部12aは、集中制御装置70から出力される変電所60の母線のV0情報を監視して、V0情報の電圧値が予め定めた基準値以上であるか否かを判定し、V0情報の電圧値が基準値以上であった場合に、変電所60の配電エリア内で落雷があったと判定する。変電所落雷判定部12aは、この判定を単位時間(例えば、60秒間)に複数回(例えば10秒毎に6回)行い、単位時間内におけるV0情報の発生回数すなわち落雷回数を計数する。V0情報の発生回数は、RAM16に各変電所に対応させてV0情報の有無を一定時間間隔で記憶していくV0情報記憶エリアを設定し、このV0情報記憶エリアにV0情報の有無を記憶していくことによって計数可能になる。
【0032】
具体的には、RAM16にV0情報記憶エリアとして、例えば、V0情報(0)〜(6)の6つのエリアを設定する。そして、例えば、変電所落雷判定部12aが10秒間におけるV0情報の有無を判定し、V0情報が有れば有りを示す情報をV0情報(0)に記憶する。V0情報が無ければ無しを示す情報をV0情報(0)に記憶する。更に、10秒後にV0情報(0)〜(5)の情報をV0情報(1)〜(6)に移動し、次の10秒間におけるV0情報の有無を示す情報をV0情報(0)に記憶する。なお、V0情報(0)〜(5)の情報をV0情報(1)〜(6)に移動する際、先に記憶されているV0情報(6)にはV0情報(5)が上書きされるため、消去されることになる。このようにV0情報の有無が記憶されたV0情報(1)〜(6)において、有りを示す情報が記憶されている記憶エリアが存在すれば変電所60の配電エリアに落雷が有ったことを示し、V0情報(1)〜(6)において、有りを示す情報が記憶されている記憶エリアの数が、60秒間における落雷の発生回数となる。
【0033】
作業エリア特定部12bは、位置データベース14aを参照して、集中制御装置70から送信される停電作業情報に対応する小エリアを抽出する。更に、作業エリア特定部12bは、位置データベース14aから抽出した小エリアに対応する小エリア指定情報記憶部16aの記憶領域に、作業エリアであることを特定する情報を記憶する。更に、この情報とともに、作業エリアにおいて作業中であるか作業前であるかを特定する情報を記憶する。
【0034】
第1隣接エリア特定部12cは、位置データベース14aを参照して、作業エリア特定部12bが特定した作業エリアの周囲に位置する小エリアを抽出する。更に、第1隣接エリア特定部12cは、位置データベース14aから抽出した小エリアに対応する小エリア指定情報記憶部16aにおける記憶領域に、第1隣接エリアであることを特定する情報を記憶する。
【0035】
第2隣接エリア特定部12dは、位置データベース14aを参照して、第1隣接エリア特定部12cが特定した作業エリアの周囲に位置する小エリアを抽出する。更に、第2隣接エリア特定部12dは、位置データベース14aから抽出した小エリアに対応する小エリア指定情報記憶部16aの記憶領域に、第2隣接エリアであることを特定する情報を記憶する。
【0036】
第1落雷位置特定部12eは、位置データベース14aを参照して、落雷位置標定装置50から配信された落雷位置に対応する小エリアを抽出する。具体的には、落雷位置標定装置50から配信される落雷位置の緯度経度を含む範囲の小エリアが抽出される。更に、第1落雷位置特定部12eは、位置データベース14aから抽出した小エリアに対応する小エリア指定情報記憶部16aの記憶領域に、第1落雷位置であることを特定する情報を記憶する。
【0037】
第2落雷位置特定部12fは、RAM16におけるV0情報記憶エリアを読み出し、V0情報(1)〜(6)において「有」が記憶されているV0情報記憶エリアに対応する変電所60を特定する。更に、第2落雷位置特定部12fは、位置データベース14aを参照して、変電所60の配電エリアに対応している小エリアを抽出する。また、第2落雷位置特定部12fは、RAM16の小エリア指定情報記憶部16aにおける位置データベース14aから抽出した小エリアに対応する記憶領域に、落雷があった配電エリアすなわち第2落雷位置であることを特定する情報を記憶する。
【0038】
作業リスク判定部12gは、RAM16の小エリア指定情報記憶部16aに記憶された情報に基づいて、第1落雷位置特定部12eで第1落雷位置と特定されかつ第2落雷位置特定部12fで第2落雷位置と特定された小エリアを抽出し、この小エリアが、作業エリア、第1隣接エリア、第2隣接エリア、これらのエリアに属さない他のエリアのいずれに該当するかを判定する。ここで、落雷位置が作業位置から離れている方が、作業リスクが低くなることから、作業エリアへの落雷が最も作業リスクが高く、第1隣接エリア、第2隣接エリア、これらのエリアに属さない他のエリアへの落雷の順で作業リスクが低くなる。このように、前述したように落雷位置として特定された小エリアが作業エリア、第1隣接エリア、第2隣接エリア、これらのエリアに属さない他のエリアのいずれに該当するかを判定することは、作業リスクのレベルを判定することと同じである。
【0039】
作業レベル判定部12hは、作業レベル判定テーブル14cを参照して、集中制御装置70から配信される停電作業のレベルを判定する。
【0040】
報知内容検索部12iは、RAM16の小エリア指定情報記憶部16aに記憶された情報、作業リスク判定部12gの判定結果及び作業レベル判定部12hの判定結果を検索条件として該当する報知内容を、報知情報データベース14bから検索する。
【0041】
表示制御部12jは、表示部20に表示させる画像を作成する制御を行う。具体的には、RAM16の小エリア指定情報記憶部16aに記憶された情報、及び作業リスク判定部12gの判定結果に基づいて、所定エリアの地図上における、作業エリア、第1隣接エリア、第2隣接エリア及びそれら以外の他のエリアで落雷があった小エリアを色分けした画像を作成する。
【0042】
通信制御部12kは、電話回線通信部18を制御して、停電作業の作業員が所持する携帯端末装置に音声情報や画像情報を送信する制御を行う。具体的には、報知内容検索部12iが検索した内容を音声情報あるいは画像情報として所定の携帯端末装置に送信する。このように、報知内容検索部12i及び通信制御部12kは、報知部に相当する。
【0043】
図2は、位置データベース14aの内容を示す説明図である。位置データベース14aは、例えば
図7に示すように、所定エリアをマトリクス状に分割してなる複数の小エリアの範囲を示す緯度経度情報と、各小エリア内に設置されている各種の設備情報と、各小エリアに付与された小エリア番号とを関連付けたものである。設備情報としては、電柱名、送電線名及び配電エリアの変電所名等が該当する。
【0044】
図3は、報知情報データベース14bの内容を示す説明図である。報知情報データベース14bは、落雷位置と、作業状況と、作業レベルと、落雷回数と、管理側の報知内容と、作業場所側への報知内容を関連付けたものである。落雷位置は、作業エリア、第1隣設エリア及び第2隣設エリアの項目に分類されている。作業状況は、作業前及び作業後の項目に分類されている。作業レベルは、レベル1〜4の項目に分類されている。落雷回数は、判定基準となる落雷回数別に分類されている。そして、落雷位置の各項目には作業状況の2項目が関連付けられており、作業状況の各項目には作業レベルの4つの項目が関連付けられており、作業レベルの各項目には落雷回数が関連付けられており、落雷回数には管理側作業員への報知内容と作業場所側作業員への報知内容とが関連付けられている。つまり、所定エリア内に落雷があった場合に、落雷位置、作業状況、作業レベル、落雷回数に応じて報知内容が決定される。
【0045】
図4は、作業レベル判定テーブル14cの内容を示す説明図である。作業レベル判定テーブル14cは、作業名と、作業レベルとが関連付けられている。作業レベルは、作業名で指定される作業の重要度を示している。
【0046】
図5は、小エリア指定情報記憶部16aの記録領域を、実際の地図上の所定エリアに対応させて模式的に示す説明図である。一例として、
図7に示すように、所定エリアをマトリクス状に分割して116個の小エリアを形成したとする。これらの小エリアを小エリアE1A〜小エリアE8Lと称することにする。なお、小エリアは、実際には5km×5kmの大きさである。
【0047】
具体的に、作業エリア特定部12bが、集中制御装置70から停電作業情報として配信された送電線、電柱及び変電所等の配備されている小エリアとして、小エリア4D〜4I、5Fを抽出した場合、小エリア指定情報記憶部16aにおける小エリア4D〜4I、5Fに対応する記憶領域に、作業エリアであることを特定する情報を記憶する。
図4においては、「作1中」と記入されている小エリアは、作業エリアに該当し、作業レベルが1であり、作業中であるとして特定される。なお、作業エリアに該当し、作業レベルが2であり、作業前であれば、「作2前」と記入される。
【0048】
また、第1隣接エリア特定部12cが、作業エリアの周囲に位置する小エリア3C〜3J、4C、4J、5C〜5E、5G〜5J、6D〜6Gに対応する小エリア指定情報記憶部16aにおける記憶領域に、第1隣接エリアであることを特定する情報を記憶する。
図5においては、「隣(1)」と記入されている小エリアが第1隣接エリアとして特定される。
【0049】
また、第2隣接エリア特定部12dは、第1隣接エリア特定部12cの周囲に位置する小エリア2B〜2K、3B、3K、4B、4K、5B、5K、6B〜6D、6H〜6K、7D〜7Hに対応する小エリア指定情報記憶部16aにおける記憶領域に、第2隣接エリアであることを特定する情報を記憶する。
図5においては、「隣(2)」と記入されている小エリアが第2隣接エリアとして特定される。
【0050】
次に、落雷情報報知装置10による処理について、
図6を参照しながら説明する。
まず、
図6のステップS1に示すように、CPU12が、小エリア指定情報記憶部16aからの記憶領域から、作業エリアを実施する小エリア番号を取得する。
【0051】
次に、ステップS2に示すように、CPU12が、ステップS1で取得した小エリア番号に基づいて作業エリアを特定する。更に、第1隣接エリア特定部12cが、作業エリアに基づいて第1隣接エリアを特定し、第2隣接エリア特定部12dが、第1隣接エリアに基づいて第2隣接エリアを特定する。
【0052】
次に、ステップS3に示すように、CPU12が、第1落雷位置に対応する小エリアを小エリア指定情報記憶部16aから取得する。
図5においては、「落(1)」と記入されている小エリアが第1落雷位置として特定される。
【0053】
次に、ステップS4に示すように、CPU12が、第2落雷位置に対応する小エリアを小エリア指定情報記憶部16aから取得する。なお、
図5においては、「落雷(2)」と記入されている小エリアが第2落雷位置として特定される。なお、
図5における「落雷(2)2」という表記は、小エリアが第2落雷位置に該当し、2回のV0情報の発生があったことを示している。
【0054】
次に、ステップS5において、CPU12は、小エリア指定情報記憶部16aから第1落雷位置及び第2落雷位置と特定された小エリアを全て抽出し、表示部20に表示される地図において小エリアを色分けするための色指定情報を、RAM16の所定の記憶エリアに記憶する。ここで、第1落雷位置の小エリアと第2落雷位置の小エリアとは異なる色とする。更に、第1落雷位置かつ第2落雷位置と特定された小エリアは、第1落雷位置の小エリア及び第2落雷位置の小エリアと異なる色とする。
【0055】
次に、ステップS6において、CPU12は、小エリア指定情報記憶部16aから第1落雷位置及び第2落雷位置と特定された小エリアを全て抽出し、第2隣接エリアに属している小エリアがあると判定した場合、ステップS7に処理を移行し、判定しない場合にステップS8に処理を移行する。
【0056】
ステップS7においては、CPU12は、報知情報データベース14bを参照して、ステップS6において第2隣接エリアに属していると判定された小エリアに関連付けられた作業状況、作業レベル、落雷回数に対応する報知内容を、作業員の携帯端末に送信される情報が記憶されるRAM16の記憶エリアに記憶する。また、CPU12(表示制御部12j)は、ステップS6において第2隣接エリアに属していると判定された小エリアが地図上において色分けされるように色指定情報を、表示部20の画像表示に用いるRAM16の記憶エリアに記憶する。この処理が終了した場合には、ステップS8に処理を移行する。
【0057】
次に、ステップS8において、CPU12は、小エリア指定情報記憶部16aから第1落雷位置及び第2落雷位置と特定された小エリアを全て抽出し、この小エリアが、第1隣接エリアに属していると判定した場合、ステップS9に処理を移行し、第1隣接エリアに属していると判定ない場合にステップS10に処理を移行する。
【0058】
ステップS9においては、CPU12は、報知情報データベース14bを参照して、ステップS8において第1隣接エリアに属していると判定された小エリアに関連付けられた作業状況、作業レベル、落雷回数に対応する報知内容を、作業員の携帯端末に送信される情報が記憶されるRAM16の記憶エリアに記憶する。この場合、ステップS7においてRAM16に記憶された報知内容が更新される。また、CPU12(表示制御部12j)は、ステップS8において第1隣接エリアに属していると判定された小エリアが地図上において色分けされるように色指定情報を、表示部20の画像表示に用いるRAM16の記憶エリアに記憶する。この処理が終了した場合には、ステップS10に処理を移行する。
【0059】
次に、ステップS10において、CPU12は、小エリア指定情報記憶部16aから第1落雷位置及び第2落雷位置と特定された小エリアを全て抽出し、作業エリアに属している小エリアがあると判定した場合、ステップS11に処理を移行し、判定しない場合にステップS12に処理を移行する。
【0060】
ステップS11においては、CPU12は、報知情報データベース14bを参照して、ステップS10において作業エリアに属していると判定された小エリアに関連付けられた作業状況、作業レベル、落雷回数に対応する報知内容を、作業員の携帯端末に送信される情報が記憶されるRAM16の記憶エリアに記憶する。この場合、ステップS9においてRAM16に記憶された報知内容が更新される。また、CPU12(表示制御部12j)は、ステップS10において作業エリアに属していると判定された小エリアが地図上において色分けされるように色指定情報を、表示部20の画像表示に用いるRAM16の記憶エリアに記憶する。この処理が終了した場合には、ステップS12に処理を移行する。
【0061】
ステップS12においては、CPU12が、RAM16に記憶された色指定情報に基づいて、地図上の小エリアを色分けした地図情報を作成して表示部20に表示させる処理を行う。更に、ステップS12においては、CPU12が、RAM16に記憶された作業場所側の報知内容を表示部20に表示させる処理を行う。
【0062】
ステップS13においては、CPU12が、RAM16に記憶された作業場所側の報知内容を作業員の携帯端末装置に送信する処理を行う。
【0063】
図6に示す処理は、所定時間毎(例えば30秒毎)に実行される。このため、表示部20に表示される地図情報は所定時間毎に更新される。
【0064】
次に、システム側における落雷位置の地図表示例及び作業員側への報知例について、
図5、
図7〜9を参照しながら説明する。
【0065】
図5に示す小エリア指定情報記憶部16aおいて、第1落雷位置特定部12eで第1落雷位置と特定されかつ第2落雷位置特定部12fで第2落雷位置と特定された小エリアは、小エリア2Cのみである。
【0066】
この場合、RAM16における色指定情報が記憶されたエリアには、小エリア2C及び作業エリアに相当する記憶領域に、色指定情報が記憶されている。このため、表示部20には、
図7に示すように、小エリア2C及び作業エリアが色分け表示される。管理側の作業員は、
図7に示す地図を視認することによって、作業エリアから10km圏内で落雷が発生したことがわかる。
【0067】
また、この小エリア2Cは、作業エリアに対して第2隣接エリアに該当しており、作業エリアの作業レベルは「1」である。また、
図5において、小エリア2Cに、例えば「作業中」であることを示す情報が関連付けられているため、管理側の作業員には、
図3に示すように、「作業場所近くの第2隣接エリア内で発雷しました。」という情報が、画像出力及び音声出力によって報知される。また、作業場所側の作業員には、
図3に示すように、「作業場所近くの第2隣接エリア内で発雷しました。緊急復旧を要請する可能性があります。」という情報が、作業員の携帯端末装置における画像出力及び音声出力によって報知される。
【0068】
図8は、雷雲が作業エリアに入ってきた時の表示部20の地図表示例を示すものであり、作業エリア、第1隣接エリア及び第2隣接エリアの一部に落雷があった場合を示す。作業エリア、第1隣接エリア、第2隣接エリア及び第2隣接エリア外において落雷があった小エリアがそれぞれ視認可能に色分けされている。落雷があった小エリアの色は、本実施形態によれば、作業エリア、第1隣接エリア及び第2隣接エリアは同色系統であり、作業エリアが最も濃く、第1隣接エリア、第2隣接エリア、第2隣接エリア外の順に薄くなるように設定されている。また、管理側の作業員及び作業エリアの作業員への落雷情報の報知には優先順が設定されており、作業エリアでの落雷、第1隣接エリアでの落雷、第2隣接エリアでの落雷の順で報知される。例えば、
図8に示すように、作業エリア、第1隣接エリア及び第2隣接エリアの一部に落雷があった場合、作業エリアの報知内容が、管理側の作業員及び作業エリアの作業員に報知される。つまり、
図8の場合には、作業前であれば、管理側の作業員には「作業予定場所を含むエリア内で発雷中です。」と報知され、作業場所側の作業員には「作業中止です。」と報知される。作業中であれば、管理側の作業員には「作業場所を含むエリア内で発雷中です。」と報知され、作業場所側の作業員には「緊急復旧を行ってください。」と報知される。
【0069】
図9は、作業エリア、第1隣接エリア及び第2隣接エリアの全体に落雷があった場合を示す。作業エリア、第1隣接エリア及び第2隣接エリアの全体に落雷があった場合には、作業エリアの周囲に第1隣接エリア及び第2隣接エリアが表示される。
【0070】
以上説明したように構成された本実施形態によれば、落雷位置標定装置50から取得される大まかな落雷位置が取得できる。複数の変電所60の母線の電圧情報から変電所60を中心とした電力の供給区域(配電エリア)で起きた落雷を全て把握することができる。これら2つの落雷位置の情報に基づいて落雷位置を特定することにより、落雷があった位置をより正確に把握することが可能になる。そして、特定した落雷位置が作業エリアから遠い場合には、作業リスクのレベルが低く、近い場合には作業リスクのレベルが高いというように判定され、作業リスクに応じて作業実施の可否や指示情報等に関する報知情報を設定することにより、作業員に対してより適確な指示を自動的に提供することが可能になる。このように、落雷発生時における作業実施可否の判定を迅速かつ正確に行い、判定結果に対応する指示情報等を報知することが可能になる。
【0071】
また本実施形態によれば、作業エリアの周辺領域を作業エリアからの距離に応じて、第1隣接エリア及び第2隣接エリアに区画することにより、作業リスクのレベルを、レベル高の作業エリア、レベル中の第1隣接エリア及びレベル小の第2隣接エリアというように対応付けることが可能になる。これにより、報知情報データベースの項目を削減することが可能になる。
【0072】
また本実施形態によれば、作業リスクのレベル判定に、停電作業前か停電作業中かの条件や、作業内容の重要度を示す複数段階の作業レベルという条件を加えることにより、例えば、停電作業前で作業レベルが高ければ、第1隣接エリアの落雷であれば、早めに作業中止とするというように細かい指示を送ることが可能になる。これにより、作業員に対してより適確な指示を提供することが可能になる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態は上述した実施形態に限るものではない。例えば、表示部20における落雷位置の地図表示は、前述した実施形態においては、第1落雷位置でかつ第2落雷位置である小エリアを色分けしているが、第1落雷位置と第2落雷位置との両方を、作業エリア、第1隣接エリア及び第2隣接エリアの色とは異なる色で色分け表示させてもよい。
【0074】
また、同じ作業日に複数の作業予定がある場合には、それぞれ作業予定に対応する作業エリアを設定し、作業エリア毎に地図表示を切り替えるようにしてもよい。