(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記変速装置は、前記入力軸及び前記出力軸の一方に遊転可能に設けられた複数の遊転ギヤと、前記入力軸及び前記出力軸の他方に相対回転不能に固定され、前記複数の遊転ギヤとそれぞれ噛合する複数の固定ギヤと、前記複数の遊転ギヤの側方に、前記複数の遊転ギヤが回転連結された軸に相対回転不能且つ前記軸の軸線方向に移動可能に設けられ、前記複数の遊転ギヤと相対回転不能に係合して前記複数の遊転ギヤと前記軸を回転不能に回転連結する複数の噛み合い機構と、前記複数の噛み合い機構をそれぞれ前記軸線方向に移動させて、前記複数の噛み合い機構を、それぞれ対応する前記複数の遊転ギヤに相対回転不能に係合させるとともに、前記複数の噛み合い機構を、それぞれ対応する前記複数の遊転ギヤから相対回転可能に離脱させるシフトアクチュエータとを有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のハイブリッド車両用変速制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の変速制御装置100が搭載されるハイブリッド車両(以下、単に車両と略す)は、エンジンEG及びモータジェネレータMGが出力するトルクによって、駆動輪Wl、Wrを駆動させる車両である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の変速制御装置100は、エンジンEG、モータジェネレータMG、クラッチC、トランスミッションTM(以下、TMと略す)、インバータINV、バッテリBT、ハイブリッドECU11、エンジンECU12、トランスミッションECU13(以下、TM−ECU13と略す)、モータジェネレータECU14、バッテリECU15、減速機80、アクセルペダル95、を有する。ここでは、ハイブリッドECU11、エンジンECU12、TM−ECU13は、別体として説明するが、これに限定されるものではなく、ハイブリッドECU11、エンジンECU12、TM−ECU13、モータジェネレータECU14、及びバッテリECU15が一体であっても差し支え無い。
【0017】
エンジンEGは、ガソリンや軽油等の炭化水素系燃料を使用するガソリンエンジンやディーゼルエンジン等であり、エンジントルクTeを出力するものである。エンジンEGは、駆動軸EG−1、燃料噴射装置EG−2、スロットルバルブEG−3を有している。
【0018】
これら燃料噴射装置EG−2、スロットルバルブEG−3は、エンジンECU12に通信可能に接続されて、エンジンECU12によって制御される。駆動軸EG−1の近傍には、駆動軸EG−1の回転速度、即ち、エンジン回転速度Neを検出するエンジン回転速度センサEG−4が設けられている。エンジン回転速度センサEG−4は、エンジンECU12に通信可能に接続され、検出したエンジン回転速度NeをエンジンECU12に出力する。
【0019】
駆動軸EG−1は、ピストンにより回転駆動されるクランクシャフトと一体的に回転する。このように、エンジンEGは、駆動軸EG−1にエンジントルクTeを出力し、駆動輪Wl、Wrを駆動する。なお、エンジンEGがガソリンエンジンである場合には、エンジンEGのシリンダヘッドには、シリンダ内の混合気を点火するための点火装置(不図示)が設けられている。
【0020】
スロットルバルブEG−3は、エンジンEGのシリンダに空気を取り込む経路の途中に設けられている。スロットルバルブEG−3は、エンジンEGのシリンダに取り込まれる空気量(混合気量)を調整するものである。燃料噴射装置EG−2は、エンジンEGの内部に空気を取り込む経路の途中やエンジンEGのシリンダヘッドに設けられている。燃料噴射装置EG−2は、ガソリンや軽油等の燃料を噴射する装置である。
【0021】
アクセルペダル95は、変速制御装置100が出力する駆動力を可変に操作するものである。アクセルペダル95には、アクセルペダル95の操作量であるアクセル開度Acを検出するアクセルセンサ96が設けられている。アクセルセンサ96は、ハイブリッドECU11と通信可能に接続されている。
【0022】
クラッチCは、駆動軸EG−1とTMの入力軸31との間に設けられ、駆動軸EG−1と入力軸31を断接するものであり、駆動軸EG−1と入力軸31間のクラッチトルクTcを電子制御可能な任意のタイプのクラッチである。本実施形態では、クラッチCは、乾式単板ノーマルクローズクラッチであり、フライホイール21、クラッチディスク22、クラッチカバー23、プレッシャープレート24、ダイヤフラムスプリング25を有している。
【0023】
フライホイール21は、所定の質量を有する円板であり、駆動軸EG−1が接続し、駆動軸EG−1と一体回転する。クラッチディスク22は、その外縁部に摩擦部材22aが設けられた円板状であり、フライホイール21と離接可能に対向している。クラッチディスク22は、入力軸31と接続し、入力軸31と一体回転する。
【0024】
クラッチカバー23は、フライホイール21の外縁と接続しクラッチディスク22の外周側に設けられた円筒部23aと、フライホイール21との接続部と反対側の円筒部23aの端部から径方向内側に延在する円環板状の側周壁23bとから構成されている。プレッシャープレート24は、円環板状であり、フライホイール21との対向面と反対側のクラッチディスク22に離接可能に対向して配設されている。
【0025】
ダイヤフラムスプリング25は、所謂皿バネの一種で、その厚さ方向に傾斜するダイヤフラムが形成されている。ダイヤフラムスプリング25の径方向中間部分は、クラッチカバー23の側周壁23bの内縁と当接し、ダイヤフラムスプリング25の外縁は、プレッシャープレート24に当接している。ダイヤフラムスプリング25は、プレッシャープレート24を介して、クラッチディスク22をフライホイール21に押圧している。この状態では、クラッチディスク22の摩擦部材22aがフライホイール21及びプレッシャープレート24によって押圧され、摩擦部材22aとフライホイール21及びプレッシャープレート24間の摩擦力により、クラッチディスク22とフライホイール21が一体回転し、駆動軸EG−1と入力軸31が接続される。
【0026】
クラッチアクチュエータ29は、TM−ECU13によって駆動制御され、ダイヤフラムスプリング25の内縁部を、フライホイール21側に押圧又は当該押圧を解除し、クラッチトルクTcを可変とするものである。クラッチアクチュエータ29には、電動式のものや油圧式のものが含まれる。クラッチアクチュエータ29が、ダイヤフラムスプリング25の内縁部を、フライホイール21側に押圧すると、ダイヤフラムスプリング25が変形して、ダイヤフラムスプリング25の外縁が、フライホイール21から離れる方向に変形する。すると、当該ダイヤフラムスプリング25の変形によって、フライホイール21及びプレッシャープレート24がクラッチディスク22を押圧する押圧力が徐々に低下し、クラッチディスク22とフライホイール21間のクラッチトルクTcも徐々に低下し、駆動軸EG−1と入力軸31が切断される。このように、TM−ECU13は、クラッチアクチュエータ29を駆動することにより、クラッチディスク22とフライホイール21間のクラッチトルクTcを任意に可変させる。なお、クラッチトルクTcは、例えばクラッチアクチュエータ29が出力するストローク量及びこのストローク量とクラッチトルクTcとの関係を示すクラッチトルクマップに基づいて演算できることは明らかである。
【0027】
TMは、エンジンEGからのエンジントルクTeを複数の変速段の変速比で変速して、デファレンシャルDFに出力する歯車機構式のトランスミッションである。また、本実施形態のTMは、シンクロナイザリング等のシンクロ機構を有さず、後述する第一〜第三スリーブ112〜132を有するドグクラッチ式のトランスミッションである。
【0028】
TMは、入力軸31、出力軸32、第一ドライブギヤ41、第二ドライブギヤ42、第三ドライブギヤ43、第四ドライブギヤ44、第五ドライブギヤ45、第一ドリブンギヤ51、第二ドリブンギヤ52、第三ドリブンギヤ53、第四ドリブンギヤ54、第五ドリブンギヤ55、出力ギヤ56、第一噛み合い機構110、第二噛み合い機構120、第三噛み合い機構130を有する。
【0029】
入力軸31は、エンジンEGからのエンジントルクTeが入力される軸であり、クラッチCのクラッチディスク22と一体回転する。出力軸32は、入力軸31と平行に配設されている。入力軸31及び出力軸32は、それぞれ、図示しないTMのハウジングに回転可能に軸支されている。
【0030】
第一ドライブギヤ41、第二ドライブギヤ42は、入力軸31に相対回転不能に固定された固定ギヤである。第三ドライブギヤ43、第四ドライブギヤ44、第五ドライブギヤ45は、入力軸31に相対回転可能(遊転可能)に設けられた遊転ギヤであり、夫々の回転速度は出力軸32の回転速度Nosと互いに噛合する各ドリブンギヤ53、54、55とによるギヤ比との積となる。
【0031】
第一ドリブンギヤ51、第二ドリブンギヤ52は、出力軸32に相対回転可能(遊転可能)に取り付けられた遊転ギヤであり、夫々の回転速度は入力軸31の回転速度Nisと互いに噛合する各ドライブギヤ41、42とによるギヤ比との積となる。第三ドリブンギヤ53、第四ドリブンギヤ54、第五ドリブンギヤ55、出力ギヤ56は、出力軸32に相対回転不能に固定された固定ギヤである。
【0032】
第一ドライブギヤ41と第一ドリブンギヤ51は、互いに噛合し、変速段の第1速を構成するギヤである。第二ドライブギヤ42と第二ドリブンギヤ52は、互いに噛合し、変速段の第2速を構成するギヤである。第三ドライブギヤ43と第三ドリブンギヤ53は、互いに噛合し、変速段の変速段の第3速を構成するギヤである。第四ドライブギヤ44と第四ドリブンギヤ54は、互いに噛合し、変速段の第4速を構成するギヤである。第五ドライブギヤ45と第五ドリブンギヤ55は、互いに噛合し、変速段の第5速を構成するギヤである。
【0033】
第一ドライブギヤ41、第二ドライブギヤ42、第三ドライブギヤ43、第四ドライブギヤ44、第五ドライブギヤ45の順にギヤ径が大きくなっている。第一ドリブンギヤ51、第二ドリブンギヤ52、第三ドリブンギヤ53、第四ドリブンギヤ54、第五ドリブンギヤ55の順にギヤ径が小さくなっている。
【0034】
入力軸31の近傍、又は第一ドライブギヤ41や、第二ドライブギヤ42の近傍には、入力軸31の回転速度Nisを検出するための、入力軸回転速度センサ91が設けられている。出力軸32の近傍、又は第三ドリブンギヤ53や、第四ドリブンギヤ54、第五ドリブンギヤ55の近傍には、出力軸32の回転速度Nosを検出するための、出力軸回転速度センサ92が設けられている。入力軸回転速度センサ91及び出力軸回転速度センサ92は、TM−ECU13と通信可能に接続され、検出信号をTM−ECU13に出力する。
【0035】
出力軸32は、TMに入力されたトルクをデファレンシャルDFに出力する軸である。出力ギヤ56は、デファレンシャルDFのリングギヤDF−1と噛合し、出力軸32に入力されたトルクを、デファレンシャルDFに出力する。
【0036】
第一噛み合い機構110は、第一ドリブンギヤ51又は第二ドリブンギヤ52を選択して、出力軸32に相対回転不能に連結するものである。従って、第一噛み合い機構110の回転速度は出力軸32の回転速度Nosと同一である。第一噛み合い機構110は、第一ドリブンギヤ51と第二ドリブンギヤ52の間に配設されている。
図5や
図6に示すように、第一噛み合い機構110は、第一ハブ111、第一スリーブ112、第一フォーク部材113、第一シフトアクチュエータ114を有している。
【0037】
第一ハブ111は、第一ドリブンギヤ51と第二ドリブンギヤ52の間において、出力軸32に相対回転不能に固定されている。
図7に示すように、第一ハブ111の外周には、外歯111aが形成されている。第一スリーブ112は、円環状である。第一スリーブ112の内周には、内歯112aが形成されている。外歯111aと内歯112aが嵌合して、第一スリーブ112は第一ハブ111に対して回転不能、且つ、出力軸32の軸線方向に移動可能に配設されている。
【0038】
図6に示すように、第一ドリブンギヤ51の第一ハブ111に対向する側面には、ドグ歯51aが形成されている。
図6や
図7に示すように、第二ドリブンギヤ52の第一ハブ111に対向する側面には、ドグ歯52aが形成されている。
【0039】
第一スリーブ112が第一ドリブンギヤ51側に移動されれば、内歯112aとドグ歯51aが嵌合して、第一ドリブンギヤ51が出力軸32に相対回転不能に連結される。一方で、第一スリーブ112が第二ドリブンギヤ52側に移動されれば、内歯112aとドグ歯52aが嵌合して、第二ドリブンギヤ52が出力軸32に相対回転不能に連結される。
【0040】
図5や
図6に示すように、第一フォーク部材113は、シャフト113aとフォーク113bとから構成されている。フォーク113bは、第一スリーブ112の外周部に凹陥形成された係合部112bに係合している。
【0041】
第一シフトアクチュエータ114は、フォーク部材113を介して、第一スリーブ112を第一ドリブンギヤ51側又は第二ドリブンギヤ52側に移動させるとともに、第一ドリブンギヤ51と第二ドリブンギヤ52の中間の第一ニュートラル位置に移動させるサーボモータである。本実施形態では、回転軸114a又は回転軸114aに連結された部材は、シャフト113a又はシャフト113aと連結された部材と螺合している。回転軸114aが回転すると、シャフト113aが軸線方向に移動する。第一シフトアクチュエータ114は、TM−ECU13によって駆動制御される。
【0042】
第一シフトアクチュエータ114が、第一スリーブ112を第一ドリブンギヤ51側に移動させると、第一ドリブンギヤ51が第一スリーブ112を介して、出力軸32に相対回転不能に連結され、第1速が形成される。第一シフトアクチュエータ114が、第一スリーブ112を第二ドリブンギヤ52側に移動させると、第二ドリブンギヤ52が第一スリーブ112を介して、出力軸32に相対回転不能に連結され、第2速が形成される。第一シフトアクチュエータ114が、第一スリーブ112を、第一ニュートラル位置に移動させると、第一ドリブンギヤ51及び第二ドリブンギヤ52のいずれもが、出力軸32に対して相対回転可能なニュートラル状態となる。
【0043】
第二噛み合い機構120は、第三ドライブギヤ43又は第四ドライブギヤ44を選択して、入力軸31に相対回転不能に連結するものである。従って、第二噛み合い機構130の回転速度は入力軸31の回転速度Nisと同一である。第二噛み合い機構120は、上述の第一噛み合い機構110と同様の構造である。第二噛み合い機構120は、第二ハブ121、第二スリーブ122、第二フォーク部材123(不図示)、第二シフトアクチュエータ124(不図示)を有している。
【0044】
第二ハブ121は、第三ドライブギヤ43と第四ドライブギヤ44の間の入力軸31に相対回転不能に固定されている。言い換えると、第二ハブ121は、第三ドライブギヤ43と第四ドライブギヤ44の側方に配設されている。
【0045】
第二スリーブ122は、第二ハブ121と相対回転不能、且つ、入力軸31の軸線方向に移動可能に設けられている。第二スリーブ122は、第三ドライブギヤ43及び第四ドライブギヤ44と係脱する。
【0046】
第二シフトアクチュエータ124は、TM−ECU13によって駆動制御され、第二フォーク部材123を介して、第二スリーブ122を、第三ドライブギヤ43側又は第四ドライブギヤ44側に移動させるとともに、第三ドライブギヤ43と第四ドライブギヤ44の中間の第二ニュートラル位置に移動させる。第二シフトアクチュエータ124が、第二スリーブ122を第三ドライブギヤ43側に移動させると、第三ドライブギヤ43が第二スリーブ122を介して、入力軸31に相対回転不能に連結され、第3速が形成される。第二シフトアクチュエータ124が、第二スリーブ122を第四ドライブギヤ44側に移動させると、第四ドライブギヤ44が第二スリーブ122を介して、入力軸31に相対回転不能に連結され、第4速が形成される。第二シフトアクチュエータ124が、第二スリーブ122を、第二ニュートラル位置に移動させると、第三ドライブギヤ43及び第四ドライブギヤ44のいずれもが、入力軸31に対して相対回転可能なニュートラル状態となる。
【0047】
第三噛み合い機構130は、第五ドライブギヤ45を選択して、入力軸31に相対回転不能に連結するものである。従って、第三噛み合い機構130の回転速度は入力軸31の回転速度Nisと同一である。第三噛み合い機構130は、上述の第一噛み合い機構110と同様の構造である。第三噛み合い機構130は、第三ハブ131、第三スリーブ132、第三フォーク部材133(不図示)、第三シフトアクチュエータ134(不図示)を有している。
【0048】
第三ハブ131は、第五ドライブギヤ45の側方の入力軸31に相対回転不能に固定されている。第三スリーブ132は、第三ハブ131と相対回転不能、且つ、入力軸31の軸線方向に移動可能に設けられている。第三スリーブ132は、第五ドライブギヤ45と係脱する。
【0049】
第三シフトアクチュエータ134は、TM−ECU13によって駆動制御され、第三フォーク部材133を介して、第三スリーブ132を、第五ドライブギヤ45側に移動させるとともに、第五ドライブギヤ45から離間した第三ニュートラル位置に移動させる。第三シフトアクチュエータ134が、第三スリーブ132を第五ドライブギヤ45側に移動させると、第五ドライブギヤ45が第三スリーブ132を介して、入力軸31に相対回転不能に連結され、第5速が形成される。第三シフトアクチュエータ134が、第三スリーブ132を、第三ニュートラル位置に移動させると、第五ドライブギヤ45が、入力軸31に対して相対回転可能なニュートラル状態となる。この様にして、入力軸31と出力軸32との回転比を複数の変速段に変速する。
【0050】
デファレンシャルDFは、TMの出力軸32及びモータジェネレータMGの少なくとも一方から入力されたトルクを差動可能に駆動輪Wl、Wrに伝達する装置である。デファレンシャルDFは、出力ギヤ56及びドライブギヤ83と噛合するリングギヤDF−1を有する。このような構造により、出力軸32は、駆動輪Wl、Wrに回転連結されている。
【0051】
減速機80は、モータジェネレータMGが出力するモータトルクTmを減速して、デファレンシャルDFに出力するものである。減速機80は、回転軸81、ドリブンギヤ82、ドライブギヤ83を有する。回転軸81には、ドリブンギヤ82、ドライブギヤ83が取り付けられている。回転軸81は、ハウジングに回転可能に軸支されている。ドリブンギヤ82は、モータジェネレータMGによって回転されるドライブギヤMG−1と噛合している。ドリブンギヤ82のギヤ径は、ドライブギヤ83のギヤ径より大きい。ドライブギヤ83は、デファレンシャルDFのリングギヤDF−1と噛合している。
【0052】
モータジェネレータMGは、駆動輪Wl、WrにモータトルクTmを出力するモータとして作動するとともに、車両の運動エネルギーを電力に変換する発電機としても作動するものである。モータジェネレータMGは、図示しないケースに固定されたステータ(不図示)と、このステータの内周側に回転可能に設けられたロータ(不図示)とから構成されている。なお、モータトルクTmは、モータジェネレータMGがモータ作動中におけるモータジェネレータMGに流れる電流に基づいて実際にモータジェネレータMGが出力しているモータトルクTmを演算できる。
【0053】
インバータINVは、モータジェネレータMGのステータ及びバッテリBTと電気的に接続されている。また、インバータINVは、モータジェネレータECU14と通信可能に接続されている。インバータINVは、モータジェネレータECU14からの制御信号に基づいて、バッテリBTから供給される直流電流を、昇圧するとともに交流電流に変換したうえでステータに供給し、モータジェネレータMGでモータトルクTmを出力させ、モータジェネレータMGをモータとして機能させる。また、インバータINVは、モータジェネレータECU14からの制御信号に基づいて、モータジェネレータMGを発電機として機能させ、モータジェネレータMGで発電された交流電流を、直流電流に変換するとともに、電圧を降下させて、バッテリBTを充電する。
【0054】
バッテリBTは、充電可能な二次電池である。バッテリBTは、インバータINVと接続されている。バッテリBTは、バッテリECU15と通信可能に接続されている。
【0055】
ハイブリッドECU11は、ドライバのアクセルペダル95の操作に基づくアクセルセンサ96のアクセル開度Acに基づいて、ドライバが要求する出力軸32における「ドライバ要求トルクTd
r」を演算する。ハイブリッドECU11は、「ドライバ要求トルクTd
r」に基づいて、バッテリBTの充電状態や車両速度等の情報に基づいてモータジェネレータMGが出力することを求める「要求モータトルクTmr」を演算する。ハイブリッドECU11は、「ドライバ要求トルクTd
r」及び「要求モータトルクTmr」に基づいてエンジンEGが出力することを求める「要求エンジントルクTer」を演算する。
【0056】
エンジンECU12は、エンジンEGを制御する電子制御装置である。TM−ECU13は、TMを制御する電子制御装置である。TM−ECU13は、バスを介してそれぞれ接続された入出力インターフェース、CPU、RAM、ROM及び不揮発性メモリー等の「記憶部」を備えている。CPUは、
図2〜
図3に示すフローチャートに対応したプログラムを実行する。RAMは同プログラムの実行に必要な変数を一時的に記憶するものであり、「記憶部」は前記プログラムを記憶している。TM−ECU13は、シフトアクチュエータ114〜134からの検出信号に基づいて、各スリーブ112〜132(各フォーク部材113〜133)のストロークを検出することができる。
【0057】
エンジンECU12は、要求エンジントルクTerに基づいて、スロットルバルブEG−3の開度Sを調整し、吸気量を調整するとともに、燃料噴射装置EG−2の燃料噴射量を調整し、点火装置を制御する。
【0058】
これにより、燃料を含んだ混合気の供給量が調整され、エンジントルクTeが要求エンジントルクTerに調整されるとともに、エンジン回転速度Neが調整される。なお、アクセルペダル95が踏まれていない場合には(アクセル開度Ac=0)、エンジン回転速度Neはアイドリング回転速度(例えば、700r.p.m.)に維持される。
【0059】
エンジンECU12は、エンジン回転速度センサEG−4が検出したエンジン回転速度Ne、吸気温センサ(不図示)からの吸気温、吸気圧センサ(不図示)からの吸気圧、吸気流量センサ(不図示)からの吸気流量、燃料噴射装置EG−2が噴射している燃料噴射量に基づいて、実際にエンジンEGが出力しているエンジントルクTeを演算する。なお、エンジンが停止した場合には、マイナスのエンジントルクTeであるエンジンフリクショナルトルクを演算する。
【0060】
モータジェネレータECU14は、インバータINVを制御する電子制御装置である。バッテリECU15は、バッテリBTの充放電状態、温度状態等のバッテリBTの状態を管理する電子制御装置である。ハイブリッドECU11は、車両の走行を統括制御する上位電子制御装置である。ハイブリッドECU11、エンジンECU12、TM−ECU13、モータジェネレータECU14、バッテリECU15は、CAN(Controller Area Network)によって相互に通信可能となっている。
【0061】
次に、
図2、
図3のフローチャート及び
図4のタイムチャートを用いて、TM−ECU13が実行する変速制御について、アップ変速(例えば第1速から第2速)の場合を代表して説明する。
【0062】
なお、ハイブリッドECU11は、スロットル開度と車両の速度からなる車両の走行状態が、スロットル開度と車両速度との関係を表した変速線を越えたと判断した場合に、或いは、運転者が、図示しないシフトレバーを操作した場合に、「変速要求」をTM−ECU13に出力する。また、TM−ECU13が「変速要求」を受信すると、エンジンEGの制御権限がハイブリッドECU11からTM−ECU13に移動し、モータジェネレータMGの制御権限がモータジェネレータECU14からTM−ECU13に移動する。
【0063】
TM−ECU13が、受信した「変速要求」がアップ変速であると判断した場合には(
図4のT1)、「ニュートラル処理」を開始する。この「ニュートラル処理」は、エンジントルクTeを低下させつつ、TMをニュートラルにする処理であり、TM−ECU13は、要求エンジントルクTerとなるように、エンジンEGを制御する(
図4のa、T1)。すると、エンジントルクTeは徐々に低下する(
図4のb)。
【0064】
TM−ECU13は、エンジントルクTeが規定トルクTer1となったと判断した場合には(
図4のT2)、シフトアクチュエータに制御信号を出力して駆動することにより、スリーブ112〜132のニュートラル位置への移動を開始する(
図4のT2)。
【0065】
次いで、TM−ECU13は、シフトアクチュエータのストロークが開始したと判断し(
図4のT3)、そして、駆動しているシフトアクチュエータ114〜134のストロークに基づき、TMがニュートラルになったと判断した場合には(
図4のT4)、「ニュートラル処理」を終了させる。
【0066】
TMがニュートラル状態になると、TM−ECU13は、エンジンECU12に制御信号を出力することにより、燃料噴射装置EG−2での燃料噴射を停止させてエンジンEGを停止させるとともに(
図4、T4)、モータジェネレータECU14に制御信号を出力することにより、モータジェネレータMGから出力軸32に出力されるモータトルクTmを増大させる制御を開始する(
図4のd)。すると、
図4のcに示すように、エンジンEGが停止し、エンジントルクTeが減少し、エンジントルクTeが正から負になる。クラッチCは係合状態にあるので、エンジンEGのフリクショントルクである負トルクが、クラッチCを介して入力軸31に入力され、
図4のeに示すように、エンジンEG停止に伴い、エンジン回転速度Ne及び入力軸回転速度Nisが低下する。なお、モータトルクTmは、車両の加減速を加味して、デファレンシャルDFのリングギヤに入力されるエンジントルクTeの減少分を補完するように制御される。
【0067】
それと同時に、TM−ECU13は、クラッチアクチュエータ29を駆動することにより、クラッチトルクTcを、完全係合時の伝達トルクよりも低く、低下させたエンジ
ントルク
Teを入力軸31に伝達可能な伝達トルクである規程伝達トルクへ低下させ(
図4のf、T5)、クラッチCを所謂半クラッチ状態にする。
【0068】
なお、TMがニュートラル状態となると、どの遊転ギヤ51、52、43、44、45も入力軸31及び出力軸32に回転連結されていないので、入力軸31と一体回転する部材の回転モーメントは、入力軸31、ドライブギヤ41、42、ハブ121、131、スリーブ122、132、及びクラッチディスク22等の回転モーメントにしか過ぎない。このため、クラッチCが半クラッチ状態であっても、クラッチCが殆ど滑ること無く、駆動軸EG−1と入力軸31が一体回転し、エンジン回転速度Neの低下に伴って、確実に入力軸31の回転速度Nisが低下する。
【0069】
TM−ECU13は、入力軸回転速度センサ91からの検出信号に基づいて、入力軸31の回転速度Nisが「規程回転速度Nis1」よりも低く低下したと判断した場合には(
図4のT6)、クラッチアクチュエータ29を駆動することにより、クラッチトルクTcを0にして(
図4のg)、クラッチCを切断する制御を開始する。なお、「規程回転速度Nis1」は、後述する「同期回転速度Nis2」よりも所定回転速度だけ高い回転速度である。
【0070】
次いで、TM−ECU13が、クラッチアクチュエータ29からの検出信号に基づいて、クラッチトルクTcが0となり、クラッチCが切断状態にあると判断するとともに、入力軸回転速度センサ91からの検出信号に基づいて、入力軸31の回転速度Nisが「同期回転速度Nis2」に低下したと判断した場合には(
図4のT7)、アップ側の次変速段に対応するシフトアクチュエータを駆動して、変速段の第一〜第三スリーブ112〜132のいずれかを移動させて、次変速段を形成するアップシフトを開始する。なお、第1速から第2速へアップシフトの場合は、第一スリーブ112が移動される。
【0071】
なお、「同期回転速度Nis2」は、次変速段の遊転ギヤ52、43、44、45と、これが回転連結される入力軸31又は出力軸32との差回転速度が所定の幅をもった「許容差回転速度」の範囲内となる入力軸31の回転速度である。具体的には、「同期回転速度Nis2」は、第2速にアップ変速する場合には、第二ドリブンギヤ52の回転速度と出力軸32の回転速度との差回転速度が、「許容差回転速度」の範囲内となり、第二ドリブンギヤ52と出力軸32が殆ど同期している状態の入力軸31の回転速度である。また、3速、4速、5速にアップ変速する場合には、第三〜第五ドライブギヤ43〜45の回転速度と入力軸31の回転速度との差回転速度が、「許容差回転速度」の範囲内となり、ドライブギヤ43、44、45と入力軸31が殆ど同期している状態の入力軸31の回転速度である。
【0072】
「許容差回転速度」とは、第二ドリブンギヤ52と出力軸32との間に差回転速度が有ったとしても、第一スリーブ112を第二ドリブンギヤ52に係合させることができる差回転速度であり、或いは、第三、四ドライブギヤ43、44と入力軸31との間に差回転速度が有ったとしても、第二スリーブ122を第三、四ドライブギヤ43、44に係合させることができる差回転速度であり、更に、第五ドライブギヤ45と入力軸31との間に差回転速度が有ったとしても、第三スリーブ132を第五ドライブギヤ45に係合させることができる差回転速度である。「同期回転速度Nis2」は、TM−ECU13によって、入力軸回転速度センサ91及び出力軸回転速度センサ92からの検出信号に基づいて算出される。
【0073】
次いで、TM−ECU13は、シフトアクチュエータから出力された信号に基づいて、アップシフトが完了したと判断した場合には(
図4のT8)、クラッチアクチュエータ29を駆動することにより、クラッチトルクTcが完全係合時のクラッチトルクとなるまで、クラッチトルクTcを徐々に増大させる制御を開始する(
図4のh)。
【0074】
これと同時に、TM−ECU13は、エンジンECU12に、制御信号を出力し、エンジンEGを始動させるとともに、エンジントルクTeをアクセル開度Acに基づいて演算された要求エンジントルクTerに復帰させる制御を開始する(
図4のi)。この結果、エンジントルクTeは増大する。
【0075】
更にこれと同時に、TM−ECU13は、モータジェネレータECU14に、制御信号を出力し、モータトルクTmをアクセル開度Acに基づいて演算された要求モータトルクTmrに復帰させる制御を開始する(
図4のj)。この結果モータトルクTmは減少する。
【0076】
次いで、TM−ECU13は、クラッチアクチュエータ29からの検出信号に基づいて、クラッチCが完全係合状態にあると判断した場合には(
図4のT9)、ハイブリッドECU11、エンジンECU12、モータジェネレータECU14に「変速完了信号」を出力することにより、エンジンEGの制御権限をエンジンECU12に渡し、モータジェネレータMGの制御権限をモータジェネレータECU14に渡す。これで、第1速から第2速へのアップシフトが終了する。
【0077】
次に、
図2のフローチャート及び
図4のタイムチャートを用いて、TM−ECU13が実行する車両慣性Iを演算する車両慣性I演算処理について説明する。車両が出力軸32に出力されたモータトルクTmのみにて駆動されている場合、即ち、トランスミッションTMがニュートラル状態であることを検出すると(
図4のT4)、「車両慣性I演算処理」が開始され、プログラムはS11に進む。
【0078】
S11において、タイマが所定時間なるαmsを経過したと判断した場合には(S11:YES)、プログラムはS12に進み、タイマが所定時間なるαmsを経過していないと判断した場合には(S11:NO)、プログラムをS13のタイマカウントアップを介してS11に戻す。S12にて、車両加減速度dω/dtが演算され、本実施形態では、車両加減速度dω/dtは、下式(1)に基づいて演算される。なお、車両加減速度には、変化の向きがプラスの場合は、車両加速度であり、又変化の向きがマイナスの場合は、車両減速度と定義される。
【0079】
dω/dt=(Nos−Nos前回値)×(2π/60)÷(α/1000)・・・(1)
【0080】
なお、Nosは出力軸32の回転速度を示し、出力軸回転速度センサ92にて検出される。
【0081】
次いで、S14にて、出力軸32の回転速度NosをNos前回値に格納し、データ更新とデータ数の増加を行う。次いで、S15にて、車両慣性Iを出力軸32に出力されたモータトルクTmと車両加減速度dω/dtに基づいて演算され、本実施形態では、車両慣性Iは、下式(2)に基づいて演算される。
【0082】
車両慣性I=Tmz÷(dω/dt)・・・(2)
【0083】
なお、上記式(2)におけるTmzは、出力軸32におけるモータトルクを示し、モータジェネレータMGの実際のモータトルクTmにモータジェネレータMGから出力軸32に至るギヤによるギヤ比を乗じた値であると定義される。後述の式(6)におけるモータトルクTmzも上記と同様である。
【0084】
次いで、S16にて、時間αms毎に所定のγ回演算した車両慣性Iがγ個格納される。そして、演算した車両慣性Iがγ個格納されると、S17に進み、タイマリセットされる。次いで、S18にて、車両慣性I平均値が演算され、本実施形態では、車両慣性I平均値は、下式(3)に基づいて演算される。
【0085】
車両慣性I平均値=(Σ車両慣性I前回値1〜γ)÷γ・・・(3)
【0086】
この様に、車両慣性I平均値を求めるのは、車両慣性Iの演算値を平滑化して、より実体に適合した車両慣性Iを導くために行うものである。なお、この車両慣性I演算処理は、車両がモータモータジェネレータMGのみにて駆動されている場合、即ち、トランスミッションTMがニュートラル状態である期間(
図4のT4〜T7)に実行される。
【0087】
次に、
図3のフローチャート及び
図4のタイムチャートを用いて、TM−ECU13が実行する出力軸32におけるモータジェネレータMGが出力することを求める要求モータトルクTmrzを演算する要求モータトルクTmrz演算処理について説明する。トランスミッションTMが次の変速段に移行完了した状態であるとともにクラッチCが係合動作を開始したと検出すると(
図4のT8)、「要求モータトルクTmrz演算処理」が開始され、プログラムはS21に進む。
【0088】
S21において、タイマが所定時間なるα’msを経過したと判断した場合には(S21:YES)、プログラムはS22に進み、タイマが所定時間なるα’msを経過していないと判断した場合には(S21:NO)、プログラムをS23のタイマカウントアップを介してS21に戻す。S22では、車両加減速度dω’/dtが演算され、本実施形態では次式(4)に基づいて演算される。
【0089】
dω’/dt=(Nos−Nos前回値)×(2π/60)÷(α/1000)・・・(4)
【0090】
なお、Nosは出力軸32の回転速度を示す。
【0091】
次いで、S24にて、出力軸32の回転速度NosをNos前回値に格納し、データ更新とデータ数の増加を行う。次いで、S25にて、クラッチCにおけるクラッチトルクTczとエンジンEGのエンジントルクTezの絶対値との大小を比較し、クラッチトルクTczの方がエンジンEGのエンジントルクTezの絶対値よりも大きいと判断した場合には(S25:YES)、プログラムはS26に進む。なお、このTczは、出力軸32におけるクラッチトルクを示し、クラッチCにおける実際のクラッチトルクTcにその変速段における変速比であるクラッチCから出力軸32に至るギヤのギヤ比を乗じた値であると定義される。また、Tezは、出力軸32におけるエンジントルクを示し、エンジンEGの実際のエンジントルクTeにその変速段における変速比であるエンジンEGから出力軸32に至るギヤのギヤ比を乗じた値であると定義される。
【0092】
S26にて、車両が出力する車両出力トルクTを演算の上、その車両出力トルクTに基づいてエンジンイナーシャトルクTeiが演算され、本実施形態では次式(5)及び(6)に基づいて演算される。
【0093】
車両出力トルクT=車両慣性I×車両加減速度dω’/dt ・・・(5)
【0094】
なお、上記車両慣性Iは、前述の式(3)にて示した車両慣性I平均値を用いる。
【0095】
エンジンイナーシャトルクTei=T−(Tmz+Tez) ・・・(6)
上記式(6)におけるTmzは、出力軸32におけるモータトルクを示し、モータジェネレータMGの実際のモータトルクTmにその変速段における変速比であるモータジェネレータMGから出力軸32に至るギヤのギヤ比を乗じた値であると定義される。
【0096】
又、S25にて、クラッチトルクTczの方がエンジントルクTezの絶対値よりも小さいと判断した場合には(S25:NO)、プログラムはS27に進み、エンジンイナーシャトルクTeiは0(ゼロ)として、プログラムはS28に進む。なお、クラッチトルクTczの方がエンジントルクTezの絶対値よりも小さい場合は、エンジントルクTeの全てがクラッチCを介してトランスミッションTMの入力軸31に伝達されないことから、エンジンイナーシャトルクは0(ゼロ)とすることができることは明らかである。
【0097】
次いで、S28に進み、タイマリセットされて、S29に進み、要求モータトルクTmrzが演算され、本実施形態では、次式(7)に基づいて演算される。
【0098】
要求モータトルクTmrz=ドライバ要求トルクTdr−Tez(又はTcz)−Tei・・・(7)
【0099】
上記式(7)におけるTmrzは、出力軸32におけるモータMGが出力することを求める要求モータトルクを示し、モータジェネレータMGにおける要求モータトルクTmrにその変速段における変速比であるモータジェネレータMGから出力軸32に至るギヤのギヤ比を乗じた値であると定義される。
【0100】
なお、前述の数式(7)は、エンジントルクTezとクラッチトルクTczの大小関係及び前述のS27の結果とに基づき具体的には、以下に示す4つに分けられる。
【0101】
Tez>0でTcz>Tezの場合は、Tmrz=Tdr−Tez−Tei
【0102】
Tez>0でTcz<Tezの場合は、Tmrz=Tdr−Tcz
【0103】
Tez<0でTcz>|Tez|の場合は、Tmrz=Tdr−T
ez−Tei
【0104】
Tez<0でTzc<|Tez|の場合は、Tmrz=Tdr+Tcz
【0105】
この様に、要求モータトルクTmrzには、エンジンイナーシャトルクTeiの分を考慮即ち取り除かれており、クラッチCが係合開始時から係合完了するまでの期間(
図4のT8〜T9)の間、所定時間α’ms毎に演算されたこの要求モータトルクTmrzにてモータジェネレータMGが制御される。従って、エンジンイナーシャトルクTeiを考慮した要求モータトルクTmrzにてモータジェネレータMGを制御するため、クラッチCの係合時のエンジンイナーシャトルクTeiに起因した押し出し感や引き込み感が生じることを防止して、ドライバビリテイを向上することができる。
【0106】
以上の説明では、第1速から第2速へ変速する場合を例として示したが、この例に限定されることなく、前述の数式(7)にて演算された要求モータトルクTmrzは、その他の変速の際にも、モータジェネレータMGの制御に用いることができ、クラッチCの係合時のエンジンイナーシャトルクTeiに起因した押し出し感や引き込み感の発生を防止できることは明らかである。
【0107】
又、本実施形態では、トランスミッションTMとして、ドグクラッチ式のトランスミッションを例として示したが、この例に限定されることなく遊星歯車機構のトランスミッションにも適用可能である。
【0108】
上述の如く、本発明の実施形態によるハイブリッド車両用変速制御装置によれば、ハイブリッド車両用変速制御装置は、エンジンEGが出力するエンジントルクTeが伝達される駆動軸EG−1と、入力軸31と、入力軸31と平行に配設され駆動輪Wl、Wrに回転連結された出力軸32と、入力軸31と出力軸32との回転比を複数の変速段に変速する変速装置とを有するトランスミッションTMと、駆動軸EG−1と入力軸31との間に設けられ、駆動軸EG−1から入力軸31に伝達するクラッチトルクTcを可変として駆動軸EG−1と入力軸31間を断接するクラッチCと、駆動輪Wl、Wrに回転連結され、ドライバが要求するドライバ要求トルクTdrに応じてエンジンEGが出力するエンジントルクTeとともに駆動輪Wl、WrにモータトルクTmを出力するモータMGとを有する。トランスミッションTMが現在の変速段から次の変速段へと変速する際にニュートラル状態である期間T4〜T7に、
図2のフローチャートのS11〜S18に示すモータMGが出力するモータトルクTmzと車両加減速度dω/dtに基づき車両慣性Iを演算する車両慣性演算部を有する。そして、次の変速段への移行を完了した後、前記クラッチCが係合を完了するまでの期間T8〜T9に、
図3のフローチャートのS21〜S29に示す車両加減速度dω'/dtと、車両慣性Iと、モータトルクTmzと、エンジントルクTezと
、に基づき、エンジンイナーシャトルクTeiを演算し、ドライバ要求トルクTdrと、エンジンイナーシャトルクTeiと、エンジントルクTez又はクラッチトルクTczとに基づき、モータMGが出力することを求める要求モータトルクTmrzを演算する要求モータトルク演算部を有する。従って、ドライバ要求トルクTdrと、エンジンイナーシャトルクTeiと、エンジントルクTez又はクラッチトルクTczとに基づき、演算された要求モータトルクTmrzにてモータMGを制御するため、クラッチCの係合の際にエンジンイナーシャトルクTeiに起因する押し出し感や引き込み感が生じないことから、ドライバビリテイを向上できる。又、モータMGは、エンジンイナーシャトルクTeiを考慮した要求モータトルクTmrzにて制御されることになるため、モータMGの消費電力を低減できる。
【0109】
上述の如く、本発明の実施形態によるハイブリッド車両用変速制御装置によれば、エンジンイナーシャトルクTeiはエンジンEGによるエンジントルクTezがクラッチCによるクラッチトルクTczよりも大きい場合はゼロとするので、エンジントルクTezがクラッチトルクTczよりも大きい場合は、クラッチトルクTczを超えるエンジントルクTezはクラッチCを介して伝達されないため、エンジンイナーシャトルクTeiをゼロとでき、エンジンイナーシャトルクTeiの演算を合理化できる。
【0110】
上述の如く、本発明の実施形態によるハイブリッド車両用変速制御装置によれば、車両慣性Iは所定間隔αmsで複数回γ演算し、その平均値とするので、車両慣性Iは平均値であるため、偏りがなく平滑化できる。
【0111】
上述の如く、本発明の実施形態によるハイブリッド車両用変速制御装置によれば、変速装置は
、入力軸31及
び出力軸32の一方に遊転可能に設けられた複数の遊転ギヤ43、44、45、51、52と
、入力軸31及
び出力軸32の他方に相対回転不能に固定され
、複数の遊転ギヤとそれぞれ噛合する複数の固定ギヤ53、54、55、41、42と
、複数の遊転ギヤの側方に
、複数の遊転ギヤが回転連結された軸に相対回転不能且
つ軸31、32の軸線方向に移動可能に設けられ
、複数の遊転ギヤと相対回転不能に係合し
て複数の遊転ギヤ
と軸を回転不能に回転連結する複数の噛み合い機構112、122、132と
、複数の噛み合い機構をそれぞ
れ軸線方向に移動させて
、複数の噛み合い機構
を、それぞれ対応する
複数の遊転ギヤに相対回転不能に係合させるとともに
、複数の噛み合い機構を、それぞれ対応する
複数の遊転ギヤから相対回転可能に離脱させるシフトアクチュエータ114、124、134とを有するので、変速装置は、噛み合い機構を軸線方向に移動させて、複数の変速段に変速するので、噛み合い機構112、122、132が軸線方向に移動する期間を利用して、現在の変速段から次の変速段へと変速する際に実行されるエンジンイナーシャトルクTeiの演算およびそのエンジンイナーシャトルクTeiを考慮した要求モータトルクTmrzの演算を適切に行うことができる。