特許第6183078号(P6183078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183078
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】負荷駆動回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/16 20060101AFI20170814BHJP
   H03K 17/695 20060101ALI20170814BHJP
   H02M 1/44 20070101ALI20170814BHJP
   H03K 17/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   H03K17/16 H
   H03K17/695
   H02M1/44
   H03K17/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-185352(P2013-185352)
(22)【出願日】2013年9月6日
(65)【公開番号】特開2015-53604(P2015-53604A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2015年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】杉沢 佑樹
【審査官】 白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−110684(JP,A)
【文献】 特開2014−230138(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/076916(WO,A1)
【文献】 特開2012−050065(JP,A)
【文献】 特開2009−284162(JP,A)
【文献】 特開2008−235997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/16
H02M 1/44
H03K 17/00
H03K 17/695
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧が与えられる誘導負荷の低圧側に接続され、該誘導負荷の電源電圧をスイッチングするトランジスタと、該トランジスタがオンであるときに負荷電流が流れる負荷電流回路と、前記トランジスタがオフであるときに、前記誘導負荷が発生させた誘導電流を平滑して電源へ還流させる還流回路とを備え、前記負荷電流回路及び還流回路は、それぞれ回路基板の一側の実装面に実装された第1経路を有する負荷駆動回路において、
前記負荷電流回路及び還流回路は、それぞれ前記回路基板の他側の実装面に前記第1経路と平行に実装された第2経路を有し、前記第1経路及び第2経路は、電流が互いに逆向きに流れるように構成してあることを特徴とする負荷駆動回路。
【請求項2】
電源電圧が与えられる誘導負荷の低圧側に接続され、該誘導負荷の電源電圧をスイッチングするトランジスタと、該トランジスタがオンであるときに負荷電流が流れる負荷電流回路と、前記トランジスタがオフであるときに、前記誘導負荷が発生させた誘導電流を平滑して電源へ還流させる還流回路とを備え、前記負荷電流回路は、平行に積層された複数の回路基板の内の一の実装面に実装された第1経路を有し、前記還流回路は、前記実装面に実装された第2経路を有する負荷駆動回路において、
前記負荷電流回路は、前記複数の回路基板の内の他の実装面に前記第1経路と平行に実装された第3経路を有し、前記還流回路は、前記一の実装面以外の実装面に前記第2経路と平行に実装された第4経路を有し、前記第1経路及び第3経路と、前記第2経路及び第4経路とは、それぞれ電流が互いに逆向きに流れるように構成してあることを特徴とする負荷駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源電圧が与えられる誘導負荷の低圧側に接続され、誘導負荷の電源電圧をスイッチングするトランジスタを備え、回路基板に実装された負荷駆動回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたモータでは、電源電圧が与えられるモータの低圧側に接続され、モータの電源電圧をスイッチングするトランジスタにより駆動されるものがある。このようなモータ駆動回路では、トランジスタと、トランジスタがオンであるときにモータ電流が流れる負荷電流回路と、トランジスタがオフであるときに、モータが発生させた誘導電流を平滑して電源へ還流させる還流回路とは、同じ回路基板に実装されることが多い。また、大電流が流れる経路にはバスバーが使用される。
【0003】
特許文献1には、略四角の平板形状のプリント基板の実装側の面に、抵抗素子、マイクロコンピュータ及びMOSトランジスタを含む全ての実装部品を配置した1枚のPWMモジュール基板を備えたPWMモジュール構造が開示されている。PWMモジュール基板を、実装面をヒートシンクに向けて、また、非実装側の面を外側方に向けて、ヒートシンクを有するケース内に収容固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−259757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようなモータ駆動回路では、還流回路のループが形成する平面の面積が大きいので、大きな電磁界エミッションが発生し、また、モータ電流が高速にオン/オフするので、それによる磁界が発生するという問題がある。
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであり、還流回路のループが形成する平面の面積が小さく、大きな電磁界エミッションが発生せず、また、負荷電流が高速にオン/オフすることによる磁界を抑制できる負荷駆動回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明に係る負荷駆動回路は、電源電圧が与えられる誘導負荷の低圧側に接続され、該誘導負荷の電源電圧をスイッチングするトランジスタと、該トランジスタがオンであるときに負荷電流が流れる負荷電流回路と、前記トランジスタがオフであるときに、前記誘導負荷が発生させた誘導電流を平滑して電源へ還流させる還流回路とを備え、前記負荷電流回路及び還流回路は、それぞれ回路基板の一側の実装面に実装された第1経路を有する負荷駆動回路において、前記負荷電流回路及び還流回路は、それぞれ前記回路基板の他側の実装面に前記第1経路と平行に実装された第2経路を有し、前記第1経路及び第2経路は、電流が互いに逆向きに流れるように構成してあることを特徴とする。
【0007】
この負荷駆動回路では、トランジスタが、電源電圧が与えられる誘導負荷の低圧側に接続され、誘導負荷の電源電圧をスイッチングし、トランジスタがオンであるときに、負荷電流回路に負荷電流が流れ、トランジスタがオフであるときに、還流回路が、誘導負荷が発生させた誘導電流を平滑して電源へ還流させる。負荷電流回路及び還流回路は、それぞれの第1経路が回路基板の一側の実装面に実装されている。負荷電流回路及び還流回路は、それぞれ第1経路と平行に実装された第2経路が回路基板の他側の実装面に第1経路と平行に実装されており、第1経路及び第2経路は、電流が互いに逆向きに流れる。
【0008】
第2発明に係る負荷駆動回路は、電源電圧が与えられる誘導負荷の低圧側に接続され、該誘導負荷の電源電圧をスイッチングするトランジスタと、該トランジスタがオンであるときに負荷電流が流れる負荷電流回路と、前記トランジスタがオフであるときに、前記誘導負荷が発生させた誘導電流を平滑して電源へ還流させる還流回路とを備え、前記負荷電流回路は、平行に積層された複数の回路基板の内の一の実装面に実装された第1経路を有し、前記還流回路は、前記実装面に実装された第2経路を有する負荷駆動回路において、前記負荷電流回路は、前記複数の回路基板の内の他の実装面に前記第1経路と平行に実装された第3経路を有し、前記還流回路は、前記一の実装面以外の実装面に前記第2経路と平行に実装された第4経路を有し、前記第1経路及び第3経路と、前記第2経路及び第4経路とは、それぞれ電流が互いに逆向きに流れるように構成してあることを特徴とする。
【0009】
この負荷駆動回路では、トランジスタが、電源電圧が与えられる誘導負荷の低圧側に接続され、誘導負荷の電源電圧をスイッチングし、トランジスタがオンであるときに、負荷電流回路に負荷電流が流れ、トランジスタがオフであるときに、還流回路が、誘導負荷が発生させた誘導電流を平滑して電源へ還流させる。負荷電流回路は、第1経路が、平行に積層された複数の回路基板の内の一の実装面に実装され、還流回路は、第2経路が、一の実装面に実装されている。負荷電流回路は、第3経路が、複数の回路基板の内の他の実装面に第1経路と平行に実装され、還流回路は、第4経路が、一の実装面以外の実装面に第2経路と平行に実装されている。第1経路及び第3経路と、第2経路及び第4経路とは、それぞれ電流が互いに逆向きに流れる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る負荷駆動回路によれば、還流回路のループが形成する平面の面積が小さく、大きな電磁界エミッションが発生せず、また、負荷電流が高速にオン/オフすることによる磁界を抑制できる負荷駆動回路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る負荷駆動回路の実施の形態の概略構成を示す回路図である。
図2】本発明に係る負荷駆動回路の実施の形態の回路基板への実装形態を示す分解斜視図である。
図3図2に示す回路基板の構成を示す斜視図である。
図4】本発明に係る負荷駆動回路の動作を示す説明図である。
図5】本発明に係る負荷駆動回路の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき説明する。
図1は、本発明に係る負荷駆動回路の実施の形態の概略構成を示す回路図である。
この負荷駆動回路は、電源9の電圧が与えられる負荷(誘導負荷)4の低圧側に、NチャネルMOS型FET(Field Effect Transistor)3のドレインが接続され、FET3のソースは接地されている。負荷4は例えば直流モータである。FET3のゲートは、ゲート駆動回路2に接続され、ゲート駆動回路2は、外部からの入力信号が与えられる制御部1により制御される。
【0013】
FET3のドレインには、ダイオードDのアノードが接続され、ダイオードDのカソードは、平滑コンデンサCのプラス端子、及び平滑コイルLの一方の端子に接続されている。平滑コンデンサCのマイナス端子は接地され、平滑コイルLの他方の端子は、電源9及び負荷4の高圧側に接続されている。
上記の、負荷4を除くFET3、ゲート駆動回路2、制御部1、ダイオードD、平滑コンデンサC及び平滑コイルLは、回路基板5に実装されている。
【0014】
このような負荷駆動回路では、ゲート駆動回路2がFET3をPWM制御して、負荷4を駆動する。FET3がオンであるとき、負荷電流は、電源9、負荷4、FET3、接地の経路(第1経路)で流れる。FET3がオフであるとき、ダイオードDが導通し、負荷4で発生した誘導電流が、平滑コンデンサC、平滑コイルL、電源9の経路(第1経路)で還流する。
【0015】
図2は、本発明に係る負荷駆動回路の実施の形態の回路基板5への実装形態を示す分解斜視図である。回路基板5は、実際には図3に示すように1枚であるが、表面と裏面とを示す為に、表面側5a及び裏面側5bに分解してある。尚、制御部1、ゲート駆動回路2、負荷4及び電源9は図示を省略してある。
図2の分解斜視図では、表面側5aの実装面に、長方形の回路パターンP1〜4を、一側からP4,P3,P2,P1の順に並列させて設けてある。
【0016】
回路パターンP1,P4は、接地用であり、回路パターンP1は、スルーホール7により、回路パターンP4は、スルーホール8により、裏面側5bの実装面の略全面に設けられた回路パターンP5(第2経路)にそれぞれ接続されている。
FET3は、ソースが回路パターンP4に、ドレインが回路パターンP3にそれぞれ接続されて実装されている。
ダイオードDは、アノードが回路パターンP3に、カソードが回路パターンP2にそれぞれ接続されて実装されている。
【0017】
平滑コイルLは、一方の端子が回路パターンP2に接続され、他方の端子が図示しない電源9に接続されて実装されている。
平滑コンデンサCは、プラス端子が回路パターンP2に、マイナス端子が回路パターンP1にそれぞれ接続されて実装されている。
【0018】
このように実装された負荷駆動回路では、FET3がオンであるとき、負荷電流が、図4に示すように、回路パターンP3から、FET3、回路パターンP4、スルーホール8、回路パターンP5、スルーホール7、回路パターンP1、平滑コンデンサC、回路パターンP2、平滑コイルLの経路で流れる。回路パターンP1、平滑コンデンサC、回路パターンP2、平滑コイルLに流れる電流は平滑電流である。
【0019】
この場合、回路パターンP3、FET3、回路パターンP4に流れる電流、及び回路パターンP1、平滑コンデンサC、回路パターンP2に流れる電流は、表面側5aの実装面の他側から一側に流れ、回路パターンP5に流れる電流は、裏面側5bの実装面の一側から他側に流れる。
従って、表面側5aの実装面に流れる電流と、裏面側5bの実装面に流れる電流とは、回路基板5の厚さ分のみ離隔して平行に流れ、しかも、互いに逆向きであるから、それぞれにより発生する電磁界が打ち消し合うことになる。また、両電流によるループが形成する平面の面積も小さく、放射電磁界エミッションも抑制される。
【0020】
FET3がオフであるとき、誘導電流が、図5に示すように、回路パターンP3から、ダイオードD、回路パターンP2、平滑コイルLの経路、及び回路パターンP3から、ダイオードD、回路パターンP2、平滑コンデンサC、回路パターンP1、スルーホール7、回路パターンP5、スルーホール8、回路パターンP4の経路で流れる。
【0021】
この場合、回路パターンP3から、ダイオードD、回路パターンP2、平滑コンデンサC、回路パターンP1に流れる電流は、表面側5aの実装面の一側から他側に流れ、回路パターンP5に流れる電流は、裏面側5bの実装面の他側から一側に流れる。
従って、表面側5aの実装面に流れる電流と、裏面側5bの実装面に流れる電流とは、回路基板5の厚さ分のみ離隔して平行に流れ、しかも、互いに逆向きであるから、それぞれにより発生する電磁界が打ち消し合うことになる。また、両電流によるループが形成する平面の面積も小さく、放射電磁界エミッションも抑制される。
【0022】
尚、本実施の形態では、回路基板5の表面及び裏面を実装面としてあるが、例えば、複数の回路基板を平行に積層する場合、2つの回路基板の2つの表面を、回路基板5の表面及び裏面の2つの実装面と同様に実装しても、同様の効果を得ることができる。また、2つの回路基板の内の一の実装面及びそれ以外の実装面を、回路基板5の表面及び裏面の2つの実装面と同様に実装しても、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0023】
1 制御部
2 ゲート駆動回路
3 FET
4 負荷(誘導負荷)
5 回路基板
7 スルーホール
9 電源
C 平滑コンデンサ
D ダイオード
L 平滑コイル
P1,P2,P3,P4,P5 回路パターン
図1
図2
図3
図4
図5