(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内燃機関のクランクシャフトと同期回転する駆動側回転体と、この駆動側回転体と同軸芯上に配置される従動側回転体と、前記駆動側回転体又は前記従動側回転体の一方から他方に係合して前記駆動側回転体及び前記従動側回転体を一体回転状態にするロック部材とを備え、前記駆動側回転体と前記従動側回転体との間に形成される進角室と遅角室とへの流体の供給を許容する進角流路と遅角流路、及び、前記ロック部材の係合状態を解除する流体の供給を許容するロック解除流路をそれぞれ備える吸気側弁開閉時期制御装置と排気側弁開閉時期制御装置とが構成されると共に、
前記吸気側弁開閉時期制御装置の前記従動側回転体が前記内燃機関の吸気カムシャフトに連結され、前記排気側弁開閉時期制御装置の前記従動側回転体が前記内燃機関の排気カムシャフトに連結され、
前記吸気側弁開閉時期制御装置の前記進角流路と前記遅角流路とに選択的に流体を給排する吸気側位相制御弁と、
前記排気側弁開閉時期制御装置の前記進角流路と前記遅角流路とに選択的に流体を給排する排気側位相制御弁と、
前記吸気側弁開閉時期制御装置及び前記排気側弁開閉時期制御装置のロック解除流路に対する流体の給排を制御する単一のロック制御弁と、を備え、
前記ロック制御弁が、前記吸気側弁開閉時期制御装置の前記ロック解除流路に流体を供給してロック状態を解除し、前記排気側弁開閉時期制御装置の前記ロック解除流路から流体を排出してロック状態を維持する第2制御状態に設定自在に構成されている弁開閉時期制御ユニット。
前記ロック制御弁が、前記吸気側弁開閉時期制御装置の前記ロック解除流路と、前記排気側弁開閉時期制御装置の前記ロック解除流路とから流体を排出して各々のロック機構をロック状態に維持する第1制御状態に設定自在に構成されている請求項1記載の弁開閉時期制御ユニット。
前記ロック制御弁が、前記吸気側弁開閉時期制御装置の前記ロック解除流路に流体を供給してロック状態を解除し、前記排気側弁開閉時期制御装置の前記ロック解除流路に流体を供給してロック状態を解除する第3制御状態に設定自在に構成されている請求項2記載の弁開閉時期制御ユニット。
前記ロック制御弁が、弁ケースに単一のスプールをスライド移動自在に嵌め込んだ構成であり、前記第1制御状態と前記第2制御状態とを作り出す前記スプールのポジションが隣り合う位置に配置されている請求項3記載の弁開閉時期制御ユニット。
前記ロック制御弁が、弁ケースに単一のスプールをスライド移動自在に嵌め込んだ構成であり、前記第1制御状態、前記第2制御状態、前記第3制御状態、前記第4制御状態を、この順序で作り出すように前記スプールのポジションが配置されている請求項6記載の弁開閉時期制御ユニット。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1〜
図3に示すように、内燃機関としてのエンジンEの吸気弁Vaの開閉時期を制御する吸気側弁開閉時期制御装置Aと、排気弁Vbの開閉時期を制御する排気側弁開閉時期制御装置Bと、制御弁モジュールVMと、エンジン制御ユニット(ECU)50とを備えて弁開閉時期制御ユニットが構成されている。
【0027】
この弁開閉時期制御ユニットは、エンジン制御ユニット(ECU)50がエンジンE(内燃機関の一例)の始動から停止までの一連の制御を行う。この制御時においてエンジン制御ユニット(ECU)50が、エンジンEと制御弁モジュールVMとを制御することにより、良好な始動を実現すると共に、エンジンEの稼働時には吸気弁Vaと排気弁Vbとの開閉時期を適切に制御する。
【0028】
図1に示すエンジンEは、乗用車等の車両に備えられるものである。エンジンEは、クランクシャフト1を支持するシリンダブロック2の上部にシリンダヘッド3が連結されている。シリンダブロック2に形成された複数のシリンダボアにはピストン4が摺動自在に収容され、ピストン4がコネクティングロッド5によりクランクシャフト1に連結されている。
【0029】
シリンダヘッド3には、燃焼室への吸気を行う吸気弁Vaと、燃焼室の燃焼ガスの排気を行う排気弁Vbとが備えられると共に、吸気弁Vaを制御する吸気カムシャフト7と、排気弁Vbを制御する排気カムシャフト8とが備えられている。これによりエンジンEは、多気筒4サイクル型に構成されている。
【0030】
また、シリンダヘッド3には、燃焼室に燃料を噴射するインジェクタ9と点火プラグ10とが備えられている。このシリンダヘッド3には、吸気弁Vaを介して燃焼室に空気を供給するインテークマニホールド11と、排気弁Vbを介して燃焼室からの燃焼ガスを送り出すエキゾーストマニホールド12とが連結されている。エキゾーストマニホールド12の排出方向の下流側には燃焼ガスを浄化する触媒コンバータ13が備えられている。
【0031】
エンジンEには、オイルパンのオイルを作動油として供給するため、クランクシャフト1の駆動力で駆動される油圧ポンプPが備えられている。この油圧ポンプPからの作動油は制御弁モジュールVMに供給され、更に、この制御弁モジュールVMから吸気側弁開閉時期制御装置Aと排気側弁開閉時期制御装置Bとに供給される。
【0032】
吸気側弁開閉時期制御装置Aと排気側弁開閉時期制御装置Bとの外部ロータ20(駆動側回転体の一例)の外周に駆動スプロケット22Sが形成され、この一対の駆動スプロケット22Sとクランクシャフト1の出力スプロケット1Sとに亘ってタイミングチェーン6が巻回されている。この構成により、クランクシャフト1の回転と同期した回転力が吸気側弁開閉時期制御装置Aと排気側弁開閉時期制御装置Bとに伝えられる。このエンジンEではタイミングチェーン6に代えてタイミングベルトを用いて良く、多数のギヤを有するギヤトレインによりクランクシャフト1の駆動力を吸気側弁開閉時期制御装置Aと排気側弁開閉時期制御装置Bとに伝える構成を採用しても良い。
【0033】
制御弁モジュールVMは、吸気側位相制御弁41と、排気側位相制御弁42と、単一のロック制御弁43とで構成されている。吸気側位相制御弁41は、吸気側弁開閉時期制御装置Aの位相制御を行い、排気側位相制御弁42は排気側弁開閉時期制御装置Bの位相制御を行う。ロック制御弁43は、吸気側弁開閉時期制御装置Aと排気側弁開閉時期制御装置Bとのロック部材25の係合(ロック状態)と、係合の解除とを可能にする。ロック制御弁43の詳細については後述する。
【0034】
エンジンEには、クランクシャフト1に駆動回転力を伝えるスタータモータ15を備え、クランクシャフト1の近傍位置には回転角と回転速度とを検知するシャフトセンサ16を備えている。吸気側弁開閉時期制御装置Aの近傍には外部ロータ20と内部ロータ30との相対回転位相を検知する吸気側位相センサ17を備えている。これと同様に排気側弁開閉時期制御装置Bの外部ロータ20と内部ロータ30との相対回転位相を検知する排気側位相センサ18を備えている。
【0035】
エンジンEには、シリンダブロック2の内部の冷却水の温度を検知する水温センサ56を備えている。また、車両には人為的な操作によりエンジンEの始動と停止とを行う始動スイッチ57を備えている。水温センサ56はエンジンEの温度を計測するためのものであるため、エンジンEの外面に接触して外壁の温度を計測するように構成されたものでも良い。
【0036】
エンジン制御ユニット50は、ソフトウエアで構成される第1制御モード実行部51と、第2制御モード実行部52と、第3制御モード実行部53と、第4制御モード実行部54とを備えている。また、エンジン制御ユニット50は、シャフトセンサ16と、吸気側位相センサ17と、排気側位相センサ18と、水温センサ56と、始動スイッチ57とからの信号が入力する。
【0037】
エンジン制御ユニット50は、インジェクタ9の制御部と、点火プラグ10の制御部と、スタータモータ15の制御部と、制御弁モジュールVMの吸気側位相制御弁41と排気側位相制御弁42とロック制御弁43とに制御信号を出力する。このエンジン制御ユニット50の制御形態は後述する。
【0038】
〔吸気側弁開閉時期制御装置・排気側弁開閉時期制御装置〕
吸気側弁開閉時期制御装置Aと排気側弁開閉時期制御装置Bとは、共通する構成を有している。その構成を
図3〜
図5に基づいて説明する。
【0039】
図3に吸気側弁開閉時期制御装置Aと、この吸気側弁開閉時期制御装置Aに接続される流体回路とを示す。吸気側弁開閉時期制御装置Aは、クランクシャフト1と同期回転する駆動側回転体としての外部ロータ20と、従動側回転体としての内部ロータ30とを備えている。これらは吸気カムシャフト7の回転軸芯Xと同軸芯上に配置され、外部ロータ20に対して内部ロータ30が内包される形態で回転軸芯Xを中心にして相対回転自在に支持されている。なお、排気側弁開閉時期制御装置Bは、前述した吸気側弁開閉時期制御装置Aと同様に、排気カムシャフト8の回転軸芯Xと同軸芯上に配置され、外部ロータ20に対して内部ロータ30が内包される形態で回転軸芯Xを中心にして相対回転自在に支持されている。
【0040】
吸気側弁開閉時期制御装置Aの内部ロータ30(従動側回転体の一例)は吸気カムシャフト7に対して連結ボルト33により連結しており、外部ロータ20と内部ロータ30との相対回転位相(以下、相対回転位相と称する)の設定により吸気弁Vaの開閉時期を変更する。これと同様に、排気側弁開閉時期制御装置Bの内部ロータ30は排気カムシャフト8に対して連結ボルト33により連結しており、相対回転位相の設定により排気弁Vbの開閉時期を変更する。
【0041】
外部ロータ20は、円筒状となるロータ本体21と、回転軸芯Xに沿う方向でロータ本体21の一方の端部に配置されるリヤブロック22と、回転軸芯Xに沿う方向でロータ本体21の他方の端部に配置されるフロントプレート23とを備え、これらを複数の締結ボルト24により締結した構成を有している。
【0042】
リヤブロック22の外周には、駆動スプロケット22Sが形成され、ロータ本体21には円筒状の内壁面と、回転軸芯Xに近接する方向(径方向内側)に突出する複数の突出部21Tとが一体的に形成されている。前述したように駆動スプロケット22Sにはタイミングチェーン6が巻回し、クランクシャフト1から回転力が伝達される。
【0043】
複数の突出部21Tのうち、回転軸芯Xを挟んで対向する位置となる2つの突出部21Tに対して回転軸芯Xから放射状に延びる姿勢でガイド溝が形成され、これらのガイド溝にプレート状のロック部材25が出退自在に挿入されている。ロータ本体21の内部にはロック部材25を回転軸芯Xに接近する方向に付勢する付勢手段としてのロックスプリング26が備えられている。
【0044】
吸気側弁開閉時期制御装置Aは、相対回転位相が
図4に示すロック位相LSにある場合に、2つのロック部材25がロックスプリング26の付勢力により、対応するロック凹部LDに係入して相対回転位相を保持する。ロック位相LSは最進角と最遅角との間の略中央の位相に設定されている。尚、排気側弁開閉時期制御装置Bも同様の構成を備え、相対回転位相が
図4に示すロック位相LSにある場合に、2つのロック部材25がロックスプリング26の付勢力により、対応するロック凹部LDに係入して相対回転位相を保持する。
【0045】
ロック部材25とロックスプリング26とロック凹部LDとでロック機構Lが構成されている。ロック部材25の形状はプレート状に限るものではなく、例えば、ロッド状であっても良い。また、ロック位相LSは
図4に示す位相に限るものではなく、これより進角側、あるいは、遅角側に設定されても良い。
【0046】
外部ロータ20のリヤブロック22と内部ロータ30とに亘って、トーションスプリング27が備えられている。このトーションスプリング27は、例えば、相対回転位相が最遅角にある状態でも、少なくとも中間位相に達するまで付勢力を作用させることが可能となるように構成されている。
【0047】
吸気側弁開閉時期制御装置Aと排気側弁開閉時期制御装置Bとは、タイミングチェーン6から伝えられる駆動力により外部ロータ20は駆動回転方向Sの方向に回転する。外部ロータ20に対して内部ロータ30が駆動回転方向Sと同方向へ回転する方向を進角方向Saと称し、この逆方向への回転方向を遅角方向Sbと称する。
【0048】
吸気側弁開閉時期制御装置Aは、相対回転位相が進角方向Saに変位することにより、吸気弁Vaの開放時期(開閉タイミング)と閉塞時期(閉塞タイミング)とを早める。これとは逆に回転位相が遅角方向Sbに変位することにより吸気弁Vaの開放時期(開放タイミング)と閉塞時期(閉塞タイミング)とを遅くする。また、排気側弁開閉時期制御装置Bは、相対回転位相が進角方向Saに変位することにより、排気弁Vbの開放時期(開放タイミング)と閉塞時期(閉塞タイミング)とを早める。これとは逆に回転位相が遅角方向Sbに変位することにより排気弁Vbの開放時期(開放タイミング)と閉塞時期(閉塞タイミング)とを遅くする。
【0049】
内部ロータ30は、回転軸芯Xと同軸芯上でシリンダ内面状となる内周面30Sが形成されると共に、回転軸芯Xを中心とする円筒状の外周面が形成され、この外周面には外方に突出する複数のベーン31が嵌め込まれている。このベーン31は回転軸芯Xから離間する方向にバネ等で付勢されている。
【0050】
また、内部ロータ30を外部ロータ20に嵌め込む(内包する)ことでロータ本体21の内側表面(円筒状の内壁面及び複数の突出部21T)と内部ロータ30の外周面との間に流体圧室Cが形成される。前述したベーン31の突出端が流体圧室Cを構成する外部ロータ20の内周面に接触しており、流体圧室Cをベーン31が仕切ることにより進角室Caと遅角室Cbとが形成される。
【0051】
内部ロータ30のうち回転軸芯Xに沿う方向での一方の端部には鍔状部32が形成され、この鍔状部32の内周位置の孔部に連結ボルト33が挿通し、内部ロータ30が吸気カムシャフト7又は排気カムシャフト8に連結されている。
【0052】
吸気側弁開閉時期制御装置Aと排気側弁開閉時期制御装置Bとの内部ロータ30には進角室Caに連通する進角流路34と、遅角室Cbに連通する遅角流路35と、ロック凹部LDに対してロック解除方向に作動油を供給するロック解除流路36とが形成されている。
【0053】
このような構成から、吸気側弁開閉時期制御装置Aと排気側弁開閉時期制御装置Bとは、進角流路34を介して進角室Caに作動油(流体の具体例)を供給することで相対回転位相を進角方向Saに変位させる。これと同様に遅角流路35を介して遅角室Cbに作動油を供給することで相対回転位相を遅角方向Sbに変位させる。
【0054】
尚、ベーン31が進角方向Saの移動端(回転軸芯Xを中心にした回動限界)に達した状態での相対回転位相を最進角位相と称し、ベーン31が遅角側の移動端(回転軸芯Xを中心にした回動限界)に達した状態での相対回転位相を最遅角位相と称している。
【0055】
〔制御弁モジュール〕
吸気側位相制御弁41と、排気側位相制御弁42とは3ポジションに操作可能な電磁操作型に構成されている。ロック制御弁43は4ポジションに操作可能な電磁操作型に構成されている。
【0056】
図3に示すように、排気側弁開閉時期制御装置Bの内部ロータ30の内周面30Sに対して円柱状の流路形成軸部45を挿入しており、この流路形成軸部45に一体形成したユニットケースに対して排気側位相制御弁42が備えられている。これと同様に、吸気側弁開閉時期制御装置Aの内部ロータ30の内周面30Sに対して流路形成軸部45を挿入しており、この流路形成軸部45に一体形成したユニットケースに対して排気側位相制御弁42が備えられている。
【0057】
ロック制御弁43は、吸気側弁開閉時期制御装置A又は排気側弁開閉時期制御装置Bのユニットケースに備えられる構成を想定しているが、何れのユニットケースにも備えない構成であっても良い。
【0058】
尚、この制御弁モジュールVMは、吸気側位相制御弁41と、排気側位相制御弁42と、ロック制御弁43とが、吸気側弁開閉時期制御装置Aと排気側弁開閉時期制御装置Bとから分離する位置に備えられる構成でも良い。
【0059】
吸気側弁開閉時期制御装置Aと排気側弁開閉時期制御装置Bとの流路形成軸部45の外周面には、吸気側位相制御弁41のポートと連通する環状の溝状部と、ロック制御弁43のうち対応するポートと連通する環状の溝状部とが形成され、これらの溝状部を分離するように流路形成軸部45の外周と、内部ロータ30の内周面30Sとの間には複数のリング状のシール46が備えられている。
【0060】
吸気側位相制御弁41と排気側位相制御弁42とは、進角流路34と遅角流路35との一方を選択して作動油を供給し、他方から排油を行うことにより、装置の相対回転位相を進角方向Sa又は遅角方向Sbに変位させる作動を実現する。
【0061】
〔制御弁モジュール:ロック制御弁〕
ロック制御弁43は、吸気側弁開閉時期制御装置Aと排気側弁開閉時期制御装置Bとのロック機構Lのロック状態の維持とロック状態の解除とを実現する。つまり、ロック状態に維持する場合には、ロック解除流路36から排油を行い、ロック部材25がロックスプリング26の付勢力によりロック凹部LDに係入する状態を作り出す。これとは逆に、ロック状態を解除する場合にはロック解除流路36に作動油を供給することにより、ロックスプリング26の付勢力に抗してロック部材25をロック凹部LDから抜き出す方向への作動を行わせる。
【0062】
図6〜
図9に示すように、ロック制御弁43は、筒状に形成された弁ケース61と、この弁ケース61に対してスプール軸芯Yに沿って移動自在に嵌め込まれたスプール62と、スプール62を付勢するスプールスプリング63と、スプール62に作動力を作用させる電磁ソレノイド64とを備えて構成されている。
【0063】
弁ケース61は、油圧ポンプPから作動油が供給されるポンプポート61Pと、作動油を排出するドレンポート61Dと、吸気側弁開閉時期制御装置Aのロック解除流路36に連通する吸気側ロック制御ポート61Aと、排気側弁開閉時期制御装置Bのロック解除流路36に連通する排気側ロック制御ポート61Bとが形成されている。
【0064】
スプール62は筒状であり、外周にはスプール軸芯Yに沿って第1ランド部62aと、第2ランド部62bと、第3ランド部62cと、第4ランド部62dとが、この順序で形成されている。また、スプール62の内部には作動油を排出する排油空間62eが形成され、スプール62の外壁部には排油空間62eからの作動油をドレンポート61Dに送り出す連通孔62fが形成されている。
【0065】
このロック制御弁43では、電磁ソレノイド64が非通電状態にある場合にスプールスプリング63の付勢力によりスプール62が第1制御ポジションT1に保持される。また、電磁ソレノイド64に供給する電力の増大に伴いスプールスプリング63の付勢力に抗してスプール62をスプール軸芯Yに沿う方向に作動させることにより第2制御ポジションT2と、第3制御ポジションT3と、第4制御ポジションT4とに対して、この順序でセットできるように構成されている。
【0066】
尚、第1制御ポジションT1が第1制御状態の具体例であり、これと同様に第2制御ポジションT2が第2制御状態の具体例であり、第3制御ポジションT3が第3制御状態の具体例であり、第4制御ポジションT4が第4制御状態の具体例である。
【0067】
〔第1制御ポジション〕スプール62が
図6に示す第1制御ポジションT1にセットされた場合には、第1ランド部62aがポンプポート61Pから排気側ロック制御ポート61Bへの作動油の流れを阻止する。これと同様に第2ランド部62bが吸気側ロック制御ポート61Aへの作動油の流れを阻止する。また、この第1制御ポジションT1では、吸気側ロック制御ポート61Aがスプール62の外周側を介してドレンポート61Dに連通し、排気側ロック制御ポート61Bがスプール62の排油空間62eと連通孔62fを介してドレンポート61Dに連通する。
【0068】
これにより、吸気側弁開閉時期制御装置Aと排気側弁開閉時期制御装置Bとのロック部材25に作動油の圧力が作用することはなく、各々のロック機構Lがロック状態に維持される。
【0069】
〔第2制御ポジション〕次に、スプール62が
図7に示す第2制御ポジションT2にセットされた場合には、第1ランド部62aがポンプポート61Pから排気側ロック制御ポート61Bへの作動油の流れを阻止しつつ、この排気側ロック制御ポート61Bがドレンポート61Dに連通する状態を維持する。これと同時に、ポンプポート61Pがスプール62の外周側を介して吸気側ロック制御ポート61Aに連通する状態に達すると共に、第4ランド部62dが吸気側ロック制御ポート61Aからドレン側への作動油の流れを阻止する。
【0070】
これにより、排気側弁開閉時期制御装置Bのロック機構Lはロック状態に維持されつつ、吸気側弁開閉時期制御装置Aのロック機構Lのロック部材25に作動油の圧力が作用してロック状態が解除される。
【0071】
〔第3制御ポジション〕次に、スプール62が
図8に示す第3制御ポジションT3にセットされた場合には、第1ランド部62aが排気側ロック制御ポート61Bとドレンポート61Dとの連通を遮断すると共に、この第1ランド部62aの外周側を介してポンプポート61Pが排気側ロック制御ポート61Bに連通して作動油の流れを許容する。
【0072】
また、第2制御ポジションと同様に、ポンプポート61Pと吸気側ロック制御ポート61Aとが連通する状態を維持すると共に、第4ランド部62dが吸気側ロック制御ポート61Aからドレンポート61Dへの作動油の流れを阻止する。
【0073】
これにより、吸気側弁開閉時期制御装置Aと排気側弁開閉時期制御装置Bのロック機構Lのロック部材25に作動油の圧力が作用することにより、各々のロック機構Lのロック状態が解除される。
【0074】
〔第4制御ポジション〕次に、スプール62が
図9に示す第4制御ポジションT4にセットされた場合には、第3制御ポジションと同様に、第1ランド部62aが排気側ロック制御ポート61Bとドレンポート61Dとの連通を遮断すると共に、この第1ランド部62aの外周側を介してポンプポート61Pから排気側ロック制御ポート61Bに連通して作動油の流れを許容する。
【0075】
また、第3ランド部62cがポンプポート61Pから吸気側ロック制御ポート61Aへの作動油の流れを阻止し、吸気側ロック制御ポート61Aがスプール62の外周側を介してドレンポート61Dに連通する。
【0076】
これにより吸気側弁開閉時期制御装置Aのロック機構Lのロック部材25に作動油の圧力が作用してロック機構Lのロック状態が解除され、排気側弁開閉時期制御装置Bのロック機構Lがロック状態となる。
【0077】
〔エンジン制御ユニット〕
図1に示すように、エンジン制御ユニット50は、マイクロプロセッサやDSP等を用いることによりECUとして構成され、ソフトウエアにより制御を実現する。第1制御モード実行部51と、第2制御モード実行部52と、第3制御モード実行部53と、第4制御モード実行部54とはソフトウエアで構成されている。尚、これらはハードウエアで構成されるものでも良く、ソフトウエアとハードウエアとの組み合わせにより構成されるものであっても良い。
【0078】
第1制御モード実行部51は、吸気側弁開閉時期制御装置Aと排気側弁開閉時期制御装置Bとのロック機構Lのロック状態を維持してエンジンEの始動を制御する。第2制御モード実行部52はエンジンEの始動の後に、排気側弁開閉時期制御装置Bのロック機構Lのロック状態を維持しつつ、吸気側弁開閉時期制御装置Aのロック機構Lのロック状態を解除して暖機を図る。
【0079】
第3制御モード実行部53は、エンジンEの暖機が完了した後に吸気側弁開閉時期制御装置Aと排気側弁開閉時期制御装置Bとのロック機構Lのロック状態を解除し、吸気弁Vaと排気弁Vbとの開閉時期を最適に制御してエンジンEの稼働を行わせる。第4制御モード実行部54はエンジンEの暖機が完了し、排気側弁開閉時期制御装置Bのロック機構Lのロック状態に設定し、吸気側弁開閉時期制御装置Aのロック機構Lのロック状態を解除する。
【0080】
〔エンジン制御〕
エンジン制御ユニット50による制御形態を
図10のフローチャートに示している。このエンジン制御では、初期状態において吸気側弁開閉時期制御装置Aと排気側弁開閉時期制御装置Bとのロック機構Lがロック状態にあり、エンジンEが停止している状況を想定している。この状況において始動スイッチ57がON操作された場合に、エンジン始動ルーチンの処理を実行する(#02、#100ステップ)。この後に、エンジンが稼働する状況では、吸気弁Vaと排気弁Vbとの開閉時期をエンジンEの稼働状況に対応してセットし、第4制御モードの実行を必要とする場合にのみロック制御弁43を第4制御ポジションT4にセットする(#03〜#05ステップ)。そして、始動スイッチ57がOFF操作された場合にはエンジン停止ルーチンを実行する(#06、#200ステップ)。
【0081】
これらの制御においてロック制御弁43を第4制御ポジションT4にセットする際には、次のエンジン始動ルーチンで説明するように、ロック制御弁43は既に第3制御ポジションT3にセットされている。このような状況からロック制御弁43の制御ポジションを第4制御ポジションT4に変更する操作を迅速に行うことが可能となる。
【0082】
〔エンジン制御:エンジン始動ルーチン〕
エンジン始動ルーチン(#100ステップ)は
図11のフローチャートに示すように、ロック制御弁43を第1制御ポジションT1に維持した状態でスタータモータ15を駆動してクランキングを開始する。これに伴いインジェクタ9により燃焼室に燃料を供給し、点火プラグ10による点火を実行する(#101〜#103ステップ)。
【0083】
これが第1制御モードであり、前述したようにロック制御弁43は、電磁ソレノイド64に電力を供給しない状態で第1制御ポジションT1を維持するため、このエンジンEの始動時には電磁ソレノイド64に電力は供給されない。
【0084】
このエンジン始動ルーチンでは、吸気側弁開閉時期制御装置Aと排気側弁開閉時期制御装置Bとのロック機構Lがロック状態にあることを前提にしている。従って、ロック状態が維持されることにより相対回転位相を始動に適した位相に維持した状態でのクランキングが可能となる。
【0085】
このエンジンEの始動時には、油圧ポンプPから供給される作動油の油量が不充分で油圧も低いため、例えば、ロック機構Lがロック状態にない場合には、外部ロータ20と内部ロータ30とが進角方向Saと遅角方向Sbとに交互に振動するように変位する現象を招くものであるが、ロック機構Lにより、このような不都合を招くことがない。
【0086】
この制御によりエンジンEが始動し、設定時間が経過した後には、ロック制御弁43を第2制御ポジションT2にセットし、吸気側位相制御弁41の制御により第2制御モードでの制御に移行する(#104、#105ステップ)。
【0087】
この設定時間は数秒程度に設定されている。従って、第1制御モードでの制御開始から第2制御モードでの制御への移行は短時間のうちに行われる。第2制御モードでの制御では、吸気側位相制御弁41の制御により吸気側弁開閉時期制御装置Aの相対回転位相を進角方向Saに変更して吸気タイミングを早めて燃費を向上させつつ、排気ガスを決まったタイミングで排出して排気ガスの処理効率の低下を抑制することも可能となる。特に、アイドリングに移行する場合や、パーシャル領域に維持する場合にも、吸気側弁開閉時期制御装置Aの相対回転位相を進角方向Saの方向に移行させることになり、この制御の結果、排気ガス量を増大させることなく、燃費の向上が図られる。
【0088】
次に、水温センサ56の検知信号から、水温が設定値を超えた場合には、ロック制御弁43を第3制御ポジションT3にセットし、吸気側位相制御弁41と排気側位相制御弁42とのうち必要とするものを制御することで第3制御モードでの制御に移行する(#106〜#108ステップ)。
【0089】
第3制御ポジションT3では、吸気弁Vaと排気弁Vbとの開閉タイミングを任意に設定することにより、例えば、ポンピングロスを小さくすることや、体積効率を向上させ、効率的にエンジンEを稼働させることも可能となる。
【0090】
エンジンEが低・中速で回転する場合には、吸気弁Vaが開放するタイミングにおいて、排気弁Vbが開放する状態を継続するオーバラップ領域を小さくすることによりトルクが向上し、燃費も向上することが知られている。また、エンジンEが高速で回転する場合には、オーバラップ領域を大きくすることが出力を取り出しやすくすることが知られている。
【0091】
このような理由から、エンジンEの回転速度に応じて、吸気側位相制御弁41と排気側位相制御弁42との相対回転位相が設定されるのである。
【0092】
〔エンジン制御:エンジン停止ルーチン〕
エンジン停止ルーチン(#200ステップ)は
図12のフローチャートに示すように、吸気側弁開閉時期制御装置Aと排気側弁開閉時期制御装置Bとの目標位相をロック位相LSにセットした後に、吸気側位相センサ17の検知信号と、排気側位相センサ18の検知信号とをフィードバックさせる状態で吸気側位相制御弁41と排気側位相制御弁42との制御により相対回転位相をロック位相LSまで移行させる(#201、#202ステップ)。
【0093】
この制御により、相対回転位相が目標位相に達したことを吸気側位相センサ17と排気側位相センサ18とからの検知信号により判定した場合には、ロック部材25がロックスプリング26の付勢力により対応するロック凹部LDに係入することになり、この後にエンジンEを停止する(#203、#204ステップ)。
【0094】
このように吸気側弁開閉時期制御装置Aと排気側弁開閉時期制御装置Bとのロック機構Lがロック状態に達する制御の後にエンジンEを停止させるため、前述したエンジン始動ルーチンでは吸気側弁開閉時期制御装置Aと排気側弁開閉時期制御装置Bとのロック機構Lがロック状態にある状況でのエンジンEの始動が可能となる。
【0095】
〔実施形態の作用・効果〕
この弁開閉時期制御ユニットの構成では、ロック制御弁43が4つのポジションに設定可能であり、電磁ソレノイド64に対して電力を供給しない状態では第1制御ポジションT1に維持される。このような構成からエンジンEを始動する場合に電磁ソレノイド64に対して電力を供給する必要がなく、無駄に電力を消費せず吸気側弁開閉時期制御装置Aと排気側弁開閉時期制御装置Bとのロック機構Lをロック状態に維持することが可能となる。
【0096】
また、エンジンEの始動時には、吸気側弁開閉時期制御装置Aと排気側弁開閉時期制御装置Bとのロック機構Lがロック状態に維持されるため、各々の相対回転位相を維持して良好な始動を実現する。
【0097】
第1制御ポジションT1と第2制御ポジションT2と第3制御ポジションT3と第4制御ポジションT4とが、この順序で並ぶ位置に形成されている。従って、エンジンEが始動した直後には、ロック制御弁43の電磁ソレノイド64に対して所定の電力を供給することにより第2制御ポジションT2にセットする作動を迅速に行える。
【0098】
更に、エンジンEの温度が稼働に適した温度まで上昇した後には、ロック制御弁43の電磁ソレノイド64に供給する電力の増大により第3制御ポジションT3にセットする作動を迅速に行える。この第3制御ポジションT3では、吸気側弁開閉時期制御装置Aと排気側弁開閉時期制御装置Bとの相対回転位相を、エンジンEの回転速度に対応した最適な値にセットして必要とするトルクを得ることが可能となる。
【0099】
例えば、アイドリング状態のようにエンジンEが低速回転する状況において、エアコンディショナーを作動させた場合には、吸気弁Vaをロック位相LSにロックした状態で排気弁Vbの開閉タイミングを進角方向Saに移行させることでエンジンEの振動を抑制することも考えられ、このよう状況にも対応することが可能となる。
【0100】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い。
【0101】
(a)吸気側弁開閉時期制御装置Aと排気側弁開閉時期制御装置Bとのロック機構Lがロック状態にある場合では、例えば、吸気弁Vaが開放して吸気を開始するタイミングにおいて、排気弁Vbが開放状態を維持するようにロック位相の関係を設定することも考えられる。このように構成する場合に、実施形態において説明したロック位相LSに限る必要はなく、新たにロック位相を付加しても良い。
【0102】
この別実施形態(a)のように吸気側弁開閉時期制御装置Aと排気側弁開閉時期制御装置Bとのロック位相LSを設定した場合の時間経過を横軸に取り、吸気弁Vaと排気弁Vbとのリフト量を縦軸に取ったもの
図13に示している。この図から理解できるように、吸気弁Vaが開放するタイミングで排気弁Vbが開放する排気領域Exと、吸気弁Vaが開放する吸気領域Inとが重複するオーバラップ領域Nが形成されることになる。
【0103】
このようにロック位相LSの相対的な関係を設定することにより、エンジンEを始動する際(実施形態のエンジン始動ルーチンでの制御)に、吸気行程で燃焼ガスを排気弁Vbから燃焼室に吸引することも可能となる。このようにタイミングを設定することにより、冷熱状態のエンジンEを始動する場合のように、インジェクタ9から噴射された燃料が、低温のシリンダ内壁に付着する形態で残留し、殆ど燃焼せずに燃焼ガスと共に未燃HC(未燃焼の炭化水素)として排出される状況であっても排気弁Vbを介して燃焼室に吸引されることで燃焼室の温度上昇を図ることが可能となる。これにより、インジェクタ9から燃焼室に噴射された燃料の気化を促進し確実な燃焼を行わせ、未燃HCの排出量の低減が実現するのである。
【0104】
(b)別実施形態(a)においても少し触れているが、ロック機構Lによりロック位相を複数設定しても良い。具体的には、ハイブリッド型車両あるいはアイドルストップ型の車両において、エンジンEが自動停止する際のロック位相を、前述した実施形態のロック位相LSより遅角側に付加する形態で形成する。また、車両には主として外気の温度を環境温度として検知する環境温度センサで検知される温度に基づいて複数のロック位相のうち始動に適したものを選択できるように前述した実施形態のロック位相LSより進角側と遅角側とに付加する形態で形成する。
【0105】
このように複数のロック機構Lを複数のロック位相でロックできるように構成するものでは、エンジンEを停止する状況に応じ、ロック位相を選択するようにエンジン停止ルーチンを設定することになる。そして、複数のロック位相を設定した構成では、エンジンEの始動を軽負荷で行うことが可能となり、前述したように未燃HCの低減も実現する。
【0106】
(c)実施形態ではロック制御弁43の操作位置を4つに設定していたが、実施形態に示した第4制御ポジションT4を形成せずに、3つのポジションに操作する構成を採用しても良い。
【0107】
(d)ロック制御弁43を、弁ケースの内部に回転型の弁体を収容してロータリ型に構成しても良い。このように構成する場合に、第1制御状態と第2制御状態と第3制御状態と第4制御状態とを弁体の回転方向で隣接する位置関係に設定することによりロック機構Lの迅速な操作が可能となる。