(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の模様塗料組成物の製造方法は、ゲル化剤を含む分散媒に着色塗料を接触させ、着色塗料の表面をゲル化したゲル化物を含有する模様塗料組成物を製造する方法である。
なお、本発明において「所望の模様の塗膜」とは、塗膜の模様の大きさや形状が設計通りであることを意味し、塗膜の模様の配置は規則的であってもよいし、不規則であってもよい。
【0014】
<着色塗料>
着色塗料としては、例えば樹脂エマルションと着色顔料と親水性コロイド形成物質とを含むエマルション塗料や、キトサンと着色顔料と錯体形成物質とを含むキトサン含有塗料などが挙げられる。模様塗料組成物より形成される塗膜に抗菌効果を付与できる点では、キトサン含有塗料が好ましい。
【0015】
(エマルション塗料)
エマルション塗料に含まれる樹脂エマルションとしては、例えばポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル、ベオバ(分岐脂肪酸ビニルエステル)、天然又は合成ゴムや、それらの共重合体のエマルションなど、一般に市販されている樹脂エマルションを使用することができる。中でも、アクリル樹脂が好ましい。
【0016】
着色顔料としては、例えばカーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、クロム酸鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド等の無機顔料;パール顔料、マイカ顔料、マイカコーティングパール顔料、アルミニウム粉、ステンレス粉等の光輝性顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドンレッド等の有機顔料などが挙げられる。これら着色顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
着色顔料の含有量は、樹脂エマルション100質量部に対して、0.01〜50質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜30質量部である。
【0017】
エマルション塗料が親水性コロイド形成物質を含有することにより、該親水性コロイド形成物質と後述するゲル化剤とが反応してエマルション塗料をゲル化膜でカプセル化することができる。
親水性コロイド形成物質としては、例えばセルロース誘導体;ポリチレンオキサイド;ポリビニルアルコール;カゼイン、デンプン、ガラクトマンノン、グアルゴム、ローカストビーンゴム等の天然高分子などを含有する水溶液が挙げられる。中でもグアルゴムの水溶液が好ましく、該水溶液の濃度は0.5〜5質量%が好ましく、より好ましくは1.0〜3質量%である。これら親水性コロイド形成物質は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
親水性コロイド形成物質の含有量は、樹脂エマルション100質量部に対して、0.05〜5質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜3.0質量部である。親水性コロイド形成物質の含有量が上記範囲内であれば、安定したゲル化膜が得られやすくなる。
【0018】
エマルション塗料には、必要に応じて体質顔料や公知の添加剤(例えば増粘剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、レベリング剤等)が任意成分として含まれてもよい。
体質顔料としては、カオリン、硫酸バリウム、含水ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。これら体質顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
体質顔料の含有量は、エマルション塗料100質量%中、0〜30質量%が好ましく、より好ましくは0〜20質量%である。
【0019】
エマルション塗料は、上記樹脂エマルションに親水性コロイド形成物質を加え撹拌混合したものに、着色顔料と水の混合溶液を加えてさらに撹拌混合して得られる。
水の含有量は、エマルション塗料100質量%中、40〜90質量%が好ましく、より好ましくは50〜80質量%である。
【0020】
(キトサン含有塗料)
キトサン含有塗料に含まれるキトサンとしては、市販品を用いることができる。
着色顔料としては、エマルション塗料の説明において先に例示した着色顔料が挙げられる。これら着色顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
着色顔料の含有量は、キトサン含有塗料に含まれるキトサンと、錯体形成物質と水との合計100質量部に対して、0.01〜50質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜30質量部である。
【0021】
キトサン含有塗料が錯体形成物質を含有することにより、キトサンが錯体形成物質と水中で反応し、イオン錯体を形成する。このイオン錯体を分散媒に接触させることでイオン錯体の表面がゲル化し、キトサン膜が形成される。
錯体形成物質としては、塩酸等の無機酸;酢酸、ギ酸、アクリル酸、乳酸、リンゴ酸等の有機酸などが挙げられる。中でも、塩酸の水溶液が好ましい。
錯体形成物質の含有量は、キトサン100質量部に対して、20〜150質量部が好ましく、より好ましくは50〜100質量部である。
【0022】
キトサン含有塗料には、必要に応じて、樹脂エマルション、体質顔料や公知の添加剤(例えば増粘剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、レベリング剤等)が任意成分として含まれてもよい。
体質顔料および添加剤としては、エマルション塗料の説明において先に例示した体質顔料および添加剤が挙げられる。
【0023】
キトサン含有塗料は、上記錯体形成物質の水溶液にキトサンを加え撹拌混合したものに着色顔料を加え、さらに撹拌混合して得られる。
水の含有量は、キトサン含有塗料100質量%中、40〜90質量%が好ましく、より好ましくは50〜80質量%である。
【0024】
<分散媒>
分散媒は、ゲル化剤を含む水性の分散媒である。
ゲル化剤としては、例えばマグネシウムモンモリロナイト粘土、ナトリウムペンタクロロフェノール、ホウ酸塩、タンニン酸、乳酸チタン、塩化カルシウム、水酸化ナトリウムなどを含有する水溶液が挙げられる。中でも、着色塗料としてエマルション塗料を用いる場合はホウ酸塩の水溶液が好ましく、キトサン含有塗料を用いる場合は塩化カルシウムの水溶液が好ましい。ホウ酸塩の水溶液の濃度は0.05〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜8質量%である。塩化カルシウムの水溶液の濃度は0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。これらゲル化剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
着色塗料としてエマルション塗料を用いる場合、ゲル化剤の含有量は、分散媒100質量%中、0.05〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%である。一方、着色塗料としてキトサン含有塗料を用いる場合、ゲル化剤の含有量は、分散媒100質量%中、0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜3質量%である。
ゲル化剤の含有量が上記範囲内であれば、安定したゲル化膜が得られやすくなる。
【0025】
分散媒には、必要に応じて体質顔料や水溶性高分子化合物、公知の添加剤が任意成分として含まれてもよい。
体質顔料としては、エマルション塗料の説明において先に例示した体質顔料が挙げられる。中でも、含水ケイ酸マグネシウムの分散液が好ましく、該分散液の濃度は0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは2〜10質量%である。これら体質顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
体質顔料の含有量は、分散媒100質量%中、0.05〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量部である。
【0026】
水溶性高分子化合物としては、例えばヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコールなどを含有する水溶液が挙げられる。中でもカルボキシメチルセルロースまたはメチルセルロースの水溶液が好ましく、これら水溶液の濃度は0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜3質量%である。これら水溶性高分子化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水溶性高分子化合物の含有量は、分散媒100質量%中、0.05〜3質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜2質量%である。
【0027】
添加剤としては、エマルション塗料の説明において先に例示した添加剤が挙げられる。
【0028】
分散媒は、ゲル化剤を含む水溶液と、必要に応じて体質顔料を含む分散液、および水溶性高分子化合物を含む水溶液等とを撹拌混合したものに、水を加え希釈することにより得られる。
水の含有量は、分散媒100質量%中、20〜80質量%が好ましく、より好ましくは30〜70質量%である。
【0029】
<製造方法>
以下、本発明の模様塗料組成物の製造方法の一例について、
図1を参照しながら説明する。なお、後述する
図2〜4において、
図1と同じ構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図1は、本発明に用いる模様塗料組成物の製造装置の一例を模式的に示す斜視図である。この例の模様塗料組成物の製造装置1は、担体であるベルト10と、ベルト10上に着色塗料を所定の形状に印刷するロータリースクリーン20と、分散媒Bを貯留した回収タンク30とを備えている。また、図中の符号Tは、担体上に、所定の形状に形成された着色塗料である。
【0030】
ベルト10は、所定の形状に形成された着色塗料Tを一時的に担持しておくものである。
この例のベルト10は、斜めになるように1対の支持ローラ11a、11bにより支持され、支持ローラ11a、11bの回転により走行する無端ベルトである。一方の支持ローラ11aは、ベルト10を介してロータリースクリーン20に当接し、他方の支持ローラ11bは回収タンク30の分散媒Bに浸漬している。
ベルト10としては特に制限されないが、剥離性を有するものが好ましい。ベルト10の材質としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ステンレス、アクリル樹脂、フッ素樹脂、シリコーンなどが挙げられる。
ロータリースクリーン20としては、公知のものを使用できる。
【0031】
図1に示す模様塗料組成物の製造装置1を用いる場合、まず、ロータリースクリーン20を用いて印刷により、ベルト10上に着色塗料を所定の形状に複数形成する。
ベルト上の各着色塗料Tの形状については特に制限されず、各種の柄や文字などが挙げられる。また、印刷により所定の形状に形成された着色塗料Tの膜厚については特に制限されないが、10〜300μmが好ましい。
【0032】
ベルト10上の各着色塗料Tは、ベルト10の走行に従って分散媒Bへと移動する。すると、各着色塗料Tと分散媒Bとが接触し、各着色塗料Tの表面がゲル化することで被膜を形成したゲル化物G(表面がゲル化した着色塗料)となり、ベルト10から剥がれ、分散媒B中にゲル化物Gが分散した模様塗料組成物が得られる。
【0033】
分散媒B中でゲル化物Gがベルト10から容易に剥がれるようにするために、分散媒B中でベルト10とゲル化物Gの界面に固定刃や回転刃などの剥離刃(図示略)を当接させ、ベルト10からゲル化物Gを剥離してもよい。
【0034】
また、本発明では、ベルト10上の各着色塗料Tを乾燥させずに分散媒Bへ移動させることが好ましい。ベルト10上の各着色塗料Tを乾燥させた後に分散媒Bへ移動させると、乾燥した状態の着色塗料Tの表面がゲル化したゲル化物が分散媒B中に存在することになる。このゲル化物は圧力等によって変形しにくいため、スプレー塗装時にノズルが詰まるおそれがある。また、乾燥機等を用いた乾燥時のコストがかかる。
着色塗料Tを乾燥させずに分散媒Bへ移動させれば、未乾燥の着色塗料Tの表面がゲル化したゲル化物Gが分散媒B中に存在することになるので、スプレー塗装してもゲル化物Gがスプレー時の圧力でノズルから吐出する際に変形しやすく、ノズルが詰まりにくい。なお、ノズルから吐出した後のゲル化物Gは、圧力から開放されるため元の形状に戻る。また、着色塗料Tを乾燥させずに分散媒Bへ移動させれば、乾燥時のコストがかからないため、低コストで模様塗料組成物を製造できる。
【0035】
また、本発明では、ゲル化物Gが乾燥していないことが好ましい。乾燥したゲル化物Gは、スプレー塗装時に圧力等によって変形しにくいため、ノズルが詰まるおそれがある。
【0036】
ゲル化物Gと、ゲル化物Gが分散した分散媒Bは、そのまま模様塗料組成物として用いてもよいし、ゲル化物Gのみを他の塗料に配合して用いてもよい。
また、本発明では、印刷により複数の異なる形状(柄や文字)の着色塗料を形成し、各着色塗料を分散媒に移動させてもよい。
さらに、着色塗料を色の異なるものに交換すれば、色調の異なるゲル化物が分散媒に複数混在した模様塗料組成物が得られる。なお、色調の異なるゲル化物が分散媒に複数混在した模様塗料組成物を「多彩模様塗料組成物」ともいう。
多彩模様塗料組成物を製造する方法としては、1色目のゲル化物が分散した分散媒中へ、所定の形状に形成された2色目以降の着色塗料を移動させ、1つの分散媒中で複数の色調の異なるゲル化物を混合する方法;ゲル化物が分散した分散媒をゲル化物の色毎に複数製造し、所望の色合いとなるように各分散媒を混合する方法などが挙げられる。
【0037】
また、模様塗料組成物には、必要に応じてバインダの役割を果たす樹脂エマルションや公知の添加剤が任意成分として含まれてもよい。
樹脂エマルションとしては、エマルション塗料の説明において先に例示した樹脂エマルションが挙げられる。中でも、アクリル樹脂が好ましい。
樹脂エマルションの含有量は、模様塗料組成物100質量%中、50質量%以下が好ましく、より好ましくは20〜40質量%である。樹脂エマルションの含有量が上記範囲内であれば、模様塗料組成物の塗装作業性がよく、耐久性のよい塗膜が得られる。
【0038】
添加剤としては、エマルション塗料の説明において先に例示した添加剤が挙げられる。
【0039】
<作用効果>
以上説明した本発明の模様塗料組成物の製造方法によれば、着色塗料の表面がゲル化したゲル化物を、担体上に着色塗料を印刷により所定の形状に複数形成し、該所定の形状に形成された各着色塗料を分散媒に移動させることで製造する。このように印刷により着色塗料を所定の形状に形成することで、設計通りの模様を形成できる。よって、本発明により得られる模様塗料組成物からは、所望とする模様の塗膜を再現性よく形成でき、色再現性にも優れる。
しかも、印刷により所定の形状に形成される着色塗料は膜状であるため、得られるゲル化物も膜状である。よって、膜状のゲル化物を含有する模様塗料組成物を塗装対象物にスプレー塗装しても、ゲル化物が跳ね返りにくい。
【0040】
また、特許文献1に記載のように、ゲル化物を分散機で撹拌しながら細分化する方法の場合、連続生産するのは困難であるが、本発明であれば印刷により所定の形状の着色塗料を形成するため、連続生産が可能である。また、印刷速度やベルトの走行速度を速めれば、短時間で模様塗料組成物を製造できる。
さらに、本発明であれば印刷により所定の形状の着色塗料を形成するため、所望とする形状(例えば柄や文字)の着色塗料を容易に形成できる。
【0041】
<用途>
本発明により得られる模様塗料組成物の用途については特に制限はなく、モルタル、コンクリート、窯業系素材、プラスチック、金属、木材、紙など、種々の対象物に塗布することが可能である。塗布時における模様塗料組成物の塗布量には特に制限はないが、通常、300〜600g/m
2となるように塗布するのが好ましい。また、塗装方法にも制限はなく、刷毛、こて、ローラ、スプレーなどの公知の方法で塗装することができ、塗装後に常温乾燥、加熱乾燥することができる。
【0042】
<他の実施形態>
本発明の模様塗料組成物の製造方法は上述した方法に限定されない。
上述した方法では、スクリーン印刷により着色塗料を所定の形状に形成しているが、他の印刷方法により着色塗料を所定の形状に形成してもよい。他の印刷方法としては、例えばフレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷などが挙げられる。ただし、印刷される着色塗料の膜厚を容易に設定することができる点で、スクリーン印刷が好ましい。
【0043】
また、
図1に示す模様塗料組成物の製造装置1はベルト10の一部が分散媒Bに浸漬しているが、例えば
図2に示す模様塗料組成物の製造装置2のようにベルト10は分散媒Bに浸漬していなくてもよい。
図2に示す模様塗料組成物の製造装置2では、ベルト10が水平になるように1対の支持ローラ11a、11bにより支持されている。また、他方の支持ローラ11bの下方に分散媒Bを貯留した回収タンク30が設置されている。
【0044】
ベルト10の一部を分散媒Bに浸漬させない場合には、
図2に示すように、所定の形状に形成された各着色塗料Tを分散媒Bへ移動させる前に、ベルト10上の各着色塗料Tに噴霧手段40を用いて分散媒を吹き付けることが好ましい。分散媒を吹き付けることで、ベルト10上の各着色塗料Tと分散媒とが接触し、各着色塗料Tの表面がゲル化することで被膜を形成し、ゲル化物G(表面がゲル化した着色塗料)となる。なお、ベルト10上の着色塗料Tの膜厚は10〜300μm程度であるため、分散媒が着色塗料Tの裏面(ベルト10との接触面)にまで浸透すると考えられる。なお、ベルト10上の各着色塗料Tに分散媒Bを吹き付ける場合、回収タンク30には分散媒Bが貯留されていなくてもよいが、貯留されていることが好ましい。
ベルト10上でゲル化した各着色塗料(ゲル化物G)は、ベルト10の走行方向が略垂直方向になるまで移動したときに、ベルト10から剥がれて落下し、分散媒Bを貯留した回収タンク30に回収される。このとき、剥離刃12をベルト10とゲル化物Gとの界面に当接させ、ゲル化物Gをベルト10から剥離してもよい。また、剥離刃12の代わりに、ベルト10とゲル化物Gとの界面に分散媒や空気を吹き付けて、吹き付け時の圧力でゲル化物Gをベルト10から剥離してもよい。
【0045】
また、上述した方法では、担体としてベルトを用いているが、例えば
図3に示す模様塗料組成物の製造装置3のように、担体として回転ドラム50を用いてもよい。回転ドラム50としては、表面が剥離性を有するものが好ましい。
なお、
図3に示す模様塗料組成物の製造装置3では、回転ドラム50の下部が分散媒Bに浸漬しているが、回転ドラムは分散媒に浸漬していなくてもよい。ただし、この場合は、回転ドラム50上の各着色塗料Tが分散媒Bへ移動する前に、各着色塗料Tに分散媒を吹き付けることが好ましい。
また、上述した方法と同様に、剥離刃(図示略)を回転ドラム50とゲル化物との界面に当接させ、ゲル化物を回転ドラム50から剥離してもよい。回転ドラム50が分散媒に浸漬していない場合は、剥離刃の代わりに分散媒や空気を吹き付けてもよい。
【0046】
また、上述した方法では、印刷により着色塗料を所定の形状に形成しているが、例えば
図4に示すように、ベルト10上にコータ60などの塗布手段を用い、例えば10〜300μmの膜厚になるように着色塗料を塗布し、この塗布した帯状の着色塗料Mを切断刃70などの切断手段で切断して所定の形状の着色塗料Tを形成してもよい。なお、分散媒へ所定の形状の着色塗料Tを移動させる前に、着色塗料に分散媒を吹き付ける場合、分散媒を吹き付けるタイミングは着色塗料を切断する前でもよいし、後でもよい。だたし、塗膜の表面がゲル化している方が切断しやすいため、切断の前に分散媒を吹き付けることが好ましい。
また、切断刃70の形状を替えることで、所望とする形状(例えば柄や文字)の着色塗料を容易に形成できる。
【0047】
また、上述した方法では、担体としてベルトやドラムなど、それ自身が走行または回転するものを用いているが、例えばシート状の担体を用いてもよい。この場合、シート状の担体上に模様を形成した後、該担体を分散媒に浸漬させ、必要に応じて剥離刃等を用いて、担体からゲル化物を剥離すればよい。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、例中「部」とは「質量部」を、「%」とは「質量%」を示す。
【0049】
「着色塗料の製造」
<エマルション塗料の製造>
アクリル樹脂エマルション(日本アクリル化学株式会社製、「プライマルAC−38」)38部と、非イオン性グアルゴム誘導体の1.5%水溶液28.5部(固形分0.43部)とを混合し、混合溶液(a)を調製した。
別途、着色顔料としてチタン白10部と、アニオン性高分子分散剤(日本アクリル化学株式会社製、「オロタン731」)1部と、水22.5部とを混合し、混合溶液(b)を調製した。
混合溶液(a)に混合溶液(b)を加え撹拌し、エマルション塗料を得た。
【0050】
<キトサン含有塗料の製造>
乳酸の5%水溶液95部に、キトサン5部を徐々に加えて90分間撹拌し、キトサン溶液を調製した。得られたキトサン溶液100部に、茶系顔料1部を添加して20分間撹拌し、キトサン含有塗料を得た。
【0051】
「分散媒の製造」
<分散媒(1)の製造>
含水ケイ酸マグネシウムの4%水中分散液25部(固形分1部)に、重ホウ酸アンモニウムの5%水溶液5部(固形分0.25部)と、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの1%水溶液25部(固形分0.25部)を加え撹拌混合した後、水45部を加えて希釈し、分散媒(1)を得た。
【0052】
<分散媒(2)の製造>
20%塩化カルシウム水溶液50部と、1.5%メチルセルロース水溶液50部とを混合し、分散媒(2)を得た。
【0053】
「実施例1」
着色塗料としてエマルション塗料を用い、分散媒として分散媒(1)を用い、製造装置として
図1に示す模様塗料組成物の製造装置1を用いた。
まず、ベルト10上に、ロータリースクリーン20を用いて印刷により、縦10mm、横10mm、厚さ50μmの白色の着色塗料Tを複数形成した。ベルト10の走行によりベルト10上の各着色塗料Tを分散媒Bへと移動させて、各着色塗料Tと分散媒Bとを接触させ、各着色塗料Tの表面をゲル化した白色のゲル化物G(表面がゲル化した着色塗料)とした。分散媒B中でベルト10とゲル化物Gとの界面に金属製の剥離刃を当接させてベルト10からゲル化物Gを剥離し、分散媒B中にゲル化物Gが分散した模様塗料組成物を得た。
得られた模様塗料組成物に含まれる白色のゲル化物Gは、大きさや形状が揃っていた。
【0054】
「実施例2」
着色塗料としてキトサン含有塗料を用い、分散媒として分散媒(2)を用いた以外は、実施例1と同様にして模様塗料組成物を得た。
得られた模様塗料組成物に含まれる茶色のゲル化物Gは、大きさや形状が揃っていた。
【0055】
「実施例3」
着色塗料としてエマルション塗料を用い、分散媒として分散媒(1)を用い、製造装置として
図2に示す模様塗料組成物の製造装置2を用いた。
まず、ベルト10上に、ロータリースクリーン20を用いて印刷により、縦10mm、横10mm、厚さ50μmの白色の着色塗料Tを複数形成した。分散媒Bへ各着色塗料Tを移動させる前に、ベルト10上の各着色塗料Tに噴霧手段40を用いて分散媒を吹き付けてベルト10上の各着色塗料Tと分散媒とを接触させ、各着色塗料Tの表面をゲル化した白色のゲル化物G(表面がゲル化した着色塗料)とした。ゲル化物Gが、ベルト10の走行方向が略垂直方向になるまで移動したときに、剥離刃12をベルト10とゲル化物Gとの界面に当接させ、ゲル化物Gをベルト10から剥離して落下させ、分散媒Bを貯留した回収タンク30に回収し、分散媒B中にゲル化物Gが分散した模様塗料組成物を得た。
得られた模様塗料組成物に含まれる白色のゲル化物Gは、大きさや形状が揃っていた。
【0056】
「実施例4」
着色塗料としてキトサン含有塗料を用い、分散媒として分散媒(2)を用いた以外は、実施例3と同様にして模様塗料組成物を得た。
得られた模様塗料組成物に含まれる茶色のゲル化物Gは、大きさや形状が揃っていた。
【0057】
「実施例5」
図3に示す模様塗料組成物の製造装置3を用いた以外(すなわち、担体としてベルトに替えてドラムを用いた以外)は、実施例1と同様にして模様塗料組成物を得た。
得られた模様塗料組成物に含まれる白色のゲル化物Gは、大きさや形状が揃っていた。
【0058】
「実施例6」
着色塗料としてキトサン含有塗料を用い、分散媒として分散媒(2)を用い、製造装置として
図3に示す模様塗料組成物の製造装置3を用いた以外は、実施例1と同様にして模様塗料組成物を得た。
得られた模様塗料組成物に含まれる茶色のゲル化物Gは、大きさや形状が揃っていた。
【0059】
「実施例7」
図4に示すように、ベルト10上にコータ60を用い、膜厚50μmになるようにエマルション塗料(着色塗料)を塗布し、この塗布した帯状の着色塗料Mを10mm角の格子状の切断刃で切断し、縦10mm、横10mm、厚さ50μmの白色の着色塗料Tを形成した以外は、実施例1と同様にして模様塗料組成物を得た。
得られた模様塗料組成物に含まれる白色のゲル化物Gは、大きさや形状が揃っていた。
【0060】
「実施例8」
着色塗料としてキトサン含有塗料を用い、分散媒として分散媒(2)を用い、
図4に示すように、ベルト10上にコータ60を用い、膜厚50μmになるようにキトサン含有塗料(着色塗料)を塗布し、この塗布した帯状の着色塗料Mを10mm角の格子状の切断刃で切断し、縦10mm、横10mm、厚さ50μmの茶色の着色塗料Tを形成した以外は、実施例1と同様にして模様塗料組成物を得た。
得られた模様塗料組成物に含まれる茶色のゲル化物Gは、大きさや形状が揃っていた。
【0061】
「比較例1」
分散媒(1)40部に、エマルション塗料60部を加えて、粒径が10mmになるまでディソルバで撹拌しながら細分化して、着色塗料の表面をゲル化した白色のゲル化物が分散媒(1)に分散した模様塗料組成物を得た。
得られた模様塗料組成物には、1mm角以下の微細なゲル化物と、10mm角のゲル化物と、20mm×3mmの紐状のゲル化物とが混在しており、ゲル化物の大きさにバラつきがあった。