(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の装置は、カテーテル内に集光レンズなどを配置することによってカテーテルの構造が複雑になるという問題がある。また、パルスレーザの焦点位置が、血管壁の厚みや血管内におけるカテーテルの位置に依存するので、パルスレーザの焦点位置を所望の位置に精度よく位置決めすることが難しいという問題もある。例えば、血管壁の厚みには個人差があるので、予めアブレーションを行う個人の血管壁の厚みを計測して、その血管壁の厚みに集光レンズの焦点位置を調整する必要があるという問題や、カテーテルが血管の中心からずれて位置決めされると、血管の周方向において、パルスレーザの焦点位置が血管壁の厚み方向に対して一様にならないという問題が生じ得る。
【0007】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、生体の管腔周囲の深部の組織に対して加熱を行うとともに、管腔内膜への熱損傷を抑制することができるアブレーションデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るアブレーションデバイスは、シャフトと、上記シャフトの先端側に設けられており、弾性的に膨張可能なバルーンと、上記シャフトに沿って形成されており、上記バルーンへ流体を流入させるための第1ルーメンと、上記シャフトに沿って形成されており、上記バルーンから流体を流出させるための第2ルーメンと、上記シャフトに沿って設けられており、上記バルーン内へレーザ光を導く導光材と、上記バルーン内において上記導光材から出射されるレーザ光を上記導光材が延出された第1方向と交差する方向へ反射又は拡散させる拡散部材と、上記バルーン内に設けられて上記拡散部材を囲繞しており、その内面側に上記拡散部材により反射又は拡散されたレーザ光を反射又は遮断する反射層を有し、かつ当該レーザ光を当該反射層の外側へ透過させる透過窓を有する管状部材と、を具備する。
【0009】
生体の管腔へ挿入されたアブレーションデバイスは、所望の位置においてバルーンが膨張され、第1ルーメン及び第2ルーメンを通じてバルーンの内部空間に流体が還流される。導光材に照射されたレーザ光がバルーン内へ導かれ、拡散部材によって第1方向と交差する方向へ反射又は拡散される。反射又は拡散されたレーザ光は、管状部材の反射層によって反射される。一方、反射又は拡散されたレーザ光は、管状部材の透過窓から管状部材の外側、すなわち管腔の周囲の組織へ向かって進む。管腔の内面にはバルーンが接触しており、レーザ光による内面への加熱は、バルーン内を還流する流体によって冷却されることにより抑制される。
【0010】
上記管状部材は、上記透過窓の上記第1方向を軸線とする周方向の位置又は上記第1方向の位置の少なくとも一方が変位する向きへ移動可能であってもよい。
【0011】
管状部材が移動されることによって、透過窓の位置が変位するので、管腔の周囲の組織に対して一様にレーザ光が照射される。
【0012】
上記拡散部材及び上記管状部材は、上記導光材と一体に設けられたものであってもよい。
【0013】
導光材の基端側が操作されることによって、管状部材の移動が制御できる。
【0014】
上記透過窓は、上記第1方向へ延びる螺旋形状であってもよい。
【0015】
これにより、管腔の周囲の組織に対して一様にレーザ光が照射される。
【0016】
上記透過窓は、上記第1方向に対して異なる位置に複数が設けられたものであってもよい。
【0017】
これにより、管腔の周囲の組織に対して一様にレーザ光が照射される。
【0018】
上記複数の透過窓は、上記第1方向を軸線とする周方向に対してそれぞれが異なる位置に配置されたものであってもよい。
【0019】
第1方向において、周方向へ進むレーザ光の向きが異なるので、第1方向の特定の位置にレーザ光が集中しない。これにより、管腔の内面への加熱を抑えることができる。
【0020】
上記複数の透過窓は、各透過範囲が上記第1方向において一部が重複するものであってもよい。
【0021】
これにより、管腔の第1方向においてレーザ光の未照射箇所が生じない。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、生体の管腔周囲の深部の組織に対して加熱を行うとともに、管腔内膜への熱損傷を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様を変更できることは言うまでもない。
【0025】
[アブレーションシステム10]
図1に示されるように、アブレーションシステム10は、アブレーションデバイス11、レーザ光発生手段12、流体還流手段13、駆動機構14、及び制御手段15を有する。
【0026】
[アブレーションデバイス11]
図1,2に示されるように、アブレーションデバイス11は、先端側にバルーン21が設けられたシャフト22を有する。シャフト22は、軸線方向101に長尺な部材である。シャフト22は、軸線方向101に対して湾曲するように弾性的に撓み得る管体である。湾曲していない状態のシャフト22が延びる方向が、本明細書において軸線方向101と称される。軸線方向101が第1方向に相当する。
【0027】
シャフト22には、イン側チューブ27及び光ファイバ29が挿通されている。シャフト22の外径及び内径は、軸線方向101に対して必ずしも一定である必要はないが、操作性の観点からは、先端側より基端側の剛性が高いことが好ましい。シャフト22は、合成樹脂やステンレスなど、バルーンカテーテルに用いられている公知の材質が使用でき、また、必ずしも1種類の素材のみから構成される必要はなく、他素材からなる複数の部品が組み付けられて構成されていてもよい。
【0028】
なお、本実施形態において基端側とは、アブレーションデバイス11が血管に挿入される向きに対して後ろ側(
図1における右側)をいう。先端側とは、アブレーションデバイス11が血管に挿入される向きに対して前側(
図1における左側)をいう。
【0029】
シャフト22の先端側には、バルーン21が設けられている。バルーン21は、内部空間に流体(液体、気体)が流入されることにより弾性的に膨張し、内部空間から流体が流出されることにより収縮するものである。
図1,2においては、収縮した状態のバルーン21が示されている。バルーン21の内部空間は、シャフト22の内部空間及びイン側チューブ27の内部空間とそれぞれ連通されている。イン側チューブ27を通じてバルーン21の内部空間に流体が流入されると、バルーン21は、軸線方向101の中央が最大径となるように軸線方向101と直交する径方向へ膨張する。バルーン21が膨張を維持する流体の圧力を保持する程度の流量の流体がバルーン21へ流入されつつ、シャフト22の内部空間を通じてバルーン21から流体が流出されることにより、バルーン21において流体が還流される。バルーン21の材質や、バルーン21とシャフト22との固定方法は、バルーンカテーテルにおいて用いられる公知の材質及び方法が使用できる。イン側チューブ27の内部空間が第1ルーメンに相当し、シャフト22の内部空間が第2ルーメンに相当する。
【0030】
シャフト22の基端側にはアウト用ポート28が設けられている。アウト用ポート28は、シャフト22の内部空間と連続している。シャフト22の内部空間を通じて、バルーン21に還流される流体がアウト用ポート28から流出する。
【0031】
シャフト22の基端にはハブ23が設けられている。ハブ23には、光ファイバ29が挿通されている。ハブ23には、光ファイバ29の挿通口とは別個にイン用ポート26が設けられている。イン用ポート26は、イン側チューブ27の内部空間と連続している。イン側チューブ27の内部空間を通じて、バルーン21に還流される流体がイン用ポート26から流入する。
【0032】
図2に示されるように、シャフト22の外側には、ガイドワイヤ用チューブ24が設けられている。ガイドワイヤ用チューブ24は、シャフト22の軸線方向101の長さに対して十分に短い。なお、ガイドワイヤ用チューブ24は、必ずしもシャフト22の外側に設けられる必要はない。例えば、本実施形態のようなラピッドエクスチェンジ型に代えて、モノレール型が採用されるのであれば、ガイドワイヤ用チューブ24はシャフト22の内部空間に挿通されていてもよい。
【0033】
シャフト22の内部に挿通されたイン側チューブ27は、先端側がバルーン21の内部空間へ至っており、基端側がイン用ポート26に接続されている。イン側チューブ27の先端は、バルーン21の先端側に設けられた先端チップ25に接続されている。イン側チューブ27の先端チップ25付近には、イン側チューブ27の周壁を貫通する開口30,31が設けられている。開口30,31は、イン側チューブ27の内部空間を流通する流体がバルーン21内へ流出するためのものであり、軸線方向101の周方向に対して異なる位置に配置されている。
【0034】
先端チップ25には、造影剤を素材としたマーカーが設けられている。造影剤としては、例えば、硫酸バリウム、酸化ビスマス、次炭酸ビスマスなどが挙げられる。
【0035】
光ファイバ29は、ハブ23からイン側チューブ27の内部に挿通されて、バルーン21の内部まで延出されている。光ファイバ29は、レーザ光発生手段12において発生され、光ファイバ29の基端に照射されたレーザ光を先端側へ伝波するものである。光ファイバ29は、レーザ光の波長において全反射する屈折率を有するものが適宜作用され、具体的には、単一モードファイバ、偏波保持ファイバ、マルチモードファイバ、イメージ伝送用バンドルファイバが挙げられる。光ファイバ29が導光材に相当する。
【0036】
図2及び
図3に示されるように、イン側チューブ27の内部には、光ファイバ29の先端面32に隣接して拡散部材33が設けられている。拡散部材33は、円柱形状の部材であって軸線方向101の長さは、バルーン21の軸線方向101の長さより短い。拡散部材33は、光ファイバ29の先端面32から出射されるレーザ光を透過させ、かつレーザ光の進行方向が変化するように、すなわち軸線方向101から軸線方向101と交差する方向へ拡散させるものである。拡散部材33として、例えば石英系のガラスなどが採用されるが、その材質は特に限定されない。拡散部材33は、光ファイバ29に連結されて一体にされており、イン側チューブ27の内部空間において、光ファイバ29と共に回転又はスライド可能である。なお、拡散部材33は、屈折によりレーザ光の進行方向を変化させるものだけでなく、反射によってレーザ光の進行方向を変化させるものであってもよい。
【0037】
図2及び
図3に示されるように、イン側チューブ27の内部には、拡散部材33の外側を囲繞するようにして管状部材34が設けられており。管状部材34は先端側及び基端側、つまり先端チップ25側及びハブ23側がそれぞれ封止された円管形状の部材であり、光ファイバ29の先端面32及び拡散部材33の外側を覆っている。管状部材34の軸線方向101の長さは、バルーン21の軸線方向101の長さより短い。管状部材34は、基端側に挿通された光ファイバ29と連結されて一体にされており、イン側チューブ27の内部空間において、光ファイバ29と共に回転又はスライド可能である。つまり、光ファイバ29、拡散部材33及び管状部材34は、イン側チューブ27の内部空間において、一体に回転又はスライド可能である。
【0038】
管状部材34は、レーザ光を透過可能な樹脂層35の内側に反射層36が積層されたものである。樹脂層35は、例えばポリイミドなどの合成樹脂である。反射層36は、レーザ光を反射する金属などであり、例えば樹脂層35の内面側に金メッキが施されることにより形成される。反射層36は、拡散部材33と対向する内面側と封止された先端側に存在する。なお、反射層36は、必ずしもレーザ光を全反射する必要はなく、レーザ光の一部又は全部を吸収するものであってもよい。
【0039】
管状部材34は、円管形状の周壁に形成された透過窓37を有する。透過窓37は、反射層36の一部が除去されることにより形成されている。例えば、反射層36である金メッキが施されるときに、透過窓37に該当する樹脂層35の内面がマスキングされることによって形成される。透過窓37は、軸線方向101に沿って延びる細長な螺旋形状である。透過窓37において、管状部材34の内部空間側から外側へレーザ光が透過可能である。
【0040】
光ファイバ29、拡散部材33及び管状部材34は、イン側チューブ27に対して一体として軸線方向101周りに回転可能であり、かつ軸線方向101へスライド可能である。光ファイバ29、拡散部材33及び管状部材34の回転及びスライドは、ハブ23から延出された光ファイバ29の基端側が直接又は間接に操作されることによって制御される。具体的には、光ファイバ29の基端側に駆動機構14からの駆動力が付与されることによって、光ファイバ29が回転及びスライドされる。これにより、管状部材34の透過窓37の軸線方向101に対する周方向の位置及び軸線方向101の位置が変位する。
【0041】
なお、各図には示されてないが、バルーン21内におけるイン側チューブ27の外壁などに温度センサが設けられてもよい。温度センサとしては、バルーン21の内部に設置可能なものであれば、例えば熱電対などの公知のものを用いることができる。温度センサから延出されたケーブルが外部へ導かれることによって、バルーン21内の流体の温度をモニタリングすることができる。また、シャフト22に第3ルーメンを設けて、内視鏡、IVUS、OCTなどのイメージング部材が内挿されてもよい。
【0042】
レーザ光発生手段12は、公知のレーザ光発生装置を用いることができる。レーザ光発生手段12は、例えば、励起源の光がレーザ媒質に与えられ、光共振器の反射により発振されて出力するものである。レーザ光発生手段12から出力されるレーザ光は、連続波であることが好ましく、また、レーザ光の波長としては400〜2000nmの範囲であることが好ましい。特に、レーザ光の波長が800〜1500nmの範囲(915nm、980nm、1470nm)である場合に、局所的な温度上昇が確認でき、腎動脈の内膜を適切に加温できる。レーザ光発生手段12は、光ファイバ29の基端と接続されており、レーザ光発生手段12から出力されたレーザ光は光ファイバ29の基端面に照射される。
【0043】
流体還流手段13は、ローラポンプやシリンジポンプを有する公知の装置を用いることができる。流体還流手段13は、アブレーションデバイス11のイン用ポート26及びアウト用ポート28とチューブなどの流路を介して接続されている。流体還流手段13は、流体を貯留するタンクを有しており、ポンプの駆動力によってタンクからイン用ポート26に所望の流量及び圧力で流体を供給する。また、アウト用ポート28から流出した流体は、タンクに還流させてもよいし、廃液として廃棄してもよい。また、流体還流手段13は、タンク内の流体を冷却するための冷却装置を備えていてもよい。流体は特に限定されないが、腎動脈のアブレーションを目的としては、生理食塩水と造影剤の混合溶液が好ましい。
【0044】
駆動機構14は、光ファイバ29の基端側を軸線方向101に対して回転及びスライドさせる駆動力を付与するものであり、モータやスライダなどを組み合わせた機構が採用され得る。なお、駆動機構14は必須ではなく、光ファイバ29の基端側を施術者がハンドリングすることにより、光ファイバ29が軸線方向101に対して回転及びスライドされてもよい。
【0045】
制御手段15は、例えば、予めプログラムされたプロトコルに基づいて、レーザ光発生手段12からレーザ光を所定の光強度及び時間で発生させたり、流体還流手段13の流量及び圧力を制御したり、駆動機構14の駆動量及びタイミングを制御したりするものである。制御手段15は、これらの動作制御を行うための演算装置を備えている。
【0046】
[アブレーションデバイス11の使用方法]
以下に、腎動脈40の神経41を切断するためのアブレーションシステム10の使用方法が説明される。
【0047】
図1に示されるように、アブレーションデバイス11は、レーザ光発生手段12、流体還流手段13、及び駆動機構14と接続されている。また、レーザ光発生手段12、流体還流手段13、及び駆動機構14は制御手段15と接続されている。制御手段15には、腎動脈40に対してアブレーションを行うに適したプログラムが予め設定されている。
【0048】
アブレーションデバイス11は、先端側から腎動脈40に挿入される。腎動脈40には、X線透視下で造影を行いながら、ガイドワイヤが予め挿通されて目的部分へ到達されている。このようなガイドワイヤの挿通は、例えば、特開2006−326226号公報や特開2006−230442号公報に開示された公知の手法によりなされる。
【0049】
アブレーションデバイス11が腎動脈40へ挿入されるときには、バルーン21には流体が圧入されておらず、バルーン21は収縮した状態である。この状態のアブレーションデバイス11の先端から、ガイドワイヤがガイドワイヤ用チューブ24に挿通される。そして、アブレーションデバイス11が、ガイドワイヤに沿って腎動脈40に挿入される。腎動脈40におけるアブレーションデバイス11の挿入位置は、例えば、先端チップ25に設置されたマーカをX線下により確認することによって把握される。
【0050】
図4に示されるように、アブレーションデバイス11が腎動脈40の目的部分まで挿入されると、制御手段15によって流体還流手段13が駆動され、流体還流手段13からイン側チューブ27を通じて流体がバルーン21へ流入されてバルーン21が拡張する。また、バルーン21からシャフト22を通じてアウト用ポート28から流体が流体還流手段13に還流される。バルーン21に対する流体の還流は、制御手段15によって流体還流手段13が制御されることによって、所望の流速及び圧力となるように管理されている。また、流体還流手段13に貯留されている流体は、腎動脈40の内膜を冷却するに適した温度に管理されている。
【0051】
続いて、制御手段15によってレーザ光発生手段12及び駆動機構14が駆動され、レーザ光発生手段12から発生されたレーザ光42が、光ファイバ20を通じてバルーン21内へ伝波され、拡散部材33によって軸線方向101と交差する複数の方向へ拡散される。拡散されたレーザ光42は、管状部材34の反射層36によって、管状部材34の内部空間においてを反射される。そして、管状部材34の透過窓37に到達したレーザ光42が透過窓37を透過し、更にイン側チューブ27及びバルーン21を透過して、腎動脈40の血管壁へ照射され、血管壁を透過して神経41に到達する。これにより、管状部材34の透過窓37によって螺旋形状にレーザ光42が神経41へ照射されて、神経41がアブレーションされる。なお、レーザ光の強度や照射時間は、制御手段15によって管理されている。
【0052】
また、制御手段15によって駆動機構14が駆動されることによって、レーザ光42を伝波する光ファイバ29が、軸線方向101に対して回転されつつスライドされる。光ファイバ29が回転されると共に拡散部材33及び管状部材34も回転されるので、螺旋形状の透過窓37を透過するレーザ光42の向きが軸線方向101の周方向に変位する。これにより、腎動脈40の周方向に存在する神経41に対して一様にアブレーションを行うことができる。また、光ファイバ29がスライドされると共に透過窓37もスライドされるので、透過窓37を透過するレーザ光42が軸線方向101に変位する。これにより、腎動脈40が延びる方向(軸線方向101と同じ方向である。)に存在する神経41に対して一様にアブレーションを行うことができる。
【0053】
なお、光ファイバ29の回転及びスライドのパターンは、制御手段15におけるプログラミングによって任意に設定できる。また、光ファイバ29の回転又はスライドを一時停止したときにレーザ光発生手段12からレーザ光42を照射することによって、腎動脈40の神経41に対してスポット状にレーザ光42を照射することもできる。つまり、腎動脈40が延びる方向の所定の範囲の全周に存在する神経41に対して、レーザ光42を照射するタイミングや順序などは、任意に設定することができる。
【0054】
一方、透過窓37を透過したレーザ光42は、腎動脈40の神経41に到達する前に、腎動脈40の内膜側の組織にも照射されることとなる。腎動脈40の内膜には拡張されたバルーン21が接触しており、バルーン21内に流体が還流されている。この流体の冷却効果によって、腎動脈40の内膜側の加熱が抑制される。したがって、光ファイバ29のスライド範囲は、バルーン21が腎動脈40の内膜に接触している範囲とすることが好適である。
【0055】
[本実施形態の作用効果]
前述された実施形態によれば、腎動脈40の神経41に対してアブレーションを行うとともに、腎動脈40の内膜への加熱を抑制して、内膜への熱損傷を抑制することができる。
【0056】
また、管状部材34が回転及びスライドされることによって、透過窓37の位置が変位するので、腎動脈40の神経41に対して一様にレーザ光42が照射される。
【0057】
また、拡散部材33及び管状部材34が光ファイバ29の先端側に一体に設けられており、光ファイバ29がシャフト22に対して、軸線方向101に沿って移動かつ回転可能なので、アブレーションデバイス11が簡易な構成で実現される。また、シャフト22の基端側において光ファイバ29を介して拡散部材33及び管状部材34の移動及び回転を操作することができる。
【0058】
[変形例]
なお、前述された実施形態では、管状部材34の透過窓37が軸線方向101へ延びる螺旋形状であるが、透過窓37の形状は適宜変更されてもよい。例えば、
図5に示されるように、円形の透過窓38が軸線方向101に異なる位置に複数が設けられてもよい。各透過窓38の各透過範囲D1,D2,D3,D4は、軸線方向101において隣り合う透過窓38と一部が重複している。また、各透過窓38は、軸線方向101の周方向に対する位置が異なっている。
【0059】
このような複数の透過窓38によっても、管状部材34が回転及びスライドされることによって、腎動脈40の神経41に対して一様にレーザ光が照射される。
【0060】
また、各透過窓38を透過して進行するレーザ光42の向きは、軸線方向101の周方向に対して向きが異なるので、軸線方向101の周方向の特定の向きにレーザ光42が集中しない。これにより、腎動脈40の内面への加熱を抑えることができる。
【0061】
また、各透過窓38は、各透過範囲D1,D2,D3,D4が軸線方向101において一部が重複するので、腎動脈40の軸線方向101においてレーザ光42の未照射箇所が生じ難い。
【0062】
なお、前述された実施形態及び変形例では、光ファイバ29の先端に拡散部材33及び管状部材34が一体に設けられているが、管状部材34のみが回転及びスライド可能に構成されて、管状部材34を操作する操作部がハブ23へ延出されていてもよい。例えば、管状部材34とイン側チューブ27とが連結されており、イン側チューブ27の回転及びスライドに管状部材34が連動するように構成されていてもよい。
【0063】
また、前述された実施形態及び変形例では、光ファイバ29がイン側チューブ27内を挿通されているが、光ファイバ29は、先端側がバルーン21内に到達していれば、挿通経路は限定されない。したがって、例えば、シャフト22の内部空間に挿通されていてもよいし、シャフト22の外側からバルーン21内へ挿入されていてもよい。
【0064】
また、前述された実施形態及び変形例では、管状部材34が回転及びスライドされるが、管状部材34は、回転のみ又はスライドのみ可能に構成されていてもよい。例えば、螺旋形状の透過窓37を有する管状部材34が、バルーン21の軸線方向101の長さと同程度に設けられていれば、管状部材34が回転されると、バルーン21の範囲において腎動脈40の神経41に対して一様にレーザ光42を照射することができる。
【0065】
また、前述された実施形態及び変形例では、透過窓37,38は、樹脂層35から構成されているが、樹脂層35及び反射層36を貫通する孔として透過窓が構成されていてもよい。