特許第6183157号(P6183157)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183157
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】充電制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/04 20060101AFI20170814BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20170814BHJP
   B60L 3/00 20060101ALI20170814BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   H02J7/04 L
   H02J7/00 P
   B60L3/00 S
   B60L11/18 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-226179(P2013-226179)
(22)【出願日】2013年10月31日
(65)【公開番号】特開2015-89246(P2015-89246A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】梅谷 龍彦
(72)【発明者】
【氏名】両國 義幸
【審査官】 田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−075282(JP,A)
【文献】 特開2010−035280(JP,A)
【文献】 特開2010−028963(JP,A)
【文献】 特開2011−217549(JP,A)
【文献】 特開平10−051968(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0200257(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0019729(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00− 7/12
7/34− 7/36
B60L 3/00
B60L 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源を用いた電動車のバッテリへの充電を制御する充電制御装置であって、
前記バッテリが満充電状態となる充電完了時刻を推定する充電完了時刻推定手段と、
前記電動車の現在位置周辺における外気温の変化予測値を取得する予測値取得手段と、
前記充電完了時刻推定手段によって推定された充電完了時刻と、前記予測値取得手段によって取得された変化予測値に基づいて、前記充電完了時刻における前記電動車の現在位置周辺の外気温である推定外気温を推定する外気温推定手段と、
前記外気温推定手段によって推定された前記推定外気温に基づいて、前記バッテリの充電終了時機を決定する充電制御手段と、を備え、
前記充電制御手段は、前記推定外気温が所定温度以上の場合、前記電動車への充電を前記バッテリが満充電状態となるよりも早く終了させ、前記推定外気温が所定温度未満の場合、前記バッテリが満充電状態となるまで前記電動車への充電を継続させる、
ことを特徴とする充電制御装置。
【請求項2】
前記充電制御手段は、前記推定外気温が所定温度以上の場合には前記バッテリの充電率が100%よりも小さい第1の所定値になると充電を終了させ、
前記充電完了時刻推定手段は、前記充電率が前記第1の所定値以下である第2の所定値となった際に前記充電完了時刻を推定し、
前記外気温推定手段は、前記充電率が前記第2の所定値となった際に前記推定外気温を推定し、
前記充電制御手段は、前記充電率が前記第2の所定値となった際に前記充電終了時機を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の充電制御装置。
【請求項3】
前記充電完了時刻推定手段は、前記バッテリへの充電の開始時に前記充電完了時刻を推定し、
前記外気温推定手段は、前記バッテリへの充電の開始時に前記推定外気温を推定し、
前記充電制御手段は、前記バッテリへの充電の開始時に前記充電終了時機を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の充電制御装置。
【請求項4】
気象観測地点において過去に観測された所定時間毎の外気温の平均値を記憶する記憶手段をさらに備え、
前記予測値取得手段は、GPSセンサを用いて前記電動車の現在位置を特定し、前記現在位置に最も近い前記気象観測地点における前記平均値を前記記憶手段から取得する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の充電制御装置。
【請求項5】
前記外気温推定手段は、前記電動車の現在位置の標高を特定し、前記現在位置に最も近い前記気象観測地点との標高差に基づいて前記平均値を補正して前記推定外気温を推定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の充電制御装置。
【請求項6】
前記電動車の現在位置を含む地域の天気予報データを受信する受信手段をさらに備え、
前記予測値取得手段は、GPSセンサを用いて前記電動車の現在位置を特定し、前記変化予測値としての前記天気予報データを前記受信手段を介して取得する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の充電制御装置。
【請求項7】
前記電動車周辺の外気温を測定する外気温センサをさらに備え、
前記外気温推定手段は、前記外気温センサによって測定された前記電動車周辺の外気温に基づいて前記変化予測値を補正して前記推定外気温を推定する、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の充電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車のバッテリへの充電を制御する充電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力を用いて走行する電気自動車やプラグインハイブリット自動車などの電動車では、車両の外装部に充電口を設け、この充電口から外部電源を供給することにより、車両内のバッテリの充電をおこなうようにしている。ここで、バッテリは温度によって特性が変化し、高温状態かつ高SOC状態が継続すると劣化が進みやすくなることが知られている。すなわち、高温時に満充電状態となるまでバッテリを充電すると、ポリエチレン性のセパレータが酸化し、導電性を持つ事象(ポリエン化)が発生しやすくなる。このような充電によるバッテリの劣化を防止するため、たとえば下記特許文献1では、充電開始時における電動車周囲の外気温を検出し、外気温が所定値より高い場合には、充電量を小さくする、または充電速度を遅くするようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−51809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、ユーザは充電完了時にはバッテリが満充電状態となっていることを想定しており、また、航続可能距離を伸ばすためにも、バッテリの充電は可能な限り満充電状態となるまでおこなうことが好ましい。ここで、バッテリの劣化に影響を与えるパラメータとして、バッテリが高SOC状態から満充電状態となる充電終盤期間の外気温が挙げられる。上記引用文献1では、バッテリの劣化が進みやすい充電終盤期間の外気温を考慮しておらず、適切な制御をおこなえない可能性がある。
【0005】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、バッテリの劣化を防止しつつ効率的に充電をおこなうことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した問題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明にかかる充電制御装置は、外部電源を用いた電動車のバッテリへの充電を制御する充電制御装置であって、前記バッテリが満充電状態となる充電完了時刻を推定する充電完了時刻推定手段と、前記電動車の現在位置周辺における外気温の変化予測値を取得する予測値取得手段と、前記充電完了時刻推定手段によって推定された充電完了時刻と、前記予測値取得手段によって取得された変化予測値に基づいて、前記充電完了時刻における前記電動車の現在位置周辺の外気温である推定外気温を推定する外気温推定手段と、前記外気温推定手段によって推定された前記推定外気温に基づいて、前記バッテリの充電終了時機を決定する充電制御手段と、を備え、前記充電制御手段は、前記推定外気温が所定温度以上の場合、前記電動車への充電を前記バッテリが満充電状態となるよりも早く終了させ、前記推定外気温が所定温度未満の場合、前記バッテリが満充電状態となるまで前記電動車への充電を継続させる、ことを特徴とする。
請求項2の発明にかかる充電制御装置は、前記充電制御手段は、前記推定外気温が所定温度以上の場合には前記バッテリの充電率が100%よりも小さい第1の所定値になると充電を終了させ、前記充電完了時刻推定手段は、前記充電率が前記第1の所定値以下である第2の所定値となった際に前記充電完了時刻を推定し、前記外気温推定手段は、前記充電率が前記第2の所定値となった際に前記推定外気温を推定し、前記充電制御手段は、前記充電率が前記第2の所定値となった際に前記充電終了時機を決定する、ことを特徴とする。
請求項3の発明にかかる充電制御装置は、前記充電完了時刻推定手段は、前記バッテリへの充電の開始時に前記充電完了時刻を推定し、前記外気温推定手段は、前記バッテリへの充電の開始時に前記推定外気温を推定し、前記充電制御手段は、前記バッテリへの充電の開始時に前記充電終了時機を決定する、ことを特徴とする。
請求項4の発明にかかる充電制御装置は、気象観測地点において過去に観測された所定時間毎の外気温の平均値を記憶する記憶手段をさらに備え、前記予測値取得手段は、GPSセンサを用いて前記電動車の現在位置を特定し、前記現在位置に最も近い前記気象観測地点における前記平均値を前記記憶手段から取得する、ことを特徴とする。
請求項5の発明にかかる充電制御装置は、前記外気温推定手段は、前記電動車の現在位置の標高を特定し、前記現在位置に最も近い前記気象観測地点との標高差に基づいて前記平均値を補正して前記推定外気温を推定する、ことを特徴とする。
請求項6の発明にかかる充電制御装置は、前記電動車の現在位置を含む地域の天気予報データを受信する受信手段をさらに備え、前記予測値取得手段は、GPSセンサを用いて前記電動車の現在位置を特定し、前記変化予測値としての前記天気予報データを前記受信手段を介して取得する、ことを特徴とする。
請求項7の発明にかかる充電制御装置は、前記電動車周辺の外気温を測定する外気温センサをさらに備え、前記外気温推定手段は、前記外気温センサによって測定された前記電動車周辺の外気温に基づいて前記変化予測値を補正して前記推定外気温を推定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、電動車が満充電状態となる充電完了時における推定外気温が所定温度以上の場合、電動車への充電をバッテリが満充電状態となるよりも早く終了させ(抑制充電)、推定外気温が所定温度未満の場合、バッテリが満充電状態となるまで電動車への充電を継続させる(フル充電)。これにより、バッテリの劣化につながる可能性がある高温時のフル充電を回避することができ、バッテリの性能を長期に渡って維持することができる。
請求項2の発明によれば、バッテリの充電率(SOC)が第2の所定値になったタイミングで充電完了時刻の推定等をおこなうので、充電開始直後に上記推定等をおこなうよりも充電完了時刻や推定外気温の推定精度を向上させることができ、抑制充電をおこなうか否かを適切に判断することができる。また、バッテリの劣化が進みにくいため安全が確保される低SOC状態では、外気温が所定温度以上であっても充電が許可されるので、必要最低限の航続距離を確保できる。
請求項3の発明によれば、充電開始時に充電完了時刻の推定や抑制充電をおこなうか否かの判断等をおこなうので、ユーザが充電開始時に充電所要時間や抑制充電をおこなうか否かを把握することができる。
請求項4の発明によれば、外気温の変化予測値として、気象観測地点において過去に観測された所定時間毎の外気温の平均値を用いるので、充電制御装置に各地域における外気温の変化予測値を記憶することができ、充電制御装置が通信手段を備えることなく外気温の変化予測値を得ることができる。
請求項5の発明によれば、電動車の現在位置と気象観測地点との標高差に基づいて外気温の平均値を補正して推定外気温を推定するので、推定外気温の推定精度を向上させ、抑制充電をおこなうか否かを適切に判断することができる。
請求項6の発明によれば、外気温の変化予測値として天気予報データを用いるので、実際の気象条件を加味した変化予測値を得ることができ、推定外気温の推定精度を向上させ、抑制充電をおこなうか否かを適切に判断することができる。
請求項7の発明によれば、電動車周辺の外気温に基づいて変化予測値を補正して推定外気温を推定するので、変化予測値と実際の外気温とのずれを補正することができ、推定外気温の推定精度を向上させ、抑制充電をおこなうか否かを適切に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態にかかる充電制御装置10の構成を示すブロック図である。
図2】外気温の変化予測値の一例を示すグラフである。
図3図2の変化予測値に対して補正をおこなった結果を示すグラフである。
図4図3に示す変化予測値に基づく充電終了時機の判定結果を示す表である。
図5】充電制御装置10の処理の手順を示すフローチャートである。
図6】充電制御装置10の処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる充電制御装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
(実施の形態)
図1は、実施の形態にかかる充電制御装置10の構成を示すブロック図である。本実施の形態では、充電制御装置10は、電気自動車である電動車20に搭載されている。電動車20は、走行用バッテリ202に蓄積された電力を用いてモータ204を駆動して走行する。なお、電動車20は、エンジンとモータとを用いて走行するプラグインハイブリット車であってもよい。
【0011】
電動車20の走行用バッテリ202は、外部電源を供給する外部充電装置30によって充電される。より詳細には、外部充電装置30の充電装置側コネクタ302を、電動車20の車体外部等に設けられた車両側コネクタ206に接続し、走行用バッテリ202の充電をおこなう。車両側コネクタ206を介して供給された電力は、充電器208を介して走行用バッテリ202に蓄電される。走行用バッテリ202には、バッテリ温度を検出するバッテリ温度センサ210が設けられている。なお、電動車20には、走行用バッテリ202と別に車内の電装機器等を駆動させる補機用バッテリ(図示なし)が設けられている。補機バッテリの充電は、たとえば走行用バッテリ202に蓄積された電力を降圧して供給することによっておこなう。
【0012】
充電制御装置10は、外部電源を用いた電動車20のバッテリ(走行用バッテリ202)への充電を制御する。より詳細には、充電制御装置10は、走行用バッテリ202の充電率(SOC:State Of Charge)を監視しつつ、SOCが目標充電率となるように充電器208における充電電圧や充電電流量を制御する。
充電制御装置10には、GPSセンサ212、外気温センサ214、高度計216、カレンダー218、温度情報データベース220が接続されている。
GPSセンサ212は、GPS衛星からの発振電波を受信して、電動車20の現在位置を特定する。GPSセンサ212は、たとえば電動車20の現在位置を緯度経度情報として特定する。
外気温センサ214は、電動車20周辺の外気温を測定する。
高度計216は、電動車20の現在位置の標高を測定する。なお、高度計216として気圧計を用いてもよい。また、充電制御装置10に各地点における標高データを含む地図データを記憶しておき、GPSセンサ212によって特定された現在位置の標高データを読み出すことによって現在位置の標高を特定してもよい。
カレンダー218は、現在の年月日および時刻を特定する。
温度情報データベース220(記憶手段)は、全国各地に設けられた気象観測地点において過去に観測された外気温の平均値を記憶する。温度情報データベース220には、各気象観測地点の位置情報(緯度経度情報)および過去所定期間における時間単位の外気温の平均値が月日ごとに記録されている。
【0013】
充電制御装置10は、機能的には、充電完了時刻推定手段102、予測値取得手段104、外気温推定手段106および充電制御手段108を含んで構成される。
充電制御装置10は、具体的には、CPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成される。上記各機能部は、前記CPUにより前記制御プログラムを実行することによって実現する。
【0014】
充電完了時刻推定手段102は、走行用バッテリ202が満充電状態となる充電完了時刻を推定する。充電完了時刻推定手段102は、現在時刻、走行用バッテリ202の現在のSOC、充電の種類(定電圧(CV)充電か定電流(CC)充電か、急速充電か普通充電かなど)、充電電流量等に基づいて、充電時に走行用バッテリ202のSOCが100%(満充電状態)となる充電完了時刻を推定する。
【0015】
予測値取得手段104は、電動車20の現在位置周辺における外気温の変化予測値を取得する。本実施の形態では、外気温の変化予測値は、温度情報データベース220(記憶手段)に記録された過去に観測された外気温の平均値とする。予測値取得手段104は、GPSセンサ212を用いて特定された電動車の現在位置に基づいて、現在位置に最も近い気象観測地点における平均値を温度情報データベース220から取得する。より詳細には、予測値取得手段104は、カレンダー218を参照して現在の年月日および時刻を特定し、温度情報データベース220から現在の月日と同じ月日における時間単位の外気温の平均値を、少なくとも充電完了時刻を含む時刻分まで読み出す。
【0016】
図2は、外気温の変化予測値の一例を示すグラフである。図2において、縦軸は外気温、横軸は時刻である。図2に示すように、変化予測値は、たとえば1時間ごとの外気温の値として得られる。変化予測値の周期は、1時間ごとに限らず、たとえば3時間ごとや30分ごとなどであってもよい。
【0017】
また、予測値取得手段104で取得する外気温の変化予測値は、電動車20の現在位置を含む地域の天気予報データであってもよい。この場合、予測値取得手段104は、GPSセンサ212を用いて電動車の現在位置を特定し、無線通信装置(受信手段)等を用いて現在位置を含む地域の天気予報データを取得する。天気予報データには所定時間ごと(たとえば1時間ごと)の予想気温が含まれているため、気象状況を反映した外気温の変化予測値を得ることができる。
【0018】
また、予測値取得手段104で取得する外気温の変化予測値は、外気温センサ214で測定し、記録した温度データであってもよい。たとえば、外気温センサ214で測定した温度データを、GPSセンサ212で特定した電動車20の現在位置と関連付けて記録しておき、月日や季節ごとなどで統計することによって、外気温の変化予測値として用いることができる。特に、自宅等、毎回同じ場所で充電をおこなう場合には、ピンポイントの変化予測値を得ることができ、精度よく外気温を推定することができる。
【0019】
外気温推定手段106は、充電完了時刻推定手段102によって推定された充電完了時刻と、予測値取得手段104によって取得された変化予測値に基づいて、充電完了時刻における電動車20の現在位置周辺の外気温(以下、「推定外気温」という)を推定する。
図2を用いて具体的に説明すると、充電完了時刻が14時の場合は、充電完了時刻における推定外気温は約47.5℃と推定することができる。
【0020】
このとき、外気温推定手段106は、外気温の変化予測値に対して補正をおこなった上で推定外気温を推定してもよい。
具体的には、たとえば、外気温推定手段106は、電動車20の現在位置の標高を特定し、現在位置に最も近い気象観測地点との標高差に基づいて変化予測値(当該気象観測地点で観測された気温の平均値)を補正(高度補正)するようにしてもよい。より詳細には、たとえば温度情報データベース220の気象観測地点の位置情報に当該地点の標高も記憶しておき、電動車20の現在位置との標高差を特定する。そして、高度が100m上がるごとに気温は0.6℃下がるものとして平均値に対して補正をおこなう。
【0021】
また、外気温推定手段106は、外気温センサ214によって測定された電動車20周辺の外気温に基づいて変化予測値を補正するようにしてもよい。具体的には、現在事項の電動車20周辺の外気温と現在時刻に対応する変化予測値とを比較して、その差分だけ現在時刻以降の変化予測値を補正する。
【0022】
図3は、図2の変化予測値に対して補正をおこなった結果を示すグラフである。図3のグラフにおいて、縦軸は外気温、横軸は時刻である。
図3の曲線Aが補正前の変化予測値(図2の曲線A)であり、曲線B,C,Dが補正後の変化予測値である。曲線B,C,Dに示す補正後の変化予測値は、曲線Aに示す補正前の変化予測値を、たとえば標高差や実際の外気温との差分に応じて平行移動させたものである。
このような補正をおこなうことによって、より正確な推定外気温を推定することが可能となる。図3を用いて具体的に説明すると、たとえば補正前の変化予測値が曲線Aの場合、充電完了時刻が14時とすると推定外気温は約47.5℃である。一方、補正の結果、変化予測値が曲線Dとなった場合、充電完了時刻が14時の場合は推定外気温は約42.5℃と推定することができる。
また、補正前の変化予測値と補正後の変化予測値とが所定値以上(例えば15℃以上)乖離している場合は、電動車20が空調の効いた建物内で充電されていると判断して、充電目標SOCを満充電状態(SOC100%)に設定するようにしてもよい。
【0023】
充電制御手段108は、外気温推定手段106によって予測された推定外気温に基づいて、走行用バッテリ202の充電終了時機を決定する。充電制御手段108は、推定外気温が所定温度以上の場合、電動車20への充電を走行用バッテリ202が満充電状態となるよりも早く終了させ、推定外気温が所定温度未満の場合、走行用バッテリ202が満充電状態となるまで電動車20への充電を継続させる。
図3を用いて具体的に説明すると、上記所定温度を45℃とした場合、充電完了時刻における推定外気温が45℃以上の場合は、走行用バッテリ202が満充電状態となるよりも充電を早く終了させる。また、充電完了時刻における推定外気温が45℃未満の場合、走行用バッテリ202が満充電状態(SOC100%)となるまで電動車20への充電を継続させる。
図4は、図3に示す変化予測値に基づく充電終了時機の判定結果を示す表であり、丸印(〇)は走行用バッテリ202が満充電状態となるまで充電を継続させることを示し、バツ印(×)は走行用バッテリ202が満充電状態となるよりも充電を早く終了させることを示す。
たとえば、充電完了時刻が14時の場合、外気温の変化予測値が曲線Dの場合は走行用バッテリ202が満充電状態となるまで電動車20への充電を継続させるが、これ以外の曲線A,B,Cの場合は走行用バッテリ202が満充電状態となるよりも充電を早く終了させる。
【0024】
充電を早期に終了させる場合の充電終了タイミングは任意であるが、本実施の形態では走行用バッテリ202のSOCが95%となるまでとする。すなわち、充電制御手段108は、外気温が所定温度以上の場合には走行用バッテリ202のSOCが100%よりも小さい第1の所定値である95%になると充電を終了させる。
また、充電完了時刻推定手段102は、充電中に走行用バッテリ202のSOCが第1の所定値である95%よりも小さい第2の所定値である90%となった際に充電完了時刻を推定する。さらに、外気温推定手段106は、SOCが第2の所定値である90%となった際に充電完了時刻における推定外気温を推定し、充電制御手段108は、SOCが第2の所定値である90%となった際に充電終了時機を決定する。
すなわち、本実施の形態では、走行用バッテリ202のSOCが90%になるまで充電をおこない、SOCが90%になった段階で満充電状態となるまで充電を継続させるか(フル充電)、満充電状態となるよりも充電を早く終了させるか(抑制充電)を判断する。
なお、本実施例では第2の所定値を第1の所定値よりも小さい値としたが、第1の所定値と第2の所定値とを等しくしても良い。この場合、推定外気温が所定温度以上であると判断された際は直ちに充電を終了させる。
【0025】
図5は、充電制御装置10による処理の手順を示すフローチャートである。
図5のフローチャートにおいて、充電制御装置10は、電動車20が停車されキーオフ状態となるまで待機する(ステップS502:Noのループ)。電動車20がキーオフ状態となると(ステップS502:Yes)、外気温センサ214により検出された電動車20周辺の外気温を取得するとともに(ステップS504)、バッテリ温度センサ210により検出された走行用バッテリ202のバッテリ温度を取得する(ステップS506)。また、GPSセンサ212によって特定された電動車20の現在位置を取得する(ステップS508)。なお、電動車20周辺の外気温およびバッテリ温度の検出は、キーオン状態時にも継続しておこなっている。また、この時点でバッテリ温度等に異常があった場合は、充電をおこなわないように運転者等に対して報知する。
【0026】
充電制御装置10は、車両側コネクタ206に充電装置側コネクタ302が接続されて外部電源を用いた外部充電が開始されると(ステップS510:Yes)、走行用バッテリ202のSOCが90%以上となるまで(ステップS512:No)、充電を継続する(ステップS514)。なお、外部充電が開始されない場合には(ステップS510:No)、ステップS502に戻り、外気温などを検出しながら待機する。また、充電開始時には、充電目標SOCをたとえば100%(通常充電)に設定する。
【0027】
走行用バッテリ202のSOCが90%以上になると(ステップS512:Yes)、充電完了時刻推定手段102は、走行用バッテリ202が満充電状態となる充電完了時刻を推定する(ステップS516)。また、予測値取得手段104は、現在時刻から充電完了時刻までの外気温の変化予測値を温度情報データベース220から読み出す(ステップS518)。そして、外気温推定手段106は、充電完了時刻における電動車20の現在位置周辺の推定外気温を推定する(ステップS520)。
【0028】
充電制御手段108は、ステップS502で推定された推定外気温が所定温度以上か否かを判断する(ステップS522)。推定外気温が所定温度以上の場合(ステップS522:Yes)、充電制御手段108は、充電目標SOCを95%に設定する(ステップS524)。すなわち、走行用バッテリ202が満充電状態となるよりも充電を早く終了させるようにする。一方、推定外気温が所定温度未満の場合(ステップS522:No)、充電制御手段108は、充電目標SOCを100%に設定する(ステップS526)。すなわち、走行用バッテリ202が満充電状態となるまで充電を継続させる。
【0029】
充電制御手段108は、走行用バッテリ202のSOCが充電目標SOC以上になるまでは(ステップS528:No)、充電を継続させる(ステップS530)。そして、走行用バッテリ202のSOCが充電目標SOC以上になると(ステップS528:Yes)、走行用バッテリ202への充電を終了させ(ステップS532)、本フローチャートの処理を終了する。
【0030】
以上説明したように、実施の形態1にかかる充電制御装置10は、電動車20が満充電状態となる充電完了時における推定外気温が所定温度以上の場合、電動車への充電を走行用バッテリ202が満充電状態となるよりも早く終了させ(抑制充電)、推定外気温が所定温度未満の場合、走行用バッテリ202が満充電状態となるまで電動車への充電を継続させる(フル充電)。これにより、走行用バッテリ202の劣化につながる可能性がある高温時のフル充電を回避することができ、走行用バッテリ202の性能を長期に渡って維持することができる。
【0031】
また、充電制御装置10は、走行用バッテリ202のSOCが第2の所定値(本実施の形態では90%)になったタイミングで充電完了時刻の推定等をおこなうので、充電開始直後に上記推定等をおこなうよりも充電完了時刻や推定外気温の推定精度を向上させることができ、抑制充電をおこなうか否かを適切に判断することができる。
また、充電制御装置10は、外気温の変化予測値として、気象観測地点において過去に観測された所定時間毎の外気温の平均値を用いるので、充電制御装置10に各地域における外気温の変化予測値を記憶しておくことができ、充電制御装置10が通信手段を備えていない場合でも外気温の変化予測値を得ることができる。
【0032】
また、充電制御装置10において、電動車の現在位置と気象観測地点との標高差に基づいて外気温の平均値を補正して推定外気温を推定するようにすれば、推定外気温の推定精度を向上させ、抑制充電をおこなうか否かを適切に判断することができる。
また、充電制御装置10において、外気温の変化予測値として天気予報データを用いるようにすれば、実際の気象条件を加味した変化予測値を得ることができ、推定外気温の推定精度を向上させ、抑制充電をおこなうか否かを適切に判断することができる。
また、充電制御装置10において、電動車20周辺の外気温に基づいて変化予測値を補正して推定外気温を推定するようにすれば、変化予測値と実際の外気温とのずれを補正することができ、推定外気温の推定精度を向上させ、抑制充電をおこなうか否かを適切に判断することができる。さらに、空調が整備された建物や車庫等の内部で充電する際は、電動車20周辺の外気温に基づいて変化予測値を補正することで、建物外部が高温であったとしても満充電状態まで充電が可能となる。
【0033】
(実施の形態2)
実施の形態1では、充電制御装置10は、走行用バッテリ202に対する充電をSOCが第2の所定値となるまでおこなってからフル充電するか抑制充電するかを判断した。
実施の形態2では、走行用バッテリ202に対する充電の開始直後にフル充電するか抑制充電するかを判断する。すなわち、充電完了時刻推定手段102は、走行用バッテリ202への充電の開始時に充電完了時刻を推定し、外気温推定手段106は、走行用バッテリ202への充電の開始時に推定外気温を推定し、充電制御手段108は、走行用バッテリ202への充電の開始時に充電終了時機を決定する。
なお、実施の形態2における充電制御装置10の構成は、実施の形態1と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0034】
図6は、実施の形態2における充電制御装置10の処理の手順を示すフローチャートである。
図6のフローチャートにおいて、充電制御装置10は、電動車20が停車されキーオフ状態となるまで待機する(ステップS602:Noのループ)。電動車20がキーオフ状態となると(ステップS602:Yes)、外気温センサ214により検出された電動車20周辺の外気温を取得するとともに(ステップS604)、バッテリ温度センサ210により検出された走行用バッテリ202のバッテリ温度を取得する(ステップS606)。また、GPSセンサ212によって特定された電動車20の現在位置を取得する(ステップS608)。なお、電動車20周辺の外気温およびバッテリ温度の検出は、キーオン状態時にも継続しておこなっている。また、この時点でバッテリ温度等に異常があった場合は、充電をおこなわないように運転者等に対して報知する。
【0035】
充電制御装置10は、車両側コネクタ206に充電装置側コネクタ302が接続されて外部電源を用いた外部充電が開始されると(ステップS610:Yes)、充電完了時刻推定手段102は、走行用バッテリ202が満充電状態となる充電完了時刻を推定する(ステップS612)。また、予測値取得手段104は、現在時刻から充電完了時刻までの外気温の変化予測値を温度情報データベース220から読み出す(ステップS614)。そして、外気温推定手段106は、充電完了時刻における電動車20の現在位置周辺の推定外気温を推定する(ステップS616)。なお、ステップS610において、外部充電が開始されない場合には(ステップS610:No)、ステップS602に戻り、外気温などを検出しながら待機する。
【0036】
充電制御手段108は、ステップS616で推定した推定外気温が所定温度以上か否かを判断する(ステップS618)。推定外気温が所定温度以上の場合(ステップS618:Yes)、充電制御手段108は、充電目標SOCを95%に設定する(ステップS620)。すなわち、走行用バッテリ202が満充電状態となるよりも充電を早く終了させるようにする。一方、推定外気温が所定温度未満の場合(ステップS618:No)、充電制御手段108は、充電目標SOCを100%に設定する(ステップS622)。すなわち、走行用バッテリ202が満充電状態となるまで充電を継続させる。
【0037】
充電制御手段108は、走行用バッテリ202のSOCが充電目標SOC以上になるまでは(ステップS624:No)、充電を継続させる(ステップS626)。そして、走行用バッテリ202のSOCが充電目標SOC以上になると(ステップS624:Yes)、走行用バッテリ202への充電を終了させ(ステップS628)、本フローチャートの処理を終了する。
【0038】
以上説明したように、実施の形態2にかかる充電制御装置10は、充電開始時に充電完了時刻の推定や抑制充電をおこなうか否かの判断等をおこなうので、ユーザが充電開始時に充電所要時間や抑制充電をおこなうか否かを把握することができる。
【符号の説明】
【0039】
10……充電制御装置、20……電動車、30……外部充電装置、102……充電完了時刻推定手段、104……予測値取得手段、106……外気温推定手段、108……充電制御手段、202……走行用バッテリ、204……モータ、206……車両側コネクタ、208……充電器、210……バッテリ温度センサ、212……GPSセンサ、214……外気温センサ、216……高度計、218……カレンダー、220……温度情報データベース(記憶手段)、302……充電装置側コネクタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6