特許第6183178号(P6183178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183178
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】ドアチェック装置
(51)【国際特許分類】
   E05C 17/22 20060101AFI20170814BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   E05C17/22 A
   B60J5/04 K
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-245974(P2013-245974)
(22)【出願日】2013年11月28日
(65)【公開番号】特開2015-101947(P2015-101947A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100155767
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 憲志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 元彦
(72)【発明者】
【氏名】牧野 弘太郎
(72)【発明者】
【氏名】新美 優介
【審査官】 佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−117767(JP,U)
【文献】 実開昭58−104265(JP,U)
【文献】 特開2011−252282(JP,A)
【文献】 特開2006−291672(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0029644(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05C 17/22
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方端が車体に揺動可能に連結されるとともに、前記車体の開口を開閉するために前記車体に対して揺動可能に連結された車両ドア内に延出され、前記車両ドアが開作動したときに前記車両ドアから引き出されるように前記車両ドア内を相対移動するチェック棒と、
前記車両ドア内に固定されるとともに、前記車両ドア内に延出した前記チェック棒を挿通させるための挿通孔が形成されたケースと、
前記ケース内に配設され、前記ケース内で前記チェック棒に摺動抵抗力を付与する摺動部材と、
前記チェック棒の他方端に設けられ、前記車両ドアが全開位置まで開作動したときに前記ケースの前記挿通孔の周囲の壁面である当たり面に係合可能な係合面を有するストッパ部材と、を備え、
前記車両ドアが全開位置まで開作動したときに、前記係合面と前記当たり面との接触状態が、前記係合面のうち前記車両ドアの揺動中心位置から近い側の部分である内方部分が前記当たり面に当接し、遠い側の部分である外方部分と前記当たり面との間に隙間が形成される片当たり状態にされ、前記車両ドアが全開位置からさらに過開位置まで開作動したときに、前記係合面と前記当たり面との接触状態が、前記内方部分及び前記外方部分が共に前記当たり面に当接する両当たり状態にされる、ドアチェック装置。
【請求項2】
請求項1に記載のドアチェック装置において、
前記車両ドアが全開位置まで開作動したときに、前記係合面が前記当たり面に傾斜した状態で係合し、前記車両ドアが過開位置まで開作動したときに、前記係合面が前記当たり面に平行な状態で係合する、ドアチェック装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のドアチェック装置において、
前記摺動部材は、前記チェック棒の長手方向に垂直な面内にて前記チェック棒の両側面を挟み込むように構成され、
前記チェック棒には、前記両側面間の長さが前記一方端から前記他方端に向かうにつれて増加するようなテーパ部が形成されている、ドアチェック装置。
【請求項4】
請求項3に記載のドアチェック装置において、
前記テーパ部は、前記チェック棒の長手方向における中間部分から前記他方端まで形成されている、ドアチェック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアチェック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるドアチェック装置は、車両ドアの開閉動作に適度な抵抗力を与えるように構成される。また、特許文献1に見られるように、車両ドアが所定の開度で開いているときに車両ドアに作用する抵抗力が増加するように構成されるドアチェック装置も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−202415号公報
【発明の概要】
【0004】
(発明が解決しようとする課題)
ドアチェック装置は一般に、チェック棒及び車両ドア内に固定されたケースを備える。チェック棒は、その一方端が車体に揺動可能に連結されるとともに車両ドア内に延出される。チェック棒の他方端にはストッパ部材が設けられる。またケースには、車両ドア内のチェック棒を挿通する挿通孔が形成される。車両ドアが開作動したときに、チェック棒が車両ドア内から引き出されるように車両ドア内でケースを挿通しながら車両ドア及びケースに対して相対的に移動する。そして、車両ドアの開閉位置が全開位置に達したときに、チェック棒の他方端に設けられたストッパ部材がケースに係合する。斯かる係合によって車両ドアの全開位置からのさらなる開作動が規制される。
【0005】
ストッパ部材としては一般に、T字ストッパと呼ばれるものが採用される。このようなストッパ部材は、チェック棒の長手方向に垂直な方向における長さがケースの挿通孔の径よりも大きくなるように形成される。そして、車両ドアが全開位置まで開作動したときには、ストッパ部材は、ケースの挿通孔の周囲の壁面(当たり面)に係合する。
【0006】
また、車両ドアは、ヒンジ軸等により車体に揺動可能に連結されており、車体に対してヒンジ軸を中心として揺動することにより車体に設けられた開口を開閉する。したがって、車両ドアの開閉位置が全開位置からさらに開いて過開位置に至るように車両ドアが強く開かれた場合、ケースに係合しているストッパ部材が車両ドアの揺動中心位置を中心として回転しようとする。そのためストッパに係合しているケースの当たり面のうち、車両ドアの揺動中心から遠い側の部分(外方部分)に応力が強く作用する。その結果、上記外方部分が大きく変形する。このようにしてケースの当たり面が局所的に大きく変形した場合、ケース内の部品が変形するとともに、車両ドアの全開位置が大きく変化する等の不具合が生じる虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、車両ドアが過開位置まで開かれた場合であってもケースの局所的な変形を防止することができるよう構成されたドアチェック装置を提供することを目的とする。
【0008】
(課題を解決するための手段)
本発明は、一方端が車体に揺動可能に連結されるとともに、車体の開口を開閉するために車体に対して揺動可能に連結された車両ドア内に延出され、車両ドアが開作動したときに車両ドアから引き出されるように車両ドア内を相対移動するチェック棒と、車両ドア内に固定されるとともに、車両ドア内に延出したチェック棒を挿通させるための挿通孔が形成されたケースと、ケース内に配設され、ケース内でチェック棒に摺動抵抗力を付与する摺動部材と、チェック棒の他方端に設けられ、車両ドアが全開位置まで開作動したときにケースの挿通孔の周囲の壁面である当たり面に係合可能な係合面を有するストッパ部材と、を備え、車両ドアが全開位置まで開作動したときに、係合面と当たり面との接触状態が、係合面のうち車両ドアの揺動中心位置から近い側の部分である内方部分が当たり面に当接し、遠い側の部分である外方部分と当たり面との間に隙間が形成される片当たり状態にされ、車両ドアが全開位置からさらに過開位置まで開作動したときに、係合面と当たり面との接触状態が、内方部分及び外方部分が共に当たり面に当接する両当たり状態にされる、ドアチェック装置を提供する。この場合、車両ドアが全開位置まで開作動したときに、係合面が当たり面に傾斜した状態で係合し、車両ドアが過開位置まで開作動したときに、係合面が当たり面に平行な状態で係合するように構成されていると良い。
【0009】
本発明によれば、車両ドアの開閉位置が全開位置であるとき、ストッパ部材の係合面のうち、車両ドアの揺動中心位置から近い側の内方部分が係合面に当接し遠い側の外方部分と係合面との間に隙間が形成される。例えば、車両ドアの開閉位置が全開位置であるとき、係合面が当たり面に傾斜した状態で係合する。すなわち車両ドアの開閉位置が全開位置であるときにストッパ部材とケースが片当たり状態とされる。そして、車両ドアが過開位置まで開作動した場合、ストッパ部材の係合面の外方部分も内方部分も係合面に当接して両当たり状態にされる。例えば、車両ドアの開閉位置が過開位置であるとき、係合面が当たり面に平行な状態で係合する。このため車両ドアの開閉位置が過開位置であるときにストッパ部材とケースとの接触面積が大きくされるとともに、当たり面の全体に一様に係合面が当接することにより、ストッパ部材からケースに作用する応力が分散される。よって、ケースが局所的に大きく変形することを防止できる。その結果、ケース内の部材(例えば摺動部材)の大きな変形を防止することができるとともに、変形量が減少することによって、全開位置の大きな変化が防止される。
【0010】
また、前記摺動部材は、チェック棒の長手方向に垂直な面内にてチェック棒の両側面を挟み込むように構成されるとよい。そして、チェック棒には、両側面間の長さが一方端から他方端に向かうにつれて増加するようなテーパ部が形成されているとよい。この場合、テーパ部は、チェック棒の長手方向における中間部分から他方端まで形成されているとよい。
【0011】
これによれば、車両ドアが強い力で開作動された場合に、摺動部材がチェック棒のテーパ部を摺動することにより、車両ドアが全開位置に近づくにつれてチェック棒に作用する摺動抵抗力が大きくされる。そのため車両ドアが全開位置に達したときのストッパ部材とケースとの衝突速度を減じることができる。その結果、車両ドアが過開位置に達することを効果的に防止できるとともに、仮に車両ドアが過開位置に達したとしても、ケースに作用する応力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係るドアチェック装置が搭載される車両の概略図である。
図2図1のA部詳細図である。
図3】本実施形態に係るドアチェック装置を示す図である。
図4】車両ドアが開閉作動する場合における、チェック棒の相対移動状態を示す図である。
図5】本実施形態のドアチェック装置を用いた場合において、車両ドアが全開位置まで開作動したときのストッパ部材とケースとの係合状態を示す図である。
図6】本実施形態のドアチェック装置を用いた場合において、車両ドアが過開位置まで開作動したときのストッパ部材とケースとの係合状態を示す図である。
図7】従来のドアチェック装置を用いた場合において、車両ドアが全開位置まで開作動したときのストッパ部材とケースとの係合状態を示す図である。
図8】従来のドアチェック装置を用いた場合において、車両ドアが過開位置まで開作動したときのストッパ部材とケースとの係合状態を示す図である。
図9】ストッパ部材とケースとを片当たりさせるための様々な例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は本実施形態に係るドアチェック装置が搭載される車両の概略図である。図1に示す車両Vは車体Bおよび車両ドアDRを備える。車体Bの側方部に乗降用の開口OPが形成される。開口OPの車両前方の縁部(前縁部)FEに一対のドアヒンジH,Hが上下方向に沿って取り付けられる。一対のドアヒンジH,Hを介して車両ドアDRが車体Bに揺動可能に連結される。したがって、車両ドアDRは車体Bに形成された開口OPを開閉可能である。
【0014】
図2図1のA部を詳細に示す図である。図2に示すように、一対のドアヒンジH,Hはそれぞれ同軸のヒンジ軸H1、H1を備える。車両ドアDRの開閉時に車両ドアDRはヒンジ軸H1,H1を中心として車体Bに対して揺動する。また、前縁部FEにブラケットBRがボルト等の締結手段により固定される。このブラケットBRにピンPを介して、本実施形態に係るドアチェック装置の構成要素であるチェック棒2の一方端が連結される。一方端が車体Bに揺動可能に連結されたチェック棒2は、車両ドアDRの全閉時に車体Bの前縁部FEに対面する部分である車両ドアDRの前端部DEに形成された孔Sを経由して、車両ドアDR内に延出される。
【0015】
図3は、本実施形態に係るドアチェック装置1を示す図である。図3に示すように、ドアチェック装置1は、チェック棒2と、ケース3と、摺動部材4と、ストッパ部材5とを備える。なお、図3では、ケース3及び摺動部材4を断面図で示し、チェック棒2及びストッパ部材5を、ドアチェック装置1が車両に取付けられた場合における上面から見た図で示している。
【0016】
チェック棒2は細長い形状をなしており、その一方端2aは上述したように車体Bに揺動可能に固定される。チェック棒2の揺動中心位置が図3において点OCで示される。また、チェック棒2は直線状に形成されていても良いが、図3に示すように若干折れ曲がった部分を有していても良い。折れ曲がり量或いは折れ曲がり箇所等は、車両ドアDR内に延出されたチェック棒2が車両ドアDR内の収納部品と干渉しないように設計されると良い。
【0017】
ケース3は、ベース部31とカバー部32とを有する。ベース部31は、車両ドアDR内で車両ドアDRの前端部DEに固定される。ベース部31は、車両ドアDRの前端部DEに対面接触するとともに前端部DE固定される固定壁部311と、固定壁部311の外縁から車両ドアDR内に向けて図3の右方に延びた筒状の第1側壁部312とを有する。また、カバー部32は第2側壁部321と係止壁部322とを備える。第2側壁部321は筒状に形成され、第1側壁部312の内側に周方向に亘って対面した部分を有するとともに、上記対面した部分から車両ドアDR内に向けて図3の右方に延びている。係止壁部322は、第2側壁部321の図3において右方の端面から第2側壁部321の内側に折れ曲がっている。第1側壁部312と第2側壁部321との対面部分が連結されることにより、ベース部31とカバー部32が一体化される。
【0018】
係止壁部322の中央に第1挿通孔322aが形成される。第1挿通孔322aの径はチェック棒2の径よりも大きい。第1挿通孔322aに、車両ドアDR内に延出したチェック棒2が挿通する。また、ベース部31の固定壁部311に第2挿通孔311aが形成される。第2挿通孔311aの径もチェック棒2の径よりも大きい。第2挿通孔311aは、車両ドアDRの前端部DEに形成された孔Sと同じ位置に形成される。そして、第1挿通孔322aを挿通したチェック棒2が、第2挿通孔311a及び孔Sをさらに挿通して車両ドアDRから突出する。したがって、チェック棒2は、ケース3を貫通した状態で、その一方端2aにて車体B側に揺動可能に連結される。
【0019】
摺動部材4は、カバー部32の第2側壁部321の内側に取付けられる。摺動部材4は例えばゴム、樹脂等の弾性力を発揮する部材、あるいは摩擦係数の大きい材質で構成されるとよい。摺動部材4は、カバー部32を貫通するチェック棒2の側面に当接しており、チェック棒2が移動する際にチェック棒2に摺動抵抗力を付与する。図3からわかるように、摺動部材4は、チェック棒2の長手方向に垂直な面内の対向する2方向からチェック棒2の両側面を挟み込むようにカバー部32内に設けられる。図3に示す例では、チェック棒2を上方から見た場合におけるチェック棒2の両側にそれぞれ摺動部材4が配置され、一方の摺動部材がチェック棒2の一方の側面に当接し、他方の摺動部材がチェック棒2の他方の側面に当接する。
【0020】
ストッパ部材5はチェック棒2の他方端に設けられる。ストッパ部材5はチェック棒2と一体的に形成されていてもよいし、チェック棒2とは別部材として形成され、その後にチェック棒2に組み付けられていても良い。
【0021】
ストッパ部材5は、連結部51とヘッド部52とを有し、連結部51を介してヘッド部52がチェック棒2の他方端2bに連結される。ヘッド部52は、図3に示すように上面視にて台形形状を呈する。ヘッド部52のチェック棒2に近い側の端面である基端面521の上面視における長さは、遠い側の端面である先端面522の上面視における長さよりも長い。また、ヘッド部52の基端面521の上面視における長さは、カバー部32に形成された第1挿通孔322aの上面視における長さよりも長い。
【0022】
チェック棒2を図3に示す方向(上方)から見た場合において、チェック棒2の長手方向に垂直な方向に沿ったチェック棒2の両側面間の長さは、チェック棒2の一方端2aから長手方向の中間位置2cまでの領域では同一の長さD2である。一方、中間位置2cから他方端2bまでの領域では、他方端2bに近づくほど両側面間の長さが増加する。したがって、他方端2bにおける両側面間の長さD1が最も大きい。すなわち、チェック棒2の長手方向における中間位置2cから他方端2bまでの部分に、両側面間の長さが一方端から他方端に向かうにつれて増加するようなテーパ部2dが形成される。
【0023】
このような構成のドアチェック装置1において、車両ドアDRが車体Bの開口OPを開閉するために車体に対して揺動した場合、車体B側に揺動可能に連結されたチェック棒2の一方端2aの位置が、車両ドアDRに対して相対変位する。このとき車両ドアDR内に延出されたチェック棒2が車両ドアDR内で車両ドアDR及びケース3に対して相対的に移動する。
【0024】
図4は、車両ドアDRが開閉作動する場合における、チェック棒2の相対移動状態を示す図である。図4において車両ドアDRの揺動中心位置が点OBで示される。また、車両ドアDR側から見たチェック棒2の揺動中心位置が点OC1〜点OC5で示される。車両ドアDRが開作動していくにつれて、チェック棒2の揺動中心位置は、車両ドアDRから見た場合、点OC1、点OC2、点OC3、点OC4、点OC5をこの順で通過するように移動する。点OC1〜点OC5までの移動軌跡は、点OBを中心とした円弧を描く。
【0025】
チェック棒2の揺動中心位置の上記した移動に伴い、チェック棒2は車両ドアDR内で図4に示すように車両ドアDR及びケース2に対して相対移動する。具体的には、車両ドアDRが開作動するにつれて、チェック棒2は、車両ドアDR内から引き出されていくように、車両ドアDR及びケース3に対して相対移動する。このときチェック棒2の両側面をケース3内の摺動部材4が摺動することにより、チェック棒2の相対移動に対する抵抗力(摺動抵抗力)がチェック棒2に付与される。チェック棒2の相対移動に対する抵抗力は、車両ドアDRを開作動させる際に抵抗力として車両ドアDRに作用する。このため適度な抵抗力を受けながら車両ドアDRを開くことができる。
【0026】
また、車両ドアDRの開作動が進むにつれて、一対の摺動部材4,4のチェック棒2上での接触位置が、チェック棒2の一方端2a側から他方端2b側に向かって変化する。一対の摺動部材4,4がチェック棒2の一方端2aと中間位置2cとの間の領域を摺動しているときは、一対の摺動部材4,4に挟まれるチェック棒2の両側面間の長さが変化しない。よって、この領域を一対の摺動部材4,4が摺動している間は、チェック棒2には一定の押し付け力が摺動部材4,4から付与される。そのため一定の摺動抵抗力がチェック棒2に作用する。一方、一対の摺動部材4,4がチェック棒2の中間位置2cと他方端2bとの間のテーパ部2dを摺動しているときは、一対の摺動部材4,4のチェック棒2への接触位置がチェック棒2の他方端2bに向かうにつれて、チェック棒2の両側面間の長さが大きくなる。このため車両ドアDRの開作動に伴ってチェック棒2が車両ドアDRから引き出されていくにつれて、摺動部材4,4からチェック棒2に作用する押し付け力が増加する。このためチェック棒2に作用する摺動抵抗力が徐々に大きくなる。このように車両ドアDRの開作動時にチェック棒2に作用する摺動抵抗力を徐々に大きくすることにより、チェック棒2の移動速度が低下する。
【0027】
そして、チェック棒2の揺動中心位置が図4の点OC5に達したときに、車両ドアDRが全開位置まで開作動する。このときチェック棒2の他方端2bに設けられたストッパ部材5がケース3のカバー部32に係合することによって、車両ドアDRの全開位置が規定されるとともに、車両ドアDRの全開位置からの開作動が規制される。
【0028】
図5は、車両ドアDRが全開位置まで開作動した場合における、ストッパ部材5とケース3との係合状態を示す図である。車両ドアDRが全開位置まで開作動したときには、図5に示すように、ストッパ部材5のヘッド部52の基端面521が、ケース3のカバー部32の係止壁部322に形成された挿通孔322aの周囲の壁面である当たり面322bに傾斜した状態で係合する。具体的には、基端面521のうち、車両ドアDRの揺動中心位置(図4の点OB)から近い側の部分である内方部分Q1が当たり面322bに当接し、基端面521のうち車両ドアDRの揺動中心位置から遠い側の部分である外方部分Q2と当たり面322bとの間に隙間Gが生じるように、基端面521が当たり面322bに対して傾斜した状態で係合する。すなわち、車両ドアDRが全開位置まで開作動したときにおけるストッパ部材5とケース3との接触状態は、片当たり状態である。隙間Gは、1mm以上であるのが良いが、この限りでない。
【0029】
図6は、車両ドアDRが全開位置からさらに開作動して過開位置に達した場合における、ストッパ部材5とケース3との係合状態を示す図である。なお、車両ドアDRを強い力で開く(強開する)と、車両ドアDRの開閉位置が全開位置を越えて過開位置まで達することもある。
【0030】
車両ドアDRの開閉位置が全開位置から過開位置まで開作動した場合、ストッパ部材5がケース3に強当たりする。また、車両ドアDRの全開位置から過開位置までの開作動に伴い、チェック棒2の一方端が車両ドアDRの揺動中心位置を中心として移動するとともに、チェック棒2に連結したストッパ部材5が車両ドアDRの揺動中心位置を中心として円弧状に移動しようとする。このような場合、ストッパ部材5の基端面521のうち、車両ドアDRの揺動中心位置よりも遠い部分の移動量が近い部分の移動量よりも多い。
【0031】
ここで、車両ドアDRが全開位置であるときには、図5に示すようにストッパ部材5がケース3に片当たりしていて、ストッパ部材5の基端面521のうち車両ドアDRの揺動中心位置から近い側の内方部分Q1のみが当たり面322bに当接し、遠い側の外方部分Q2が浮いている。このような状態であるときに車両ドアDRが過開位置まで開作動すると、外方部分Q2も当たり面322bに当接するとともに、外方部分Q2が内方部分Q1よりも多く移動するためにストッパ部材5の基端面521とケース3の当たり面322bが平行にされる。つまり、車両ドアDRの開閉位置が過開位置に達したときに、ストッパ部材5とケース3との接触状態が両当たり状態にされるとともに、ストッパ部材5の基端面521とケース3の当たり面322bが平行にされる。このため車両ドアDRの開閉位置が過開位置に達したときにストッパ部材5とケース3との接触面積が大きくされるとともに、当たり面322bの全体に一様に基端面521が当接する。よって、ケース3に作用する応力が分散され、ケース3に作用する単位面積当たりの応力が軽減される。その結果、ケース3の局所的な大きな変形が防止されるとともに、変形量を小さくすることができる。
【0032】
図7は、従来のドアチェック装置を用いて車両ドアDRを全開位置まで開作動させた場合における、ストッパ部材5とケース3との係合状態を示す図である。従来のドアチェック装置を用いた場合、車両ドアDRが全開位置まで開作動したときに、ストッパ部材5のヘッド部52の基端面521が、ケース3のカバー部32の係止壁部322の当たり面322bに平行に係合する。つまり、基端面521のうち、車両ドアDRの揺動中心位置(図4の点OB)から近い側の内方部分Q1も遠い側の外方部分Q2も当たり面322bに当接する。すなわち、車両ドアDRが全開位置まで開作動したときに、ストッパ部材5はケース3に両当たりする。
【0033】
図8は、図7に示す状態からさらに車両ドアDRが開作動して過開位置に達した場合における、ストッパ部材5とケース3との係合状態を示す図である。車両ドアDRの開閉位置が過開位置まで開作動した場合、ストッパ部材5がケース3に強当たりする。ここで、従来のドアチェック装置を用いている場合、車両ドアDRが全開状態であるときに既にストッパ部材5がケース3に両当たりしているため、車両ドアDRの開閉位置が過開位置まで開作動した場合に、ストッパ部材5のうち車両ドアDRの揺動中心位置から遠い外方部分Q2の移動量が近い内方部分Q1の移動量よりも多いので、外方部分Q2にて強い応力が作用し、ケース3が外方部分Q2との接触部位にて大きく変形する。
【0034】
つまり、従来によれば、車両ドアDRが過開位置まで開作動したときに、ケース3に作用する応力が一部に集中するため、ケース3が局所的に変形するとともに、その変形量も非常に大きい。これに対し、本実施形態によれば、車両ドアDRが過開位置まで開作動したときに、ケース3に作用する応力が分散されるため、ケース3が変形するとしても全体的に変形して局所的な変形を回避できるとともに、応力分散によってその変形量も小さくできる。このため本実施形態によれば、車両ドアDRの開閉位置が過過位置に達したときにおけるケース3の変形を効果的に抑えることができる。
【0035】
以上のように、本実施形態のドアチェック装置1は、一方端2aが車体Bに揺動可能に連結されるとともに、車体Bの開口OPを開閉するために車体Bに対して揺動可能に連結された車両ドアDR内に延出され、車両ドアDRが開作動したときに車両ドアDRから引き出されるように車両ドアDR内を相対移動するチェック棒2と、車両ドアDR内に固定されるとともに、車両ドアDR内に延出したチェック棒2を挿通させるための挿通孔322aが形成されたケース3と、ケース3内に配設され、ケース3内でチェック棒2に摺動抵抗力を付与する摺動部材4と、チェック棒2の他方端2bに設けられ、車両ドアDRが全開位置まで開作動したときにケース3の挿通孔322aの周囲の壁面である当たり面322bに係合可能な基端面521(係合面)を有するストッパ部材5と、を備える。そして、車両ドアDRが全開位置まで開作動したときに、基端面521と当たり面322bとの接触状態が、基端面521のうち車両ドアDRの揺動中心位置から近い側の部分である内方部分Q1が当たり面322bに当接し、遠い側の部分である外方部分Q2と当たり面322bとの間に隙間Gが形成される片当たり状態にされ、車両ドアDRが全開位置からさらに過開位置まで開作動したときに、基端面521と当たり面322bとの接触状態が、内方部分Q1及び外方部分Q2が共に当たり面322bに当接する両当たり状態にされる。また、本実施形態に係るドアチェック装置1は、車両ドアDRが全開位置まで開作動したときに、ストッパ部材5の基端面521がケース3の当たり面322bに傾斜した状態で係合し、車両ドアDRが過開位置まで開作動したときに、基端面521が当たり面322bに平行な状態で係合するように構成されている。
【0036】
本実施形態によれば、車両ドアDRの開閉位置が全開位置であるときに、ケース3とストッパ部材5の外方部分Q2との間に隙間Gを形成させることによってストッパ部材5とケース3が片当たり状態とされる。そして、車両ドアDRが過開位置まで開作動した場合、ストッパ部材5とケース3とが両当たり状態にされる。このため車両ドアDRの開閉位置が全開位置よりも開いた過開位置であるときにストッパ部材5とケース3との接触面積が大きくされるとともに当たり面322bの全体に一様にストッパ部材5の基端面521を当接させることができる。このように接触面積を拡大してストッパ部材5からケース3に作用する応力を分散させることにより、ケース3の変形を抑えることができるとともに、ケース3の局所的な変形を防止することができる。
【0037】
また、ドアチェック装置1の設計時に上記の隙間Gを予め考慮することにより、偶然に生じる隙間によっては十分に奏し得ない上記の効果を奏することができるドアチェック装置を提供することができる。
【0038】
また、摺動部材4は、チェック棒2の長手方向に垂直な面内にてチェック棒2の両側面を挟み込むように構成される。そして、チェック棒2の長手方向における中間位置2cから他方端2bまでの部分に、両側面間の長さが一方端2aから他方端2bに向かうにつれて増加するようなテーパ部2dが形成されている。このため摺動部材4がチェック棒2のテーパ部2d上を摺動することにより、車両ドアが全開位置に近づくにつれてチェック棒2に作用する摺動抵抗力が大きくされる。よって、車両ドアDRが全開位置に達したときおけるストッパ部材5とケース3との衝突速度を減じることができる。その結果、車両ドアDRが過開位置まで開かれることを効果的に防止できるとともに、仮に車両ドアが過開位置まで開かれたとしても、ケース3に作用する応力を低減することができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態では、車両ドアDRが全開位置であるときにストッパ部材5とケース3とが片当たりしているが、片当たりさせるためのチェック棒2、ケース3及びストッパ部材5の形状は特に限定されない。例えば図9(a)に示すように直線状のチェック棒2の長手方向をケース3の当たり面322bに対して傾斜させることにより、ストッパ部材5とケース3とを片当たりさせても良い。また、図9(b)に示すように、チェック棒2の他方端2b側を折り曲げることにより、ストッパ部材5とケース3とを片当たりさせてもよい。また、図9(c)に示すように、チェック棒2の長手方向に直交する方向に対してストッパ部材5の基端面521を傾斜させることにより、ストッパ部材5とケース3とを片当たりさせても良い。さらに、図9(d)に示すように、ケース3の当たり面322bのうち外方部分Q2に対面する部分が内方部分Q1に対面する部分よりも短くなるようにケース3を形成することにより、ストッパ部材5とケース3とを片当たりさせても良い。また、上記実施形態では、車体Bの側方に設けられる車両ドアDRの開閉作動時に適用されるドアチェック装置について例示したが、バックドア等の、他のスイングドアの開閉作動時にも本発明のドアチェック装置が適用され得る。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、適宜変形可能である。
【符号の説明】
【0040】
1…ドアチェック装置、2…チェック棒、2a…一方端、2b…他方端、2c…中間位置、2d…テーパ部、3…ケース、31…ベース部、311…固定壁部、32…カバー部、321…第2側壁部、322…係止壁部、322a…第1挿通孔、322b…当たり面、4…摺動部材、5…ストッパ部材、51…連結部、52…ヘッド部、521…基端面(係合面)、G…隙間、H1…ヒンジ軸、OP…開口、Q1…内方部分、Q2…外方部分
図1
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図9