(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1の実施の形態〕
図1(a)、(b)は、それぞれ第1の実施の形態に係る発光装置1の垂直断面図と上面図である。
図1(a)の断面は、
図1(b)の線分A−Aに沿った断面である。
【0017】
発光装置1は、ケース4と、ケース4に含まれる基体3と、ケース4内に直列(一列)に配置される複数のLEDチップ2と、ケース4内のLEDチップ2を封止する封止樹脂5を有する。
【0018】
LEDチップ2は、チップ基板2aと、図示しない発光層を含む結晶層2bを含む。チップ基板2aは、例えば、サファイア基板等の絶縁基板、GaN基板等の導電基板である。結晶層2bは、チップ基板2a上にエピタキシャル結晶成長により形成された、例えばGaN系半導体からなる層であり、n型半導体層とp型半導体層に挟まれた発光層を有する。
【0019】
LEDチップ2は、結晶層2bが上方を向いたフェイスアップ型のLEDチップであってもよいし、結晶層2bが下方を向いたフェイスダウン型のLEDチップであってもよい。
【0020】
LEDチップ2の平面形状は四角形であり、チップ基板2aの向かい合う2つの側面の面方位が等しい。ここで、チップ基板2aの2組の向かい合う2つの側面のうち、劈開性の強い向かい合う2つの側面をS1、劈開性の弱い向かい合う2つの側面をS2とする。
【0021】
複数のLEDチップ2のうちの任意のLEDチップ2において、隣接する他のLEDチップ2に向いたチップ基板2aの側面は、全ての側面のうちで最も劈開性の強い面である。すなわち、任意のLEDチップ2において、チップ基板2aの全ての側面(側面S1と側面S2)のうち、最も劈開性の強い側面S1が隣接する他のLEDチップ2に向くように、複数のLEDチップ2が配置される。
【0022】
ウェハをダイシングして複数のLEDチップ2に分割する際、チップ基板2aを劈開性の強い面で分断すると、断面が平滑になる。そのため、側面S1は側面S2よりも平滑性が高く、光の全反射が起こりやすい。側面S1で反射された光は、例えば、LEDチップ2の上面又は側面S2から放出される。
【0023】
一方、側面S2は平滑性が低く、凹凸が多いため光が透過しやすい。すなわち、結晶層2bの発光層から発せられてチップ基板2aに入射した光は、側面S1よりも側面S2から放出されやすい。
図1(b)の白抜きの矢印は、光が多く放射される方向を模式的に表している。
【0024】
一般に、隣接する他のLEDチップに向いた側面から放出される光は、その隣接する他のLEDチップに入射し、吸収されてしまう場合がある。発光装置1においては、隣接する他のLEDチップ2に向いた側面S1から光が放出されにくいため、隣接する他のLEDチップ2に吸収されることによる光損失を低減し、発光装置1の光取出効率を向上させることができる。
【0025】
本実施の形態は、チップ基板2aの側面の劈開性の違いに起因する平滑性の違いを利用したものであるため、断面の平滑性に劈開性が強く影響する方法、すなわちウェハの劈開性を利用して分割する方法によりウェハをLEDチップ2に分割した場合に特に効果が発揮される。例えば、ウェハをダイシングブレードにより切断して分割する場合よりも、外力を加えて劈開して分割する場合の方が、効果が高い。
【0026】
以下に、一例として、チップ基板2aがGaN基板又はサファイア基板である場合の側面S1、S2について説明する。GaN基板及びサファイア基板の結晶系は六方晶系であり、m面すなわち{10−10}面と、a面すなわち{11−20}面を有する。m面とa面は直交し、GaN基板及びサファイア基板のm面はa面よりも劈開性が強い。このため、チップ基板2aがGaN基板又はサファイア基板である場合、側面S1がm面、側面S2がa面であるチップ基板2aを用いることができる。なお、側面S1がm面、側面S2がa面であるチップ基板2aの主面(上面及び下面)は、c面すなわち{0001}面である。
【0027】
なお、GaN基板又はサファイア基板よりも光を吸収しやすい性質を有するため、LEDチップ2から隣接する他のLEDチップ2に向かって放出される光を低減することのできる本実施の形態は、チップ基板2aとしてGaN基板を用いる場合に特に有効である。
【0028】
ケース4は、底部4bと、環状の側壁部4aを有する。側壁部4aに囲まれた領域内に、複数のLEDチップ2が搭載される。
【0029】
ケース4は、例えば、ポリフタルアミド樹脂、LCP(Liquid Crystal Polymer)、PCT(Polycyclohexylene Dimethylene Terephalate)等の熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂からなる。ケース4は、光反射率を向上させるための、二酸化チタン等の光反射粒子を含んでもよい。
【0030】
基体3は、例えば、全体またはその表面がAg、Cu、又はAl等の導電材料からなるリードフレーム、又は表面に導体パターンを有する基板である。LEDチップ2と基体3は、図示しないワイヤー、導電バンプ等により電気的に接続される。
【0031】
封止樹脂5は、例えば、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、トリアジン系樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂材料や、ガラスからなる。また、封止樹脂5は、蛍光体粒子を含んでもよい。例えば、LEDチップ2の発光色が青色であり、封止樹脂5に含まれる蛍光体の蛍光色が黄色である場合は、発光装置1の発光色は白色になる。
【0032】
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態は、任意のLEDチップから隣接する他のLEDチップに向かって放射される光を低減する手段において、第1の実施の形態と異なる。なお、第1の実施の形態と同様の点については、説明を省略又は簡略化する。
【0033】
図2(a)、(b)は、それぞれ第2の実施の形態に係る発光装置10の垂直断面図と上面図である。
図2(a)の断面は、
図2(b)の線分B−Bに沿った断面である。
【0034】
発光装置1は、ケース4と、ケース4に含まれる基体3と、ケース4内に直列に配置される複数のLEDチップ12と、ケース4内のLEDチップ12を封止する封止樹脂5を有する。
【0035】
LEDチップ12は、チップ基板12aと、図示しない発光層を含む結晶層12bを含む。チップ基板12aと結晶層12bは、それぞれ第1の実施の形態のチップ基板2aと結晶層2bと同様の構成を有する。
【0036】
LEDチップ12は、結晶層12bが上方を向いたフェイスアップ型のLEDチップであってもよいし、結晶層12bが下方を向いたフェイスダウン型のLEDチップであってもよい。
【0037】
LEDチップ12の平面形状は限定されず、例えば、四角形である。第1の実施の形態のチップ基板2aと異なり、チップ基板12a側面の性質に制限はない。
【0038】
複数のLEDチップ12のうちの任意のLEDチップ12において、隣接する他のLEDチップ12に向いた側面上に、封止樹脂5よりも屈折率の低い低屈折率部材11が形成される。
【0039】
低屈折率部材11は封止樹脂5よりも屈折率が低いため、LEDチップ12と封止樹脂5の界面における全反射の臨界角よりも、LEDチップ12と低屈折率部材11の界面における全反射の臨界角の方が小さい。このため、LEDチップ12の側面に低屈折率部材11を設けることにより、LEDチップ12の内部から外部へ向かう光がその側面において全反射しやすくなり、外部へ放出されにくくなる。LEDチップ12と低屈折率部材11の界面で反射された光は、例えば、LEDチップ12の上面又は低屈折率部材11が形成されていない側面から放出される。
【0040】
発光装置10においては、隣接する他のLEDチップ12に向いた側面に低屈折率部材11が設けられ、光が放出されにくいため、隣接する他のLEDチップ12に吸収される光を低減し、発光装置10の光取出効率を向上させることができる。
図2(b)の白抜きの矢印は、光が多く放射される方向を模式的に表している。
【0041】
低屈折率部材11は、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、シロキサン系樹脂、ガラス(ゾルゲル法により形成される)、SiO
2(蒸着法、スパッタリング法、CVD法により形成される)、又はこれらのうちの2つ以上を混合した混合物等からなり、これらの材料から封止樹脂5の材料よりも屈折率の低いものが選択されて用いられる。
【0042】
なお、GaN基板又はサファイア基板よりも光を吸収しやすい性質を有するため、LEDチップ12から隣接する他のLEDチップ12に向かって放出される光を低減することのできる本実施の形態は、チップ基板12aとしてGaN基板を用いる場合に特に有効である。
【0043】
図3は、第2の実施の形態に係る発光装置10の変形例である発光装置10Aの上面図である。発光装置10Aにおいては、LEDチップ12がアレイ状(格子状)に配置される。
【0044】
図3に示されるように、発光装置10Aにおいても、任意のLEDチップ12において、隣接する他のLEDチップ12に向いた側面上に低屈折率部材11が形成される。そのため、隣接する他のLEDチップ12に吸収される光を低減し、発光装置10Aの光取出効率を向上させることができる。
図3の白抜きの矢印は、光が多く放射される方向を模式的に表している。
【0045】
図4(a)、(b)は、それぞれ第2の実施の形態に係る発光装置10の変形例である発光装置10B、10Cの上面図である。発光装置10B、10Cにおいては、低屈折率部材11が隣接するLEDチップ12間を埋めるように形成される。
【0046】
発光装置10BにおいてはLEDチップ12が直列に配置され、発光装置10CにおいてはLEDチップ12がアレイ状に配置されるが、いずれにおいても、任意のLEDチップ12において、隣接する他のLEDチップ12に向いた側面上に低屈折率部材11が形成されている。そのため、隣接する他のLEDチップ12に吸収される光を低減し、発光装置10B、10Cの光取出効率を向上させることができる。
【0047】
図5(a)、(b)は、それぞれ第2の実施の形態に係る発光装置10の変形例である発光装置10D、10Eの上面図である。発光装置10D、10Eにおいては、低屈折率部材11が各々のLEDチップ12の全ての側面上に形成される。
【0048】
発光装置10DにおいてはLEDチップ12が直列に配置され、発光装置10EにおいてはLEDチップ12がアレイ状に配置されるが、いずれにおいても、任意のLEDチップ12において、隣接する他のLEDチップ12に向いた側面上に低屈折率部材11が形成されている。そのため、隣接する他のLEDチップ12に吸収される光を低減し、発光装置10D、10Eの光取出効率を向上させることができる。
【0049】
〔第3の実施の形態〕
第3の実施の形態は、LEDチップの結晶方位において、第1の実施の形態と異なる。なお、第1の実施の形態と同様の点については、説明を省略又は簡略化する。
【0050】
本実施の形態においては、LEDチップのチップ基板及び結晶層がGaN等のGaN系半導体の結晶からなる。また、チップ基板及び結晶層の主面の面方位はm面である。これにより、チップ基板及び結晶層の主面の面方位がc面である場合に生じる問題を回避することができる。以下に、その問題について述べる。
【0051】
GaN系半導体結晶からなる結晶層がc面方向の結晶成長により形成される場合(主面がc面である場合)、GaN系半導体結晶の格子歪みにより、結晶成長方向であるc軸方向に圧電分極が生じ、それによってc軸方向にピエゾ電界が発生する。このピエゾ電界の発生により、InGaN等のGaN系半導体からなる発光層に注入される電子と正孔が分離され、発光に寄与する再結合が低下するため、発光効率が低下する。また、LEDチップの駆動電流密度が増加したときに発光効率が低下する現象(ドループ現象)を引き起こすという問題もある。
【0052】
図6(a)、(b)は、それぞれ第3の実施の形態に係る発光装置20の垂直断面図と上面図である。
図6(a)の断面は、
図6(b)の線分C−Cに沿った断面である。
【0053】
発光装置20は、ケース4と、ケース4に含まれる基体3と、ケース4内に直列(一列)に配置される複数のLEDチップ22と、ケース4内のLEDチップ22を封止する封止樹脂5を有する。
【0054】
LEDチップ22は、チップ基板22aと、図示しない発光層を含む結晶層22bを含む。チップ基板22aは、GaN系半導体結晶からなる導電基板である。結晶層22bは、チップ基板22a上にエピタキシャル結晶成長により形成された、GaN系半導体結晶からなる層であり、n型半導体層とp型半導体層に挟まれた発光層を有する。
【0055】
LEDチップ22は、結晶層22bが上方を向いたフェイスアップ型のLEDチップであってもよいし、結晶層22bが下方を向いたフェイスダウン型のLEDチップであってもよい。
【0056】
LEDチップ22の平面形状は四角形であり、チップ基板22aの向かい合う2つの側面の面方位が等しい。ここで、チップ基板22aの2組の向かい合う2つの側面のうち、劈開性の強い向かい合う2つの側面をS3、劈開性の弱い向かい合う2つの側面をS4とする。
【0057】
複数のLEDチップ22のうちの任意のLEDチップ22において、隣接する他のLEDチップ22に向いたチップ基板22aの側面は、全ての側面のうちで最も劈開性の強い面である。すなわち、任意のLEDチップ22において、チップ基板22aの全ての側面(側面S3と側面S4)のうち、最も劈開性の強い側面S3が隣接する他のLEDチップ22に向くように、複数のLEDチップ22が配置される。
【0058】
ウェハをダイシングして複数のLEDチップ22に分割する際、チップ基板22aを劈開性の強い面で分断すると、断面が平滑になる。そのため、側面S3は側面S4よりも平滑性が高く、光の全反射が起こりやすい。側面S3で反射された光は、例えば、LEDチップ22の上面又は側面S4から放出される。
【0059】
一方、側面S4は平滑性が低く、凹凸が多いため光が透過しやすい。すなわち、結晶層22bの発光層から発せられてチップ基板22aに入射した光は、側面S3よりも側面S4から放出されやすい。
図6(b)の白抜きの矢印は、光が多く放射される方向を模式的に表している。
【0060】
本実施の形態においては、側面S3がc面、側面S4がa面、チップ基板22aの主面(上面及び下面)は、m面である。チップ基板22aの主面がm面であるため、チップ基板22a上にエピタキシャル結晶成長により形成される結晶層22bの主面もm面である。このため、前述の結晶層の主面がc面である場合に生じるピエゾ電界の発生による発光効率の低下やドループ現象を抑えることができる。
【0061】
(実施の形態の効果)
上記実施の形態によれば、任意のLEDチップから隣接する他のLEDチップに向かって放射される光を低減することにより、LEDチップ間での光吸収による光損失を低減し、発光装置の光取出効率を向上させることができる。
【0062】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
【0063】
また、発明の主旨を逸脱しない範囲内において上記実施の形態の構成要素を任意に組み合わせることができる。例えば、第1の実施の形態のLEDチップ2又は第3の実施の形態のLEDチップ22と第2の実施の形態の低屈折率部材11を組み合わせてもよい。それにより、任意のLEDチップから隣接する他のLEDチップに向かって放射される光をより低減し、LEDチップ間での光吸収による光損失をより低減することができる。
【0064】
また、上記の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。