(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
<感放射線性樹脂組成物>
当該感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体、[B]酸発生体及び[C]化合物を含有する。当該感放射線性樹脂組成物は、好適成分として、フッ素原子含有重合体(以下、「[D]重合体」ともいう)及び溶媒(以下、「[E]溶媒」ともいう)を含有してもよい。さらに当該感放射線性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の任意成分を含有していてもよい。以下、各成分について説明する。
【0014】
<[A]重合体>
[A]重合体は、構造単位(I)を有する重合体である。当該感放射線性樹脂組成物によれば、放射線の照射により[B]酸発生体等から生じる酸により露光部の[A]重合体の酸解離性基が解離して、露光部と未露光部とで現像液に対する溶解性に差異が生じ、その結果、レジストパターンを形成することができる。「酸解離性基」とは、カルボキシ基、ヒドロキシ基等の水素原子を置換する基であって、酸の作用により解離する基をいう。[A]重合体は、通常、当該感放射線性樹脂組成物におけるベース重合体となる。「ベース重合体」とは、レジストパターンを構成する重合体のうちの主成分となる重合体であって、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上を占める重合体をいう。
【0015】
[A]重合体は、構造単位(I)以外にも、ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む構造単位(以下、「構造単位(II)」ともいう)、下記式(3)で表される構造単位(以下、「構造単位(III)」ともいう)、ヒドロキシ基を含む構造単位(以下、「構造単位(IV)」ともいう)を有することが好ましく、これらの構造単位以外のその他の構造単位を有していてもよい。[A]重合体は、これらの構造単位を1種又は2種以上有していてもよい。以下、各構造単位について説明する。
【0016】
[構造単位(I)]
構造単位(I)は、酸解離性基を含む構造単位である。
上記構造単位(I)としては、例えば、下記式(2−1)で表される構造単位(以下、「構造単位(I−1)」ともいう)、下記式(2−2)で表される構造単位(以下、「構造単位(I−2)」ともいう)等が挙げられる。
【0018】
上記式(2−1)中、R
7は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Y
1は、下記式(Y−1)で表される1価の酸解離性基である。
上記式(2−2)中、R
8は、水素原子又はメチル基である。Y
2は、下記式(Y−2)で表される1価の酸解離性基である。
【0020】
上記式(Y−1)中、R
e1は、炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。R
e2及びR
e3は、それぞれ独立して炭素数1〜20の1価の炭化水素基であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3〜20の脂環構造を表す。
【0021】
上記R
7としては、構造単位(I−1)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0022】
上記R
e1、R
e2及びR
e3で表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜20の1価の鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0023】
上記R
e1、R
e2及びR
e3で表される炭素数1〜20の1価の鎖状炭化水素基としては、例えば
メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基等のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基等が挙げられる。
これらの中で、アルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、i−プロピル基がさらに好ましく、エチル基が特に好ましい。
【0024】
上記R
e1、R
e2及びR
e3で表される炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば
シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基;
シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の単環のシクロアルケニル基;
ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基等の多環のシクロアルキル基;
ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基等の多環のシクロアルケニル基等が挙げられる。
これらの中で、単環のシクロアルキル基、多環のシクロアルキル基が好ましく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基がより好ましい。
【0025】
上記R
e1、R
e2及びR
e3で表される炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、
フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、メチルアントリル基等のアリール基;
ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、アントリルメチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0026】
上記これらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される炭素数3〜20の脂環構造としては、例えば、
シクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘプタン構造、シクロオクタン構造等の単環のシクロアルカン構造;
ノルボルナン構造、アダマンタン構造、トリシクロデカン構造、テトラシクロドデカン構造等の多環のシクロアルカン構造等が挙げられる。
これらの中で、炭素数5〜8の単環のシクロアルカン構造、炭素数7〜12の多環のシクロアルカン構造が好ましく、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロオクタン構造、ノルボルナン構造、アダマンタン構造がより好ましく、シクロペンタン構造、アダマンタン構造がさらに好ましい。
【0027】
上記R
e2及びR
e3としては、炭素数1〜20の1価の鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基が好ましい。
【0029】
上記式(Y−2)中、R
e4、R
e5及びR
e6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20の1価の鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数1〜20のオキシ鎖状炭化水素基又は炭素数3〜20のオキシ脂環式炭化水素基である。但し、R
e4、R
e5及びR
e6が同時に水素原子である場合はない。
【0030】
上記R
8としては、構造単位(I−2)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子が好ましい。
【0031】
上記R
e4、R
e5及びR
e6で表される炭素数1〜20の1価の鎖状炭化水素基としては、例えば、上記R
e1、R
e2及びR
e3として例示したものと同様の基等が挙げられる。
これらの中で、アルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0032】
上記R
e4、R
e5及びR
e6で表される炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、上記R
e1、R
e2及びR
e3として例示したものと同様の基等が挙げられる。
これらの中で、単環のシクロアルキル基、多環のシクロアルキル基が好ましく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基がより好ましい。
【0033】
上記R
e4、R
e5及びR
e6で表される炭素数1〜20の1価のオキシ鎖状炭化水素基としては、例えば、
メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基等のアルコキシ基;
エテニルオキシ基、プロペニルオキシ基、ブテニルオキシ基、ペンテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基;
エチニルオキシ基、プロピニルオキシ基、ブチニルオキシ基、ペンチニルオキシ基等のアルキニルオキシ基等が挙げられる。
これらの中で、アルコキシ基が好ましく、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基がさらに好ましい。
【0034】
上記R
e4、R
e5及びR
e6で表される炭素数3〜20の1価のオキシ脂環式炭化水素基としては、例えば、
シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロオクチルオキシ基等の単環のシクロアルキルオキシ基;
ノルボルニルオキシ基、アダマンチルオキシ基、トリシクロデシルオキシ基、テトラシクロドデシルオキシ基等の多環のシクロアルキルオキシ基;
シクロプロペニルオキシ基、シクロブテニルオキシ基、シクロペンテニルオキシ基、シクロヘキセニルオキシ基等の単環のシクロアルケニルオキシ基;
ノルボルネニルオキシ基、トリシクロデセニルオキシ基等の多環のシクロアルケニルオキシ基等が挙げられる。
これらの中で、単環のシクロアルキルオキシ基、多環のシクロアルキルオキシ基が好ましく、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、アダマンチルオキシ基がより好ましい。
【0035】
上記式(Y−2)で表される基としては、R
e4、R
e5及びR
e6が1価の鎖状炭化水素基である基、R
e4及びR
e5が1価の鎖状炭化水素基かつR
e6が1価のオキシ鎖状炭化水素基である基、R
e4が1価の鎖状炭化水素基かつR
e5及びR
e6が1価のオキシ鎖状炭化水素基である基が好ましく、R
e4、R
e5及びR
e6がアルキル基である基、R
e4及びR
e5がアルキル基かつR
e6がアルコキシ基である基、R
e4がアルキル基かつR
e5及びR
e6がアルコキシ基である基がより好ましく、R
e4、R
e5及びR
e6がアルキル基である基がさらに好ましく、t−ブチル基、t−ペンチル基、t−ヘキシル基、t−ヘプチル基が特に好ましい。
【0036】
上記構造単位(I)としては、例えば、
構造単位(I−1)として、下記式(2−1−1)〜(2−1−6)で表される構造単位(以下、「構造単位(I−1−1)〜(I−1−6)」ともいう)等;
構造単位(I−2)として、下記式(2−2−1)〜(2−2−3)で表される構造単位(以下、「構造単位(I−2−1)〜(I−2−3)」ともいう)等が挙げられる。
【0038】
上記式(2−1−1)〜(2−1−6)中、R
7は、上記式(2−1)と同義である。R
e1〜R
e3は、上記式(Y−1)と同義である。R
e1’〜R
e3’は、炭素数1〜10の1価の鎖状炭化水素基である。i及びjは、それぞれ独立して、1〜4の整数である。上記式(2−2−1)〜(2−2−3)中、R
8は、上記式(2−2)と同義である。
【0039】
構造単位(I)としては、構造単位(I−1−1)〜(I−1−5)、構造単位(I−2−3)が好ましい。
【0040】
構造単位(I−1−1)〜(I−1−6)としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0043】
上記式中、R
7は、上記式(2−1)と同義である。
【0044】
構造単位(I)としては、1−アルキル−単環シクロアルカン−1−イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、2−アルキル−多環シクロアルカン−2−イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、2−(シクロアルカン−イル)プロパン−2−イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位に由来する構造単位が好ましく、1−エチル−シクロペンチル−1−イル (メタ)アクリレートに由来する構造単位、2−メチル−アダマンチル−2−イル (メタ)アクリレートに由来する構造単位、2−エチル−アダマンチル−2−イル (メタ)アクリレートに由来する構造単位、2−(アダマンタン−イル)−プロパン−2−イル (メタ)アクリレートに由来する構造単位、2−シクロヘキシル−プロパン−2−イル (メタ)アクリレートに由来する構造単位、2−エチル−2−テトラシクロドデカン−2−イル (メタ)アクリレートがより好ましい。
【0045】
構造単位(I)の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%〜80モル%が好ましく、20モル%〜75モル%がより好ましく、30モル%〜70モル%がさらに好ましく、35モル%〜60モル%が特に好ましい。構造単位(I)の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物のLWR性能等をさらに向上させることができる。上記含有割合が上記下限未満であると、当該感放射線性樹脂組成物のパターン形成性が低下する場合がある。上記含有割合が上記上限を超えるとレジストパターンの基板への密着性が低下する場合がある。
【0046】
[構造単位(II)]
構造単位(II)は、ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む構造単位である。[A]重合体は、構造単位(II)をさらに有することで現像液への溶解性をより調整することができ、その結果、当該感放射線性樹脂組成物のLWR性能等をより向上させることができる。また、当該感放射線性樹脂組成物から形成されるレジストパターンと基板との密着性を向上させることができる。
【0047】
構造単位(II)としては、例えば、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0052】
上記式中、R
L1は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0053】
構造単位(II)としては、ラクトン構造を有する構造単位が好ましく、ラクトン−イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、ノルボルナンラクトン−イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位がより好ましく、ノルボルナンラクトン−イル (メタ)アクリレート、5−シアノ−ノルボルナンラクトン−イル (メタ)アクリレート、オキシノルボルナンラクトン−イル (メタ)アクリレート、γ−ブチロラクトン−イル (メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0054】
上記構造単位(II)の含有割合としては、[A]重合体における全構造単位に対して80モル%以下が好ましく、10モル%〜70モル%がより好ましく、20モル%〜60モル%がさらに好ましい。構造単位(II)の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物のLWR性能等をさらに向上させることができる。また、得られるレジストパターンと基板との密着性をさらに向上させることができる。
【0055】
[構造単位(III)]
構造単位(III)は、下記式(3)で表される構造単位である。照射する放射線として、KrFエキシマレーザー光、EUV、電子線等を用いる場合には、当該感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体が構造単位(III)を有することで、感度を高めることができる。
【0057】
上記式(3)中、R
9は、水素原子又はメチル基である。R
10は、炭素数1〜20の1価の有機基である。pは、0〜3の整数である。pが2又は3の場合、複数のR
10は同一でも異なっていてもよい。qは、1〜3の整数である。但し、p+qは、5以下である。
【0058】
上記R
9としては、構造単位(III)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子が好ましい。
【0059】
上記R
10で表される炭素数1〜20の1価の有機基としては、例えば、炭素数1〜20の1価の鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基、これらの基が有する水素原子の一部又は全部を置換基で置換した基、これらの基の炭素−炭素間に、−CO−、−CS−、−O−、−S−若しくは−NR”−又はこれらのうちの2種以上を組み合わせた基を含む基等が挙げられる。R”は、水素原子又は1価の有機基である。
これらの中で、1価の鎖状炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0060】
上記pとしては、0〜2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0061】
上記qは、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0062】
構造単位(III)としては、例えば、下記式(3−1)〜(3−4)で表される構造単位等が挙げられる。
【0064】
上記式(3−1)〜(3−4)中、R
9は、上記式(3)と同義である。
【0065】
これらの中で、上記式(3−1)で表される構造単位、(3−2)で表される構造単位が好ましく、上記式(3−1)で表される構造単位がより好ましい。
【0066】
構造単位(III)の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、0モル%〜90モル%が好ましく、30モル%〜80モル%がより好ましく、50モル%〜75モル%がさらに好ましい。構造単位(III)の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物は、感度をより向上させることができる。
【0067】
なお、構造単位(III)は、ヒドロキシスチレンの−OH基の水素原子をアセチル基等で置換した単量体を重合した後、得られた重合体を、アミン存在下で加水分解反応を行うこと等により形成することができる。
【0068】
[構造単位(IV)]
構造単位(IV)は、ヒドロキシ基を含む構造単位である。[A]重合体は、構造単位(IV)を有することで、溶解性をより適度に調製することができる。また、当該樹脂組成物から形成されるレジストパターンの基板への密着性を高めることがでる。
【0069】
構造単位(IV)としては、例えば、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0071】
上記式中、R
Bは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0072】
これらの中で、ヒドロキシアダマンチル基を有する構造単位が好ましく、3−ヒドロキシアダマンチル (メタ)アクリレートに由来する構造単位がより好ましい。
【0073】
上記ヒドロキシ基を含む構造単位の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、35モル%以下が好ましく、30モル%以下が好ましく、3モル%〜25モル%がさらに好ましい。上記含有割合が上記上限を超えると、当該樹脂組成物のパターン形成性が低下する場合がある。
【0074】
[その他の構造単位]
[A]重合体は、上記構造単位(I)〜(IV)以外にもその他の構造単位を有してもよい。上記その他の構造単位としては、例えば、ケトン性カルボニル基、シアノ基、カルボキシ基、ニトロ基及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む構造単位、非解離性の1価の脂環式炭化水素基を含む(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位等が挙げられる。その他の構造単位の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、20モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましい。
【0075】
[A]重合体の含有量としては、当該感放射線性樹脂組成物の全固形分に対して、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、85質量%以上がさらに好ましい。
【0076】
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体は、例えば、各構造単位を与える単量体を、ラジカル重合開始剤等を用い、適当な溶媒中で重合することにより合成できる。
【0077】
上記ラジカル重合開始剤としては、例えば、
アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ系ラジカル開始剤;
ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系ラジカル開始剤等が挙げられる。
これらの中で、AIBN、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレートが好ましく、AIBNがより好ましい。これらのラジカル開始剤は1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0078】
上記重合に使用される溶媒としては、例えば、
n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等のアルカン類;
シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;
クロロブタン類、ブロモヘキサン類、ジクロロエタン類、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;
酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;
アセトン、メチルエチルケトン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類;
テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン類、ジエトキシエタン類等のエーテル類;
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノール等のアルコール類等が挙げられる。これらの重合に使用される溶媒は、1種単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0079】
上記重合における反応温度としては、通常40℃〜150℃、50℃〜120℃が好ましい。反応時間としては、通常1時間〜48時間、1時間〜24時間が好ましい。
【0080】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、1,000以上50,000以下が好ましく、2,000以上30,000以下がより好ましく、2,500以上20,000以下がさらに好ましく、3,000以上15,000が特に好ましい。[A]重合体のMwを上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の塗布性及び現像欠陥抑制性が向上する。[A]重合体のMwが上記下限未満であると、十分な耐熱性を有するレジスト膜が得られない場合がある。[A]重合体のMwが上記上限を超えると、レジスト膜の現像性が低下する場合がある。
【0081】
[A]重合体のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(Mw/Mn)は、通常、1以上5以下であり、1以上3以下が好ましく、1以上2以下がさらに好ましい。
【0082】
本明細書における重合体のMw及びMnは、以下の条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される値である。
GPCカラム:東ソー社の「G2000HXL」2本、「G3000HXL」1本、「G4000HXL」1本
カラム温度:40℃
溶出溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0083】
<[B]酸発生体>
[B]酸発生体は、露光により酸を発生する物質である。この発生した酸により[A]重合体等が有する酸解離性基が解離してカルボキシ基等が生じ、これらの重合体の現像液への溶解性が変化するため、当該感放射線性樹脂組成物から、レジストパターンを形成することができる。当該感放射線性樹脂組成物における[B]酸発生体の含有形態としては、後述するような低分子化合物の形態(以下、適宜「[B]酸発生剤」と称する)でも、重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0084】
[B]酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、N−スルホニルオキシイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物等が挙げられる。
【0085】
オニウム塩化合物としては、例えば、スルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。
【0086】
[B]酸発生剤の具体例としては、例えば、特開2009−134088号公報の段落[0080]〜[0113]に記載されている化合物等が挙げられる。
【0087】
[B]酸発生体としては、下記式(4)で表される化合物が好ましい。[B]酸発生剤を下記式(4)で表される化合物とすることで、[A]重合体が有する極性構造との相互作用等により、露光により発生する酸のレジスト膜中の拡散長がより適度に短くなると考えられ、その結果、当該感放射線性樹脂組成物のLWR性能等をより向上させることができる。
【0089】
上記式(4)中、R
a1は、環員数6以上の脂環構造を含む1価の基又は環員数6以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基である。R
a2は、炭素数1〜10のフッ素化アルカンジイル基である。M
+は、1価の感放射線性オニウムカチオンである。
【0090】
上記R
a1における「環員数」とは、脂環構造及び脂肪族複素環構造の環を構成する原子数をいい、多環の脂環構造及び多環の脂肪族複素環構造の場合は、この多環を構成する原子数をいう。
【0091】
上記R
a1で表される環員数6以上の脂環構造を含む1価の基としては、例えば、
シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロドデシル基等の単環のシクロアルキル基;
シクロオクテニル基、シクロデセニル基等の単環のシクロアルケニル基;
ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等の多環のシクロアルキル基;
ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基等の多環のシクロアルケニル基等が挙げられる。
【0092】
上記R
a1で表される環員数6以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基としては、例えば、
ノルボルナンラクトン−イル基等のラクトン構造を含む基;
ノルボルナンスルトン−イル基等のスルトン構造を含む基;
オキサシクロヘプチル基、オキサノルボルニル基等の酸素原子含有複素環基;
アザシクロヘキシル基、アザシクロヘプチル基、ジアザビシクロオクタン−イル基等の窒素原子含有複素環基;
チアシクロヘプチル基、チアノルボルニル基等のイオウ原子含有複素環基等が挙げられる。
【0093】
上記R
a1で表される基の環員数としては、上述の酸の拡散長がさらに適度になる観点から、8以上が好ましく、9〜15がより好ましく、10〜13がさらに好ましい。
【0094】
上記R
a1としては、これらの中で、環員数9以上の脂環構造を含む1価の基、環員数9以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基が好ましく、アダマンチル基、ヒドロキシアダマンチル基、ノルボルナンラクトン−イル基、5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.3.1.1
3,8]ウンデカン−イル基がより好ましく、アダマンチル基がさらに好ましい。
【0095】
上記R
a2で表される炭素数1〜10のフッ素化アルカンジイル基としては、例えば、メタンジイル基、エタンジイル基、プロパンジイル基等の炭素数1〜10のアルカンジイル基が有する水素原子の1個以上をフッ素原子で置換した基等が挙げられる。
これらの中で、SO
3−基に隣接する炭素原子にフッ素原子が結合しているフッ素化アルカンジイル基が好ましく、SO
3−基に隣接する炭素原子に2個のフッ素原子が結合しているフッ素化アルカンジイル基がより好ましく、1,1−ジフルオロメタンジイル基、1,1−ジフルオロエタンジイル基、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−1,2−プロパンジイル基、1,1,2,2−テトラフルオロエタンジイル基、1,1,2,2−テトラフルオロブタンジイル基、1,1,2,2−テトラフルオロヘキサンジイル基がさらに好ましい。
【0096】
上記M
+で表される1価の感放射線性オニウムカチオンとしては、後述する[C]化合物の式(1)におけるX
+として例示する感放射線性オニウムカチオンと同様のもの等が挙げられる。
【0097】
[B]酸発生剤としては、例えば、下記式(4−1)〜(4−13)で表される化合物(以下、「化合物(4−1)〜(4−13)」ともいう)等が挙げられる。
【0099】
上記式(4−1)〜(4−13)中、M
+は、上記式(4)と同義である。
【0100】
[B]酸発生体としては、これらの中で、オニウム塩化合物が好ましく、スルホニウム塩がより好ましく、アダマンタン構造を含むアニオンを有するスルホニウム塩、ノルボルナンスルトン構造を含むアニオンを有するスルホニウム塩、ピペリジン構造を含むアニオンを有するスルホニウム塩がさらに好ましく、化合物(4−1)、化合物(4−2)、化合物(4−12)、化合物(4−13)が特に好ましい。
【0101】
また、[B]酸発生体としては、下記式(4−14)で表される構造単位を有する重合体等の上記式(4)の構造が重合体の一部として組み込まれた重合体も好ましい。
【0103】
上記式(4−14)中、R’は、水素原子又はメチル基である。M
+は、上記式(4)と同義である。
【0104】
[B]酸発生体の含有量としては、[B]酸発生体が[B]酸発生剤の場合、当該感放射線性樹脂組成物の感度及び現像性の向上の観点から、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部〜30質量部が好ましく、0.5質量部〜20質量部がより好ましく、1質量部〜15質量部がさらに好ましく、3質量部〜15質量部が特に好ましい。
また、[B]酸発生体が重合体の一部として組み込まれる場合、当該感放射線性樹脂組成物の感度及び現像性の向上の観点から、[A]重合体を構成する全重合体に対して、1モル%〜30モル%が好ましく、2モル%〜20モル%がより好ましく、3モル%〜10モル%がさらに好ましい。[B]酸発生体は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0105】
<[C]化合物>
[C]化合物は、下記式(1)で表される部分構造を有する化合物である。当該感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体及び[B]酸発生体に加えて、[C]化合物を含有することで、良好な保存安定性を確保しつつ、LWR性能等に優れる。
【0107】
上記式(1)中、R
1は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基又は炭素数1〜30の1価の有機基である。X
+は、1価の感放射線性オニウムカチオンである。
【0108】
[C]化合物は、未露光部においてはC
−による酸捕捉機能が発揮するが、露光部では露光によりX
+から生じたプロトンが結合してC
−がCHになり、このように露光により−COCHR
1COO−を有する弱酸が生じるため、その酸捕捉機能が低下するので、感放射線性の酸拡散制御体として機能する。但し、[C]化合物は、上記[B]酸発生体に該当しないものとする。
【0109】
当該感放射線性樹脂組成物が[C]化合物を含有することで、上記効果を奏する理由については必ずしも明確ではないが、例えば、以下のように推察することができる。すなわち、[C]化合物は、炭素原子がアニオンであり、かつこれにカルボニル基とカルボニルオキシ基とが結合しているので、スルホン酸アニオン等に比べて適度に高い塩基性を有することから、従って[C]化合物は、従来のスルホン酸アニオン等を有する酸拡散制御体と比べて酸捕捉機能が適度に高いと考えられる。このため、[C]化合物によれば、露光部と未露光部のクエンチコントラストが高くなり、その結果、当該感放射線性樹脂組成物のLWR性能等が向上すると考えられる。
また、[C]化合物は、−CO−C
−−COO−の構造を有していることから、塩基性を適度な高さに調整でき、当該感放射線性組成物は良好な保存安定性を確保できると考えられる。
【0110】
上記R
1で表される炭素数1〜30の1価の有機基としては、例えば、炭素数1〜30の1価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素−炭素間又は結合手側の末端に2価のヘテロ原子含有基を含む基(q)、上記炭化水素基及び基(q)が有する水素原子の一部又は全部を1価のヘテロ原子含有基で置換した基等が挙げられる。
【0111】
上記炭素数1〜30の1価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜20の1価の鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0112】
上記炭素数1〜20の1価の鎖状炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基等が挙げられる。
【0113】
上記炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等の単環のシクロアルキル基;
シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の単環のシクロアルケニル基;
ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等の多環のシクロアルキル基;
ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基、テトラシクロドデセニル基等の多環のシクロアルケニル基等が挙げられる。
【0114】
上記炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、
フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基;
ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0115】
上記1価及び2価のヘテロ原子含有基が有するヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子、リン原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。これらの中で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子が好ましく、酸素原子、フッ素原子がより好ましい。
【0116】
上記2価のヘテロ原子含有基としては、例えば、−O−、−CO−、−CS−、−NR’−、これらを組み合わせた基等があげられる。R’は、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
【0117】
上記1価のヘテロ原子含有基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルファニル基(−SH)、アミノ基、シアノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0118】
これらの中で、R
1としては、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭化水素基が好ましく、水素原子、フッ素原子、塩素原子、ニトロ基、シアノ基、アシル基、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基がより好ましく、水素原子、シアノ基、アシル基、シクロアルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基がさらに好ましく、水素原子、シアノ基、アシル基、シクロヘキシルカルボニル基、メトキシカルボニル基、フェニルカルボニル基が特に好ましい。
【0119】
上記X
+で表される1価の感放射線性オニウムカチオンとしては、例えば、S、I、O、N、P、Cl、Br、F、As、Se、Sn、Sb、Te、Bi等の元素を含む感放射線性オニウムカチオンが挙げられる。元素としてS(イオウ)を含むカチオンとしては、例えば、スルホニウムカチオン、テトラヒドロチオフェニウムカチオン等が挙げられ、元素としてI(ヨウ素)を含むカチオンとしては、ヨードニウムカチオン等が挙げられる。
【0120】
上記スルホニウムカチオンとしては、例えば、下記式(Q−1)で表されるカチオン等が、上記テトラヒドロチオフェニウムカチオンとしては、例えば、下記式(Q−2)で表されるカチオン等が、上記ヨードニウムカチオンとしては、例えば下記式(Q−3)で表されるカチオン等が挙げられる。
【0122】
上記式(Q−1)中、R
b1、R
b2及びR
b3は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、−OSO
2−R
P若しくは−SO
2−R
Qであるか、又はこれらの基のうちの2つ以上が互いに合わせられ構成される環構造を表す。R
P及びR
Qは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数5〜25の脂環式炭化水素基又は置換若しくは非置換の炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である。k1、k2及びk3は、それぞれ独立して0〜5の整数である。R
b1〜R
b3並びにR
P及びR
Qがそれぞれ複数の場合、複数のR
b1〜R
b3並びにR
P及びR
Qはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
上記式(Q−2)中、R
c1は、置換若しくは非置換の炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換若しくは非置換の炭素数6〜8の芳香族炭化水素基である。k4は、0〜7の整数である。R
c1が複数の場合、複数のR
c1は同一でも異なっていてもよく、また複数のR
c1は、互いに合わせられ構成される環構造を表してもよい。R
c2は、置換若しくは非置換の炭素数1〜7の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換若しくは非置換の炭素数6若しくは7の芳香族炭化水素基である。k5は、0〜6の整数である。R
c2が複数の場合、複数のR
c2は同一でも異なっていてもよく、複数のR
c2は互いに合わせられ構成される環構造を表してもよい。tは、0〜3の整数である。
上記式(Q−3)中、R
d1及びR
d2は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、−OSO
2−R
R若しくは−SO
2−R
Sであるか、又はこれらの基のうちの2つ以上が互いに合わせられ構成される環構造を表す。R
R及びR
Sは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数5〜25の脂環式炭化水素基又は置換若しくは非置換の炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である。k6及びk7は、それぞれ独立して0〜5の整数である。R
d1、R
d2、R
R及びR
Sがそれぞれ複数の場合、複数のR
d1、R
d2、R
R及びR
Sはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0123】
上記R
b1〜R
b3、R
c1、R
c2、R
d1及びR
d2で表される非置換の直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等が挙げられる。
上記R
b1〜R
b3、R
c1、R
c2、R
d1及びR
d2で表される非置換の分岐状のアルキル基としては、例えば、i−プロピル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
上記R
b1〜R
b3、R
d1及びR
d2で表される非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
上記R
c1及びR
c2で表される非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0124】
上記アルキル基及び芳香族炭化水素基が有する水素原子を置換していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基、アシロキシ基等が挙げられる。
これらの中で、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0125】
上記R
b1〜R
b3、R
c1、R
c2、R
d1及びR
d2としては、非置換の直鎖状又は分岐状のアルキル基、フッ素化アルキル基、非置換の1価の芳香族炭化水素基、−OSO
2−R
T、−SO
2−R
Tが好ましく、フッ素化アルキル基、非置換の1価の芳香族炭化水素基がより好ましく、フッ素化アルキル基がさらに好ましい。R
Tは、非置換の1価の脂環式炭化水素基又は非置換の1価の芳香族炭化水素基である。
【0126】
上記式(Q−1)におけるk1、k2及びk3としては、0〜2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
上記式(Q−2)におけるk4としては、0〜2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、1がさらに好ましい。k5としては、0〜2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
上記式(Q−3)におけるk6及びk7としては、0〜2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0127】
上記スルホニウムカチオンとしては、例えば、下記式(i−1)〜(i−23)で表されるカチオン等があげられる。
【0129】
これらの中で、上記式(i−1)で表されるカチオン、上記式(i−21)〜(i−23)で表されるカチオンが好ましい。
【0130】
上記テトラヒドロチオフェニウムカチオンとしては、例えば、下記式(i’−1)〜(i’−4)で表されるカチオン等が挙げられる。
【0132】
これらの中で、上記式(i’−2)で表されるカチオンが好ましい。
【0133】
上記ヨードニウムカチオンとしては、例えば、下記式(ii−1)〜(ii−25)で表されるカチオン等が挙げられる。
【0135】
これらの中で、上記式(ii−1)で表されるカチオンが好ましい。
【0136】
[C]化合物としては、下記式(1a)で表される化合物(以下、「化合物(1a)」ともいう)、下記式(1b)で表される化合物(以下、「化合物(1b)」ともいう)等が挙げられる。
【0138】
上記式(1a)中、R
1及びX
+は、上記式(1)と同義である。R
2は、置換若しくは非置換の炭素数1〜30の1価の炭化水素基又は置換若しくは非置換の炭素数1〜30の1価のオキシ炭化水素基である。R
3は、炭素数1〜30の1価の炭化水素基である。
【0140】
上記式(1b)中、R
1及びX
+は、上記式(1)と同義である。R
4は、置換若しくは非置換の炭素数1〜30の2価の炭化水素基又は置換若しくは非置換の炭素数1〜30の2価のカルボニル炭素原子と酸素原子で結合するオキシ炭化水素基である。
【0141】
上記R
2及びR
3で表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、例えば、上記式(1)におけるR
1として例示した1〜20の1価の炭化水素基と同様の基等が挙げられる。
【0142】
上記1価の炭化水素基を置換してもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシロキシ基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0143】
上記R
2で表される炭素数1〜30の1価のオキシ炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜30のオキシ鎖状炭化水素基、炭素数3〜30のオキシ脂環式炭化水素基、炭素数6〜30のオキシ芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0144】
上記R
2で表される炭素数1〜30の1価のオキシ鎖状炭化水素基としては、例えば、
メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基等のアルコキシ基;
エテニルオキシ基、プロペニルオキシ基、ブテニルオキシ基、ペンテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基;
エチニルオキシ基、プロピニルオキシ基、ブチニルオキシ基、ペンチニルオキシ基等のアルキニルオキシ基等が挙げられる。
【0145】
上記R
2で表される炭素数3〜30の1価のオキシ脂環式炭化水素基としては、例えば
シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロオクチルオキシ基等の単環のシクロアルキルオキシ基;
ノルボルニルオキシ基、アダマンチルオキシ基、トリシクロデシルオキシ基、テトラシクロドデシルオキシ基等の多環のシクロアルキルオキシ基;
シクロプロペニルオキシ基、シクロブテニルオキシ基、シクロペンテニルオキシ基、シクロヘキセニルオキシ基等の単環のシクロアルケニルオキシ基;
ノルボルネニルオキシ基、トリシクロデセニルオキシ基等の多環のシクロアルケニルオキシ基等が挙げられる。
【0146】
上記R
2で表される炭素数6〜30の1価のオキシ芳香族炭化水素基としては、例えば
フェニルオキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、メシチルオキシ基、ナフチルオキシ基等のアリールオキシ基;
ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、ナフチルメチルオキシ基、アントリルメチルオキシ基等のアラルキルオキシ基等が挙げられる。
【0147】
上記1価のオキシ炭化水素基を置換してもよい置換基としては、例えば、上記1価の炭化水素基を置換してもよい置換基として例示した基と同様の基が挙げられる。
【0148】
上記R
2及びR
3としては、これらの中で、非置換の炭化水素基、非置換のオキシ炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭化水素基、ハロゲン原子で置換されたオキシ炭化水素基が好ましく、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、フッ素化アルキル基、フッ素化アルコキシ基、アリール基がより好ましく、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、シクロヘキシル基、シクロアルキルオキシ基、トリフルオロメチル基、パーフルオロプロピル基、トリフルオロメトキシ基がさらに好ましい。
【0149】
上記R
4で表される炭素数1〜30の2価の炭化水素基としては、例えば、上記式(1a)におけるR
2及びR
3として例示した炭素数1〜20の1価の炭化水素基から1個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0150】
上記R
4で表される炭素数1〜30の2価のオキシ炭化水素基としては、例えば、上記式(1a)におけるR
2として例示した炭素数1〜20の1価のオキシ炭化水素基から1個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0151】
上記R
4としては、これらの中で、非置換の炭化水素基、非置換のオキシ炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭化水素基が好ましく、アルカンジイル基、オキシアルカンジイル基、フッ素化アルカンジイル基、アルケンジイル基、シクロアルカンジイル基、アレーンジイル基、−O−CR
5R
6−(R
5及びR
6は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜20の1価の有機基であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3〜30の環構造を表す。)がより好ましい。
【0152】
上記式(1b)で表される[C]化合物としては、下記式(b1−1)で表される化合物(以下、「化合物(1b−1)」ともいう)が好ましい。当該感放射線性樹脂組成物は、化合物(1b−1)を含有することで、良好な保存安定性をより確保しつつ、LWR性能等がより向上する。
【0154】
上記式(1b−1)中、R
1及びX
+は、上記式(1)と同義である。R
5及びR
6は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜20の1価の有機基であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3〜30の環構造を表す。
【0155】
上記R
5及びR
6で表される炭素数1〜20の1価の有機基としては、例えば、上記式(1)におけるR
1として例示した炭素数1〜20の1価の有機基と同様の基が挙げられる。
これらの中で、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭化水素基が好ましく、アルキル基、シクロアルキル基、フッ素化アルキル基がより好ましく、メチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
【0156】
上記これらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3〜30の環構造としては、例えば、
シクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘプタン構造、シクロオクタン構造等の単環のシクロアルカン構造;
ノルボルナン構造、アダマンタン構造、トリシクロデカン構造、テトラシクロドデカン構造等の多環のシクロアルカン構造等が挙げられる。
これらの中で、単環のシクロアルカン構造、多環のシクロシクロアルカン構造が好ましく、多環のシクロシクロアルカン構造がより好ましく、アダマンタン構造かさらに好ましい。
【0157】
上記式(1a)で表される[C]化合物としては、例えば、下記式(1a1)〜(1a12)で表される化合物(以下、「化合物(1a1)〜(1a12)」ともいう)等が挙げられる。
【0159】
上記式(1a1)〜(1a12)中、X
+は、上記式(1)と同義である。
【0160】
上記式(1b)で表される[C]化合物としては、例えば、下記式(1b1)〜(1b13)で表される化合物(以下、「化合物(1b1)〜(1b13)」ともいう)等が挙げられる。
【0162】
上記式(1b1)〜(1b13)中、X
+は、上記式(1)と同義である。
【0163】
[C]化合物としては、これらの中で、化合物(1b)が好ましく、化合物(1b−1)、化合物(1b1)〜(1b7)がより好ましく、化合物(1b1)、化合物(1b3)〜(1b7)がさらに好ましい。
【0164】
[C]化合物は、例えば、化合物(1a)又は(1b)の場合、下記反応スキームに従い合成することができる。
【0167】
上記スキーム中、R
1は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基又は炭素数1〜30の1価の有機基である。R
2は、置換若しくは非置換の炭素数1〜30の1価の炭化水素基又は置換若しくは非置換の炭素数1〜30の1価のオキシ炭化水素基である。R
3は、炭素数1〜30の1価の炭化水素基である。R
4は、置換若しくは非置換の炭素数1〜30の2価の炭化水素基又は置換若しくは非置換の炭素数1〜30の2価のカルボニル炭素原子と酸素原子で結合するオキシ炭化水素基である。X
+は、1価の感放射線性オニウムカチオンである。Z
−は、1価のハロゲンイオンである。
【0168】
上記式(S−a)又は(S’−a)で表される化合物と上記式(S−b)又は(S’−b)で表される化合物とを例えば、有機溶媒中で反応させることにより、上記式(S−c)又は(S’−c)で表される化合物が得られる。次に上記得られた化合物(S−c)又は(S’−c)と例えば、炭酸水素ナトリウム等の塩基とを水溶液中等で反応させることにより、上記式(S−d)又は(S’−d)で表される塩化合物が得られる。次に上記得られた化合物(S−d)又は(S’−d)とX
+Z
−で表されるオニウム塩とを例えば、水溶液中等で反応させることにより化合物(1a)又は(1b)が生成する。得られた化合物(1a)又は(1b)は溶媒洗浄、再結晶等により精製することができる。
【0169】
[C]化合物が化合物(1a)及び(1b)以外の場合も上記同様の方法で合成することができる。
【0170】
[C]化合物の含有量の下限としては、当該感放射線性樹脂組成物の全固形分に対して、0.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましく、1質量%がさらに好ましく、3質量%が特に好ましい。上記含有量の上限としては、全固形分中、30質量%が好ましく、20質量%がより好ましく、15質量%がさらに好ましく、10質量%が特に好ましい。
【0171】
[C]化合物の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部が好ましく、0.5質量部がより好ましく、1質量部がさらに好ましく、2質量部が特に好ましい。[C]化合物の含有量の上限としては、[A]重合体100質量部に対して、30質量部が好ましく、20質量部がより好ましく、15質量部がさらに好ましく、10質量部が特に好ましい。[C]化合物の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物は、良好な保存安定性をさらに確保しつつ、LWR性能等をさらに向上させることができる。当該感放射線性樹脂組成物は[C]化合物を1種又は2種以上含有してもよい。
【0172】
<[D]重合体>
[D]重合体は、フッ素原子を含む重合体である(但し、[A]重合体に該当するものを除く)。当該感放射線性樹脂組成物は、[D]重合体を含有することで、レジスト膜を形成した際に、膜中の[D]重合体の撥油性的特徴により、その分布がレジスト膜表面近傍で偏在化する傾向があり、液浸露光時における酸発生体、酸拡散制御体等が液浸媒体に溶出することを抑制することができる。またこの[D]重合体の撥水性的特徴により、レジスト膜と液浸媒体との前進接触角が所望の範囲に制御でき、バブル欠陥の発生を抑制できる。さらに、レジスト膜と液浸媒体との後退接触角が大きくなり、水滴が残らずに高速でのスキャン露光が可能となる。当該感放射線性樹脂組成物は、このように[D]重合体を含有することにより、液浸露光法に好適なレジスト膜を形成することができる。
【0173】
[D]重合体としては、フッ素原子を含む重合体である限り特に限定されないが、[A]重合体よりも、フッ素原子含有率(質量%)が大きいことが好ましい。[A]重合体よりもフッ素原子含有率が大きいことで、上述の偏在化の度合いがより大きくなり、得られるレジスト膜の撥水性及び溶出抑制性等の特性が向上する。
【0174】
[D]重合体のフッ素原子含有率としては、1質量%以上が好ましく、2質量%〜60質量%がより好ましく、4質量%〜40質量%がさらに好ましく、7質量%〜30質量%が特に好ましい。上記フッ素原子含有率が上記下限未満であると、レジスト膜表面の疎水性が低下する場合がある。なお重合体のフッ素原子含有率(質量%)は、
13C−NMRスペクトル測定により重合体の構造を求め、その構造から算出することができる。
【0175】
[D]重合体におけるフッ素原子の含有形態は特に限定されず、主鎖、側鎖及び末端のいずれに結合するものでもよいが、フッ素原子を含む構造単位(以下、「構造単位(V)」ともいう)を有することが好ましい。[D]重合体は、構造単位(V)以外にも、当該感放射線性樹脂組成物の現像欠陥抑制性向上の観点から、酸解離性基を含む構造単位を有することが好ましい。酸解離性基を含む構造単位としては、例えば、[A]重合体における構造単位(I)等が挙げられる。
【0176】
[D]重合体は、アルカリ解離性基を有することが好ましい。[D]重合体がアルカリ解離性基を有すると、レジスト膜表面をアルカリ現像時に疎水性から親水性に効果的に変えることができ、当該感放射線性樹脂組成物の現像欠陥抑制性が向上する。「アルカリ解離性基」とは、カルボキシ基、ヒドロキシ基等が有する水素原子を置換する基であって、アルカリ水溶液(例えば、23℃の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)中で解離する基をいう。
【0177】
上記構造単位(V)としては、下記式(5a)で表される構造単位(以下、「構造単位(V−a)」ともいう)及び下記式(5b)で表される構造単位(以下、「構造単位(V−b)」ともいう)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。構造単位(V)は、構造単位(Va)及び構造単位(Vb)をそれぞれ1種又は2種以上有していてもよい。
【0178】
[構造単位(Va)]
構造単位(Va)は、下記式(5a)で表される構造単位である。[D]重合体は構造単位(Va)を有することでフッ素原子含有率を調整することができる。
【0180】
上記式(5a)中、R
dは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Gは、単結合、酸素原子、硫黄原子、−CO−O−、−SO
2−O−NH−、−CO−NH−又は−O−CO−NH−である。R
eは、炭素数1〜6の1価のフッ素化鎖状炭化水素基又は炭素数4〜20の1価のフッ素化脂環式炭化水素基である。
【0181】
上記R
dとしては、構造単位(Va)を与える単量体の共重合性等の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0182】
上記Gとしては、−CO−O−、−SO
2−O−NH−、−CO−NH−又は−O−CO−NH−が好ましく、−CO−O−がより好ましい。
【0183】
上記R
eで表される炭素数1〜6の1価のフッ素化鎖状炭化水素基としては、例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル基、パーフルオロn−プロピル基、パーフルオロi−プロピル基、パーフルオロn−ブチル基、パーフルオロi−ブチル基、パーフルオロt−ブチル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0184】
上記R
eで表される炭素数4〜20の1価のフッ素化脂環式炭化水素基としては、例えばモノフルオロシクロペンチル基、ジフルオロシクロペンチル基、パーフルオロシクロペンチル基、モノフルオロシクロヘキシル基、ジフルオロシクロペンチル基、パーフルオロシクロヘキシルメチル基、フルオロノルボルニル基、フルオロアダマンチル基、フルオロボルニル基、フルオロイソボルニル基、フルオロトリシクロデシル基、フルオロテトラシクロデシル基等が挙げられる。
【0185】
上記R
eとしては、これらの中で、フッ素化鎖状炭化水素基が好ましく、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル基がより好ましく、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル基がさらに好ましい。
【0186】
構造単位(Va)の含有割合としては、[D]重合体を構成する全構造単位に対して、0モル%〜90モル%が好ましく、3モル%〜70モル%がより好ましく、5モル%〜50モル%がさらに好ましい。このような含有割合にすることによって、[D]重合体のフッ素原子含有率をより適度に調整することができる。
【0187】
[構造単位(Vb)]
構造単位(Vb)は、下記式(5b)で表される構造単位である。[D]重合体は構造単位(Vb)を有することで、フッ素原子含有率を調整すると共に、アルカリ現像前後における撥水性及び親水性を変化させることができる。
【0189】
上記式(5b)中、R
fは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
11は、炭素数1〜20の(s+1)価の炭化水素基、又はこの炭化水素基のR
12側の末端に酸素原子、硫黄原子、−NR’−、カルボニル基、−CO−O−若しくは−CO−NH−が結合された構造のものである。R’は、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。R
12は、単結合又は炭素数1〜20の2価の有機基である。W
1は、単結合又は炭素数1〜20の2価のフッ素化鎖状炭化水素基である。A
1は、酸素原子、−NR”−、−CO−O−*又は−SO
2−O−*である。R”は、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。*は、R
13に結合する部位を示す。R
13は、水素原子又は炭素数1〜30の1価の有機基である。sは、1〜3の整数である。但し、sが1の場合、R
11は単結合であってもよい。sが2又は3の場合、複数のR
12、W
1、A
1及びR
13はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。W
1が単結合の場合、R
13は、フッ素原子を含む基である。
【0190】
上記R
fとしては、構造単位(Vb)を与える単量体の共重合性等の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0191】
上記R
11で表される炭素数1〜20の(s+1)価の炭化水素基としては、例えば、上記式(1)におけるR
1として例示した1価の炭化水素基からs個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
上記sとしては、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
上記R
11としては、sが1の場合、単結合、2価の炭化水素基が好ましく、単結合、アルカンジイル基がより好ましく、単結合、炭素数1〜4のアルカンジイル基がさらに好ましく、単結合、メタンジイル基、プロパンジイル基が特に好ましい。
【0192】
上記R
12で表される炭素数1〜20の2価の有機基としては、例えば、上記式(1)におけるR
1として例示した炭素数1〜20の1価の有機基から、1個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
上記R
12としては、単結合、ラクトン構造を有する基が好ましく、単結合、多環のラクトン構造を有する基がより好ましく、単結合、ノルボルナンラクトン構造を有する基がより好ましい。
【0193】
上記W
1で表される炭素数1〜20の2価のフッ素化鎖状炭化水素基としては、例えば
フルオロメタンジイル基、ジフルオロメタンジイル基、フルオロエタンジイル基、ジフルオロエタンジイル基、テトラフルオロエタンジイル基、ヘキサフルオロプロパンジイル基、オクタフルオロブタンジイル基等のフッ素化アルカンジイル基;
フルオロエテンジイル基、ジフルオロエテンジイル基等のフッ素化アルケンジイル基などが挙げられる。
これらの中で、フッ素化アルカンジイル基が好ましく、ジフルオロメタンジイル基がより好ましい。
【0194】
上記A
1としては、酸素原子、−CO−O−*、−SO
2−O−*が好ましく、−CO−O−*がより好ましい。
【0195】
上記R
13で表される炭素数1〜30の1価の有機基としては、例えば、アルカリ解離性基、酸解離性基、炭素数1〜30の炭化水素基等が挙げられる。上記R
13としては、これらの中で、アルカリ解離性基が好ましい。上記R
13をアルカリ解離性基とすることで、アルカリ現像時に、レジスト膜表面を疎水性から親水性により効果的に変えることができ、当該感放射線性樹脂組成物の現像欠陥抑制性がさらに向上する。
【0196】
上記R
13がアルカリ解離性基である場合、上記R
13としては、下記式(iii)〜(v)で表される基(以下、「基(iii)〜(v)」ともいう)が好ましい。
【0198】
上記式(iii)中、R
3a及びR
3bは、それぞれ独立して炭素数1〜20の1価の有機基であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3〜20の脂環構造を表す。
【0200】
上記式(iv)中、R
3c及びR
3dは、それぞれ独立して、炭素数1〜20の1価の有機基であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する窒素原子と共に構成される環員数3〜20の複素環構造を表す。
【0202】
上記式(v)中、R
3eは、炭素数1〜20の1価の炭化水素基又は炭素数1〜20の1価のフッ素化炭化水素基である。
【0203】
上記炭素数1〜20の1価の有機基及び上記炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、上記式(1)のR
1として例示したものと同様の基等が挙げられる。
【0204】
上記炭素数1〜20の1価のフッ素化炭化水素基としては、例えば上記炭素数1〜20の1価の炭化水素基として例示した基が有する水素原子の一部又は全部が、フッ素原子で置換された基等が挙げられる。
【0205】
上記基(iii)としては下記式(iii−1)〜(iii−4)で表される基が、上記基(iv)としては下記式(iv−1)で表される基が、上記基(v)としては下記式(v−1)〜(v−5)で表される基が好ましい。
【0207】
これらの中で、上記式(v−3)で表される基、上記式(v−5)で表される基が好ましい。
【0208】
また、R
13が水素原子であると、[D]有重合体のアルカリ現像液に対する溶解性が向上するため好ましい。この場合、A
1が酸素原子かつW
1が1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−メタンジイル基であると、上記溶解性がさらに向上する。
【0209】
上記構造単位(Vb)の含有割合としては、[D]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%〜90モル%が好ましく、20モル%〜85モル%がより好ましく、40モル%〜80モル%がさらに好ましい。このような含有割合にすることによって、当該感放射線性樹脂組成物から形成されたレジスト膜表面のアルカリ現像前後の撥水性及び親水性等をより適切に調整することができる。
【0210】
上記構造単位(V)の含有割合としては、[D]重合体を構成する全構造単位に対して、20モル%〜90モル%が好ましく、30モル%〜85モル%がより好ましく、40モル%〜80モル%がさらに好ましい。
【0211】
[D]重合体における酸解離性基を含む構造単位([A]重合体における構造単位(I))の含有割合としては、[D]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%〜60モル%が好ましく、15モル%〜50モル%がより好ましく、20モル%〜40モル%がさらに好ましい。[D]重合体における酸解離性基を含む構造単位の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の現像欠陥抑制性をさらに向上させることができる。
【0212】
[D]重合体の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部が好ましく、0.2質量部がより好ましく、0.5質量部がさらに好ましく、1質量部が特に好ましい。[D]重合体の含有量の上限としては、[A]重合体100質量部に対して、30質量部が好ましく、20質量部がより好ましく、15質量部がさらに好ましく、10質量部が特に好ましい。
【0213】
[D]重合体は、上述した[A]重合体と同様の方法で合成することができる。
【0214】
[D]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、1,000以上50,000以下が好ましく、2,000以上30,000以下がより好ましく、2,500以上20,000以下がさらに好ましく、3,000以上15,000が特に好ましい。[D]重合体のMwを上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の塗布性及び現像欠陥抑制性が向上する。[D]重合体のMwが上記下限未満であると、十分な耐熱性を有するレジスト膜が得られない場合がある。[D]重合体のMwが上記上限を超えると、レジスト膜の現像性が低下する場合がある。
【0215】
[D]重合体のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(Mw/Mn)は、通常、1以上5以下であり、1以上3以下が好ましく、1以上2以下がさらに好ましい。
【0216】
<[E]溶媒>
当該感放射線性樹脂組成物は、通常[E]溶媒を含有する。[E]溶媒は、少なくとも[A]重合体、[B]酸発生体、[C]化合物、必要に応じて含有される[D]重合体等を溶解又は分散可能な溶媒であれば特に限定されない。
【0217】
[E]溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系有機溶媒、アミド系溶媒、エステル系有機溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0218】
アルコール系溶媒としては、例えば、
4−メチル−2−ペンタノール、n−ヘキサノール等の炭素数1〜18の脂肪族モノアルコール系溶媒;
シクロヘキサノール等の炭素数3〜18の脂環式モノアルコール系溶媒;
1,2−プロピレングリコール等の炭素数2〜18の多価アルコール系溶媒;
プロピレングリコールモノメチルエーテル等の炭素数3〜19の多価アルコール部分エーテル系溶媒などが挙げられる。
【0219】
エーテル系溶媒としては、例えば、
ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル等のジアルキルエーテル系溶媒;
テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル系溶媒;
ジフェニルエーテル、アニソール(メチルフェニルエーテル)等の芳香環含有エーテル系溶媒などが挙げられる。
【0220】
ケトン系溶媒としては、例えば、
アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、2−ヘプタノン(メチル−n−ペンチルケトン)、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン等の鎖状ケトン系溶媒:
シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒:
2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等が挙げられる。
【0221】
アミド系溶媒としては、例えば、
N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルピロリドン等の環状アミド系溶媒;
N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド等の鎖状アミド系溶媒などが挙げられる。
【0222】
エステル系溶媒としては、例えば、
酢酸n−ブチル、乳酸エチル等のモノカルボン酸エステル系溶媒;
プロピレングリコールアセテート等の多価アルコールカルボキシレート系溶媒;
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒;
シュウ酸ジエチル等の多価カルボン酸ジエステル系溶媒;
ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、等のカーボネート系溶媒などが挙げられる。
【0223】
炭化水素系溶媒としては、例えば、
n−ペンタン、n−ヘキサン等の炭素数5〜12の脂肪族炭化水素系溶媒;
トルエン、キシレン等の炭素数6〜16の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0224】
これらの中で、[E]溶媒としては、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましく、多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒、環状ケトン系溶媒がより好ましく、多価アルコール部分アルキルエーテルアセテート、シクロアルカノンがさらに好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノンが特に好ましい。当該感放射線性樹脂組成物は、[E]溶媒を1種又は2種以上含有していてもよい。
【0225】
<[F]偏在化促進剤>
[F]偏在化促進剤は、当該感放射線性樹脂組成物が[D]重合体を含有する場合等に、[D]有重合体を、より効率的にレジスト膜表面に偏在化させる成分である。当該感放射線性樹脂組成物が[F]偏在化促進剤を含有することで、[D]重合体をレジスト膜表面により効果的に偏在化させることができ、結果として[D]重合体の使用量を少なくすることができる。[F]偏在化促進剤としては、例えば、ラクトン化合物、カーボネート化合物、ニトリル化合物、多価アルコール等が挙げられる。偏在化促進剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0226】
上記ラクトン化合物としては、例えば、γ−ブチロラクトン、バレロラクトン、メバロニックラクトン、ノルボルナンラクトン等が挙げられる。
【0227】
上記カーボネート化合物としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等が挙げられる。
【0228】
上記ニトリル化合物としては、例えば、スクシノニトリル等が挙げられる。
【0229】
上記多価アルコールとしては、例えば、グリセリン等が挙げられる。
【0230】
これらの中で、ラクトン化合物が好ましく、γ−ブチロラクトンがより好ましい。
【0231】
[F]偏在化促進剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して、5質量部〜300質量部が好ましく、10質量〜100質量部がより好ましく、20質量部〜70質量部がさらに好ましい。
【0232】
<その他の任意成分>
当該感放射線性樹脂組成物は、上記[A]〜[F]成分以外のその他の任意成分を含有していてもよい。上記その他の任意成分としては、例えば、[C]化合物以外の他の酸拡散制御体、界面活性剤、脂環式骨格含有化合物、増感剤等が挙げられる。これらのその他の任意成分は、それぞれ1種又は2種以上を併用してもよい。
【0233】
[他の酸拡散制御体]
当該感放射線性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、[C]化合物以外の他の酸拡散制御体を含有してもよい。
他の酸拡散制御体は、露光により[B]酸発生体から生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を制御する。その結果非露光領域における好ましくない化学反応を抑制する効果を奏し、得られる感放射線性樹脂組成物の貯蔵安定性がさらに向上する。またレジストとしての解像度がさらに向上すると共に、露光から現像処理までの引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に優れた感放射線性樹脂組成物が得られる。他の酸拡散制御体の当該感放射線性樹脂組成物における含有形態としては、遊離の化合物の形態(以下、適宜「他の酸拡散制御剤」と称する)でも、重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0234】
他の酸拡散制御剤としては、例えば下記式(vi)で表される化合物(以下、「含窒素化合物(I)」ともいう)、同一分子内に窒素原子を2個有する化合物(以下、「含窒素化合物(II)」ともいう)、窒素原子を3個有する化合物(以下、「含窒素化合物(III)」ともいう)、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等が挙げられる。
【0236】
上記式(vi)中、R
f1、R
f2及びR
f3は、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、アリール基又はアラルキル基である。
【0237】
含窒素化合物(I)としては、例えば、n−ヘキシルアミン等のモノアルキルアミン類;ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類;トリエチルアミン、トリn−ペンチルアミン等のトリアルキルアミン類;アニリン等の芳香族アミン類等が挙げられる。
【0238】
含窒素化合物(II)としては、例えば、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。
【0239】
含窒素化合物(III)としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン等のポリアミン化合物;ジメチルアミノエチルアクリルアミド等の重合体等が挙げられる。
【0240】
アミド基含有化合物としては、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0241】
ウレア化合物としては、例えば、尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、トリブチルチオウレア等が挙げられる。
【0242】
含窒素複素環化合物としては、例えば、ピリジン、2−メチルピリジン等のピリジン類;N−プロピルモルホリン、N−(ウンデカン−1−イルカルボニルオキシエチル)モルホリン等のモルホリン類;ピラジン、ピラゾール等が挙げられる。
【0243】
また上記含窒素有機化合物として、酸解離性基を有する化合物を用いることもできる。このような酸解離性基を有する含窒素有機化合物としては、例えば、N−t−ブトキシカルボニルピペリジン、N−t−ブトキシカルボニルイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール、N−(t−ブトキシカルボニル)ジ−n−オクチルアミン、N−(t−ブトキシカルボニル)ジエタノールアミン、N−(t−ブトキシカルボニル)ジシクロヘキシルアミン、N−(t−ブトキシカルボニル)ジフェニルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−アミルオキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン等が挙げられる。
【0244】
これらの中で、含窒素複素環化合物が好ましく、モルホリン類がより好ましく、N−(ウンデカン−1−イルカルボニルオキシエチル)モルホリンがさらに好ましい。
【0245】
また、他の酸拡散制御体として、露光により感光し弱酸を発生する光崩壊性塩基を用いることもできる。光崩壊性塩基としては、例えば、露光により分解して酸拡散制御性を失うオニウム塩化合物等が挙げられる(但し、[C]化合物に該当するものを除く)。
【0246】
オニウム塩化合物としては、例えば、トリフェニルスルホニウムサリチレート、トリフェニルスルホニウムアセチルアセテート、トリフェニルスルホニウム2,4,6−トリi−プロピルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウム10−カンファースルホネート等が挙げられる。
これらの中で、トリフェニルスルホニウムアセチルアセテート、トリフェニルスルホニウム2,4,6−トリi−プロピルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウム10−カンファースルホネートが好ましい。
【0247】
上記他の酸拡散制御体の含有量としては、上記他の酸拡散制御体が他の酸拡散制御剤の場合、[A]重合体100質量部に対して、0質量部〜20質量部が好ましく、0.1質量部〜15質量部がより好ましく、0.3質量部〜10質量部がさらに好ましく、0.5質量部〜5質量部が特に好ましい。他の酸拡散制御体の含有量が上記上限を超えると、当該感放射線性樹脂組成物の感度が低下する場合がある。
【0248】
また、当該感放射線性樹脂組成物が上記[C]化合物を含有する場合、他の酸拡散制御剤の含有量としては、[C]化合物100質量部に対して、0質量部〜95質量部が好ましく、10質量部〜90質量部がより好ましく、20質量部〜85質量部がさらに好ましい。
【0249】
[界面活性剤]
界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する効果を奏する。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤;市販品としては、信越化学工業社の「KP341」、共栄社化学社の「ポリフローNo.75」、「同No.95」、トーケムプロダクツ社の「エフトップEF301」、「同EF303」、「同EF352」、DIC社の「メガファックF171」、「同F173、住友スリーエム社の「フロラードFC430」、「同FC431」、旭硝子工業社の「アサヒガードAG710」、「サーフロンS−382」、「同SC−101」、「同SC−102」、「同SC−103」、「同SC−104」、「同SC−105」、「同SC−106」等が挙げられる。当該感放射線性樹脂組成物における界面活性剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して通常2質量部以下である。
【0250】
[脂環式骨格含有化合物]
脂環式骨格含有化合物は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等を改善する効果を奏する。
【0251】
[増感剤]
増感剤は、[B]酸発生体等からの酸の生成量を増加する作用を示すものであり、当該感放射線性樹脂組成物の「みかけの感度」を向上させる効果を奏する。
【0252】
増感剤としては、例えば、カルバゾール類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、フェノール類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン類、アントラセン類、フェノチアジン類等が挙げられる。これらの増感剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。当該感放射線性樹脂組成物における増感剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して通常2質量部以下である。
【0253】
<感放射線性樹脂組成物の調製方法>
当該感放射線性樹脂組成物は、例えば[A]重合体、[B]酸発生体、[C]化合物、必要に応じて含有される[D]重合体及び任意成分、並びに[E]溶媒を所定の割合で混合することにより調製できる。当該感放射線性樹脂組成物は、混合後に、例えば孔径0.2μm程度のフィルター等でろ過することが好ましい。当該感放射線性樹脂組成物の固形分濃度としては、通常0.1質量%〜50質量%であり、0.5質量%〜30質量%が好ましく、1質量%〜20質量%がより好ましい。
【0254】
当該感放射線性樹脂組成物は、アルカリ現像液を用いるポジ型パターン形成用にも、有機溶媒を含有する現像液を用いるネガ型パターン形成用にも用いることができる。これらのうち、有機溶媒を含有する現像液を用いるネガ型パターン形成に用いる場合、当該感放射線性樹脂組成物は、より高い解像性を発揮することができる。
【0255】
<レジストパターンの形成方法>
当該レジストパターンの形成方法は、
レジスト膜を形成する工程(以下、「レジスト膜形成工程」ともいう)、
上記レジスト膜を露光する工程(以下、「露光工程」ともいう)、及び
上記露光されたレジスト膜を現像する工程(以下、「現像工程」ともいう)
を備え、
上記レジスト膜を当該感放射線性樹脂組成物により形成する。
【0256】
当該レジストパターン形成方法によれば、上述した当該感放射線性樹脂組成物を用いているので、優れた焦点深度、露光余裕度及びMEEF性能を発揮しつつ、LWR及びCDUが小さく、解像度が高く、断面形状の矩形性に優れるレジストパターンを形成することができる。
以下、各レジストパターン形成方法の各工程について説明する。
【0257】
[レジスト膜形成工程]
本工程では、当該感放射線性樹脂組成物によりレジスト膜を形成する。上記レジスト膜を形成する基板としては、例えば、シリコンウェハ、アルミニウムで被覆したウェハ等が挙げられる。この基板上に当該感放射線性樹脂組成物を塗布することによりレジスト膜が形成される。当該感放射線性樹脂組成物の塗布方法としては、特に限定されないが、例えばスピンコート法等の公知の方法により塗布することができる。当該感放射線性樹脂組成物を塗布する際には、形成されるレジスト膜が所望の膜厚となるように、塗布する当該感放射線性樹脂組成物の量を調整する。なお当該感放射線性樹脂組成物を基板上に塗布した後、溶媒を揮発させるためにソフトベーク(以下、「SB」ともいう)を行ってもよい。ソフトベークの温度としては、通常30℃〜200℃であり、50℃〜150℃が好ましい。
【0258】
[露光工程]
本工程では、上記レジスト膜形成工程で形成されたレジスト膜を露光する。この露光は、場合によっては、水等の液浸露光液を介し、所定のパターンを有するマスクを介して放射線を照射することにより行う。
【0259】
上記液浸露光液としては、通常、空気より屈折率の大きい液体を使用する。具体的には、例えば純水、長鎖又は環状の脂肪族化合物等が挙げられる。この液浸露光液を介した状態、すなわち、レンズとレジスト膜との間に液浸露光液を満たした状態で、露光装置から放射線を照射し、所定のパターンを有するマスクを介してレジスト膜を露光する。
【0260】
上記放射線としては、使用される感放射線性酸発生体の種類に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等から適宜選定されて使用されるが、この中でも、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)及びKrFエキシマレーザー光(波長248nm)に代表される遠紫外線が好ましく、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)がより好ましい。なお、露光量等の露光条件は、液浸露光用レジスト組成物の配合組成、添加剤の種類等に応じて適宜選定することができる。
【0261】
本発明においては、露光後に加熱処理(以下、「PEB」ともいう)を行うことが好ましい。このPEBにより、樹脂成分中の酸解離性基の解離反応を円滑に進行させることができる。PEBの加熱条件は、液浸露光用レジスト組成物の配合組成によって適宜調整されるが、通常30℃〜200℃であり、50℃〜170℃が好ましい。
【0262】
また、感放射線性樹脂組成物の潜在能力を最大限に引き出すため、例えば特公平6−12452号公報、特開昭59−93448号公報等に開示されているように、使用される基板上に有機系又は無機系の反射防止膜を形成しておくこともできる。また、環境雰囲気中に含まれる塩基性不純物等の影響を防止するため、例えば特開平5−188598号公報等に開示されているように、レジスト膜上に保護膜を設けることもできる。
【0263】
[現像工程]
本工程では、上記露光工程で露光されたレジスト膜を現像する。この現像に用いる現像液としては、例えば、アルカリ水溶液(アルカリ現像液)、有機溶媒を含有するもの(有機溶媒現像液)等が挙げられる。これにより、所定のレジストパターンが形成される。
【0264】
上記アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液等が挙げられる。これらの中でも、TMAH水溶液が好ましく、2.38質量%TMAH水溶液がより好ましい。
【0265】
上記有機溶媒現像液としては、例えば、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒等の有機溶媒、又は有機溶媒を含有する溶媒が挙げられる。上記有機溶媒としては、例えば、上述の樹脂組成物の[E]溶媒として列挙した溶媒の1種又は2種以上等が挙げられる。これらの中でも、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましい。エステル系溶媒としては、酢酸エステル系溶媒が好ましく、酢酸n−ブチルがより好ましい。ケトン系溶媒としては、鎖状ケトンが好ましく、2−ヘプタノンがより好ましい。現像液中の有機溶媒の含有量としては、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上が特に好ましい。現像液中の有機溶媒以外の成分としては、例えば、水、シリコンオイル等が挙げられる。
【0266】
これらの現像液は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、現像後は、水等で洗浄し、乾燥することが一般的である。
【0267】
<化合物>
本発明の化合物は、上記式(1a)又は(1b)で表される化合物である。当該化合物は、上述の当該感放射線性樹脂組成物の含有成分として好適に用いることができる。
【0268】
当該化合物については、上述の感放射線性樹脂組成物の[C]化合物の項で説明している。
【実施例】
【0269】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各種物性値の測定方法を以下に示す。
【0270】
[重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)]
GPCカラム(東ソー社の「G2000HXL」2本、「G3000HXL」1本、「G4000HXL」1本)を用い、流量:1.0mL/分、溶出溶媒:テトラヒドロフラン(和光純薬工業社)、試料濃度:1.0質量%、試料注入量:100μL、カラム温度:40℃、検出器:示差屈折計の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。また、分散度(Mw/Mn)は、Mw及びMnの測定結果より算出した。
【0271】
[
13C−NMR分析]
核磁気共鳴装置(日本電子社の「JNM−ECX400」)を用い、測定溶媒として重クロロホルムを使用して、各重合体における各構造単位の含有割合(モル%)を求める分析を行った。
【0272】
<化合物の合成>
[実施例1](化合物(Z−1)の合成)
200mLの丸底フラスコにメルドラム酸5.00g(34.7mmol)、トリエチルアミン4.21g(41.6mmol)及びジクロロメタン40mLを加え窒素雰囲気下で氷浴にて冷却撹拌した。そこへ、シクロヘキサンカルボニルクロリド5.34g(36.4mmol)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、0℃にて1時間撹拌した後、室温で5時間撹拌した。水を加えて反応を停止させた後、有機層を塩化ナトリウム水溶液で2回洗浄した。溶媒を留去した後、カラムクロマトグラフィで精製することにより、(Z’−1)6.62g(収率75%)を得た。
200mLの丸底フラスコに(Z’−1)6.62g(26.0mmol)、THF20mLを加え室温で撹拌した。そこへ、炭酸水素ナトリウム2.18g(26.0mmol)を水10gに溶解させた水溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温で2時間撹拌し溶媒を留去した。そこへトリフェニルスルホニウムクロリド7.77g(26.0mmol)、ジクロロメタン40mL、水20mLを加え室温で8時間撹拌した。有機層を回収した後、水で3回洗浄した。溶媒を留去した後、カラムクロマトグラフィで精製することにより、(Z−1)9.15g(収率68%)を得た。
【0273】
【化39】
【0274】
[実施例2〜14](化合物(Z−2)〜(Z−14)の合成)
前駆体を適宜選択し、実施例1と同様の操作を行うことによって、下記式(Z−2)〜(Z−14)で表される化合物を合成した。
【0275】
【化40】
【0276】
<[A]重合体及び[D]重合体の合成>
各実施例及び比較例における各重合体の合成で用いた単量体を以下に示す。
【0277】
【化41】
【0278】
[[A]重合体の合成]
[合成例1](重合体(A−1)の合成)
化合物(M−1)7.97g(35モル%)、化合物(M−2)7.44g(45モル%)及び化合物(M−3)4.49g(20モル%)を2−ブタノン40gに溶解し、ラジカル重合開始剤としてのAIBN0.80g(全化合物に対して5モル%)を添加して単量体溶液を調製した。次いで2−ブタノン20gを入れた100mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、攪拌しながら80℃に加熱し、上記調製した単量体溶液を滴下漏斗にて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。メタノール400g中に冷却した重合溶液を投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末をメタノール80gで2回洗浄した後、ろ別し、50℃で17時間乾燥させて白色粉末状の重合体(A−1)を合成した(15.2g、収率76%)。重合体(A−1)のMwは7,300、Mw/Mnは1.53であった。
13C−NMR分析の結果、(M−1)、(M−2)、(M−3)に由来する各構造単位の含有割合は、それぞれ34.3モル%、45.1モル%、及び20.6モル%であった。
【0279】
[合成例5](重合体(A−5)の合成)
化合物(M−4)55.0g(65モル%)及び化合物(M−5)45.0g(35モル%)、ラジカル重合開始剤としてのAIBN4g並びにt−ドデシルメルカプタン1gをプロピレングリコールモノメチルエーテル100gに溶解した後、窒素雰囲気下、反応温度を70℃に保持して、16時間共重合させた。重合反応終了後、重合溶液をn−ヘキサン1,000g中に滴下して、重合体を凝固精製した。次いで上記重合体に、再度プロピレングリコールモノメチルエーテル150gを加えた後、更に、メタノール150g、トリエチルアミン34g及び水6gを加えて、沸点にて還流させながら、8時間加水分解反応を行った。反応終了後、溶剤及びトリエチルアミンを減圧留去し、得られた重合体をアセトン150gに溶解した後、水2,000g中に滴下して凝固させ、生成した白色粉末をろ過し、50℃で17時間乾燥させて白色粉末状の重合体(A−5)を得た(65.7g、収率77%)。重合体(A−5)のMwは7,500、Mw/Mnは1.90であった。
13C−NMR分析の結果、p−ヒドロキシスチレンに由来する構造単位及び(M−5)に由来する各構造単位の含有割合は、それぞれ65.4モル%及び34.6モル%であった。
【0280】
[合成例2〜4、合成例6及び合成例7](重合体(A−2)〜(A−4)、重合体(A−6)及び重合体(A−7)の合成)
下記表1に示す種類及び使用量の単量体を用いた以外は、合成例1と同様にして、重合体(A−2)〜(A−4)、重合体(A−6)及び重合体(A−7)を合成した。用いる単量体の合計質量は、20gとした。合成した重合体の収率(%)、Mw、Mw/Mn及び各構造単位の含有割合(モル%)を下記表1に合わせて示す。
【0281】
【表1】
【0282】
[[D]重合体の合成]
[合成例8](重合体(D−1)の合成)
化合物(M−15)82.2g(70モル%)及び化合物(M−12)17.8g(30モル%)を2−ブタノン200gに溶解し、ラジカル重合開始剤としてのAIBN0.46g(全化合物に対して1モル%)を添加して単量体溶液を調製した。次いで2−ブタノン100gを入れた500mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、攪拌しながら80℃に加熱し、上記調製した単量体溶液を滴下漏斗にて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。アセトニトリル400gに溶媒を置換した後、ヘキサン100gを加えて撹拌しアセトニトリル層を回収する作業を3回繰り返した。溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに置換することで、重合体(D−1)60.1gを含む溶液を得た(収率60%)。重合体(D−1)のMwは15000であり、Mw/Mnは1.90であった。
13C−NMR分析の結果、(M−15)、(M−12)に由来する各構造単位の含有割合は、それぞれ70.3モル%、29.7モル%であった。
【0283】
<感放射線性樹脂組成物の調製>
下記実施例15〜53及び比較例1〜17の感放射線性樹脂組成物の調製に用いた[B]酸発生剤、[C]化合物、[E]溶媒、[F]偏在化促進剤及び[G]他の酸拡散制御剤を以下に示す。
【0284】
[[B]酸発生剤]
B−1:トリフェニルスルホニウム2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホネート(下記式(B−1)で表される化合物)
B−2:ノルボルナンスルトン−2−イルオキシカルボニルジフルオロメタンスルホネート(下記式(B−2)で表される化合物)
B−3:トリフェニルスルホニウム3−(ピペリジン−1−イルスルホニル)−1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン−1−スルホネート(下記式(B−3)で表される化合物)
B−4:トリフェニルスルホニウムアダマンタン−1−イルオキシカルボニルジフルオロメタンスルホネート(下記式(B−4)で表される化合物)
【0285】
【化42】
【0286】
[[C]化合物]
Z−1〜Z−14:上記式(Z−1)〜(Z−14)で表される化合物
【0287】
[[E]溶媒]
E−1:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
E−2:シクロヘキサノン
【0288】
[[F]偏在化促進剤]
F−1:γ−ブチロラクトン
【0289】
[[G]他の酸拡散制御剤]
G−1:トリフェニルスルホニウムアセチルアセテート(下記式(G−1)で表される化合物)
G−2:トリフェニルスルホニウム2,4,6−トリi−プロピルベンゼンスルホネート(下記式(G−2)で表される化合物)
G−3:トリフェニルスルホニウム10−カンファースルホネート(下記式(G−3)で表される化合物)
G−4:N−(ウンデカン−1−イルカルボニルオキシエチル)モルホリン(下記式(G−4)で表される化合物)
【0290】
【化43】
【0291】
[ArF露光用感放射線性樹脂組成物の調製]
[実施例15]
[A]重合体としての(A−1)100質量部、[B]酸発生剤としての(B−1)8.5質量部、[C]化合物としての(Z−1)2.3質量部、[D]重合体としての(D−1)3質量部、[E]溶媒としての(E−1)2,240質量部及び(E−2)960質量部、並びに[F]偏在化促進剤としての(F−1)30質量部を配合し、孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過することにより感放射線性樹脂組成物(J1−1)を調製した。表2中の「−」は、該当する成分を用いなかったことを示す。
【0292】
[実施例16〜32及び比較例1〜7]
下記表2に示す種類及び配合量の各成分を用いた以外は、実施例15と同様に操作して、各感放射線性樹脂組成物を調製した。
【0293】
【表2】
【0294】
[実施例33]
[A]重合体としての(A−5)100質量部、[B]酸発生剤としての(B−1)20質量部、[C]化合物としての(Z−1)3.6質量部、並びに[E]溶媒としての(E−1)4,280質量部及び(E−2)1,830質量部を配合し、孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過することにより感放射線性樹脂組成物(J2−1)を調製した。表3中の「−」は、該当する成分を用いなかったことを示す。
【0295】
[実施例34〜53及び比較例8〜17]
下記表3に示す種類及び含有量の各成分を用いた以外は、実施例33と同様に操作して、各感放射線性樹脂組成物を調製した。
【0296】
【表3】
【0297】
<レジストパターンの形成>
(ArF露光の場合)
[レジストパターンの形成(1)]
12インチのシリコンウエハ表面に、スピンコーター(東京エレクトロン社の「CLEAN TRACK ACT12」)を使用して、下層反射防止膜形成用組成物(ブルワーサイエンス社の「ARC66」)を塗布した後、205℃で60秒間加熱することにより膜厚105nmの下層反射防止膜を形成した。この下層反射防止膜上に、上記スピンコーターを使用して上記調製した各感放射線性樹脂組成物を塗布し、90℃で60秒間PBを行った。その後、23℃で30秒間冷却し、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜を、ArFエキシマレーザー液浸露光装置(NIKON社の「NSR−S610C」)を用い、NA=1.3、ダイポール(シグマ0.977/0.782)の光学条件にて、40nmラインアンドスペース(1L1S)マスクパターンを介して露光した。露光後、90℃で60秒間PEBを行った。その後、アルカリ現像液としての2.38質量%のTMAH水溶液を用いてアルカリ現像し、水で洗浄し、乾燥してポジ型のレジストパターンを形成した。このレジストパターン形成の際、ターゲット寸法が40nmの1対1ラインアンドスペースのマスクを介して形成した線幅が、線幅40nmの1対1ラインアンドスペースに形成される露光量を最適露光量とした。
【0298】
[レジストパターンの形成(2)]
上記[レジストパターンの形成(1)]においてTMAH水溶液の代わりに酢酸n−ブチルを用いて有機溶媒現像し、かつ水での洗浄を行わなかった以外は、上記[レジストパターンの形成(1)]と同様に操作して、ネガ型のレジストパターンを形成した。
【0299】
(電子線露光の場合)
[レジストパターンの形成(3)]
8インチのシリコンウエハ表面にスピンコーター(東京エレクトロン社の「CLEAN
TRACK ACT8」)を使用して、上記調製した感放射線性樹脂組成物を塗布し、90℃で60秒間PBを行った。その後、23℃で30秒間冷却し、膜厚50nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜に、簡易型の電子線描画装置(日立製作所社の「HL800D」、出力:50KeV、電流密度:5.0A/cm
2)を用いて電子線を照射した。照射後、120℃で60秒間PEBを行った。その後、アルカリ現像液としての2.38質量%のTMAH水溶液を用いて23℃で30秒間現像し、水で洗浄し、乾燥してポジ型のレジストパターンを形成した。
【0300】
[レジストパターンの形成(4)]
上記[レジストパターンの形成(3)]においてTMAH水溶液の代わりに酢酸n−ブチルを用いて有機溶媒現像し、かつ水での洗浄を行わなかった以外は、上記[レジストパターンの形成(3)]と同様に操作して、ネガ型のレジストパターンを形成した。
【0301】
<評価>
上記各感放射線性樹脂組成物を用いて形成したレジストパターンについて、LWR性能、CDU性能、解像性、断面形状の矩形性、焦点深度、露光余裕度及びMEEF性能を下記方法に従い評価した。その結果を表4及び表5にそれぞれ示す。上記レジストパターンの測長には、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社の「CG−4100」)を用いた。LWR性能、CDU性能、解像性、焦点深度、露光余裕度及びMEEF性能について比較対象とする比較例としては、実施例15については比較例1〜4と、実施例16〜29については比較例1と、実施例30については比較例5と、実施例31については比較例6と、実施例32については比較例7と、実施例33については比較例8〜11と、実施例34〜47については比較例8と、実施例48については比較例12、実施例49については比較例13と、実施例50については比較例14と、実施例51については比較例15ととした。実施例52については比較例16と、実施例53については比較例17とした。
なお、実施例15について、比較例1を比較対象としたものは実施例15−1、比較例2を比較対象としたものは実施例15−2、比較例3を比較対象としたものは実施例15−3、比較例4を比較対象としたものは実施例15−4として表4に示す。実施例33について、比較例8を比較対象としたものは実施例33−1、比較例9を比較対象としたものは実施例33−2、比較例10を比較対象としたものは実施例33−3、比較例11を比較対象としたものは実施例33−4として表5に示す。表4及び表5中の「−」は判定基準であることを表す。
【0302】
[LWR性能]
上記Eopの露光量を照射して形成したレジストパターンを、上記走査型電子顕微鏡を用いてパターン上部から観察した。線幅を任意のポイントで計50点測定し、その測定値の分布から3シグマ値を求め、これをLWR性能とした。LWR性能は、その値が小さいほどラインのガタつきが小さく良いことを示す。LWR性能は、その値を比較例のものと比べたとき、10%以上の向上(LWR性能の値が90%以下)があった場合は「良好」と、10%未満の向上(LWR性能の値が90%超)の場合は「不良」と評価した。
【0303】
[CDU性能]
上記Eopの露光量を照射して形成したレジストパターンを、上記走査型電子顕微鏡を用いてパターン上部から観察した。400nmの範囲で線幅を20点測定してその平均値を求め、その平均値を任意のポイントで計500点測定し、その測定値の分布から3シグマ値を求め、これをCDU性能とした。CDU性能は、その値が小さいほど長周期での線幅のバラつきが小さく良いことを示す。CDU性能は、その値を比較例のものと比べたとき、10%以上の向上(CDU性能の値が90%以下)があった場合は「良好」と、10%未満の向上(CDU性能の値が90%超)の場合は「不良」と評価した。
【0304】
[解像性]
上記Eopの露光量を照射して解像される最小のレジストパターンの寸法を測定し、この測定値を解像性とした。解像性は、その値が小さいほどより微細なパターンを形成でき良いことを示す。解像性は、その値を比較例のものと比べたとき、10%以上の向上(解像性の値が90%以下)があった場合は「良好」と、10%未満の向上(解像性の値が90%超)の場合は「不良」と評価した。
【0305】
[断面形状の矩形性]
上記Eopの露光量を照射して解像されるレジストパターンの断面形状を観察し、レジストパターンの高さ方向での中間での線幅Lb及びレジストパターンの上部での線幅Laを測定した。断面形状の矩形性は、その値が1に近いほど、レジストパターンがより矩形であり良いことを示す。断面形状の矩形性は、0.9≦(La/Lb)≦1.1である場合は「良好」と、(La/Lb)<0.9又は1.1<(La/Lb)である場合は「不良」と評価した。
【0306】
[焦点深度]
上記Eopの露光量を照射して解像されるレジストパターンにおいて、深さ方向にフォーカスを変化させた際の寸法を観測し、ブリッジや残渣が無いままパターン寸法が基準の90%〜110%に入る深さ方向の余裕度を測定し、この測定値を焦点深度とした。焦点深度は、その値が大きいほど、焦点の位置が変動した際に得られるパターンの寸法の変動が小さく、デバイス作製時の歩留まりを高くすることができる。焦点深度は、その値を比較例のものと比べたとき10%以上の向上(焦点深度が110%以上)があった場合は「良好」と、10%未満の向上(焦点深度が110%未満)の場合は「不良」と評価した。
【0307】
[露光余裕度]
上記Eopを含む露光量の範囲において、露光量を1mJ/cm
2ごとに変えて、それぞれレジストパターンを形成し、上記走査型電子顕微鏡を用いて、それぞれの線幅を測定した。得られた線幅と露光量の関係から、線幅が44nmとなる露光量E(44)、及び線幅が36nmとなる露光量E(36)を求め、露光余裕度=(E(36)−E(44))×100/(最適露光量)の式から露光余裕度(%)を算出した。露光余裕度は、その値が大きいほど、露光量が変動した際に得られるパターンの寸法の変動が小さく、デバイス作製時の歩留まりを高くすることができる。露光余裕度は、その値を比較例のものと比べたとき、10%以上の向上(露光余裕度の値が110%以上)があった場合は「良好」と、10%未満の向上(露光余裕度の値が110%未満)の場合は「不良」と評価した。
【0308】
[MEEF性能]
上記Eopの露光量を照射して解像されるレジストパターンにおいて、線幅が51nm、53nm、55nm、57nm、59nmとなるマスクパターンを用いて形成されたレジストパターンの線幅を縦軸に、マスクパターンのサイズを横軸にプロットしたときの直線の傾きを算出し、これをMEEF性能とした。MEEF性能は、その値が1に近いほどマスク再現性が良好であることを示す。MEEF性能は、その値を比較例のものと比べたとき、10%以上の向上(MEEF性能の値が90%以下)があった場合は「良好」と、10%未満の向上(MEEF性能の値が90%超)の場合は「不良」と評価した。
【0309】
【表4】
【0310】
【表5】
【0311】
表4及び表5の結果から明らかなように、実施例の感放射線性樹脂組成物はArF露光及び電子線露光の場合、かつアルカリ現像及び有機溶媒現像の場合とも、LWR性能、CDU性能、解像性、断面形状の矩形性、焦点深度、露光余裕度及びMEEF性能に優れている。比較例では、これらの各特性が実施例に比べて劣っており、断面形状の矩形性も不良であった。一般的に、電子線露光によれば、EUV露光の場合と同様の傾向を示すことが知られており、従って、実施例の感放射線性樹脂組成物によれば、EUV露光の場合においても、LWR性能等に優れると推測される。
【0312】
<保存安定性>
上記感放射線性樹脂組成物(J1−1)〜(J1−14)及び(CJ1−1)を35℃で3ヶ月保管したのち、各感放射線性樹脂組成物の濁り具合を目視にて確認した。保存安定性は、濁りが確認されなかった場合は「良好」と、濁りが確認された場合は「不良」と評価した。その結果を表6に示す。
【0313】
【表6】
【0314】
表6の結果から明らかなように、実施例の感放射線性樹脂組成物は良好な保存安定性を有している。比較例の感放射線性樹脂組成物では保存安定性は不良であった。
また、GC−MS分析により、比較例の組成物では、[D]重合体に含まれる(M−15)に由来する構造単位の分解生成物が観測された。これに対し、実施例の組成物では、対応する分解生成物は観測されなかった。
これらの差異は、実施例における酸発生剤の−CO−C
−−COO−と、比較例の−CO−C
−−CO−との構造が相違していることに起因すると考えられる。