(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明における前後方向及び左右方向は、車両の前後方向及び左右方向に対応している。さらに、重力の方向を下方とし、その逆を上方とする。
また、以下の第1〜3実施形態は何れも共通(同一)のプラットフォームを有する車体構造を用いているが、適用車種がそれぞれ異なっている。以下、順に説明するが、第1実施形態は、そのプラットフォームの構造自体を説明するもので、比較的車高が低く車重が小さいセダン等の軽量車種に適用する場合には、追加部材を用いずにこのプラットフォームのみで車体構造を構成する。
【0014】
第2実施形態は、第1実施形態のプラットフォームを比較的車高が高く車重が大きいSUV等の重量車種に適用する場合のもので、補強用構造部材である第1及び第2の追加部材を第1実施形態のプラットフォームに結合して車体構造を構成する。
第3実施形態は、第1実施形態のプラットフォームを電気自動車の一つであるハイブリッド電気自動車に適用する場合のもので、電気自動車用バッテリケースの井桁状骨格構造である第1及び第3の追加部材及び補強用構造部材である第2の追加部材を第1実施形態のプラットフォームに結合して車体構造を構成する。
また、各実施形態に係るプラットフォームは、モノコックボディの車体構造の主要素であり、フレーム構造のフレームと区別するためにサブフレームとも呼ぶ。
【0015】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態に係る車体構造を示す模式的な図であり、
図1(a)は平面図,
図1(b)は側面図である。また、
図2は、本実施形態に係る結合点を示す
図1(a)のA−A矢視断面図である。
【0016】
[1.基本的な構成]
[1−1.全体構成]
まず、
図1を参照して、本実施形態に係る車体構造の全体構成を説明する。
図1に示すプラットフォーム9は、モノコックボディを有する複数の車種で車体構造に共用可能なサブフレームを形成している。このプラットフォーム9は、セダン等の比較的車重の小さい軽量車種の車体構造100にそのまま適用される。
【0017】
図1に示すように、プラットフォーム9は、車長方向(前後方向)に延びる部材として、フロントサイドメンバ1,サイドシル5及びリヤフロアサイドメンバ7を何れも左右一対ずつ備えている。また、プラットフォーム9は、車幅方向(左右方向)に延びる部材として、フロントクロスメンバ2,フロントフロアサイドブレース4,第1リヤクロスメンバ6及び第2リヤクロスメンバ8を備えている。なお、
図1(b)に示す側面図では、サイドシル5及びフロントフロアサイドブレース4を省略している。
【0018】
上述した各部材は、自身の横断面(各部材の長手方向に垂直な平面で切断した面)あるいは接合するフロアパネル等と合体した横断面が矩形状の閉断面形状を形成するように、例えば鋼板がプレス加工されたものである。また、各部材の板厚は、軽量車種の車体構造100に要求される強度や剛性を満たすように、適宜の大きさに設定されている。
【0019】
[1−2.フロントサイドメンバ]
左右一対のフロントサイドメンバ1,1は、軽量車種の車体構造100の前側部及び中央部に亘って、車幅方向に互いに離隔して配設されている。各フロントサイドメンバ1は、前方から順に、前方水平部1a,傾斜部1b,後方水平部1cを有している。
【0020】
前方水平部1aは、車長方向に沿って略水平に延設された部位である。傾斜部1bは、前方水平部1aの後端で屈曲され後方且つ下方に向かって傾斜した部位である。後方水平部1cは、傾斜部1bの後端で屈曲され車長方向に沿って略水平に延設された部位である。後方水平部1cは、軽量車種の車体構造100の車室下部空間101に位置し、その後部が後述する第1リヤクロスメンバ6に結合されている。
【0021】
なお、各フロントサイドメンバ1の前端部には、車幅方向に延在するフロントエンドクロスメンバ及びフロントバンパ(何れも図示略)が取り付けられる。また、ここではフロントサイドメンバ1が1部材で形成されるものとしているが、フロントサイドメンバ1は、例えば上述の前方水平部1a,傾斜部1b及び後方水平部1cがそれぞれ別の部材で形成され、これらの部材が結合されることにより構成されてもよい。
【0022】
[1−3.フロントクロスメンバ]
図1(b)に示すように、フロントサイドメンバ1の前方水平部1aの後端付近には、フロントクロスメンバ2のアーム部2aの上端部が下方から結合されている。また、フロントサイドメンバ1の傾斜部1bの後端付近には、フロントクロスメンバ2の基部2bの後端部が結合されている。フロントクロスメンバ2の基部2bは、一対のフロントサイドメンバ1,1の間に架設されており、基部2bの前側部分から上方のフロントサイドメンバ1,1に向かって左右一対のアーム部2a,2aがそれぞれ延設されている。
【0023】
[1−4.サイドシル]
左右一対のフロントサイドメンバ1,1の各後方水平部1cの外方(車体外側)には、左右一対のサイドシル5,5がそれぞれフロントサイドメンバ1の後方水平部1cと等しい高さで略水平に配設されている。各サイドシル5は、対応するフロントサイドメンバ1と車幅方向に離隔して配置され、これらの間には車幅方向に向いた複数のフロントフロアサイドブレース4が各フロントサイドメンバ1の後方水平部1c及び各サイドシル5と等しい高さで略水平に架設されている。換言すると、各サイドシル5は、フロントフロアサイドブレース4を介して対応するフロントサイドメンバ1に結合されている。
【0024】
ここに示す例では、各サイドシル5に対して3本(前方から順に4A,4B,4Cと符号を付す。)のフロントフロアサイドブレース4が車長方向に互いに離隔して配設されている。これら3本のうち、最も前方に位置するフロントフロアサイドブレース4Aの車長方向位置はサイドシル5の前端部に対応している。
【0025】
また、これより後方のフロントフロアサイドブレース4B,4Cの車長方向位置は、これらの上面に配設されるフロアパネルを介して後に車幅方向に延設されるフロントシートクロスメンバ10A,10B(
図1(b)参照)の車長方向位置にそれぞれ対応している。なお、フロントシートクロスメンバ10A,10Bは、下方に向けて開放されたハット型断面形状を有する補強部材であり、図示しないフロアパネルと相まって閉断面を形成する。また、フロントフロアサイドブレース4の本数は上記のものに限定されない。
【0026】
[1−5.リヤフロアサイドメンバ]
一対のサイドシル5,5の後部には、一対のリヤフロアサイドメンバ7,7が車幅方向に互いに離隔して配設されている。各リヤフロアサイドメンバ7は、軽量車種の車体構造100の後方側に位置し、前方から順に、傾斜部7a,水平部7bを有している。
傾斜部7aは、後方に向かって車体中心側且つ上方に傾斜した部位であり、前端部が対応するサイドシル5の上面に結合されている。水平部7bは、傾斜部7aの後端で屈曲され車長方向に沿って略水平に延設された部位である。
【0027】
[1−6.第1リヤクロスメンバ]
一対のリヤフロアサイドメンバ7,7の間には、第1リヤクロスメンバ6が架設されている。第1リヤクロスメンバ6は、左右端部が各リヤフロアサイドメンバ7の前端部に結合されていると共に、各フロントサイドメンバ1の後端部上面にも結合されている。
【0028】
[1−7.第2リヤクロスメンバ]
第1リヤクロスメンバ6から後方に一定距離だけ離隔した位置には、第2リヤクロスメンバ8が配設されている。第2リヤクロスメンバ8の左右端部は、各リヤフロアサイドメンバ7の水平部7bに結合されている。
第1リヤクロスメンバ6,第2リヤクロスメンバ8及び一対のリヤフロアサイドメンバ7,7によって囲まれた空間内には、燃料タンク用空間12が設けられている。燃料タンク用空間12には、軽量車種の車体構造100に後付けされるエンジン(図示略)用の燃料を貯留するための燃料タンク(図示略)が配設される。
【0029】
[2.特徴的な構成]
[2−1.フロントサイドメンバセンタ]
次に、プラットフォーム9の特徴的な構成について説明する。
まず、上記に説明したフロントサイドメンバ1に設けられているフロントサイドメンバセンタ11について説明する。
【0030】
図1(a)に示すように、各フロントサイドメンバ1には、車体内方に延設されたフロントサイドメンバセンタ11が設けられている。各フロントサイドメンバセンタ11は、前端部がフロントサイドメンバ1の傾斜部1bの前方部分に接合され、傾斜部1bの後方部分と側面視で重なり合うように、車体内方かつ後方に向かって延設されている。
各フロントサイドメンバセンタ11の後端部11aは、サイドシル5の前端部よりも後方に配置され、車長方向に沿って後方に向けられている。各後端部11aには、後述する追加部材41を結合可能な結合点21,21が形成されている。
【0031】
フロントサイドメンバセンタ11は、プラットフォーム9を構成する上述した他部材と同様に、図示しないフロアパネルを下方から支持する。なお、ここではフロントサイドメンバセンタ11がフロントサイドメンバ1に接合されるものとしているが、フロントサイドメンバセンタ11は、フロントサイドメンバ1に例えばボルト及びナットなどで締結されてもよい。
【0032】
[2−2.結合点]
次に、プラットフォーム9に形成される結合点について説明する。結合点は、プラットフォーム9において、追加部材を結合可能な構造を有する箇所である。
図1では、各結合点を符号「×」で模式的に示している。
図1に示すように、それぞれのフロントサイドメンバセンタ11,11の後端部11a,11a及び第1リヤクロスメンバ6には、車長方向に配設される追加部材(第1の追加部材)41,44(
図3及び
図4参照)を結合可能な結合点(第1の結合点)21がそれぞれ形成されている。
【0033】
また、フロントクロスメンバ2には、車長方向に配設される追加部材(第2の追加部材)42(例えば
図3参照)を結合可能な結合点(第2の結合点)22が形成されている。さらに、一対のフロントサイドメンバ1,1の後方水平部1c,1cの各対向箇所には、側面視でフロントフロアサイドブレースと重なる(ラップ)位置の車幅方向に配設される追加部材(第3の追加部材)43(
図4参照)を結合可能な結合点(第3の結合点)23がそれぞれ形成されている。
【0034】
各結合点21,22,23には、適用される結合方法に応じて適宜の構造が形成される。
図2に示すように、ここでは結合点22において締結による結合が想定されており、追加部材42をボルト25によって締結するための締結用部材24が適用されている。
なお、
図2は結合点22に追加部材42が結合された状態を示しているが、軽量車種の車体構造100には、結合点22に追加部材42が結合されていないプラットフォーム9が適用されている。
【0035】
締結用部材24は、例えば鋼板を折り曲げ加工したものであり、略コの字状の横断面形状を有している。締結用部材24は、互いに平行に延びる上壁部24b及び下壁部24cと、これらの各一端部を接続し、これらと垂直に延びる側壁部24dとを有している。上壁部24b及び下壁部24cは、追加部材42の高さ方向の寸法に対応する距離だけ互いに離隔しており、それぞれに締結用のボルト25が挿通される孔部24aが穿設されている。
【0036】
側壁部24bは、部材外側面(
図2中右側の面)がフロントクロスメンバ2のアーム部2aに対して前方(
図2中左側)からスポット溶接等により接合されている。つまり、締結用部材24は、結合点22の一部として予めプラットフォーム9に取り付けられているものであり、追加部材42を必要に応じて結合可能にしている。
なお、追加部材42は、例えば、横断面(車長方向に垂直な平面で切断した面)形状が略矩形の閉断面を形成するように鋼板を加工したものである。追加部材42の一端部には、ボルト25が挿通される孔部42aが穿設されている。
【0037】
結合点22に追加部材42を結合する場合、まず、締結用部材24の側壁部24dの部材内側面(
図2中左側の面)に対して追加部材42の一端部を当接させ、追加部材42を締結用部材24の上壁部24b及び下壁部24cで上下方向から挟持した状態で、ボルト25を各孔部24a,42aに上方から挿通し、下方でナット26と締結する。これによって、プラットフォーム9の結合点22に追加部材42が結合される。
【0038】
なお、他の結合点21,23にも
図2に示す結合点22と同様の構造を形成することができるが、これらの結合点21,22,23は上述したものに限らず、適宜の構造に形成することができる。例えば、上述したボルト25及びナット26の代わりに溶接やリベット等を使用してもよい。また、締結用部材24を適用せず、例えばフロントクロスメンバ2のアーム部2aと追加部材42とを直接締結可能な構造としてもよく、あるいは、追加部材41,42,43,44の形状等によっては締結用部材24に更にブラケット等を介して締結等を行なってもよい。
【0039】
[3.作用及び効果]
本実施形態に係るプラットフォーム9は、上述のように構成されているので、以下のような作用及び効果を奏する。
各フロントサイドメンバ1にはフロントサイドメンバセンタ11が設けられ、各フロントサイドメンバセンタ11及び第1リヤクロスメンバ6には、追加部材41,44を結合可能な結合点21が形成されている。また、フロントクロスメンバ2には、追加部材42を結合可能な結合点22が形成され、フロントサイドメンバ1の後方水平部1cの各対向箇所には、追加部材43を結合可能な結合点23がそれぞれ形成されている。
【0040】
このため、プラットフォーム9に対して適宜追加部材41,42,43,44を結合することによって、車体の強度や剛性を向上させることができる。したがって、例えば軽量車種の車体構造100に対してより強度や剛性が必要とされる他車種の車体構造においても、プラットフォーム9を共用しながらその車種の車体構造に必要とされる強度や剛性を確保することができる。
【0041】
つまり、車体の強度や剛性は、プラットフォーム9に対して追加部材41,42,43,44を選択的に結合することによって調整することができ、さらに、各追加部材41,42,43,44の材料や形状を適宜設定したりすることによっても調整することができる。例えば、車体の強度や剛性を大きく向上させたい場合、追加部材41,42,43,44を強度や剛性の大きい材料によって形成したり板厚の大きいものに形成したりして対応することができる。
【0042】
このように、プラットフォーム9によれば、複数の車種それぞれに応じた強度や剛性を確保することができるため、適用される車種によって車体の強度や剛性が不足したり、逆に強度や剛性が過剰になって車体の製造コストや重量が増加したりすることを抑制することができる。したがって、プラットフォーム9によれば、様々な車種で共用可能であると共に、適用される車種に応じて車体に所定の強度や剛性を持たせることができるため、製造コストを抑制することができ、さらに市場のニーズに対して迅速に対応することもできる。
【0043】
また、上述したプラットフォーム9の結合点22には締結用部材24が適用されているため、ボルト25を用いて比較的容易に追加部材42を締結することができる。このため、プラットフォーム9を他の車種において共用する場合、比較的容易に且つ迅速に対応することができ、生産性を向上させることができる。
【0044】
<第2実施形態>
次に、
図3を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
図3は、本実施形態に係る重量車種の車体構造を示す模式的な図であり、
図3(a)は平面図,
図3(b)は側面図である。
図3において、
図1と同符号は同様のものを示し、これらの説明は省略する。
【0045】
[1.構成]
本実施形態では、上述した第1実施形態のプラットフォーム9を重量車種の車体構造200に適用している。重量車種の車体構造200は、上述した軽量車種よりも車重が大きく必要とされる強度や剛性も大きいSUV(Sport Utility Vehicle)やMPV(Multi Purpose Vehicle)等の自動車の車体構造である。
【0046】
図3に示すように、重量車種の車体構造200のサブフレームは、プラットフォーム9に対して追加部材41,42が一対ずつ追加されたものである。つまり、重量車種の車体構造200には、上述した軽量車種の車体構造100にも適用されるプラットフォーム9が共用されている。なお、
図3(b)に示す側面図では、サイドシル5及びフロントフロアサドブレース4を省略している。
【0047】
各追加部材41,42は、プラットフォーム9を重量車種の車体構造200に適合させるための補強用構造部材であり、横断面(部材長手方向に垂直な平面で切断した面)形状が閉断面を形成するように鋼板を加工したものである。一対の追加部材41,41は、車長方向に沿って略水平に且つ互いに平行に延設され、何れも結合点21の締結用部材24を介して、前端部が対応するフロントサイドメンバセンタ11の後端部11aに結合されると共に後端部が第1リヤクロスメンバ6の下面に結合されている。
【0048】
各追加部材42は、第1実施形態で
図2を参照して説明したものと同様の形状に形成され、フロントサイドメンバ1の下方且つやや車体中心側に、車長方向に沿って略水平に延設されている。追加部材42の後端部は、第1実施形態で
図2を参照して説明したように、結合点22の締結用部材24を介してフロントクロスメンバ2のアーム部2aに結合されている。また、追加部材42の前端部は、フロントサイドメンバ1の前端部よりもやや後方に位置し、フロントサイドメンバ1の前端部と同様に何れも図示しないフロントエンドクロスメンバ及びフロントバンパに接続されている。
なお、追加部材41,42の形状,板厚及び材料等は、重量車種の車体構造200に必要とされる強度や剛性に応じて適宜のものに設定されている。
【0049】
[2.作用及び効果]
本実施形態によれば、プラットフォーム9に対して、プラットフォーム9を重量車種の車体構造200に適合させるための補強用構造部材である追加部材41,42がそれぞれ結合点21,22の締結用部材24を介して結合されているため、例えば上述したような軽量車種の車体構造100とプラットフォーム9を共用可能でありながら、重量車種の車体構造200に必要とされる強度や剛性を確保することができる。
【0050】
特に前突時には、衝撃エネルギが各フロントサイドメンバ1の前端部だけでなく各追加部材42の前端部からも車体に入力されるため、衝撃エネルギを分散させて受けることができる。また、車体に入力された衝撃エネルギは、フロントサイドメンバセンタ11の後端部11aから追加部材41を通って後方に流れるため、衝撃エネルギが伝達される経路が増加することによって衝撃エネルギを車体全体に効率的に分散させることができる。したがって、車体の強度や剛性を効率よく向上させることができるため、補強用の構造部材を必要最低限にすることができ、車体の重量増を抑制することができる。
その他、本実施形態によれば、上述した第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0051】
<第3実施形態>
次に、
図4を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。
図4は、本実施形態に係る電気自動車の車体構造を示す模式的な図であり、
図4(a)は平面図,
図4(b)は側面図である。
図4において、
図1と同符号は同様のものを示し、これらの説明は省略する。
【0052】
[1.構成]
本実施形態では、上述した第1実施形態のプラットフォーム9を電気自動車の車体構造300に適用している。電気自動車は、比較的重量の大きいバッテリを搭載していることから、重量車種でもある。
【0053】
図4(a)に示すように、電気自動車の車体構造300は、一対のフロントサイドメンバ1,1の後方水平部1c,1cの間に井桁状骨格構造を有するバッテリケース31と、この後方に燃料タンク用空間12´とを装備している。電気自動車の車体構造300のサブフレームは、プラットフォーム9に対して追加部材42,43,44が一対ずつ追加されたものである。つまり、電気自動車の車体構造300には、上述した軽量車種の車体構造100及び重量車種の車体構造200にも適用されるプラットフォーム9が共用されている。
【0054】
なお、
図4(b)に示す側面図では、サイドシル5及びフロントフロアサイドブレース4を省略している。また、ここでは電気自動車が内燃機関(エンジン)及びモータの両方を駆動源とするハイブリッド電気自動車である例を示しているが、電気自動車はモータのみを駆動源とするものであってもよい。この場合、燃料タンク用空間12´は省略可能であり、その分、バッテリケース31の車長方向寸法を後方に向かって長く設定し、バッテリの容量を大きくすることが可能である。
【0055】
追加部材43,44は、横断面(部材長手方向に垂直な平面で切断した面)形状が略矩形の閉断面を形成するように鋼板を加工したもので、互いに井桁状に組まれてバッテリケース31の骨格構造を構成している。
一対の追加部材44,44は、車長方向に沿って略水平に且つ互いに平行に延設され、何れも結合点21の締結用部材24を介して、前端部が対応するフロントサイドメンバセンタ11の後端部11aに下方から結合され、後端部が第1リヤクロスメンバ6に下方から図示しないブラケットを介して結合されている。
【0056】
また、一対の追加部材43は、車幅方向に沿って略水平に且つ互いに平行に延設され、何れも結合点23の締結用部材24を介して、左右端部が対応するフロントサイドメンバ1の後方水平部1cに下方から結合されている。
なお、バッテリケース31の内部には、電気自動車の車体構造300に後付けされる走行用モータのためのバッテリ(図示略)が収容されている。このバッテリの容量は、電気自動車に必要な航続距離に応じて設定され、これに応じてバッテリケース31の大きさも設定される。
【0057】
このため、
図4(b)に示すように、プラットフォーム9は、フロントサイドメンバセンタ11の後端部11aの位置が電気自動車の航続距離に応じて設定されていることが好ましい。つまり、フロントサイドメンバセンタ11の後端部11aの位置は、これよりも後方にバッテリケース31を装備するための十分な空間が確保されるように設定されていることが好ましい。
【0058】
図5に示すように、追加部材43,44は、高さ方向の寸法がバッテリケース31の高さ方向の寸法よりも小さく設定されており、バッテリケース31の底面と同一面上に載置され、バッテリケース31と一体に形成されている。このようにして追加部材43,44と内部にバッテリを含むバッテリケース31とでバッテリユニット30が構成されている。
【0059】
バッテリユニット30では、追加部材44の前端部及び後端部がバッテリケース31の前方及び後方にそれぞれ突出し、各追加部材43の左右端部がバッテリケース31の左右側方にそれぞれ突出している。バッテリユニット30は、プラットフォーム9に対して下方から配設され、突出した各端部がプラットフォーム9の対応する箇所に結合される。
なお、追加部材42は、上述した重量車種の車体構造200に適用されるものと同様の構造であるため、ここでは詳細な説明を省略する。また、各追加部材42,43,44の形状,板厚及び材料等は、電気自動車の車体構造300やバッテリユニット30に必要とされる強度や剛性に応じて適宜のものに設定されている。
【0060】
[2.作用及び効果]
本実施形態によれば、重量車種に適合させるための補強用構造部材である追加部材42が結合点22の締結用部材24を介してプラットフォーム9に結合されているため、例えば上述したような軽量車種の車体構造100及び重量車種の車体構造200とプラットフォーム9を共用可能でありながら、重量車種である電気自動車の車体構造300に必要とされる強度や剛性を確保することができる。
【0061】
また、追加部材43,44が電気自動車の車体構造300に取り付けられるバッテリケース31の井桁状骨格構造を形成しているため、結合点21,23の締結用部材24を介してバッテリケース31をプラットフォーム9に対して比較的容易に結合することができる。
【0062】
また、特に前突時には、衝撃エネルギが各フロントサイドメンバ1の前端部だけでなく各追加部材42の前端部からも車体に入力されるため、衝撃エネルギを分散させて受けることができる。また、車体に入力された衝撃エネルギは、フロントサイドメンバセンタ11の後端部11aから追加部材44を通って車長方向後方へも流れ、さらに追加部材44から追加部材43を通って車幅方向外方へも流れる。
【0063】
このように、衝撃エネルギが伝達される経路が増加することによって、衝撃エネルギを車体全体に効率的に分散させることができる。したがって、車体の強度や剛性を効率よく向上させることができるため、補強用の構造部材を必要最低限にすることができ、車体の重量増を抑制することができる。
【0064】
また、通常、電気自動車に装備される走行用モータのためのバッテリは重量が大きく、これを収容するバッテリケース31及び車体には大きな強度や剛性が必要とされるが、本実施形態によれば、追加部材43,44をバッテリケース31の井桁状骨格構造として利用したことにより、バッテリケース31を確実に支持し保護しながらプラットフォーム9の強度や剛性を向上させることができる。
その他、本実施形態によれば、上述した第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0065】
<その他>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができると共に、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
【0066】
例えば、上記にはプラットフォーム9を軽量車種の車体構造100,重量車種の車体構造200及び電気自動車の車体構造300で共用する例を示したが、本発明の車体構造はこれらの車種に限らず、様々な車種で共用することができる。
また、結合点21,22,23は、対応する追加部材41,42,43,44を結合可能な構造であればよく、上記のものに限定されない。さらに、締結用部材24の形状及び材料等は上記のものに限定されず、適宜変更可能である。
また、各追加部材41,42,43,44の形状,材料及び個数等は、上記のものに限定されず、プラットフォーム9が適用される車種に応じて適宜変更することができる。