特許第6183216号(P6183216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6183216二次電池電極形成用組成物、二次電池電極、及び二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183216
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】二次電池電極形成用組成物、二次電池電極、及び二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/02 20060101AFI20170814BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20170814BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20170814BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   H01M4/02 Z
   H01M4/62 Z
   H01M4/62 C
   H01M4/62 B
   H01M4/04 A
   H01M4/66 A
【請求項の数】3
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-556517(P2013-556517)
(86)(22)【出願日】2013年2月1日
(86)【国際出願番号】JP2013052360
(87)【国際公開番号】WO2013115368
(87)【国際公開日】20130808
【審査請求日】2015年11月10日
(31)【優先権主張番号】特願2012-20475(P2012-20475)
(32)【優先日】2012年2月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】諸石 順幸
(72)【発明者】
【氏名】春田 一成
(72)【発明者】
【氏名】八手又 彰彦
【審査官】 小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−529608(JP,A)
【文献】 特開2006−054096(JP,A)
【文献】 特開2011−071047(JP,A)
【文献】 特開2000−348537(JP,A)
【文献】 特開平11−283630(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/123137(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/02−4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極活物質(A)、もしくは導電助剤である炭素材料(B)の少なくとも一方と、水溶性添加剤(C)と、水(D)とを含有する、二次電池電極形成用組成物であって、
前記水溶性添加剤(C)が、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールジアセタート、トリエチレングリコールジアセタート、プロピレングリコールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,4−ブタンジオールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、16個の酸素原子を有するポリエチレングリコール、γ−ブチロラクトン、および、δ−バレロラクトンからなる群から選択され、
前記水溶性添加剤(C)の含有量が、前記二次電池電極形成用組成物に対して0.1〜30重量%であることを特徴とする、二次電池電極形成用組成物。
【請求項2】
集電体と、請求項1に記載の二次電池電極形成用組成物から形成される合材層もしくは電極下地層の少なくも一層とを具備する、二次電池用電極。
【請求項3】
正極と負極と電解液とを具備する二次電池であって、前記正極もしくは前記負極の少なくとも一方が請求項2に記載の二次電池用電極である、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池電極形成用組成物、及びその組成物を用いて得られる電極、並びにその電極を用いて得られる二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラや携帯電話のような小型携帯型電子機器が広く用いられるようになってきた。これらの電子機器には、容積を最小限にし、かつ重量を軽くすることが常に求められてきており、搭載される電池においても、小型、軽量かつ大容量の電池の実現が求められている。また、自動車搭載用等の大型二次電池においても、従来の鉛蓄電池に代えて、大型二次電池の実現が望まれている。
【0003】
そのような要求に応えるため、リチウムイオン二次電池、アルカリ二次電池などの二次電池の開発、例えば、電極の形成に使用される合材インキの開発が活発に行われている。また、合材層の下地層の形成に使用される下地層形成用組成物にも関心が集まりつつある。
【0004】
電極の形成に使用される合材インキや下地層形成用組成物に求められる重要特性としては、活物質や導電助剤が適度に分散されてなる均一性と、合材インキや下地層形成用組成物乾燥後に形成される電極の柔軟性および密着性が挙げられる。
【0005】
合材インキ中の活物質や導電助剤の分散状態や下地層形成用組成物中の導電助剤の分散状態が、合材層中の活物質や導電助剤の分布状態や下地層中の導電助剤の分布状態に関連しており、電極物性に影響し、ひいては電池性能に影響する。
【0006】
そのため、活物質や導電助剤の分散は重要な課題である。とりわけ導電性に優れた炭素材料(導電助剤)は、ストラクチャーや比表面積が大きいため凝集力が強く、合材インキ中であれ、下地層形成用組成物中であれ、均一混合・分散することが困難である。
【0007】
そして、導電助剤である炭素材料の分散性や粒度の制御が不十分な場合、均一な導電ネットワークが形成されないために電極の内部抵抗の低減が図れず、その結果、電極材料の性能を十分に引き出せないという問題が生じている。
【0008】
また、導電助剤だけでなく、合材インキ中の活物質の分散が不十分であると、そのような合材インキから形成される合材層中に部分的凝集が生じる。そして、部分的凝集に起因して電極上に抵抗分布が生じ、電池として使用した際の電流集中が生じ、部分的な発熱および劣化が促進される等の不具合が生じることがある。
【0009】
また、合材インキや下地層形成用組成物には、集電体として機能する金属箔表面に塗工可能とするための適度な流動性が求められる。さらに、表面ができるだけ平坦で厚みが均一な合材層や下地層を形成するために、合材インキや下地層形成用組成物には、適度な粘性も求められる。
【0010】
一方、合材インキから形成された合材層や下地層形成用組成物から形成された下地層は、形成された後、基材たる金属箔ごと所望の大きさ・形状の切片に切り分けられたり、打ち抜かれたりする。そこで、切り分け加工や打ち抜き加工によって、傷つかない堅さと割れたり剥がれたりしない柔軟性と密着性が、合材層や下地層には要求される。
【0011】
また、電極の柔軟性および密着性は電池性能に大きく影響を与えるため重要である。
【0012】
合材インキから形成された合材層や下地層形成用組成物から形成された下地層は、柔軟性が悪くてひび割れが起こると、電極の均一な導電ネットワークが崩壊してしまうため、電極の導電性低下を引き起こして電池寿命劣化に繋がってしまう。
【0013】
また、電極の密着性が悪いと、充放電時のリチウムイオンのインターカレーション・デインターカレーションに伴う活物質の膨張・収縮による電極構造の崩壊や集電体からの電極剥離を引き起こしてしまい、電池寿命劣化に繋がってしまう。
【0014】
その中でも、水を媒体とした合材インキや下地層形成用組成物から形成される電極の柔軟性の発現は非常に困難である。
【0015】
特許文献1〜4には、活物質と導電材を混合し、この混合物をセルロース系増粘剤水溶液とともに混練した後、さらに4フッ化ポリエチレン、ラテックス系などの水性バインダーを加え、さらに混練して合材インキを得る旨開示されている。しかし、これらの合材インキは、分散状態が不十分であり電極の柔軟性や密着性に乏しく、所望の電極が作製できないため、良好な電池性能が得られないなどの問題があった。
【0016】
また、特許文献5〜7には、密着性を課題として下記のような検討がなされている。
【0017】
特許文献5には、リチウムイオン電池負極において、N−メチル−2−ピロピドン、アルコール、アセトン、水などの極性溶媒と、シクロヘキサン、n−へキサン、ベンゼンなどの非極性溶媒を併用して製造される負極用活物質スラリーおよび該製造方法が開示されている。
【0018】
また、特許文献6には、アルコール、N−メチルピロリドンまたはアセトンなどの水溶性有機溶媒を使用して活物質を分散させた後、水を添加して、更にスチレン・ブタジエン共重合体等の結着剤を添加して調製された分散液から得られる電池用電極の製造方法が開示されている。
【0019】
また、特許文献7には、リチウムイオン電池負極用スラリーにおいて、黒鉛質粉末を非晶質炭素材料で被覆してなる電極活物質と、結着剤と水とを含有する該スラリー中へ、水溶性有機化合物であるN−メチルピロリドンを添加した方法が開示されている。
【0020】
しかし、これらの方法では密着性の改善は十分ではなく、さらなる向上が求められている。また、電極の柔軟性についても改善不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開平2−158055号公報
【特許文献2】特開平9−082364号公報
【特許文献3】特開2003−142102号公報
【特許文献4】特開2010−165493号公報
【特許文献5】特開平9−293498号公報
【特許文献6】特開2003−142082号公報
【特許文献7】特開2006−54096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、充放電サイクル特性に優れる二次電池を形成するための電極形成用組成物であって、活物質や導電助剤の分散性や電極の柔軟性および密着性に優れる電極形成用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、炭素原子、酸素原子、水素原子からなる水溶性添加剤であって、且つ、1分子中に酸素原子を2〜20個有する水溶性添加剤(C)の利用により、電極活物質(A)や導電助剤である炭素材料(B)の分散性を損なうことなく電極の柔軟性および密着性を向上できたものである。
【0024】
即ち、本発明は、電極活物質(A)、もしくは導電助剤である炭素材料(B)の少なくとも一方と、炭素原子、酸素原子、水素原子からなる水溶性添加剤であって、且つ、1分子中に酸素原子を2〜20個有する水溶性添加剤(C)と、水(D)とを含有する、二次電池電極形成用組成物に関する。
【0025】
更に、前記水溶性添加剤(C)が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする前記二次電池電極形成用組成物であることが好ましい。
X−Y−Z 一般式(1)
(Xは、水素原子、カルボキシル基、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルコキシル基、置換または無置換のアシル基、または置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基であり、
Yは、直接結合、置換または無置換のアルキレン基、または置換または無置換のアルコキシレン基であり、
Zは、水酸基、カルボキシル基、置換または無置換のアルコキシル基、置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基、または置換または無置換のアシルオキシ基であり、
XとZとが一体となって環を形成してもよい。)
【0026】
更に、前記一般式(1)において、
Xは、水素原子、カルボキシル基、置換または無置換のアルキル基、または、アシル基であり、
Yは、−(O−R−)n−で表される基であり、
Rは置換または無置換の炭素数1〜5のアルキレン基であり、nは1〜19の整数であることを特徴とする前記二次電池電極形成用組成物であることが好ましい。
【0027】
また、本発明は、前記水溶性添加剤(C)の含有量が、前記二次電池電極形成用組成物に対して0.1〜30重量%であることを特徴とする前記二次電池電極形成用組成物に関する。
【0028】
また、本発明は、集電体と、前記二次電池電極形成用組成物から形成される合材層もしくは電極下地層の少なくも一層とを具備する二次電池用電極に関する。
【0029】
また、本発明は、正極と負極と電解液とを具備する二次電池であって、前記正極もしくは前記負極の少なくとも一方が、前記二次電池用電極である、二次電池に関する。
【発明の効果】
【0030】
特定の構造を有する水溶性添加剤の利用により、電極形成用組成物中の活物質や導電助剤である炭素材料の分散性を損ねることなく、柔軟性及び集電体への密着性に優れる合材層や下地層を形成でき、充放電サイクル特性に優れる二次電池を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
<二次電池用の電極>
二次電池用の電極は、種々の方法で得ることができる。
例えば、金属箔等の集電体の表面に、
(1)活物質と水とを含有するインキ状組成物(以下、合材インキという)や、
(2)活物質と導電助剤と水とを含有する合材インキや、
(3)活物質とバインダーと水とを含有する合材インキや、
(4)活物質と導電助剤とバインダーと水とを含有する合材インキを、
用いて合材層を形成し、電極を得ることができる。
【0032】
あるいは、金属箔の集電体の表面に、導電助剤と液状媒体とを含有する下地層形成用組成物を用い、下地層を形成し、該下地層上に、上記の合材インキ(1)〜(4)やその他の合材インキ用いて合材層を形成し、電極を得ることもできる。
【0033】
いずれの場合であっても、活物質や導電助剤の分散状態や、電極の柔軟性や密着性が電池性能を左右することは背景技術の項で詳述した。
【0034】
従って、本発明の二次電池電極形成用組成物は、活物質を必須とする合材インキとしても、活物質を必須とはしない下地層形成用組成物としても活用できる。
【0035】
<水溶性添加剤(C)>
そこで、まず本発明における、炭素原子、酸素原子、水素原子からなる水溶性添加剤であって、且つ、1分子中に酸素原子を2〜20個有する水溶性添加剤(C)について説明する(以下、水溶性添加剤(C)と略記する)。
【0036】
本発明の水溶性添加剤(C)とは、25℃の水99g中に水溶性添加剤(C)1g入れて撹拌し、25℃で24時間放置した後、分離・析出せずに水中で相溶することが可能なものである。
【0037】
水溶性添加剤(C)の添加により、二次電池電極形成用組成物の乾燥時の硬化収縮を低減させることができる。乾燥時の硬化収縮により合材層や下地層にひび割れが起こりやすいと、電極の取り扱いが難しくなるだけでなく、ひいては電極とした時の均一な導電ネットワークが崩壊してしまうために、電極の導電性低下を引き起こしてしまい、電池寿命劣化を招く。また、乾燥時の硬化収縮を低減させることで集電体との密着性も改善されたと推察している。
【0038】
また、水溶性添加剤(C)は、表面張力に影響を及ぼすだけでなく、活物質または導電助剤の分散性を悪化させないことが重要である。活物質または導電助剤である炭素材料の分散性が不十分な場合、電極の柔軟性や密着性が悪化してしまうだけでなく、充放電特性にも悪影響を及ぼす。
【0039】
そのためには、水溶性添加剤(C)1分子中に酸素原子を2〜20個有することが重要である。1分子中に酸素原子を1個有する場合は、水との相溶性が悪くて二次電池電極形成用組成物中の活物質または導電助剤である炭素材料の分散性を低下させてしまう恐れがある。また、1分子中に酸素原子を21個以上有する場合は、水と相溶性はあるが、水中の活物質または導電助剤である炭素材料との相溶性が悪くて合材インキの分散性を低下させてしまう恐れがある。上記の観点から、さらに好ましくは酸素原子の数が2〜20個の水溶性添加剤である。
【0040】
従って、本発明では炭素原子、酸素原子、水素原子からなる水溶性添加剤であって、且つ、1分子中に酸素原子を2〜20個有する水溶性添加剤(C)が使用され、好ましくは上述の一般式(1)で表される水溶性添加剤(C)である。
【0041】
次に、本発明の一般式(1)で表される水溶性添加剤(C)の構造について詳細に説明する。
【0042】
Xは、水素原子、カルボキシル基、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルコキシル基、置換または無置換のアシル基、または置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基である。好ましくは水素原子、カルボキシル基、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアシル基、であり、さらに好ましくは水素原子、置換または無置換のアルキル基である。
【0043】
ここで、Xにおける無置換のアルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルキル基、または炭素数2〜60であり場合により1個以上の−O−で中断されている直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルキル基が挙げられる。
【0044】
炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、tert−オクチル基、ネオペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボロニル基、4−デシルシクロヘキシル基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。好ましくは炭素数1〜8の直鎖状、分岐鎖状アルキル基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、またはブチル基である。
【0045】
また、炭素数2〜60であり場合により−O−の1個以上により中断されている直鎖状、分岐鎖状アルキル基の具体例としては、−CH−O−CH、−CH−CH−O−CH−CH、−CH−CH−CH−O−CH−CH、−(CH−CH−O)n1−CH(ここでn1は1〜19の整数である)、−(CH−CH−O)n2−H(ここでn2は1〜19の整数である)、−(CH−CH−CH−O)m1−CH(ここでm1は1〜19の整数である)、−(CH−CH−CH−O)m2−H(ここでm2は1〜19の整数である)、−CH−CH(CH)−O−CH−CH、−CH−CH−(OCH等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。好ましくは炭素数1〜28であり場合により−O−の1個以上により中断されている直鎖状、分岐鎖状アルキル基であり、さらに好ましくは−CH−O−CH、−CH−CH−O−CH−CH、−(CH−CH−O)n3−CH(ここでn3は1〜9の整数である)、−(CH−CH−O)n4−H(ここでn4は1〜9の整数である)、−(CH−CH−CH−O)m3−CH(ここでm1は1〜9の整数である)、−(CH−CH−CH−O)m4−H(ここでm2は1〜9の整数である)である。
【0046】
炭素数2〜60であり場合により−O−の1個以上により中断されている単環状または縮合多環状アルキル基の具体例としては、以下のようなものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
【化1】
【0048】
Xにおける無置換のアルコキシル基としては、炭素原子数1〜20の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルコキシル基、または炭素数2〜60であり場合により1個以上の−O−で中断されている直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルコキシル基が挙げられる。
【0049】
炭素原子数1〜20の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルコキシル基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、イソペンチルオキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、sec−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、tert−オクチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、アダマンチルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、ボロニルオキシ基、4−デシルシクロヘキシルオキシ基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。好ましくは炭素数1〜8の直鎖状、分岐鎖状アルコキシル基であり、さらに好ましくはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基である。
【0050】
また、炭素数2〜60であり場合により1個以上の−O−で中断されている直鎖状、分岐鎖状アルコキシル基の具体例としては、−O−CH−O−CH、−O−CH−CH−O−CH−CH、−O−CH−CH−CH−O−CH−CH、−(O−CH−CHn5−O−CH−CH(ここでn5は1〜18の整数である)、−(O−CH−CHn6−OH(ここでn6は1〜18の整数である)、−(O−CH−CH−CHm5−O−CH−CH−CH(ここでm5は1〜18の整数である)、−(O−CH−CH−CHm6−OH(ここでm6は1〜18の整数である)、−(O−CHCH−CH−O−CHCH−CH(ここでtは1〜18の整数である)、−O−CH−CH(CH)−O−CH−CH、−O−CH−CH−(OCH等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。好ましくは炭素数2〜28あり場合により1個以上の−O−で中断されている直鎖状、分岐鎖状アルコキシル基である。
【0051】
炭素数2から18であり場合により−O−の1個以上により中断されている単環状または縮合多環状アルコキシル基の具体例としては、以下のようなものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
【化2】
【0053】
Xにおける無置換のアシル基としては、水素原子または炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状の脂肪族基が結合したカルボニル基が挙げられ、具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、アクリロイル基、メタクロイル基、シクロペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
Xにおける置換もしくは未置換のアルコキシカルボニル基としては、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基が挙げられ、具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
Yは、直接結合、置換または無置換のアルキレン基、Yは、置換または無置換のアルコキシレン基を表す。
【0056】
Yにおける置換もしくは無置換のアルキレン基としては、一般式(1)のXで説明した置換もしくは未置換のアルキル基と同一の置換基から1個の水素原子を除いてできる二価の基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
Yにおける置換もしくは未置換のアルコキシレン基としては、一般式(1)のXで説明した置換もしくは未置換のアルコキシル基と同一の置換基から1個の水素原子を除いてできる二価の基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
また、Yは好ましくは、−(O−R−)n−で表される基であり、Rは置換または無置換の炭素数1〜5のアルキレン基であり、nは1〜19の整数であり、さらに好ましくは、nは1〜10の整数である。
【0059】
Rにおける置換もしくは未置換の炭素数1〜5のアルキレン基としては、前述のアルキレン基として例示したもので炭素数1〜5のアルキレン基と同一の基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
また、Yが−(O−R−)n−の場合は、水溶性添加剤(C)は分子量分布を有する複数の化合物の混合物の形態でも使用することができる。
【0061】
Zは、水酸基、カルボキシル基、置換または無置換のアルコキシル基、置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基、または置換または無置換のアシルオキシ基である。好ましくは水酸基、置換または無置換のアルコキシル基、または置換または無置換のアシルオキシ基であり、さらに好ましくは水酸基、置換または無置換のアルコキシル基である。
【0062】
Zにおける未置換のアルコキシル基としては、前述のアルコキシル基として例示したものと同一の置換基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
Zにおける未置換のアルコキシカルボニル基としては、前述のアルコキシカルボニル基として例示したものと同一の置換基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
Zにおける置換もしくは未置換のアシルオキシ基としては、水素原子または炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状の脂肪族が結合したカルボニルオキシ基が挙げられ、具体例としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、バレリルオキシ基、イソバレリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ラウロイルオキシ基、ミリストイルオキシ基、パルミトイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、シクロペンチルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基等が挙げられる。好ましくは炭素数1〜10の直鎖状、分岐鎖状アシルオキシ基を有するものであり、さらに好ましくはアセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、である。
【0065】
XとZとが一体となって環を形成してもよい。XとZとが一体となって環を形成する場合、形成される部位としては、直接結合、−CO−、または−CO−O−、−O−CO−O−が挙げられる。好ましくは、直接結合、または−CO−であり、さらに好ましくは−CO−である。
【0066】
上述したX、Y、Zは、さらに他の置換基で置換されていてもよく、そのような他の置換基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、炭素数が1〜20であるアルキル基、アルコキシル基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基等が挙げられる。
【0067】
以上述べた水溶性添加剤(C)の特に好ましい具体例としては、以下に例示するグリコール類、ジオール類、エステル類、カーボネート類が挙げられる。
【0068】
グリコール類としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールジアセタート、トリエチレングリコールジアセタート、プロピレングリコールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,4−ブタンジオールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、トリアセチン、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル等が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0069】
ジオール類としては、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、(酸素原子数2〜20の)ポリエチレングリコール、(酸素原子数2〜20の)ポリプロピレングリコール等が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0070】
エステル類としては、乳酸エチル、コハク酸、メチルコハク酸、レブリン酸、グルタル酸、ジオキサン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、1,5−ジオキセパン−2−オン、シクロペンタンカルボン酸等が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0071】
カーボネート類としては、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、等が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0072】
これらの水溶性添加剤(C)は単独で使用しても良く、複数を混合して使用することもできる。
【0073】
水、あるいは活物質や導電助剤と相溶性の観点から、水溶性添加剤(C)の分子量は50〜1500が好ましい。より好ましくは50〜1000である。
【0074】
水溶性添加剤(C)の含有量は、二次電池電極形成用組成物100重量%中、0.1〜30重量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜15重量%である。上記範囲であると、活物質や導電助剤の分散に与える影響と、柔軟性や密着性に与える効果のバランスが最適となるからである。0.1重量%より少ないと、柔軟性や密着性の改善効果が見られない場合がある。また、30重量%より多いと、活物質や導電助剤の分散に悪影響を与える恐れがある。
【0075】
<合材インキ>
前記したように、本発明の二次電池電極形成用組成物は、合材インキとしても使用できるし、下地層形成用組成物としても使用できる。
【0076】
そこで、本発明の二次電池電極形成用組成物の好適な態様の1つである活物質を必須とする合材インキについて説明する。合材インキは、正極合材インキまたは負極合材インキがあり、既に説明したように、それぞれ下記(1)〜(4)に示すような種々の態様がある。
(1)活物質(A)と水溶性添加剤(C)と水(D)とを含有する合材インキ。
(2)前記(1)に導電助剤(B)をさらに含有する合材インキ。
(3)前記(1)にバインダーをさらに含有する合材インキ。
(4)前記(1)に導電助剤(B)とバインダーとをさらに含有する合材インキ。
【0077】
<リチウムイオン二次電池用の正極活物質>
リチウムイオン二次電池用の正極活物質としては、特に限定はされないが、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能な金属酸化物、金属硫化物等の金属化合物、および導電性高分子等を使用することができる。
【0078】
例えば、Fe、Co、Ni、Mn等の遷移金属の酸化物、リチウムとの複合酸化物、遷移金属硫化物等の無機化合物等が挙げられる。具体的には、MnO、V、V13、TiO等の遷移金属酸化物粉末、層状構造のニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、スピネル構造のマンガン酸リチウムなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物粉末、オリビン構造のリン酸化合物であるリン酸鉄リチウム系材料、TiS、FeSなどの遷移金属硫化物粉末等が挙げられる。
【0079】
また、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子を使用することもできる。また、上記の無機化合物や有機化合物を混合して用いてもよい。
【0080】
<リチウムイオン二次電池用の負極活物質>
リチウムイオン二次電池用の負極活物質としては、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能なものであれば特に限定されない。例えば、金属Li、その合金であるスズ合金、シリコン合金、鉛合金等の合金系、LiFe、LiFe、LiWO、チタン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、ケイ素酸リチウム等の金属酸化物系、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン等の導電性高分子系、ソフトカーボンやハードカーボンといった、アモルファス系炭素質材料や、高黒鉛化炭素材料等の人造黒鉛、あるいは天然黒鉛等の炭素質粉末、カーボンブラック、メソフェーズカーボンブラック、樹脂焼成炭素材料、気層成長炭素繊維、炭素繊維などの炭素系材料が挙げられる。これら負極活物質は、1種または複数を組み合わせて使用することもできる。
【0081】
<アルカリ二次電池用の正極活物質や負極活物質>
また、ニッケル水素二次電池などのアルカリ二次電池用の正極活物質や負極活物質としては、従来から公知のものを適宜選択することができる。
【0082】
ニッケル水素二次電池用の正極活物質や負極活物質としては、従来から公知のものを適宜選択することができる。例えば、正極活物質としては水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケル、酸化ニッケル等のニッケル化合物である。負極の活物質として用いられる水素吸蔵合金は、例えば、LaNi5等のAB5型(希土類系)、Tini、Ti2Ni等のAB/A2B型(チタン系)やZrNi系、MgNi系等がある。その他、LaNi5のLaをミッシュメタルMmに代えて、Niの一部をMnやCoで置換したMnNi2Co3、MmNi4Co等や、これにさらにAlを追加した合金組成Mm(Ni、Mn、Co等)m(Al、Cr等)n等が挙げられる。
【0083】
<電極活物質(A)>
電極活物質(A)は上述した正極活物質や負極活物質のことである。これら電極活物質(A)の大きさは、0.05〜100μmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜50μmの範囲内である。そして、合材インキ中の電極活物質(A)の分散粒径は、0.5〜20μmであることが好ましい。ここでいう分散粒径とは、体積粒度分布において、粒子径の細かいものからその粒子の体積割合を積算していったときに、50%となるところの粒子径(D50)であり、一般的な粒度分布計、例えば、動的光散乱方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)等で測定される。
【0084】
<導電助剤である炭素材料(B)>
次に、導電助剤である炭素材料(B)について説明する。
【0085】
本発明における導電助剤である炭素材料(B)としては、導電性を有する炭素材料であれば特に限定されるものではないが、グラファイト、カーボンブラック、導電性炭素繊維(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンファイバー)、フラーレン等を単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。導電性、入手の容易さ、およびコスト面から、カーボンブラックの使用が好ましい。
【0086】
カーボンブラックとしては、気体もしくは液体の原料を反応炉中で連続的に熱分解し製造するファーネスブラック、特にエチレン重油を原料としたケッチェンブラック、原料ガスを燃焼させて、その炎をチャンネル鋼底面にあて急冷し析出させたチャンネルブラック、ガスを原料とし燃焼と熱分解を周期的に繰り返すことにより得られるサーマルブラック、特にアセチレンガスを原料とするアセチレンブラックなどの各種のものを単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。また、通常行われている酸化処理されたカーボンブラックや、中空カーボン等も使用できる。
【0087】
カーボンの酸化処理は、カーボンを空気中で高温処理したり、硝酸や二酸化窒素、オゾン等で二次的に処理したりすることより、例えばフェノール基、キノン基、カルボキシル基、カルボニル基の様な酸素含有極性官能基をカーボン表面に直接導入(共有結合)する処理であり、カーボンの分散性を向上させるために一般的に行われている。しかしながら、官能基の導入量が多くなる程カーボンの導電性が低下することが一般的であるため、酸化処理をしていないカーボンの使用が好ましい。
【0088】
用いるカーボンブラックの比表面積は、値が大きいほど、カーボンブラック粒子どうしの接触点が増えるため、電極の内部抵抗を下げるのに有利となる。具体的には、窒素の吸着量から求められる比表面積(BET)で、20m/g以上、1500m/g以下、好ましくは50m/g以上、1500m/g以下、更に好ましくは100m/g以上、1500m/g以下のものを使用することが望ましい。比表面積が20m/gを下回るカーボンブラックを用いると、十分な導電性を得ることが難しくなる場合があり、1500m/gを超えるカーボンブラックは、市販材料での入手が困難となる場合がある。
【0089】
また、用いるカーボンブラックの粒径は、一次粒子径で0.005〜1μmが好ましく、特に、0.01〜0.2μmが好ましい。ただし、ここでいう一次粒子径とは、電子顕微鏡などで測定された粒子径を平均したものである。
【0090】
導電助剤である炭素材料(B)の合材インキ中の分散粒径は、0.03μm以上、5μm以下に微細化することが望ましい。導電助剤としての炭素材料の分散粒径が0.03μm未満の組成物は、その作製が難しい場合がある。また、導電助剤としての炭素材料の分散粒径が5μmを超える組成物を用いた場合には、合材塗膜の材料分布のバラつき、電極の抵抗分布のバラつき等の不具合が生じる場合がある。
【0091】
ここでいう分散粒径とは、体積粒度分布において、粒子径の細かいものからその粒子の体積割合を積算していったときに、50%となるところの粒子径(D50)であり、一般的な粒度分布計、例えば、動的光散乱方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)等で測定される。
【0092】
市販のカーボンブラックとしては、例えば、トーカブラック#4300、#4400、#4500、#5500等(東海カーボン社製、ファーネスブラック)、プリンテックスL等(デグサ社製、ファーネスブラック)、Raven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULTRA等、Conductex SC ULTRA、Conductex 975 ULTRA等、PUER BLACK100、115、205等(コロンビヤン社製、ファーネスブラック)、#2350、#2400B、#2600B、#30050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、#5400B等(三菱化学社製、ファーネスブラック)、MONARCH1400、1300、900、VulcanXC−72R、BlackPearls2000等(キャボット社製、ファーネスブラック)、Ensaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、SuperP−Li(TIMCAL社製)、ケッチェンブラックEC−300J、EC−600JD(アクゾ社製)、デンカブラック、デンカブラックHS−100、FX−35(電気化学工業社製、アセチレンブラック)等、グラファイトとしては例えば人造黒鉛や燐片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛などの天然黒鉛が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0093】
導電性炭素繊維としては石油由来の原料から焼成して得られるものが良いが、植物由来の原料からも焼成して得られるものも用いることができる。例えば石油由来の原料で製造される昭和電工社製のVGCFなどを挙げることができる。
【0094】
<バインダー>
合材インキは、バインダーをさらに含有することもできる。
【0095】
本発明の中のバインダーとは、導電助剤やその他活物質などの粒子を結着させるために使用されるものであり、それら粒子を溶媒中へ分散させる効果は小さいものである。
【0096】
バインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、カルボキシメチルセルロース等のセルロース樹脂、スチレン−ブタジエンゴムやフッ素ゴム等の合成ゴム、ポリアニリンやポリアセチレン等の導電性樹脂等、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、及びテトラフルオロエチレン等のフッ素原子を含む高分子化合物が挙げられる。また、これらの樹脂の変性物、混合物、又は共重合体でも良い。これらバインダーは、1種または複数を組み合わせて使用することもできる。
【0097】
また、バインダーとしては水媒体のものが好ましく、水媒体のバインダーの形態としては、水溶性型、エマルション型、ハイドロゾル型等が挙げられ、適宜選択することができる。
【0098】
<合材インキの調製>
さらに、合材インキには、成膜助剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、pH調整剤、粘性調整剤などを必要に応じて配合できる。
【0099】
塗工方法によるが、固形分30〜90重量%の範囲で、合材インキの粘度は、100mPa・s以上、30,000mPa・s以下とするのが好ましい。
【0100】
塗工可能な粘度範囲内において、活物質(A)はできるだけ多く含まれることが好ましく、例えば、合材インキ固形分に占める活物質(A)の割合は、80重量%以上、99重量%以下が好ましい。
【0101】
導電助剤(B)を含む場合、合材インキ固形分に占める導電助剤(B)の割合は、0.1〜15重量%であることが好ましい。
【0102】
バインダーを含む場合、合材インキ固形分に占めるバインダーの割合は、0.1〜15重量%であることが好ましい。
【0103】
このような合材インキは、例えば以下に示すように、種々の方法で得ることができる。
【0104】
活物質(A)と導電助剤(B)と水溶性添加剤(C)とバインダーと水(D)とを含有する、(4)の合材インキの場合を例にとって説明する。
【0105】
(4−1) 活物質(A)と水溶性添加剤(C)と水(D)とを含有する活物質の水性分散体を得、該水性分散体に導電助剤(B)とバインダーとを加え、合材インキを得ることができる。導電助剤(B)とバインダーは、同時に加えることもできるし、導電助剤(B)を加えた後、バインダーを加えてもよいし、その逆であってもよい。
【0106】
(4−2) 導電助剤(B)と水溶性添加剤(C)と水(D)と含有する導電助剤の水性分散体を得、該水性分散体に活物質(A)とバインダーとを加え、合材インキを得ることができる。活物質(A)とバインダー同時に加えることもできるし、活物質(A)を加えた後、バインダーを加えてもよいし、その逆であってもよい。
【0107】
(4−3) 活物質(A)と水溶性添加剤(C)とバインダーと水(D)と含有する活物質の水性分散体を得、該水性分散体に導電助剤(B)を加え、合材インキを得ることができる。
【0108】
(4−4) 導電助剤(B)と水溶性添加剤(C)バインダーと水(D)と含有する導電助剤の水性分散体を得、該水性分散体に活物質(A)を加え、合材インキを得ることができる。
【0109】
(4−5) 活物質(A)と導電助剤(B)と水(D)と含有する水性分散体を得、該水溶性添加剤(C)とバインダーを加え、合材インキを得ることができる。
【0110】
(4−6) 活物質(A)と導電助剤(B)と水溶性添加剤(C)とバインダーと水(D)をほとんど同時に混合し、合材インキを得ることができる。
【0111】
<分散機・混合機>
合材インキを得る際に用いられる装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機、混合機が使用できる。
【0112】
例えば、ディスパー、ホモミキサー、若しくはプラネタリーミキサー等のミキサー類;エム・テクニック社製「クレアミックス」、若しくはPRIMIX社「フィルミックス」等のホモジナイザー類;ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、若しくはコボールミル等のメディア型分散機;湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、若しくは奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機;または、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、分散機としては、分散機からの金属混入防止処理を施したものを用いることが好ましい。
【0113】
例えば、メディア型分散機を使用する場合は、アジテーター及びベッセルがセラミック製又は樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーター及びベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。そして、メディアとしては、ガラスビーズ、または、ジルコニアビーズ、若しくはアルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましい。また、ロールミルを使用する場合についても、セラミック製ロールを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用しても良いし、複数種の装置を組み合わせて使用しても良い。また、強い衝撃で粒子が割れたり、潰れたりしやすい正または負極活物質の場合は、メディア型分散機よりは、ロールミルやホモジナイザー等のメディアレス分散機が好ましい。
【0114】
<下地層形成用組成物>
前記したように、本発明の二次電池電極形成用組成物は、合材インキとしても使用できる他、下地層形成用組成物としても使用できる。
【0115】
下地層形成用組成物は、導電助剤(B)と水溶性添加剤(C)と水(D)とを含有する。さらにバインダーを含有することもできる。各成分については、合材インキの場合と同様である。
【0116】
電極下地層に用いる組成物の総固形分に占める導電助剤としての炭素材料(B)の割合は、5重量%以上、95重量%以下が好ましく、10重量%以上、90重量%以下が更に好ましい。導電助剤である炭素材料(B)が少ないと、下地層の導電性が保てない場合があり、一方、導電助剤である炭素材料(B)が多すぎると、塗膜の耐性が低下する場合がある。また、電極下地層インキの適正粘度は、電極下地層インキの塗工方法によるが、一般には、10mPa・s以上、30,000mPa・s以下とするのが好ましい。
【0117】
<電極>
本発明の二次電池電極形成用組成物のうち合材インキを、集電体上に塗工・乾燥し、合材層を形成し、二次電池用電極を得ることができる。
【0118】
あるいは、本発明の二次電池電極形成用組成物のうち下地層形成用組成物を、集電体上に下地層を形成し、該下地層上に、合材層を設け、二次電池用電極を得ることもできる。下地層上に設ける合材層は、上記した本発明の合材インキ(1)〜(4)を用いて形成してもよいし、他の合材インキを用いて形成することもできる。
【0119】
<集電体>
電極に使用する集電体の材質や形状は特に限定されず、各種二次電池にあったものを適宜選択することができる。
【0120】
例えば、集電体の材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、又はステンレス等の金属や合金が挙げられる。リチウムイオン電池の場合、特に正極材料としてはアルミニウムが、負極材料としては銅が、それぞれ好ましい。
【0121】
また、形状としては、一般的には平板上の箔が用いられるが、表面を粗面化したものや、穴あき箔状のもの、及びメッシュ状の集電体も使用できる。
【0122】
集電体上に合材インキや下地層形成用組成物を塗工する方法としては、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。
【0123】
具体的には、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法または静電塗装法等が挙げることができ、乾燥方法としては放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0124】
また、塗布後に平版プレスやカレンダーロール等による圧延処理を行っても良い。電極合材層の厚みは、一般的には1μm以上、500μm以下であり、好ましくは10μm以上、300μm以下である。また、下地層を具備する場合には下地層と合材層との厚みの合計は、一般的には1μm以上、500μm以下であり、好ましくは10μm以上、300μm以下である。
【0125】
<二次電池>
正極もしくは負極の少なくとも一方に上記の電極を用い、二次電池を得ることができる。
【0126】
二次電池としては、リチウムイオン二次電池の他、アルカリ二次電池、鉛蓄電池、ナトリウム硫黄二次電池、リチウム空気二次電池等が挙げられ、それぞれの二次電池で従来から知られている、電解液やセパレーター等を適宜用いることができる。
【0127】
<電解液>
リチウムイオン二次電池の場合を例にとって説明する。電解液としては、リチウムを含んだ電解質を非水系の溶剤に溶解したものを用いる。
【0128】
電解質としては、LiBF、LiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、Li(CFSON、LiCSO、Li(CFSOC、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF、LiSCN、又はLiBPh等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0129】
非水系の溶剤としては特に限定はされないが、例えば、以下に示すカーボネート類、ラクトン類、グライム類、エステル類、スルホキシド類、ニトリル類等が挙げられる。
【0130】
カーボネート類としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジエチルカーボネート等が挙げられる。
【0131】
ラクトン類としては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、及びγ−オクタノイックラクトン等が挙げられる。
【0132】
グライム類としては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,2−メトキシエタン、1,2−エトキシエタン、及び1,2−ジブトキシエタン等が挙げられる。
【0133】
エステル類としては、メチルフォルメート、メチルアセテート、及びメチルプロピオネート等が挙げられる。
【0134】
スルホキシド類としては、ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等が挙げられる。
【0135】
ニトリル類としては、アセトニトリル等が挙げられる。
【0136】
また、これらの溶剤は、それぞれ単独で使用しても良いが、2種以上を混合して使用しても良い。
【0137】
さらに上記電解液を、ポリマーマトリクスに保持しゲル状とした高分子電解質とすることもできる。ポリマーマトリクスとしては、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するアクリレート系樹脂、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリホスファゼン系樹脂、及びポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリシロキサン等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0138】
<セパレーター>
セパレーターとしては、例えば、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリアミド不織布及びそれらに親水性処理を施したものが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0139】
<電池構造・構成>
本発明の組成物を用いたリチウムイオン二次電池の構造については特に限定されないが、通常、正極及び負極と、必要に応じて設けられるセパレーターとから構成され、ペーパー型、円筒型、ボタン型、積層型等、使用する目的に応じた種々の形状とすることができる。
【実施例】
【0140】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。尚、実施例および比較例における「部」は「重量部」を表す。
【0141】
[実施例1]
正極活物質としてLiFePO 45部、導電助剤である炭素材料としてアセチレンブラック(デンカブラックHS−100)2.5部、カルボキシメチルセルロース2重量%水溶液50部(固形分として1部)をミキサーに入れて混合し、さらに水溶性添加剤MTG(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)2部、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン30−J:三井・デュポンフロロケミカル社製、60%水系分散体)2.5部を混合して最終固形分が約50重量%となるように調整を行い、正極二次電池電極用合材インキを得た。以下の方法にて、正極二次電池電極用合材インキとしての分散度を求めた。
【0142】
さらに、この正極二次電池電極用合材インキを集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥して電極の厚みが100μmとなるよう調整し、電極の柔軟性を後述する方法にて評価した。
【0143】
さらに、ロールプレスによる圧延処理を行い、厚みが85μmとなる正極を作製し、電極の密着性を後述する方法にて評価した。
【0144】
次に、得られた正極を、直径16mmに打ち抜き作用極と、金属リチウム箔対極と、作用極及び対極の間に挿入されるセパレーター(多孔質ポリプロピレンフィルム)と、電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを1:1(体積比)の割合で混合した混合溶媒にLiPFを1Mの濃度で溶解させた非水系電解液)とからなるコイン型電池を作製した。コイン型電池はアルゴンガス置換したグローブボックス内で行い、コイン型電池作製後、後述する電池特性評価(充放電サイクル特性)を行った。
【0145】
[実施例2〜9]、[比較例1〜10]
表1に示す活物質、導電助剤である炭素材料、水溶性添加剤を用いて、実施例1と同様の手順で正極二次電池電極用合材インキ、および正極を得、同様に評価した。この際、活物質にLCO、LMO又はNMCを用いた正極二次電池電極用合材インキについても、最終固形分が約50重量%となるように調整した。
【0146】
[実施例19]
正極活物質であるLiFePO 45部、導電助剤である炭素材料としてアセチレンブラック(デンカブラックHS−100)2.5部、カルボキシメチルセルロース2重量%水溶液50部(固形分として1部)をミキサーに入れて混合し、さらに水溶性添加剤MTG0.25部、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン30−J:三井・デュポンフロロケミカル社製、60%水系分散体)2.5部を混合して最終固形分が約50重量%となるように調整を行い、正極二次電池電極用合材インキを得た。
【0147】
さらに、この正極二次電池電極用合材インキを集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥して電極の厚みが100μmとなるよう調整し、電極の柔軟性を後述する方法にて評価した。
【0148】
さらに、ロールプレスによる圧延処理を行い、厚みが85μmとなる正極を作製し、電極の密着性を後述する方法にて評価した。
【0149】
次に、得られた正極を、直径16mmに打ち抜き作用極と、金属リチウム箔対極と、作用極及び対極の間に挿入されるセパレーター(多孔質ポリプロピレンフィルム)と、電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを1:1(体積比)の割合で混合した混合溶媒にLiPFを1Mの濃度で溶解させた非水系電解液)とからなるコイン型電池を作製した。コイン型電池はアルゴンガス置換したグローブボックス内で行い、コイン型電池作製後、後述する電池特性評価(充放電サイクル特性)を行った。
【0150】
[比較例20]
水溶性添加剤にPEO2000(ポリエチレングリコール2000:和光純薬社製)を用いた以外は実施例19と同様の手順で正極二次電池電極用合材インキを得た。また、実施例19と同様にして正極を得、同様に評価した。
【0151】
[実施例20]
正極活物質であるLiMn 45部、導電助剤である炭素材料としてアセチレンブラック(デンカブラックHS−100)2部およびカーボンナノチューブ(VGCF−H:昭和電工社製)0.5部、カルボキシメチルセルロース2重量%水溶液50部(固形分として1部)をミキサーに入れて混合し、さらに水溶性添加剤PD(1,3−プロパンジオール)10部、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン30−J:三井・デュポンフロロケミカル社製、60%水系分散体)2.5部を混合して正極二次電池電極用合材インキを得た以外は、実施例19と同様にして正極を得、同様に評価した。
【0152】
[比較例21]
水溶性添加剤にエタノールを用いた以外は実施例20と同様の手順で正極二次電池電極用合材インキを得た。また、実施例19と同様にして正極を得、同様に評価した。
【0153】
[実施例21]
正極活物質であるLiFePO 45部、導電助剤である炭素材料としてアセチレンブラック(デンカブラックHS−100)2.5部、カルボキシメチルセルロース2重量%水溶液50部(固形分として1部)をミキサーに入れて混合し、さらに水溶性添加剤MTG30部、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン30−J:三井・デュポンフロロケミカル社製、60%水系分散体)2.5部を混合して正極二次電池電極用合材インキを得た以外は、実施例19と同様にして正極を得、同様に評価した。
【0154】
[比較例22]
水溶性添加剤にPEO2000を用いた以外は実施例21と同様の手順で正極二次電池電極用合材インキを得た。また、実施例19と同様にして正極を得、同様に評価した。
【0155】
【表1】
【0156】
LCO:LiCoO
LFP:LiFePO
LMO:LiMn
NMC:LiNi1/3Mn1/3Co1/3O
A:アセチレンブラック、デンカブラックHS−100(電気化学工業社製)
F:ファーネスブラック、Super−P Li(TIMCAL社製)
C:カーボンナノチューブ、VGCF−H(昭和電工社製)
MTG:トリエチレングリコールモノメチルエーテル
SDE:コハク酸ジエタノール
PD:1,3−プロパンジオール
BL:γ−ブチロラクトン
CBA:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
NMP:N−メチルピロリドン
PEO2000:ポリエチレングリコール2000(酸素原子40個相当、和光純薬社製)
PEO1500:ポリエチレングリコール1500(酸素原子30個相当、和光純薬社製)
【0157】
[実施例10]
負極活物質として人造黒鉛48部、ヒドロキシエチルセルロース2重量%水溶液25部(固形分として0.5部)をミキサーに入れて混合し、さらに水溶性添加剤CBA(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)5部、水18.2部、バインダー(SBR:スチレンブタジエン系ラテックス40%水系分散体)3.75部を混合して最終固形分が50重量%となるように調整を行い、負極二次電池電極用合材インキを得た。さらに、この負極二次電池電極用合材インキを集電体となる厚さ20μmの銅箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥して電極の厚みが80μmとなるよう調整し、さらに、ロールプレスによる圧延処理を行い、厚みが70μmとなる負極を作製して、先述と同様の評価を行った。
【0158】
[実施例11〜13]、[比較例11〜14]
表2に示す活物質、導電助剤である炭素材料、添加剤を用いた以外は実施例10と同様にして、負極二次電池電極用合材インキ、および負極を得、同様に評価した。
【0159】
[実施例14]
負極活物質としてLiTi1290部、導電助剤である炭素材料としてアセチレンブラック(デンカブラックHS−100)5部、カルボキシルメチルセルロース2重量%水溶液100部(固形分として2部)をミキサーに入れて混合し、さらに水溶性添加剤1,3−プロパンジオール20部、水100部、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン30−J:三井・デュポンフロロケミカル社製、60%水系分散体)5部を混合して最終固形分が31重量%となるように調整を行い、負極二次電池電極用合材インキ、および負極を得、同様に評価した。
【0160】
[比較例15]
表2に示すように水溶性添加剤を用いなかった以外は実施例14と同様にして、負極二次電池電極用合材インキ、および負極を得、同様に評価した。
【0161】
[実施例22]
負極活物質である人造黒鉛47部、導電助剤である炭素材料としてカーボンナノチューブ(VGCF−H)1部、ヒドロキシエチルセルロース2重量%水溶液25部(固形分として0.5部)をミキサーに入れて混合し、さらに水溶性添加剤PD18部、水5.25部、バインダー(SBR:スチレンブタジエン系ラテックス40%水系分散体)3.75部を混合して負極二次電池電極用合材インキを得た。また、実施例10と同様にして負極を得、同様に評価した。
【0162】
[比較例23]
添加剤にエタノールを用いた以外は実施例22と同様の手順で負極二次電池電極用合材インキを得た。また、実施例10と同様にして負極を得、同様に評価した。
【0163】
【表2】
【0164】
LTO:LiTi12
A:アセチレンブラック、デンカブラックHS−100(電気化学工業社製)
F:ファーネスブラック、Super−P Li(TIMCAL社製)
C:カーボンナノチューブ、VGCF−H(昭和電工社製)
MTG:トリエチレングリコールモノメチルエーテル
PD:1,3−プロパンジオール
CBA:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
NMP:N−メチルピロリドン
DMTG:トリエチレングリコールジメチルエーテル
PEO 800:ポリエチレングリコール800(酸素原子16個相当、東京化成社製)
【0165】
(二次電池電極用合材インキ及び二次電池電極用炭素材料分散体の分散度の判定)
二次電池電極用合材インキ及び二次電池電極用炭素材料分散体の分散度は、グラインドゲージによる判定(JIS K5600−2−5に準ず)より求めた。評価結果を表1及び表2に示す。表中の数字は粗大粒子の大きさを示し、数値が小さいほど分散性に優れ、均一な二次電池電極用合材インキ及び二次電池電極用炭素材料分散体であることを示している。
【0166】
(電極の柔軟性)
上記で作製した電極表面のひび割れ状態を目視観察により判定した。評価結果を表1及び表2に示す。ひび割れが起こらないものほど、柔軟性が良い。電極の柔軟性が悪くひび割れが起こり易いと電池作製時の取り扱いが困難となり、取り扱い時の合材層欠落を招いたり、電池充放電中の活物質の膨張・収縮に伴い合材層崩壊や欠落を招いてしまうため、柔軟性が高い方が良い。
○ :「ひび割れなし(実用上問題のないレベル)」
○△:「ごくまれにひび割れが見られる(問題があるが、使用可能レベル)」
△ :「部分的にひび割れが見られる」
× :「全体的にひび割れが見られる」
【0167】
(電極の密着性)
上記で作製した電極に、ナイフを用いて電極表面から集電体に達する深さまでの切込みを2mm間隔で縦横それぞれ6本の碁盤目の切込みを入れた。この切り込みに粘着テープを貼り付けて直ちに引き剥がし、活物質の脱落の程度を目視判定で判定した。評価結果を表1及び表2に示し、評価基準を下記に示す。
○ :「剥離なし(実用上問題のないレベル)」
○△:「わずかに剥離(問題はあるが使用可能レベル)」
△ :「半分程度剥離」
× :「ほとんどの部分で剥離」
【0168】
(充放電サイクル特性)
得られたコイン型電池について、充放電装置(北斗電工社製SM−8)を用い、充放電測定を行った。充放電サイクル特性が良好なものほど、電池の寿命が良好である。
【0169】
使用する活物質がLiFePOの場合は、充電電流1.0mA(0.2C相当)にて充電終止電圧4.2Vまで定電流充電を続けた。電池の電圧が4.2Vに達した後、放電電流2.5mAで放電終止電圧2.0Vに達するまで定電流放電を行った。これらの充電・放電サイクルを1サイクルとして100サイクルの充電・放電を繰り返した。3サイクル目の放電容量を初回放電容量(初回放電容量を放電容量維持率100%とする)とし、100サイクル後の放電容量維持率を算出した。(100%に近いほど良好)。評価結果を表1及び表2に示す。
○ :「変化率が95%以上。特に優れている。」
○△:「変化率が90%以上、95%未満。優れている。」
△ :「変化率が85%以上、90%未満。問題はあるが使用可能なレベル。」
× :「変化率が85%未満。実用上問題あり、使用不可。」
【0170】
また、使用する活物質が、LiCoOの場合は、充電電流1.6mA(0.2C相当)、充電終止電圧4.3V、放電電流4.0mA、放電終止電圧2.8Vとした以外は、LiFePOの場合と同様に充放電サイクル特性を測定できる。
【0171】
また、使用する活物質が、LiNi1/3Mn1/3Co1/3Oの場合は、充電電流1.9mA(0.2C相当)、充電終止電圧4.3V、放電電流4.8mA、放電終止電圧3.0Vとした以外は、LiFePOの場合と同様に充放電サイクル特性を測定できる。
【0172】
また、使用する活物質が、LiMnの場合は、充電電流1.0mA(0.2C相当)、充電終止電圧4.3V、放電電流2.5mA、放電終止電圧3.0Vとした以外は、LiFePOの場合と同様に充放電サイクル特性を測定できる。
【0173】
さらに、負極電極用の活物質として人造黒鉛を使用する場合は、充電電流1.8mA(0.2C相当)、充電終止電圧0.1V、放電電流1.8mA、放電終止電圧2.0Vとした以外は、LiFePOの場合と同様に充放電サイクル特性を測定できる。
【0174】
また、使用する活物質が、LiTi12の場合は、充電電流1.0mA(0.2C相当)、充電終止電圧1.0V、放電電流2.5mA、放電終止電圧2.0Vとした以外は、LiFePOの場合と同様に充放電サイクル特性を測定できる。
【0175】
表1及び表2に示すように、本発明の二次電池電極用合材インキを用いた場合、電極の柔軟性、密着性が良好なため、電池特性においても充放電時の電極剥離や、リチウムイオンのインターカレーション・デインターカレーションに伴う活物質の膨張・収縮時の電極構造の崩壊を防ぐことが可能となり、充放電100サイクル後の放電容量低下が抑制されたと考えられる。
【0176】
電極の柔軟性、密着性が良好であったことについては、下記の2点によるものと推察している。1点目は、詳細は明らかになっていないが、おそらく本発明の水溶性添加剤により合材インキの表面張力を低下させ、合材インキ乾燥時の硬化収縮を低減させることができたからではないかと考えている。合材インキ乾燥時の硬化収縮によりにひび割れが起こると、電極とした時の均一な導電ネットワークが崩壊してしまうために、導電性低下を引き起こしているのではないかと推察している。また、乾燥時の硬化収縮は集電体との密着性も悪化させると考えられるため、本発明の水溶性添加剤を使用することによって、密着性が改善されたと推察できる。
【0177】
2点目は、活物質または導電助剤である炭素材料の合材インキ中での分散性を低下させない点である。実施例、比較例の通り、導電助剤である炭素材料または活物質の分散制御が不十分な場合、充放電サイクル特性が悪化する傾向にある。合材インキの分散制御が不十分な場合、充放電特性電極とした時の均一な導電ネットワークが形成されないために、電極中で部分的凝集に起因する抵抗分布が生じてしまい、電池として使用した際の電流集中が起こるために劣化促進を引き起こしているのではないかと考察している。1分子中に酸素原子を1個有するアルコールを使用した場合は、水との相溶性が悪くて合材インキの分散性を低下させてしまったのではないかと思われる。一方、1分子中に酸素原子を21個以上有するポリエチレングリコール類では、水とは相溶するが活物質または導電助剤である炭素材料との相溶性が悪くて合材インキの分散性を低下させてしまったのではないかと思われる。
【0178】
以上のことから、本発明の水溶性添加剤が上記の2点を満足させることが可能であり、合材インキから得られた電極の柔軟性や密着性、および電池の充放電サイクル特性が良好になったと考えている。
【0179】
[実施例15]
導電助剤である炭素材料としてアセチレンブラック(デンカブラックHS−100)10部、カルボキシメチルセルロース2重量%水溶液50部(固形分として1部)をミキサーに入れて混合し、さらに水溶性添加剤MTG7部、水40部、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン30−J:三井・デュポンフロロケミカル社製、60%水系分散体)3部を混合して粘度調整を行い、二次電池電極用下地層形成用組成物を得た。
【0180】
そして、この下地層形成用組成物を、集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、加熱乾燥し、厚みが5μmとなるように下地層を形成した。
【0181】
[実施例16]、[比較例16、17]
表3に示す導電助剤である炭素材料、水溶性添加剤を用いた以外は実施例15と同様にして、二次電池電極用下地層形成用組成物を得、同様に評価した。
【0182】
【表3】
【0183】
[実施例17]
実施例15で作製した下地層上に実施例3の正極二次電池電極用合材インキを塗布した後、減圧加熱乾燥して正極を得、評価した。
【0184】
[実施例18、比較例18、19]
表4に示す二次電池電極用合材インキを塗布した後、減圧加熱乾燥して、以下実施例17と同様にして正極あるいは負極を得、同様に評価した。
【0185】
【表4】
【0186】
本発明の二次電池電極形成用組成物を下地層へ用いた場合、下地層を使用しない実施例3、および比較例12の評価結果と比較して、さらに良好となっていることが分かる。このことは、本発明の二次電池電極形成用組成物が、集電体と合材層との密着部分をより均一、かつ強固にしたためと考えられる。しかしながら、比較例18、19では下地層用の二次電池電極形成用組成物を使用した電極とした場合においても、実施例3、比較例12の評価結果と比較して劣る結果であった。このことは、集電体と合材層との密着状態がかえって不十分な状態となってしまったため、下地層を使用しない場合よりも電極として不均一な状態になってしまったためと考えられる。