(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る電力伝送システム1の回路図である。
図2は、電力伝送システム1が備える送電装置101の等価回路図である。
図3は、電力伝送システム1が備える受電装置201の等価回路図である。
【0015】
電力伝送システム1は送電装置101と受電装置201とで構成されている。受電装置201は負荷回路RLを備えている。この負荷回路RLは充電回路及び二次電池を含む。そして、受電装置201は、その二次電池を備えた、例えば携帯電子機器である。携帯電子機器としては携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯音楽プレーヤ、ノート型PC、デジタルカメラなどが挙げられる。送電装置101は、載置された受電装置201の二次電池を充電するための充電台である。
【0016】
送電装置101は、直流電圧を出力する直流電源11を備えている。直流電源11は商用電源に接続されるACアダプタである。
【0017】
直流電源11にはインバータ回路12が接続されている。インバータ回路12は、MOS−FETのスイッチ素子Q1,Q2,Q3,Q4を備えている。インバータ回路12では、スイッチ素子Q1,Q2が直列接続され、スイッチ素子Q3,Q4が直列接続されている。このインバータ回路12は、制御回路13によりスイッチング制御される。
【0018】
制御回路13は、所定の駆動周波数でインバータ回路12を駆動制御する。詳しくは、制御回路13は、各スイッチ素子Q1〜Q4のゲートへPWM信号を出力し、スイッチ素子Q1,Q4とスイッチ素子Q2,Q3とを交互にオンオフする。これにより、インバータ回路12は直流電圧を交流電圧に変換する。
【0019】
送電装置101は圧電トランス14を備えている。圧電トランス14は、第1電極E11、第2電極E12,第3電極E13、及び第4電極E14を備えている。第1電極E11は、インバータ回路12のスイッチ素子Q1,Q2の接続点に接続されている。第2電極E12は、インバータ回路12のスイッチ素子Q3,Q4の接続点に接続されている。また、第3電極E13及び第4電極E14は、送電側コイル15に接続されている。圧電トランス14は、第1電極E11及び第2電極E12から入力される電圧を昇圧し、第3電極E13及び第4電極E14から送電側コイル15へ出力する。すなわち、圧電トランス14は、インバータ回路12から出力された交流電圧を昇圧し、送電側コイル15へ印加する昇圧トランスである。
【0020】
昇圧に圧電トランス14を用いることで、巻線トランスを用いる場合と比べ、送電装置101の小型化、薄型化が可能である。また、送電側コイル15へ印加する電圧を圧電トランス14により昇圧することで、送電装置101から受電装置201へ大電力を伝送するために必要な電流量は小さくなる。このため、導体損失を抑制でき、また、送電側コイル15の線幅又は線径を小さくできる。
【0021】
圧電トランス14は、
図2に示すように、キャパシタC11,C12、キャパシタCp1、インダクタLp1及び抵抗Rp1等で表される。キャパシタC11は圧電トランス14の等価入力容量であり、キャパシタC12は圧電トランス14の等価出力容量である。また、キャパシタCp1及びインダクタLp1は電気機械的なパラメータである。各キャパシタC11,C12,Cp1は、各電極E11〜E14の間に生じる容量などである。
【0022】
圧電トランス14の共振周波数は主にキャパシタCp1とインダクタLp1による直列共振回路141の共振で定まる。電気エネルギー変換は弾性振動を介するため、圧電体セラミックスの弾性波伝搬速度と寸法で決まる固有共振周波数を有する。
【0023】
インバータ回路12のスイッチ素子Q1,Q2の接続点と、圧電トランス14の第1電極E11との間には、インダクタL1が接続されている。インダクタL1は、本発明に係る「送電側インダクタ」の一例である。このインダクタL1はフィルタインダクタであり、インバータ回路12から出力される矩形波の高調波成分を抑制して正弦波とし、圧電トランス14へ入力する。圧電トランス14に矩形波が入力されると、高調波成分の影響で、圧電トランス14が発熱するおそれがあるが、インダクタL1を設けたことにより、正弦波が圧電トランス14へ入力され、圧電トランス14の発熱は抑制される。
【0024】
圧電トランス14の等価入力容量であるキャパシタC11は、このインダクタL1と共に直列共振回路142を構成する。この直列共振回路142は、共振周波数が直列共振回路141と実質的に同じとなるよう回路定数が設定されている。直列共振回路142は、本発明に係る「送電側第2共振回路」の一例である。
【0025】
また、圧電トランス14の等価出力容量であるキャパシタC12は、送電側コイル15と共に並列共振回路143を構成する。並列共振回路143も、共振周波数が直列共振回路141と実質的に同じとなるよう回路定数が設定されている。すなわち、直列共振回路141,142と、並列共振回路143とは共振周波数が実質的に同じである。並列共振回路143は、本発明に係る「送電側第1共振回路」の一例である。
【0026】
制御回路13は、直列共振回路141,142及び並列共振回路143の共振周波数と実質的に同じ周波数を駆動周波数として、インバータ回路12をPWM制御する。
【0027】
受電装置201は受電側コイル25を備えている。受電装置201を送電装置101に載置又は近接させた場合、受電側コイル25は、送電側コイル15と近接する。そして、送電装置101の送電側コイル15に電圧が印加されることで、送電側コイル15と受電側コイル25とは磁界結合し、この結合を介して送電装置101から受電装置201へ電力が伝送される。
【0028】
受電装置201は圧電トランス24を備えている。圧電トランス24は、第1電極E21、第2電極E22、第3電極E23、及び第4電極E24を備えている。第1電極E21及び第2電極E22は、整流平滑回路23に接続されている。第3電極E23及び第4電極E24は、受電側コイル25に接続されている。磁界結合により受電側コイル25に誘起された電圧が第3電極E23及び第4電極E24に入力されると、圧電トランス24は、その電圧を降圧し、第1電極E21及び第2電極E22から出力する。
【0029】
降圧に圧電トランス24を用いることで、巻線コイルを用いる場合と比べ、受電装置201の小型化、薄型化が可能である。また、前記のように、送電装置101から受電装置201へ大電力を伝送するために、送電装置101から大電流が伝送されることがなく、導体損失を抑制でき、また、大電流が流れないことから受電側コイル25の線幅又は線径を小さくできる。
【0030】
圧電トランス24は、
図3に示すように、キャパシタC21,C22、キャパシタCp2、インダクタLp2及び抵抗Rp2等で表される。キャパシタC21は圧電トランス24の等価入力容量であり、キャパシタC22は圧電トランス24の等価出力容量である。また、キャパシタCp2及びインダクタLp2は電気機械的なパラメータである。各キャパシタC21,C22,Cp2は、各電極E21〜E24の間に生じる容量などである。
【0031】
圧電トランス24の共振周波数は主にキャパシタCp2とインダクタLp2による直列共振回路241の共振で定まる。電気エネルギー変換は弾性振動を介するため、圧電体セラミックスの弾性波伝搬速度と寸法で決まる固有共振周波数を有する。この直列共振回路241の共振周波数は、送電装置101が備える圧電トランス14の共振周波数、すなわち、直列共振回路141の共振周波数と実質的に同じである。
【0032】
圧電トランス24の等価入力容量であるキャパシタC21は、受電側コイル25と共に並列共振回路242を構成している。この並列共振回路242は、直列共振回路241と共振周波数が実質的に同じとなるように回路定数が設定されている。並列共振回路242は、本発明に係る「受電側第1共振回路」の一例である。
【0033】
また、圧電トランス24の第1電極E21と整流平滑回路23との間には、インダクタL2が接続されている。インダクタL2は、本発明に係る「受電側インダクタ」の一例である。圧電トランス24の等価出力容量であるキャパシタC22は、このインダクタL2と共に直列共振回路243を構成している。直列共振回路243も、直列共振回路241と共振周波数が実質的に同じとなるよう回路定数が設定されている。したがって、直列共振回路241,243及び並列共振回路242と、送電装置101側の直列共振回路141,142及び並列共振回路143とは、共振周波数が実質的に同じである。直列共振回路243は、本発明に係る「受電側第2共振回路」の一例である。
【0034】
整流平滑回路23は、ダイオードブリッジ、キャパシタ及びインダクタ等を含み、圧電トランス24で降圧された電圧を整流平滑し、DC−DCコンバータ22へ出力する。DC−DCコンバータ22は、整流された電圧を所定値の電圧に変換して、負荷回路RLへ出力する。
【0035】
ここで、圧電トランス14,24の構造について説明する。
【0036】
図4は、圧電トランス14,24の構造を説明するための斜視図である。圧電トランス14,24の構造は同じであるため、以下では、圧電トランス14について説明し、圧電トランス24については対応する符号をカッコ書きで記し、説明は省略する。
【0037】
圧電トランス14(24)は矩形板状の圧電体板30(40)を備えている。この圧電体板30(40)は、例えばPZT系セラミックスシートが積層されて形成されている。圧電トランス14(24)は、(3λ/2)共振モードで長さ方向に振動する。ここで、λは長さ方向の振動の1波長である。したがって、圧電トランス14(24)の長さは(3λ/2)としている。ここで、圧電体板30(40)の幅及び厚みは(λ/2)未満とすることが好ましい。幅方向及び厚み方向の振動が長さ方向の振動に結合せず、圧電体板30(40)全体の振動が不安定とならないためである。
【0038】
圧電体板30(40)は、長さ方向に沿って、第1領域31(41)、第2領域32(42)、及び第3領域33(43)が形成されている。各領域31(41)〜33(43)の長さは、何れもλ/2である。第1領域31(41)及び第3領域33(43)は高電圧領域であり、第2領域32(42)は低電圧領域である。
【0039】
図4の矢印で示すように、第1領域31(41)及び第3領域33(43)は、長さ方向に分極されている。第2領域32(42)は、厚み方向に分極されている。分極処理の方法としては、例えば、圧電体板を170℃の絶縁油中で2kV/mmの電圧を印加する方法等が挙げられる。
【0040】
第2領域32(42)には、厚み方向に対向するよう圧電体板30(40)の上下面に、第1電極E11(E21)と第2電極E12(E22)とが設けられている。また、圧電体板30(40)の長さ方向に対向する二側面には、第3電極E13(E23)と第4電極E14(E24)が設けられている。
【0041】
以上のように構成された、送電装置101の圧電トランス14において、インバータ回路12から第1電極E11と第2電極E12とへ交流電圧が印加されると、圧電体板30の厚み方向に電圧が印加される。このため、第2領域32には分極方向に電界が加えられる。そして、逆圧電効果により分極方向に直交する方向、すなわち、圧電体板30の長さ方向に縦振動が励振される。縦振動が励振されると、第1領域31及び第3領域33では長さ方向に機械的歪みが生じ、圧電横効果により分極方向に電位差が発生する。この電位差により第1領域31及び第3領域33が高電圧部となり、第3電極E13及び第4電極E14から高電圧が取り出される。この取り出される高電圧は送電側コイル15へ印加される。
【0042】
また、受電装置201の圧電トランス24において、第3電極E23及び第4電極E24が受電側コイル25に接続されている。送電装置101から受電装置201へ電力伝送され、受電側コイル25に電圧が誘起すると、第3電極E23及び第4電極E24によって、圧電体板40の長さ方向に電圧が印加される。このため、第1領域41及び第3領域43には分極方向に電界が加えられる。そして、逆圧電効果により分極方向に直交する方向、すなわち、圧電体板40の厚み方向に縦振動が励振される。縦振動が励振されると、第2領域42では分極方向に機械的歪みが生じ、圧電横効果により分極方向に電位差が発生する。この電位差により第2領域42が低電圧部となり、第1電極E21及び第2電極E22から低電圧が取り出される。
【0043】
以上のように構成された電力伝送システム1では、送電装置101のインバータ回路12の駆動周波数を、各共振回路の共振周波数に設定することで、高効率な電力伝送が可能となる。前記のように、送電装置101及び受電装置201に構成される共振回路は、共振周波数が実質的に同じである。そして、駆動周波数は、その共振周波数に定められる。共振周波数において、並列共振回路143と並列共振回路242とはハイインピーダンス(極大)となり、直列共振回路141,142と直列共振回路241,243とはローインピーダンス(極小)となる。このため、各共振回路における電圧降下、すなわち、インバータ回路12と負荷回路RLとの間での電圧降下は小さい。したがって、高い伝送効率で送電装置101から受電装置201へ電力を伝送できる。
【0044】
また、送電装置101に受電装置201を載置(近接)したときのインバータ回路12から負荷回路RLまでの経路に、Q値の高い共振系を構成できる。このため、高調波成分によるEMI(Electro Magnetic Interference:電波障害)を抑制できる。そして、この共振系を構成するために、圧電トランス14,24の容量成分と、送電側コイル15及び受電側コイル25とを用いているため、共振回路を構成するための部品点数の増加を抑制できる。
【0045】
また、送電装置101側では、圧電トランス14と送電側コイル15とで共振系が構成され、受電装置201側では、圧電トランス24と受電側コイル25とで共振系が構成されている。その場合でも、圧電トランス内部の共振は、送電側コイル15と受電側コイル25との結合度に依存しないため、送電側コイル15と受電側コイル25との結合度に関係なく、高調波成分の少ない電力伝送が可能となる。
【0046】
さらに、圧電トランス14の等価入力容量であるキャパシタC11及び等価出力容量であるキャパシタC12それぞれに対して共振回路142,143を構成している。したがって、圧電トランス14のキャパシタC11,C12それぞれにおいて生じる損失を抑制できるため、圧電トランス14に大電圧を入出力させる必要がない。
【0047】
同様に、圧電トランス24の等価入力容量であるキャパシタC21及び等価出力容量であるキャパシタC22それぞれに対して共振回路242,243を構成し、それら共振回路242,243の共振周波数は、電力伝送システム1の駆動周波数と実質的に同じに設定されている。したがって、圧電トランス24のキャパシタC21,C22それぞれにおいて生じる損失を抑制できるため、圧電トランス14に大電圧を入出力させる必要がない。
【0048】
なお、本実施形態では、各共振回路は共振周波数が実質的に同じとしているが、送電側コイル15及び受電側コイル25の巻線数等、回路設計の都合上、各共振回路の共振周波数が完全に一致していなくてもよい。また、インバータ回路12の駆動周波数は、各共振回路の共振周波数と完全に一致していなくてもよく、共振周波数に近い周波数、例えば、共振周波数の±10%程度の誤差の範囲内であればよい。
【0049】
(実施形態2)
図5は、実施形態2に係る電力伝送システム2の回路図である。
図6は、
図5に示す受電装置202の等価回路図である。この例では、電力伝送システム2が備える受電装置202に構成される共振回路が実施形態1と相違する。以下、その相違点について説明する。なお、電力伝送システム2が備える送電装置101は実施形態1と同様であり、説明は省略する。
【0050】
受電装置201が備える圧電トランス24と、整流平滑回路23との間には、インダクタL3が接続されている。インダクタL3は、本発明に係る「受電側インダクタ」の一例である。このインダクタL3は、圧電トランス24の等価出力容量であるキャパシタC22に対して並列接続される。そして、インダクタL3とキャパシタC22とは、並列共振回路244を構成している。この並列共振回路244は、直列共振回路241及び並列共振回路242と共振周波数が実質的に同じとなるよう回路定数が設定されている。並列共振回路244は、本発明に係る「受電側第2共振回路」の一例である。
【0051】
以上の構成において、実施形態1と同様に、電力伝送システム2のインバータ回路12の駆動周波数は、構成された各共振回路の共振周波数と実質的に同じ周波数に定められる。これにより、送電装置101に構成される直列共振回路141,142(
図2参照)はローインピーダンス(極小)となり、並列共振回路143(
図2参照)はハイインピーダンス(極大)となる。また、受電装置202に構成される直列共振回路241はローインピーダンス(極小)となり、並列共振回路242,244はハイインピーダンス(極大)となる。このため、各共振回路における電圧降下、すなわち、インバータ回路12と負荷回路RLとの間での電圧降下は小さい。したがって、高い伝送効率で送電装置101から受電装置202へ電力を伝送できる。
【0052】
また、圧電トランス24のキャパシタC22に対して並列共振回路244を構成している。このため、圧電トランス24のキャパシタC21,C22それぞれにおいて生じる損失を抑制できるため、圧電トランス14に大電圧を入出力させる必要がない。
【0053】
また、結合を強めることができ、より低い振動速度で電力伝送させることができる。圧電トランス内部にはできるだけ電流を流さないで駆動するほうが、効率(電気エネルギーと機械エネルギーの変換の効率)はよい。また、圧電体板40を流れる電流が増えると、圧電体板40の振動速度が高くなる。内部のキャパシタC21,C22も電流が流れる経路になるので、外部にインダクタL3を並列することで、圧電体板40の振動周波数において並列共振させれば、LC並列共振のインピーダンスは最大になり、キャパシタC21,C22を流れる電流は最小になる。すなわち、圧電トランス24を流れる電流を、できるだけ負荷のインピーダンスにのみ流れるようにすることで、電流を最小化できる。そのため、振動速度をより低くでき、かつ圧電トランス24の効率も最大にできる。
【0054】
(実施形態3)
図7は、実施形態3に係る電力伝送システム3の回路図である。この例では、電力伝送システム3が備える送電装置102が圧電トランスを備えていない点で実施形態1,2と相違する。
【0055】
電力伝送システム3は、送電装置102と受電装置203とを備えている。送電装置102は、インバータ回路12から出力される交流電圧を昇圧し、送電側コイル15へ印加する昇圧トランスT1を備えている。昇圧トランスT1は1次コイルと2次コイルを備えている。昇圧トランスT1の1次コイルは、インバータ回路12のスイッチ素子Q1,Q2の接続点と、スイッチ素子Q3,Q4の接続点とに接続されている。昇圧トランスT1の2次コイルは、キャパシタC3を介して送電側コイル15に接続されている。キャパシタC3は送電側コイル15と共に直列共振回路16を構成している。
【0056】
受電装置203は、受電側コイル25に誘起される電圧を降圧し、整流平滑回路23へ出力する圧電トランス26を備えている。圧電トランス26はローゼン型であり、第1電極E31、第2電極E32及び第3電極E33を備えている。第1電極E31は受電側コイル25の一端に接続されている。第3電極E33は、受電側コイル25の他端に接続されている。また、第2電極E32と第3電極E33とは、整流平滑回路23に接続されている。圧電トランス26は、第1電極E31と第3電極E33との間に印加される電圧を降圧して第2電極E32へ出力する。
【0057】
この圧電トランス26は、
図3に示す等価回路で表すことができる。そして、圧電トランス26の等価入力容量のキャパシタは、受電側コイル25と並列共振回路を構成する。この並列共振回路は、圧電トランス26の共振周波数と実質的に同じ周波数となるよう回路定数が設定されている。圧電トランス26の共振周波数とは、
図3で示す直列共振回路241の共振周波数である。そして、送電装置102側の直列共振回路16の共振周波数は、圧電トランス26の共振周波数と実質的に同じとなるよう回路定数が設定されている。
【0058】
送電装置101の制御回路13は、インバータ回路12の駆動周波数を各共振回路の共振周波数に設定し、インバータ回路12をPWM制御する。
【0059】
電力伝送システム3のインバータ回路12の駆動周波数は、実施形態1,2と同様に、構成された共振回路の共振周波数と実質的に同じ周波数に定められる。これにより、送電装置102に構成される直列共振回路16はローインピーダンス(極小)となる。また、受電装置203に構成される直列共振回路はローインピーダンス(極小)となり、並列共振回路はハイインピーダンス(極大)となる。このため、各共振回路における電圧降下、すなわち、インバータ回路12と負荷回路RLとの間での電圧降下は小さい。したがって、高い伝送効率で送電装置102から受電装置203へ電力を伝送できる。
【0060】
また、ローゼン型の圧電トランスを用いることで、変圧比を大きくすることができる。例えば、第2電極E32及び第3電極E33の面積を小さくして、圧電トランスの等価入力容量より等価出力容量を大きくすることで変圧比を大きくできる。この変圧比は、負荷回路RLへ供給する電圧に応じて適宜設定変更される。
【0061】
なお、本実施形態に係る圧電トランス26はローゼン型であるが、その構造は適宜変更可能である。また、圧電トランス26はローゼン型としたが、実施形態1,2と同じ圧電トランスであってもよいし、他の構造の圧電トランスであってもよい。
【0062】
(実施形態4)
図8は、実施形態4に係る電力伝送システム4の回路図である。この例では、電力伝送システム4が備える受電装置204が圧電トランスを備えていない点で実施形態1,2と相違する。
【0063】
電力伝送システム4は、送電装置103と受電装置204とを備えている。送電装置103は、インバータ回路12から出力される交流電圧を昇圧し、送電側コイル15へ印加する圧電トランス17を備えている。圧電トランス17は、実施形態3と同様、ローゼン型であり、第1電極E41、第2電極E42及び第3電極E43を備えている。第1電極E41は受電側コイル25の一端に接続されている。第3電極E43は、受電側コイル25の他端に接続されている。また、第2電極E42は、インバータ回路12のスイッチ素子Q1,Q2の接続点に接続され、第3電極E43はスイッチ素子Q3,Q4の接続点に接続されている。圧電トランス17は、第2電極E42と第3電極E43との間に印加される電圧を降圧して第1電極E41へ出力する。
【0064】
この圧電トランス17は、
図2に示す等価回路で表すことができる。そして、圧電トランス17の等価出力容量のキャパシタは、送電側コイル15と並列共振回路を構成する。この並列共振回路は、圧電トランス17の共振周波数と実質的に同じ周波数となるよう回路定数が設定されている。圧電トランス17の共振周波数とは、
図2で示す直列共振回路141の共振周波数である。
【0065】
受電装置204は、受電側コイル25に誘起される電圧を降圧し、整流平滑回路23へ出力する降圧トランスT2を備えている。降圧トランスT2は1次コイルと2次コイルを備えている。降圧トランスT2の1次コイルは、キャパシタC4を介して受電側コイル25に接続されている。降圧トランスT2の2次コイルは、整流平滑回路23に接続されている。キャパシタC4と受電側コイル25とは並列共振回路を構成している。この並列共振回路の共振周波数は、圧電トランス17の共振周波数と実質的に同じとなるよう回路定数が設定されている。
【0066】
送電装置103の制御回路13は、インバータ回路12の駆動周波数を各共振回路の共振周波数に設定し、インバータ回路12をPWM制御する。
【0067】
電力伝送システム4のインバータ回路12の駆動周波数は、実施形態1,2と同様に、構成された共振回路の共振周波数と実質的に同じ周波数に定められる。これにより、送電装置103に構成される直列共振回路はローインピーダンス(極小)となり、並列共振回路はハイインピーダンス(極大)となる。また、受電装置204に構成される並列共振回路はハイインピーダンス(極大)となる。このため、各共振回路における電圧降下、すなわち、インバータ回路12と負荷回路RLとの間での電圧降下は小さい。したがって、高い伝送効率で送電装置103から受電装置204へ電力を伝送できる。