特許第6183247号(P6183247)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183247
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】接合方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   B23K20/12 310
   B23K20/12 330
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-47641(P2014-47641)
(22)【出願日】2014年3月11日
(65)【公開番号】特開2015-171719(P2015-171719A)
(43)【公開日】2015年10月1日
【審査請求日】2016年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 能章
(72)【発明者】
【氏名】堀 久司
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 伸城
【審査官】 岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−082649(JP,A)
【文献】 特開2000−202645(JP,A)
【文献】 特開昭53−106352(JP,A)
【文献】 特開2005−131666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の金属部材の一端側の端面同士を突き合わせて突合せ部を形成する準備工程と、
前記金属部材の表面側から前記突合せ部に溶接を行う第一の本接合工程と、
前記金属部材の裏面側から前記突合せ部に摩擦攪拌を行う第二の本接合工程と、を含み、
前記第一の本接合工程では、肉盛溶接を行うとともに溶接金属を前記金属部材の表面よりも突出させ、
前記第一の本接合工程終了後に前記両金属部材を裏返し、
前記第二の本接合工程では、前記金属部材の他端側に対して一端側が高くなるように前記溶接金属を架台に当接させて前記各金属部材を傾斜させた状態で摩擦攪拌を行うことを特徴とする接合方法。
【請求項2】
前記第一の本接合工程後に前記溶接金属を切削して前記溶接金属の肉盛高さを調節することを特徴とする請求項に記載の接合方法。
【請求項3】
一対の金属部材の一端側の端面同士を突き合わせて突合せ部を形成する準備工程と、
前記金属部材の表面側から前記突合せ部に溶接を行う第一の本接合工程と、
前記金属部材の裏面側から前記突合せ部に摩擦攪拌を行う第二の本接合工程と、を含み、
前記第一の本接合工程では、肉盛溶接を行うとともに溶接金属を前記金属部材の表面よりも突出させ、
前記第一の本接合工程終了後に前記両金属部材を裏返し、
前記第二の本接合工程では、前記金属部材の他端側に対して一端側が高くなるように架台と前記溶接金属との間にスペーサーを配置して前記各金属部材を傾斜させた状態で摩擦攪拌を行うことを特徴とする接合方法。
【請求項4】
前記第一の本接合工程では、前記金属部材の表面において前記突合せ部に沿って凹溝を形成し、前記凹溝に溶接を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項5】
前記第二の本接合工程では、前記第一の本接合工程で形成された溶接金属に、塑性化領域を接触させつつ摩擦攪拌を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦攪拌による金属部材同士の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材同士を接合する方法として、摩擦攪拌接合(FSW=Friction Stir Welding)が知られている。摩擦攪拌接合とは、回転ツールを回転させつつ金属部材同士の突合せ部に沿って移動させ、回転ツールと金属部材との摩擦熱により突合せ部の金属を塑性流動させることで、金属部材同士を固相接合させるものである。
【0003】
特許文献1には、金属部材同士の端部同士を突き合わせて形成された突合せ部に回転ツールを挿入して、金属部材同士の表面側及び裏面側から突合せ部を摩擦攪拌接合する発明が開示されている。摩擦攪拌接合を行うと、回転ツールの移動軌跡に塑性化領域が形成されるが、当該塑性化領域が熱収縮するため、接合後の金属部材同士が凹状となるように変形してしまう。
【0004】
一方、金属部材の表面側から溶接で接合した後に、裏面側から摩擦攪拌を行って金属部材同士を接合することも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−290092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、溶接によっても金属部材に熱が作用するため、摩擦攪拌と同じように接合後の金属部材同士が凹状に変形してしまう。
【0007】
このような観点から、本発明は、摩擦攪拌による金属部材同士の接合方法において、接合された金属部材を容易に平坦にすることができる接合方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために本発明は、一対の金属部材の一端側の端面同士を突き合わせて突合せ部を形成する準備工程と、前記金属部材の表面側から前記突合せ部に溶接を行う第一の本接合工程と、前記金属部材の裏面側から前記突合せ部に摩擦攪拌を行う第二の本接合工程と、を含み、前記第一の本接合工程では、肉盛溶接を行うとともに溶接金属を前記金属部材の表面よりも突出させ、前記第一の本接合工程終了後に前記両金属部材を裏返し、前記第二の本接合工程では、前記金属部材の他端側に対して一端側が高くなるように前記溶接金属を架台に当接させて前記各金属部材を傾斜させた状態で摩擦攪拌を行うことを特徴とする。
【0009】
かかる接合方法によれば、第一の本接合工程の溶接で、金属部材に熱収縮が発生して表面側に凹状となるように反りが発生する。第二の本接合工程では、当該反りを利用して金属部材を容易に傾斜させることができる。また、第二の本接合工程を行う際に、溶接金属を利用して、金属部材同士を予め傾斜させておき、摩擦攪拌接合後の熱収縮を利用することで、接合された金属部材を平坦にすることができる。
【0014】
また、前記第一の本接合工程後に前記溶接金属を切削して前記溶接金属の肉盛高さを調節することが好ましい。かかる接合方法によれば、金属部材の傾斜角度を調節することができる。
【0015】
また、本発明は、一対の金属部材の一端側の端面同士を突き合わせて突合せ部を形成する準備工程と、前記金属部材の表面側から前記突合せ部に溶接を行う第一の本接合工程と、前記金属部材の裏面側から前記突合せ部に摩擦攪拌を行う第二の本接合工程と、を含み、前記第一の本接合工程では、肉盛溶接を行うとともに溶接金属を前記金属部材の表面よりも突出させ、前記第一の本接合工程終了後に前記両金属部材を裏返し、前記第二の本接合工程では、前記金属部材の他端側に対して一端側が高くなるように架台と前記溶接金属との間にスペーサーを配置して前記各金属部材を傾斜させた状態で摩擦攪拌を行うことを特徴とする。
かかる接合方法によれば、第一の本接合工程の溶接で、金属部材に熱収縮が発生して表面側に凹状となるように反りが発生する。第二の本接合工程では、当該反りを利用して金属部材を容易に傾斜させることができる。また、第二の本接合工程を行う際に、溶接金属を利用して、金属部材同士を予め傾斜させておき、摩擦攪拌接合後の熱収縮を利用することで、接合された金属部材を平坦にすることができる。また、金属部材の傾斜角度を調節することができる。
【0016】
また、前記第一の本接合工程では、前記金属部材の表面において前記突合せ部に沿って凹溝を形成し、前記凹溝に溶接を行うことが好ましい。
【0017】
かかる接合方法によれば、溶接を容易に行うことができる。
【0018】
また、前記第二の本接合工程では、前記第一の本接合工程で形成された溶接金属に、塑性化領域を接触させつつ摩擦攪拌を行うことが好ましい。
【0019】
かかる接合方法によれば、突合せ部の深さ方向の全体を接合することができるため、接合強度が向上するとともに、接合部の水密性及び気密性を高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る接合方法よれば、接合された金属部材を容易に平坦にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第一実施形態に係る接合方法を示す断面図であって、(a)は第一の本接合工程を示し、(b)は第一の本接合工程後を示し、(c)は第二の準備工程を示す。
図2】第一実施形態に係る接合方法を示す断面図であって、(a)は第二の本接合工程を示し、(b)は第二の本接合工程後を示す。
図3】本発明の第二実施形態に係る接合方法を示す断面図であって、(a)は凹溝形成工程を示し、(b)は充填工程を示し、(c)は第一の本接合工程後を示す。
図4】第二実施形態に係る接合方法を示す断面図であって、(a)は第二の準備工程を示し、(b)は第二の本接合工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1の(a)に示すように、第一実施形態では、金属部材1,1の端部同士を突き合わせて形成された突合せ部Jを溶接及び摩擦攪拌によって接合する。第一実施形態に係る接合方法では、第一の準備工程と、第一の本接合工程と、第二の準備工程と、第二の本接合工程とを行う。
【0023】
第一の準備工程は、第一の本接合工程の準備をする工程である。第一の準備工程では、金属部材1,1を架台Kに載置して金属部材1,1の端面1a,1a同士を突き合わせて突合せ部Jを形成する。金属部材1,1の裏面1c,1cは架台Kの表面に面接触する。そして、複数のクランプK2で金属部材1,1を移動不能に拘束する。
【0024】
金属部材1は、金属製の板状部材である。金属部材1,1は、同等の形状になっている。また、金属部材1,1は同等の材料で形成されている。金属部材1の材料は、摩擦攪拌可能な金属であれば特に制限されないが、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、 マグネシウム、マグネシウム合金等から適宜選択すればよい。
【0025】
第一の本接合工程は、突合せ部Jに溶接を行う工程である。第一の本接合工程で行う溶接の種類は特に制限されないが、図1の(a)に示すように、本実施形態ではTIG溶接又はMIG溶接等の肉盛溶接を行う。肉盛溶接によって突合せ部Jには溶接金属Uが形成される。本実施形態では、溶接金属Uが金属部材1,1の表面1b,1bから突出する程度に溶接を行う。
【0026】
第一の本接合工程が終了したら、図1の(b)に示すように、クランプK2を解除して金属部材1,1を放置する。溶接金属Uの熱収縮によって金属部材1,1の表面1b,1b側が凹状となるように反りが発生する。
【0027】
第二の準備工程は、第二の本接合工程の準備をする工程である。図1の(c)に示すように、第二の準備工程では、まず、金属部材1,1を裏返しつつ、クランプK2で金属部材1,1を架台Kに移動不能に拘束する。金属部材1,1の表面1b,1b側には表面1b,1bよりも突出した溶接金属Uが形成されているため、架台Kの表面に溶接金属Uが当接する。これにより、金属部材1,1の他端側に対して一端側(端面1a,1a側)が高くなるように金属部材1,1が傾斜する。つまり、突合せ部Jが最も高くなる状態で金属部材1,1が架台Kに固定される。
【0028】
金属部材1,1が架台Kに固定されると、端面1a,1aの下端は当接した状態となるが、端面1a,1aの上端はわずかに離間した状態となる。本実施形態に係る「突合せ部」とは、端面1a,1aが突き合わされており、端面1a,1a間で形成される空間断面がV字状を呈する状態も含むものである。
【0029】
金属部材1,1の傾斜角度は特に限定されないが、金属部材1,1の材質、各部位の寸法、後記する本接合工程の入熱量や接合後の熱収縮等を考慮して、第二の本接合工程後の熱収縮によって金属部材1,1が平坦になるような傾斜角度を適宜設定すればよい。
【0030】
金属部材1,1の傾斜角度を変更する場合は、例えば、溶接金属Uのうち表面1b,1bから突出した突出部の一部を切削して肉盛高さを小さくすることで、金属部材1,1の傾斜角度を小さくすることができる。一方、例えば、架台Kと溶接金属U(金属部材1,1)との間にスペーサーを配置することによって、金属部材1,1の傾斜角度を大きくすることができる。スペーサーは、例えば、板状部材であって、溶接金属Uの延長方向に沿って配置されることが好ましい。
【0031】
第二の本接合工程は、金属部材1,1の裏面1c,1c側から摩擦攪拌を行う工程である。図1の(c)に示すように、第二の本接合工程は、本実施形態では回転ツールGを用いる。回転ツールGは、円柱状を呈するショルダ部G1と、ショルダ部G1の下端面から突出する攪拌ピンG2とで構成されている。攪拌ピンG2は、錐台形状を呈する。
【0032】
図2の(a)に示すように、第二の本接合工程では、金属部材1,1の裏面1c,1c側から突合せ部Jに対して回転した回転ツールGの攪拌ピンG2を挿入する。そして、突合せ部Jに沿って回転ツールGを相対移動させる。
【0033】
本実施形態では、ショルダ部G1の下端面を、裏面1c,1cよりも数ミリ程度押し込んで摩擦攪拌を行う。回転する回転ツールGによって端面1a,1aの金属が摩擦攪拌されて金属部材1,1が接合される。回転ツールGの移動軌跡には、塑性化領域W1が形成される。金属部材1,1に対する攪拌ピンG2の挿入深さは適宜設定すればよいが、攪拌ピンG2の先端を突合せ部Jの深さ方向の1/2以上の位置まで挿入することが好ましい。本実施形態では、塑性化領域W1と溶接金属Uとの間は離間しているが、塑性化領域W1が溶接金属Uとが接触するように攪拌ピンG2の挿入深さを設定してもよい。
【0034】
図2の(b)に示すように、第二の本接合工程が終了したら、クランプK2を解除して金属部材1,1を放置する。金属部材1,1を放置すると、塑性化領域W1に熱収縮が発生するため、裏面1c,1c側が凹状となるような反りが発生する。これにより、金属部材1,1が平坦になる。以上により金属部材1,1が接合される。最後に、摩擦攪拌によって発生したバリVや溶接金属Uの表面1b,1bから突出する突出部を切除するバリ切除工程を行って金属部材1,1の表面1b及び裏面1cを平坦にする。
【0035】
以上接合した接合方法によれば、第一の本接合工程の溶接で、金属部材1,1に熱収縮が発生して表面1b,1b側に凹状となるように反りが発生する。第二の本接合工程では、当該反りを利用して金属部材1,1を容易に傾斜させることができる。また、第二の本接合工程を行う際に、金属部材1,1同士を予め傾斜させておき、摩擦攪拌接合後の熱収縮を利用することで、接合された金属部材1,1を平坦にすることができる。
【0036】
また、本実施形態では、第一の本接合工程で肉盛溶接を行って表面1b,1bよりも溶接金属Uを突出させることにより、準備工程で当該溶接金属Uを利用して金属部材1,1を傾斜させることができる。
【0037】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る接合方法について説明する。第二実施形態に係る接合方法では、図3に示すように、凹溝20を設ける点で第一実施形態と相違する。第二実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。第二実施形態に係る接合方法では、第一の準備工程と、第一の本接合工程と、第二の準備工程と、第二の本接合工程とを行う。
【0038】
図3の(a)に示すように、第一の準備工程は、第一の本接合工程の準備する工程である。第一の準備工程では、金属部材1,1を架台Kに載置して金属部材1,1の端面1a,1a同士を突き合わせて突合せ部Jを形成する。金属部材1,1の裏面1c,1cは架台Kの表面に面接触する。そして、複数のクランプK2で金属部材1,1を移動不能に拘束する。
【0039】
第一の本接合工程は、突合せ部Jに対して溶接を行う工程である。第一の本接合工程では、凹溝形成工程と、充填工程とを行う。凹溝形成工程は、金属部材1,1の突合せ部Jに沿って凹溝20を形成する工程である。凹溝20の断面形状は特に制限されないが、本実施形態では矩形断面になっている。
【0040】
図3の(b)に示すように、充填工程では、肉盛溶接を行って凹溝20に溶接金属Uを充填する。本実施形態に係る充填工程では、TIG溶接又はMIG溶接等の肉盛溶接を行って凹溝20に溶接金属Uを充填するとともに、金属部材1,1の表面1b,1bから溶接金属Uが突出する程度に溶接を行う。
【0041】
第一の本接合工程が終了したら、図3の(c)に示すように、クランプK2を解除して金属部材1,1を放置する。金属部材1,1を放置すると溶接金属Uの熱収縮によって金属部材1,1の表面1b,1b側が凹状となるように反りが発生する。
【0042】
第二の準備工程は、第二の本接合工程の準備をする工程である。図4の(a)に示すように、本実施形態に係る準備工程では、まず、架台Kの中央にスペーサー10を配置する。スペーサー10は、板状部材であって突合せ部Jの長手方向に沿って配置される。
【0043】
そして、金属部材1,1を裏返しつつ、スペーサー10の上に溶接金属Uが当接するようにして、クランプK2で金属部材1,1を架台Kに移動不能に拘束する。これにより、金属部材1,1の他端側に対して一端側(端面1a,1a側)が高くなるように金属部材1,1が傾斜する。つまり、突合せ部Jが最も高くなる状態で金属部材1,1が架台Kに固定される。
【0044】
金属部材1,1が架台Kに固定されると、端面1a,1aの下端は当接した状態となるが、端面1a,1aの上端はわずかに離間した状態となる。本実施形態に係る「突合せ部」とは、端面1a,1aが突き合わされており、端面1a,1a間で形成される空間断面がV字状を呈する状態も含むものである。
【0045】
金属部材1,1の傾斜角度は特に限定されないが、金属部材1,1の材質、各部位の寸法、後記する本接合工程の入熱量や接合後の熱収縮等を考慮して、第二の本接合工程後の熱収縮によって金属部材1,1が平坦になるような傾斜角度を適宜設定すればよい。
【0046】
金属部材1,1の傾斜角度を変更する場合は、例えば、溶接金属Uの突出部の一部を切削して肉盛高さを小さくすることで、金属部材1,1の傾斜角度を小さくすることができる。一方、例えば、スペーサー10の高さを変更することによって、金属部材1,1の傾斜角度を変更することができる。また、スペーサー10を省略して金属部材1,1の傾斜角度を調節してもよい。
【0047】
図4の(b)に示すように、第二の本接合工程は、金属部材1,1の裏面1c,1c側から突合せ部Jに沿って摩擦攪拌を行う工程である。回転ツールGの挿入深さは適宜設定すればよいが、本実施形態では塑性化領域W1が溶接金属Uに接触する程度に設定する。第二の本接合工程が終了したら、クランプK2を解除して金属部材1,1を放置する。また、架台Kからスペーサー10を取り除く。以上により金属部材1,1が接合される。最後に、摩擦攪拌によって発生したバリや溶接金属Uの表面1b,1bから突出する突出部を切除するバリ切除工程を行って金属部材1,1の表面1b及び裏面1cを平坦にする。
【0048】
以上説明した接合方法によれば、第一の本接合工程の溶接で、金属部材1,1に熱収縮が発生して表面1b,1b側に凹状となるように反りが発生する。第二の本接合工程では、当該反りを利用して金属部材1,1を容易に傾斜させることができる。また、第二の本接合工程を行う際に、金属部材1,1同士を予め傾斜させておき、摩擦攪拌接合後の熱収縮を利用することで、接合された金属部材1,1を平坦にすることができる。
【0049】
また、本実施形態では、第一の本接合工程で肉盛溶接を行って表面1b,1bよりも溶接金属Uを突出させることにより、準備工程で当該溶接金属Uを利用して金属部材1,1を傾斜させることができる。また、本実施形態ではスペーサー10を介設しているため、金属部材1,1の傾斜角度をより大きくすることができる。
【0050】
また、本実施形態では第一の本接合工程において、凹溝20を形成し当該凹溝20に溶接金属Uを充填するようにしているため、肉盛溶接を容易に行うことができる。また、第二の本接合工程における摩擦攪拌によって形成された塑性化領域W1を溶接金属Uに接触させることで突合せ部Jの深さ方向全体が接合される。これにより接合強度が向上するとともに、接合部の水密性及び気密性を高めることができる。
【0051】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。本実施形態では、第一の本接合工程において肉盛溶接を行ったが、他の溶接を行ってもよい。また、金属部材1,1の表面1b,1bから溶接金属Uが突出しない程度に溶接を行ってもよい。
【0052】
また、例えば、第二の準備工程において、中央に凸部や傾斜部が形成された架台を用いて金属部材1,1を傾斜させてもよい。また、金属部材1,1の他端側を架台に固定せずに各準備工程及び各本接合工程を行ってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 金属部材
1a 端面
1b 表面
1c 裏面
10 スペーサー
20 凹溝
G 回転ツール
G1 ショルダ部
G2 攪拌ピン
J 突合せ部
K 架台
U 溶接金属
図1
図2
図3
図4