(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記導電モールド部材の前記留め部は、前記基準電位体の一部に引っ掛かることにより前記導電モールド部材を前記基準電位体に留める弾性変形可能な係合部を有する、請求項1に記載の電磁シールド部材。
並列に並ぶ3本以上の前記シールド素線各々における両端部の間の中間部どうしを、前記導電モールド部材に保持されることによって環状に並ぶ状態において隣り合う第一シールド素線と第二シールド素線との間以外において間隔を空けて連結する柔軟なシールド素線連結部をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の電磁シールド部材。
前記第一シールド素線の前記中間部と前記第二シールド素線の前記中間部とを間隔を空けて緩やかに結束するシールド素線結束部材をさらに備える、請求項3に記載の電磁シールド部材。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照しながら、実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。以下に示される電磁シールド部材およびそれを備えるワイヤハーネスは、例えば自動車などの車両用である。
【0022】
<第1実施形態>
まず、
図1〜4を参照しつつ、第1実施形態に係る電磁シールド部材1およびそれを備えるワイヤハーネス10について説明する。
図1,2が示すように、ワイヤハーネス10は、電磁シールドの対象となる主電線81を含むモールド樹脂付電線9と電磁シールド部材1とを備えている。
【0023】
<モールド樹脂付電線>
モールド樹脂付電線9は、端子付電線80と絶縁モールド部7とを含む。端子付電線80は、主電線81およびその端部に接続された端子82を有する。なお、
図1,2は、主電線81の一方の端部の付近におけるモールド樹脂付電線9の構造を示している。モールド樹脂付電線9は、主電線81の両端部において
図1,2が示す構造を有している。
【0024】
主電線81は、例えば線状の導体である芯線とその外周面に形成された絶縁被覆とを有する絶縁電線である。この場合、主電線81の端部において、芯線の端部が絶縁被覆の端から延び出て形成されている。
【0025】
主電線81の芯線は、例えば銅またはアルミニウムを主成分とする金属の線材である。また、主電線81の絶縁被覆は、例えばポリ塩化ビニルまたはポリエチレンなどを主成分とする絶縁性(非導電性)の合成樹脂の被覆である。
【0026】
端子82は、主電線81における芯線の端部に接続された金具である。例えば、端子82が芯線の端部に溶接によって接続されること、または端子82が芯線の端部に圧着されることなどが考えられる。端子82は、例えば銅もしくは黄銅などの銅合金の部材またはそれらの部材に、錫(Sn)のメッキもしくは錫に銀(Ag)、銅(Cu)、ビスマス(Bi)などが添加された錫合金のメッキが施された導電性の部材である。
【0027】
絶縁モールド部7は、主電線81の芯線における絶縁被覆から延び出た部分全体と端子82における芯線と接触する部分とを密封する状態に成形された合成樹脂の絶縁部材(非導電部材)である。絶縁モールド部7は、端子付電線80における絶縁被覆の端部から端子82の一部までの領域をインサート部とするインサート成形によって形成される。
【0028】
絶縁モールド部7は、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリブチレンテレフタレートまたはポリアミドなどの絶縁性の合成樹脂の成形部材である。
【0029】
本実施形態においては、モールド樹脂付電線9は、複数の端子付電線80を備え、絶縁モールド部7は、複数の端子付電線80における主電線81の端部をそれらが並列に並ぶ状態で一括して保持している。なお、モールド樹脂付電線9が有する主電線81が1本であることも考えられる。
【0030】
<電磁シールド部材>
電磁シールド部材1は、複数のシールド素線2と導電モールド部材3とを有している。
図1,2は、複数のシールド素線2の一方の端部の付近における電磁シールド部材1の構造を示している。電磁シールド部材1は、複数のシールド素線2の両端部において
図1,2が示す構造を有している。
【0031】
図4が示すように、シールド素線2各々は、線状の導体を含むシールド用の電線である。本実施形態におけるシールド素線2各々は、導電性の芯線およびその芯線の外周面に形成された絶縁被覆を有する絶縁電線である。複数の素線が撚り合わされた撚り線がシールド素線2の線状導体(芯線)として採用されれば、シールド素線2の柔軟性を高めることができる。また、シールド素線2の線状導体(芯線)が単線であることも考えられる。
【0032】
例えば、シールド素線2は、線状導体(芯線)とその線状導体の表面に樹脂塗料の塗布によって形成された絶縁被覆(エナメル被覆)とを有するエナメル線である。シールド素線2がエナメル線である場合、その絶縁被覆は、例えば変性ポリウレタン、ポリエスルテイミドまたはポリアミドイミドなどを含む絶縁性の合成樹脂の被覆である。
【0033】
なお、シールド素線2の絶縁被覆が、線状導体の外側に押出成形によって形成された被覆であることも考えられる。この場合の絶縁被覆は、例えばポリ塩化ビニルまたはポリエチレンなどを主成分とする絶縁性の合成樹脂の被覆である。
【0034】
シールド素線2の線状導体は、例えば銅またはアルミニウムなどを主成分とする金属の線材である。全てのシールド素線2の芯線が同じ金属材料の線材であることも考えられるが、電磁シールド部材1がそれぞれ材料の異なる線状導体を有する複数種類のシールド素線2を含むことも考えられる。
【0035】
例えば、電磁シールド部材1において、軽量なアルミニウムを主成分とする線状導体(芯線)を有するシールド素線2と、シールド特性に優れた銅を主成分とする線状導体を有するシールド素線2とが混在していることが考えられる。複数種類の線状導体の割合は、例えば電磁シールド部材1の軽量化とシールド特性とのバランスを考慮して決定される。
【0036】
後述するように、シールド素線2各々の端部20は、環状に並んだ状態で導電モールド部材3に埋め込まれている。即ち、シールド素線2各々の端部20は、導電モールド部材3の成形(インサート成形)の際のインサート部品となる。従って、シールド素線2各々の端部20の線状導体と導電モールド部材3とは電気的に接続されている。
【0037】
例えば、シールド素線2各々は、その端部20における線状導体(芯線)の表面に形成されたメッキ200を有する。メッキ200は、線状導体の端部の表面にその周囲の絶縁被覆を溶解させつつ形成された金属膜である。メッキ200は、線状導体における先端面および端部の全周に亘って形成されている。
【0038】
従って、シールド素線2各々の端部20の線状導体は、メッキ200を介して導電モールド部材3と電気的に接続されている。なお、メッキ200を形成する工程については後述する。
【0039】
本実施形態においては、複数のシールド素線2は、シールド素線連結部5によって予め繋がれてシールド素線群2Xを構成している。
図3はシールド素線群2Xの平面図である。本実施形態における電磁シールド部材1は、3本以上のシールド素線2を備えている。
【0040】
以下の説明において、3本以上のシールド素線2のうち、導電モールド部材3に保持されることによって環状に並ぶ状態で隣り合う特定の2本のシールド素線2のことをそれぞれ第一シールド素線201および第二シールド素線202と称する。さらに、残りの全てのシールド素線2のことを第三シールド素線203と称する。
【0041】
シールド素線連結部5は、柔軟性を有する部材である。シールド素線連結部5は、3本以上のシールド素線2各々における両端部20の間の中間部どうしを、第一シールド素線201と第二シールド素線202との間以外において間隔を空けて連結している。
【0042】
即ち、シールド素線連結部5は、全ての第三シールド素線203の中間部を間隔を空けて一連に連結している。さらに、シールド素線連結部5は、第一シールド素線201の中間部と少なくとも1本の第三シールド素線203の中間部とを間隔を空けて連結している。さらに、シールド素線連結部5は、第二シールド素線202の中間部と少なくとも1本の第三シールド素線203の中間部とを間隔を空けて連結している。
【0043】
なお、
図3が示す例では、シールド素線連結部5は、間隔を空けて隣り合うシールド素線2どうしを連結しているが、そうでない例も考えられる。例えば、シールド素線連結部5が2つ隣りのシールド素線2どうしを連結することなども考えられる。
【0044】
シールド素線連結部5は、例えば柔軟性を有する合成樹脂の部材である。シールド素線連結部5を構成する合成樹脂は、例えば弾性を有するエラストマー、ポリ塩化ビニルまたはポリエチレンなどであることが考えられる。
【0045】
シールド素線連結部5は、後述する導電モールド部材3の筒部301と一体化される前の複数のシールド素線2に形成される。即ち、導電モールド部材3がシールド素線群2Xの端部にインサート成形される前の時点において、複数のシールド素線2は柔軟なシールド素線連結部5によってすだれ状に一体化されている。
【0046】
後述するように、すだれ状のシールド素線群2Xの両端におけるメッキ200の部分各々は、2つの導電モールド部材3各々の筒部301に環状に並ぶ状態で埋め込まれている。
【0047】
シールド素線群2Xを含む電磁シールド部材1は、主電線81の経路に沿って曲げて取り付けられた場合であっても、シールド素線2相互の間隔が概ね一定に維持され、複数のシールド素線2が周方向において一部に偏ることなく概ね一様に分布する。その結果、シールド素線2の間に部分的に大きな隙間が形成されてしまってシールド性能が悪化することを防止できる。
【0048】
さらに、複数のシールド素線2がすだれ状に一体化されているため、導電モールド部材3のインサート成形の際に、インサート部品である複数のシールド素線2の取り扱いが容易となる。
【0049】
導電モールド部材3は、環状に形成された導電性樹脂の部材である。導電モールド部材3は、主電線81の一部の周囲を囲む環状の筒部301およびその筒部301に連なった留め部302を有している。
【0050】
図1,2が示す例において、導電モールド部材3は、いわゆるシールドシェル部材に相当する。導電モールド部材3は、主電線81の接続先である電装機器を収容する筐体における開口の縁部に取り付けられる部材である。その筐体は、接地用の基準電位体の一例である。
【0051】
筒部301は、シールド素線2各々の端部20が環状に並んだ状態で埋め込まれている部分である。従って、シールド素線2各々のメッキ200の部分は、導電モールド部材3の筒部301によって環状に並ぶ状態で保持される。
【0052】
シールド素線2の埋め込み構造は、導電性樹脂のインサート成形によって形成される。本実施形態では、シールド素線2各々におけるメッキ200の部分が筒部301に埋め込まれている。導電モールド部材3の筒部301には、主電線81の通路を成す貫通孔300が形成されている。
【0053】
一方、留め部302は、モールド樹脂付電線9の接続先の機器を収容する金属製の不図示の筐体に留められる部分である。留め部302は筒部301からその外側に形成されている。導電モールド部材3は、筒部301の貫通孔300と筐体の開口とが重なる状態で筐体に取り付けられる。
【0054】
図1,2が示す例では、導電モールド部材3を筐体に留めるためのネジが通されるネジ孔303が留め部302に形成されている。導電モールド部材3は、例えば、絶縁性の合成樹脂とこれに添加された粉末状、繊維状またはナノチューブ状の導電性物質とを含む複合導電性樹脂である。
【0055】
複合導電性樹脂の導電性物質は、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、鉄、ステンレスまたはニッケルなどの金属の粉末もしくは繊維、あるいはカーボンナノチューブなどである。なお、導電モールド部材3が、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェンまたはポリアニリンなどの本質的な導電性樹脂の部材であることも考えられる。
【0056】
例えば、モールド樹脂付電線9の絶縁モールド部7が、導電モールド部材3における筒部301の貫通孔300に嵌め入れられる。これにより、絶縁モールド部7を貫通する端子付電線80が、筒部301の貫通孔300を貫通した状態になる。また、導電モールド部材3が、いわゆる二色成形によって絶縁モールド部7の外側に直接成形されることも考えられる。
【0057】
本実施形態においては、複数のシールド素線2が交差せずに並列に並ぶ状態で、シールド素線2各々の端部20(メッキ200)が筒部301に埋め込まれている。複数のシールド素線2各々の両端部20各々が、2つの導電モールド部材3各々によって環状に保持されている。そのため、複数のシールド素線2は、2つの導電モールド部材3により、主電線81の周囲を囲む筒状に並ぶ状態に保持されている。
【0058】
シールド素線2各々の線状導体は、その端部の表面においてメッキ200と接触しており、そのメッキ200が筒部301に接触している。従って、複数のシールド素線2各々の線状導体は、メッキ200を介して導電モールド部材3と電気的に接続される。
【0059】
図4は、電磁シールド部材1を製造する途中のメッキ形成工程を示す図である。
図4が示すように、メッキ形成工程はシールド素線2各々の端部20がメッキ液200Xに浸漬される湿式メッキ工程である。メッキ形成工程において、シールド素線2各々における絶縁被覆が形成されたままの端部20がメッキ槽90に溜まったメッキ液200Xに浸漬される。
【0060】
溶融金属であるメッキ液200Xの温度、即ち、メッキ200の融点は、シールド素線2の絶縁被覆の融点よりも高い。そのため、シールド素線2各々の端部20の絶縁被覆が高温のメッキ液200Xに触れて線状導体(芯線)の表面から溶出する。さらに、溶出した絶縁被覆の内側の線状導体がメッキ液200Xに曝され、その線状導体の表面にメッキ200が形成される。
【0061】
図4が示す例では、複数のシールド素線2は、メッキ形成工程の前にシールド素線連結部5によってシールド素線群2Xとして一体化されている。そして、メッキ形成工程は、シールド素線群2Xとして一体化された複数のシールド素線2の端部20について一括して実行される。
【0062】
なお、例えばメッキ形成工程が電気メッキ工程である場合、カソード電極としてのシールド素線2各々の端部20と不図示のアノード電極とがメッキ液200Xに浸漬される。この場合、シールド素線2各々と不図示のアノード電極とに電圧が印加される。また、メッキ200が無電解メッキ法によって形成されることも考える。
【0063】
<効果>
導電モールド部材3は、複数のシールド素線2の端部20と接地用の基準電位体とを電気的に接続するためにそれらの間に介在する部材である。即ち、導電モールド部材3は、従来のシールドシェル部材の代わりとなる介在部材である。そして、導電モールド部材3は、インサート成形によって複数のシールド素線2と一体化されている。そのため、ワイヤハーネス10の組立工程において、複数のシールド素線2の端部20と介在部材(導電モールド部材3)とをカシメリングまたはカシメバンドなどの接続用部品を用いて接続する必要がない。
【0064】
従って、電磁シールド部材1が採用されれば、複数のシールド素線2(導線)の端部20と接地用の介在部材(導電モールド部材3)とを接続するための部品を省略できる。これによりワイヤハーネス10の組み立て工数を低減することが可能となる。
【0065】
また、電磁シールド部材1において、複数のシールド素線2が柔軟なシールド素線連結部5によってシールド素線群2Xとしてすだれ状に一体化されている。そのため、シールド素線2各々を筒部301に固定する際における複数のシールド素線2の取り扱いが容易となる。
【0066】
また、電磁シールド部材1において、複数のシールド素線2は、シールド素線として機能する絶縁電線である。また、シールド素線2各々のメッキ200は、シールド素線2各々における絶縁被覆が形成されたままの端部20がメッキ液200Xの槽(メッキ槽90)に浸漬されることによって形成される。
【0067】
そして、シールド素線2各々のメッキ200の部分が導電モールド部材3の筒部301にインサート成形によって埋め込まれるため、シールド素線2各々の線状導体がメッキ200を介して導電モールド部材3と電気的に接続される。また、導電モールド部材3の留め部302が筐体(基準電位体)に固定されることにより、シールド素線2各々の線状導体がメッキ200および導電モールド部材3を介して筐体と電気的に接続される。
【0068】
従って、電磁シールド部材1が採用されれば、シールド素線2各々の端部20の絶縁被覆を予め剥がす工程が不要である。その結果、シールド素線2各々の線状導体を簡易に導電モールド部材3に対して電気的に接続することができ、ひいてはシールド素線2の端部20を簡易に筐体接地できる。
【0069】
<第2実施形態>
次に、
図5を参照しつつ、第2実施形態に係る電磁シールド部材1Aについて説明する。
図5は電磁シールド部材1Aの主要部および筐体900の斜視図である。金属製の筐体900は、接地用の基準電位体の一例である。
【0070】
図5には、筐体900の一部切り欠き図が示されている。
図5において、
図1〜4に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。
【0071】
電磁シールド部材1Aは、電磁シールド部材1の代わりにワイヤハーネス10に適用可能である。以下、電磁シールド部材1Aにおける電磁シールド部材1と異なる点について説明する。
【0072】
電磁シールド部材1Aは、電磁シールド部材1と同様に、複数のシールド素線2と導電モールド部材3Aとを有している。
図5は、複数のシールド素線2の一方の端部の付近における電磁シールド部材1Aの構造を示している。電磁シールド部材1Aは、複数のシールド素線2の両端部において
図5が示す構造を有している。
【0073】
導電モールド部材3Aは、環状の筒部301およびその筒部301に連なった留め部302Aを有している。筒部301には、複数のシールド素線2各々の端部20が環状に並ぶ状態で埋め込まれている。なお、
図5において、シールド素線連結部5の描画は省略されている。
【0074】
留め部302Aは、フランジ部303、係合部305および位置決め部306を有している。フランジ部303は、筐体900における開口901の縁部の外側面に接する部分である。
【0075】
係合部305は、筐体900における開口901の縁部の内側面に引っ掛かる部分である。係合部305は、フランジ部303から突出して形成されているとともに、導電モールド部材3Aにおける他の部分よりも薄く形成されている。これにより、係合部305は、その突出方向に対して交差する方向の外力が加わると弾性変形する。
【0076】
係合部305は、筐体900の外側から開口901に挿入される過程において、開口901の縁面に接触して弾性変形する。そして、係合部305は、フランジ部303が筐体900に接する深さまで開口901内に挿入されると、弾性変形した状態から元の自然状態に戻る。これにより、係合部305に形成された段差部が筐体900における開口901の縁部の内側面に引っ掛かる。
【0077】
係合部305が筐体900における開口901の縁部に引っ掛かることにより、フランジ部303と係合部305とが開口901の縁部を表裏の両側から挟み込む。これにより、導電モールド部材3Aが筐体900に留まる。
【0078】
位置決め部306は、係合部305とともに筐体900の開口901に挿入され、開口901の縁面に接する。これにより、位置決め部306は、筐体900の表面に沿う方向における導電モールド部材3Aの変位を制限する。
【0079】
電磁シールド部材1Aにおいて、導電モールド部材3Aは、接地用の介在部材であるとともに、シールド素線2を接地用の筐体900(基準電位体)に簡易に接続するためのコネクタでもある。電磁シールド部材1Aが採用されれば、ネジの締結などの煩雑な作業を要することなく簡易に導電モールド部材3Aを筐体900に接続することができる。
【0080】
<第3実施形態>
次に、
図6,7を参照しつつ、第3実施形態に係る電磁シールド部材1Bについて説明する。
図6,7は、電磁シールド部材1Bの主要部および接地用の基準電位体900Xの平面図である。また、
図6は、電磁シールド部材1Bの端部が基準電位体900Xに接続される前の状態を示し、
図7は、電磁シールド部材1Bの端部が基準電位体900Xに接続された状態を示す。
図6,7において、
図1〜5に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。
【0081】
電磁シールド部材1Bの接続先である基準電位体900Xは、金属製の筐体900と接地側導電コネクタ90Xとを含む。接地側導電コネクタ90Xは、導電モールド部材3の材料と同様の導電性樹脂の部材である。
【0082】
接地側導電コネクタ90Xは、筐体900の開口901の部分に取り付けられた部材である。接地側導電コネクタ90Xには、筐体900の開口901と重なる貫通孔9000が形成されている。
【0083】
接地側導電コネクタ90Xは、筐体900の一部に固定される固定部902に加え、嵌合部903と係合受け部904とを有している。嵌合部903は、貫通孔9000の枠を形成し、電磁シールド部材1Bの導電モールド部材3Bの一部が嵌め合わされる部分である。係合受け部904は、導電モールド部材3Bの一部が引っ掛けられる部分である。
【0084】
図6,7が示す例では、接地側導電コネクタ90Xの固定部902は、筐体900に対してネジ90Yで固定されている。これにより、接地側導電コネクタ90Xと金属製の筐体900とが電気的に接続されている。
【0085】
電磁シールド部材1Bは、電磁シールド部材1の代わりにワイヤハーネス10に適用可能である。以下、電磁シールド部材1Bにおける電磁シールド部材1と異なる点について説明する。
【0086】
電磁シールド部材1Bは、電磁シールド部材1と同様に、複数のシールド素線2と導電モールド部材3Bとを有している。
図6.7は、複数のシールド素線2の一方の端部の付近における電磁シールド部材1Bの構造を示している。電磁シールド部材1Bは、複数のシールド素線2の両端部において
図6,7が示す構造を有している。
【0087】
導電モールド部材3Bは、環状の筒部301およびその筒部301に連なった留め部302Bを有している。筒部301には、複数のシールド素線2各々の端部20が環状に並ぶ状態で埋め込まれている。なお、
図6,7において、シールド素線連結部5の描画は省略されている。
【0088】
留め部302Bは、係合部305Bおよび位置決め部306Bを有している。位置決め部306Bは、接地側導電コネクタ90Xの嵌合部903に嵌め合わされる部分である。位置決め部306Bは、嵌合部903の内側の貫通孔9000に挿入され、貫通孔9000の壁面に接する。これにより、位置決め部306Bは、接地側導電コネクタ90Xにおける貫通孔9000の貫通方向に交差する方向における導電モールド部材3Bの変位を制限する。
【0089】
係合部305Bは、枠状に形成されている。係合部305Bは、接地側導電コネクタ90Xの係合受け部904の内側に挿入され、係合受け部904に引っ掛かる部分である。係合部305Bは、筒部301から突出して形成されているとともに、導電モールド部材3Bにおける他の部分よりも薄く形成されている。これにより、係合部305Bは、その突出方向に対して交差する方向の外力が加わると弾性変形する。
【0090】
係合部305Bは、位置決め部306が接地側導電コネクタ90Xの嵌合部903に嵌め合わされる過程において、係合受け部904に接触して弾性変形する。
図6は、位置決め部306Bが接地側導電コネクタ90Xの嵌合部903に嵌め合わされる前の状態を示し、
図7は位置決め部306Bが接地側導電コネクタ90Xの嵌合部903に嵌め合わされた後の状態を示す。
【0091】
そして、係合部305Bは、筒部301が接地側導電コネクタ90Xの嵌合部903に接する深さまで貫通孔9000に挿入されると、弾性変形した状態から元の自然状態に戻る。これにより、係合部305Bに形成された段差部が係合受け部904に引っ掛かる。係合部305Bが係合受け部904に引っ掛かることにより、導電モールド部材3Bが接地側導電コネクタ90Xに留まる。
【0092】
電磁シールド部材1Bにおいて、導電モールド部材3Bは、接地用の介在部材であるとともに、シールド素線2を基準電位体900Xの接地側導電コネクタ90Xに簡易に接続するためのコネクタでもある。電磁シールド部材1Bが採用されれば、ネジの締結などの煩雑な作業を要することなく簡易に導電モールド部材3Bを基準電位体900Xに接続することができる。
【0093】
<第4実施形態>
次に、
図8を参照しつつ、ワイヤハーネス10に適用可能な第4実施形態に係る電磁シールド部材1Cについて説明する。
図8は電磁シールド部材1Cの主要部の斜視図である。
図8において、
図1〜7に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、電磁シールド部材1Cにおける電磁シールド部材1と異なる点について説明する。
【0094】
電磁シールド部材1Cにおいて、複数のシールド素線2は、一般的な編組線と同様に筒状に編み込まれた構造を有している。例えば、編み込まれて筒状に形成された複数のシールド素線2の両端部において、線状導体の表面にメッキ200が形成されている。
【0095】
そして、電磁シールド部材1Cにおいても、シールド素線2各々の端部20(メッキ200の部分)が、環状に並ぶ状態で導電モールド部材3の筒部301に埋め込まれている。導電モールド部材3は、筒状に編み込まれたシールド素線2各々の端部20をインサート部品とするインサート成形によって形成されている。
【0096】
図8が示す電磁シールド部材1Cが採用される場合も、電磁シールド部材1が採用される場合と同様の効果が得られる。また、シールド素線連結部5を省くことができる。そのため、電磁シールド部材1Cの構成部品の点数を少なくすることができる。
【0097】
<第5実施形態>
次に、
図9を参照しつつ、第5実施形態に係る電磁シールド部材1Dおよびそれを備えるワイヤハーネス10Aについて説明する。
図9はワイヤハーネス10Aの主要部の斜視図である。
図9において、
図1〜8に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。
【0098】
ワイヤハーネス10Aは、ワイヤハーネス10と同様に、主電線81を含むモールド樹脂付電線9と電磁シールド部材1Dとを備えている。
図9に示される導電モールド部材3は、
図1,2に示される導電モールド部材3と形状が異なるものの同じ構造を有している。以下、ワイヤハーネス10Aの電磁シールド部材1Dにおける電磁シールド部材1と異なる点について説明する。
【0099】
電磁シールド部材1Aは、電磁シールド部材1の構成に加えてシールド素線結束部材6を備えている。シールド素線結束部材6は、第一シールド素線201の中間部と第二シールド素線202の中間部とを間隔を空けて緩やかに結束する部材である。
【0100】
例えば、シールド素線結束部材6は、第一シールド素線201の中間部および第二シールド素線202の中間部に螺旋状に緩やかに巻き付けられた紐状の部材である。
図9が示す例では、紐状のシールド素線結束部材6の端部60が接着剤などによって導電モールド部材3に固定されている。
【0101】
電磁シールド部材1Dが採用されれば、シールド素線結束部材6が、シールド素線連結部5で連結されていない第一シールド素線201とその隣の第二シールド素線202との間に大きな隙間が形成されてしまうことも防止できる。従って、シールド性能の悪化をより確実に防止できる。
【0102】
<応用例>
電磁シールド部材1,1A,1B,1Dにおいて、シールド素線連結部5が省略されることも考えられる。また、電磁シールド部材1Dにおいて、シールド素線結束部材6が省略されることも考えられる。
【0103】
また、電磁シールド部材1,1A,1B,1C,1Dにおいて、シールド素線2各々の端部20にメッキ200が形成されていないことも考えられる。この場合、シールド素線2各々における線状導体の端部は、導電モールド部材3,3A,3Bの筒部301に直接接触している。
【0104】
また、電磁シールド部材1,1A,1B,1C,1Dにおいて、複数のシールド素線2が被覆電線と裸電線とを含むこと、または全てのシールド素線2が裸電線であることも考えられる。この場合、シールド素線2として採用される裸電線各々は同種の金属の電線である。
【0105】
なお、本発明に係る電磁シールド部材およびワイヤハーネスは、各請求項に記載された発明の範囲において、以上に示された各実施形態および応用例を自由に組み合わせること、あるいは各実施形態および応用例を適宜、変形するまたは一部を省略することによって構成されることも可能である。