特許第6183259号(P6183259)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183259
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   G03G15/20 510
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-62152(P2014-62152)
(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2015-184555(P2015-184555A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】小川原 則雄
【審査官】 中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−038826(JP,A)
【文献】 特開2010−014759(JP,A)
【文献】 特開2010−014756(JP,A)
【文献】 特開2011−118087(JP,A)
【文献】 特開2009−122669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未定着の現像剤が表面に保持された媒体に接触しながら回転して、現像剤を定着させる熱を媒体に付与する加熱部材と、
前記加熱部材に接触、離間可能に支持され、前記加熱部材との接触時に前記加熱部材から吸熱可能な吸熱部材と、
前記加熱部材の表面において、前記媒体の前端が接触する位置よりも前記加熱部材の表面の回転方向の上流側の領域において前記吸熱部材を接触させると共に、前記媒体の前端が接触する位置では前記吸熱部材を離間させる吸熱部材の接触・離間制御手段と、
外表面に凹凸を有し、前記加熱部材との接触時に、前記加熱部材の表面を均す前記吸熱部材と、
を備えたことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
先行する媒体の搬送方向の後端と後続の媒体の搬送方向の前端との間の紙間領域に対応する前記加熱部材の表面の領域に前記吸熱部材を接触させる前記吸熱部材の接触・離間制御手段、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
未定着の現像剤が表面に保持された媒体に接触しながら回転して、現像剤を定着させる熱を媒体に付与する加熱部材と、
前記加熱部材に接触、離間可能に支持され、前記加熱部材との接触時に前記加熱部材から吸熱可能な吸熱部材と、
前記加熱部材の表面において、前記媒体の前端が接触する位置よりも前記加熱部材の表面の回転方向の上流側の領域において前記吸熱部材を接触させると共に、前記媒体の前端が接触する位置では前記吸熱部材を離間させる吸熱部材の接触・離間制御手段であって、前記媒体の前端が前記加熱部材に接触する時期に対して前記加熱部材が1周する前に前記加熱部材に前記吸熱部材を接触させる前記接触・離間制御手段と、
を備えたことを特徴とする定着装置。
【請求項4】
像保持体と、
前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像の形成装置と、
前記像保持体の表面の潜像を可視像に現像する現像器と、
前記像保持体の表面の可視像を媒体に転写する転写装置と、
前記媒体の表面に転写された可視像を定着させる請求項1ないし3に記載の定着装置と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置に関し、以下の特許文献1,2に記載の技術が知られている。
【0003】
特許文献1としての特開2012−3190号公報には、定着装置(100)において、加熱により定着を行う定着ロール(102)に対して、外部加熱ロール(108)が接触、離間可能に支持され、外部加熱ロール(108)の接触、離間の制御により定着ロール(102)の温度を制御する技術が記載されている。また、特許文献1の定着装置(100)では、定着ロール(102)に対して、予め設定された枚数になったときに接触して、定着ロール(102)の外周面を均すリフレッシュロール(132)が配置された構成が記載されている。
【0004】
特許文献2としての特開2012−27168号公報には、定着ロール(102)に対して、定着ロール(102)の温度が、オーバーシュートして設定温度(T0)よりも高くなった際に、周方向で発生した温度ムラを均すために、定着ロール(102)の外周で、記録用紙(P)の先端位置(Y0)が接触する位置(R1)が、吸熱ロール(132)の位置(R0)に到達すると、吸熱ロール(132)を定着ロール(102)に接触させ、記録用紙(P)の先端位置(Y0)が接触する位置(R1)が1周して再び吸熱ロール(132)の位置(R0)に到達すると、吸熱ロール(132)を定着ロール(102)から離間させる技術が記載されている。
したがって、特許文献2に記載の技術では、記録用紙(P)の先端位置(Y0)に対応する位置(R1)が、吸熱ロール(132)の位置(R0)に到達する前の状態では、吸熱ロール(132)は離間している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−3190号公報(「0043」〜「0047」、図3
【特許文献2】特開2012−27168号公報(「0072」〜「0076」、図6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、定着時の光沢の低下を低減することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記技術的課題を解決するために、請求項1に記載の発明の定着装置は、
未定着の現像剤が表面に保持された媒体に接触しながら回転して、現像剤を定着させる熱を媒体に付与する加熱部材と、
前記加熱部材に接触、離間可能に支持され、前記加熱部材との接触時に前記加熱部材から吸熱可能な吸熱部材と、
前記加熱部材の表面において、前記媒体の前端が接触する位置よりも前記加熱部材の表面の回転方向の上流側の領域において前記吸熱部材を接触させると共に、前記媒体の前端が接触する位置では前記吸熱部材を離間させる吸熱部材の接触・離間制御手段と、
外表面に凹凸を有し、前記加熱部材との接触時に、前記加熱部材の表面を均す前記吸熱部材と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の定着装置において、
先行する媒体の搬送方向の後端と後続の媒体の搬送方向の前端との間の紙間領域に対応する前記加熱部材の表面の領域に前記吸熱部材を接触させる前記吸熱部材の接触・離間制御手段、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
前記技術的課題を解決するために、請求項3に記載の発明の定着装置は、
未定着の現像剤が表面に保持された媒体に接触しながら回転して、現像剤を定着させる熱を媒体に付与する加熱部材と、
前記加熱部材に接触、離間可能に支持され、前記加熱部材との接触時に前記加熱部材から吸熱可能な吸熱部材と、
前記加熱部材の表面において、前記媒体の前端が接触する位置よりも前記加熱部材の表面の回転方向の上流側の領域において前記吸熱部材を接触させると共に、前記媒体の前端が接触する位置では前記吸熱部材を離間させる吸熱部材の接触・離間制御手段であって、前記媒体の前端が前記加熱部材に接触する時期に対して前記加熱部材が1周する前に前記加熱部材に前記吸熱部材を接触させる前記接触・離間制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
前記技術的課題を解決するために、請求項4に記載の発明の画像形成装置は、
像保持体と、
前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像の形成装置と、
前記像保持体の表面の潜像を可視像に現像する現像器と、
前記像保持体の表面の可視像を媒体に転写する転写装置と、
前記媒体の表面に転写された可視像を定着させる請求項1ないし3に記載の定着装置と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1,3,4に記載の発明によれば、本発明の構成を有しない場合に比べて、定着時の光沢の低下を低減することができる。
請求項1,4に記載の発明によれば、吸熱部材で、吸熱しつつ加熱部材の表面を均すこともできる。
請求項に記載の発明によれば、先行する媒体で加熱部材に形成された荒れ筋を、後続の媒体が到達する前に、吸熱部材で修復することができる。
請求項3に記載の発明によれば、吸熱部材が加熱部材に接触する期間が加熱部材の1周未満の場合に比べて、光沢の低下をさらに低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は実施例1の画像形成装置の全体説明図である。
図2図2は実施例1の画像形成装置の要部の説明図である。
図3図3は実施例1の定着装置の説明図である。
図4図4は実施例1の吸熱部材の拡大説明図である。
図5図5は実施例1の偏心カムの説明図である。
図6図6は実施例1の吸熱部材の移動の説明図であり、図6Aは非吸熱位置に移動した状態の説明図、図6Bは吸熱位置に移動した状態の説明図である。
図7図7は実施例1のコンディショニングロールの表面の説明図であり、図7Aは拡大図、図7Bは皮膜の原始的な構造の説明図である。
図8図8は実施例1の作用説明図であり、図8Aはコンディショニングロールの接触時期の説明図、図8Bはコンディショニングロールの離間時期の説明図、図8Cはシートが定着領域に進入した状態の説明図である。
図9図9は横軸に時間を取り縦軸に温度を取った加熱ロールの表面の温度の推移の説明図であり、図9Aは従来の温度推移のグラフ、図9Bは実施例1の温度推移のグラフである。
図10図10は実施例1の作用説明図であり、図10Aは先行のシートの後端が定着領域を通過した状態の説明図、図10Bは紙間領域におけるコンディショニングロールの接触時期の説明図、図10Cは紙間領域におけるコンディショニングロールの離間時期の説明図、図10Dは後続シートが定着領域に進入した状態の説明図である。
図11図11はフッ素コートがされた従来の吸熱部材の説明図である。
図12図12は実施例2のコンディショニングロールの表面の説明図であり、実施例1の図7Aに対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例としての実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以後の説明の理解を容易にするために、図面において、前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とし、矢印X,−X,Y,−Y,Z,−Zで示す方向または示す側をそれぞれ、前方、後方、右方、左方、上方、下方、または、前側、後側、右側、左側、上側、下側とする。
また、図中、「○」の中に「・」が記載されたものは紙面の裏から表に向かう矢印を意味し、「○」の中に「×」が記載されたものは紙面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例1】
【0014】
(実施例1のプリンタUの全体構成の説明)
図1は実施例1の画像形成装置の全体説明図である。
図2は実施例1の画像形成装置の要部の説明図である。
図1図2において、本発明の実施例1の画像形成装置の一例としてのプリンタUは、プリンタの本体U1と、プリンタの本体U1に媒体を供給する供給装置の一例としてのフィーダーユニットU2と、画像が記録された媒体が排出される排出装置の一例としての排出ユニットU3と、プリンタの本体U1と排出ユニットU3との間を接続する接続部の一例としてのインターフェースモジュールU4と、利用者が操作を行う操作部UIと、を有する。
【0015】
(実施例1のマーキングの構成の説明)
図1図2において、前記プリンタの本体U1は、プリンタUの制御を行う制御部Cや、プリンタUの外部に図示しない専用のケーブルを介して接続された情報の送信装置の一例としてのプリント画像サーバCOMから送信された画像情報を受信する図示しない通信部、媒体に画像を記録する画像記録部の一例としてのマーキング部U1a等を有する。前記プリント画像サーバCOMには、ケーブルまたはLAN:Local Area Network等の回線を通じて接続され、プリンタUで印刷される画像の情報が送信される画像の送信装置の一例としてのパーソナルコンピュータPCが接続されている。
前記マーキング部U1aは、像保持体の一例としてY:イエロー、M:マゼンタ、C:シアン、K:黒の各色用の感光体Py,Pm,Pc,Pkと、写真画像等を印刷する場合に画像に光沢を出すための感光体Poと、を有する。感光体Py〜Poは、表面が感光性の誘電体で構成されている。
【0016】
図1図2において、黒色の感光体Pkの周囲には、感光体Pkの回転方向に沿って、帯電器CCk、潜像の形成装置の一例としての露光機ROSk、現像器Gk、一次転写器の一例としての一次転写ロールT1k、像保持体用の清掃器の一例としての感光体クリーナCLkが配置されている。
他の感光体Py,Pm,Pc,Poの周囲にも同様に、帯電器CCy,CCm,CCc,CCo、露光機ROSy,ROSm,ROSc,ROSo、現像器Gy,Gm,Gc,Go、一次転写ロールT1y,T1m,T1c,T1o、感光体クリーナCLy,CLm,CLc,CLoが配置されている。
マーキング部U1aの上部には、収容容器の一例として、現像器Gy〜Goに補給される現像剤が収容されたトナーカートリッジKy,Km,Kc,Kk,Koが着脱可能に支持されている。
【0017】
各感光体Py〜Poの下方には、中間転写体の一例であって、像保持体の一例としての中間転写ベルトBが配置されており、中間転写ベルトBは、感光体Py〜Poと一次転写ロールT1y〜T1oとの間に挟まれる。中間転写ベルトBの裏面は、駆動部材の一例としてのドライブロールRdと、張力付与部材の一例としてのテンションロールRtと、蛇行防止部材の一例としてのウォーキングロールRwと、従動部材の一例としての複数のアイドラロールRfと、二次転写用の対向部材の一例としてのバックアップロールT2aと、可動部材の一例としての複数のリトラクトロールR1と、前記一次転写ロールT1y〜T1oにより支持されている。
中間転写ベルトBの表面には、ドライブロールRdの近傍に、中間転写体の清掃器の一例としてのベルトクリーナCLBが配置されている。
【0018】
バックアップロールT2aには、中間転写ベルトBを挟んで、二次転写部材の一例としての二次転写ロールT2bが対向して配置されている。また、バックアップロールT2aには、バックアップロールT2aに現像剤の帯電極性とは逆極性の電圧を印加するために、接触部材の一例としてのコンタクトロールT2cが接触している。実施例1の二次転写ロールT2bには、右下方に配置された駆動部材の一例としての駆動ロールT2dとの間に、搬送部材の一例としての搬送ベルトT2eが張架されている。
前記バックアップロールT2a、二次転写ロールT2b、コンタクトロールT2cにより、実施例1の2次転写器T2が構成されており、一次転写ロールT1y〜T1o、中間転写ベルトB、2次転写器T2等により、実施例1の転写装置T1,B,T2が構成されている。
【0019】
2次転写器T2の下方には、媒体の一例としての記録シートSが収容される収容部の一例として給紙トレイTR1,TR2が設けられている。各給紙トレイTR1,TR2の右斜め上方には、取出部材の一例としてのピックアップロールRpと、捌き部材の一例としての捌きロールRsとが配置されている。捌きロールRsから、記録シートSが搬送される搬送路SHが延びており、搬送路SHに沿って、記録シートSを下流側に搬送する搬送部材の一例としての搬送ロールRaが複数配置されている。
2つの給紙トレイTR1,TR2からの搬送路SHが合流した位置に対して記録シートSの搬送方向の下流側には、不要部の除去装置の一例として、記録シートSを予め設定された圧力で挟んで下流側に搬送して、記録シートSの縁の不要部の除去、いわゆる、バリ取りを行うバリ取り装置Btが配置されている。
【0020】
バリ取り装置Btの下流側には、通過する記録シートSの厚みを計測して、記録シートSが複数枚重なっている状態、いわゆる重送を検知するための検知装置Jkが配置されている。重送の検知装置Jkの下流側には、姿勢の補正装置の一例として、記録シートSの搬送方向に対する傾斜、いわゆるスキューを補正する補正ロールRcが配置されている。補正ロールRcの下流側には、2次転写器T2への記録シートSの搬送時期を調整する調整部材の一例としてのレジストレーションロールRrが配置されている。
なお、フィーダーユニットU2にも、給紙トレイTR1,TR2やピックアップロールRp、捌きロールRs、搬送ロールRaと同様に構成された給紙トレイTR3,TR4等が設けられており、給紙トレイTR3,TR4からの搬送路SHは、プリンタの本体U1の搬送路SHに、重送の検知装置Jkの上流側で合流する。
【0021】
搬送ベルトT2eに対して、記録シートSの搬送方向の下流側には、媒体の搬送装置の一例としての搬送ベルトHBが複数配置されている。
搬送ベルトHBに対して、記録シートSの搬送方向の下流側には、定着装置Fが配置されている。
定着装置Fの下流側には、記録シートSを冷却する冷却装置Coが配置されている。
冷却装置Coの下流側には、記録シートSに圧力を加えて、記録シートSの湾曲、いわゆるカールを補正するデカーラーHdが配置されている。
デカーラーHdの下流側には、記録シートSに記録された画像を読み取る画像読取装置Scが配置されている。
【0022】
画像読取装置Scの下流側には、インターフェースモジュールU4に向けて延びる搬送路SHから分岐する搬送路の一例としての反転路SH2が形成されており、反転路SH2の分岐部には、搬送方向の切替部材の一例としての第1のゲートGT1が配置されている。
反転路SH2には、正逆回転可能な搬送部材の一例としてのスイッチバックロールRbが複数配置されている。スイッチバックロールRbの上流側には、反転路SH2の上流部から分岐して、搬送路SHの反転路SH2との分岐部よりも下流側に合流する搬送路の一例としての接続路SH3が形成されている。反転路SH2と接続路SH3との分岐部には、搬送方向の切替部材の一例としての第2のゲートGT2が配置されている。
【0023】
前記反転路SH2の下流側には、冷却装置Coの下方に、記録シートSの搬送方向を反転、いわゆる、スイッチバックさせるための折り返し路SH4が配置されている。折り返し路SH4には、正逆回転可能な搬送部材の一例としてのスイッチバックロールRbが配置されている。また、折り返し路SH4の入口には、搬送方向の切替部材の一例としての第3のゲートGT3が配置されている。
なお、折り返し路SH4の下流側の搬送路SHは、各給紙トレイTR1,TR2の搬送路SHに合流している。
【0024】
インターフェースモジュールU4には、排出ユニットU3に向けて延びる搬送路SHが形成されている。
排出ユニットU3には、排出される記録シートSが積載される積載容器の一例としてのスタッカトレイTRhが配置されており、搬送路SHから分岐してスタッカトレイTRhに延びる排出路SH5が設けられている。なお、実施例1の搬送路SHは、排出ユニットU3の右方に、図示しない追加の排出ユニットや後処理装置が追加して装着された場合に、追加された装置に対して記録シートSが搬送可能に構成されている。
【0025】
(マーキングの動作)
前記プリンタUでは、パーソナルコンピュータPCから送信された画像情報を、プリント画像サーバCOMを介して受信すると、画像形成動作であるジョブが開始される。ジョブが開始されると、感光体Py〜Poや中間転写ベルトB等が回転する。
感光体Py〜Poは、図示しない駆動源により回転駆動される。
帯電器CCy〜CCoは、予め設定された電圧が印加されて、感光体Py〜Poの表面を帯電させる。
露光機ROSy〜ROSoは、制御部Cからの制御信号に応じて、潜像を書き込む光の一例としてのレーザー光Ly,Lm,Lc,Lk,Loを出力して、感光体Py〜Poの帯電された表面に静電潜像を書き込む。
現像器Gy〜Goは、感光体Py〜Poの表面の静電潜像を可視像に現像する。
トナーカートリッジKy〜Koは、現像器Gy〜Goにおける現像に伴って消費された現像剤の補給を行う。
【0026】
一次転写ロールT1y〜T1oは、現像剤の帯電極性とは逆極性の一次転写電圧が印加され、感光体Py〜Poの表面の可視像を中間転写ベルトBの表面に転写する。
感光体クリーナCLy〜CLoは、一次転写後に感光体Py〜Poの表面に残留した現像剤を除去して清掃する。
中間転写ベルトBは、感光体Py〜Poに対向する一次転写領域を通過する際に、O,Y,M,C,Kの順に、画像が転写されて積層され、2次転写器T2に対向する2次転写領域Q4を通過する。なお、単色画像の場合は、1色のみの画像が転写されて2次転写領域Q4に送られる。
【0027】
ピックアップロールRpは、受信した画像情報の大きさや記録シートSの指定と、収容された記録シートSの大きさや種類等に応じて、記録シートSの供給が行われる給紙トレイTR1〜TR4から記録シートSを送り出す。
捌きロールRsは、ピックアップロールRpから送り出された記録シートSを1枚ずつ分離して捌く。
バリ取り装置Btは、通過する記録シートSに予め設定された圧力を印加してバリを除去する。
重送の検知装置Jkは、通過する記録シートSの厚さを検知することで、記録シートSの重送を検知する。
補正ロールRcは、通過する記録シートSを、図示しない壁面に接触させてスキューを補正する。
レジストレーションロールRrは、中間転写ベルトBの表面の画像が2次転写領域Q4に送られる時期に合わせて、記録シートSを送り出す。
【0028】
2次転写器T2は、コンタクトロールT2cを介してバックアップロールT2aに予め設定された現像剤の帯電極性と同極性の2次転写電圧が印加され、記録シートSに中間転写ベルトBの画像を記録シートSに転写する。
ベルトクリーナCLBは、2次転写領域Q4で画像が転写された後の中間転写ベルトBの表面に残留した現像剤を除去して清掃する。
搬送ベルトT2e,HBは、2次転写器T2で画像が転写された記録シートSを表面に保持して下流側に搬送する。
【0029】
定着装置Fは、加熱部材の一例としての加熱ロールFhと、加圧部材の一例としての加圧ロールFpとを有する。加熱ロールFhの内部には、熱源の一例としてのヒータhが収容されている。定着装置Fは、加熱ロールFhと加圧ロールFpとが接触する定着領域Q5を通過する記録シートSを加圧しながら加熱して、記録シートSの表面の未定着画像を定着する。前記加熱ロールFhおよび加圧ロールFpにより、実施例1の定着部材Fp,Fhが構成されている。
冷却装置Coは、定着装置Fで加熱された記録シートSを冷却する。
デカーラーHdは、冷却装置Coを通過した記録シートSに圧力を加えて、記録シートSの湾曲、いわゆるカールを除去する。
画像読取装置Scは、デカーラーHdを通過した記録シートSの表面の画像を読み取る。
【0030】
デカーラーHdを通過した記録シートSは、両面印刷が行われる場合には、第1のゲートGT1が作動して、反転路SH2に搬送され、折り返し路SH4でスイッチバックされて、搬送路SHを通じて、レジストレーションロールRrに再送され、2面目の印刷が行われる。
排出トレイTRhに排出される記録シートSは、搬送路SHを搬送され、スタッカトレイTRhに排出される。このとき、記録シートSの表裏が反転された状態でスタッカトレイTRhに排出される場合、搬送路SHから反転路SH2に一旦搬入され、記録シートSの搬送方向の後端が第2のゲートGT2を通過後、第2のゲートGT2が切り替わってスイッチバックロールRbが逆回転をして、接続路SH3を搬送されてスタッカトレイTRhに搬送される。
スタッカトレイTRhは、記録シートSが積載され、記録シートSの積載量に応じて、最上面が予め設定された高さとなるように、積載板TRh1が自動的に昇降する。
【0031】
(定着装置Fの説明)
図3は実施例1の定着装置の説明図である。
図4は実施例1の吸熱部材の拡大説明図である。
図2図4において、実施例1の定着装置Fでは、加熱ロールFhに対向して、吸熱部材の一例としてのコンディショニングロール1が配置されている。図4において、コンディショニングロール1は、回転軸2が軸受け部材の一例としてのベアリング3に回転可能に支持されている。コンディショニングロール1が加熱ロールFhに対して接触、離間する方向に沿って、ベアリング3は軸受けの支持体4に移動可能に支持されている。
軸受けの支持体4とベアリング3との間には、付勢部材の一例としてのバネ6が支持されている。バネ6は、コンディショニングロール1を加熱ロールFhに向かう方向に押している。
【0032】
図5は実施例1の偏心カムの説明図である。
図6は実施例1の吸熱部材の移動の説明図であり、図6Aは非吸熱位置に移動した状態の説明図、図6Bは吸熱位置に移動した状態の説明図である。
図4において、回転軸2の端部には、接触・離間部材の一例としての偏心カム7が配置されている。偏心カム7は、回転軸の一例としてのカム軸7aに、駆動源の一例としてのモータM1から駆動が伝達される。図5において、実施例1の偏心カム7は、回転中心7aからの径が最小の最小位置P1から周方向に離れるにつれて径が大きくなる昇降面7bと、昇降面7bに接続され且つ回転中心7aからの径が一定の円弧面7cと、を有する。したがって、最小位置P1が回転軸2に接触した状態では、図6Bに示すように、コンディショニングロール1は、吸熱位置の一例として、加熱ロールFhに接触した接触位置に移動する。そして、円弧面7cが回転軸2に接触した状態では、図6Aに示すように、コンディショニングロール1は、非吸熱位置の一例として、加熱ロールFhから離間した離間位置に移動する。
【0033】
図4において、コンディショニングロール1の周囲には、コンディショニングロール1の外周を囲むように、囲い部材の一例としてのフード11が配置されている。フード11の前後方向の端部外方には、冷却部材の一例としてのファン12が配置されている。ファン12は、作動時に、フード11内に、コンディショニングロール1を冷却する空気を供給可能に構成されている。
図1図2において、実施例1のプリンタの本体U1では、媒体の搬送路SH上に、シートSを検知する検知部材の一例としてのシートセンサSN1が配置されている。実施例1のシートセンサSN1は、定着領域Q5に対して、シートSの搬送方向の上流側に、加熱ロールFhの1周分の周長L1に、定着領域Q5から加熱ロールFhの回転方向の上流側に向けてコンディショニングロール1との接触位置1aまでの距離L1aを加えた距離だけ離れた位置に配置されている。すなわち、シートセンサSN1は、距離(L1+L1a)だけ定着領域Q5よりも上流側の位置に配置されている。
【0034】
図4において、前記モータM1やファン12は、制御部Cからの制御信号に基づいて制御される。また、制御部Cには、操作部UIや媒体の搬送路SHに配置されたシートセンサSN1からの信号が入力される。プリンタの本体U1の制御部Cは、外部との信号の入出力等を行う入出力インターフェースI/Oを有する。また、制御部Cは、必要な処理を行うためのプログラムおよび情報等が記憶されたROM:リードオンリーメモリを有する。また、制御部Cは、必要なデータを一時的に記憶するためのRAM:ランダムアクセスメモリを有する。また、制御部Cは、ROM等に記憶されたプログラムに応じた処理を行うCPU:中央演算処理装置を有する。したがって、実施例1の制御部Cは、小型の情報処理装置、いわゆるマイクロコンピュータにより構成されている。よって、制御部Cは、ROM等に記憶されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現することができる。
【0035】
プリンタの本体U1の制御部Cは、以下の機能C1〜C4を有する。
接触時期の判別手段C1は、コンディショニングロール1を加熱ロールFhに接触させる時期になったか否かを判別する。実施例1の接触時期の判別手段C1は、シートSの先端がシートセンサSN1の位置を通過した場合に、コンディショニングロール1を加熱ロールFhに接触させる時期になったと判別する。また、実施例1の接触時期の判別手段C1は、連続してシートSが通過する場合には、先行するシートSの後端が定着領域Q5を通過した場合に、シートSの後端が接触していた加熱ロールFhの表面がコンディショニングロール1の位置に到達した場合に、コンディショニングロール1を加熱ロールFhに接触させる時期になったと判別する。具体的には、シートSの搬送方向の長さと搬送速度とに応じて、シートセンサSN1を前端が通過してから、シートSの後端が接触していた加熱ロールFhの表面がコンディショニングロール1の位置に到達するまでの時間が予め測定、設定されており、設定された時間が経過した場合に、コンディショニングロール1を加熱ロールFhに接触させる時期になったと判別する。
【0036】
離間時期の判別手段C2は、コンディショニングロール1を加熱ロールFhから離間させる時期になったか否かを判別する。実施例1の離間時期の判別手段C2は、シートSの先端が定着領域Q5に進入した場合に、加熱ロールFhの表面にシートSの先端が接触する予定の加熱ロールFh上の位置が、コンディショニングロール1の位置に到達した場合に、コンディショニングロール1を加熱ロールFhから離間させる時期になったと判別する。すなわち、加熱ロールFhの表面において、シートSの先端に対応する位置がコンディショニングロール1の位置に到達した場合に、離間時期になったと判別する。
【0037】
接触・離間制御手段C3は、モータM1を制御して、偏心カム7の回転を制御して、コンディショニングロール1を加熱ロールFhに対して、接触、離間させる。実施例1の接触・離間制御手段C3は、接触時期になったと判別された場合、最小位置P1が回転軸2に接触する位置に偏心カム7を回転させる。よって、コンディショニングロール1は、加熱ロールFhに接触する。また、接触・離間制御手段C3は、離間時期になったと判別された場合、円弧面7cが回転軸2に接触する位置まで偏心カム7を回転させる。よって、コンディショニングロール1は、加熱ロールFhから離間する。
冷却制御手段の一例としてのファン制御手段C4は、ファン12を介して、コンディショニングロール1の冷却を制御する。実施例1のファン制御手段C4は、印刷動作実行中は、コンディショニングロール1や近傍の加熱ロールFhの温度が低下しすぎないように、待機中の場合に比べて、ファン12を低回転速度で回転させる。
【0038】
(吸熱部材の説明)
図7は実施例1のコンディショニングロールの表面の説明図であり、図7Aは拡大図、図7Bは皮膜の原始的な構造の説明図である。
図7Aにおいて、実施例1のコンディショニングロール1は、ロール本体21の表面21aに、皮膜層の一例としてのコート層22が形成されている。実施例1のコート層22は、球状アルミナ22aが分散されており、図7Bに示すような三次元架橋されたシロキサン骨格の皮膜22bにより構成されている。実施例1の球状アルミナ22aとしては、加熱ロールFhの表面を均すために、平均粒径が5μm以下のものが好適に使用可能であり、例えば、平均粒径(d50)が2.5μm〜4.5μmの新日鉄住金マテリアルズ株式会社 マイクロン社製のAX3-15が好適に使用可能である。
【0039】
また、実施例1の皮膜22bは、3μm〜5μmの厚さに設定されている。なお、三次元架橋されたシロキサン骨格の皮膜22bとしては、例えば、ナノグラスコートジャパン株式会社製のナノグラスコートを使用可能である。
よって、実施例1では、コンディショニングロール1の表面には、球状アルミナ22aが分散された皮膜層22に起因する微小な凹凸が形成される。
【0040】
(実施例1の定着装置の機能)
図8は実施例1の作用説明図であり、図8Aはコンディショニングロールの接触時期の説明図、図8Bはコンディショニングロールの離間時期の説明図、図8Cはシートが定着領域に進入した状態の説明図である。
前記構成を備えた実施例1のプリンタUでは、図8Aにおいて、定着領域Q5にシートSの搬送方向の前端が進入する前に、シートセンサSN1の位置にシートSの前端が到達すると、コンディショニングロール1が加熱ロールFhに接触する。コンディショニングロール1が加熱ロールFhに接触すると、加熱ロールFhの表面の熱がコンディショニングロール1に奪われて冷却される。
【0041】
図8Bにおいて、シートSの前端が、定着領域Q5に対して距離L1aの位置に到達すると、コンディショニングロール1が加熱ロールFhから離間する。したがって、実施例1では、コンディショニングロール1は、加熱ロールFhが1周する期間、加熱ロールFhに接触している。
したがって、図8Cにおいて、シートSが定着領域Q5に進入する際には、シートSには、コンディショニングロール1が離間した後の加熱ロールFhの表面が接触する。
【0042】
図9は横軸に時間を取り縦軸に温度を取った加熱ロールの表面の温度の推移の説明図であり、図9Aは従来の温度推移のグラフ、図9Bは実施例1の温度推移のグラフである。
図9Aにおいて、コンディショニングロール1が設けられていない従来の構成では、シートSの前端が突入した場合に、加熱ロールFhの表面の熱がシートSや現像剤に奪われて、急激な温度変化が生じる。このとき、加熱ロールFhの温度が、定着不良が発生しない下限温度T0を下回った状況まで低下することがある。このときに、ヒータhがオンになったとしても、シートSに接触した加熱ロールFhの面が1周する間に、温度が下限温度T0以上にならずに、シートSに2周目の面が接触することがある。
【0043】
特に、加熱ロールFhの温度センサの位置に応じて、ヒータhがオンになるまでに時間の遅れ、タイムラグが発生する。タイムラグが発生すると、加熱ロールFhの表面の温度は下限温度T0に到達しない可能性が高くなる。この場合、2周目の位置では、定着された画像の光沢度、いわゆるグロスが低下する問題がある。なお、温度の変化は、シート先端の突入時、すなわち、加熱ロールFhの1周目で最も影響が大きく、2周目以降は、ヒータhで熱が供給されており、1周目よりも温度低下は小さくなる。
特許文献2に記載の技術では、シートSの前端が突入する位置に合わせて吸熱ロールを接触させて温度を下げており、シートSの温度低下に、吸熱ロールの温度低下が加算されてしまい、さらなる温度低下を招く恐れがある。
温度低下に対応するために、定着温度T1を高く設定すると、消費電力が多くなったり、最悪の場合は発火する恐れが高くなる問題もある。
【0044】
これらに対して、実施例1では、シートSの前端が定着領域Q5に突入する1周前に、コンディショニングロール1を加熱ロールFhに接触させる。よって、図9Bに示すように、シートSが接触する前に、コンディショニングロール1が接触して吸熱する。したがって、シートSが突入する前に、温度を低下させている。また、コンディショニングロール1は、加熱ロールFhの近傍に配置されており、シートSに比べて、温度は高い傾向にある。よって、コンディショニングロール1の接触時の温度低下は、シートSの接触時に比べて低い傾向にある。そして、コンディショニングロール1が接触して温度が低下すると、ヒータhが作動し、シートSの前端が定着領域Q5に到達する時期には、下限温度T0以上に回復しやすい。そして、加熱ロールFhの2周目以降は、実質的には、従来技術における3周目以降に相当し、下限温度T0未満になりにくく、シートSとの接触時の温度変化も緩やかになる。よって、実施例1では、グロスの低下が発生しにくく、画質の低下が抑制される。
【0045】
図10は実施例1の作用説明図であり、図10Aは先行のシートの後端が定着領域を通過した状態の説明図、図10Bは紙間領域におけるコンディショニングロールの接触時期の説明図、図10Cは紙間領域におけるコンディショニングロールの離間時期の説明図、図10Dは後続シートが定着領域に進入した状態の説明図である。
図10A図10Bにおいて、実施例1のプリンタUでは、連続してシートSの定着が行われる場合には、先行のシートSの後端が通過した後、後端に対応する加熱ロールFhの表面の位置がコンディショニングロール1の位置に到達すると、コンディショニングロール1が加熱ロールFhに接触する。すなわち、先行のシートSの後端が通過した後、加熱ロールFhが、定着領域Q5からコンディショニングロール1の位置までの周長L1aだけ回転した場合に、コンディショニングロール1が加熱ロールFhに接触する。そして、図10Cに示すように、後続のシートSの前端が、定着領域Q5よりも上流側に距離L1aの位置に到達すると、コンディショニングロール1が加熱ロールFhから離間する。
【0046】
よって、実施例1では、先行シートSと後続シートSとの間の紙間領域、いわゆるインターイメージ領域に相当する領域で、コンディショニングロール1が加熱ロールFhに接触する。したがって、後続シートSに対しても、グロスの低下が発生しにくくなっている。なお、実施例1では、インターイメージ領域の長さは、加熱ロールFhの1回転分以上の長さが設定されている。
また、実施例1では、コンディショニングロール1の表面には、球状アルミナ22aが分散された皮膜層22で、微小な凹凸が形成されている。ここで、先行シートSの前端が定着領域Q5に進入する際に、用紙の縁、エッジが加熱ロールFhに衝突する形となり、加熱ロールFhの表面に筋状の凹凸、いわゆる、荒れ筋が発生することがある。荒れ筋が発生すると、後続のシートSの定着時に、周期的な定着不良部分が発生する恐れがある。これに対して、実施例1のコンディショニングロール1では、インターイメージ領域において、加熱ロールFhに接触している。したがって、先行シートSで発生した荒れ筋が、コンディショニングロール1との接触で、ローラに研磨される形で均される。したがって、荒れ筋による悪影響が抑制される。
【0047】
特許文献1に記載の構成のようなリフレッシュロールと、特許文献2に記載の吸熱ロールとを個別に設けると、構成が大型化したり、費用が増大する問題がある。特に、個別に、接触・離間する構成を設けると、構成が複雑化し、費用が増大しやすい。また、特許文献1に記載のように、所定の枚数毎に接触させる構成では、荒れ筋が成長すると、荒れ筋を修復するまでに何回転も加熱ロールFhを回転させる必要があり、修復に時間がかかる問題もある。
これらに対して、実施例1では、1つのコンディショニングロール1で、加熱ロールFhの吸熱と均しが可能になっている。また、インターイメージ領域で毎回荒れ筋の修復が行われており、荒れ筋の成長が抑制され、荒れ筋の修復にかかる時間が長くなることも抑制される。
【0048】
また、実施例1では、印刷動作が行われる前の待機中には、ファン12が高速回転して、コンディショニングロール1を冷却する。よって、コンディショニングロール1が加熱ロールFhに対して、温度が低くないと、吸熱ができなくなるが、実施例1では、ファン12がコンディショニングロール1を十分に冷却している。また、印刷動作の実行中は、ファン12が低速回転する。よって、印刷動作の実行中に、コンディショニングロール1や加熱ロールFhの温度が下がりすぎて定着不良が発生することが抑制される。
さらに、実施例1では、コンディショニングロール1の表面には、球状アルミナ22aが分散された皮膜層22が形成されており、微小な凹凸が形成されている。したがって、エンボス加工されたしゃもじと同様に、微小な凹凸が形成されたコンディショニングロール1の表面に、一度溶けた後にシートSから剥がれたりした切片状のトナーが付着しにくくなっている。
【0049】
特に、実施例1では、シートSが定着領域Q5に進入する前や、インターイメージ領域に対応して、コンディショニングロール1が加熱ロールFhに接触している。したがって、コンディショニングロール1が接触する加熱ロールFhの表面は、コンディショニングロール1が接触する直前は、シートSが接触しておらず、トナーや紙粉等が比較的少ない。よって、コンディショニングロール1が汚れにくい。したがって、コンディショニングロール1を清掃する清掃部材、公知のクリーニングウェブ等が必要なく、費用が低減可能である。
【0050】
図11はフッ素コートがされた従来の吸熱部材の説明図である。
図11において、従来の吸熱ロールでは、トナー等が付着しにくいように、表面に離型性の良いフッ素樹脂製の表面層01を形成していた。ここで、凹凸を形成しようとした場合には、球状アルミナ02が添加する必要がある。しかしながら、従来のフッ素樹脂のコーティングでは、厚さが30μm程度までしかできず、薄膜化が困難であった。よって、粒径が5μm以下の球状アルミナ02を使用すると、ほとんど埋まってしまい、凹凸、粗さが正確に出せない問題があった。表面の粗さが粗いと逆に画像荒れを引き起こすこととなり、正確な粗さを持つロールを作る必要もある。
【0051】
また、粒径の大きな球状アルミナを使用すると、凹凸も大きくなってしまい、微小な凹凸が形成できなくなる。よって、凹部にトナーが入り込みやすくなる問題がある。したがって、吸熱ロールを清掃するクリーニングウェブ等の清掃部材を追加する必要が発生し、費用が増大しやすい。
さらに、コーティング層の厚さが厚くなると、熱伝導性が低下し、コンディショニングロールの吸熱効率が低下する問題もある。
また、フッ素樹脂の一例としてのPFA樹脂等を使用する場合、コート時に、高温にする必要があり、吸熱ロールの回転軸に、事前にアニール処理、焼鈍処理を行う必要がある。よって、製造費用も高い問題もある。
【0052】
これらに対して、実施例1のコンディショニングロール1では、三次元架橋されたシロキサン骨格の構造体を持つナノ粒子と球状アルミナ22aとを混合させた皮膜22で表面21が皮膜されている。よって、離型性のよい三次元架橋されたシロキサン骨格の構造体の皮膜22bの厚さを薄くすることが可能であり、微小な凹凸を形成することが可能である。また、凹凸は球状アルミナ22aに応じたものに近くなり、ほぼ正確な粗さを出すことが可能である。さらに、皮膜22bの厚さが薄く、熱伝導性が向上している。よって、1つのコンディショニングロール1で吸熱と均しの両方が可能となる。したがって、吸熱ロールとコンディショニングロールを別個に設ける場合に比べて、費用を削減可能である。
また、実施例1の三次元架橋されたシロキサン骨格の構造体の皮膜22bを成膜する処理は、常温硬化処理である。よって、フッ素樹脂の場合のような高温の処理とならず、アニール処理も必要ない。したがって、製造費用も削減可能である。
【実施例2】
【0053】
図12は実施例2のコンディショニングロールの表面の説明図であり、実施例1の図7Aに対応する図である。
次に本発明の実施例2の説明をするが、この実施例2の説明において、前記実施例1の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
この実施例2は下記の点で、前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成される。
【0054】
図12において、実施例2のコンディショニングロール1は、ロール本体21の表面が粗面加工されている。すなわち、ロール本体21の表面21aは、ブラスト加工やローレット加工等の従来公知の加工法で、微細な凹凸が形成されている。そして、ロール本体21の表面には、実施例1とは異なり、球状アルミナ22aが混合されておらず、実施例1と同様の三次元架橋されたシロキサン骨格の皮膜22bのみが成膜されている。
【0055】
(実施例2の作用)
前記構成を備えた実施例2のコンディショニングロール1では、皮膜22bが薄膜化が可能であり、粗面加工で形成されたロール本体21の表面21aの微小な凹凸が、皮膜22bの表面にもそのまま反映されやすい。よって、コンディショニングロール1の外表面は、微細な凹凸を有し、且つ、離型性の良い皮膜22bで、トナー等の付着が抑制される。その他、実施例2のコンディショニングロール1は、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0056】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H010)を下記に例示する。
(H01)前記実施例において、画像形成装置の一例としてのプリンタUを例示したが、これに限定されず、例えば、複写機、FAX、あるいはこれらの複数または全ての機能を有する複合機等により構成することも可能である。
(H02)前記実施例において、プリンタUとして、5色の現像剤が使用される構成を例示したが、これに限定されず、例えば、単色の画像形成装置や、4色以下または6色以上の多色の画像形成装置にも適用可能である。
【0057】
(H03)前記実施例において、例示した具体的な数値やパラメータ、材料、加工方法等に関しては、設計や仕様等に応じて任意に変更可能である。
(H04)前記実施例において、コンディショニングロール1を接触、離間させる構成は、実施例に例示した偏心カムを使用した構成に限定されない。ソレノイドを使用したり、ピニオンラックを使用する等、コンディショニングロール1を接触、離間可能な任意の構成に変更可能である。
【0058】
(H05)前記実施例において、コンディショニングロール1の接触時期と離間時期は、実施例に例示した時期に限定されない。接触時期は、コンディショニングロール1が加熱ロールFhの1周分接触するように設定したが、1周以上、例えば、1.5周や2周以上接触するように接触時期を調整することも可能である。なお、接触期間は1周分以上とすることが望ましいが、1周未満とすることも可能である。また、離間時期は、シートSの前端が到達する時期に合わせたが、前端が到達するよりも前の位置に合わせて離間させる構成とすることも可能である。また、インターイメージ領域に対応させてコンディショニングロール1を接触させることが望ましいが、これに限定されない。例えば、インターイメージ領域に入っても、後続シートSがシートセンサSN1の位置に到達するまでコンディショニングロール1を離間した状態とすることも可能である。また、インターイメージ領域毎に、コンディショニングロール1を加熱ロールFhに接触させることが望ましいが、これに限定されない。例えば、インターイメージ領域の2回に1回接触させる等、間隔を調整することも可能である。
【0059】
(H06)前記実施例において、コンディショニングロール1の接触時期や離間時期は、シートセンサSN1の検知や、検知してからの経過時間に基づいて制御したが、これに限定されない。離間時期に対応する位置に追加のシートセンサを配置することも可能であるし、シートセンサSN1よりもさらに上流のシートセンサに到達してからの経過時間や、給紙からの経過時間等、任意の制御方法を採用可能である。
(H07)前記実施例において、接触時期や離間時期にモータM1を作動させる構成を例示したが、これに限定されない。例えば、偏心カム7の昇降面7bの周長と回転速度を、コンディショニングロール1が加熱ロールFhに接触する期間に対応するように長さと回転速度を設定し、円弧面7cの周長をシートSの長さに対応するように長さと回転速度とすることで、モータM1を停止させずに継続的に回転させながら、コンディショニングロール1を加熱ロールFhに対して周期的に接触、離間させる構成とすることも可能である。このような構成とすることで、モータや偏心カム7を回転、停止する際に作用する負荷や摩耗等を低減することが可能である。
【0060】
(H08)前記実施例において、冷却部材の一例としてのファン12を設ける構成を例示したが、これに限定されない。例えば、コンディショニングロール1が離間位置に移動した場合に接触するヒートシンク等の冷却部材を使用したり、回転軸2を冷却素子等に接続する等、コンディショニングロール1を冷却可能な任意の構成に変更可能である。また、ファン12の回転速度を、実施例に例示した構成のように制御することが望ましいが、常に一定の回転速度で回転させるように変更することも可能である。また、コンディショニングロール1を冷却する構成として、ファン12とフード11とを有する構成としたが、例えば、コンディショニングロール1を中空の構成として、中空の内部に冷却用の流体を流して、フード11を省略する構成も可能である。
【0061】
(H09)前記実施例において、吸熱部材として、ロール形状のコンディショニングロール1を例示したが、ロール形状に限定されない。例えば、ベルト形状やブラシ形状、ブレード形状等、接触して吸熱が可能な任意の形状に変更することが可能である。
(H010)前記実施例において、コンディショニングロール1の外表面に微小な凹凸を形成する皮膜層22を形成することが望ましいが、皮膜層22を設けない構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0062】
1…吸熱部材、
C3…吸熱部材の接触・離間制御手段、
F…定着装置、
Fh…加熱部材、
Gy,Gm,Gc,Gk,Go…現像器、
Py,Pm,Pc,Pk,Po…像保持体、
ROSy,ROSm,ROSc,ROSk,ROSo…潜像の形成装置、
S…媒体、
T1,B,T2…転写装置、
U…画像形成装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12