特許第6183265号(P6183265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183265
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】転送装置、転送方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 88/18 20090101AFI20170814BHJP
   H04W 4/10 20090101ALI20170814BHJP
   H04L 5/14 20060101ALI20170814BHJP
   H04M 11/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   H04W88/18 130
   H04W4/10
   H04L5/14
   H04M11/00 303
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-68821(P2014-68821)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-192340(P2015-192340A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】浅見 知弘
【審査官】 ▲高▼橋 真之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/116722(WO,A1)
【文献】 特開昭57−143956(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0229093(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00−99/00
H04L 5/14
H04M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
双方向の通話を実行する第1通信システムにおける第1端末装置から、片方向の通話を実行する第2通信システムにおける第2端末装置への音声信号を受信する第1受信部と、
前記第1受信部において受信した音声信号を前記第2端末装置へ送信する第1送信部と、
前記第2端末装置から前記第1端末装置への音声信号を受信する第2受信部と、
前記第2受信部において受信した音声信号を前記第1端末装置へ送信する第2送信部と、
前記第2受信部が受信した音声信号を前記第2送信部が送信している場合に、前記第1受信部において受信した音声信号を記憶する記憶部とを備え、
前記第1送信部は、前記第2受信部における音声信号の受信が終了した場合に、前記記憶部に記憶した音声信号を送信し、
前記第2送信部は、前記第2受信部において受信した音声信号を送信している間に、前記記憶部における音声信号の記憶が開始された場合、前記第2受信部において受信した音声信号を送信する際の話速を遅くし、
前記第1送信部は、前記第2受信部における音声信号の受信が終了した場合に、前記記憶部に記憶した音声信号を送信し、
前記第2送信部は、前記第2受信部において受信した音声信号の送信が終了するタイミングが、前記第1送信部における音声信号の送信が終了するタイミングに近くなるように、話速を調節することを特徴とする転送装置。
【請求項2】
前記第2受信部が受信した音声信号を前記第2送信部が送信している場合に、前記第1受信部における音声信号の受信を検知する検知部をさらに備え、
前記第1送信部は、前記検知部が受信を検知した場合、制御信号を前記第2端末装置へ送信することを特徴とする請求項1に記載の転送装置。
【請求項3】
第1端末装置が双方向の通話を実行する第1通信システムと、第2端末装置が片方向の通話を実行する第2通信システムとをお互いに音声信号を転送する転送装置を介した通信方法であって、
前記第2端末装置からの音声信号を前記第1端末装置へ送信している場合に、前記第1端末装置から受信した音声信号をメモリに記憶するステップと、
前記第2端末装置からの音声信号の受信が終了した場合に、前記メモリに記憶した音声信号を前記第2端末装置へ送信するステップと、
前記第2端末装置からの音声信号を前記第1端末装置へ送信している間に、前記メモリに音声信号の記憶が開始された場合、前記第1端末装置へ送信する音声信号の話速を遅くするステップと、
を含み、
前記音声信号の話速は、前記第1端末装置へ音声信号の送信が終了するタイミングが、前記第2端末装置へ送信される前記記憶された音声信号の送信が終了するタイミングに近くなるように、調節すること、を特徴とする転送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転送技術に関し、特に異なった通信システムにおいて音声信号を転送する転送装置、転送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動局の無線機と固定通信網に接続される電話機との交信を可能とする通信システムが開示されている。(例えば、特許文献1)しかしながら、単信(半二重)方式の無線機と、複信(全二重)方式の電話機とが、基地局を介して通信を行う場合、無線機が送信中の場合は電話機から送話された音声を無線機側のユーザは聞くことはできない。転送元子機からの転送要求指令に伴うメッセージを記憶するとともに、これを読み出して転送先子機への転送要求通知に付加する手段を親機の側に設けたため、同時に1台の子機としか無線回線の接続ができない親機を備えた無線電話装置であっても、親機のメッセージ一時記憶機能を利用することにより、転送元子機から転送先子機へと親機を仲介してメッセージを伝達する技術が開示されている。(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−4474号公報
【特許文献2】特開平6−62094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
業務用無線システムでは、複数の端末装置によってグループが形成されており、基地局装置は、グループに対してチャネルを割り当てる。このような業務用無線システムでは、グループ内の通話が主として使用され、1対多の通話形態になる。また、業務用無線システムにおいて音声信号を送信している端末装置は、音声信号を受信することができず、音声信号を受信している端末装置は、音声信号を送信することができないので、業務用無線システムは、片方向の通話を実行する。一方、移動通信システムは、双方向の通話を実行する。ユーザの利便性を向上するために、業務用無線システムと移動通信システムとの相互接続が要求される。その際、業務無線用端末装置は、送信の終了時に移動通信用端末装置にビープ音を送信することによって、移動通信用端末装置のユーザに送信終了を知らせていた。
【0005】
しかしながら、移動通信用端末装置のユーザは、片方向の通話になれていないので、業務無線用端末装置が送信中であっても話し始めてしまう。特に、業務無線用端末装置のユーザの発話に少し間があったときなどに、業務無線用端末装置が送信中であっても、移動通信用端末装置のユーザが話し始めてしまう可能性が高い。その結果、業務無線用端末装置の送信中に、移動通信用端末装置のユーザが話した音声を業務無線用端末装置のユーザが聞けなくなる。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、異なった通信システムが相互接続する場合に、音声を確実に転送する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の転送装置は、双方向の通話を実行する第1通信システムにおける第1端末装置から、片方向の通話を実行する第2通信システムにおける第2端末装置への音声信号を受信する第1受信部と、第1受信部において受信した音声信号を第2端末装置へ送信する第1送信部と、第2端末装置から第1端末装置への音声信号を受信する第2受信部と、第2受信部において受信した音声信号を第1端末装置へ送信する第2送信部と、第2受信部が受信した音声信号を第2送信部が送信している場合に、第1受信部において受信した音声信号を記憶する記憶部とを備える。第1送信部は、第2受信部における音声信号の受信が終了した場合に、記憶部に記憶した音声信号を送信し、第2送信部は、第2受信部において受信した音声信号を送信している間に、記憶部における音声信号の記憶が開始された場合、第2受信部において受信した音声信号を送信する際の話速を遅くし、第1送信部は、第2受信部における音声信号の受信が終了した場合に、記憶部に記憶した音声信号を送信し、第2送信部は、第2受信部において受信した音声信号の送信が終了するタイミングが、第1送信部における音声信号の送信が終了するタイミングに近くなるように、話速を調節する
【0008】
本発明の別の態様は、転送方法である。この方法は、第1端末装置が双方向の通話を実行する第1通信システムと、第2端末装置が片方向の通話を実行する第2通信システムとをお互いに音声信号を転送する転送装置を介した通信方法であって、第2端末装置からの音声信号を第1端末装置へ送信している場合に、第1端末装置から受信した音声信号をメモリに記憶するステップと、第2端末装置からの音声信号の受信が終了した場合に、メモリに記憶した音声信号を第2端末装置へ送信するステップと、第2端末装置からの音声信号を第1端末装置へ送信している間に、メモリに音声信号の記憶が開始された場合、第1端末装置へ送信する音声信号の話速を遅くするステップと、を含む。音声信号の話速は、第1端末装置へ音声信号の送信が終了するタイミングが、第2端末装置へ送信される記憶された音声信号の送信が終了するタイミングに近くなるように、調節する
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、異なった通信システムが相互接続する場合に、音声を確実に転送できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1に係る通信システムの構成を示す図である。
図2図1の転送装置の構成を示す図である。
図3図1の通信システムによる転送手順を示す図である。
図4図1の通信システムによる別の転送手順を示す図である。
図5図1の通信システムによるさらに別の転送手順を示す図である。
図6】本発明の実施例2に係る転送装置の構成を示す図である。
図7】本発明の実施例2に係る通信システムによる転送手順を示す図である。
図8】本発明の実施例2に係る通信システムによる別の転送手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施例1)
本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施例1は、双方向の通話を実行する第1通信システムと、片方向の通話を実行する第2通信システムとの間で音声信号を転送する転送装置に関する。例えば、第1通信システムは、移動通信システムであり、第2通信システムは、業務用無線システムである。移動通信システムでは、基地局装置が、各端末装置に上りチャネルと下りチャネルを割り当てることによって、各端末装置による双方向の通話が可能になる。一方、業務用無線システムでは、複数の端末装置によってグループが形成される。基地局装置は、グループに対して、上りチャネルと下りチャネルを割り当てる。このような状況下において、グループ中のひとつの端末装置(以下、「送信装置」という)が、上りチャネルにて信号を送信し、グループ中の他の端末装置(以下、「受信装置」という)が、下りチャネルにて信号を受信する。なお、送信装置が接続された基地局装置とは異なった基地局装置も、当該グループに対して下りチャネルを割り当てるので、当該基地局装置に接続された受信装置も信号を受信できる。さらに、別のグループに対しても同様の処理がなされるが、異なったグループ間での通信はなされない。
【0013】
これらのシステムを相互接続した場合、前述のごとく、業務用無線システムの端末装置の送信中に、移動通信システムの端末装置のユーザが話した音声を業務用無線システムの端末装置のユーザが聞けなくなるという課題が生じる。そのため、実施例1では、業務用無線システムの端末装置の送信中に、移動通信システムの端末装置のユーザが話した音声を業務用無線システムの端末装置のユーザが聞くことができるようにすることを目的にする。実施例1に係る転送装置は、業務用無線システムの端末装置の送信中に、移動通信システムの端末装置からの音声をバッファリングしておき、業務用無線システムの端末装置の送信が終了してから、業務用無線システムの端末装置に音声を送信する。
【0014】
図1は、本発明の実施例1に係る通信システム100の構成を示す。通信システム100は、転送装置10、業務無線用ネットワーク12、業務無線用基地局装置14、業務無線用端末装置16、移動通信用ネットワーク18、移動通信用基地局装置20、移動通信用端末装置22を含む。ここで、業務無線用ネットワーク12、業務無線用基地局装置14、業務無線用端末装置16は、業務用無線システム24に含まれ、移動通信用ネットワーク18、移動通信用基地局装置20、移動通信用端末装置22は、移動通信システム26に含まれる。なお、図1では、図を明瞭にするために、業務無線用基地局装置14、業務無線用端末装置16、移動通信用基地局装置20、移動通信用端末装置22は、ひとつずつ示されているが、これらの数は、「1」に限定されない。
【0015】
業務無線用基地局装置14は、図示しない他の業務無線用基地局装置14と業務無線用ネットワーク12を介して接続される。業務無線用基地局装置14は、複数のチャネルを設定可能であり、各チャネルをグループに割り当てる。チャネルには、公知の技術が使用されればよい。ここでは、一例として、TDMA(Time Division Multiple Access)/FDD(Frequency Division Duplex)によって複数のチャネルが多重化されている。なお、ひとつの上りチャネルが上り制御チャネルに使用され、ひとつの下りチャネルが下り制御チャネルに使用され、上り制御チャネルは、ランダムアクセスによって送信される。
【0016】
業務無線用端末装置16は、業務無線用基地局装置14を介して、図示しない他の業務無線用端末装置16と通信可能な無線端末である。ここでは、通信として通話がなされるものとする。なお、データ通信がなされてもよい。業務無線用端末装置16は、業務無線用基地局装置14と通信可能なエリアに進入すると、業務無線用基地局装置14に対して、上り制御チャネルにて位置登録とグループ登録とを要求する。業務無線用基地局装置14は、要求に応じて、グループ単位に業務無線用端末装置16を登録する。
【0017】
ひとつの業務無線用端末装置16において発呼が発生した場合、業務無線用端末装置16は、上り制御チャネルにおいて、発信要求を送信する。上り制御チャネルを受信した業務無線用基地局装置14は、当該業務無線用端末装置16を前述の送信装置とし、送信装置が含まれたグループにチャネルを割り当てる。ここでのチャネルは、下りチャネルと上りチャネルとの総称である。業務無線用基地局装置14は、他の業務無線用基地局装置14に対して、当該グループに対してチャネルを割り当てることを業務無線用ネットワーク12経由で要求する。他の業務無線用基地局装置14は、要求に応じて、当該グループが登録されているかを確認する。登録されている場合、他の業務無線用基地局装置14は、当該グループにチャネルを割り当てる。
【0018】
業務無線用基地局装置14および他の業務無線用基地局装置14は、割り当てたチャネルの情報が含まれた下り制御チャネルを業務無線用端末装置16に送信する。当該グループに含まれた残りの業務無線用端末装置16である受信装置と、送信装置とは、下り制御チャネルを受信することによって、割り当てられたチャネルを認識する。送信装置は、割り当てられた上りチャネルにて信号を業務無線用基地局装置14へ送信する。当該信号には、デジタル化された音声信号が含まれている。業務無線用基地局装置14は、送信装置が含まれたグループ内に受信装置が含まれている場合、割り当てた下りチャネルにて信号を受信装置へ送信する。また、業務無線用基地局装置14は、受信した信号を他の業務無線用基地局装置14へ送信する。他の業務無線用基地局装置14は、割り当てた下りチャネルにて信号を受信装置へ送信する。受信装置は、受信した信号をもとに音声信号を再生して、スピーカから音声を出力する。
【0019】
このように、複数の業務無線用端末装置16が含まれたグループが複数形成されている。また、複数の業務無線用基地局装置14のそれぞれがグループ単位にチャネルを割り当てる。その結果、チャネルを割り当てたグループに含まれたひとつの業務無線用端末装置16から、当該グループに含まれた残りの業務無線用端末装置16への通信がなされる。なお、グループに含まれた複数の業務無線用端末装置16の間で、送信装置と受信装置とが入れ替わってもよい。受信装置として動作した業務無線用端末装置16において、送信すべき信号が発生した場合、当該業務無線用端末装置16は、前述のごとく、発信要求が含まれた上り制御チャネルを送信することによって、送信装置に切り替わる。また、送信装置として動作した業務無線用端末装置16は、信号の送信を終了すると、受信装置に切り替わる。このように、業務無線用端末装置16は、送信装置および受信装置の一方として動作するので、業務無線用端末装置16によって片方向の通話が可能になる。
【0020】
移動通信用ネットワーク18、移動通信用基地局装置20、移動通信用端末装置22は、前述のごとく、移動通信システム26に含まれる。移動通信システム26は、例えば、第3世代携帯電話システムである。移動通信用基地局装置20は、ひとつの移動通信用端末装置22に対して、下りチャネルと上りチャネルとの組合せを割り当てる。そのため、移動通信用端末装置22によって双方向の通話が可能になる。
【0021】
転送装置10は、一端側が業務無線用ネットワーク12に接続され、他端側が移動通信用ネットワーク18に接続される。転送装置10は、業務用無線システム24と移動通信システム26との間の通信を相互接続する。具体的に説明すると、転送装置10は、業務無線用端末装置16からの音声信号を移動通信用端末装置22へ転送し、移動通信用端末装置22からの音声信号を業務無線用端末装置16へ転送する。業務無線用端末装置16から移動通信用端末装置22へ電話番号に基づいて接続する構成に関しては、例えば、前述の特許文献1に開示されているので、ここでは説明を省略する。
【0022】
図2は、転送装置10の構成を示す。転送装置10は、第1受信部40、第1送信部42、第2受信部44、第2送信部46、制御部48、記憶部50を含む。第1受信部40は、図示しない移動通信用ネットワーク18に接続される。第1受信部40は、移動通信用基地局装置20、移動通信用ネットワーク18を介して、移動通信用端末装置22から、業務無線用端末装置16への音声信号を受信する。前述のごとく、移動通信用端末装置22は、双方向の通話を実行する移動通信システム26に含まれ、業務無線用端末装置16は、片方向の通話を実行する業務用無線システム24に含まれる。
【0023】
第1送信部42は、図示しない業務無線用ネットワーク12に接続される。第1送信部42は、業務無線用ネットワーク12、業務無線用基地局装置14を介して業務無線用端末装置16へ、第1受信部40において受信した音声信号を送信する。第2受信部44は、図示しない業務無線用ネットワーク12に接続される。第2受信部44は、業務無線用基地局装置14、業務無線用ネットワーク12を介して業務無線用端末装置16から、移動通信用端末装置22への音声信号を受信する。第2送信部46は、図示しない移動通信用ネットワーク18に接続される。第2送信部46は、移動通信用ネットワーク18、移動通信用基地局装置20を介して移動通信用端末装置22へ、第2受信部44において受信した音声信号を送信する。
【0024】
これまでの処理は、業務用無線システム24と移動通信システム26との間における音声信号の転送に相当する。以下では、業務無線用端末装置16の送信処理中に、業務無線用端末装置16への音声信号を移動通信用端末装置22が送信した場合の処理を説明する。制御部48は、第1受信部40において音声信号を受信した場合に、当該音声信号の宛先となる業務無線用端末装置16からの音声信号を第2受信部44が受信しているかを確認する。第2受信部44が音声信号を受信している場合、制御部48は、第1受信部40において受信した音声信号を第1送信部42から送信せずに、記憶部50に記憶させる。
【0025】
記憶部50は、制御部48に接続された記憶媒体である。記憶部50は、制御部48からの音声信号を受けつけると、音声信号を記憶する。ここで、音声信号は、デジタル信号である。なお、記憶部50での記憶は、第1受信部40における音声信号の受信が終了するまで続けられる。つまり、記憶部50は、第2受信部44が受信した音声信号を第2送信部46が送信している場合に、第1受信部40において受信した音声信号を記憶する。
【0026】
制御部48は、第2受信部44における音声信号の受信の終了を検出する。制御部48は、終了を検出すると、第1送信部42に対して、記憶部50に記憶した音声信号を送信させる。第1送信部42は、制御部48からの指示に応じて、第2受信部44における音声信号の受信が終了した場合に、記憶部50に記憶した音声信号を送信する。
【0027】
次に、第2受信部44が音声信号を受信している途中に、第1受信部40が音声信号を受信し、かつ第1受信部40における音声信号の受信が終了するまでに、第2受信部44における音声信号の受信が終了した場合を説明する。制御部48は、第1受信部40において受信した音声信号を記憶部50に記憶させている途中において、第2受信部44における音声信号の受信が終了した場合であっても、第1受信部40において受信した音声信号の記憶を記憶部50に続行させる。記憶部50は、制御部48からの指示にしたがって、音声信号の記憶を続行する。
【0028】
制御部48は、第2受信部44における音声信号の受信が終了した場合に、第1送信部42に対して、記憶部50における音声信号を記憶した順に送信させる。第1送信部42は、制御部48からの指示にしたがって、音声信号を記憶した順に送信する。つまり、このような場合において、移動通信用端末装置22から業務無線用端末装置16への音声信号の転送は、一定期間の遅延を持ってなされる。一定期間は、第2受信部44が音声信号を受信している途中に、第1受信部40が音声信号を受信したタイミングから、第2受信部44における音声信号の受信が終了したタイミングとの時間差よりも長くなる。
【0029】
業務無線用端末装置16での送信が終了し、記憶部50に記憶した音声信号を業務無線用端末装置16へ送信している間は、移動通信用端末装置22において無音状態が生じる。無音状態では、移動通信用端末装置22のユーザがさらに話し始めてしまうおそれがある。そのため、制御部48は、第2送信部46、移動通信用ネットワーク18、移動通信用基地局装置20を介して移動通信用端末装置22へ、業務無線用端末装置16が受信中である旨を示すアナウンス音声や、Beep音等を送信してもよい。無音状態を防ぐために、さらに次の処理がなされてもよい。
【0030】
制御部48は、第2受信部44において受信した音声信号を第2送信部46に送信させている間に、記憶部50における音声信号の記憶が終了した場合、第2受信部44において受信した音声信号を第2送信部46から送信する際の話速を遅くさせる。ここで、遅くする話速は、予め定められていればよい。第2送信部46は、制御部48からの指示に応じて、話速を遅くして音声信号を移動通信用端末装置22へ送信する。
【0031】
制御部48は、第2受信部44における音声信号の受信が終了した場合に、第2送信部46からの音声信号の送信が終了するタイミングが、第1送信部42での音声信号の送信が終了するタイミングに近くなるように、第2送信部46から送信させる音声信号の話速を調節する。近くとは、誤差の範囲で両方のタイミングが一致することである。例えば、制御部48は、記憶部50に記憶した音声信号を第1送信部42から送信し終えるまでの期間を計算する。また、制御部48は、第2送信部46から送信させるべき音声信号の残りデータ量を特定する。さらに、制御部48は、計算した期間と、データ量とをもとに話速を導出する。第2送信部46は、制御部48からの指示に応じて、話速を調節して音声信号を移動通信用端末装置22へ送信する。第1受信部40において音声信号の受信を開始した時点から、第2送信部から送信する話速を遅くしてもよい。
【0032】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0033】
以上の構成による通信システム100の動作を説明する。図3は、通信システム100による転送手順を示す。業務無線用端末装置16では、PTTがONにされる(S10)。業務無線用端末装置16は、音声信号Aを送信する(S12)。転送装置10は、音声信号Aを受信し(S14)、音声信号Aを送信する(S16)。移動通信用端末装置22は、音声信号Aを受信する(S18)。移動通信用端末装置22は、音声信号Bを送信する(S20)。転送装置10は、音声信号Bを受信する(S22)。業務無線用端末装置16では、PTTがOFFにされる(S24)。転送装置10は、音声信号B’を送信する(S26)。音声信号B’は、記憶部50で記憶した音声信号Bに相当する。業務無線用端末装置16は、音声信号B’を受信する(S28)。
【0034】
図4は、通信システム100による別の転送手順を示す。業務無線用端末装置16では、PTTがONにされる(S40)。業務無線用端末装置16は、音声信号Cを送信する(S42)。転送装置10は、音声信号Cを受信し(S44)、音声信号Cを送信する(S46)。移動通信用端末装置22は、音声信号Cを受信する(S48)。移動通信用端末装置22は、音声信号Dを送信する(S50)。転送装置10は、音声信号Dを受信する(S52)。業務無線用端末装置16では、PTTがOFFにされる(S54)。転送装置10は、音声信号Dの受信を継続しながら、音声信号D’を送信する(S56)。音声信号D’は、記憶部50で記憶した音声信号Dに相当する。業務無線用端末装置16は、音声信号D’を受信する(S58)。
【0035】
図5は、通信システム100によるさらに別の転送手順を示す。業務無線用端末装置16では、PTTがONにされる(S70)。業務無線用端末装置16は、音声信号Eを送信する(S72)。転送装置10は、音声信号Eを受信し(S74)、音声信号Eを送信する(S76)。移動通信用端末装置22は、音声信号Eを受信する(S78)。移動通信用端末装置22は、音声信号Fを送信する(S80)。転送装置10は、音声信号Fを受信する(S82)。音声信号Fの受信を開始すると、転送装置10は、音声信号E’を送信する(S84)。音声信号E’は、音声信号Eの話速を遅くした信号である。移動通信用端末装置22は、音声信号E’を受信する(S86)。
【0036】
業務無線用端末装置16では、PTTがOFFにされる(S88)。転送装置10は、音声信号F’を送信する(S90)。音声信号F’は、記憶部50で記憶した音声信号Fに相当する。業務無線用端末装置16は、音声信号F’を受信する(S92)。転送装置10は、音声信号E’’を送信する(S94)。音声信号E’’は、音声信号Eの話速を調節した信号である。移動通信用端末装置22は、音声信号E’’を受信する(S96)。
【0037】
本実施例によれば、第2受信部が受信した音声信号を第2送信部が送信している場合に、第1受信部において受信した音声信号を記憶し、第2受信部における音声信号の受信が終了した場合に、記憶部に記憶した音声信号を第1送信部から送信するので、異なった通信システムが相互接続する場合に、音声を確実に転送できる。また、業務無線用端末装置が送信中に移動通信用端末装置のユーザが話した音声を業務無線用端末装置のユーザが聞くことができる。また、移動通信用端末装置のユーザに聞き返したりすることを回避できる。また、第2受信部における音声信号の受信が終了した場合に、記憶部における音声信号を記憶した順に送信するので、音声信号の転送をスムーズにできる。また、第2受信部において受信した音声信号の送信が終了するタイミングが、第1送信部における音声信号の送信が終了するタイミングに近くなるように、話速を調節するので、無音状態の発生を抑制できる。
【0038】
(実施例2)
次に、実施例2を説明する。実施例2は、実施例1と同様に、双方向の通話を実行する第1通信システムと、片方向の通話を実行する第2通信システムとの間で音声信号を転送する転送装置に関する。実施例2は、業務用無線システムの端末装置の送信中に、移動通信システムの端末装置のユーザが話し始めたことを業務用無線システムの端末装置のユーザに知らせることを目的にする。これに対応するために、業務用無線システムの端末装置の送信中に、移動通信システムの端末装置からの音声を受けつけると、下り制御チャネルにてその通知を業務用無線システムの端末装置に送信する。この前提として、業務用無線システムの端末装置は、上りチャネルにて音声信号を送信中であっても、下り制御チャネルを受信できるものとする。実施例2に係る通信システム100は、図1と同様である。ここでは、実施例1との差異を中心に説明する。
【0039】
図6は、本発明の実施例2に係る転送装置10の構成を示す。転送装置10は、図2の構成に加えて、検知部52を含む。検知部52は、第2受信部44が受信した音声信号を第2送信部46が送信している場合に、第1受信部40における音声信号の受信を検知する。制御部48は、検知部52において検知がなされると、第1受信部40における音声信号の受信を知らせるための信号(以下、「通知」という)を第1送信部42へ出力する。第1送信部42は、業務無線用ネットワーク12、業務無線用基地局装置14を介して、業務無線用端末装置16へ通知を送信する。通知は、業務用無線システム24において下り制御チャネルにて送信される。業務無線用端末装置16は、下り制御チャネルにて通知を受信すると、Beep音やLED等でユーザに受信を知らせる
【0040】
これまでは、業務用無線システムの端末装置は、上りチャネルにて音声信号を送信中であっても、下り制御チャネルを受信できるものとしていたが、下り制御チャネルを受信できない場合、次の処理が実行される。業務無線用端末装置16は、ユーザの発話の有無を検知する手段をさらに備える構成とし、音声信号の送信中にユーザの発話が途切れたことを検出したときに、業務無線用基地局装置14、業務無線用ネットワーク12を介して転送装置10に、移動通信用端末装置22の音声有無の通知を要求すると同時に、送信を停止する。制御部48は、業務無線用端末装置16から、移動通信用端末装置22の音声有無の通知が要求された場合、移動通信用端末装置22からの音声信号が記憶部50に記憶されていれば、通知を第1送信部42から送信させる。業務無線用端末装置16は、転送装置10から、移動通信用端末装置22の音声が有ることを示す通知を受信すると、Beep音やLED等でユーザに受信を知らせる。さらに、業務無線用端末装置16は、ユーザの発話が再開したことを検知すると、音声信号の送信を開始する。なお、業務無線用端末装置16から要求された時点で音声が記憶されていなくても、次に業務無線用端末装置16が送信開始するまでの間に移動通信用端末装置22から音声が入力されれば、制御部48は、通知を第1送信部42から随時送信させる。
【0041】
図7は、本発明の実施例2に係る通信システム100による転送手順を示す。業務無線用端末装置16では、PTTがONにされる(S110)。業務無線用端末装置16は、音声信号Gを送信する(S112)。転送装置10は、音声信号Gを受信し(S114)、音声信号Gを送信する(S116)。移動通信用端末装置22は、音声信号Gを受信する(S118)。移動通信用端末装置22は、音声信号Hを送信する(S120)。転送装置10は、音声信号Hを受信する(S122)。
【0042】
転送装置10は、受信開始を検出する(S124)。転送装置10は、通知を送信する(S126)。業務無線用端末装置16は、通知を表示する(S128)。転送装置10は、受信終了を検出する(S130)。業務無線用端末装置16では、PTTがOFFにされる(S132)。転送装置10は、音声信号H’を送信する(S134)。音声信号H’は、記憶部50で記憶した音声信号Hに相当する。業務無線用端末装置16は、音声信号H’を受信する(S136)。
【0043】
図8は、本発明の実施例2に係る通信システム100による別の転送手順を示す。業務無線用端末装置16では、PTTがONにされる(S150)。業務無線用端末装置16は、音声信号Iを送信する(S152)。転送装置10は、音声信号Iを受信し(S154)、音声信号Iを送信する(S156)。移動通信用端末装置22は、音声信号Iを受信する(S158)。業務無線用端末装置16は、無音検出を実行する(S160)。業務無線用端末装置16は、要求信号を送信する(S162)。
【0044】
業務無線用端末装置16は、音声信号I’を送信する(S164)。音声信号I’は、音声信号Iに続く信号である。転送装置10は、音声信号I’を受信し(S166)、音声信号I’を送信する(S168)。移動通信用端末装置22は、音声信号I’を受信する(S170)。移動通信用端末装置22は、音声信号Jを送信する(S172)。転送装置10は、音声信号Jを受信する(S174)。業務無線用端末装置16は、無音検出を実行する(S176)。業務無線用端末装置16は、要求信号を送信する(S178)。転送装置10は、通知を送信する(S180)。業務無線用端末装置16は、通知を表示する(S182)。
【0045】
業務無線用端末装置16は、音声信号I’’を送信する(S184)。音声信号I’’は、音声信号I’に続く信号である。転送装置10は、音声信号I’’を受信し(S186)、音声信号I’’を送信する(S188)。移動通信用端末装置22は、音声信号I’’を受信する(S190)。業務無線用端末装置16では、PTTがOFFにされる(S192)。転送装置10は、音声信号J’を送信する(S194)。音声信号J’は、記憶部50で記憶した音声信号Jに相当する。業務無線用端末装置16は、音声信号J’を受信する(S196)。
【0046】
本実施例によれば、第1受信部における音声信号の受信の通知を第1送信部から送信するので、受信を知らせることができる。また、受信が知らされるので、業務無線用端末装置のユーザに送信の終了を促すことができる。また、上りチャネルにて音声信号を送信中であるときに、下り制御チャネルを受信できない業務無線用端末装置16に対して、無音状態のときに通知を送信するので、受信を知らせることができる。
【0047】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0048】
本発明の実施例1、2において、第1通信システムが、移動通信システム26であるとしている。しかしながらこれに限らず、第1通信システムが有線の電話網であってもよい。本変形例によれば、構成の自由度を向上できる。
【符号の説明】
【0049】
10 転送装置、 12 業務無線用ネットワーク、 14 業務無線用基地局装置、 16 業務無線用端末装置、 18 移動通信用ネットワーク、 20 移動通信用基地局装置、 22 移動通信用端末装置、 24 業務用無線システム、 26 移動通信システム、 40 第1受信部、 42 第1送信部、 44 第2受信部、 46 第2送信部、 48 制御部、 50 記憶部、 100 通信システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8