特許第6183269号(P6183269)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6183269アンテナ装置およびこれを搭載した携帯無線端末
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183269
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】アンテナ装置およびこれを搭載した携帯無線端末
(51)【国際特許分類】
   H01Q 5/35 20150101AFI20170814BHJP
   H01Q 9/16 20060101ALI20170814BHJP
   H01Q 9/30 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   H01Q5/35
   H01Q9/16
   H01Q9/30
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-71100(P2014-71100)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-195429(P2015-195429A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2016年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 謙二
(72)【発明者】
【氏名】原 康之
【審査官】 佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−258649(JP,A)
【文献】 特開2005−347958(JP,A)
【文献】 米国特許第06674340(US,B2)
【文献】 特開2013−038665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 5/00− 9/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラウンド領域と非グラウンド領域を有する基板と、第1、第2および第3の導体とを有し、前記第1の導体は前記グラウンド領域から離れて配置され、前記第2の導体は、第1の給電点を含み、一端が前記グラウンド領域に設けられた第1の給電点側の伝送線へと接続され、他端が貫通導体を介して前記第3の導体とは異なる面に移り前記第3の導体と上面視直交して前記第1の導体へと接続しており、前記第3の導体は第2の給電点を含み、一端が前記グラウンド領域へ接続され、他端は非活線側線路と活線側線路を有し、前記非活線側線路は前記グラウンド領域に接続され、活線側線路は前記グラウンド領域に設けられた第2の給電点側の伝送線と接続していることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記第3の導体は少なくとも一部が前記第1の導体と対向していることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置
【請求項3】
前記第2の導体は一端が前記第1の給電点側の伝送線に接続され、第1の給電点を含み他端は前記第1の導体に接続されていて、前記第1の給電点から前記第1の給電点側の伝送線までは非活線側線路と活線側線路を有し、前記非活線側線路は前記グラウンド領域に接続され、活線側線路は前記グラウンド領域に設けられた第2の給電点側の伝送線と接続して、第1の給電点は第2の給電点の直近に配置されていることを特徴とする請求項1、2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
少なくとも前記第1または、第2の給電点に関わる整合回路は、複数のリアクタンス素子が多層基板内に形成されたモジュールにより構成されていることを特徴とする請求項1から3何れかに記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記1から4のいずれかに記載のアンテナ装置を搭載したことを特徴とする携帯無線端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置およびこれを搭載した携帯無線端末に関する。
【0002】
近年、携帯電話などの携帯無線端末は、ますます多機能化、高性能化が進んでいる。セルラー通信においては、高速かつ大容量の無線通信システムを実現する技術として、空間多重伝送(MIMO:Multi−Input Multi−Output)の搭載が開始されつつある。MIMOシステムは送信受信とも複数のアンテナを有しており、送信側のそれぞれのアンテナより同時に同一周波数で異なるデータを送信し、それらを複数のアンテナで受信し合成することで擬似的に広帯域化を実現している。これにより、転送速度を向上させ、かつ大容量通信が可能となる。
【0003】
MIMOシステムでは同一周波数で動作する2つ以上のアンテナを使用することになるが、携帯電話のような比較的小さな携帯無線端末の基板上に同一周波数帯で動作するアンテナを複数構成する場合、アンテナ間で相互結合が非常に生じやすいという問題がある。アンテナ間の相互結合が大きいと、アンテナ同士が干渉してしまい、具体的にはアンテナ間のアイソレーション特性の劣化、放射パターンの相関が強くなる、といったことが生じる。これらはMIMOシステムの性能を劣化させ、十分な通信速度を得られない原因となる。
【0004】
この問題に対する一般的な解決策として、基板上のアンテナ同士を十分離間させる方法が知られている。しかし、携帯電話のような携帯無線端末の内部は部品が高密度に実装されており、十分離間させて配置することがスペースの都合上困難である場合や、離間させることでアンテナの占有面積が大きくなってしまい端末の大型化を招き、デザイン性、携帯性を損ねてしまうという問題がある。
【0005】
そのため、本願発明者らは単一のアンテナ素子を互いに十分なアイソレーションが確保される2つのアンテナとして動作させる方法を提案した。特許文献1で記載されているように、基板上に設けられた単一のアンテナ素子に対し、異なる形態で2つの給電点を接続することで、それぞれの給電点が異なるアンテナとして動作させ、アンテナ間の相互結合を回避する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−258649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら特許文献1、に記載されているアンテナ装置では以下のような問題がある。
【0008】
特許文献1の方法ではアンテナ装置を構成する第2の導体2に第1の給電点11を、第3の導体3(文献図2参照)に第2の給電点12を設けている。文献図2の例では第3の導体の中途に給電点12を設置している。この第2の給電点12は仮想平面10の位置に設置した場合に最もそれぞれの給電点から給電した信号が互いに垂直に分布して最も理想的にアイソレーションを確保することが出来る。しかしながら第3の導体は給電点から見てグラウンド領域までのどちらの経路とも1本の線路で形成されているため仮想平面10の位置に第2の給電点12を設置するためには基板上の無線回路から伝送される電気信号を別途給電線を設置して給電するか、または、第1の給電点とは異なる面に在る第3の導体の両端から逆位相で給電し、実質的に仮想平面10の位置に給電点12を配置するので、構造が複雑になり、また給電点が基板の両面にある事から、整合回路素子も両面に配置しなくてはならず、さらなる小型化やコストダウンの障害となっていた。
【0009】
このため第2の給電点12は第3の導体のいずれかの端に設置する形態が一般的であった。アンテナ装置の仮想平面10を対称面とするアンテナ装置の対称性を僅かではあるが崩すことになりに実用上使用できるレベルではあるがアイソレーションと周波数特性の劣化を招いていた。
【0010】
本発明は、上記の状況に鑑みて成されたものであり、同一周波数で動作する2つ以上のアンテナ間において、信号の相互干渉を回避するための新たに大きな構成要素を設けることなく、単一のアンテナ素子で2つのアンテナとして動作するアンテナ装置において製造容易でマルチバンドにも適応可能なUHF(Ultra High Frequency)またはSHF(Super High Frequency)の広帯域に渡る複数の周波数帯で給電点間の信号の相互干渉を低減することが容易にでき、高いアイソレーション特性を確保できるアンテナ装置およびこれを搭載した携帯無線端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係るアンテナ装置は、グラウンド領域と非グラウンド領域を有する基板と、第1、第2および第3の導体とを有し、第1の導体はグラウンド領域から離れて基板裏面に配置され、第2の導体は、基板表面に第1の給電点を含み、一端が給電伝送線に接続され、他端が貫通導体を介して基板裏面に回り、第1の導体へと接続され、第3の導体は、基板表面の所定の位置に第2の給電点を含み、少なくとも一部が第1の導体と対向し、且つ基板上から平面視したときに第2の導体と直交し、一端側がグラウンド導体に接続され、他端側は非活線側線路と活線側線路を有しており、非活線側線路はグラウンド領域に接続され、活線側線路はグラウンド領域に設けられた給電伝送線に接続されていることを第1の特徴とする。
【0012】
なお、ここで言う所定の位置とは、略線対称を為すアンテナ装置の対称線上で第2、第3の導体が上面視にて交叉している近傍を表している。
【0013】
上記特徴のアンテナ装置によれば第1の給電点は第1の導体、第2の導体を放射導体とするモノポールアンテナに対する給電点として動作し、第2の給電点は所定の位置から第1の導体を放射導体とするダイポールアンテナに対する給電点として動作しそれぞれの給電点がアンテナ装置のほぼ対称線上にあるため、信号分布の向きが直交することから、周波数に関わらずグラウンド領域を経由した電気信号の相互干渉も抑えられ、2つの給電点の間でアイソレーションが向上する。
【0014】
このように、2つの給電点からそれぞれ給電した場合励振方向は互いに直交し、周波数に依存することなく偏波方向やグラウンド領域導体上の電流、および電圧分布は非常に異なることにより、それぞれの給電点から給電した際の各放射パターンの方向毎における放射強度の相関係数が小さくなる。
【0015】
さらに上記特徴のアンテナ装置によれば、第2および第3の導体が互いに直交しているため、第2、第3の導体間の電界結合による信号の相互干渉が広い周波数地域に於いて非常に小さくなり、より一層高いアイソレーション特性が得られる。
【0016】
さらに第2の導体が第1の給電点から第1の導体までは貫通導体で基板の裏面に回って形成されているため第1、第2の給電点は両方とも基板の表面に設置することが可能で、整合回路素子の実装が容易である。
【0017】
また、第3の導体は少なくとも一部が第一の導体と対向していることを第2の特徴とする。
【0018】
このような構成を採っているため、第3の導体と第1の導体は強力な磁界結合を形成しており、第2の給電点は効率よく第1の導体をダイポールアンテナとして動作させている。
【0019】
さらに本発明に係るアンテナ装置において、第1の給電点も所定の位置の近傍に設置され、第2の導体は第1の給電点からグラウンド領域まで非活線側線路と活線側線路を有しており、非活線側線路はグラウンド領域に接続され、活線側線路は基板上に設けられた給電伝送線に接続されていることを第3の特徴とする。
【0020】
上記特徴のアンテナ装置によれば、2組の整合回路がアンテナ装置の所定の位置に集中し、1点から異なる励振を行うので、より高い相互干渉を抑制する効果が得られ、更に高いアイソレーション特性が得られる。
【0021】
さらに本発明に係るアンテナ装置は、第1、第2の給電点に関わる整合回路は少なくとも複数のリアクタンス素子が多層基板内に形成されたモジュールにより構成されていることを第4の特徴とする。
【0022】
上記特徴のアンテナ装置によれば、ここのリアクタンス素子を多数実装する場合に素子ばらつき、実装ばらつき、更には自己共振周波数のばらつき等による特性劣化を軽減することが出来る。特に、マルチバンドや広帯域の特性を取り扱う場合、素子の周波数特性を顧慮したリアクタンスの配置、設計が可能となる。
【0023】
さらに本発明に係る携帯無線端末は、本発明のアンテナ装置を搭載したことを第5の特徴とする。均質な構成であれば給電点はアンテナ装置の対称線上に設置された状態で最も良好なアイソレーション、相関が得られる。しかし実際の携帯端末においてはアンテナ装置以外の部品の材質や配置状態により最良のアイソレーション、相関を得る位置は必ずしもアンテナ装置の対称線上とは限らない。本発明のアンテナ装置はその給電点が配置される所定の位置を活線側線路と非活線側線路により比較的自由に設定できるので携帯端末全体を考慮した対称線上に給電点を配置できる。
【0024】
上記特徴の携帯無線端末によれば、広い周波数帯域に於いて携帯無線端末のアンテナ特性を向上させることができ、小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば同一周波数で動作する2つ以上のアンテナ間において、信号の相互干渉を低減するための構成要素を新たに設けることなく、マルチバンド化に適応したUHFまたはSHFの広帯域に渡る複数の周波数帯で給電点間の信号の相互干渉を低減することができ、高いアイソレーション特性を確保できるアンテナ装置およびこれを搭載した携帯無線端末を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態1に係るアンテナ装置を示す斜視図である。
図2】実施形態1に係るアンテナ装置の給電部分詳細を示す上面図の拡大図である。
図3】実施形態1に係るアンテナ装置を示す給電部分細部斜視図である。
図4】実施形態1に係るアンテナ装置の給電部に整合回路素子を搭載した細部上面図である。
図5】実施形態1に係るアンテナ装置の給電部に整合回路素子を搭載した細部斜視図である。
図6】実施形態2に係るアンテナ装置を示す斜視図である。
図7】実施形態2に係るアンテナ装置の給電部分詳細を示す上面図の拡大図である。
図8】実施形態2に係るアンテナ装置を示す給電部分細部斜視図である。
図9】実施形態3に係るアンテナ装置の給電部分詳細を示す上面図の拡大図である。
図10】実施形態3に係るアンテナ装置を示す給電部分細部斜視図である。
図11】実施形態4に係るアンテナ装置を示す斜視図である。
図12】実施形態4に係るアンテナ装置の給電部分詳細を示す斜視図の拡大図である。
図13】実施例1に係るアンテナ装置の周波数帯域2GHz〜3GHzにおける電気特性図である。
図14】実施例1に係るアンテナ装置の周波数帯域5GHz〜6GHzにおける電気特性図である。
図15】実施例2に係るアンテナ装置の周波数帯域2GHz〜3GHzにおける電気特性図である。
図16】実施例2に係るアンテナ装置の周波数帯域5GHz〜6GHzにおける電気特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0028】
また、以下の本発明の説明において、給電点は全て50Ωに整合させるべく集中定数素子、乃至、モジュール内に形成されたリアクタンスを用いて調整を行い整合が確保された状態を想定している。しかし、実際には給電点は50Ωではなくても整合が取れていれば構わない。
【0029】
更に、線路を構成している導体は回路基板のパターンで構成されているように描かれているが、例えば非活線側線路と活線側線路は無線回路から一続きの同軸ケーブル等で形成されていても構わない。線路は図面を簡略化するため活線側線路及び非活線側線路の線路幅を略同一にて描いてあるが、実際には非活線側線路の線路幅が広い、等の詳細は省略されている。
【0030】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るアンテナ装置を示す斜視図である。図2は、実施形態1に係るアンテナ装置の給電部詳細を示す上面図である。図3は、実施形態1に係るアンテナ装置を示す給電部詳細を示す斜視図である。図4は実施形態1に係るアンテナ装置の給電部に整合素子を搭載している状態の詳細を示す上面図である。図5は実施形態1に係るアンテナ装置の給電部に整合素子を搭載している状態の詳細を示す斜視図である。図1、2、3においては給電点を明確に示すために整合回路については省略してあるが、実際には回路基板上の無線回路装置から給電点を結ぶ伝送線とアンテナ装置の間にはインピーダンス不整合がある事が普通であり、これを解消するため給電点には図4、5に示すようなリアクタンス素子による整合回路が付加される。
【0031】
基板101の外形寸法は92mm×40mmであり、厚さは1mmである。図1、2、3に示すようにグラウンド領域201と非グラウンド領域202を有する基板101と、第1の導体1、第2の導体2、及び第3の導体3とを有し、第1の導体1は基板101の裏面のグラウンド領域201が形成されていない非グラウンド領域202で、グラウンド領域と非グラウンド領域の境界線と平行に配置されており、第2の導体2は、第1の給電点11を含み一端がグラウンド領域201の給電伝送線21へと接続され、他端が所定の位置で基板101の反対面にスルーホール23で繋がり、第1の導体1へと接続され、第3の導体3は所定の位置に第2の給電点12を含み、少なくとも一部が第1の導体1と対向し、両端がグラウンド領域201へ接続されている。
【0032】
更に、第3の導体は第2の給電点12から見て一方は直接前記グラウンド領域201に接続され、他方は非活線側線路と活線側線路を有し、非活線側線路3−bはグラウンド領域201へ接続され、活線側線路3−aは前記グラウンド領域に設置されている信号源に通じる給電伝送線22に接続されている。
【0033】
更に、図1、2、3においては省略してあるがより詳しくは例えば図4、5に示すような整合回路を構成するためのリアクタンス素子31が搭載されている。これらの素子はすべて同一面に配置されるので実装は容易である。
【0034】
このように構成することで、第1の給電点11と第1の導体1とは第2の導体2により接続され、第2の給電点12と第1の導体1とは導体により接続されることなく、第1の導体と第3の導体とが対向する箇所を中心として磁界結合により非接触の状態で給電が行われる。そのため第1の給電点11と第2の給電点12との間には導体を経由した信号の伝達経路は存在しないため信号の相互干渉が抑えられる。
【0035】
更に第1の給電点11は第1の導体1、第2の導体2を放射導体とするモノポールアンテナに対する給電点として動作し、第2の給電点12は第1の導体1を放射導体とするダイポールアンテナに対する給電点として動作するため、それぞれの給電点より励振した際のグラウンド領域導体上の電流、および電圧分布が異なるためグラウンド領域201を経由した信号の相互干渉も抑えられる。これらの効果により給電点間の相互干渉が抑制されアイソレーションが向上する。
【0036】
更に本実施形態では図1、2、3及び図4、5に示すように第2の給電点12に給電する第3の導体3の給電用活線側線路及び非活線側線路が第2の給電点12の直近まで配置されているため第2の給電点12は整合回路を含めて所定の位置に設置することが出来る。
【0037】
このように構成することで前記第3の導体3による前記第1の導体1の励振は所定の位置を通るアンテナ装置の対称線に対する対称性を崩すことがなく、そのため広い周波数帯域に於いて給電点間の相互干渉が抑制されアイソレーションが一層向上する。
【0038】
(実施形態2)
図6は実施形態2に関わるアンテナ装置の斜視図である。図7は、実施形態2に係るアンテナ装置の給電部詳細を示す上面図である。図8は、実施形態2に係るアンテナ装置を示す給電部詳細を示す斜視図である。給電点を明確にするための整合回路素子を省略した状態は図示していないが実施形態1と同様に給電点が設置されている。基板101の外形寸法は96mm×40mmであり、厚さは1mmである。その内グラウンド導体201の形状は86mm×40mm、である。実施形態2は実施形態1に対し、グラウンド領域201は、第2の導体2を中心線とする線対称形の非グラウンド領域となる所定の位置から見て深さD、幅Wの切欠き部5を有し、第3の導体3は切欠き部5の開口部を跨ぐように位置している点で異なる。
【0039】
この様に構成することで、第3の導体3を周回して発生する磁束がグラウンド領域201によって妨げられる影響が低減し、第1の導体1と第3の導体3との磁界結合が更に強くなる。また、切欠き部5の深さDを調整することで、結合の強さを調整でき、第2の給電点12の周波数帯域幅の調整が可能となる。更に切欠き部5を設けることで、グラウンド領域201も放射導体と同様に強く励振され、アンテナ放射効率が改善する効果がある。
【0040】
更に、前記第1の給電点11は前記所定の位置の近傍に設置され、第2の導体2は切り欠き5の底部より給電点11まで非活線側線路と活線側線路を有し、更に給電点11から第1の導体へと接続されている点に於いても実施形態1と異なっている。非活線側線路2−bは前記グラウンド領域201に、活線側線路2−aは切り欠き5の底部にて給電伝送線路21に接続されている。
【0041】
このように構成することで、第1の給電点11及び第2の給電点12を所定の位置に集中させることが出来る。更にそれぞれの給電点に関わる整合回路も所定の位置に集中している。1点から異なる励振を行うので、より広い周波数範囲で高い相互干渉を抑制する効果が得られ、更に高いアイソレーション特性が得られる。
(実施形態3)
図9は実施形態3に関わるアンテナ装置の給電部詳細の上面図である。図10は実施形態3に関わるアンテナ装置の給電部詳細の斜視図である。実施形態3は実施形態2に対し、整合回路を構成する各リアクタンス素子がモジュール41として一つのチップに形成されている点で異なる。
【0042】
このように構成することで、内蔵される各リアクタンス素子は整合回路として必要な定数に基づいて設計されるため、汎用のチップインダクタ、チップキャパシタ等を用いて実装する場合より、自己共振による特性の劣化や実装ばらつきに対して有利である。
【0043】
無論、それぞれの給電点に対して個別に、或いは片側についてのみモジュールを用意することも可能であるが、コストの面に於いて不利であるため必要な事情がある場合のみ片側だけをモジュール化する。
【0044】
異なる種類の携帯無線端末に一つの種類のモジュールで対応するためアンテナ特性が周囲環境による影響を受けやすい部分についてこれを補正する素子については外付け、またはモジュール内の素子と外付けの素子が共同で特性を設定するようにしてもよい。
【0045】
(実施形態4)
図11は、実施形態4に係るアンテナ装置を示す斜視図である。図12は実施形態4に関わるアンテナ装置の給電部詳細の斜視図である。図9図10に示す実施形態3に係るアンテナ装置と異なる点は、第1の給電点11及び第2の給電点12と前記2つの給電点に関わる導体1、2、3、及び切り欠き5が前記基板101の辺の中央部ではなく、基板101の角部に配置されている点で異なる。このため、非グラウンド領域202も基板101の角部に配置され、面積が狭く、各バンドの帯域幅が狭くなるので、その対策として第4の導体4を基板101を挟み第1の導体1と対向させて設置してある点も異なる。
【0046】
本実施形態に於いては基板101の角部に於いて、角を挟む2辺と前記第2の導体が略45度の角度で配置されている。
【0047】
このように構成することで、基板101のアンテナ装置部を除くグラウンド部201が正方形または菱形である場合を除き、グラウンド部201を含めたアンテナ構成の厳密な意味での対称性は崩れる。しかしアンテナ特性に関与する基板のグラウンド部は給電点の周囲から離れるに従いその影響は小さくなるため実質的には特性が劣化することはない。
【0048】
更にこの様な構成にすることにより、本アンテナ装置を使用する無線装置の回路基板の部品配置、スペース効率が大幅に向上する。本実施形態の基板101の外形寸法は110mm×50mmであり、厚さは1mmである。そしてアンテナ部のスペースは切欠き5を含めて13mm×13mmである。
【0049】
本発明の上述したアンテナ装置において、グラウンド導体201は誘電体基板に形成されたグラウンドパターンで構成されていてもかまわないし、携帯無線端末の金属製の筐体により形成されていてもかまわない。また、第1の導体1、第2の導体2、及び第3の導体3は基板101上の非グラウンド領域202に配置された導体パターンとして述べているが、第1の導体、及び第2の導体の一部は誘電体や磁性体等からなる基体上に配置されたFPCの導体パターン等で構成されていてもかまわないし、携帯無線端末の筐体に直接形成された導体パターンにより構成されていてもかまわないし、板金等で自立する構成であってもかまわない。
【0050】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0051】
なお、本発明の説明における電気特性や電磁界分布のシミュレーション結果はAnsys社のHFSSバージョン15にて得られた結果である。本発明に登場する放射パターンの相互干渉を示す相関係数ρとは上記のシミュレーションで得られたそれぞれの給電点から給電した際の各放射パターンの各方向の遠方界放射強度の結果より、以下の式(1)によって算出したものである。
【数1】
【0052】
式(1)において、аθ、аφはそれぞれ第1の給電点から給電した際の遠方界の電界強度の偏角θ成分、φ成分であり、bθ、bφはそれぞれ第2の給電点から給電した際の遠方界の電界強度の偏角θ成分、φ成分である。m、nはそれぞれ偏角θ、φの各方向の電界強度のサンプリング数を示している。*は共役複素数を示している。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
本実施形態1のシミュレーション実施時における、FR4(比誘電率=4.4)基板101の外形寸法は92mm×40mmであり、厚さは1mmである。各導体はすべて銅箔である。その内グラウンド導体201は82.5×40mmである。第1の導体は基板の非グラウンド形成部で、グラウンド部から9mm離れて基板106の下面に形成され、幅1mm、長さは15mmである。
【0054】
第2の導体2は、一端が基板101のグラウンド領域と非グラウンド領域の境界線中央部で基板上の無線回路と結線する給電伝送線21とリアクタンス素子31により構成される第1の整合回路分からなる給電点11に接続され、他端は所定の位置でスルーホールにより基板裏に回り、第1の導体1に接続されている。第3の導体3は一端がグラウンド領域に接続され、グラウンド領域から直角に3.5mmまで延び、そこで直角に折れ曲がり、アンテナ装置の中心線に向かって4.3mm延び、所定の領域にてリアクタンス素子31により構成される第2の整合回路部分からなる給電点12を介して、そこから整合回路に給電するための非活線側線路と活線側線路を有し、アンテナ装置の中心線に対し線対称形状を為して形成されていて、非活線側線路、は前記グラウンド領域201に、活線側線路は基板上の無線回路と結線する給電伝送線22に接続されている。
【0055】
この実施形態の構成による効果は周波数の如何に関わらず得られるため、整合回路により整合が得られる広範囲の周波数帯でアンテナ装置を構成することが出来る。本実施例に於いては第1の給電点側に4素子、第2の給電点側に3素子のリアクタンス素子を配して、Wi−Fi(登録商標)/Bluetooth(登録商標)の周波数帯である2.4GHzから2.5GHzとWi−Fi(登録商標)の周波数帯である5.15GHzから5.725GHzの2つの周波数帯で整合を取るべくインピーダンス調整を行っている。
【0056】
この様にして得たアンテナ装置の特性を図13図14に示す。図13は実施形態1に係るアンテナ装置の周波数帯域2GHz〜3GHzにおける電気特性図であり、図14は周波数帯域5GHz〜6GHzにおける電気特性図である。図13図14における図中51は第1の給電点11から見たリターンロス特性、52は第2の給電点12から見たリターンロス特性、53は第1の給電点11から給電した場合の放射効率、54は第2の給電点12から給電した場合の放射効率、55は第1の給電点11及び第2の給電点12の間のアイソレーション特性である。なお、放射パターンの相関係数ρの計算値は2.44GHzにおいて0.12、であり、5.49GHzにおいて放射パターンの相関係数ρの計算値は0.10であった。
【0057】
(実施例2)
本実施形態3のシミュレーション実施時における、FR4(比誘電率=4.4)基板101の外形寸法は96mm×40mmであり、厚さは1mmである。各導体はすべて銅箔である。その内グラウンド導体201の形状は86mm×40mm、である。導体の切欠き5は、グラウンド導体201の非グラウンド領域202に接する短辺の中央に非グラウンド領域として形成され、切欠き5の形状は深さD=3.5mm×幅W=9mmの長方形状である。第1の導体は基板の非グラウンド形成部で、グラウンド部から6mm離れて基板101の下面に形成され、幅1mm、長さは17.5mmである。
【0058】
第2の導体2、第3の導体3は実施形態3に述べたとおりに構成されていいて、所定の位置にセラミック多層基板内に整合回路を内包した整合回路モジュール41が設置されている。このモジュールの外形は所謂201205(2mm×1.2mm×0.5mm)である。
【0059】
それぞれの給電点は、Wi−Fi(登録商標)/Bluetooth(登録商標)の周波数帯である2.4GHzから2.5GHzとWi−Fi(登録商標)の周波数帯である5.15GHzから5.725GHzの2つの周波数帯で整合を取るべく複数の集中定数素子を内包した整合器モジュールでインピーダンス調整を行っている。
【0060】
図15は実施形態2に係るアンテナ装置の周波数帯域2GHz〜3GHzにおける電気特性図であり、図16は周波数帯域5GHz〜6GHzにおける電気特性図である。図15図16における図中51は第1の給電点11から見たリターンロス特性、52は第2の給電点12から見たリターンロス特性、53は第1の給電点11から給電した場合の放射効率、54は第2の給電点12から給電した場合の放射効率、55は第1の給電点11及び第2の給電点12の間のアイソレーション特性である。放射パターンの相関係数ρの計算値は2.44GHzに於いては0.11であり、5.49GHzにおいては0.05であった。

本実施形態1又は3に係る本実施例1又は2の様なアンテナ装置の構成とすることで、第1の給電点11は第1の導体1、第2の導体2を放射導体とするモノポールアンテナに対する給電点として動作し、第2の給電点12は第1の導体1を放射導体とするダイポールアンテナに対する給電点として動作するため、それぞれの給電点より励振した際の共振の向きが異なるためグラウンド領域201を経由した信号の相互干渉も抑えられる。そのため相互結合を低減するための構成要素を新たに設けることなく、複数の周波数帯において、高いアイソレーション特性と、それぞれの給電点から給電した際の各放射パターンの方向毎における放射強度の相関係数が低減された特性が得られ、放射効率の確保されたアンテナ装置が構成可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上のように、本発明のアンテナ装置およびこれを搭載した携帯無線端末は、信号の相互干渉が小さく、小型でマルチバンド化も可能な複数のアンテナを構成可能なため携帯電話などの携帯無線端末に有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 第1の導体
2 第2の導体
2−a 活線側線路
2−b 非活線側線路
3 第3の導体
3−a 活線側線路
3−b 非活線側線路
4 第4の導体
5 切り欠き
11 第1の給電点
12 第2の給電点
21 第1の給電点側の給電伝送線
22 第2の給電点側の給電伝送線
23 貫通導体
31 リアクタンス素子
41 整合器モジュール
51 第1の給電点から見たリターンロス特性
52 第2の給電点から見たリターンロス特性
53 第1の給電点に入力した場合の放射効率
54 第2の給電点に入力した場合の放射効率
55 第1の給電点と第2の給電点とのアイソレーション特性
101 基板
201 グラウンド領域
202 非グラウンド領域
D 切欠き5の深さ
W 切欠き5の幅
図1
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