特許第6183347号(P6183347)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183347
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】造粒装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 2/12 20060101AFI20170814BHJP
   B28B 1/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   B01J2/12
   B28B1/00 D
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-254349(P2014-254349)
(22)【出願日】2014年12月16日
(65)【公開番号】特開2016-112521(P2016-112521A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2016年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100092071
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 均
(72)【発明者】
【氏名】森井 博史
(72)【発明者】
【氏名】矢田 英夫
(72)【発明者】
【氏名】大川 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】志柿 雅彦
【審査官】 森井 隆信
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−241660(JP,A)
【文献】 特開平10−089849(JP,A)
【文献】 特開平08−219646(JP,A)
【文献】 特開平11−264666(JP,A)
【文献】 特開2011−240319(JP,A)
【文献】 特開平02−068129(JP,A)
【文献】 特開平09−248442(JP,A)
【文献】 特開平06−319977(JP,A)
【文献】 特開平08−259304(JP,A)
【文献】 実開昭49−013467(JP,U)
【文献】 特開平05−332680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 2/00− 2/30
F27B 5/00− 7/42
B28B 1/00
F26B 1/00−25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円錐筒形状を有し、小径端側から造粒を行う対象である被処理物としての原料スラリーが供給される第1の筒体と、一端側において前記第1の筒体の大径端側と連通し、他端側から造粒体が排出される第2の筒体とを備えた筒状本体と、
前記第1の筒体内に収容され、前記第1の筒体内を転動する転動体と、
前記第1の筒体と、前記第2の筒体との境界部に設けられ、前記被処理物は通過させるが、前記転動体は通過させない貫通孔を備えた仕切り部材と、
前記筒状本体を軸心まわりに回転させる回転手段と、
前記筒状本体を通過する前記被処理物を加熱する加熱手段と
を具備し、
前記被処理物が供給された前記筒状本体を前記回転手段によって回転させ、前記第1の筒体内の前記被処理物を前記加熱手段によって加熱し、かつ、前記転動体によって前記被処理物を粉砕することにより前記造粒体が得られるように構成された造粒装置であって、
前記第1の筒体の軸心を通る鉛直面で切断し、前記鉛直面に直交する方向からみた場合における、前記第1の筒体の内周面を示す一対の線のうちの下側の線が、前記第2の筒体に向かって下り勾配を有するとともに、前記下側の線と水平線のなす角度が、10°以上、50°以下であること
を特徴とする造粒装置。
【請求項2】
前記角度が、10°以上、30°以下であることを特徴とする請求項1に記載の造粒装置。
【請求項3】
前記貫通孔が、前記仕切り部材の外周と同心で、前記転動体が通過しない幅を有する円弧状の長穴であることを特徴とする請求項1または2に記載の造粒装置。
【請求項4】
前記第2の筒体を、その軸心を通る鉛直面で切断し、前記鉛直面に直交する方向からみた場合における、前記第2の筒体の内周面を示す一対の線のうちの下側の線が、前記第2の筒体の他端側に向かって下り勾配を有するとともに、前記下側の線と水平線のなす角度が、1°以上、10°以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の造粒装置。
【請求項5】
前記第2の筒体の内周面に、前記被処理物を案内するための、らせん状のガイドが設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の造粒装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造粒体を製造するための造粒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
造粒体を製造するための装置としては、原料スラリーを炉内に投入して乾燥・仮焼することで造粒体を生成するロータリー炉などの種々の造粒装置が提案されている。
そして、このような造粒装置の1つに、特許文献1に記載されているような造粒装置がある。
【0003】
特許文献1に記載されている造粒装置101では、内部に転動体(メディア)114が収容され、ヒータ116により加熱された状態で回転させておいた円錐ドラム状の筒体110内に原料スラリーwを供給し、水などの溶媒(分散媒)を蒸発させて乾燥させるとともに、転動体114にて粉砕することで造粒体を生成させるようにしている。
この造粒装置101は、円錐ドラム状の筒体110の使用状態において下側に位置する内周面Fが、排出側に向けて上り勾配となっており、造粒体がこの上り勾配に沿って造粒装置101の外へ排出されるような構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−241660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されている造粒装置101では、上述のように、円錐ドラム状の筒体110の内周面Fが排出側に向けて上り勾配となっているため、筒体110内で生成した造粒体が排出されにくく、筒体110内での滞留時間が長くなり、目標とする粒径よりも粒径の小さい微粒成分の割合が多くなるという問題がある。
また、微粒成分の割合が多くなると、局所排気や集塵器などによる損失が増大して収率の低下を招くという問題がある。
さらに、微粒成分の割合が多くなると、造粒体の粒度分布が大きくなり、後工程で実施される熱処理などで品質差を生じるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、微粒成分の発生を抑制して、微粒成分の割合の少ない造粒体を効率よく製造することが可能な造粒装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の造粒装置は、
円錐筒形状を有し、小径端側から造粒を行う対象である被処理物としての原料スラリーが供給される第1の筒体と、一端側において前記第1の筒体の大径端側と連通し、他端側から造粒体が排出される第2の筒体とを備えた筒状本体と、
前記第1の筒体内に収容され、前記第1の筒体内を転動する転動体と、
前記第1の筒体と、前記第2の筒体との境界部に設けられ、前記被処理物は通過させるが、前記転動体は通過させない貫通孔を備えた仕切り部材と、
前記筒状本体を軸心まわりに回転させる回転手段と、
前記筒状本体を通過する前記被処理物を加熱する加熱手段と
を具備し、
前記被処理物が供給された前記筒状本体を前記回転手段によって回転させ、前記第1の筒体内の前記被処理物を前記加熱手段によって加熱し、かつ、前記転動体によって前記被処理物を粉砕することにより前記造粒体が得られるように構成された造粒装置であって、
前記第1の筒体の軸心を通る鉛直面で切断し、前記鉛直面に直交する方向からみた場合における、前記第1の筒体の内周面を示す一対の線のうちの下側の線が、前記第2の筒体に向かって下り勾配を有するとともに、前記下側の線と水平線のなす角度が、10°以上、50°以下であること
を特徴としている。
【0008】
さらに、本発明の造粒装置においては、前記角度が、10°以上、30°以下であることが好ましい。
【0009】
上記構成を備えることにより、被処理物の第1の筒体内での滞留時間を確実に適切な範囲に制御することが可能になり、本発明をより実効あらしめることができる。
【0010】
また、前記貫通孔が、前記仕切り部材の外周と同心で、前記転動体が通過しない幅を有する円弧状の長穴であることが好ましい。
【0011】
上記構成を備えることにより、転動体の通過を確実に防止しつつ、被処理物を円滑に仕切り部材を通過させることが可能になり、被処理物の第1の筒体内での滞留時間をより確実に制御することができるようになる。
【0012】
また、前記第2の筒体を、その軸心を通る鉛直面で切断し、前記鉛直面に直交する方向からみた場合における、前記第2の筒体の内周面を示す一対の線のうちの下側の線が、前記第2の筒体の他端側に向かって下り勾配を有するとともに、前記下側の線と水平線のなす角度が、1°以上、10°以下であることが好ましい。
【0013】
上記構成を備えることにより、造粒体を円滑、かつ確実に排出することが可能になる。
【0014】
また、前記第2の筒体の内周面に、前記被処理物を案内するための、らせん状のガイドが設けられていることが好ましい。
【0015】
上記構成を備えることにより、被処理物をらせん状のガイドに沿って安定して搬送させることができる。また、被処理物に適切な回転力を与えながら搬送を行うことが可能になるため、例えば、水分の蒸発や、有機成分の分解などを促進することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の造粒装置は、上述したような筒状本体と、転動体と、仕切り部材と、回転手段と、加熱手段とを具備しており、第1の筒体の軸心を通る鉛直面で切断し、鉛直面に直交する方向からみた場合に、第1の筒体の内周面を示す一対の線のうちの下側の線が、第2の筒体に向かって下り勾配を有するとともに、下側の線と水平線のなす角度が、10°以上、50°以下となるように構成されているので、被処理物の第1の筒体内での滞留時間が長くなり過ぎて、微粒成分の割合が目標とする範囲よりも多くなったり、滞留時間が短くなり過ぎて必要な造粒を行うことができなくなったりすることを回避して、意図するような粒度分布を有する造粒体を効率よく製造することが可能になる。
【0017】
すなわち、本発明によれば、複雑な構成を必要とすることなく、被処理物の第1の筒体内での滞留時間を適切な範囲に保つことが可能で、特性の良好な造粒体を効率よく製造することが可能な造粒装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態にかかる造粒装置の概略構成を示す図である。
図2図1に示した造粒装置の筒状本体および仕切り板の構成を示す分解斜視図である。
図3】本発明の実施形態にかかる造粒装置の他の例を示す図である。
図4】従来の造粒装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態を示して本発明をさらに詳しく説明する。
【0020】
本発明の実施形態にかかる造粒装置1は、図1に示すように、回転手段15により軸心まわりに回転させることができるように構成された筒状本体10と、筒状本体10を加熱するための加熱手段(ヒータ)16とを備えている。加熱手段16は、断熱材を含むハウジング19の内側に設けられ、回転する筒状本体10を介して被処理物wが加熱されるように構成されている。
【0021】
そして、筒状本体10は、円錐筒形状を有する第1の筒体11と、円筒形状を有する第2の筒体12とを備えている。すなわち、筒状本体10は、円錐筒形状を有する第1の筒体11の大径端側11bが、円筒形状を有する第2の筒体12の一端側12aと連通するように接続された構造を有している。
また、第1の筒体11内には、第1の筒体11内を転動する転動体(メディア)14が収容されている。
【0022】
さらに、筒状本体10を構成する、円錐筒形状を有する第1の筒体と、円筒形状を有する第2の筒体12との境界部には、仕切り部材13が配設されている。この仕切り部材13は、被処理物wは通過させるが、転動体14は通過させないような構造を有している。
【0023】
また、筒状本体10は、第1の筒体11の小径端側11aに供給口10aを備えており、この供給口10aから、造粒を行う対象である被処理物wが供給され、第2の筒体12の他端側12bから造粒体が排出されるように構成されている。
【0024】
以下、各部の構成について、さらに詳しく説明する。
この実施形態にかかる造粒装置1において、上記筒状本体10を構成する第1の筒体11および第2の筒体12は同軸となるように構成されており、筒状本体10の軸心Cは直線状である。
そして、筒状本体10は、その軸心Cが水平線Hに対して所定の角度θをもって傾斜するように配設されている。この実施形態では、角度θは、6°とされている。
第1の筒体11および第2の筒体12を構成する材料としては、例えば、ステンレス、チタン合金などの耐熱金属を用いることができる。
【0025】
そして、この実施形態にかかる造粒装置1において、第1の筒体11は、その使用状態において下側に位置する内周面が、下り勾配を有するように構成されており、第1の筒体11を、軸心Cを通る鉛直面で切断し、鉛直面に直交する方向からみた場合に、第1の筒体11の内周面を示す一対の線のうちの下側の線L1と、水平線Hのなす角度θ1が所定の値となるように構成されている。なお、本発明において好ましいθ1の範囲は、10°以上、50°以下である。
【0026】
また、第2の筒体12も、第2の筒体12を、軸心Cを通る鉛直面で切断し、鉛直面に直交する方向からみた場合における、第2の筒体12の内周面を示す一対の線のうちの下側の線L2が、第2の筒体12の他端側12bに向かって下り勾配を有するように構成されている。なお、本発明において線L2と水平線Hのなす角度θ2の好ましい範囲は、1〜10°である。
なお、図1は、θ1が20°、θ2が6°の状態を示している。
【0027】
本発明においては、上記の線L2が第2の筒体12の一端側12aから他端側12bに向かって上り勾配となるように、あるいは水平になるように構成することも可能であるが、被処理物wを円滑に通過させる見地からは、下り勾配となるようにすることが望ましい。
【0028】
また、第2の筒体12の内周面には、軸心Cを中心とする、らせん状のガイド12cが設けられている(図2参照)。ガイド12cは、被処理物wが第2の筒体12の内周面を転がりながら搬送する際に、被処理物wの搬送を案内するように構成されている。
【0029】
転動体14は、球体であり、第1の筒体11内に複数(例えば100個)収容されている。そして、回転手段15により筒状本体10が回転することにより、第1の筒体11内を転動するように構成されている。転動体14を構成する材料としては、例えば、ステンレス、チタン、アルミナなどの耐熱性材料を用いることができる。
【0030】
また、上述のように第1の筒体11と第2の筒体12との境界部に設けられた仕切り部材13は円板状の部材であり、筒状本体10が回転するのに伴って回転するように構成されている(図2参照)。
【0031】
また、仕切り部材13には、被処理物wは通過させるが、転動体14は通過させない形状および寸法を有する貫通孔13aが形成されている。具体的には、貫通孔13aとして、転動体14が通過することができない幅を有する円弧状の長穴が設けられている。貫通孔(円弧状の長穴)13aは、仕切り部材13の外周と同心で、複数列設けられている。
この実施形態の造粒装置においては、貫通孔13aである長穴が、その幅により、造粒体の大きさを規定する機能をも果たすように構成されている。
なお、仕切り部材13の中央領域には、第1の筒体11内で発生した被処理物wの蒸発ガスを通気させるための通気孔13bが設けられている。通気孔13bも、転動体14が通過することができないような寸法とされている。
【0032】
また、筒状本体10を軸心回りに回転させるための回転手段15は、駆動ローラ15aと、筒状本体10に固定され、駆動ローラ15aの回転により回転するドライブローラ15cと、第2の筒体12の他端側12bの外周面と当接する複数の従動ローラ15bとを備えた構成とされている。
そして、筒状本体10は、これら駆動ローラ15a、ドライブローラ15c、および従動ローラ15bによって、回転可能にハウジング19内に支持されている。
【0033】
なお、この実施形態における造粒装置1のそれぞれの設計値などは以下の通りである。
筒状本体の長さ:1330mm
第1の筒体の径:小径端側=θ1,θ2により変動(例えば、θ1が20°で、θ2が6°のとき172mmとなる)、
:大径端側390mm
第2の筒体の径:390mm
転動体(メディア)の直径:30mm
筒状本体の回転速度(周速度):40mm〜500mm/sec
被処理物加熱温度(筒状本体内の温度):400℃〜900℃
【0034】
次に、この造粒装置1を用いてセラミックの造粒体を製造する方法について説明する。
【0035】
まず、回転手段15によって筒状本体10を回転させながら、加熱手段16によって筒状本体10を所定温度に加熱する。そして、溶媒および有機成分を含む被処理物(原料スラリー)wを供給口10aから第1の筒体11へ供給する。
供給された被処理物wは、加熱された第1の筒体11内において、溶媒の一部が除去され、また、第1の筒体11内で転動する転動体14により粉砕されることで、半乾燥状態の造粒体となる。第1の筒体11の内部は、この半乾燥状態の造粒体となる。
【0036】
そして、この実施形態の造粒装置1においては、第1の筒体11の使用状態において下側に位置する内周面が、下り勾配(上述の線L1と水平線Hのなす角度がθ1となるような下り勾配)を有しているので、第1の筒体11に貯留されている半乾燥状態の造粒体(被処理物w)が、第2の筒体12に向かって円滑に移動する。その結果、被処理物wの、第1の筒体11内への滞留時間が長くなり過ぎて、微粒まで粉砕されてしまうことを抑制、防止することが可能になる。
【0037】
第2の筒体12に移行した被処理物wは、第2の筒体12のらせん状のガイド12cに沿って転動しながら搬送される。この間に、被処理物wは均一に加熱され、被処理物wに含まれる溶媒の蒸発や、有機成分の蒸発、分解、燃焼などによる除去が十分に行われる。
【0038】
そして、上述の処理が行われた被処理物(造粒体)wは、その後、第2の筒体12の他端側12bから外へ排出される。
【0039】
上述したように、この造粒装置1では、第1の筒体11内での被処理物wの滞留時間を適切な範囲に保つことができることから、転動体14による被処理物wの粉砕を適度に行って、微粒成分の発生を抑制し、微粒成分の割合の少ない造粒体を効率よく製造することが可能になる。
【0040】
次に、本発明の効果を確認するため、造粒装置の設定条件を以下に説明するように異ならせて造粒を行い、第1の筒体における被処理物の滞留時間と、造粒体における微粒成分の割合を調べた。
【0041】
炭酸バリウム粉末と二酸化チタン粉末をモル比が1:1となるように秤量し、所定量のポリカルボン酸型の分散剤を加え、さらに所定量の純水を加えて攪拌することにより被処理物である原料スラリーを作製した。
【0042】
そして、この原料スラリーをこの実施形態で説明した造粒装置1であって、第1の筒体11の内周面と鉛直面(切断面)とにより規定される一対の線のうちの下側の線L1と、水平線Hのなす角度θ1が表1に示すように、10°、13°、15°、20°、30°、40°、50°とした造粒装置(表1の実施例1〜7の造粒装置)を用いて造粒した。
【0043】
また、比較のため、上述の原料スラリーを、角度θ1を6°とした表1の比較例1の造粒装置を用いて造粒した。この比較例1の造粒装置においては、第1の筒体11および第2の筒体12として、いずれも円筒状の筒体が用いられている。
なお、上述の実施例1〜7、および比較例1の造粒装置においては、第2の筒体12の内周面と鉛直面(切断面)とにより規定される一対の線のうちの下側の線L2と、水平線Hのなす角度θ2は、いずれも6°で一定とした。
【0044】
また、比較のため、上述の原料スラリー(被処理物)を、従来の造粒装置(図4参照)(表1の比較例2)を用いて造粒した。
そして、得られた造粒体をふるい分けし、粒径が0.35mm以下の微粒成分の、造粒体(乾燥物)の全体に対する割合(質量%)を、以下の式(1)により求めた。
粒径0.35mm以下の微粒成分の割合(質量%)=(粒径が0.35mm以下の微粒成分の質量/得られた造粒体全体の質量)×100 ……(1)
その結果を、表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1における滞留時間は、原料スラリー(被処理物)を第1の筒体に投入開始してから、半乾燥状態の造粒体(被処理物)wが第2の筒体へ移行し始めるまでの時間である。
【0047】
なお、得られた造粒体に残留する有機成分をTG−MS法で分析したところ、分散剤などの有機成分はほぼ除去されていることが確認された。
【0048】
表1に示すとおり、角度θ1が10°〜50°の範囲にある実施例1〜7の造粒装置を用いた場合、滞留時間が11〜35secの範囲にあり、粒径が0.35mm以下の微粒成分の割合が3.0質量%以下であることが確認された。
【0049】
これに対し、角度θ1が6°と本発明の範囲を下回る比較例1の造粒装置を用いた場合、粒径が0.35mm以下の微粒成分の割合が5.8質量%と大きくなり、好ましくないことが確認された。
【0050】
また、従来の造粒装置を用いた場合、滞留時間が100secと大幅に長くなり、粒径が0.35mm以下の微粒成分の割合も、25質量%と著しく多くなることが確認された。
【0051】
上記の結果から、角度θ1を10°以上、50°以下に設定することで、滞留時間が適切な範囲に保たれ、微粒成分の割合が少なくなることがわかった。また、角度θ1を10°以上、30°以下に設定することにより、さらに、微粒成分の割合が少なくなることがわかった。
【0052】
なお、表1に示すように、実施例5〜7では、実施例1〜4より、角度θ1の値が大きくなっているにもかかわらず、実施例1〜4よりも滞留時間が長くなるとともに、微粒成分の割合が多くなっているが、これは、角度θ1の値が大きくなることで被処理物(原料スラリー)が、第1の筒体の内周面を短時間で流下して仕切り部材上に堆積し、その後、徐々に仕切り部材を通過して第2の筒体に移行することによるものであり、滞留時間が長くなることにより転動体との接触時間が増大して、微粒成分の割合が増加したものと推測される。
【0053】
なお、この実施形態では第2の筒体12を円筒状とした造粒装置1を示したが、図3に示すように、第2の筒体12を、一端側12aから他端側12bに向かって径が徐々に小さくなる円錐状とすることも可能である。
【0054】
また、この造粒装置1においても、第2の筒体12を、軸心Cを通る鉛直面で切断し、鉛直面に直交する方向からみた場合における、第2の筒体12の内周面を示す一対の線のうちの下側の線L2が一端側12aから他端側12bに向かって下り勾配となるように構成されている。なお、この造粒装置1の場合も、線L2と水平線Hのなす角度θ2の好ましい範囲は、1〜10°である。
【0055】
なお、この変形例の場合においても、上記の線L2が第2の筒体12の一端側12aから他端側12bに向かって上り勾配となるように、あるいは水平になるように構成することも可能であるが、被処理物を円滑に通過させる見地からは、下り勾配となるようにすることが望ましい。
【0056】
図3に示すように構成された造粒装置1においては、第2の筒体12の表面積が減少し、放熱量が低減することから、省エネルギーを図ることが可能になる。その他の点においても、図1に示す造粒装置1と同様の効果を得ることができる。
【0057】
なお、本発明の造粒装置においては、第1の筒体および第2の筒体の寸法や形状、角度θ1、θ2などを適切に調整することにより、被処理物が完全に乾燥され、有機成分が分解、燃焼などによりすべて除去された状態の造粒体が得られるように構成することも可能であるが、完全乾燥や有機成分の完全除去までは目標とせず、造粒を主目的とする造粒装置として構成することも可能である。
後者の場合は、例えば、造粒装置の後にロータリー炉などを接続することで、完全乾燥や有機成分の完全除去を行うことができる。
【0058】
本発明はさらにその他の点においても上記の実施形態に限定されるものではなく、例えば、筒状本体の大きさ、材質、回転数や、転動体の大きさや材質、投入個数などに関し、発明の範囲内において種々の応用、変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 造粒装置
10 筒状本体
10a 供給口
11 第1の筒体
11a 第1の筒体の小径端側
11b 第1の筒体の大径端側
12 第2の筒体
12a 第2の筒体の一端側
12b 第2の筒体の他端側
12c ガイド
13 仕切り部材
13a 貫通孔
13b 通気孔
14 転動体
15 回転手段
15a 駆動ローラ
15b 従動ローラ
16 加熱手段
19 ハウジング
C 軸心
H 水平線
L1 第1の筒体の下側の線
L2 第2の筒体の下側の線
w 被処理物
θ 水平線Hに対する軸心Cの傾斜角度
θ1 第1の筒体の下側の線L1と水平線Hのなす角度
θ2 第2の筒体の下側の線L2と水平線Hのなす角度
図1
図2
図3
図4