特許第6183396号(P6183396)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6183396浸透乾燥型オフセット印刷用インキ組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183396
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】浸透乾燥型オフセット印刷用インキ組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/037 20140101AFI20170814BHJP
   C09D 11/06 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   C09D11/037
   C09D11/06
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-67844(P2015-67844)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-188269(P2016-188269A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2015年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三輪 剛之
(72)【発明者】
【氏名】河崎 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】岡本 真平
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−144315(JP,A)
【文献】 特開平05−247396(JP,A)
【文献】 特開2007−217657(JP,A)
【文献】 特開平11−293169(JP,A)
【文献】 特開2001−247803(JP,A)
【文献】 特開2011−225747(JP,A)
【文献】 特開2010−195908(JP,A)
【文献】 特開2010−189539(JP,A)
【文献】 特許第2590391(JP,B2)
【文献】 特表2010−540726(JP,A)
【文献】 特開平01−306482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00−11/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラック、バインダー樹脂、植物油、および、重合植物油を含んでなる浸透乾燥型オフセット印刷用インキであって、
カーボンブラックが、ジブチルフタレート(DBP)吸油量73〜140(cm3/100g)、ヨウ素吸着量30〜100(m2/g)であり、
バインダー樹脂が、ロジン変性フェノール樹脂を含み、
重合植物油が、ヨウ素価100〜140(mg/100mg)の大豆油および再生植物油から選ばれる植物油原料から得られたものであり、かつ、インキ全量に対し1〜15重量%含有され、
重合植物油の粘度が、5.0〜50.0Pa・Sであることを特徴とする浸透乾燥型オフセット印刷用インキ。
【請求項2】
ロジン変性フェノール樹脂の重量平均分子量が、10,000〜300,000であることを特徴とする請求項記載の浸透乾燥型オフセット印刷用インキ。
【請求項3】
さらに、石油系溶剤を含むことを特徴とする請求項1または2記載の浸透乾燥型オフセット印刷用インキ。
【請求項4】
石油系溶剤のアニリン点が、65〜110℃であることを特徴とする請求項記載の浸透乾燥型オフセット印刷用インキ。
【請求項5】
請求項1〜4何れか記載の浸透乾燥型オフセット印刷用インキを非塗工紙または微塗工紙に印刷してなる印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷インキに関し、更に詳しくは、新聞、チラシ等の印刷に使用される浸透乾燥型オフセット印刷用インキに関し、更に詳しくは、従来よりもガイドロール残り耐性、後胴残り耐性に優れたオフセット印刷用インキに関する。
【背景技術】
【0002】
浸透乾燥型オフセット印刷用インキの乾燥メカニズムは、印刷インキを構成している溶剤や植物油などが、毛細管現象で紙の繊維部分に浸透し、顔料や樹脂の一部の固形物が紙の表面に固形皮膜の画像を形成させるという乾燥方式をとっている。
この浸透乾燥型オフセット印刷用インキは、ヒートセット印刷用インキの様な加熱オーブン(ドライヤー)を用いてインキ中の溶剤を乾燥させ、固体皮膜を形成させる方式と区別するため、コールドセット印刷用インキとも呼ばれている。
【0003】
浸透乾燥型オフセット印刷、特に新聞印刷におけるインキ供給方式には壷方式、レール方式、キーレス方式が挙げられるが、近年の印刷機高速化及び、紙面品質の向上に伴い、壷方式、レール方式が増加傾向にある。
【0004】
その中で、重要な物理的性状として流動性があり、流動性が付与しすぎると壷垂れ、レールスリットからの自然吐出、ミスト、汚れなどの原因となるため、流動性のコントロールは必要不可欠となる。
【0005】
その手段としては、炭酸カルシウム、カオリン、二酸化珪素、有機ベントナイト系体質顔料などの添加によって行なわれているが、これらは粉末、固形状であり、これらがインキ中に含まれるとインキ中のビヒクル分が減量されることから乾燥が早くなる。(非特許文献1)
【0006】
そのため、体質顔料の使用は、印刷上、ガイドロール残り、後胴残りを引き起こしやすくなる。ガイドロール残りとは、オフセット輪転印刷において印刷後、折機までの間に紙の方向を変えるために設置されるガイドロールにインキ成分が付着し、印刷紙面に汚れをきたす現象をいう。また、後胴残りとは、多色印刷において先刷りしたインキが後のブランケット胴に取られ滞留することにより後刷りの胴の印刷においてブランケット上にインキが乗りにくく印刷紙面に着肉不良をきたす現象をいう。
【0007】
近年、インキ使用量削減を目的に、絵柄を構成する網点を小さくする高精細化も進んでいる。そのため、画線部上に供給されるインキ量が減少することから乾燥性は更に高まり、以前よりもこれらの現象が発生しやすい印刷環境となっている。
【0008】
また、浸透乾燥型の印刷方式に於いては、使用される非塗工紙および微塗工紙といった低密度の用紙に対してカーボンブラックがインキビヒクルとともに用紙の内部に沈み込んでしまい印刷濃度が低下するドライダウンという現象が避けられないため、アグリゲート径の大きいカーボンブラックを選択することで抑制する必要がある。
【0009】
ガイドロール残り、後胴残りに対しては、溶剤のインキ離れを遅らせ、浸透乾燥方式の印刷においては、インキの乾燥性(セット性)を遅らせることが有用である。
【0010】
そのため、従来これらの対策として、植物油の使用、低分子量樹脂の使用、もしくは吸油量の低い顔料の使用などが施されてきたが、これらはタックの上昇、流動性の付与、ドライダウンの増加を引き起こす。
【0011】
タックの上昇は、特に近年、紙の減斤化が進む中、紙の表面強度についても劣化傾向にあるため、紙粉の呼び込みを助長し、着肉不良による紙面品質の劣化、さらには紙剥けを生じ易くなる。また、印刷機上インキが転移する際の糸引きが起こりやすくなることから紙面に転写された際の平滑性が失われ、着肉の劣化を引き起こす。さらには、印刷機上インキが転移する際に飛散するミスト量も増加する。
【0012】
特許文献1、特許文献3には着肉性向上に対し、非イオン性界面活性剤の使用による手法が記載されているが流動性コントロール、後胴残り、ガイドロール残り、ミスト耐性に対する記載はされていない。
【0013】
特許文献2には着肉性向上に対し、ロジン金属塩を用いた着肉性向上を目的とした記載がされているが流動性コントロール、後胴残り、ガイドロール残り、ミスト耐性に対する記載はされていない。
【0014】
特許文献4にはゲル状トール油グリセリドを使用による手法が記載されているが、ゲル状トール油グリセリドの過剰添加はローラーストリッピングを引き起こしやすくなることから添加量に注意が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2007-169465号公報
【特許文献2】特開2010-168416号公報
【特許文献3】特開2011-190300号公報
【特許文献4】特開2013−213112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、印刷インキに関し、更に詳しくは、新聞、チラシ等の印刷に使用される浸透乾燥型オフセット印刷用インキに関し、更に詳しくは、生産効率、印刷適性を維持しながら従来よりもガイドロール残り耐性、後胴残り耐性に優れたオフセット印刷用インキに関する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために誠意研究した結果、カーボンブラック、バインダー樹脂、植物油、環境対応型石油系溶剤、及び大豆油を原料としたヨウ素価100〜140(mg/100mg)の植物油及び再生植物油を原料とした平均分子量が30000〜150000である重合植物油を含有する浸透乾燥型オフセット印刷用インキ組成物において優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
即ち本発明は、カーボンブラック、バインダー樹脂、植物油、および、重合植物油を含んでなる浸透乾燥型オフセット印刷用インキであって、
カーボンブラックが、ジブチルフタレート(DBP)吸油量73〜140(cm3/100g)、ヨウ素吸着量30〜100(m2/g)であり、
バインダー樹脂が、ロジン変性フェノール樹脂を含み、
重合植物油が、ヨウ素価100〜140(mg/100mg)の大豆油および再生植物油から選ばれる植物油原料から得られたものであり、かつ、インキ全量に対し1〜15重量%含有され、
重合植物油の粘度が、5.0〜50.0Pa・Sであることを特徴とする浸透乾燥型オフセット印刷用インキに関するものである。
【0021】
さらに、本発明は、ロジン変性フェノール樹脂の重量平均分子量が、10,000〜300,000であることを特徴とする上記浸透乾燥型オフセット印刷用インキに関するものである。
【0022】
さらに、本発明は、さらに、石油系溶剤を含むことを特徴とする上記浸透乾燥型オフセット印刷用インキに関するものである。
【0023】
さらに、本発明は、石油系溶剤のアニリン点が、65〜110℃であることを特徴とする上記浸透乾燥型オフセット印刷用インキに関するものである。
【0024】
さらに、本発明は、上記浸透乾燥型オフセット印刷用インキを非塗工紙または微塗工紙に印刷してなる印刷物に関するものである。
【発明の効果】
【0025】
新聞、書籍、チラシ等の印刷において、本発明が提供する浸透乾燥型オフセット印刷用
インキは、生産効率を落とすことなく、印刷適性、特にガイドロール残り、後胴残りを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明で使用される重合植物油は、好ましくは、ヨウ素価が100〜140(mg/100mg)の植物油及び再生植物油に酸素を吹き込みながら加熱、撹拌することで得られる。ただし、重合反応は熱重合でもよいが、酸価重合であることが好ましい。植物油原料は100〜140(mg/100mg)である菜種油、ごま油、大豆油などの半乾性油、またはその範囲内にある再生植物油とすることで、重合反応も円滑に進行し、生成した重合植物油のヨウ素価は100(mg/100mg)以下となり、空気中での酸化進行による増粘や皮張りの発生が抑制され、ハンドリングも良好である。尚、この際、反応を円滑に進める上でヨウ素価が140(mg/100mg)以上ある亜麻仁油や桐油を全植物油原料中の1〜30重量%加えるのも有効である。
【0027】
植物油を重合させる場合、ヨウ素価が140(mg/100mg)を超える亜麻仁油や桐油、紅花油などの乾性油を酸価重合、熱重合させることが一般的であるが、重合後も多くの不飽和結合が残存し、酸化しやすく、皮張りが起こりやすい。一方でヨウ素価が100(mg/100mg)未満であるオリーブ油、落花生油などの不乾性油を原料とした場合、不飽和結合の数が少なく重合反応の進行が遅い。
【0028】
本発明における重合植物油の含有量は、インキ全量に対して、1〜15重量%、より好ましくは1〜10重量%含有されていることが望ましい。含有率がインキ全量に対して0.5%重量%よりも少ないと、本発明の効果が得られない。一方、インキ全量に対して15%重量%よりも多いとそれ以上の効果が見られないことに加え、インキ中の樹脂分の比率が極端に少なくなり印刷機上での転移不良を引き起こすため好ましくない。
【0029】
本発明で使用されるカーボンブラックは、ジブチルフタレート(DBP)吸油量73〜140(cm3/100g)、よう素吸着量30〜100(m2/g)であるものが、好ましい。印刷インキ用で使用されている非ゴム用カーボンブラック(一般にカラー用カーボンブラックと呼ばれている)だけでなく、ゴム用途で使用されるゴム用カーボンブラック(非特許文献2、3)と呼ばれるものも使用することができる。
【0030】
本発明における植物油は、植物油並びに植物油由来の化合物であり、グリセリンと脂肪酸とのトリグリセライドにおいて、少なくとも1つの脂肪酸が炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有する脂肪酸であるトリグリセライドと、それらのトリグリセライドから飽和または不飽和アルコールとのエステル化反応からなる脂肪酸モノエステルが挙げられる。
【0031】
植物油として代表的ものは、アサ実油、アマニ油、エノ油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ油、カポック油、カヤ油、カラシ油、キョウニン油、キリ油、ククイ油、クルミ油、ケシ油、ゴマ油、サフラワー油、ダイコン種油、大豆油、大風子油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ニガー油、ヌカ油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ヘントウ油、松種子油、綿実油、ヤシ油、落花生油、脱水ヒマシ油などが挙げられる。特に大豆油、ヤシ油、アマニ油、菜種油が好ましい。
本発明において、使用される植物油エステルとしては、大豆油、綿実油、アマニ油、サフラワー油、トール油、脱水ヒマシ油、カノーラ油、菜種油等の植物油由来の脂肪酸エステルが挙げられる。脂肪酸エステルとしては、モノアルキルエステル化合物が挙げられ、モノエステルを構成する脂肪酸としては、炭素数16〜20の飽和または不飽和脂肪酸が好ましく、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸等が例示できる。脂肪酸モノエステルを構成するアルコール由来のアルキル基は、炭素数1〜10のものが好ましく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、2−エチルヘキシル等のアルキル基が例示できる。これら脂肪酸モノエステルは、単独で、または2種以上を組合わせて使用でき、本発明においては、植物油成分として、植物油、脂肪酸エステルをそれぞれ単独で用いてもよく、両者を併用しても良い。溶剤の添加量としては、インキ中10〜50重量%が好ましい。
【0032】
本発明で用いられるバインダー樹脂としては、重量平均分子量10000〜300000、好ましくは20000〜100000、且つトレランスが20〜49重量%好ましくは22〜30重量%であるロジン変性フェノール樹脂であることが望ましい。
重量平均分子量が10000未満ではインキの粘弾性が低下し、300000超えるとインキの流動性、光沢が劣る。また、トレランスが20重量%未満ではインキのセット性が低下し、さらにセットオフ汚れ、ミスチング性能の劣化を招く。トレランスが49重量%を超えると、印刷機上での溶剤離脱の促進によるインキの増粘、流動性の低下、タック上昇による印刷適性の劣化を招き、さらに光沢が低下するため好ましくない。
【0033】
本発明におけるトレランスとは、試験管中に樹脂2.50gとAFソルベント5号(新日本石油(株)製)を5g入れ、適時攪拌しながら5分間で180℃に昇温し、溶解したものを25.0℃まで冷却し、攪拌しつつ0号ソルベント(新日本石油(株)製)で少量ずつ希釈していき、微濁状態を終点とした時の0号ソルベントの量から以下の式によりトレランスの値を求める。
【0034】
【数1】
【0035】
尚、本発明で使用されるバインダー樹脂としては、ロジン変性フェノール樹脂以外に、ロジン変性マレイン酸樹脂、アルキッド樹脂及び石油樹脂等は任意に単独または2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0036】
更に、上記樹脂(ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、アルキッド及び石油樹脂等)は石油系溶剤、植物油類から選ばれる少なくとも一種である溶剤と、場合によってはアルミニウムキレート化合物のようなゲル化剤を添加して、190℃程度で溶解してワニス化したものとして使用される。樹脂の添加量は印刷インキの全量に対して20%〜50重量%である。
【0037】
重量平均分子量測定には、東ソー(株)製ゲルパーメーションクロマトグラフィー(商品名 HLC−8020)および東ソー(株)製カラム(商品名 TSK−GEL)を用いた(以下、重量平均分子量は同様の方法で測定した値である)。
【0038】
本発明で使用される石油系溶剤としては、パラフィン系、ナフテン系、及びこれらの混合溶剤であり、溶剤中の芳香族炭化水素の含有量が1重量%以下が好ましい。溶剤のアニリン点は65〜110℃が好ましい。アニリン点が110℃より高い溶剤を使用すると、インキ組成中の使用樹脂との溶解性が乏しいため、インキの流動性が不十分となり、レベリング不良から光沢のない印刷物しか得られない。また、65℃より低いアニリン点の溶剤を使用したインキでは、乾燥時のインキ皮膜からの溶剤の離脱性が悪く乾燥劣化を起こしてしまう場合がある。このような非芳香族系石油溶剤としては、新日本石油(株)製AF5、AF6等がある。
【0039】
さらに、本発明の浸透乾燥型オフセット印刷用インキ組成物には、必要に応じてゲル化剤、顔料分散剤、金属ドライヤー、乾燥抑制剤、酸化防止剤、耐摩擦向上剤、裏移り防止剤、非イオン系界面活性剤、多価アルコールなどの添加剤を適宜使用することができる。
【0040】
本発明で使用する他の助剤としては、分散剤、ゲル化剤、乾燥抑制剤、酸化防止剤、耐摩擦剤(ワックス)等の添加剤を適宜用いることができる
【0041】
本発明において、印刷する基材は、浸透乾燥型である本発明のオフセット印刷用インキの目的に合致すれば何でもよいが(溶剤が浸透するような基材)、紙、特に非塗工紙または微塗工紙、あるいは更紙のような浸透乾燥するような基材が、本発明の印刷する基材としては適している。
【実施例】
【0042】
次に、実施例に基づいて本発明を説明する。ただし、本発明の範囲は、以下の実施例に何等限定されるものではない。なお、本発明において、「部」及び「%」は、特に断りのない限り、それぞれ「重量部」「重量%」を意味する。
【0043】
重量平均分子量は、東ソー(株)製ゲルパーミネイションクロマトグラフィー(HLC−8020)にて測定した。検量線はポリスチレンサンプルにより作成し、溶離液はTHF、カラムはTSKgelSuperHM−M(東ソー(株)製)を用いた。本発明において「分子量」とは重量平均分子量を示す。
【0044】
粘度は、重合植物油、ワニスについてはHAAKE製 RheoStress600を使用し、25℃にて測定した。また、インキについては、LA型粘度計(日本レオロジー機器(株)製)を使用し、25℃にて測定した。
【0045】
[重合植物油]
撹拌機、リービッヒ冷却管、温度計付4つ口フラスコに植物油100部を仕込み、エアーポンプの先に中空のガラス管を接続し、液面上部に空気を送りながら120℃において加熱・撹拌し重合植物油を得た。尚、使用した植物油、反応時間、生成した重合油の分子量、粘度は表1に纏める。
【0046】
[ロジン変性フェノール樹脂ワニス1製造例]
平均分子量200000、酸価 21.0、軟化点165℃であるロジン変性フェノール樹脂 38部、大豆油30部、非芳香族系溶剤であるAFソルベント5号(新日本石油株式会社製、アニリン点88.2度)31部を仕込み、180℃に昇温させ、同温で30分間攪拌した後放冷し、ゲル化剤としてエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド1.0部(川研ファインケミカル(株)製ALCH)を仕込み190℃で30分間攪拌してロジン変性フェノール樹脂ワニス1を得た。
【0047】
[ロジン変性フェノール樹脂ワニス2製造例]
平均分子量20000、酸価 21.6、軟化点170℃であるロジン変性フェノール樹脂 44.0部、大豆油29部、非芳香族系溶剤であるAFソルベント5号(新日本石油株式会社製、アニリン点88.2度)26部を仕込み、190℃に昇温させ、同温で30分間攪拌した後放冷し、ゲル化剤としてエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド1.0部(川研ファインケミカル(株)製ALCH)を仕込み190℃で30分間攪拌してロジン変性フェノール樹脂ワニス2を得た。
【0048】
[ギルソナイト樹脂ワニス製造例]
ギルソナイトから抽出された軟化点120〜125℃の脂肪族系炭化水素樹脂(AMERICAN GILSONITE COMPANY製ER−125)42部、大豆油58部を仕込み、140℃で1時間加熱攪拌してギルソナイト樹脂ワニスを得た。
【0049】
[インキ製造例]
得られた樹脂ワニス、表2に示したDBP吸油量、ヨウ素吸着量のカーボンブラック、ベントナイト系体質顔料(ベントン34)、大豆白絞油、溶剤(AFソルベント6号(新日本石油株式会社製、アニリン点93.6℃)、ギルソナイト樹脂ワニス、重合植物油を表2、表3の配合で三本ロールおよびミキサーを用いて混練混合し、インキ粘度を6.0Pa・sに調整して、実施例(表3)および比較例(表4)のインキを作製した。
【0050】
【表1】
【0051】
<重合植物油乾燥性の品質安定性>
重合植物油を直径3cm、円筒状のアルミ製の缶に30g取り60℃で保温した際の24時間後の表面状態を指で接触し乾燥状態を比較した。乾燥しにくいものほど品質が長く保持され良好であることを示す。
○:表面がベタ着いており、乾燥していない
×:指紋の後が残る程度若しくは、完全に固まって乾燥しておりベタ着きを感じない
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
(評価結果)
上記実施例1〜7及び比較例1〜7の浸透乾燥型オフセット印刷用インキにおける、流動性、紙剥け性、印刷適性、ガイドロール残り耐性、着肉性、ドライダウン量について評価を実施し結果を表5、表6に示した。
【0056】
【表5】
【0057】
【表6】
【0058】
<流動性の測定方法>
インキ0.5ccをガラス板上にセット後、直ちに垂直に立て10分間で流れた長さを測定する。壺垂れ耐性、レールからの吐出性能から30mm以上、60mm以下が印刷適性上最適であることを示す。
(評価基準)
〇:30mm以上、60mm以下
△:60mm以上、100mm未満
×:30mm未満、若しくは100mm以上
尚、〇及び△は印刷可能な評価。
【0059】
<紙剥け性の測定方法>
インキ2.5ccをRIテスター(株式会社明製作所製)にて新聞用更紙(20×25cm)に50rpmで展色したときの、インキの着肉及び紙向け状態を目視評価する。着肉性が良く、紙剥けがないものが優れている。
(評価基準)
○:紙剥けによる着肉不良なし。
△:紙剥けが僅かに確認され、着肉がやや劣る。
×:紙剥けが目立ち着肉が悪い。
尚、〇及び△は印刷可能な評価。
【0060】
<印刷適性試験>
下記印刷条件の下、単色ベタと網点(1〜100%の10%きざみ)印刷及び通常の文字印刷を行ない、湿し水、インキキーの操作性について評価を行った。
〇:湿し水水量、インキキーとも問題のない範囲内で印刷が可能
△:湿し水水量、インキキーのいずれ若しくは双方が通常値に比べ若干差があるが印刷 可能
×:印刷不可能
尚、〇及び△は印刷可能な評価。
【0061】
[印刷条件]
印刷機 :LITHOPIA BT2−800 NEO(三菱重工(株))
用 紙 :新聞用紙更紙:超軽量紙(42g/m2)(日本製紙(株))
(測色値:L*:83、a*:−0.25、b*:5.5)
湿し水 :NEWSKING ALKY(東洋インキ製造(株))0.5%水道水溶液
印刷速度:10万部/時
版 :CTP版(富士フィルム(株))
印刷部数:5万部
ベタ部印刷直後濃度:1.25±0.03
測色条件:グレタグマクベス社製分光光度計SpectroEye
(D50、2度視野、Status T、絶対白色基準)
【0062】
[ガイドロール残り耐性]
5万部印刷後のガイドロールの状態及び印刷物を目視評価した。
〇:ガイドロールに殆ど汚れが見られておらず、紙面への汚れはなし
△:ガイドロールに汚れが見られているが、紙面への汚れはなし
×:ガイドロールに汚れが見られており、紙面にも汚れが見られている
尚、〇及び△が印刷可能な評価。
【0063】
[着肉性]
1万部、5万部印刷時の紙面のベタ部、及び網点部の着肉性を目視評価した。
(評価基準)
○:パイリング、転移不良による着肉の劣化はなく良好。
△:パイリング、転移不良による着肉の若干の劣化が見られた。
×:パイリング、転移不良による着肉の劣化が酷かった。
尚、〇及び△が印刷可能な評価。
【0064】
[ドライダウン量]
5万部印刷時の紙面のベタ部の印刷濃度を印刷直後、24時間後に測定。その濃度差
を算出。
(評価基準)
〇:0.10未満
△:0.10以上、0.15未満
×;0.15以上
【0065】
表5、表6の結果より、流動性、紙剥け性、着肉性、印刷適性、ガイドロール残り耐性、ドライダウンについて全てのバランス良く、優れているのは実施例であることが分かった。