特許第6183420号(P6183420)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183420
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】引取装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 47/34 20060101AFI20170814BHJP
   B29C 47/20 20060101ALI20170814BHJP
   B29L 23/00 20060101ALN20170814BHJP
【FI】
   B29C47/34
   B29C47/20
   B29L23:00
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-146740(P2015-146740)
(22)【出願日】2015年7月24日
(65)【公開番号】特開2017-24331(P2017-24331A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2016年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 智雄
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−280321(JP,A)
【文献】 特開平04−259527(JP,A)
【文献】 特開2002−264195(JP,A)
【文献】 特開昭59−071844(JP,A)
【文献】 特開2006−123256(JP,A)
【文献】 米国特許第04911633(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C47/00−47/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒面を外周に有する中子と、
前記円筒面の周方向に沿って複数配置され、前記円筒面に沿った内周面を有し、管状に押し出された管状体を前記円筒面の全周において前記円筒面と前記内周面との間に挟む挟み部と、
前記挟み部を前記中子の軸方向に移動させる移動部と、
を備える引取装置。
【請求項2】
円筒面を外周に有する中子と、
前記円筒面の周方向に沿って複数配置され、前記円筒面に沿った内周面を有し、該内周面の表面粗さRaが、0.4以下とされ、管状に押し出された管状体を前記円筒面と前記内周面との間に挟む挟み部と、
前記挟み部を前記中子の軸方向に移動させる移動部と、
を備える引取装置。
【請求項3】
円筒面を外周に有する中子と、
前記円筒面に沿った内周面を有する内周面層と、前記内周面層の外周側に配置され前記内周面層を加熱する加熱層と、を有し、前記円筒面の周方向に沿って複数配置され、管状に押し出された管状体を前記円筒面と前記内周面との間に挟む挟み部と、
前記挟み部を前記中子の軸方向に移動させる移動部と、
を備える引取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、環状のスリットからチューブ状に押出された溶融樹脂を引き取るニップロールが開示されている。このニップロールは、チューブ状の溶融樹脂の周方向において、90度間隔で4組配置されている。各ニップロールは、チューブ状の溶融樹脂の内周に接触する内側ロールと、この内側ロールに対峙して支持された外側ロールとから構成されている。
【0003】
特許文献2には、筒状に押出されたシームレスチューブが外嵌する中子の外周面とで、シームレスチューブを挟んでシームレスチューブを引き取るベルトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−240060号公報
【特許文献2】特開2000−280321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
管状に押し出された管状体の内周面に接触する円筒面と、管状体の外周面に接触する平面とで、管状体を挟んで管状体を引き取る場合では、管状体の周方向において引き取り力のムラが発生する場合がある。管状体の周方向において引き取り力のムラが発生すると、管状体の周方向において残留応力のムラが生じ、管状体の平面度が低下する。
【0006】
なお、管状体の平面度とは、管状体に張力を付与した際における管状体の軸方向(幅方向)に沿った凹凸量の程度(波打ち)を示す指標である。したがって、平面度の低下とは、管状体に張力を付与した際における管状体の軸方向(幅方向)に沿った凹凸量が多い状態(波打ちが大きい状態)を意味する。
【0007】
本発明は、管状体を円筒面と平面とで挟んで引き取る場合に比べ、引き取った管状体の平面度の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、円筒面を外周に有する中子と、前記円筒面の周方向に沿って複数配置され、前記円筒面に沿った内周面を有し、管状に押し出された管状体を前記円筒面と前記内周面との間に挟む挟み部と、前記挟み部を前記中子の軸方向に移動させる移動部と、を備える。
【0009】
請求項1の発明では、複数の前記挟み部は、前記円筒面の全周において、前記管状体を前記円筒面と前記内周面との間に挟む。
【0010】
請求項2の発明では、挟み部は、内周面の表面粗さRaが、0.4以下である。
【0011】
請求項3の発明では、挟み部は、内周面を有する内周面層と、前記内周面層の外周側に配置され前記内周面層を加熱する加熱層と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1の構成によれば、管状体を円筒面と平面とで挟んで引き取る場合に比べ、引き取った管状体の平面度の低下が抑制できる。
【0013】
本発明の請求項1の構成によれば、周方向の一部で管状体を挟んで引き取る場合に比べ、引き取った管状体の平面度の低下が抑制できる。
【0014】
本発明の請求項2の構成によれば、内周面の表面粗さRaが0.4を超える場合に比べ、引き取った管状体の表面が平滑になる。
【0015】
本発明の請求項3の構成によれば、加熱層を有さない挟み部で引き取る場合に比べ、引き取った管状体の表面が平滑になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る製造装置の構成を示す側断面図である。
図2】本実施形態に係る引取装置の構成を示す斜視図である。
図3】本実施形態に係る引取装置の構成を示す平断面図である。
図4】本実施形態に係る引取アームの動作を示す動作図である。
図5】本実施形態に係る引取アームの動作を示す動作図である。
図6】本実施形態に係る引取アームの動作を示す動作図である。
図7】第一変形例に係る引取アームを適用した引取装置の構成を示す斜視図である。
図8】第二変形例に係る引取アームを適用した引取装置の構成を示す斜視図である。
図9図8に示す引取装置の構成を示す平断面図である。
図10】平面度を測定する方法を示す斜視図である。
図11】評価結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
【0018】
(製造装置10)
まず、管状ベルトを製造する製造装置10の構成を説明する。図1は、製造装置10の概略構成を示す概略図である。
【0019】
製造装置10は、図1に示されるように、管状ベルトとなる樹脂Pを管状に押し出す押出装置12と、管状に押し出された管状体の一例としての樹脂F(以下、管状樹脂Fという)を引き取る引取装置40と、を備えている。以下、押出装置12及び引取装置40の具体的な構成について説明する。
【0020】
(押出装置12)
押出装置12は、一軸押出機20と、一軸押出機20の先端部に取り付けられた口金30と、を備えている。
【0021】
一軸押出機20は、ヒータ(図示省略)を有し樹脂Pを加熱する加熱筒22と、加熱筒22に設けられ樹脂Pが投入される投入口24と、加熱筒22の内部に設けられ溶融した樹脂Pを口金30へ搬送する搬送部材としてのスクリュー26と、を備えている。
【0022】
一軸押出機20では、投入口24から加熱筒22の内部に投入された樹脂Pが、加熱筒22のヒータ(図示省略)により、樹脂Pの融解温度以上の温度(例えば150〜450℃)で加熱かつスクリュー回転による発熱で溶融しつつ、スクリュー26によって口金30へ搬送(供給)されるようになっている。
【0023】
なお、樹脂Pとしては、例えば、熱可塑性樹脂と導電剤とを含み予め混錬された樹脂が用いられる。また、一軸押出機20では、例えば、粒状に形成された樹脂P(ペレット)が、投入口24に投入されるようになっている。
【0024】
口金30は、加熱筒22から溶融状態の樹脂Pが流入するダイ32と、ダイ32の内部に配置され円筒面34Aを有するニップル34と、を有している。ダイ32とニップル34との間には、ダイ32に流入された樹脂Pを管状に押し出すための環状(円形状)の押出口36が形成されている。
【0025】
口金30では、溶融状態の樹脂Pが、加熱筒22の先端部からダイ32の内部へ流入し、一軸押出機20のスクリュー26の回転による推進力(搬送力)によって、押出口36から管状に樹脂Pが押し出されるようになっている。
【0026】
(引取装置40)
引取装置40は、図2及び図3に示されるように、口金30から管状に押し出された管状樹脂Fの内周面に接触する中子42と、中子42を支持する支持部材44と、管状樹脂Fの外周面に接触する一対の引取アーム50(挟み部の一例)と、を有している。
【0027】
中子42は、円筒状に形成され、管状樹脂Fの内周面に接触する円筒面42Aを外周に有している。中子42は、円筒面42Aが管状樹脂Fの内周面に接触することで、管状樹脂Fを冷却する機能を有している。具体的には、中子42は、例えば冷媒等が支持部材44を介して中子42の内部を流通することで(図示省略)、管状樹脂Fの温度よりも低い温度に調整され、管状樹脂Fを冷却して硬化させる。
【0028】
支持部材44は、円柱状に形成されている。この支持部材44は、図1に示されるように、押出口36の径方向内側で且つ押出口36と同軸にニップル34及びダイ32を貫通すると共に、ダイ32の上側及びニップル34の下側に突出するようにニップル34及びダイ32に固定されている。そして、支持部材44は、ニップル34の下側へ突出した部分が、中子42の内部に差し通されており、中子42を支持している。
【0029】
一対の引取アーム50は、図2及び図3に示されるように、中子42を間において対向して配置されている。各引取アーム50は、それぞれ、中子42の円筒面42Aに沿って湾曲した半円弧状の湾曲部52と、湾曲部52の外周面から径方向外側に突出するロッド54と、を有している。
【0030】
各引取アーム50の湾曲部52は、180度の範囲の円弧状とされており、各引取アーム50の湾曲部52の端面52B同士が接触することで、円形状をなす。これにより、一対の引取アーム50が、管状樹脂Fの全周において管状樹脂Fの外周面に接触する。
【0031】
引取装置40では、中子42の円筒面42Aが管状樹脂Fの内周面に接触すると共に、引取アーム50の湾曲部52の湾曲面52Aが管状樹脂Fの外周面に接触することで、管状樹脂Fを挟み込む。そして、管状樹脂Fを挟み込んだ状態で、引取アーム50が下方に移動することで管状樹脂Fを引き取る。
【0032】
また、一対の引取アーム50は、金属材料で構成されている。引取アーム50の湾曲面52A(内周面の一例)は、無負荷状態において、中子42の円筒面42Aに沿った形状を有している。すなわち、ゴム等の弾性材で構成され且つ中子42への押し付けにより中子42の円筒面42Aに沿った形状に弾性変形する引取部材(比較例)とは、引取アーム50は異なっている。
【0033】
また、各引取アーム50の湾曲面52Aは、鏡面加工がなされており、引取アーム50の湾曲面52Aの表面粗さRa(算術平均粗さ)は、0.4以下に設定されている。なお、表面粗さRa(算術平均粗さ)は、測定機(例えば、サーフコム(東京精密製))により、JIS B 0601−2001に準拠して測定される。
【0034】
さらに、中子42の直径(外径)R1と、引取アーム50の湾曲面52Aの直径(内径)R2との関係が以下の式を満たすことが望ましい。
0.02<(R2/R1−1)*100<10
【0035】
(R2/R1−1)*100の値が、0.02未満であると、管状樹脂Fを引き取った際に管状樹脂Fの膜厚が薄くなって、管状樹脂Fが破断する場合がある。
【0036】
また、(R2/R1−1)*100の値が、10を超えると、管状樹脂Fを引き取った際に管状樹脂Fの膜厚が厚くなることで、管状樹脂Fの収縮による中子42へ食いつきが大きくなりやすい。したがって、中子42の直径(外径)R1と、引取アーム50の湾曲面52Aの直径(内径)R2との関係が前述の式を満たすことで、管状樹脂Fの破断及び、管状樹脂Fの中子42への食いつきが生じにくく、管状樹脂Fが安定的に引き取られる。
【0037】
なお、一対の引取アーム50は、図1に示されるように、ロッド54に接続された駆動機構58(移動部の一例)によって駆動されて、管状樹脂Fの外周面に対して接触及び離間する接離動作と、中子42の軸方向に沿って移動する移動動作と、を行うようになっている。具体的な接離動作及び移動動作については、後述する。
【0038】
(製造装置10を用いた管状ベルトの製造方法)
まず、一軸押出機20の投入口24から加熱筒22内部へ樹脂Pを投入し、当該樹脂Pをスクリュー26で搬送しながら、加熱筒22の複数のヒータ(図示省略)により、樹脂Pの融解温度以上の温度(例えば150〜450℃)に加熱して溶融状態にする(加熱工程)。
【0039】
次に、溶融状態の樹脂Pを、加熱筒22の内部のスクリュー26の推進力により、加熱筒22からダイ32の内部を通過させて、押出口36から管状に押し出す(押出工程)。
【0040】
次に、押出口36から管状に押し出された管状樹脂Fを、図4に示されるように、中子42と一対の引取アーム50で挟むと共に、引取アーム50を下方へ移動させる。中子42によって管状樹脂Fを内周面側から冷却して硬化させると共に、管状樹脂Fに下方への張力を付与しながら管状樹脂Fを引き取る(引取工程)。
【0041】
なお、本製造方法では、上記の加熱工程、押出工程及び引取工程が、繰り返し実行され、管状樹脂Fが連続的に引き取られる。また、引取工程では、具体的には、下方へ移動した引取アーム50は、予め定められた位置で、図5に示されるように、管状樹脂Fから離間する。そして、引取アーム50は、図6に示されるように、管状樹脂Fから離間した状態で上方へ移動して、予め定められた位置で、図1に示されるように、管状樹脂Fに接触する。このように、引取アーム50は、図1図4図6に示される接離動作及び移動動作を繰り返すことで、連続的に管状樹脂Fを引き取る。
【0042】
そして、引取装置40で引き取られた管状樹脂Fを切断することで、管状体としての管状ベルトが得られる。
【0043】
(本実施形態に係る作用)
本実施形態では、中子42の円筒面42Aと、引取アーム50の湾曲面52Aとで、管状樹脂Fを挟んで引き取る。このため、管状樹脂Fを円筒面と平面とで挟んで引き取る場合に比べ、管状樹脂Fの周方向において引き取り力のムラが小さい。これにより、管状樹脂Fを円筒面と平面とで挟んで引き取る場合に比べ、管状樹脂Fの周方向において残留応力のムラが小さくなり、引き取った管状樹脂Fの平面度の低下が抑制される。
【0044】
また、中子42の円筒面42Aに沿った引取アーム50の湾曲面52Aが、管状樹脂Fの外周に押し付けられるので、管状樹脂Fの周方向にわたり、ブツ(例えば、樹脂Pの成分が変質や凝集することで生成される異物)などが管状樹脂Fの内部に埋め込まれる。これにより、ブツが表出しにくく、管状樹脂Fの表面が平滑になる。
【0045】
また、本実施形態では、中子42の全周において、中子42の円筒面42Aと、引取アーム50の湾曲面52Aとで、管状樹脂Fを挟んで引き取る。このため、中子42の周方向の一部で管状樹脂Fを挟んで引き取る場合に比べ、管状樹脂Fが周方向の各部(各位置)で均一的に引っ張られるので、引き取った管状樹脂Fの平面度の低下が抑制される。
【0046】
さらに、本実施形態では、引取アーム50の湾曲面52Aの表面粗さRaが0.4以下に設定されている。このため、引取アーム50の湾曲面52Aの表面粗さRaが0.4を超える場合に比べ、引き取った管状樹脂Fの表面が平滑になる。
【0047】
また、本実施形態では、引取アーム50が下方へ移動しながら管状樹脂Fを引き取るため、管状樹脂Fの下方への流れに引取アーム50が追従する。これにより、管状樹脂Fの表面への筋の発生が抑制される。
【0048】
(第一変形例)
一対の引取アーム50に替えて、図7に示される一対の引取アーム150を用いてもよい。
【0049】
各引取アーム150は、二層構造の湾曲部152を有している。この点で、引取アーム150は、引取アーム50と異なる。他の点では、引取アーム150は、引取アーム50と同様に構成されている。なお、図7において、引取アーム50と同様に構成されている部分については、同一の符号を付している。
【0050】
湾曲部152は、具体的には、湾曲面152A(内周面の一例)を有する湾曲面層154(内周面層の一例)と、湾曲面層154の外周側に配置され湾曲面層154を加熱する加熱層156と、を有している。
【0051】
加熱層156は、例えば、面状ヒータで構成される。加熱層156は、例えば、ロッド54に配置された配線(図示省略)を通じて電力が供給されて加熱層156が湾曲面層154を加熱する。
【0052】
この構成では、管状樹脂Fの外周面を加熱しながら、中子42の円筒面42Aと、引取アーム50の湾曲面52Aとで、管状樹脂Fが挟まれる。
【0053】
そして、管状樹脂Fの外周面が加熱により軟化した状態で、中子42の円筒面42Aに沿った引取アーム150の湾曲面152Aが管状樹脂Fの外周に押し付けられるので、管状樹脂Fの周方向にわたり、ブツなどが管状樹脂Fに埋め込まれる。したがって、加熱層156を有さない引取アームで管状樹脂Fを引き取る場合に比べ、ブツが表出しにくく、管状樹脂Fの表面が平滑になる。
【0054】
なお、湾曲面152Aの接触により、管状樹脂Fの外周面が一時的に軟化するが、管状樹脂Fは、中子42の管状樹脂Fの内周面への接触により、冷却されて硬化されていく。
【0055】
(第二変形例)
一対の引取アーム50に替えて、図8及び図9に示される一対の引取アーム250を2組用いてもよい。
【0056】
各引取アーム250は、180度未満且つ90度以上の範囲の円弧状とされた湾曲部252を有している。この点で、引取アーム250は、引取アーム50と異なる。他の点では、引取アーム250は、引取アーム50と同様に構成されている。なお、図8及び図9において、引取アーム50と同様に構成されている部分については、同一の符号を付している。
【0057】
一対の引取アーム250の湾曲部252の湾曲面252Aが管状樹脂Fに接触した際に、湾曲部252の端面252B同士は接触せず、隙間Sが形成される構成とされている。
【0058】
一対の引取アーム250は、軸方向(上下方向)にずれて2組が配置されている。また、上側の一対の引取アーム250に対して、下側の一対の引取アーム250は、周方向に90度角変位した位置に配置されている。これにより、上側の一対の引取アーム250の隙間Sの下側に、下側の一対の引取アーム250が位置している。また、下側の一対の引取アーム250の隙間Sの上側に、上側の一対の引取アーム250が位置している。
【0059】
すなわち、管状樹脂Fは、軸方向にずれた位置ではあるが、中子42の円筒面42Aにおける周方向の全周において、中子42の円筒面42Aと引取アーム250の湾曲面252Aとで挟まれる。
【0060】
このように、中子42の円筒面42Aにおける周方向の全周において、中子42の円筒面42Aと、引取アーム250の湾曲面252Aとで、管状樹脂Fを挟んで引き取る。このため、中子42の周方向の一部で管状樹脂Fを挟んで引き取る場合に比べ、管状樹脂Fが周方向の各部(各位置)で均一的に引っ張られるので、引き取った管状樹脂Fの平面度の低下が抑制される。
【0061】
また、湾曲部252の端面252B同士が接触しなくてもよいので、引取アーム250の寸法や形状の精度が、緩和される。
【0062】
(他の変形例)
本実施形態では、引取アーム50、150、250は、一対で構成されていたが、これに限られない。中子42の周方向に3つ以上配置された引取アームで構成されていてもよい。
【0063】
本実施形態では、引取アーム50が、管状樹脂Fの全周において管状樹脂Fの外周面に接触する構成であったが、管状樹脂Fの全周において、管状樹脂Fの外周面に接触しない構成であってもよい。具体的には、例えば、各引取アーム50の湾曲部52が、180度よりも若干角度が小さい範囲の円弧状として構成される。この場合では、各引取アーム50の湾曲部52の端面52B同士は接触せず、端面52Bの間に若干の隙間が形成される。
【0064】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、上記に示した変形例は、適宜、複数を組み合わせて構成してもよい。
【実施例】
【0065】
以下に、本実施形態に係る実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
<実施例1>
[樹脂ペレットAの作製]
熱可塑性樹脂としてポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂、T1881−3、東レ(株)社製)100質量部に対して、導電剤としてカーボンブラック(Printex alpha、オリオンエンジニアードカーボン社製)15質量部を配合し、溶融混練した。具体的には、溶融させた前述のPPS樹脂中に前述のカーボンブラックを配合し、二軸押出溶融混練機(二軸溶融混練押出機L/D60(パーカーコーポレーション社製))を用いて、溶融混練した。混練された溶融物を水槽中に入れて冷却固化し切断して、カーボンブラックの配合された混合樹脂ペレットAを得た。
【0067】
[管状体の製造]
一軸押出機20としての一軸溶融押出機(L/D24、溶融押出装置、三葉製作所社製)に、図1および図2に示す構成の口金30を組み込んだ押出装置12を準備する。
【0068】
前述の一軸溶融押出機の加熱温度を300℃に設定すると共に、投入口24から前述の樹脂ペレットAを投入して、口金30の押出口36から溶融樹脂を管状に押し出す。押し出された管状の管状樹脂を中子42と引取アーム50とで挟んで引き取り、その後、管状樹脂を予め定められた幅に切断して、管状ベルト100を得た。
【0069】
なお、実施例1では、中子42として、直径(外径)R1が160mmとされた中子を用いた。また、引取アーム50として、湾曲面52Aの直径(内径)R2が160.1mmとされ、幅(高さ方向長さ)400mmとされ、表面粗さRaが0.5とされた引取アームを用いた。
【0070】
中子42の直径(外径)R1と、引取アーム50の湾曲面52Aの直径(内径)R2とは、以下の関係を有する。
(R2/R1−1)*100=0.06
【0071】
<実施例2>
実施例2は、引取アーム50として、表面粗さRaが0.4とされた引取アームを用いた点を除いて、実施例1と同様とした。
【0072】
<実施例3>
実施例3は、前述の第一変形例における一対の引取アーム150を用いた点を除いて、実施例1と同様とした。引取アーム150の湾曲面層154の湾曲面152Aが300℃になるまで、加熱層156によって湾曲面層154を加熱した。
【0073】
なお、実施例3では、引取アーム150として、湾曲面152Aの直径(内径)R2が190.1mmとされ、幅(高さ方向長さ)400mmされ、表面粗さRaが0.4とされた引取アームを用いた。
【0074】
中子42の直径(外径)R1と、引取アーム50の湾曲面52Aの直径(内径)R2とは、以下の関係を有する。
(R2/R1−1)*100=0.06
【0075】
<比較例1>
比較例1では、実施例1における一対の引取アーム50に替えて、中子42を間において対向配置された一対の弾性ベルト(特許文献2におけるベルト31と同様)を用いた点を除いて、実施例1と同様とした。
【0076】
弾性ベルトは、ベルト幅200mm(中子42の直径よりも短い)、厚み10mm、周長1570mmとされており、管状樹脂Fの周方向の一部に接触する。なお、ベルト幅とは、中子42の軸方向視における円筒面42Aの接線方向に沿った長さである。
【0077】
<比較例2>
比較例2では、実施例1における一対の引取アーム50に替えて、中子42を間において対向配置された一対の弾性ゴムロール(特許文献1における外側ロール18bと同様)を用いた点を除いて、実施例1と同様とした。
【0078】
弾性ゴムロールは、ロール幅80mm(中子42の直径よりも短い)、直径50mmとされており、管状樹脂Fの周方向の一部に接触する。なお、ロール幅とは、中子42の軸方向視における円筒面42Aの接線方向に沿った長さである。
【0079】
[評価]
(管状ベルトの平面度)
図10に示されるように、2本の平行に配置されたロール502で管状ベルト100を支持し、管状ベルト100に対して張力F(F=19.6N)を作用させた状態とする。この状態で、2本のロール502間の中央502Cから距離200mmの2か所の位置502Dにおいて、ベルト幅全域に対してレーザ変位計(キーエンス社製LK−030)をベルト幅方向Xにスキャンさせる。
これにより、管状ベルト100の外周面とレーザ変位計との距離が測定され、ベルト幅方向Xにおける管状ベルト100の凹凸量の分布が得られる。管状ベルト100を周回させて、管状ベルト100における測定位置を変えることで、管状ベルト100の周方向の8か所で測定を行う。そして、得られた8か所の凹凸量の分布における最大値Maxと最小値Minの差分Δhを平面度とし、算出する。この算出の結果、以下のように、平面度をA、Bにて評価した。
A:Δh=1.5mm未満
B:Δh=1.5mm以上
なお、平面度が1.5mm以上の管状ベルトを転写ベルトとして使用した際は、画質濃淡に不良が発生した。
【0080】
(管状ベルトの表面観察)
管状ベルトの100mm×100mmの範囲において、約30μm以上の高さを有する表面凸(ブツ)の個数を目視にて計測する。この計測の結果、以下のように、A、B、Cにて評価した。
A:0個
B:1〜2個
C:2個以上
【0081】
(管状ベルト表面の幅方向(押出方向)の筋)
管状ベルトの表面を目視で観察し、筋の有無を判定する。
A:有
B:無
【0082】
(管状ベルト表面の平滑度(グロス))
グロス測定器(BYKガードナー・マイクロ−トリ−グロス)を用いて、管状ベルトの表面の60°グロスを5点測定し、その平均値を評価した。
A+:130以上
A:120以上130未満
B:100以上120未満
C:100未満
【0083】
[評価結果]
評価の結果、図11の表に示されるように、実施例1、2、3では、平面度、表面観察、幅方向の筋において、A評価となった。平滑度(グロス)では、実施例1がB評価となり、実施例2がA評価となり、実施例3がA+評価となった。すなわち、実施例1、2、3の順で平滑度(グロス)の評価が高くなった。
【0084】
一方、比較例1では、平面度、表面観察、幅方向の筋及び平滑度(グロス)が、それぞれ、B、B、B、C評価となった。比較例2では、平面度、表面観察、幅方向の筋及び平滑度(グロス)が、それぞれ、B、C、B、C評価となった。
【0085】
このように、実施例1〜3は、比較例1、2よりも、平面度、表面観察、幅方向の筋及び平滑度(グロス)において優れている結果が得られた。
【符号の説明】
【0086】
40 引取装置
42 中子
42A 円筒面
50 引取アーム(挟み部の一例)
52A 湾曲面(内周面の一例)
58 駆動機構(移動部の一例)
150 引取アーム(挟み部の一例)
152A 湾曲面(内周面の一例)
154 湾曲面層(内周面層の一例)
156 加熱層
250 引取アーム(挟み部の一例)
F 管状樹脂(管状体の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11