(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183458
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】ゲート駆動回路
(51)【国際特許分類】
H03K 17/14 20060101AFI20170814BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
H03K17/14
H03K17/687 F
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-522698(P2015-522698)
(86)(22)【出願日】2014年5月27日
(86)【国際出願番号】JP2014063921
(87)【国際公開番号】WO2014199818
(87)【国際公開日】20141218
【審査請求日】2015年11月5日
(31)【優先権主張番号】特願2013-125173(P2013-125173)
(32)【優先日】2013年6月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112003
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100145344
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和徳
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 正志
【審査官】
及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−229454(JP,A)
【文献】
特表2013−501430(JP,A)
【文献】
特開2008−103895(JP,A)
【文献】
実開平06−005221(JP,U)
【文献】
特開2010−193431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/00−17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子のゲートに一定電流を供給して該スイッチング素子をオン駆動する出力トランジスタと、
PチャネルMOS-FETとnチャネルMOS-FETとからなり、ゲート制御信号を入力して前記出力トランジスタをオン・オフ駆動するCMOS構成のプリドライバと、
定電流用トランジスタのゲート電圧を制御して該定電流用トランジスタに流れる電流を一定化する基準電流源と、
前記定電流用トランジスタのゲート電圧を前記プリドライバの動作基準電圧として印加するバッファアンプと、
を具備したゲート駆動回路であって、
前記基準電流源は、電源に一端が接続された負荷抵抗と、前記負荷抵抗の他端に接続される電圧制御用トランジスタと、前記定電流用トランジスタに接続された基準抵抗を備え、前記負荷抵抗の他端を前記動作基準電圧とし、前記定電流用トランジスタに流れる電流に応じて前記基準抵抗に生起される電圧と、予め設定された基準電圧との差電圧に応じて前記電圧制御用トランジスタを駆動し、前記基準抵抗は温度依存性を無視し得る抵抗体からなることを特徴とするゲート駆動回路。
【請求項2】
前記出力トランジスタおよび前記定電流用トランジスタは、それぞれMOS-FETからなる請求項1に記載のゲート駆動回路。
【請求項3】
前記バッファアンプを介して動作基準電圧が設定される前記プリドライバは、前記ゲート制御信号を入力して前記出力トランジスタをオン駆動した際、該出力トランジスタに前記定電流用トランジスタに流れる電流に比例した電流を流すものである請求項1に記載のゲート駆動回路。
【請求項4】
前記出力トランジスタが複数個並列に接続して設けられるとき、これらの各出力トランジスタのそれぞれに対応して前記プリドライバが複数個設けられる請求項1に記載のゲート駆動回路。
【請求項5】
前記複数のプリドライバは、個別にゲート制御信号を入力して前記各出力トランジスタをオン・オフ駆動するものである請求項4に記載のゲート駆動回路。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のゲート駆動回路において、
更に前記定電流用トランジスタのゲート電圧をスイッチ素子を介して選択的に保持し、保持した前記ゲート電圧を前記バッファアンプに印加するコンデンサを備えることを特徴とするゲート駆動回路。
【請求項7】
前記スイッチ素子は、前記プリドライバに入力される前記ゲート制御信号を受けて前記出力トランジスタのオフ動作時に前記定電流用トランジスタのゲート電圧をコンデンサに保持するものである請求項6に記載のゲート駆動回路。
【請求項8】
前記基準電流源は、前記スイッチ素子と共にオン・オフ駆動される請求項6に記載のゲート駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子をオン・オフ駆動する出力トランジスタの出力電流を、温度や電源電圧の変動に拘わることなく一定に保つことのできるゲート駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換器におけるIGBTやMOS-FET等のスイッチング素子をオン・オフ駆動するゲート駆動回路は、例えば
図6に示すように構成されている。
図6においてQ1,Q2はハーフブリッジ回路を形成したMOS-FETからなるスイッチング素子であり、1はハイサイド側のスイッチング素子Q1をオン・オフ駆動するゲート駆動回路である。尚、ローサイド側のスイッチング素子Q2をオン・オフ駆動するゲート駆動回路2も、前記ゲート駆動回路1と同様に構成される。従ってここではハイサイド側のスイッチング素子Q1を駆動するゲート駆動回路1について説明する。
【0003】
前記ゲート駆動回路1は、pチャネル型MOS-FETからなり、前記スイッチング素子Q1のゲートに一定電流を供給して該スイッチング素子Q1をオン・オフ駆動する出力トランジスタPM2を備える。更に前記ゲート駆動回路1は、前記出力トランジスタPM2にトーテムポール接続されたnチャネル型MOS-FETからなり、前記出力トランジスタPM2と相補的にオン・オフ制御される出力トランジスタNM2を備える。
【0004】
また前記ゲート駆動回路1は、pチャネル型MOS-FETからなり、前記出力トランジスタPM2との間でカレントミラー回路を構成するトランジスタPM1を備える。更に前記ゲート駆動回路1は、nチャネル型MOS-FETからなり、前記トランジスタPM1を負荷として誤差増幅器AMPの出力により電流Icontが制御される制御トランジスタNM1を備える。ちなみに前記誤差増幅器AMPは、前記制御トランジスタNM1に流れる電流Icontに応じて抵抗R1に生起される電圧と、基準電圧Vrefとの差電圧に応じて前記電流Icontを一定化する役割を担う。
【0005】
またnチャネル型MOS-FETからなり、ゲート制御信号nDRVに応じてオン・オフ駆動されるトランジスタNM3は、前記誤差増幅器AMPの出力による前記制御トランジスタNM1の駆動をオン・オフ制御する。前記制御トランジスタNM1がオン動作することにより、該制御トランジスタNM1に流れる電流Icontが前記トランジスタPM1を介して流れる。この結果、前記トランジスタPM1との間でカレントミラー回路を構成する前記出力トランジスタPM2には前記電流Icontに比例した電流が流れる。この電流が前記スイッチング素子Q1のゲートに供給されて該スイッチング素子Q1がオン駆動される。
【0006】
即ち、上記構成のゲート駆動回路1は、前記誤差増幅器AMPと前記制御トランジスタNM1とにより生成された一定の電流Icontに従って、前記トランジスタPM1を介して前記出力トランジスタPM2のオン電流を制御する。そして前記ゲート駆動回路1は、上記電流制御の下で前記スイッチング素子Q1を定電流でオン駆動する。従って温度や電源電圧が変動した場合であっても前記スイッチング素子Q1のゲート容量に対する充電時間が一定化される。この結果、前記スイッチング素子Q1のターンオン時間が一定に保たれる。
【0007】
また
図7は特許文献1に紹介されるゲート駆動回路を示している。このゲート駆動回路3は、pチャネル型MOS-FETからなり、前記スイッチング素子Q1をオン・オフ駆動する出力トランジスタ4を、pチャネル型MOS-FET5とnチャネル型MOS-FET6とからなるCMOS構成のプリドライバ7を用いてオン・オフ制御するように構成される。そして前記プリドライバ7におけるnチャネル型MOS-FET6の動作基準電圧であるソース電圧を定電圧源8にて規定することで、前記スイッチング素子Q1を一定電圧Vg1で駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−193431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで
図6に示す構成のゲート駆動回路1においては、前記誤差増幅器AMPを用いて前記出力トランジスタPM2をオン・オフ駆動する制御信号を生成している。この為、前記誤差増幅器AMPの応答遅れに起因して前記出力トランジスタPM2の制御に遅れが生じると言う問題がある。また前記ゲート駆動回路1においては、前記スイッチング素子Q1に対するゲート抵抗を変える為に、前記出力トランジスタPM2を複数個並列に設けることがある。この場合、前記各出力トランジスタPM2毎に前記トランジスタPM1,NM1等を含む制御回路部をそれぞれ設けることが必要となる。これ故、その構成が大掛かりになると言う問題を含んでいる。
【0010】
また
図7に示す構成のゲート駆動回路3においては、出力トランジスタ4をオン駆動する電圧Vg1を一定化することができる。しかし温度や電源電圧に変動がある場合、前記プリドライバ7における前記nチャネル型MOS-FET6に流れるオン電流Imが変化する。すると前記出力トランジスタ4のゲート容量に対する充電時間が変化し、この結果、該出力トランジスタ4のターンオン時間が変動すると言う欠点がある。
【0011】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、スイッチング素子をオン・オフ駆動する出力トランジスタの出力電流を、温度や電源電圧の変動に拘わることなく一定に保ち、これによって前記出力トランジスタのターンオン時間を安定化することのできる簡易な構成のゲート駆動回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した目的を達成するべく本発明に係るゲート駆動回路は、
スイッチング素子のゲートに一定電流を供給して該スイッチング素子をオン駆動する出力トランジスタと、
PチャネルMOS-FETとnチャネルMOS-FETとからなり、ゲート制御信号を入力して前記出力トランジスタをオン・オフ駆動するCMOS構成のプリドライバと、
定電流用トランジスタのゲート電圧を制御して該定電流用トランジスタに流れる電流を一定化する基準電流源と、
前記定電流用トランジスタのゲート電圧を前記プリドライバの動作基準電圧として印加するバッファアンプと
を備えたことを特徴としている。
【0013】
好ましくは前記基準電流源は、前記定電流用トランジスタに流れる電流により基準抵抗に生起される電圧と、予め設定された基準電圧との電圧差を求める誤差増幅器を備え、この誤差増幅器の出力に応じて前記定電流用トランジスタのゲート電圧をフィードバック制御して該定電流用トランジスタに流れる電流を一定化するように構成される。ちなみに前記基準抵抗は、実質的に温度依存性を無視し得る抵抗体からなる。
【0014】
また前記出力トランジスタおよび前記定電流用トランジスタは、それぞれMOS-FETからなる。そして前記バッファアンプを介して動作基準電圧が設定される前記プリドライバは、前記ゲート制御信号を入力して前記出力トランジスタをオン駆動した際、該出力トランジスタに流れる電流を、前記定電流用トランジスタに流れる電流に比例した電流とする役割を担う。
【0015】
好ましくは前記出力トランジスタが複数個並列に接続して設けられるとき、これらの各出力トランジスタのそれぞれに対応して前記プリドライバが複数個設けられる。これらの複数のプリドライバは、個別にゲート制御信号を入力して前記各出力トランジスタをオン・オフ駆動することで、前記スイッチング素子をオン・オフ駆動するゲート電流を選択的に設定する役割を担う。
【0016】
尚、上述した構成に加えて、更に前記定電流用トランジスタのゲート電圧をスイッチ素子を介して選択的に保持し、保持した前記ゲート電圧を前記バッファアンプに印加するコンデンサを備えることも望ましい。このように構成されるゲート駆動回路において、前記スイッチ素子は、前記プリドライバに入力される前記ゲート制御信号を受けて前記出力トランジスタがオフ動作したとき、前記定電流用トランジスタのゲート電圧をコンデンサに保持する役割を担う。また前記基準電流源は、前記スイッチ素子と共にオン・オフ駆動するように構成される。
【発明の効果】
【0017】
上記構成のゲート駆動回路によれば、前記基準電流源にて規定される電流に比例した電流にて前記プリドライバをオン・オフ駆動することができる。しかも前記基準電流源にて規定される電流を、温度や電源電圧の変動に拘わることなく一定に保つことができる。従って前記出力トランジスタを、温度や電源電圧の変動に拘わることなく一定の電流で駆動することができ、そのターンオン時間を常に一定に、安定に保つことが可能となる。
【0018】
この結果、本発明に係るゲート駆動回路によれば、温度や電源電圧の変動に起因する応答時間遅れの問題を招来することなく、スイッチング素子を安定に駆動することができる。しかもその構成が簡単であり、出力トランジスタを複数並列に用いる場合であっても、ゲート駆動回路の構成が大掛かりとなることはない。故に、インテリジェント・パワー・モジュールIPM等における各種スイッチング素子に対する駆動回路として、その実用的利点が多大である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係るゲート駆動回路の基本構成を示す要部概略構成図。
【
図2】動作温度の変化に対する出力トランジスタの出力電流であるソース電流の変化を示す図。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係るゲート駆動回路の構成例を示す図。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係るゲート駆動回路の構成例を示す図。
【
図5】本発明の第3の実施形態に係るゲート駆動回路の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明に係るゲート駆動回路について説明する。
【0021】
図1は本発明に係るゲート駆動回路10の基本構成を示す要部概略構成図であり、11aはpチャネル型MOS-FET;PM2からなるターンオン制御用の出力トランジスタ、11bはnチャネル型MOS-FET;NM2からなるターンオフ制御用の出力トランジスタである。これらの出力トランジスタ11a,11bは、そのドレインを相互に接続してトーテムポール回路を構成している。そして前記出力トランジスタ11a,11bは、そのドレイン電圧により前記スイッチング素子Q1のゲート電圧を制御し、これによって該スイッチング素子Q1をオン・オフ駆動する。
【0022】
また前記ゲート駆動回路10は、pチャネル型MOS-FET12aとnチャネル型MOS-FET12bとからなるCMOS構成のプリドライバ12を備える。このプリドライバ12は、ゲート制御信号DRVに応じてオン・オフ制御されて前記出力トランジスタ11aをオン・オフ駆動する役割を担う。尚、このプリドライバ12自体は、前述した
図7に示すゲート駆動回路3におけるプリドライバ7と同様なものである。
【0023】
また前記ゲート駆動回路10は、pチャネル型MOS-FET;PM3からなる定電流用トランジスタ13a、nチャネル型MOS-FET;NM3からなる電圧制御用トランジスタ13b、および誤差増幅器13cを主体として構成された基準電流源13を備える。この基準電流源13は、前記定電流用トランジスタ13aに直列接続された基準抵抗Raと、前記電圧制御用トランジスタ13bに直列接続された負荷抵抗Rbとを備える。上記基準抵抗Raは、温度変化に対する抵抗値変化のない、いわゆる温度依存性を無視し得る抵抗体からなる。
【0024】
そして前記誤差増幅器13cは、前記定電流用トランジスタ13aに流れる電流Icontに応じて前記基準抵抗Raに生起される電圧と、基準電圧Vrefとの差電圧に応じて前記電圧制御用トランジスタ13bを駆動する。この電圧制御用トランジスタ13bのドレイン電圧が前記定電流用トランジスタ13aのゲート電圧として帰還され、これによって該定電流用トランジスタ13aに流れる前記電流Icontが一定化制御される。従って前記定電流用トランジスタ13aのゲート電圧は、前記電圧制御用トランジスタ13bを介するフィードバック制御により、温度や電源電圧の変動に拘わることなく一定の値を示すことになる。
【0025】
さて本発明に係るゲート駆動回路10は、前記基準電流源13における前記定電流用トランジスタ13aのゲート電圧を、インピーダンス変換回路としてのバッファアンプ14を介して前記プリドライバ12の動作基準電圧として印加することを特徴としている。具体的には前記定電流用トランジスタ13aのゲート電圧は、前記バッファアンプ14を介して前記プリドライバ12のnチャネル型MOS-FET12bのソース電圧として印加される。
【0026】
すると前記定電流用トランジスタ13aのゲート電圧が、前述したように温度や電源電圧の変動に拘わらず一定に保たれるので、前記nチャネル型MOS-FET12bの動作基準電圧であるソース電圧もまた、温度や電源電圧の変動に拘わらず一定に保たれる。即ち、前記nチャネル型MOS-FET12bのソース電圧は、前記バッファアンプ14を介して前記定電流用トランジスタ13aのゲート電圧により支配される。これ故、前記プリドライバ12は、前記バッファアンプ14を介して前記基準電流源13により間接的にカレントミラー制御される。従って前記プリドライバ12の出力をゲートに受けてオン・オフ動作する前記出力トランジスタ11aには、そのオン動作時に前記電流Icontに比例した電流が流れることになる。
【0027】
この際、前記出力トランジスタ11aは、前記プリドライバ12により常に一定の電圧によりオン駆動される。故に出力トランジスタ11aのゲート容量に対する充電時間も常に一定となる。従って前記出力トランジスタ11aのターンオン時間を安定化し、温度や電源電圧の変動に拘わらず一定に保つことが可能となる。そして前記スイッチング素子Q1を、温度や電源電圧変動に拘わることなく、常に安定に一定電流でオン駆動することが可能となる。
【0028】
図2は上述した如く構成されたゲート駆動回路10における前記出力トランジスタ11aの出力電流であるソース電流の温度に対する変化特性を示している。
図2に示すように[−50℃〜125℃]の温度範囲において、電源電圧が12Vの場合には、その最大電流値は[523.1mA]であり、最小電流値は[520.1mA]である。また電源電圧が16Vの場合には、その最大電流値は[522.5mA]であり、最小電流値は[519.7mA]である。そして電源電圧が24Vの場合には、その最大電流値は[521.6mA]であり、最小電流値は[518.8mA]である。
【0029】
このことから電源電圧が12Vから24Vの範囲で変化しても、前記ソース電流の変動幅は最大で[4.3mA]に抑えられており、その変動率が1%未満であることが確認できた。即ち、上述した如く構成されたゲート駆動回路10によれば、スイッチング素子Q1の駆動に供される出力電流を一定化し、温度や電源電圧変動に拘わることなく常に安定に保ち得ることが確認できた。
【0030】
次に本発明の具体的な実施形態について説明する。
【0031】
図3は第1の実施形態に係るゲート駆動回路10aの構成例を示している。このゲート駆動回路10aは、前記出力トランジスタ11aに対する駆動回路部として前述した
図1に示すゲート駆動回路10と同じ構成の駆動回路部を有する。またゲート駆動回路10aは、前記出力トランジスタ11aに対して直列にトーテムポール接続された前記出力トランジスタ11bに対する駆動回路部として、ターンオフ回路(TOFF回路と略記する)15を備える。このターンオフ回路15は前記ゲート制御信号DRVを入力して前記出力トランジスタ11bを、前記出力トランジスタ11aと相補的にオン・オフ駆動する役割を担う。
【0032】
従って前記ゲート制御信号DRVが[H]レベルのとき、前記出力トランジスタ11aは、ゲート電位が前記動作基準電圧に設定されてオン動作し、これに相反して前記出力トランジスタ11bがオフ動作する。そして前記出力トランジスタ11aを介して前記スイッチング素子Q1のゲートに電流Icont1が供給されて該スイッチング素子Q1がターンオンする。また前記ゲート制御信号DRVが[L]レベルのときには、前記出力トランジスタ11aがオフ動作し、前記出力トランジスタ11bがオン動作して、前記スイッチング素子Q1がターンオフする。
【0033】
ちなみに前記ゲート駆動回路10aは、IGBTからなる2つのスイッチング素子Q1,Q2を直列に接続して構成されたハーフブリッジ回路におけるハイサイド側の前記スイッチング素子Q1のオン・オフ駆動に用いられる。また前記ハーフブリッジ回路におけるローサイド側の前記スイッチング素子Q2は、前記ゲート駆動回路10aに並列に設けられたゲート駆動回路20aによりオン・オフ駆動される。このゲート駆動回路20aは、前記ゲート駆動回路10aと同様に構成されるものであり、その説明については省略する。
【0034】
尚、前記ハーフブリッジ回路は、直流高電圧HVをスイッチングして該ハーフブリッジ回路の中点である出力端に接続された負荷RLに交流電力供給する役割を担う。ここでハイサイド側の前記ゲート駆動回路10aは、前記ハーフブリッジ回路の中点電位VSを基準電位として、所定の電源電圧VBを受けて動作するように構成される。またローサイド側の前記ゲート駆動回路20aは、接地電位GNDを基準電位として、所定の電源電圧VCCを受けて動作するように構成される。この構成については、ハーフブリッジ回路を備えて構成される従来一般的な電力変換器と同様である。そして前記各ゲート駆動回路10a,20aは、前記スイッチング素子Q1,Q2が同時にオン状態とならないようにタイミング制御されたゲート制御信号HDRV,LDRVをそれぞれ入力して動作する。
【0035】
このように構成されたゲート駆動回路10a,20aによれば、前記ゲート制御信号HDRV,LDRVに応じて前記ハーフブリッジ回路における前記スイッチング素子Q1,Q2がそれぞれオン・オフ駆動される。この際、前記各スイッチング素子Q1,Q2をそれぞれ駆動する前記ゲート駆動回路10a,20aの各出力電流は、前述した如く一定化される。即ち、前記プリドライバ12における前記nチャネル型MOS-FET12bの動作基準電圧であるソース電圧は、前記定電流用トランジスタ13aのゲート電圧により規定されるので、温度や電源電圧VB,VCCの変動に拘わることなく常に一定に保たれている。
【0036】
従って前記ゲート制御信号DRV(HDRV,LDRV)に対するスイッチとして作用する前記プリドライバ12は、前記nチャネル型MOS-FET12bのソース電圧を基準電位としてオン・オフ動作して前記出力トランジスタ11aをオン・オフ駆動する。この結果、前記出力トランジスタ11aは常に一定のゲート電圧を受けてオン駆動される。従って前記出力トランジスタ11aのゲート容量に対する充電時間も常に一定となり、そのターンオン時間が変動することはない。しかも出力トランジスタ11aのオン動作時における出力電流である該出力トランジスタ11aのソース電流も常に一定に保たれる。
【0037】
ちなみに前記定電流用トランジスタ13aと前記出力トランジスタ11aのチャネル長Lが等しく、そのチャネル幅Wが[1:m]であるとする。この場合、前記出力トランジスタ11aには前記定電流用トランジスタ13aに流れる一定化された電流Icontのm倍(例えば100倍)の電流が流れることになる。従って、例えば前記基準電流源13において規定する一定電流Icontが1mAであるとしても、前記出力トランジスタ11aから[m×Icont]の出力電流、例えば100mAの出力電流を得ることができる。故に前記スイッチング素子Q1を十分に余裕を持ってターンオンさせることが可能である。
【0038】
図4は第2の実施形態に係るゲート駆動回路10bの構成例を示している。この実施形態においても、ローサイド側のゲート駆動回路20bはハイサイド側のゲート駆動回路10bと同様に構成される。
【0039】
ここで前記ゲート駆動回路10bは、前記出力トランジスタ11aに対するゲート抵抗を変えてその出力電流を変更設定し得るように、pチャネル型MOS-FET;PM2,PM2'からなる2つの出力トランジスタ11a,11a'を並列に設けて構成される。尚、ここでは2つの出力トランジスタ11a,11a'を並列に設ける例を示すが、3個以上の出力トランジスタ11aを並列に設けることも勿論可能である。
【0040】
この場合、前記2つの出力トランジスタ11a,11a'のそれぞれに対応させて2つのプリドライバ12,12'が設けられる。またこれらのプリドライバ12,12'におけるnチャネル型MOS-FET12b,12b'の各ソース電圧を、前記バッファアンプ14を介して前記定電流用トランジスタ13aのゲート電圧によりそれぞれ規定する。そして主ゲート制御信号HDRV1にて前記プリドライバ12をオン・オフ動作させ、また補助ゲート制御信号HDRV2にて前記プリドライバ12'をオン・オフ動作させるように構成される。
【0041】
このように構成されたゲート駆動回路10bによれば、並列に設けられた2つの出力トランジスタ11a,11a'のそれぞれに対応させてプリドライバ12,12'を設けるだけで良く、前述した第1の実施形態と同様な効果が奏せられる。しかも前記プリドライバ12,12'自体、pチャネル型MOS-FET12a,12a'とnチャネル型MOS-FET12b,12b'とからなるCMOS構成の回路として簡素に実現することができる。従って前述した
図6に示した従来のゲート駆動回路の場合のように、その構成が大掛かりとなることはない等の効果が奏せられる。
【0042】
ところでゲート駆動回路を次のように構成してその省電力化を図ることも可能である。
図5は省電力化を図った第3の実施形態に係るゲート駆動回路10cの構成例を示している。この実施形態においても、ローサイド側のゲート駆動回路20cはハイサイド側のゲート駆動回路10cと同様に構成される。
【0043】
このゲート駆動回路10cは、前記基準電流源13と前記バッファアンプ14との間にスイッチ素子SW1,SW2を介してコンデンサCを設けると共に、前記基準電流源13の基準抵抗Raに対してスイッチ素子SW3を設けたことを特徴としている。これらの各スイッチ素子SW1,SW2,SW3は、例えばnチャネル型MOS-FETからなる。そして前記スイッチ素子SW2を前記ゲート制御信号HDRVにてオン・オフ駆動し、また前記スイッチ素子SW1,SW3については、ノット回路17を介して前記ゲート制御信号HDRVを論理反転した信号ZHDRVにてオン・オフ駆動するように構成したことを特徴としている。
【0044】
具体的には前記コンデンサCは、第1のスイッチ素子SW1を介して前記定電流用トランジスタ13aのゲートに接続され、前記第1のスイッチ素子SW1を介して該定電流用トランジスタ13aのゲート電圧により充電されて該ゲート電圧を保持するように設けられる。そして前記コンデンサCに充電されて保持された電圧は、第2のスイッチ素子SW2を介して前記バッファアンプ14に入力されるように構成される。また第3のスイッチ素子SW3は、前記第1のスイッチ素子SW1と同時にオン動作して前記定電流用トランジスタ13aに電流Icontを流す役割を担う。
【0045】
かくしてこのように構成されたゲート駆動回路10c,20cにおいては、前記基準電流源13は前記ゲート制御信号HDRVが[L]レベルのときにだけ動作する。そしてそのときに前記定電流用トランジスタ13aに流れる電流Icontに応じて、該定電流用トランジスタ13aのゲート電圧がスイッチ素子SW1を介して前記コンデンサCに保持される。そして前記ゲート制御信号HDRVが[H]レベルに反転すると、前記基準電流源13の動作が停止し、前記コンデンサCに保持された電圧が前記スイッチ素子SW
2を介して前記バッファアンプ14に与えられる。
【0046】
この結果、前記ゲート制御信号HDRVが[H]レベルとなって前記プリドライバ12の前記nチャネル型MOS-FET12bがオン動作するとき、該nチャネル型MOS-FET12bの動作基準電圧であるソース電位が前記コンデンサCに保持された電圧、ひいては前記定電流用トランジスタ13aのゲート電圧により規定されることになる。従って上記構成のゲート駆動回路10c,20cにおいても、先の各実施形態と同様な効果が奏せられる。しかもこのゲート駆動回路10c,20cによれば、前記ゲート制御信号HDRVに応じて前記基準電流源13による一定電流Icontの生成動作が停止するので、前述したゲート駆動回路10a,10b,20a,20bにおける前記基準電流源13に比較して、その消費電力を略半分に低減することができる。故に前述した実施形態に比較してその省電力効果が大きいと言う利点がある。
【0047】
尚、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。例えば第3の実施形態において前記バッファアンプ14の入力インピーダンスが高く、前記コンデンサCの自然放電が無視できるような場合には、該コンデンサCに保持された電圧を前記ゲート制御信号HDRVが[H]レベルに反転する期間に亘って保持することができる。従ってこのような場合には、前記スイッチ素子SW2を省略することが可能である。
【0048】
また前述した各ゲート駆動回路10,20において、前記出力トランジスタ11aと前記スイッチング素子Q1のゲートとの間に抵抗を介挿し、この抵抗によって前記スイッチング素子Q1のターンオン時間を調整する場合においても、本発明を適用可能なことは説明するまでもない。更には前記基準電流源13にて生成する一定電流Icontの大きさや、前記定電流用トランジスタ13aおよび前記出力トランジスタ11aに流れる電流の比についても、該ゲート駆動回路10が駆動対象とする前記スイッチング素子Q1の仕様に応じて設定すれば十分である。また前記スイッチング素子Q1として高耐圧のMOS-FETを用いる場合でも、本発明を同様に適用可能なことは言うまでもない。その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0049】
10,10a,10b,10c ゲート駆動回路(ハイサイド側)
11a 出力トランジスタ(pチャネル型MOS-FET;PM2)
11b 出力トランジスタ(nチャネル型MOS-FET;NM2)
12,12' プリドライバ
12a,12a' pチャネル型MOS-FET
12b,12b' nチャネル型MOS-FET
13 基準電流源
13a 定電流用トランジスタ(pチャネル型MOS-FET;PM3)
13b 電圧制御用トランジスタ(nチャネル型MOS-FET;NM3)
13c 誤差増幅器
14 バッファアンプ
15 ターンオフ回路
20,20a,20b,20c ゲート駆動回路(ローサイド側)
Q1,Q2 スイッチング素子
Ra 基準抵抗
Rb 負荷抵抗
SW1,SW2,SW3 スイッチ素子(nチャネル型MOS-FET)
C コンデンサ