(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記整合回路は、前記第1外部接続端子と前記第1シリーズ接続端子との間に直列接続されるか、もしくは、前記第2外部接続端子と前記第2シリーズ接続端子との間に直列接続される、シリーズ接続型の整合回路である、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の高周波モジュール。
前記整合回路は、前記第1外部接続端子と前記第1シリーズ接続端子とを接続する接続ラインとグランドとの間に接続されるか、もしくは、前記第2外部接続端子と前記第2シリーズ接続端子とを接続する接続ラインとグランドとの間に接続される、シャント接続型の整合回路である、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の高周波モジュール。
前記フィルタ基板上に形成された前記接続ラインと前記インダクタとが最も近接する部分の距離は、前記実装型回路素子と前記インダクタとが最も近接する部分の距離よりも遠い、請求項8に記載の高周波モジュール。
前記フィルタ基板上に形成された前記接続ラインと前記実装型回路素子とが最も近接する部分の距離は、前記実装型回路素子と前記インダクタとが最も近接する部分の距離よりも遠い、請求項8または請求項9に記載の高周波モジュール。
前記インダクタは前記フィルタ基板上に形成された前記接続ラインで発生する磁界に直交するような磁界が発生するような形状である、請求項8乃至請求項10のいずれかに記載の高周波モジュール。
前記インダクタは、前記フィルタ基板において前記接続ラインが最も近接する辺とは異なる前記フィルタ基板の所定の辺に近接して配置される、請求項8乃至請求項11のいずれかに記載の高周波モジュール。
前記インダクタは前記フィルタ基板上に形成された前記接続ラインで発生する磁界に直交するような磁界が発生するような形状である、請求項13に記載の高周波モジュール。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の構成では、主たるフィルタ機能を有するSAWフィルタ群からなる回路部とは別に、減衰特性を改善するためだけに、インダクタもしくはインダクタとキャパシタの直列回路からなる補正回路を設けなければならない。
【0007】
したがって、フィルタ回路の構成要素が多くなり、フィルタ回路が大型化してしまい、小型化が要求される現在の携帯端末等には不向きである。
【0008】
本発明の目的は、通過帯域外の減衰特性が優れた小型のフィルタ回路を備える高周波モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、第1外部接続端子と、第2外部接続端子と、第1外部接続端子と第2外部接続端子との間に接続されたフィルタ部と、第1外部接続端子もしくは第2外部接続端子の少なくとも一方とフィルタ部との間に接続された整合回路と、グランドとフィルタ部との間に接続されたインダクタと、を備えた高周波モジュールに関するものであり、次の特徴を有する。
【0010】
フィルタ部は、第1外部接続端子に接続する第1シリーズ接続端子と、第2外部接続端子に接続する第2シリーズ接続端子と、第1シリーズ接続端子と第2シリーズ接続端子との間に複数の接続ラインにより直列接続された複数のシリーズ接続型のフィルタ素子と、を備える。フィルタ部は、インダクタを介してグランドに接続するとともに、前記接続ラインの1つに接続するシャント接続端子を備える。フィルタ部は、シャント接続端子が接続する前記接続ラインと、シャント接続端子との間に接続されるシャント接続型のフィルタ素子を備える。
インダクタを構成する導体パターンと整合回路を構成する導体パターンとの間には、高周波モジュールを構成する他の回路素子が配置されていない。インダクタと整合回路とが誘導性結合もしくは容量性結合されている。
【0011】
この構成では、高周波信号が複数のフィルタ素子を伝搬する主伝搬経路とは別に、グランドとフィルタ部との間に接続されたインダクタと、整合回路とによって生じる誘導性結合または容量性結合の経路を介する副伝搬経路が形成される。副伝搬経路は、誘導性結合または容量性結合の結合度によって主伝搬経路とは異なる振幅特性および位相特性となり、副伝搬経路の振幅特性および位相特性を調整することで、高周波モジュールとしての伝送特性を調整することができる。これにより、別途インダクタやキャパシタを設けなくても、高周波モジュールの伝送特性を調整し、例えば減衰特性を改善できる。
【0012】
また、この発明の高周波モジュールは、次の構成であることが好ましい。互いに誘導性結合もしくは容量性結合するインダクタと整合回路とは、フィルタ部の通過帯域外のインピーダンスが変化するように誘導性結合もしくは容量性結合されている。
【0013】
この構成に示すように、結合態様や結合度を適宜調整することで、通過帯域の特性を変化させることなく、通過帯以外の特性すなわち減衰特性を変化させることができる。
【0014】
また、この発明の高周波モジュールは、次の構成であることが好ましい。互いに誘導性結合もしくは容量性結合するインダクタと整合回路とは、フィルタ部の通過帯域外の減衰極周波数が変化するように誘導性結合もしくは容量性結合されている。
【0015】
この構成では、減衰特性の調整態様として、減衰極周波数が調整される。
【0016】
また、この発明の高周波モジュールでは、整合回路は、第1外部接続端子と第1シリーズ接続端子との間に直列接続されるか、もしくは、第2外部接続端子と第2シリーズ接続端子との間に直列接続される、シリーズ接続型の整合回路であってもよい。
【0017】
また、この発明の高周波モジュールでは、整合回路は、第1外部接続端子と第1シリーズ接続端子とを接続する接続ラインとグランドとの間に接続されるか、もしくは、第2外部接続端子と第2シリーズ接続端子とを接続する接続ラインとグランドとの間に接続される、シャント接続型の整合回路であってもよい。
【0018】
これらの構成では、整合回路の具体的な接続態様を示している。これらの接続態様を適宜決定することで、フィルタ部と外部とのインピーダンス整合を適切に行いながら、上述の減衰特性の調整も適切に行える。
【0019】
また、この発明の高周波モジュールでは、次の構成であってもよい。フィルタ部は、第3端子と、第2のフィルタ部とを備える。第2のフィルタ部は、第1シリーズ接続端子および第1シリーズ接続端子に接続するフィルタ素子を接続する接続ラインと、第3端子との間に接続されている。
【0020】
この構成では、第1シリーズ接続端子を共通端子とし、第2シリーズ接続端子及び第3端子を個別端子とする合成分波器(デュプレクサ等)を実現できる。
【0021】
また、この発明の高周波モジュールでは、次の構成であってもよい。高周波モジュールは、フィルタ部を構成するIDT電極が第1主面に形成された平板状のフィルタ基板と、フィルタ基板の第1主面に対して間隔を空けて対向する平板状のカバー層と、第1主面から突出し、カバー層を貫通する形状の接続電極と、整合回路が実装または形成された積層基板と、を備える。フィルタ基板は、第1主面側が積層基板の実装面に向くように配置されている。フィルタ基板は、接続電極を介して積層基板に接続されている。
【0022】
この構成では、WLP(Wafer Level Package)からなるフィルタ部と積層基板とで高周波モジュールを実現できる。これにより、高周波モジュールを小型化できる。
【0023】
また、この発明の高周波モジュールでは、次の構成であってもよい。整合回路は、積層基板の実装面に実装される実装型回路素子を含んでいる。インダクタは積層基板の実装面または内部に実装または形成されている。実装型回路素子とインダクタとは近接して配置されている。
【0024】
この構成では、整合回路が実装型回路素子の場合におけるWLPを用いた高周波モジュールの具体的な構成例を示している。また、インダクタの具体的な構成例を示している。この構成により、整合回路とインダクタとの結合を確実に実現できる。
【0025】
また、この発明の高周波モジュールでは、フィルタ基板上に形成された接続ラインとインダクタとが最も近接する部分の距離は、実装型回路素子とインダクタとが最も近接する部分の距離よりも遠いことが好ましい。
【0026】
また、フィルタ基板上に形成された接続ラインと実装型回路素子とが最も近接する部分の距離は、実装型回路素子とインダクタとが最も近接する部分の距離よりも遠いことが好ましい。
【0027】
これらの構成では、接続ラインとインダクタとの間の誘導性結合を小さくすることができ、所望の減衰特性を得ることができる。
【0028】
また、この発明の高周波モジュールでは、インダクタはフィルタ基板上に形成された接続ラインで発生する磁界に直交するような磁界が発生するような形状でもよい。
【0029】
この構成では、接続ラインとインダクタとの間の誘導性結合を抑制することができる。
【0030】
また、この発明の高周波モジュールでは、インダクタは、フィルタ基板において接続ラインが最も近接する辺とは異なるフィルタ基板の所定の辺に近接して配置されてもよい。
【0031】
この構成では、接続ラインとインダクタとを離間して配置できるので、所望の減衰特性が得られる。
【0032】
また、この発明の高周波モジュールでは、次の構成であってもよい。整合回路は、積層基板の実装面に実装される実装型回路素子を含んでいる。インダクタはカバー層の内部に形成されている。実装型回路素子とインダクタとは近接して配置されている。
【0033】
この構成では、整合回路が実装型回路素子の場合におけるWLPを用いた高周波モジュールの具体的な構成例を示している。また、インダクタの具体的な構成例を示している。この構成により、整合回路とインダクタとの結合を確実に実現できる。
【0034】
また、この発明の高周波モジュールでは、次の構成であることが好ましい。整合回路は、直方体形状の筐体と、筐体内に形成され、平面視して略長方形の外周形からなるスパイラル導体と、を備える。整合回路は、筐体の長辺がインダクタに近接するように、配置されている。
【0035】
この構成では、整合回路とインダクタとの結合を得やすく、所望とする結合量への調整も容易になる。
【0036】
また、この発明の高周波モジュールでは、次の構成であってもよい。高周波モジュールは、フィルタ部を構成するIDT電極が第1主面に形成された平板状のフィルタ基板と、フィルタ基板の第1主面側に配置され、フィルタ基板の第1主面側が実装された平板状のフィルタ実装用基板と、を備える。整合回路は、フィルタ実装用基板の実装面に実装または形成されている。
【0037】
この構成では、高周波モジュールをCSP(Chip Size Package)で実現する場合を示している。
【発明の効果】
【0038】
この発明によれば、優れた通過帯域外の減衰特性を備えた小型のフィルタ回路を備える高周波モジュールを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の実施形態に係る高周波モジュールについて、図を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態に係る高周波モジュールの第1回路例を示す回路ブロック図である。
図2は本発明の実施形態に係る高周波モジュールの第2回路例を示す回路ブロック図である。
図3は本発明の実施形態に係る高周波モジュールの第3回路例を示す回路ブロック図である。
図4は本発明の実施形態に係る高周波モジュールの第4回路例を示す回路ブロック図である。なお、
図1〜
図4では、図を視認し易くするため、誘導性結合もしくは容量性結合の代表例を示している。
図5(A)、
図5(B)、
図5(C)、
図5(D)は第1外部接続端子側の整合回路の具体例を示す回路図である。
図5(E)、
図5(F)、
図5(G)、
図5(H)は第2外部接続端子側の整合回路の具体例を示す回路図である。
【0041】
まず、
図1から
図4にそれぞれ示す高周波モジュール11,12,13,14に対して共通な回路構成について説明する。
【0042】
高周波モジュール11,12,13,14は、第1外部接続端子P1、第2外部接続端子P2、フィルタ部20を備える。フィルタ部20は、第1外部接続端子P1と第2外部接続端子P2との間に接続されている。
【0043】
フィルタ部20は、第1シリーズ接続端子P21、第2シリーズ接続端子P22、第1シャント接続端子P231,P232、第2シャント接続端子P24を備える。第1シリーズ接続端子P21は、後述するシリーズ接続型の整合回路もしくはシャント接続型の整合回路を介して第1外部接続端子P1に接続される。第2シリーズ接続端子P22は、後述するシリーズ接続型の整合回路もしくはシャント接続型の整合回路を介して第2外部接続端子P2に接続される。
【0044】
第1シャント接続端子P231は、インダクタ50を介して、グランドに接続されている。第1シャント接続端子P232は、インダクタ51を介して、グランドに接続されている。インダクタ50,51は本発明の「インダクタ」に相当する。第2シャント接続端子P24は、インダクタ60を介して、グランドに接続されている。
【0045】
フィルタ部20は、複数のSAW共振子201,202,203,204,205,206,207,208(以下、複数のSAW共振子をまとめて説明する場合には単純に複数のSAW共振子201−208と称する)を備える。これらSAW共振子が、本発明の「シリーズ接続型のフィルタ素子」に相当する。また、複数のSAW共振子211,212,213,214を備える。SAW共振子211,214が、本発明の「シャント接続型のフィルタ素子」に相当する。
【0046】
複数のSAW共振子201−208,211,212,213,214は、それぞれに共振周波数を有し、それぞれ個別に帯域通過特性を有する帯域通過フィルタ(BPF)として機能する。複数のSAW共振子201−208は、第1シリーズ接続端子P21と第2シリーズ接続端子P22との間に、複数の接続ラインにより直列接続されている。
【0047】
SAW共振子211は、SAW共振子202,203を接続する接続ラインと第1シャント接続端子P231との間に接続されている。SAW共振子214は、SAW共振子204,205を接続する接続ラインと第1シャント接続端子P232との間に接続されている。
【0048】
SAW共振子212は、SAW共振子206,207を接続する接続ラインと第2シャント接続端子P24との間に接続されている。SAW共振子213は、SAW共振子208と第2シリーズ接続端子P22とを接続する接続ラインと、第2シャント接続端子P24との間に接続されている。すなわち、第2シャント接続端子P24は、SAW共振子212,213に対する共通の端子であり、これらのSAW共振子212,213の一方端をまとめてグランドに接続する。
【0049】
フィルタ部20は、このような構成により所謂ラダー接続型フィルタを構成し、SAW共振子201−208,211,212,213,214の帯域通過特性および減衰特性を組み合わせることで、フィルタ部20としての所望の帯域通過特性および通過帯域外の減衰特性を実現している。なお、SAW共振子の数や配置は、通過させたい信号の周波数帯域および通過帯域外における所望の減衰特性を得るために適宜変更しても構わない。
【0050】
このような高周波モジュール11,12,13,14の共通回路構成に対して、各高周波モジュールは、具体的に次に示すような回路構成からなる。
【0051】
(第1回路例)
図1に示す高周波モジュール11は、シリーズ接続型の整合回路41,42を備える。なお、整合回路41,42の一方は、省略しても構わない。
【0052】
整合回路41は、フィルタ部20の第1シリーズ接続端子P21と第1外部接続端子P1との間に接続されている。整合回路41は、具体的には、
図5(A)に示す第1シリーズ接続端子P21と第1外部接続端子P1との間に直列接続されたインダクタ41Lであったり、
図5(B)に示す第1シリーズ接続端子P21と第1外部接続端子P1との間に直列接続されたキャパシタ41Cである。整合回路41の素子値(インダクタンスまたはキャパシタンス)は、第1外部接続端子P1側に接続される回路とフィルタ部20とのインピーダンス整合を実現する素子値に設定されている。
【0053】
整合回路42は、フィルタ部20の第2シリーズ接続端子P22と第2外部接続端子P2との間に接続されている。整合回路42は、具体的には、
図5(E)に示す第2シリーズ接続端子P22と第2外部接続端子P2との間に直列接続されたインダクタ42Lであったり、
図5(F)に示す第2シリーズ接続端子P22と第2外部接続端子P2との間に直列接続されたキャパシタ42Cである。整合回路42の素子値(インダクタンスまたはキャパシタンス)は、第2外部接続端子P2側に接続される回路とフィルタ部20とのインピーダンス整合を実現する素子値に設定されている。
【0054】
さらに、整合回路41,42の少なくとも一方は、インダクタ50,51の少なくとも一方に対して誘導性結合しているか、または、インダクタ50,51を構成する各導体の少なくとも一部と容量性結合している。結合している整合回路がインダクタであれば、この整合回路は、インダクタ50,51の少なくとも一方と誘導性結合、または、インダクタ50,51を構成する各導体の少なくとも一部と容量性結合している。結合している整合回路がキャパシタであれば、この整合回路は、インダクタ50,51を構成する各導体の少なくとも一部と容量性結合している。
【0055】
例えば、整合回路41がインダクタ41Lであれば、インダクタ41Lは、インダクタ50,51の少なくとも一方と誘導性結合、または、インダクタ50,51を構成する各導体の少なくとも一部と容量性結合している。整合回路41がキャパシタ41Cであれば、キャパシタ41Cは、インダクタ50,51を構成する各導体の少なくとも一部と容量性結合している。
【0056】
また、例えば、整合回路42がインダクタ42Lであれば、インダクタ42Lは、インダクタ50,51の少なくとも一方と誘導性結合、または、インダクタ50,51を構成する各導体の少なくとも一部と容量性結合している。整合回路42がキャパシタ42Cであれば、キャパシタ42Cは、インダクタ50,51を構成する各導体の少なくとも一部と容量性結合している。
【0057】
このような構成とすることで、結合するインダクタと整合回路とは、高周波的に接続される。例えば、整合回路41がインダクタ41Lであり、インダクタ41Lとインダクタ51とが誘導性結合した場合(
図1参照)、インダクタ41L(整合回路41)とインダクタ51との間に相互インダクタンスを有する誘導性結合回路が構成される。これにより、高周波信号は、第1外部接続端子P1と第2外部接続端子P2との間で、フィルタ部20を伝搬経路とする主伝搬経路のみで伝搬されず、高周波信号の一部がインダクタ41L(整合回路41)、誘導性結合回路およびインダクタ51を伝搬経路とする副伝搬経路にも伝搬される。
【0058】
これにより、高周波モジュール11としては、主伝搬経路の伝送特性と副伝搬経路の伝送特性とが合成された合成伝送特性となる。
【0059】
ここで、結合する整合回路とインダクタとの結合態様および結合度を調整することで、副伝搬経路を伝搬する高周波信号の振幅および位相を調整することができる。言い換えれば、副伝搬経路の伝送特性を調整することができる。伝送特性とは、例えば減衰特性(振幅特性)や位相特性である。
【0060】
さらに、この結合態様および結合度を調整することで、高周波モジュール11として通過させたい高周波信号(所望の高周波信号)の周波数帯域の伝送特性に殆ど影響を与えることなく、通過帯域外の減衰特性にのみ副伝搬経路を設置したことによる影響を与えることができる。
【0061】
そして、このように副伝搬経路の伝送特性を調整することで、高周波モジュール11としての伝送特性を調整できる。例えば、後述するように、通過帯域外の減衰特性を調整することができる。
【0062】
この際、従来構成のような高周波フィルタの伝送特性を調整するためのインダクタやキャパシタを別途必要としないので、所望の減衰特性を有する高周波フィルタを簡素な構成で実現できる。これにより、高周波フィルタを小型に形成することができる。
【0063】
また、上述の結合による相互誘導分によって、インダクタ41L(整合回路41)およびインダクタ51の実効的なインダクタンス値を大きくさせることができる。これにより、インダクタ41Lおよびインダクタ51の線路長をより短くすることも可能である。
【0064】
(第2回路例)
図2に示す高周波モジュール12は、シャント接続型の整合回路43,44を備える。なお、整合回路43,44の一方は、省略しても構わない。
【0065】
整合回路43は、フィルタ部20の第1シリーズ接続端子P21と第1外部接続端子P1とを接続する接続ライン401とグランドとの間に接続されている。整合回路43は、具体的には、
図5(C)に示す第1シリーズ接続端子P21と第1外部接続端子P1とを接続する接続ライン401とグランドとの間に接続されたインダクタ43Lであったり、
図5(D)に示す第1シリーズ接続端子P21と第1外部接続端子P1とを接続する接続ライン401とグランドとの間に接続されたキャパシタ43Cである。整合回路43の素子値(インダクタンスまたはキャパシタンス)は、第1外部接続端子P1側に接続される回路とフィルタ部20とのインピーダンス整合を実現する素子値に設定されている。
【0066】
整合回路44は、フィルタ部20の第2シリーズ接続端子P22と第2外部接続端子P2とを接続する接続ライン402とグランドとの間に接続されている。整合回路44は、具体的には、
図5(G)に示す第2シリーズ接続端子P22と第2外部接続端子P2とを接続する接続ライン402とグランドとの間に接続されたインダクタ44Lであったり、
図5(H)に示す第2シリーズ接続端子P22と第2外部接続端子P2とを接続する接続ライン402とグランドとの間に接続されたキャパシタ44Cである。整合回路44の素子値(インダクタンスまたはキャパシタンス)は、第2外部接続端子P2側に接続される回路とフィルタ部20とのインピーダンス整合を実現する素子値に設定されている。
【0067】
さらに、整合回路43,44の少なくとも一方は、インダクタ50,51の少なくとも一方に対して誘導性結合しているか、または、インダクタ50,51を構成する各導体の少なくとも一部と容量性結合している。結合している整合回路がインダクタであれば、この整合回路は、インダクタ50,51の少なくとも一方と誘導性結合、または、インダクタ50,51を構成する各導体の少なくとも一部と容量性結合している。結合している整合回路がキャパシタであれば、この整合回路は、インダクタ50,51を構成する各導体の少なくとも一部と容量性結合している。
【0068】
例えば、整合回路43がインダクタ43Lであれば、インダクタ43Lは、インダクタ50,51の少なくとも一方と誘導性結合、または、インダクタ50,51を構成する各導体の少なくとも一部と容量性結合している。整合回路43がキャパシタ43Cであれば、キャパシタ43Cは、インダクタ50,51を構成する各導体の少なくとも一部と容量性結合している。
【0069】
また、例えば、整合回路44がインダクタ44Lであれば、インダクタ44Lは、インダクタ50,51の少なくとも一方と誘導性結合、または、インダクタ50,51を構成する各導体の少なくとも一部と容量性結合している。整合回路44がキャパシタ44Cであれば、キャパシタ44Cは、インダクタ50,51を構成する各導体の少なくとも一部と容量性結合している。
【0070】
このような構成とすることで、結合するインダクタと整合回路とは、高周波的に接続される。例えば、整合回路44がキャパシタ44Cであり、キャパシタ44Cとインダクタ50を構成する導体とが容量性結合した場合(
図2参照)、キャパシタ44C(整合回路44)とインダクタ50を構成する導体との間に結合容量を有する容量性結合回路が構成される。これにより、高周波信号は、第1外部接続端子P1と第2外部接続端子P2との間で、フィルタ部20を伝搬経路とする主伝搬経路のみで伝搬されず、高周波信号の一部がインダクタ50、容量性結合回路およびキャパシタ44C(整合回路44)を伝搬経路とする副伝搬経路にも伝搬される。
【0071】
これにより、高周波モジュール12としては、主伝搬経路の伝送特性と副伝搬経路の伝送特性とが合成された合成伝送特性となる。
【0072】
このような構成の高周波モジュール12であっても、上述の高周波モジュール11と同様に、所望の減衰特性を、従来構成よりも簡素な構成で実現できる。
【0073】
(第3回路例)
図3に示す高周波モジュール13は、シリーズ接続型の整合回路41およびシャント接続型の整合回路44を備える。
【0074】
整合回路41は、フィルタ部20の第1シリーズ接続端子P21と第1外部接続端子P1との間に接続されている。整合回路41は、具体的には、
図5(A)に示す第1シリーズ接続端子P21と第1外部接続端子P1との間に直列接続されたインダクタ41Lであったり、
図5(B)に示す第1シリーズ接続端子P21と第1外部接続端子P1との間に直列接続されたキャパシタ41Cである。整合回路41の素子値(インダクタンスまたはキャパシタンス)は、第1外部接続端子P1側に接続される回路とフィルタ部20とのインピーダンス整合を実現する素子値に設定されている。
【0075】
整合回路44は、フィルタ部20の第2シリーズ接続端子P22と第2外部接続端子P2とを接続する接続ライン402とグランドとの間に接続されている。整合回路44は、具体的には、
図5(G)に示す第2シリーズ接続端子P22と第2外部接続端子P2とを接続する接続ライン402とグランドとの間に接続されたインダクタ44Lであったり、
図5(H)に示す第2シリーズ接続端子P22と第2外部接続端子P2とを接続する接続ライン402とグランドとの間に接続されたキャパシタ44Cである。整合回路44の素子値(インダクタンスまたはキャパシタンス)は、第2外部接続端子P2側に接続される回路とフィルタ部20とのインピーダンス整合を実現する素子値に設定されている。
【0076】
さらに、整合回路41,44の少なくとも一方は、インダクタ50,51の少なくとも一方に対して誘導性結合しているか、または、インダクタ50,51を構成する各導体の少なくとも一部と容量性結合している。結合している整合回路がインダクタであれば、この整合回路は、インダクタ50,51の少なくとも一方と誘導性結合、または、インダクタ50,51を構成する各導体の少なくとも一部と容量性結合している。結合している整合回路がキャパシタであれば、この整合回路は、インダクタ50,51を構成する各導体の少なくとも一部と容量性結合している。
【0077】
例えば、整合回路41がインダクタ41Lであれば、インダクタ41Lは、インダクタ50,51の少なくとも一方と誘導性結合、または、インダクタ50,51を構成する各導体の少なくとも一部と容量性結合している。整合回路41がキャパシタ41Cであれば、キャパシタ41Cは、インダクタ50,51を構成する各導体の少なくとも一部と容量性結合している。
【0078】
また、例えば、整合回路44がインダクタ44Lであれば、インダクタ44Lは、インダクタ50,51の少なくとも一方と誘導性結合、または、インダクタ50,51を構成する各導体の少なくとも一部と容量性結合している。整合回路44がキャパシタ44Cであれば、キャパシタ44Cは、インダクタ50,51を構成する各導体の少なくとも一部と容量性結合している。
【0079】
これにより、高周波モジュール13としては、フィルタ部20を介する主伝搬経路の伝送特性と、結合部を介する副伝搬経路の伝送特性とが合成された合成伝送特性となる。このような構成の高周波モジュール13であっても、上述の高周波モジュール11,12と同様に、所望の減衰特性を、従来構成よりも簡素な構成で実現できる。
【0080】
(第4回路例)
図4に示す高周波モジュール14は、シリーズ接続型の整合回路42およびシャント接続型の整合回路43を備える。
【0081】
整合回路42は、フィルタ部20の第2シリーズ接続端子P22と第2外部接続端子P2との間に接続されている。整合回路42は、具体的には、
図5(E)に示す第2シリーズ接続端子P22と第2外部接続端子P2との間に直列接続されたインダクタ42Lであったり、
図5(F)に示す第2シリーズ接続端子P22と第2外部接続端子P2との間に直列接続されたキャパシタ42Cである。整合回路42の素子値(インダクタンスまたはキャパシタンス)は、第2外部接続端子P2側に接続される回路とフィルタ部20とのインピーダンス整合を実現する素子値に設定されている。
【0082】
整合回路43は、フィルタ部20の第1シリーズ接続端子P21と第1外部接続端子P1とを接続する接続ライン401とグランドとの間に接続されている。整合回路43は、具体的には、
図5(C)に示す第1シリーズ接続端子P21と第1外部接続端子P1と接続ライン401とグランドとの間に接続されたインダクタ43Lであったり、
図5(D)に示す第1シリーズ接続端子P21と第1外部接続端子P1とを接続する接続ライン401とグランドとの間に接続されたキャパシタ43Cである。整合回路43の素子値(インダクタンスまたはキャパシタンス)は、第1外部接続端子P1側に接続される回路とフィルタ部20とのインピーダンス整合を実現する素子値に設定されている。
【0083】
さらに、整合回路42,43の少なくとも一方は、インダクタ50,51の少なくとも一方に対して誘導性結合しているか、または、インダクタ50,51を構成する各導体の少なくとも一部と容量性結合している。結合している整合回路がインダクタであれば、この整合回路はインダクタ50,51の少なくとも一方と誘導性結合、または、インダクタ50,51を構成する各導体の少なくとも一部と容量性結合している。結合している整合回路がキャパシタであれば、この整合回路は、インダクタ50,51を構成する各導体の少なくとも一部と容量性結合している。
【0084】
例えば、整合回路42がインダクタ42Lであれば、インダクタ42Lは、インダクタ50,51の少なくとも一方と誘導性結合、または、インダクタ50,51を構成する各導体の少なくとも一部と容量性結合している。整合回路42がキャパシタ42Cであれば、キャパシタ42Cは、インダクタ50,51を構成する各導体の少なくとも一部と容量性結合している。
【0085】
また、例えば、整合回路43がインダクタ43Lであれば、インダクタ43Lは、インダクタ50,51の少なくとも一方と誘導性結合、または、インダクタ50,51を構成する各導体の少なくとも一部と容量性結合している。整合回路43がキャパシタ43Cであれば、キャパシタ43Cは、インダクタ50,51を構成する各導体の少なくとも一部と容量性結合している。
【0086】
これにより、高周波モジュール14としては、フィルタ部20を介する主伝搬経路の伝送特性と、結合部を介する副伝搬経路の伝送特性とが合成された合成伝送特性となる。このような構成の高周波モジュール14であっても、上述の高周波モジュール11,12,13と同様に、所望の減衰特性を、従来構成よりも簡素な構成で実現できる。
【0087】
図6は、整合回路とインダクタとの誘導性結合の結合度を変化させた時の高周波モジュールの通過特性の変化を示すグラフである。
図6の横軸は周波数を示し、
図6の縦軸は第1外部接続端子P1から第2外部接続端子P2へ伝搬する信号の減衰量を示す。
図6に示す点線の特性は、整合回路とインダクタとの誘導性結合が弱い場合を示す。
図6に示す実線の特性は、実線の特性よりも誘導性結合が強い場合を示す。
図6に示す破線の特性は、実線の特性よりも誘導性結合が強い場合を示す。なお、本実施形態における高周波モジュールは、800MHz帯を通過帯域とする帯域通過フィルタである。
【0088】
図6に示すように、誘導性結合が強くなるほど、通過帯域の高周波数側に現れる減衰極の周波数は高くなる。なお、
図6における減衰極の周波数とは、周波数軸のほぼ中央にあるピーク周波数のことである。
【0089】
また、誘導性結合を適宜設定することで、通過帯域の高周波数側の減衰特性を変化させることができる。例えば、誘導性結合が弱くなるほど、通過帯域付近での減衰量が小さいが、減衰極の周波数での減衰量を大きく取ることができる。また、誘導性結合が強くなるほど、通過帯域付近での減衰量を、より大きく取ることができる。
【0090】
そして、
図6に示すように、誘導性結合の強さに影響されることなく、通過帯域の周波数位置、周波数幅および挿入損失は殆ど変化しない。
【0091】
したがって、本実施形態の構成を用いて、誘導性結合の結合度を適宜調整することで、通過帯域の特性を変化させることなく、高周波数側の減衰特性を所望の特性に調整することができる。言いかえれば、所望の通過帯域特性と減衰特性を有する高周波モジュールを実現することができる。
【0092】
なお、図示していないが、整合回路とインダクタを構成する導体とを容量性結合させた場合、容量性結合が強くなるほど、通過帯域の高周波数側に現れる減衰極の周波数は低くなる。そして、容量性結合の強さに影響されることなく、通過帯域の周波数位置、周波数幅および挿入損失は殆ど変化しない。したがって、本実施形態の構成を用いて、容量性結合の結合度を適宜調整することで、通過帯域の特性を変化させることなく、高周波数側の減衰特性を所望の特性に調整することができる。
【0093】
このような構成からなる高周波モジュールは、具体的な適用例として、
図7に示すデュプレクサ構成に利用することができる。
図7は、デュプレクサ構成からなる高周波モジュールの等価回路図である。
【0094】
高周波モジュール101は、フィルタ部21、第1外部接続端子P1、第2外部接続端子P2、および、フィルタ部21の第3端子P31,P32を兼用する第3外部接続端子を備える。具体的な適用例として、第1外部接続端子P1は、アンテナに接続される。第2外部接続端子P2は送信回路に接続される。第3外部接続端子(第3端子P31,P32)は受信回路に接続される。
【0095】
フィルタ部21は、第1シリーズ接続端子P21’、第2シリーズ接続端子P22、第1シャント接続端子P23、第2シャント接続端子P24および第3端子P31,P32、を備える。
【0096】
第1シリーズ接続端子P21’は、接続ライン401を介して第1外部接続端子P1に接続されている。接続ライン401とグランドとの間には、上述の整合回路に対応するインダクタ43Lが接続されている。第2シリーズ接続端子P22は、接続ライン402を介して第2外部接続端子P2に接続されている。
【0097】
第1シリーズ接続端子P21’と第2シリーズ接続端子P22との間には、複数のSAW共振子201,202,203,204,205,206が、複数の接続ラインにより直列接続されている。
【0098】
SAW共振子202とSAW共振子203とを接続する接続ラインは、SAW共振子211を介して第1シャント接続端子P23に接続されている。第1シャント接続端子P23は、インダクタ50を介してグランドに接続されている。
【0099】
SAW共振子204とSAW共振子205とを接続する接続ラインは、SAW共振子212を介して第2シャント接続端子P24に接続されている。SAW共振子206と第2シリーズ接続端子P22を接続する接続ラインは、SAW共振子213を介して第2シャント接続端子P24に接続されている。第2シャント接続端子P24は、インダクタ60を介してグランドに接続されている。
【0100】
この構成により、フィルタ部21は、第1シリーズ接続端子P21’と第2シリーズ接続端子P22との間に対して、これらSAW共振子201−208,211,212,213の帯域通過特性および減衰特性を組み合わせることで、フィルタ部21の第1、第2シリーズ接続端子間としての所望の第1帯域通過特性および第1通過帯域外の第1減衰特性を実現している。
【0101】
第1シリーズ接続端子P21’と第3端子P31,P32との間には、SAW共振子221と縦結合型SAW共振子231,232が直列接続されている。SAW共振子221および縦結合型SAW共振子231,232は第2のフィルタ部22を構成する。この構成により、フィルタ部21は、第1シリーズ接続端子P21’と第3端子P31,P32との間に対して、これらSAW共振子221,231,232の帯域通過特性および減衰特性を組み合わせることで、フィルタ部21の第1シリーズ接続端子、第3端子間としての所望の第2帯域通過特性および第2通過帯域外の第2減衰特性を実現している。第2通過帯域は、第1通過帯域とは異なる周波数帯域であり、第2通過帯域は、第1通過帯域外の減衰帯域範囲内となるように設定されている。
【0102】
これにより、フィルタ部21は、第1シリーズ接続端子P21’を共通端子とし、第2シリーズ接続端子P22および第3端子P31,P32をそれぞれ個別端子とするデュプレクサとして機能する。
【0103】
さらに、高周波モジュール101では、インダクタ50とインダクタ43Lとを誘導性結合させる。そして、この結合度を調整することで、第1減衰特性を調整することができる。
【0104】
ここで、本実施形態の構成を用いれば、第2通過帯域に重ねるように、第1減衰特性における減衰量を大きく取る周波数帯域の帯域幅および減衰量を調整することができる。これは、インダクタ50とインダクタ43Lとの結合度を調整すれば可能である。
【0105】
図8は、整合回路とインダクタとの誘導性結合の結合度を変化させた時の高周波モジュールの第2外部接続端子と第3外部接続端子との間のアイソレーションの変化を示すグラフである。
図8の横軸は周波数を示し、
図8の縦軸はアイソレーション量を示す。
図8ではアイソレーション量が低いほど、第2シリーズ接続端子、第3端子間で強くアイソレーションされていることを示している。
図8に示す点線の特性は、誘導性結合が弱い場合を示す。
図8に示す実線の特性は、点線の特性よりも誘導性結合が強い場合を示す。
図8に示す破線の特性は、実線の特性よりも誘導性結合が強い場合を示す。
【0106】
図8に示すように、誘導性結合が強くなるほど、受信回路Rx(第3端子側)の通過帯域付近に現れる減衰極の周波数は高くなる。このため、誘導性結合を調整することにより、受信回路Rxの通過帯域のアイソレーション量およびアイソレーション特性を調整することができる。また、
図8に示すように、誘導性結合を調整しても、送信回路Tx(第2端子側)の通過帯域のアイソレーション量およびアイソレーション特性は殆ど変化しない。
【0107】
このように、高周波モジュール101の構成を用いることで、第2シリーズ接続端子、第3端子間のアイソレーション特性を適切に調整することができる。すなわち、送信回路と受信回路との間のアイソレーション特性を最適化することができる。
【0108】
なお、図示していないが、整合回路としてインダクタ43Lの代わりにキャパシタ43Cを用いて、その整合回路とインダクタを構成する導体とを容量性結合させた場合、容量性結合が強くなるほど、受信回路Rxの通過帯域付近に現れる減衰極の周波数は低くなる。このため、容量性結合を調整することにより、受信回路Rx(第3端子側)の通過帯域のアイソレーション量およびアイソレーション特性を調整することができる。また、容量性結合を調整しても、送信回路Txの通過帯域のアイソレーション量およびアイソレーション特性は殆ど変化しない。このように、容量性結合を適宜調整することによっても、第2シリーズ接続端子、第3端子間のアイソレーション特性を適切に調整することができる。
【0109】
以上のような構成からなる高周波モジュールは、次に示すような構造によって実現することができる。なお、以下では、上述のデュプレクサ構成からなる高周波モジュール101を構造的に実現する例を示す。
【0110】
(第1の構造)
図9は、高周波モジュールの主要構造を示す側面概念図である。高周波モジュール101は、積層基板100、フィルタ基板200、カバー層290、側面カバー層291、実装型回路素子430を備える。
【0111】
積層基板100は、複数の誘電体層を積層してなる。積層基板100の天面(実装面)100Sおよび内層には、所定パターンの電極が形成されており、高周波モジュール101のフィルタ部21を除く配線パターンやインダクタ50が形成されている。
【0112】
インダクタ50は、一部が分断された管状の線状電極(線状導体)から構成されている。この線状電極の一方端は、ビア導体431Vを介して、フィルタ部21の第1シャント接続端子P23となる実装用電極294が実装されるランド電極に接続されている。ランド電極は、積層基板100の天面100Sに形成されている。インダクタ50を構成する線状電極の他方端は、ビア導体432Vを介して、積層基板100内に形成された内部グランドパターンに接続されている。
【0113】
積層基板100の底面100Rには、外部接続用電極が形成されており、これら外部接続用電極により、上述の第1外部接続端子P1、第2外部接続端子P2、第3外部接続端子が実現される。
【0114】
フィルタ部21は、フィルタ基板200、カバー層290、側面カバー層291、接続電極293、および実装用電極294によって形成されている。
【0115】
フィルタ基板200は、平板状の圧電基板からなる。フィルタ基板200の第1主面には、フィルタ電極や配線パターンが形成されている。フィルタ電極は、例えば、所謂IDT電極からなる。このように、圧電基板の主面にIDT電極を形成することで、上述の各SAW共振子を実現することができる。フィルタ基板200の第1主面側には、平板状のカバー層290が配置されている。カバー層290は、平板状の絶縁性材料からなり、平面視してフィルタ基板200と同じ形状からなる。また、カバー層290は、平面視して、フィルタ基板200と重なるように配置されており、フィルタ基板200の第1主面から所定距離の間隔を空けて配置されている。
【0116】
フィルタ基板200の第1主面とカバー層290との間には、側面カバー層291が配置されている。側面カバー層291も絶縁性材料からなり、平面視して、フィルタ基板200およびカバー層290の全周に亘って、外周端から内側へ所定幅の範囲にのみ形成されている。すなわち、側面カバー層291は、中央に開口を有する枠状の構造である。
【0117】
このように、カバー層290と側面カバー層291が配置されることで、フィルタ基板200の第1主面のフィルタ電極が形成される領域は、フィルタ基板200、カバー層290、および側面カバー層291によって密閉空間292内に配置される。これにより、SAW共振子の共振特性を向上させることができ、フィルタとしての所望の特性を精確に実現することができる。
【0118】
接続電極293は、フィルタ基板200の第1主面に一方端が接し、他方端がカバー層290におけるフィルタ基板200側と反対側の面に露出する形状からなる。この際、接続電極293は、側面カバー層291およびカバー層290を貫通するように形成されている。接続電極293の一方端は、フィルタ基板200の第1主面に形成された配線パターンに接続されている。
【0119】
実装用電極294は、接続電極293の他方端に接続し、カバー層290におけるフィルタ基板200側と反対側の面から突出する形状で形成されている。この接続電極293と実装用電極294の組を複数設けることにより、上述のフィルタ部21の第1シリーズ接続端子P21’、第2シリーズ接続端子P22、第3端子P31,P32、第1シャント接続端子P23および第2シャント接続端子P24が実現される。なお、接続電極293の他方端に半田やAu等を用いたバンプを形成し、そのバンプを介して実装用電極294と接続してもよい。
【0120】
以上のような構成とすることで、フィルタ部21は、所謂WLP(Wafer Level Package)の構造となり、フィルタ部21を小型に形成することができる。
【0121】
そして、このWLP構造のフィルタ部21は、積層基板100の天面100Sに実装されている。これにより、フィルタ部21は、第1外部接続端子P1、第2外部接続端子P2、第3外部接続端子に接続される。
【0122】
インダクタ43Lは、実装型回路素子430によって実現される。具体的には、実装型回路素子430は、絶縁性材料からなる直方体形状の筐体を備え、当該筐体の内部に、インダクタ43Lとなるスパイラル電極が形成されている。スパイラル電極は、筐体の外周に沿って伸長し一部が分断された管状の線状電極と層間接続電極によって実現される。各層の線状電極は、層間接続電極によって一本の線状電極になるように接続されている。スパイラル電極の両端は、筐体の対向する両端面に形成された外部接続電極に接続されている。
【0123】
このような構成からなる実装型回路素子430は、スパイラル電極の中心軸が天面100Sに直交するように、積層基板100の天面100Sに実装されている。ここで、フィルタ部21の第1シリーズ接続端子P21’と第1外部接続端子P1との接続ラインが積層基板100の天面100Sおよび内部に形成され、グランド電極が積層基板100の内部に形成されている。そして、この接続ラインおよびグランド電極は実装型回路素子430の実装用ランドに接続されている。これにより、インダクタ43Lがフィルタ部21の第1シリーズ接続端子P21’と第1外部接続端子P1との接続ラインとグランドとの間に接続される構造を実現できる。
【0124】
なお、積層基板100の天面100Sに形成された線状電極によりインダクタ43Lを実現してもよい。
【0125】
そして、インダクタ43Lを実現する実装型回路素子430と、インダクタ50を構成する線状電極とを近接して配置する。これにより、実装型回路素子430のスパイラル電極からなるインダクタ43Lと、積層基板100内の線状電極からなるインダクタ50との間で、
図9の太破線矢印に示すように、誘導性結合を生じさせることができる。このような構成とすることで、減衰特性調整用の素子を別途設けることなく、所望の減衰特性を有する高周波モジュール101を実現することができる。
【0126】
この際、インダクタ50を構成する線状電極と、インダクタ43Lを構成するスパイラル電極との距離を変化させることで、インダクタ43Lとインダクタ50との結合度を調整できる。これにより、高周波モジュール101の減衰特性を調整することができ、所望とする減衰特性をより精確に実現することができる。
【0127】
図10は、高周波モジュールの第1の構造における第1変形例の主要構造を示す平面概念図である。フィルタ部21には、フィルタ基板200の第1主面にフィルタ電極が形成されることにより、SAW共振子201−206,211−213が実現されている。フィルタ基板200の第1主面には、SAW共振子201−206の間、およびSAW共振子201と第1シリーズ接続端子P21’との間を接続する接続ライン405が形成されている。なお、
図10では、接続ライン405の一部を図示している。
【0128】
フィルタ部21は平面視で矩形状になっている。フィルタ部21には、平面視で長手方向に平行な辺に沿って、8つの実装用電極294が形成されている。実装用電極294のうち3つは、それぞれ、第2外部接続端子P2および第3外部接続端子P31,P32に接続されている。実装用電極294のうち2つはグランドに接続されている。実装用電極294のうち3つは、それぞれ、第1シリーズ接続端子P21’、第1シャント接続端子P23および第2シャント接続端子P24に対応している。
【0129】
積層基板100の内層には、線状電極パターンによりインダクタ50,60が形成されている。インダクタ50は、平面視でフィルタ部21の短手方向に平行な辺の近傍に形成されている。インダクタ60は、平面視でフィルタ部21の長手方向に平行な辺の近傍に形成されている。実装型回路素子430は、インダクタ50に対してフィルタ部21側の反対側に、インダクタ50に近接するように配置されている。フィルタ基板200上に形成された接続ライン405とインダクタ50とが最も近接する部分の距離は、実装型回路素子430とインダクタ50とが最も近接する部分の距離よりも遠くなっている。フィルタ基板200上に形成された接続ライン405と実装型回路素子430とが最も近接する部分の距離は、実装型回路素子430とインダクタ50とが最も近接する部分の距離よりも遠くなっている。
【0130】
フィルタ基板200上のTx側の直列接続されるフィルタ素子(SAW共振子201−206)間あるいはそのフィルタ素子と整合回路(インダクタ43L)間の接続ライン405と、インダクタ50とが誘導性結合すると、高周波モジュール101の減衰特性を向上させるために必要なインダクタ50と整合回路を構成するインダクタ43Lとの間の誘導性結合に影響を与え、高周波モジュール101の減衰特性の改善効果が低下するおそれがある。そこで、インダクタ50を積層基板100内に配置したとき、そのインダクタ50とフィルタ基板200において直列腕を構成するフィルタ素子間あるいはそのフィルタ素子と整合回路間の接続ライン405との距離を遠くすることにより、発生する誘導性結合を小さくすることができ、所望の減衰特性を得ることができる。なお、減衰特性が悪化する原因として、接続ライン405と実装型回路素子430との誘導性結合も挙げられる。実装型回路素子430と接続ライン405との距離を遠くすることにより、その誘導性結合を小さくすることができる。
【0131】
また、接続ライン405とインダクタ50との間の誘導性結合を抑制するために、両者で発生する磁界が直交するようなインダクタ50の配線形状にしても構わない。例えば、接続ライン405がフィルタ基板200上に直線状に形成されている場合、その直線状配線の周囲にループ状に磁界が発生する。このループ状の磁界に直交するようにインダクタ50の磁界を発生させるためには、ループ状磁界の中心軸に直交する中心軸を持つような磁界を発生させる配線形状にすればよい。
【0132】
なお、本実施例において、実装型回路素子430とインダクタ50とを入れ替えて配置してもよい。
【0133】
図11は、高周波モジュールの第1の構造における第2変形例の主要構造を示す平面概念図である。接続ライン405は、平面視でフィルタ部21の短手方向に平行な辺に最も近接している。インダクタ50は、平面視でフィルタ部21の長手方向に平行な辺の近傍に形成されている。すなわち、インダクタ50は、フィルタ基板200において接続ライン405が最も近接する辺とは異なるフィルタ基板405の所定の辺に近接して配置されている。実装型回路素子430は、平面視でフィルタ部21の長手方向に平行な辺の近傍において、インダクタ50に近接して配置されている。実装型回路素子430の短手側面はフィルタ部21の側面と対向している。
【0134】
上述のように、フィルタ基板200上の接続ライン405が最も近接するフィルタ基板200の辺(
図11においてフィルタ基板200の下側の辺)とは異なる辺に近接させてインダクタ50の配線を配置する。接続ライン405とインダクタ50とを離間して配置できるので、所望の減衰特性が得られる。
【0135】
なお、
図10において記載したが、本実施例においてもインダクタ50と実装型回路素子430の位置を入れ替えても構わない。また、実装型回路素子430をフィルタ基板200の主面方向から平面視して90°回転して配置しても構わない。
【0136】
図12は、高周波モジュールの第1の構造における第3変形例の主要構造を示す側面概念図である。インダクタ50は、積層基板100内ではなく、カバー層290に形成されている。インダクタ50は、一部が分断された管状の線状電極から構成されている。そして、インダクタ43Lを実現する実装型回路素子430と、インダクタ50を構成する線状電極とは近接して配置されている。これにより、上述と同様に、インダクタ43Lとインダクタ50との間で、
図12の太破線矢印に示すように、誘導性結合を生じさせることができる。なお、インダクタ50はフィルタ基板200上に形成された接続ラインで発生する磁界に直交するような磁界が発生するような形状でも構わない。
【0137】
(第2の構造)
図13は、高周波モジュールの主要構造を示す平面概念図である。高周波モジュール101Aは、フィルタ部21、積層基板100および実装型回路素子430,500を備える。
【0138】
積層基板100は、複数の誘電体層を積層してなる。積層基板100の天面(実装面)100Sおよび内層には、所定パターンの電極が形成されている。積層基板100の天面100Sには、フィルタ部21および実装型回路素子430,500が実装されている。
【0139】
フィルタ部21は、第1の構造で示したWLP構造を有する。実装型回路素子430は第1の構造で示したものと同様に構成されている。すなわち、実装型回路素子430は、絶縁性材料からなる直方体形状の筐体を備え、当該筐体の内部に、インダクタ43Lとなるスパイラル電極が形成されている。実装型回路素子500は、絶縁性材料からなる直方体形状の筐体を備え、当該筐体の内部に、インダクタ50となるスパイラル電極が形成されている。その他の構成は実装型回路素子430と同様に構成されている。
【0140】
フィルタ部21および実装型回路素子430,500は、
図7の回路構成を実現するように、積層基板100の天面100Sおよび内層に形成された配線パターンにより接続されている。
【0141】
実装型回路素子430の長手側面と実装型回路素子500の長手側面とが近接して対向するように、実装型回路素子430,500を配置している。これにより、実装型回路素子430のスパイラル電極からなるインダクタ43Lと、実装型回路素子500のスパイラル電極からなるインダクタ50との間で、
図13の太破線矢印に示すように、誘導性結合を生じさせることができる。この際、実装型回路素子430と実装型回路素子500との間の距離、実装型回路素子430,500の向き等を調整することにより、インダクタ43Lとインダクタ50との結合度を調整できる。これにより、高周波モジュール101Aの減衰特性を調整することができ、所望とする減衰特性をより精確に実現することができる。
【0142】
なお、
図13では、実装型回路素子430の長手側面と実装型回路素子500の長手側面とが対向するように配置した例を示した。しかしながら、実装型回路素子430の短手側面(外部接続電極が形成される端面)と実装型回路素子500の長手側面とが対向するように配置してもよい。ただし、実装型回路素子430の長手側面と実装型回路素子500の長手側面とが対向するように配置することで、より強い誘導性結合を、より簡単に実現することができる。
【0143】
また、
図13では、スパイラル電極の中心軸が積層基板100の天面100Sに直交するように、実装型回路素子430,500を実装する例を示したが、スパイラル電極の中心軸が積層基板100の天面100Sに平行になるように、実装型回路素子430,500を実装してもよい。
【0144】
(第3の構造)
図14は、高周波モジュールの主要構造を示す側面概念図である。
図14に示す高周波モジュール101Bは、所謂CSP(Chip Size Package)構造で実現されている。
【0145】
高周波モジュール101Bは、フィルタ基板200を備える。フィルタ基板200の第1主面には、上述のようにフィルタ部21を実現するフィルタ電極や配線パターンが形成されている。
【0146】
高周波モジュール101Bは、さらにフィルタ実装用基板280を備える。フィルタ実装用基板280は、例えばアルミナ基板からなり、平面視した面積がフィルタ基板200よりも所定量大きい。フィルタ実装用基板280には、所定パターンの電極が形成されている。
【0147】
フィルタ基板200は、第1主面がフィルタ実装用基板280側になるように、バンプ導体281によってフィルタ実装用基板280の天面(実装面)280Sに実装されている。また、フィルタ実装用基板280の天面280Sには、インダクタ43Lを構成する実装型回路素子430が実装されている。フィルタ実装用基板280の底面280Rには、インダクタ50を構成する線状電極および外部接続用バンプ導体282が形成されている。
【0148】
フィルタ実装用基板280の天面280Sには、樹脂層283が塗布されている。ただし、フィルタ電極には樹脂層283は塗布されておらず、フィルタ電極の部分は中空構造となっている。これにより、フィルタ電極および配線パターンが外部環境に曝されることを防止でき、SAW共振子の共振特性を向上させることができ、フィルタとしての所望の特性を精確に実現することができる。
【0149】
インダクタ43Lを構成するスパイラル電極とインダクタ50を構成する線状電極とが、平面視して少なくとも一部が重なるように配置する。これより、
図14に示すように、インダクタ43Lとインダクタ50の間に誘導性結合を生じさせることができる。特に、本実施形態の構成では、インダクタ43Lを構成するスパイラル電極とインダクタ50を構成する線状電極との間隔(距離)を短くすることができるので、より強い誘導性結合を容易に実現することができる。
【0150】
また、高周波モジュール101B全体がCSP構造であるので、高周波モジュール101Bを小型且つ薄型で実現することができる。
【0151】
なお、上述の各実現構造では、整合回路としてインダクタを用いる例を示したが、整合回路がキャパシタの場合についても、同様の構造で実現することができる。例えば、スパイラル電極を有する実装型回路素子430の代わりに、実装型の積層コンデンサ素子を用いればよい。
【0152】
また、前記複数の実施例において、インダクタとして用いた実装型回路素子の内部の配線は、実装型回路素子を実装する積層基板100の天面100Sに垂直な方向に磁界が発生する構成となっているが、特にこの構成に限定するものではない。不要な誘導性結合を発生させないために、発生する磁界の方向が積層基板100の天面100Sに平行な方向になるような内部配線を備えた実装型回路素子を使用しても構わない。
【0153】
また、整合回路とインダクタとの結合は、間に介するSAW共振子が多いほど、減衰特性に与える影響を大きくすることができる。例えば、第1の構造(
図9参照)であれば、インダクタ50を構成する線状電極と実装型回路素子430との位置関係が同じであれば、間に介するSAW共振子が多い整合回路とインダクタとを結合させるほど、減衰特性に与える影響を大きくすることができる。なお、整合回路41−44は、インダクタを複数、キャパシタを複数、あるいは、インダクタとキャパシタとを組み合わせた複合回路としても構わない。
【0154】
また、上述のフィルタ部20は、所謂ラダー接続型フィルタであったが、フィルタ部は、例えば、縦結合共振器フィルタであってもよい。この場合でも、上述の整合回路とインダクタとの間の誘導性結合また容量性結合を調整することにより、所望の減衰特性を有する高周波モジュールを実現することができる。
【0155】
また、本発明は、所謂ベアチップ型のフィルタ部を用いた高周波モジュールに適用することもできる。