特許第6183496号(P6183496)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6183496
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】生爪
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/107 20060101AFI20170814BHJP
   B23B 31/16 20060101ALI20170814BHJP
   B23B 31/10 20060101ALI20170814BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   B23B31/107 A
   B23B31/16 D
   B23B31/10 B
   F16B5/02 Q
   F16B5/02 R
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-94491(P2016-94491)
(22)【出願日】2016年5月10日
【審査請求日】2017年2月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506377112
【氏名又は名称】有限会社 大野精機
(74)【代理人】
【識別番号】100106541
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 信和
(72)【発明者】
【氏名】大野 和明
(72)【発明者】
【氏名】大野 義栄
(72)【発明者】
【氏名】大野 真悟
【審査官】 村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04861048(US,A)
【文献】 特開昭63−229206(JP,A)
【文献】 特開2015−025531(JP,A)
【文献】 実開昭63−078714(JP,U)
【文献】 特開平11−197917(JP,A)
【文献】 特開2002−137105(JP,A)
【文献】 特開2004−142062(JP,A)
【文献】 実開昭54−181085(JP,U)
【文献】 米国特許第4767110(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/107
B23B 31/10
B23B 31/16
F16B 5/02
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外形が正多角柱状に形成され、前記正多角柱の中心軸である第1中心軸を通るように前記正多角柱の上面まで貫通する第1貫通孔、及び前記第1貫通孔を通るように前記正多角柱の上面及び下面に上下対称に形成されている形成されている正多角形の溝を有し、被加工物を把持する子爪と、
工作機械に取り付けるための固定ボルトが挿入される第1ボルト穴及び第2ボルト穴と、前記子爪の前記上面又は下面の前記正多角形の溝に嵌め込まれて前記子爪を固定する正多角柱状の凸部と、を備える親爪と、を有し、
前記凸部には前記凸部を貫通する第2貫通孔が形成され、前記子爪が前記親爪に固定される場合には前記第1中心軸と前記第2貫通孔の中心軸である第2中心軸とが重なっている生爪。
【請求項2】
前記正多角形の溝の各角及び前記凸部の各角が丸面取りされており、前記正多角形の溝に前記凸部が嵌め込まれ請求項1に記載の生爪。
【請求項3】
前記正多角形の溝の各角には、前記正多角形の辺の長さの半分よりも短い半径を有する円柱状の溝が形成されている請求項1に記載の生爪。
【請求項4】
前記第1ボルト穴の中心軸が前記第2中心軸に重なっている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の生爪。
【請求項5】
前記凸部は前記第1ボルト穴及び第2ボルト穴とは重ならないように形成される請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の生爪。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に取り付けられて被加工物を保持する生爪に関する。
【背景技術】
【0002】
旋盤等の工作機械で被加工物を加工する場合には、例えば硬い爪により被加工物が固定される。しかし、硬い爪により被加工物を固定する場合には、被加工物に硬い爪の固定の傷跡が残るという問題があった。
【0003】
これに対して、例えば、特許文献1にはアダプタを介して生爪を工作機械に取り付け、被加工物の形状に合わせて加工された生爪によって被加工物を保持することにより、被加工物に傷跡が残り難くする旨が示されている。また、正六角柱状の生爪を用いて正六角柱の各角部を異なる爪先形状に形成することにより、多数の加工対象物に対して高い汎用性を持って使用することができる旨が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−137105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、アダプタで生爪の外壁を挟むことにより生爪が回転しないように工作機械に取り付けられているが、生爪の外壁は加工して用いられるため生爪の外壁の形状が一定形状にならず、生爪の固定が不十分になる可能性がある。また、特許文献1では生爪の下面に係合穴を設けてアダプタのロック機構に係合させて生爪の回転を防ぐ旨も示されているが、係合穴の形状が小さく、被加工物の大きさが大きい場合等には生爪の回転を十分に防止できない可能性もある。さらに、係合穴の個数を増やし、大きさを大きくするような場合には、生爪の加工されることができる領域が大きく制限されてしまうという問題が生じる。
【0006】
そこで、本発明では、生爪の回転を十分に抑えることができると共に、生爪の加工領域を十分に大きく取ることができる生爪を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1観点の生爪は、外形が正多角柱状に形成され、正多角柱の中心軸である第1中心軸を通るように正多角柱の上面まで貫通する第1貫通孔、及び第1貫通孔を通るように正多角柱の下面に形成されている正多角形の溝を有し、被加工物を把持する子爪と、工作機械に取り付けるための固定ボルトが挿入される第1ボルト穴及び第2ボルト穴と、子爪の正多角形の溝に嵌め込まれて子爪を固定する正多角柱状の凸部と、を備える親爪と、を有する。凸部には凸部を貫通する第2貫通孔が形成され、子爪が親爪に固定される場合には第1中心軸と第2貫通孔の中心軸である第2中心軸とが重なっている。
【0008】
第2観点の生爪は、第1観点において、子爪には、第1中心軸を通り且つ正多角柱の上面に形成されている円形溝が形成されている。
【0009】
第3観点の生爪は、第1観点及び第2観点において、正多角形の溝の各角及び凸部の各角が丸面取りされている。
【0010】
第4観点の生爪は、第1観点及び第2観点において、正多角形の溝の各角には、正多角形の辺の長さの半分よりも短い半径を有する円柱状の溝が形成されている。
【0011】
第5観点の生爪は、第1観点から第4観点において、第1ボルト穴の中心軸が第2中心軸に重なっている。
【0012】
第6観点の生爪は、第1観点から第4観点において、凸部が第1ボルト穴及び第2ボルト穴とは重ならないように形成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の生爪によれば、生爪の回転を十分に抑えることができると共に、生爪の加工領域を十分に大きく取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】生爪100の斜視図である。
図2】(a)は、子爪110の斜視図である。 (b)は、図2(a)のB−B断面図である。 (c)は、子爪110の下面図である。
図3】(a)は、親爪120の斜視図である。 (b)は、図3(a)のC−C断面図である。 (c)は、親爪120の上面図である。
図4】(a)は、図1のA−A断面図である。 (b)は、固定ボルト150が挿入された生爪100の断面図である。
図5】(a)は、回転盤160及び爪受台161の斜視図である。 (b)は、図5(a)の点線181の拡大図である。
図6】(a)は、加工された生爪100の上面図である。 (b)は、チャック165の平面図である。
図7】(a)は、親爪220の斜視図である。 (b)は、子爪210の下面図である。
図8】(a)は、子爪310の斜視図である。 (b)は、図8(a)のD−D断面図である。 (c)は、座金330の断面図である。
図9】(a)は、親爪320の平面図である。 (b)は、チャック265の平面図である。
図10】(a)は、親爪420の斜視図である。 (b)は、図10(a)のE−E断面図である。
図11】(a)は、子爪410の断面図である。 (b)は、子爪410の下面図である。
図12】(a)は、子爪510の断面図である。 (b)は、子爪510の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明の範囲は以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0016】
(第1実施形態)
<生爪100の構成>
図1は、生爪100の斜視図である。生爪100は、親爪120と子爪110とにより構成されている。生爪100は、図1に示されるように子爪110が親爪120に取り付けられ、親爪120が工作機械等に取り付けられることにより用いられる。親爪120は、略直方体状に形成されており、子爪110が載置される上面121aと、上面121aの反対側の面であり工作機械等に取り付けられる面である下面121bと、を有している。以下の説明では、親爪120の長辺が伸びる方向をX軸方向、短辺が伸びる方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向に垂直な方向をZ軸方向として説明する。この場合、上面121aが+Z軸側の面となり、下面121bが−Z軸側の面となる。
【0017】
図2(a)は、子爪110の斜視図である。子爪110は、外形が正六角柱状に形成されており、子爪110の+Z軸側の面である上面111a及び−Z軸側の面である下面111bはそれぞれ正六角形に形成されている。子爪110の外形の正六角柱の側壁には、Z軸に沿って伸びる6つの角部110aが形成されている。また、上面111a及び下面111bの中心を貫くように第1貫通孔112が形成されている。第1貫通孔112は、Z軸に並行に伸びる第1中心軸112aを中心軸として有している。第1中心軸112aは上面111a及び下面111bの中心を通る軸ともなっている。
【0018】
図2(b)は、図2(a)のB−B断面図である。また、図2(b)は後述の図2(c)のB−B断面図である。子爪110の第1貫通孔112は、上面111aに接して形成されている円形溝113、下面111bに接して形成されている正六角形の溝115、及び円形溝113と正六角形の溝115とを繋ぐ貫通孔114により構成されている。円形溝113、正六角形の溝115、及び貫通孔114は、第1中心軸112aを中心軸としている。また、貫通孔114のXY平面内の大きさは、円形溝113及び正六角形の溝115のXY平面内の大きさよりも小さく形成されている。
【0019】
図2(c)は、子爪110の下面図である。図2(c)では、貫通孔114の形状が円形であり、正六角形の溝115よりも小さく形成されていることが示されている。正六角形の溝115は、断面が正六角形状に形成されているが、正六角形の溝115の全ての角部115aが丸面取りされたように形成されている。また、正六角形の溝115の角部115aは、第1中心軸112aと子爪110の角部110aとを結ぶ直線上に形成されている。
【0020】
円形溝113及び貫通孔114は、例えば、旋盤又はフライス盤等により形成される。また、正六角形の溝115は、例えば、第1中心軸112a上に円形の溝を旋盤又はフライス盤等により形成し、円形の溝にエンドミルを挿入してエンドミルをXY平面内で移動させ、溝を広げることにより正六角形の溝115を形成することができる。正六角形の溝115は、このようにエンドミルにより形成されるため、正六角形の溝115の角115aは略エンドミルの半径である丸面取りがなされたように形成される。
【0021】
図3(a)は、親爪120の斜視図である。親爪120は、略直方体状の胴体部121と凸部128とを有している。胴体部121には、+Z軸側の面である上面121aに外形が略正六角柱状の凸部128が形成されている。凸部128の外形の正六角柱には、Z軸に沿って伸びる6つの角部128aが形成されている。また、親爪120には、凸部128及び胴体部121をZ軸方向に貫通する第1ボルト穴122と、胴体部121をZ軸方向に貫通する第2ボルト穴123とが形成されている。胴体部121の−Z軸側の面である下面121bには、下面121bの中央を−X軸側の端から+X軸側の端まで伸びる溝124が形成されている。また、下面121bの略中央には、溝124を除いた部分に−Y軸側から+Y軸側に伸びる突起125が形成されている。
【0022】
図3(b)は、図3(a)のC−C断面図である。また、図3(b)は、後述される図3(c)のC−C断面図である。第1ボルト穴122は、Z軸に平行な第2中心軸122aを有し、第2ボルト穴123はZ軸に平行な中心軸123aを有している。第1ボルト穴122は、凸部128を貫通する第2貫通孔128bを含んでおり、第2貫通孔128bは第2中心軸122aを中心軸としている。第2ボルト穴123は、上面121aに接続される円形溝126と、下面121b及び円形溝126に接続される円形溝127と、により構成されている。円形溝126の直径は円形溝127よりも大きく形成されている。
【0023】
図3(c)は、親爪120の上面図である。親爪120では、第2中心軸122aと中心軸123aとがX軸方向に並んで形成されている。また、凸部128の角部128aは、子爪110の正六角形の溝115の角部115aと略同じ半径の丸面取りが成されるように形成されており、少なくとも1つの角部128aが第2中心軸122aと中心軸123aとを結ぶ直線上に形成されている。
【0024】
図4(a)は、図1のA−A断面図である。図4(a)では、図2(a)の子爪110のB−B断面を含み、図3(a)の親爪120のC−C断面を含んでいる。子爪110は、子爪110の正六角形の溝115が親爪120の凸部128に嵌め込まれることにより親爪120と組み合わされる。正六角形の溝115の外周円の直径と凸部128の外周円の直径とは略等しくなるように形成されており、子爪110が親爪120に接続された状態では子爪110の正六角形の溝115の側面と親爪120の凸部128の側面とが互いに接触することで、子爪110がXY平面内で回転しないように固定される。
【0025】
生爪100では、図4(a)に示されるように、子爪110の第1中心軸112aと親爪120の第2中心軸122aとが重なるように子爪110と親爪120とが組み合わされる。また、子爪110の貫通孔114と第1ボルト穴122とは略同じ直径に形成されている。
【0026】
図4(b)は、固定ボルト150が挿入された生爪100の断面図である。図4(b)に示されている生爪100の断面図は、図4(a)と同じである。図4(b)に示される生爪100は、第1ボルト穴112及び第2ボルト穴123に固定ボルト150が挿入されており、固定ボルト150により工作機械等に固定される。固定ボルト150は、例えば頭部151及び軸部152を備え、頭部151が子爪110の円形溝113及び第2ボルト穴123の円形溝126に固定されることにより生爪100が工作機械等に固定される。軸部152には雄ネジとしてのネジ切り加工がなされており、生爪100は工作機械等にネジ止めされる。
【0027】
図5(a)は、回転盤160及び爪受台161の斜視図である。図5(a)では、旋盤の回転盤160及び回転盤160に取り付けられている3つの爪受台161が示されている。生爪100は各爪受台161にそれぞれ取り付けられることにより使用される。各爪受台161は回転盤160の中心に対して前後に移動する。
【0028】
図5(b)は、図5(a)の点線181の拡大図である。図5(b)では、回転盤160に取り付けられた1つの爪受台161が示されている。爪受台161には、爪受台161の中央を回転盤160の外周側から中心側に向かって伸びるように爪受台161の表面から突き出る突起162が形成されている。また、爪受台161の中央付近には、突起162を遮るように溝163が形成されている。生爪100を爪受台161に固定する場合には、生爪100の親爪120の胴体部121の下面121bの溝124が突起162に嵌め込まれ、胴体部121の下面121bの突起125が爪受台161の溝163に入れられる。また、爪受台161には2つのネジ穴164が形成されており、固定ボルト150をネジ穴164に固定することにより生爪100が爪受台161に固定される。
【0029】
図6(a)は、加工された生爪100の上面図である。生爪100では子爪110の各角部110aが被加工物を固定するための爪先となるが、各角部110aは被加工物の形状に合わせて加工されることにより使用される。図6(a)では子爪110の+X軸側の角部110aが被加工物の形状に合わせて削られている。子爪110は6つの角部110aを有するが、各角部110aにそれぞれ異なる加工を施すことができるため、1つの子爪110を多数の異なる形状の被加工物の保持に用いることができる。
【0030】
図6(b)は、チャック165の平面図である。図6(b)ではチャック165が被加工物170を保持している状態が示されている。被加工物170を保持するためのチャック165は、回転盤160、爪受台161、及び生爪100により構成されている。図6(b)では、生爪100が爪受台161に固定ボルト150により固定され、被加工物170を保持している状態が示されている。図6(b)に示されている各生爪100は、図6(a)に示されるように子爪100の角部110aが削られており、これによって被加工物170を広い面積で保持することができ、被加工物170の特定の箇所に力が集中し難くなるため、被加工物170に保持に起因した傷跡が残り難くなり、変形も抑えることができる。また、生爪100の子爪110は、被加工物170と同じ材質で形成されることが望ましい。生爪100の加工は被加工物170の形状に合わせて適宜行われるが、子爪110と被加工物170との材質が同じ場合には、切粉の処理が容易になるため好ましい。
【0031】
生爪100では、子爪110を親爪120に対して回転しないように固定する際に、子爪110の外壁を抑えるのではなく、子爪110の正六角形の溝115の内壁を抑えることにより固定している。そのため、図6(a)のように子爪110の外壁が削られて外壁の形状が変わったとしても子爪110を固定する力が落ちることがない。また、子爪110と親爪120とが子爪110の正六角形の溝115の側面と親爪120の凸部128の側面とが接するように組み合わされるため、子爪110と親爪120との側面の接触面積が大きくなり、子爪110がXY平面内で回転しないように強く固定することができるため好ましい。
【0032】
さらに、子爪110では、子爪110の正六角形の溝115の側面が子爪110の外壁から離れるため子爪110の切削領域を広く確保することができ、図6(a)のように子爪110の外壁を大きく削ることができ、様々な形状及び大きさの被加工物に対応し易くなるため好ましい。
【0033】
(第2実施形態)
生爪を構成する子爪及び親爪は、様々な形状に形成することが出来る。以下に、子爪及び親爪の変形例について説明する。
【0034】
<親爪220の構成>
図7(a)は、親爪220の斜視図である。親爪220は、胴体部121と凸部228とを有している。凸部228は、外形が六角柱状に形成されており、中心に第1ボルト穴122が開けられている。凸部228の角部228aは、図3(a)に示される凸部128の角部128aとは異なり、丸面取りされておらず鈍角として形成されている。親爪220のその他の部分は親爪120と同様である。
【0035】
<子爪210の構成>
図7(b)は、子爪210の下面図である。子爪210は、子爪110(図2(a)から図2(c)参照)の正六角形の溝115の代わりに正六角形の溝215が形成されており、他の構成要素は子爪110と同じである。正六角形の溝215では、正六角形の溝215の各角部に円形溝215aが形成されている。円形溝215aの半径R1は、正六角形の溝215の各辺の長さS1の半分の長さより短く形成されている。これにより、正六角形の溝215には凸部228の側面に接触する側壁が必ず形成されることになる。
【0036】
図7(a)に示される親爪220の凸部228に子爪110を嵌め込んで使用しようとする場合には、子爪110の正六角形の溝115の角部115a(図2(c)参照)と親爪220の凸部228の角部228aとが接触し、凸部228の側面と正六角形の溝115の側壁とが接触しないため、子爪110のXY平面内の回転を十分に抑えることができない場合がある。また、正六角形の溝115はエンドミルで形成するため、凸部228の形状に合わせて角部115aを鈍角状に形成することも困難である。
【0037】
これに対して、子爪210は親爪220に用いることができる。子爪210が親爪220と組み合わされる場合には、正六角形の溝215の角部の円形溝215aに凸部228の角部228aが入り、正六角形の溝215の側壁と凸部228の側面とを接触させることができるため、子爪210を親爪220に強固に固定することが出来る。
【0038】
<子爪310の構成>
図8(a)は、子爪310の斜視図である。子爪310は、外形が正六角柱状に形成されている。子爪310の+Z軸側の面である上面311a及び−Z軸側の面である下面311bは正六角形に形成されている。子爪310の中央には子爪310をZ軸方向に貫通する第1貫通孔312が形成されている。第1貫通孔312は、上面311aの中央に形成される円形の溝313と、下面311bの中央に形成され円形の溝313に繋がる正六角柱状の貫通孔314と、により形成されている。正六角柱状の貫通孔314の角部314aは、図2(c)の子爪110の正六角形の溝115の角部115aとは異なり、鈍角に形成されている。
【0039】
図8(b)は、図8(a)のD−D断面図である。子爪310、子爪310の正六角柱状の貫通孔314、及び円形の溝313は、共にZ軸方向に伸びる第1中心軸312aを中心軸としている。子爪310の円形の溝313は直径がD1に形成されており、正六角柱状の貫通孔314は正六角柱の外接円の直径がD2に形成されている。子爪310では、直径D1が直径D2よりも大きく形成されており、子爪310を固定ボルトで固定する場合には、固定ボルトの頭部が円形の溝313で抑えられる。
【0040】
正六角柱状の貫通孔314は、例えば、ワイヤー放電カットにより形成される。そのため、図8(a)のように、正六角柱状の貫通孔314の角部314aを鈍角に形成することができる。また、正六角柱状の貫通孔314の角部314aが鈍角に形成されるため、子爪310は親爪220(図7(a)参照)のような凸部228の角部228aが鈍角に形成される親爪と組み合わせて使用することができる。
【0041】
図8(c)は、座金330の断面図である。座金330は、固定ボルト150により子爪310を有する生爪を工作機械等に取り付ける際に、子爪310に取り付けて用いられる。座金330は、円盤状の基部335及び基部335の−Z軸側の面に形成される凸部336により形成されている。基部335は、座金330が子爪310に取り付けられる際に、子爪310の円形の溝313に嵌め込まれる。また、凸部336は、座金330が子爪310に取り付けられる際に、子爪310の正六角柱状の貫通孔314に嵌め込まれる。凸部336は、例えば円柱状又は正六角柱状の貫通孔314の形状に合わせて正六角柱状に形成され、親爪の凸部(例えば凸部128)と座金330の凸部336との合計の高さが子爪310の正六角柱状の貫通孔314のZ軸方向の長さと同一又はこれよりも小さくなるように形成される。基部335及び凸部336は、座金330が子爪310に取り付けられた際に、第1中心軸312aが中心軸となるように形成されている。
【0042】
座金330の中心にはZ軸方向に貫通する貫通孔332が形成されている。貫通孔332は、座金330の+Z軸側の面に形成される上部円形溝333と、座金330の−Z軸側の面に形成されると共に上部円形溝333に接続され上部円形溝333よりも半径が小さい下部円形溝334と、により形成されており、第1中心軸312aを中心軸としている。子爪310を有する生爪を工作機械に固定する際には、座金330を子爪310に嵌め込み、固定ボルト150を頭部151が上部貫通孔333に固定されるように貫通孔332に刺し込んで、工作機械等にネジ止めすることができる。
【0043】
<親爪320の構成>
図9(a)は、親爪320の平面図である。親爪320は親爪120と同様に胴体部121と凸部128とを含んでいるが、親爪120とは異なり凸部128の+X軸方向には角部128aではなく側面が向くように形成されている。
【0044】
図9(b)は、チャック265の平面図である。図9(b)では、生爪300が爪受台161に固定ボルト150により固定され、チャック265が被加工物171を保持している状態が示されている。チャック265は、回転盤160、爪受台161、及び生爪300により構成されている。生爪300は、子爪110と親爪320とが組み合わされることにより形成されている。生爪300では、子爪110の正六角形の溝115に親爪320の凸部128が嵌め込まれて組み合わされるため、子爪110の側面がX軸方向に向くことになる。図9(b)に示される生爪300は、子爪110の被加工物171に接触する側面が被加工物171の形状に合わせて削られている。
【0045】
比較的大きな被加工物171を子爪110の角部110aで保持しようとする場合には、被加工物171と子爪110との接触面積を確保するために子爪110の角部110aを深く削らなければならない。そのため、子爪110の加工が困難になる場合がある。生爪300では、子爪110の側面を被加工物171の保持のために加工することにより、子爪110の加工量を少なくするとともに、被加工物171と子爪110との接触面積を広くすることができる。
【0046】
<親爪420の構成>
図10(a)は、親爪420の斜視図である。親爪420は、例えば油圧のパワーチャックに用いられる。親爪420は、胴体部421と凸部428とを有している。胴体部421はX軸方向に長辺が伸びY軸方向に短辺が伸びた略直方体状に形成されており、+Z軸側の面である上面421aには凸部428が形成され、−Z軸側の面である下面421bには、下面421bの中央で−X軸側から+X軸側にまで伸びる溝424が形成されている。凸部428の中央には内側に雌ネジとしてネジが切られた第2貫通孔428bが形成されており、凸部428の外壁には丸面取りされた角部428aが形成されている。凸部428は+X軸側の端に角部428aが配置されている。また、胴体部421には、凸部428とは異なる箇所に第1ボルト穴422及び第2ボルト穴423が形成されている。
【0047】
図10(b)は、図10(a)のE−E断面図である。第1ボルト穴422は、Z軸に平行な第2中心軸422aを有し、第2ボルト穴423はZ軸に平行な中心軸423aを有している。第1ボルト穴422及び第2ボルト穴423は、上面421aに接続される円形溝426と、下面421b及び円形溝426に接続される円形溝427と、により構成されている。円形溝426の直径は円形溝427よりも大きく形成されている。凸部428は第1ボルト穴422及び第2ボルト穴423とはZ軸方向に重ならないように形成されている。凸部428に形成される第2貫通孔428bは、凸部428を貫通するものの胴体部421は貫通しないように形成されている。凸部428及び第2貫通孔428bは、共通の中心軸である第2中心軸422aを有している。
【0048】
<子爪410の構成>
図11(a)は、子爪410の断面図である。また、図11(a)は、後述の図11(b)のG−G断面図である。子爪410は、子爪110と同じく外形が正六角柱状に形成されており、下面411bに正六角形の溝115が形成されている。また、正六角形の溝115と上面411aとを繋ぐように貫通孔114が形成されている。正六角形の溝115及び貫通孔114は、子爪410をZ軸方向に貫通する第1貫通孔412を形成している。正六角形の溝115と貫通孔114とは同じ第1中心軸112aを有している。
【0049】
図11(b)は、子爪410の下面図である。図11(b)に示されるように、正六角形の溝115は貫通孔114よりも大きく形成されている。そのため、子爪410を固定する場合には、固定ボルトに頭部の大きさが貫通孔114の大きさよりも大きいものを用いることにより固定ボルトの頭部を上面411aで抑えて子爪410を固定することができる。
【0050】
<子爪510の構成>
図12(a)は、子爪510の断面図である。また、図12(a)は、後述の図12(b)のH−H断面図である。子爪510は、子爪110と同じく外形が正六角柱状に形成されており、上面111a及び下面111bに正六角形の溝115が形成されている。また、上面111a及び下面111bの正六角形の溝115を繋ぐように貫通孔514が形成されている。正六角形の溝115及び貫通孔514は、子爪510をZ軸方向に貫通する第1貫通孔512を形成している。正六角形の溝115と貫通孔514とは同じ第1中心軸112aを有している。子爪510は、上面111aの正六角形の溝115及び貫通孔514以外は、子爪110(図2参照)と構成は同じである。子爪510では、形状が上下対称となるように形成されているため、上面111aを−Z軸側の面とし、下面111bを+Z軸側の面として上下反転させて用いることもできる。
【0051】
図12(b)は、子爪510の斜視図である。子爪510は、角部110aが加工されて被加工物を保持するための保持部が形成される。図12(b)に示される子爪510では、1つの角部110aの上面111a側に扇形の保持部511aが形成され、保持部511aの下面111b側にさらに保持部511aよりも半径の小さい扇形の保持部511bが形成されている。また、角部110aの下面側111bには、扇形の保持部511cが形成されている。子爪110は六角柱状に形成されるため6つの角部110aにそれぞれ異なる保持部を形成することができるが、子爪510では上下反転させて用いることができるため、1つの角部110aの上面111a側及び下面111b側にそれぞれ保持部を形成することができ、計12カ所にそれぞれ異なる保持部を形成することができる。
【0052】
以上、本発明の最適な実施形態について詳細に説明したが、当業者に明らかなように、本発明はその技術的範囲内において実施形態に様々な変更・変形を加えて実施することができる。
【0053】
例えば、上記の実施形態では子爪の外形、子爪の下面の溝、及び親爪の凸部が正六角柱状に形成されたが、正六角柱状に限らず正三角柱、正四角柱等の正多角柱状に形成されてもよい。子爪の外形と子爪の下面の溝の平面形状と親爪の凸部とが同一の正多角形により形成される場合には、子爪を親爪に取り付けた状態で容易に動かないように十分な固定を行うことができ、子爪を回転して親爪に取り付けることにより子爪の各角部を異なる被加工物に用いることができる。
【0054】
また、上記の実施形態では図6(b)等に示されるように子爪が回転盤160の中心側に配置されるように生爪が回転盤160に取り付けられることを想定して説明されたが、生爪は子爪が回転盤160の外側に配置されるように反転して回転盤160に取り付けられ、逆爪として用いられても良い。
【0055】
また、上記の実施形態では生爪を旋盤の回転盤に取り付けることを想定した説明がなされたが、生爪はNC旋盤及びフライス盤における被加工物の固定に用いられても良い。さらに、上記の実施形態は様々に組み合わせて実施されても良い。
【符号の説明】
【0056】
100、300 … 生爪
110、210、310、410、510 … 子爪
110a … 子爪の角部
111a、311a、411a … 上面
111b、311b、411b … 下面
112、312、412、512 … 第1貫通孔
112a、312a … 第1中心軸
113 … 円形溝
114、514 … 貫通孔
115、215 … 正六角形の溝
115a … 正六角形の溝115の角部
120、220、320、420 … 親爪
121、421 … 胴体部
121a、421a … 胴体部の上面
121b、421b … 胴体部の下面
122、422 … 第1ボルト穴
122a、422a … 第2中心軸
123、423 … 第2ボルト穴
123a … 第2ボルト穴の中心軸
124、424 … 胴体部の下面の溝
125 … 胴体部の下面の突起
126、127、426、427 … 円形溝
128、228、428 … 凸部
128a、228a、428a … 凸部の角部
128b、428b … 第2貫通孔
150 … 固定ボルト
151 … 頭部
152 … 軸部
160 … 回転盤
161 … 爪受台
162 … 突起
163 … 溝
164 … ネジ穴
165、265 … チャック
170 … 被加工物
215a … 円形溝
313 … 円形の溝
314 … 正六角柱状の貫通孔
330 … 座金
332 … 貫通孔
333 … 上部円形溝
334 … 下部円形溝
335 … 基部
336 … 凸部
511a、511b、511c … 保持部
【要約】
【課題】本発明では、生爪の回転を十分に抑えることができると共に、生爪の加工領域を十分に大きく取ることができる生爪を提供する。
【解決手段】生爪(100)は、外形が正多角柱状に形成され、正多角柱の中心軸である第1中心軸(112a)を通るように正多角柱の上面まで貫通する第1貫通孔(112)、及び第1貫通孔を通るように正多角柱の下面に形成されている正多角形の溝を有し、被加工物を把持する子爪(110)と、工作機械に取り付けるための固定ボルトが挿入される第1ボルト穴(122)及び第2ボルト穴(123)と、子爪の正多角形の溝に嵌め込まれて子爪を固定する正多角柱状の凸部(128)と、を備える親爪(120)と、を有する。凸部には凸部を貫通する第2貫通孔(128b)が形成され、子爪が親爪に固定される場合には第1中心軸と第2貫通孔の中心軸である第2中心軸(122a)とが重なっている。
【選択図】図4
図1
図2
図3
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図12