(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接着剤は、マイクロカプセルに封入された前記硬化剤を前記主剤に混入して構成され、外力により前記マイクロカプセルが破壊されることで前記硬化剤と前記主剤とが混合されて硬化する請求項7に記載のダイレクトドライブモータ。
前記内輪と前記第1ハウジングとの隙間、及び、前記外輪と前記第2ハウジングとの隙間の少なくとも一方に第2隙間封止部材が配置される請求項1乃至9のいずれか一項に記載のダイレクトドライブモータ。
前記第1ハウジング及び前記第2ハウジングは磁性体で形成され、前記第2隙間封止部材が配置される第1ハウジング及び前記第2ハウジングの表面には、無電解ニッケル−リンめっき処理が施される請求項10または11に記載のダイレクトドライブモータ。
前記レゾルバは、前記第1ハウジングに固定されるレゾルバステータと、前記レゾルバステータと所定の間隔をもって対向し、前記第2ハウジングに固定されるレゾルバロータと、で構成され、前記レゾルバロータは、前記レゾルバステータとの対向面の反対側の面に空間を有するように前記第2ハウジングに固定される請求項13に記載のダイレクトドライブモータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、産業利用される製品としては、軸受をできるだけ簡単に組み込み可能な構成とし、また小型化することが重要である。従来の技術では、軸受の軸方向への移動は抑えられるものの、軸受の支持構造が煩雑となる。更に、分割されたハウジングをボルトで締結する場合、一般に、ボルトは軸受と同心円状に複数個(例えば6個以上)使用され、ハウジングが均等に軸受の軸方向端面に接触するように、複数個のボルトを均等に締め込む必要がある。ねじ穴との接触反力を感じながら、少しずつ複数個のボルトを締めこんでいく作業は、人間には可能であるが作業時間が長くかかり、装置によって自動化することは困難であった。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、簡単な構成で軸受の軸方向への移動を防止できる
ダイレクトドライブモータ、この
ダイレクトドライブモータを用いた搬送装置、検査装置、及び、工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の軸受装置は、転動体を挟んで対向配置された内輪及び外輪を有する軸受と、内輪に支持される第1ハウジングと外輪に支持される第2ハウジングとを有するハウジングとを備え、第1ハウジング及び第2ハウジングの少なくとも一方は、軸受の一方の軸方向端面側に延在する鍔部と、該軸受の他方の軸方向端面側に配置される止め輪と、を備え、鍔部と軸受の一方の軸方向端面、または、止め輪と軸受の他方の軸方向端面の隙間に、樹脂材料で形成された押し輪を設けたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、鍔部と軸受の一方の軸方向端面、または、止め輪と軸受の他方の軸方向端面の隙間に樹脂材料で形成された押し輪を設けたため、この押し輪が止め輪及び軸受の軸方向の幅寸法公差を吸収することにより、簡単な構成で、軸受の軸方向への移動を防止できる。
【0009】
この構成において、少なくとも鍔部が形成された一方のハウジングは、周方向に延びる溝部を備え、この溝部に止め輪が装着されてもよい。この構成によれば、止め輪をハウジングに簡単に取り付けることができ、軸受を支持する構造を簡素化できる。
【0010】
また、第1ハウジング及び第2ハウジングは、それぞれ円筒形状に形成され、少なくとも鍔部が形成された一方のハウジングは、該円筒の延出方向に対して切れ目なく一体をなして成形されていてもよい。この構成によれば、鍔部が形成された一方のハウジングを軸方向に大型化することなく、軸受を支持することができ、軸受装置の小型化を図ることができる。
【0011】
また、押し輪は、鍔部、または、止め輪と接触する第1接触面と、軸受の一方、または、他方の軸方向端面に接触する第2接触面とを備え、これら第1接触面と第2接触面とを該押し輪の径方向にずれた位置に形成してもよい。この構成によれば、押し輪に荷重をかけた場合に、この押し輪のひずみ量(たわみ量)を大きく確保することができ、効果的に変形させることができる。
【0012】
また、押し輪は、鍔部と軸受の一方の軸方向端面との隙間に設けられると共に、止め輪と軸受の他方の軸方向端面との隙間、及び、止め輪と溝部との隙間の少なくとも一方には、樹脂材料で形成された第1隙間封止部材が配置されてもよい。この構成によれば、第1隙間封止部材が、止め輪や溝部のうねりやゆがみによって生じる隙間を封止するため、軸受装置の剛性低下を抑制できる。
【0013】
また、第1隙間封止部材は、止め輪に貼着される樹脂フィルムであってもよい。この構成によれば、第1隙間封止部材を、止め輪と軸受の他方の軸方向端面との隙間、及び、止め輪と溝部との隙間に、簡単に配置できる。
【0014】
また、第1隙間封止部材は、主剤と、主剤と混合されて該主剤を硬化させる硬化剤とを有する接着剤であってもよい。この構成によれば、止め輪を溝部に装着した後に接着剤が硬化することで、止め輪や溝部のうねりやゆがみによって生じる隙間を簡単に封止できる。
【0015】
また、主剤及び硬化剤の一方は、軸受の他方の軸方向端面及び溝部に塗布され、主剤及び硬化剤の他方は、止め輪に塗布された状態で、止め輪が溝部に装着されてもよい。この構成によれば、接着剤の事前混合が不要であるため、軸受の他方の軸方向端面と溝部とに、主剤、または、硬化剤を塗布した状態で放置することが可能となり、軸受の組み付け工程の柔軟性が向上する。
【0016】
また、接着剤は、マイクロカプセルに封入された硬化剤を主剤に混入して構成され、外力によりマイクロカプセルが破壊されることで硬化剤と主剤とが混合されて硬化する構成としてもよい。この構成によれば、例えば、止め輪に接着剤を事前に塗布しておくことで、該止め輪を溝部に装着した後に接着剤を硬化させることができ、接着剤の取り扱いが容易となる。
【0017】
また、内輪と第1ハウジングとの隙間、及び、外輪と第2ハウジングとの隙間の少なくとも一方に第2隙間封止部材が配置されてもよい。この構成によれば、第2隙間封止部材が上記隙間を封止することにより、第1ハウジング及び第2ハウジングの加工の簡素化を図ると共に、軸受の径方向への移動を抑制できる。
【0018】
また、第2隙間封止部材は、隙間に充填された後に硬化する接着剤であってもよい。この構成によれば、隙間に充填された接着剤による張力の均衡化によって、軸受の中心と第1ハウジング、及び、第2ハウジングの中心との調芯が実現される。
【0019】
また、第1ハウジング及び第2ハウジングは磁性体で形成され、第2隙間封止部材が配置される第1ハウジング及び第2ハウジングの表面には、無電解ニッケル−リンめっき処理が施されてもよい。この構成によれば、無電解ニッケル−リンめっき処理を施さないものに比べて、調芯力を高めることができる。
【0020】
また、第1ハウジングまたは第2ハウジングの一方に固定される固定子と、第1ハウジングまたは第2ハウジングの他方に固定されて、固定子に対して回転可能な回転子とを有するモータ部と、モータ部の回転状態を検出するための回転検出器とを備え、回転検出器は、固定子に対する回転子の相対変位を検出するインクリメンタル方式の単一のレゾルバとしてもよい。この構成によれば、ハウジングの軸方向の高さの増大を抑制でき、軸受装置の小型化を図ることができる。
【0021】
また、モータ部への電源投入時に力率が0となる位置を検出する力率検出部と、力率が0となる位置とレゾルバから出力されるインクリメンタル情報とにより、該モータ部の転流を制御する転流制御部とを備えてもよい。この構成によれば、単一のレゾルバを搭載した構成であっても、モータ部の回転状態を高精度に検出できる。
【0022】
また、レゾルバは、第1ハウジングに固定されるレゾルバステータと、レゾルバステータと所定の間隔をもって対向し、第2ハウジングに固定されるレゾルバロータと、で構成され、レゾルバロータは、レゾルバステータとの対向面の反対側の面に空間を有するように第2ハウジングに固定されてもよい。この構成によれば、外部からの影響を受けにくく、自己インダクタンスが安定するため固定子に対する回転子の相対変位をより高精度に検出できる。
【0023】
また、モータ部、軸受、及び、レゾルバは、軸受の軸方向に並んで配置されてもよい。この構成によれば、回転軸を中心とした径方向への大型化が抑制されるため、軸受装置の設置面積(いわゆるフットプリント)の低減を図ることができる。
【0024】
また、本発明の搬送装置は、上記した軸受装置を備え、第1ハウジングまたは第2ハウジングの回転により搬送物を搬送することを特徴とする。この構成によれば、搬送物を搬送する際の位置精度を高めると共に、搬送装置の小型化を実現できる。
【0025】
また、本発明の検査装置は、上記した軸受装置を備え、第1ハウジングまたは第2ハウジングの回転により移動する対象物を個々に検査する検査部とを備えることを特徴とする。この構成によれば、対象物を検査部まで移動する際の位置精度を高めると共に、検査装置の小型化を実現できる。
【0026】
また、本発明の工作機械は、上記した軸受装置を備え、第1ハウジングまたは第2ハウジングの回転により移動する対象物を個々に加工する加工部とを備えることを特徴とする。この構成によれば、対象物を加工部まで移動する際の位置精度を高めると共に、工作機械の小型化を実現できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、鍔部と軸受の一方の軸方向端面、または、止め輪と軸受の他方の軸方向端面の隙間に樹脂材料で形成された押し輪を設けたため、この押し輪が止め輪及び軸受の軸方向の幅寸法公差を吸収することにより、簡単な構成で、軸受の軸方向への移動を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0030】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るダイレクトドライブモータの構成を示す断面図である。ダイレクトドライブモータ(軸受装置:以下、DDモータという)10は、減速機構(例えば、減速ギヤ、伝動ベルトなど)を介在させること無く回転体に回転力をダイレクトに伝達し、当該回転体を所定方向に回転させることができる。
【0031】
本実施形態のDDモータ10は、いわゆるアウターロータ型として構成されている。DDモータ10は、
図1に示すように、基台1に固定される環状のハウジングインナ(第1ハウジング)3と該ハウジングインナ3の外側に配置される環状のロータフランジ(第2ハウジング)5とを有するハウジング7とを備える。また、DDモータ10は、ハウジングインナ3とロータフランジ5との間に組み込まれ、ハウジングインナ3に対してロータフランジ5を回転させるモータ部9と、ロータフランジ5をハウジングインナ3に回転可能に支持する軸受11とを備える。
【0032】
ハウジングインナ3及びロータフランジ5は、それぞれ異径の略円筒形状に形成され、回転軸Sに対して同心状に配置されている。ロータフランジ5は、円筒の延出方向(
図1では上下方向)に切れ目なく一体に成形されている。すなわち、ロータフランジ5は、回転軸Sの軸方向に、下端部から上端部まで全周に亘って連続する略円筒状に構成されており、上端部に各種ワーク(図示しない)が取り付けられるようになっている。モータ部9によってロータフランジ5を回転させることで、ロータフランジ5と共に各種ワークを所定方向に回転させることができる。このように、ロータフランジ5は、モータ部9の動作によって回転軸Sを中心に回転運動するため、出力軸として機能する。また、ハウジングインナ3は、回転軸Sの軸方向に、下端部から軸受11まで全周に亘って連続する略円筒状に構成されており、この軸受11を内輪押え29とで挟持している。
【0033】
モータ部9は、ハウジング7の下部(基台1の近く)に配置される。モータ部9は、ハウジングインナ3の外周面に固定されたステータ(固定子)13と、ロータフランジ5の内周面に固定されて、ステータ13に対向配置されるロータ(回転子)15とを備える。ステータ13は、ロータフランジ5の回転方向に沿って所定間隔(例えば、等間隔)で同心状に配列されるモータコア17を備え、各モータコア17に素線が多重に巻回されてなるステータコイル19が固定されている。ステータ13には、制御ユニット20(
図2)からの電力を供給するための配線が接続されており、当該配線を通じてステータコイル19に対して電力が供給されるようになっている。ロータ15は、ロータフランジ5の回転方向に沿って所定間隔(例えば、等間隔)で同心状に配列される永久磁石によって構成される。制御ユニット20を通じて、ステータコイル19に通電されると、フレミングの左手の法則に従ってロータフランジ5に回転力が与えられ、ロータフランジ5は所定方向に回転する。
【0034】
軸受11は、モータ部9よりも軸方向に基台1から遠い位置に配置される。軸受11は、相対回転可能に対向配置された内輪21及び外輪23と、これら内輪21及び外輪23の間に転動可能に設けられた複数の転動体25とを備える。軸受11は、1つでアキシアル荷重とモーメント荷重の両方を負荷することが可能なものであることが好ましく、例えば、4点接触玉軸受、3点接触玉軸受、深溝玉軸受、あるいはクロスローラ軸受などを採用することができる。クロスローラ軸受を採用する場合には、一般的な内輪もしくは外輪が分割構造となるものではなく、内外輪とも一体構造のものを使用することが望ましい。内輪21は、ハウジングインナ3と内輪押え29とで挟持され、外輪23はロータフランジ5の内周面に固定されている。軸受11の支持構造については後述する。
【0035】
また、DDモータ10は、軸受11の上方(すなわち軸受11よりも軸方向に基台1から遠い位置)に、モータ部9の回転状態(例えば、回転速度、回転方向あるいは回転角度など)を検出するためのレゾルバ(回転検出器)27が設けられている。これにより、ロータフランジ5に取り付けられた各種ワークを所定角度だけ正確に回転させ、目標位置に高精度に位置決めすることが可能となる。また、レゾルバ27は、ハウジングインナ3に連結される内輪押え29の上部に設けられた円板状のカバー31によって外界から隔離されて保護されている。
【0036】
本実施形態では、DDモータ10は、モータ部9、軸受11及びレゾルバ27を回転軸Sの軸方向(
図1では上下方向)へ並ぶようにハウジング7内に縦列配置した構成としている。これにより、DDモータ10では、回転軸Sを中心とした径方向への増大が抑制されるため、ハウジング7の設置面積(いわゆるフットプリント)の低減を図ることができる。一方、近年、ハウジングの設置面積のみならず、軸方向の高さ寸法を低減したDDモータが要望されている。一般に、DDモータは、モータ部の回転状態をより高精度に検出するために、回転検出器として、アブソリュートレゾルバと、モータの位置決め及び速度制御のフィードバックを行うためのインクリメンタルレゾルバとの2種類のレゾルバが搭載され、これら各レゾルバを軸方向へ縦列配置している。各レゾルバは、例えば、モータのハウジング内径側に係合して位置決めされ、レゾルバロータが固定された後にボルト等で固定されている。この構成では、2種類のレゾルバを搭載するために、DDモータの軸方向への寸法が増大していた。
【0037】
この問題を解消するために、本実施形態では、ハウジング7内に単一のレゾルバ27だけが配置されている。レゾルバ27は、ステータ13に対するロータ15の相対変位を検出するインクリメンタルレゾルバである。レゾルバ27は、軸受11の軸心に対して偏心させた内周を有する円環状のレゾルバロータ33と、レゾルバロータ33と所定間隔をもって対向して配置され、レゾルバロータ33との間のリラクタンス変化を検出するレゾルバステータ35とを有して構成されている。レゾルバロータ33は、ボルト33aによりロータフランジ5の内周面に形成されたレゾルバロータ固定部5aに一体に取り付けられている。また、レゾルバステータ35は、ボルト35aにより内輪押え29の外周面に形成されたレゾルバステータ固定部29aに一体に取り付けられている。レゾルバロータ33を偏心させてレゾルバロータ33とレゾルバステータ35との間の距離を円周方向に変化させることにより、リラクタンスがレゾルバロータ33の位置により変化するようになっている。したがって、ロータフランジ5の1回転につきリラクタンス変化の基本波成分が1周期となるため、レゾルバ27は、ロータフランジ5の回転角度位置に応じて変化するレゾルバ信号(インクリメンタル情報)を出力する。
【0038】
図2は、DDモータの回転角度位置を制御する構成を示すブロック図である。DDモータ10には、このDDモータ10の動作を制御する制御ユニット20が接続されている。この制御ユニット20は、レゾルバ27が検知したレゾルバ信号及びモータ部9から出力されるモータ電流等から力率を検出する力率検出部41と、この検出した力率とレゾルバ信号とに基づいて、モータ部9の転流を制御する転流制御部43とを備える。
【0039】
本実施形態では、力率検出部41は、モータ部9(ステータコイル19)への電源を投入した際に力率が0となるレゾルバロータ33の位置を検出し、この検出した位置を基準位置として設定する。そして、この基準位置を転流制御部43に出力する。転流制御部43は、レゾルバ27が検出するレゾルバ信号を取得し、このレゾルバ信号の変化と、基準位置とに基づき、モータ部9に流れるモータ電流の転流タイミングの制御を行う。これにより、モータ電流の転流タイミングを検出する際にアブソリュートレゾルバが不要となるため、従来の構成のように、アブソリュートレゾルバとインクリメンタルレゾルバの2種類の回転検出器を搭載させる必要がない。したがって、単一のレゾルバ構成とすることができ、DDモータ10の軸方向の高さを抑えることができる。
【0040】
ところで、DDモータ10は、出力軸としてのロータフランジ5を高精度に回転させつつ位置決めするために、その回転状態をより高精度に検出する必要がある。このため、ハウジングインナ3とロータフランジ5とを支持する軸受11の支持構造が重要となり、特に、軸受11の軸方向への移動(スラストプレイ)の抑制を簡単に行える構造が要望されている。次に、軸受11の支持構造について説明する。
【0041】
ロータフランジ5の内周面には、
図1に示すように、外輪保持部50が全周に亘って形成されており、この外輪保持部50のレゾルバ27側には、全周に亘って、軸受11(外輪23)の外径よりも縮径して内側に突出する鍔部51が形成されている。また、外輪保持部50のモータ部9側には、軸受11(外輪23)の外径よりも拡径された溝部52が形成されている。鍔部51は、外輪23の軸方向一端面(レゾルバ27側端面;一方の軸方向端面)23a側に延在する。鍔部51は、この鍔部51の内周面51bが外輪23の内周面よりも外側に位置し、かつ、外輪23の面取部よりも内側に位置するように形成することが好ましい。これによれば、鍔部51で軸受11の外輪23を確実に支持することができる。
【0042】
また、溝部52には、外径方向に膨らもうとするばね力をもつC型止め輪(止め輪)53が装着され、このC型止め輪53は、外輪23の軸方向他端面(モータ部9側端面;他方の軸方向端面)23b側に延在する。溝部52の外径は軸受11の外輪23の最外径より少し大きく、軸受11自体の許容荷重がC型止め輪53に加わっても外れないようになっている。なお、止め輪としては、C型止め輪だけでなく、ばねリングを用いることもできる。
【0043】
このように、軸受11は、外輪保持部50の軸方向の上下(両端)に設けられた鍔部51とC型止め輪53とによって挟持される。しかしながら、通常、軸受11及びC型止め輪53は、軸方向の寸法公差を有する上、溝部52の加工誤差なども考慮すると、鍔部51とC型止め輪53とで軸受11の軸方向の移動(スラストプレイ)を完全に抑えて支持することは困難である。このため、本構成では、外輪23の軸方向一端面23aと鍔部51との隙間に高分子樹脂材料で形成された押し輪55(
図3)が配置されている。この押し輪55は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂の高分子樹脂材料で環状に形成されており、軸受11の軸方向の幅寸法公差を吸収可能とすると共に、軸受11が軸方向に移動されることを完全に防止する。
【0044】
本実施形態のように、DDモータ10に熱可塑性樹脂製の押し輪55を設ける場合、耐熱温度が100℃以上となる熱可塑性樹脂を用いるのが好ましい。また、圧縮降伏強さ、曲げ強さ、圧縮弾性率(または引っ張り弾性率、ヤング率)等の特性が優れた熱可塑性樹脂が好ましい。具体例としては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルサルフォン(PES)、または、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等のスーパーエンジアリングプラスチックと呼ばれる材料が耐熱温度と機械的性質の点で好ましい。また、耐溶剤性が要求される場合には、結晶性樹脂が好ましいが、DDモータ10に使用する場合には、結晶性または非結晶性樹脂のどちらを使用することも可能である。さらに、押し輪を成形する際に、機械加工だけでなく金型成形ができる熱可塑性樹脂がより好ましい。
【0045】
また、C型止め輪53の厚さのばらつき、溝部52の位置や高さなどの加工誤差、及び、軸受11の軸方向の幅寸法公差などから、熱可塑性樹脂で成形された押し輪55に要求されるひずみ量が算出できる。このひずみ量は、軸受11が損傷しないように、軸受11の基本動定格荷重を加えた状態でのひずみ量である。ここで、鍔部51と外輪23とはほぼ同じ径寸法である。このため、押し輪55を、外輪23とほぼ同一径寸法の単純な平リング形状とすると、ひずみ量は、樹脂の縦弾性係数あるいはヤング率によって決まるため、わずかなひずみ量しか許容できなくなる。そこで、本実施形態では、
図3に示すように、押し輪55は、鍔部51の支持面51aに接触する第1接触面55aと、外輪23の軸方向一端面23aに接触する第2接触面55bとを備え、これら第1接触面55aと第2接触面55bとが押し輪55の径方向にずれた位置に形成されている。具体的には、押し輪55は、断面略六角形状をしており、第1接触面55aに連なり、支持面51aから離れる方向に傾斜する第1傾斜面55cと、第2接触面55bに連なり、軸方向一端面23aから離れる方向に傾斜する第2傾斜面55dとを備えている。そして、第1接触面55aの軸方向下方に第2傾斜面55dが設けられ、第2接触面55bの軸方向上方に第1傾斜面55cが設けられている。これにより、押し輪55に対して軸方向の荷重がかかった場合には、押し輪55は、例えば、第2傾斜面55dと外輪23の軸方向一端面23aとの隙間を利用してひずむことにより、押し輪55のひずみ量(たわみ量)を大きく確保することができ、効果的な変形を行うことができる。
【0046】
押し輪55は、一度、配置された後は、温度によって大きく変化しない圧縮特性、穏やかなクリープ特性、疲労特性を備えるため、DDモータ10に組み込まれた状態で、軸受11の軸方向移動が生じることを抑えることができる。また、例えば、ロータフランジ5に外部荷重を与えた場合であっても、変位はわずかなため、レゾルバ27が誤作動をすることはない。このため、本構成のような単一のレゾルバ27で動作を制御する構成でも、高精度な回転制御を行うことができる。さらに、押し輪55は、圧縮特性に優れた樹脂材料で成形されているため、外部荷重を取り除くと変位は元に戻る。
【0047】
このように、本実施形態では、ロータフランジ5は、軸受11の外輪23の軸方向一端面23a側に延在する鍔部51と、外輪23の軸方向他端面23b側に配置されるC型止め輪53とを備え、鍔部51と軸方向一端面23aとの隙間に、樹脂材料で形成された押し輪55を配置したため、簡単な構成で、軸受11の軸方向の幅寸法公差を吸収可能とすると共に、軸受11が軸方向に移動されることを完全に防止することができる。
【0048】
次に、熱可塑性樹脂で成形された押し輪55の取り付け手順について説明する。
図4は、押し輪55の取り付け手順を説明する断面図である。具体的には、
図4に示すように、鍔部51と軸受11との間に押し輪55を配置し、軸受11の内輪21に嵌る本体部60Aと、本体部60Aの外周部に内輪21と当接するフランジ60Bとを有する冶具60を装着する。そして、この冶具60を用いて、軸受11及び押し輪55に圧縮方向(
図4中A方向)の荷重を加え、この間にC型止め輪53を溝部52に装着する。これにより、軸受11の軸方向の隙間をなくした状態で軸受11の組み付けができる。なお、組み付け時の圧縮方向の荷重は、軸受11のアキシアル基本動定格荷重以下が望ましく、最大でもアキシアル基本静定格荷重以下とすることで、組み付け時の軸受11の損傷を防ぐことができる。
【0049】
本実施形態では、押し輪55の形状の一例として、断面略六角形状をしたものを説明したが、押し輪の形状は、上記したものに限るものではない。例えば、
図5に示すように、鍔部51の支持面51aに接触する第1接触面155aと、外輪23の軸方向一端面23aに接触する第2接触面155b,155cとを備えた押し輪155であってもよい。この押し輪155は、第2接触面155b,155cを径方向に離して形成し、これら第2接触面155b,155c間に空隙部155dを備え、この空隙部155dの軸方向上方に第1接触面155aが位置している。すなわち、押し輪155は、第1接触面155aと2つの第2接触面155b,155cとが径方向にずらした構成となっている。このような形状でも、押し輪155は、空隙部155dを利用してひずむことにより、押し輪155のひずみ量(たわみ量)を大きく確保することができ、効果的な変形を行うことができる。
【0050】
また、上記した実施形態では、押し輪55は、熱可塑性樹脂で形成した構成を説明したが、例えば、鍔部51と軸受11(外輪23)の軸方向一端面23aとの間に、熱硬化性樹脂を充填することで押し輪を形成してもよい。使用される熱硬化性樹脂としては、2液混合型のエポキシ樹脂系接着剤が最も望ましい。これは、第1に、硬化時間が長いため、軸受11周りに圧縮荷重を加えている間に熱硬化性樹脂を充填する時間を確保しやすい点、第2に、常温でも硬化が進む一方で60℃など少し温度を上昇させることでより早く硬化を進めることもできる点、第3に、2液タイプであり空気中の湿度などと反応するタイプと比べて作業環境による硬化条件のばらつきの影響が出づらい点などの利点がある。また、軸受11には、グリスが封入されているため、軸受11の使用温度範囲内で硬化反応を生じるタイプが望ましい。温度が上昇したときでも、機械強度(例えば引っ張りせん断強度)の変化が最も少ないのもエポキシ樹脂系接着剤である。軸受11やC型止め輪53などの寸法ばらつきの合計は、通常、0.2mm以下で、およそ0.06mm程度なので、エポキシ樹脂が硬化する条件としてもちょうどよい。さらに、エポキシ樹脂系接着剤の特徴として、圧縮強度はせん断や剥離強度と比べて高いので、隙間を充填する材料として望ましい。
【0051】
図6は、熱硬化性樹脂を鍔部51と軸受11(外輪23)の軸方向一端面23aとの間に充填する手順を説明する図である。熱硬化性樹脂を使用する場合、鍔部51に軸受11を組み込むと共に、C型止め輪53も組み込んだ状態で、
図6に示す押し込み冶具70を用いて、C型止め輪53と軸受11の軸方向の隙間をつぶす方向(
図6中B方向)に圧縮荷重を加える。そして、圧縮荷重を加えている状態で、混合させて化学反応が始まっているがまだ硬化は始まっていない(硬化していない)熱硬化性樹脂を、細管71を使って隙間に充填して押し輪255を成形する。圧縮荷重は、充填する熱硬化性樹脂の機械特性において、樹脂の圧縮強度、温度収縮、クリープ特性を考慮し、モータ使用時に押し輪255の機械特性が問題とならない値に定めることが好ましい。また、
図6に示すように、押し込み冶具70を用いて、軸受11をC型止め輪53側に押し込んだ状態で、熱硬化性樹脂の充填を行ってもよいし、また他の方法として、鍔部51にタップを設けておき、そのタップのねじで押し込みを行ってもよい。また、熱硬化性樹脂を鍔部51に予め塗布しておき、軸受11との隙間が調整できるようにC型止め輪53を設置してから、熱硬化性樹脂を挟み込んでもよい。
【0052】
[第2実施形態]
ところで、軸受11を支持するハウジング7(ハウジングインナ3及びロータフランジ5)は、旋盤などの機械加工によって製作される。このため、加工面には周回する刃物の切除する痕跡として、表面粗さと呼ばれる段差が生じている(例えば、Ra1.6,Ra3.2,Ra6.3などと表記される;JIS B0601)。また、上記した加工面のうち、軸方向の端面には円周方向にうねり(ウェーブ)が生じている。このうねりは、旋盤加工時のチャックによる変形の伝播によるもので、旋盤の加工工程を増やしたり、研削工程の追加によって取り去る(滑らかな表面に仕上げる)ことも可能であるが、機械加工工程が煩雑、増加する問題がある。
【0053】
一方、C型止め輪53は、硬鋼線材やステンレス鋼線などの材料をプレス加工や圧延成型によって製作されるが、C型止め輪53の端面には、製作時にバリ、カエリもしくはダレが生じ、全体的にもポテトチップスのように湾曲したゆがみを有する。これに対して、軸受11は、材料としてSUJ2などの機械強度や硬度が高い金属が採用されると共に、軸受11の内輪21や外輪23の軸方向端面には、研削工程が必ず施されているため、きれいで滑らかな平面を有している。
【0054】
DDモータ10のような軸受装置は、通常、様々な負荷を搭載して運搬したり、その負荷に別の荷重を加えたりして使用される。すなわち様々な外部荷重が加えられるため、DDモータ10は、外部荷重によって変位し難いことが要求されている。一般に、DDモータ10の剛性は高いほうが望ましい。しかし、ハウジング7に上記した刃物の痕跡やうねりがあったり、C型止め輪53にバリやカエリなどのゆがみがあったりすると、外部荷重が加わった際に、軸受11は軸方向に動かなくても、部品(ハウジング7やC型止め輪53)端面のうねりやゆがみが潰れる(平らになる)方向に変形する。このため、DDモータ10としての剛性が低下する問題がある。さらに、上記したうねりやゆがみの存在により、各部品の軸方向端面同士の接触面積が低減するため、駆動振動などにより、この種の部品の軸方向端面にフレッチング磨耗を生じさせる恐れさえある。
【0055】
上記した第1実施形態のDDモータ10では、ロータフランジ5は、軸受11の外輪23の軸方向一端面23a側に延在する鍔部51と、外輪23の軸方向他端面23b側に配置されるC型止め輪53とを備え、鍔部51と外輪23の軸方向一端面23aとの隙間に樹脂材料で形成された押し輪55を配置した。この構成によれば、押し輪55がC型止め輪53及び軸受11の軸方向の幅寸法公差を吸収することにより、軸受11の軸方向への移動を簡単な構成で防止すると共に、上記したうねりやゆがみの影響を抑制することができる。
【0056】
一方、第1実施形態のDDモータ10の構成においても、C型止め輪53と外輪23(軸受11)の軸方向他端面23bとの間、及び、C型止め輪53と溝部52の軸方向端面との間で上記したうねりやゆがみが変形する恐れがある。このため、DDモータ10としての剛性が低下する問題が想定された。顕著な例としては、押し輪55を潰す方向に純粋な軸方向荷重が加わった場合と、C型止め輪53を潰す方向に純粋な軸方向荷重が加わった場合とで、上記したうねりやゆがみの変形によりDDモータ10の剛性(荷重に対する変位)が異なる問題が生じる可能性がある。第2実施形態では、軸受11の軸方向への移動を防止すると共に、C型止め輪53に生じるゆがみやC型止め輪53が装着される溝部52に生じるうねりによるDDモータ10の剛性低下を抑制することを目的としている。
【0057】
図7は、第2実施形態に係るダイレクトドライブモータの軸受の支持構造を示す部分断面図である。なお、第2実施形態では、重複した記載を避けるべく、第1実施形態と異なる部分について説明し、第1実施形態と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0058】
DDモータ10Aは、
図7に示すように、C型止め輪53の軸方向一端面53aと外輪23(軸受11)の軸方向他端面23bとの隙間、C型止め輪53の軸方向一端面53aと溝部52の軸方向一端面52aとの隙間、及び、C型止め輪53の軸方向他端面53bと溝部52の軸方向他端面52bとの隙間にそれぞれ高分子樹脂材料で形成された第1隙間封止部材65が配置されている。この第1隙間封止部材65は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂の高分子樹脂材料で形成されており、C型止め輪53や溝部52のうねりやゆがみによって生じる隙間を埋める(封止する)機能を有する。
【0059】
第1隙間封止部材65は、上記した押し輪55と同様に、圧縮降伏強さ、曲げ強さ、圧縮弾性率(または引っ張り弾性率、ヤング率)等の機械強度特性が優れた樹脂材料が好ましい。この第1隙間封止部材65を、C型止め輪53の軸方向一端面53aと外輪23(軸受11)の軸方向他端面23bとの隙間、C型止め輪53の軸方向一端面53aと溝部52の軸方向一端面52aとの隙間、及び、C型止め輪53の軸方向他端面53bと溝部52の軸方向他端面52bとの隙間に配置した。これにより、第1隙間封止部材65が、C型止め輪53や溝部52のうねりやゆがみによって生じる隙間を埋める(封止する)ため、DDモータ10の剛性低下を抑制できる。さらに、フレッチング磨耗の発生を防止できる。
【0060】
C型止め輪53や溝部52のうねりやゆがみによって生じる隙間は、寸法的に微小(例えば75μm)であるため、ペースト状やフィルム状のものが選択できる。具体的には、熱可塑性樹脂として、フィルム状に形成されたポリアミドイミド(PAI)や、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂系接着剤やアクリル樹脂系接着剤を用いることが望ましい。
【0061】
第1隙間封止部材65の設置手順として、フィルム状に形成されたポリアミドイミド(PAI)を用いる場合には、予め、C型止め輪53の軸方向一端面53a、及び、軸方向他端面53bにそれぞれポリアミドイミドフィルム(樹脂フィルム)を貼着しておき、このC型止め輪53を溝部52に装着する。この構成では、第1隙間封止部材65を簡単に配置することができる。
【0062】
また、2液混合型のエポキシ樹脂系接着剤を用いる場合には、エポキシ樹脂系接着剤の主剤と硬化剤とを混合し、この混合した液を、予め、外輪23(軸受11)の軸方向他端面23bと、C型止め輪53の軸方向一端面53a、軸方向他端面53bと、溝部52の軸方向一端面52a、軸方向他端面52bとにそれぞれ塗布してからC型止め輪53を溝部52に装着する。この構成では、装着後に接着剤が硬化することで、うねりやゆがみによって生じる隙間を簡単に埋めることができる。
【0063】
また、熱硬化性樹脂製の接着剤として、アクリル樹脂系接着剤を用いることもできる。アクリル樹脂系接着剤は、2液性ではあるが混合する必要がなく、被着体の片面ずつに主剤と硬化剤(促進剤)を塗布し、圧着するだけで速やかに硬化する。アクリル樹脂系接着剤は、セットタイム(固着時間)が5分程度と短く、引張り剪断強度は19.6MPa(200kgf/cm
2)で、T型剥離強度が3.9kN/m(10kgf/25mm)以上とエポキシ樹脂系接着剤並みの性能を示す。さらに、アクリル樹脂系接着剤は、油面接着可能、耐衝撃性、耐久性にも優れている。
【0064】
このため、アクリル樹脂系接着剤を用いる場合には、例えば、外輪23(軸受11)の軸方向他端面23bと、溝部52の軸方向一端面52a、軸方向他端面52bとに主剤を塗布すると共に、C型止め輪53の軸方向一端面53a、軸方向他端面53bに硬化剤(促進剤)を塗布し、C型止め輪53を溝部52に装着する。また、C型止め輪53の軸方向一端面53a、軸方向他端面53bに主剤を塗布する構成としてもよい。この構成によれば、接着剤は、C型止め輪53の装着後の各端面に加わった圧力により硬化され、うねりやゆがみの隙間を簡単に埋めることができる。また、この構成では、接着剤の事前混合が不要であるため、外輪23(軸受11)の軸方向他端面23bと、溝部52の軸方向一端面52a、軸方向他端面52bとに、主剤、または、硬化剤を塗布した状態で放置することも可能であり、軸受11の組み付け工程の柔軟性が向上する。
【0065】
さらに、アクリル樹脂系接着剤として、硬化剤が封入されたマイクロカプセルを主剤の中に混入して構成されたものを用いてもよい。このタイプの接着剤を、例えば、外輪23(軸受11)の軸方向他端面23bと、溝部52の軸方向一端面52a、軸方向他端面52bとに塗布しておき、C型止め輪53を溝部52に装着する。また、C型止め輪53の軸方向一端面53a、軸方向他端面53bに接着剤を塗布する構成としてもよい。この構成では、C型止め輪53を装着した際の圧力によって、マイクロカプセルが破壊されて封入された硬化剤と主剤とが混合されて硬化する。このため、例えば、C型止め輪53の軸方向一端面53a、軸方向他端面53bに接着剤を事前に塗布しておくことで、装着後に硬化させることができ、接着剤の取り扱いが容易となる。
【0066】
[第3実施形態]
さて、上述のように、軸受11を支持するハウジング7(ハウジングインナ3及びロータフランジ5)は、旋盤などの機械加工によって製作される。具体的には、材料(基材)の片側をチャックという取付具の3から4つの爪で掴み、材料を回転させつつ、材料の反対側に切削工具(刃物)を押し当てて切削することで、円筒形状のハウジングインナ3及びロータフランジ5の外周面や内周面を加工する。
【0067】
ハウジングインナ3及びロータフランジ5は、軸受11の内輪21及び外輪23を支持するため、ハウジングインナ3の外周面及びロータフランジ5の内周面を加工するに当たり真円度を高めることが重要である。一方、旋盤による機械加工では、チャックの爪によって、材料の端部を複数回にわけて向きを変えて掴み、荒削り用、仕上げ削り用など様々な種類の刃物を用いて切削を行う。この場合、材料と爪の間にわずかなゴミが混入したり、材料を掴む位置のバランスが悪いと材料の同軸度が不良となり、切削部分の形状に影響を与える。さらに、チャックの爪で掴んだことにより材料がゆがむことがあり、このゆがみは、掴んだ部分のみならず、掴んだ側と反対側の切削部分の形状にも後々まで影響を与える。このため、掴む部分を決める作業は熟練した技術を要する。
【0068】
チャックの爪による材料のゆがみを無くすために、通常、切削工程を複数回に分けて繰り返しながら形状の真円度を徐々に高め、寸法精度を設計値に近づけていくことが行われる。また、多くの場合、刃物による切削だけではなく、研削砥石による加工が行われている。このように、軸受11が組み込まれるハウジング7(ハウジングインナ3及びロータフランジ5)の加工においては、真円度を高めて、ハウジングインナ3の外周面と軸受11(内輪21)の内周面との隙間、及び、ロータフランジ5の内周面と軸受11(外輪23)の外周面との隙間を無くす(0とする)ために、多くの工程や手間を要するといった課題がある。
【0069】
一方、ハウジングインナ3の外周面やロータフランジ5の内周面の真円度が十分でない場合、すなわち、外周面や内周面の形状がおむすび形状(多角形状)や楕円形状であった場合には、ハウジングインナ3の外周面と軸受11(内輪21)の内周面との間、及び、ロータフランジ5の内周面と軸受11(外輪23)の外周面との間に隙間(空隙)が生じることとなる。
【0070】
この状態で、DDモータ10に複合荷重(モーメント荷重)が加わった場合、軸受11の径方向(ラジアル方向)の荷重成分によって、軸受11やハウジング7(ハウジングインナ3及びロータフランジ5)が上記した隙間分だけ移動する。このため、DDモータ10における高精度な回転は望めないばかりか、レゾルバ27での誤検出にも繋がってしまう。さらに、ハウジングインナ3の外周面やロータフランジ5の内周面の形状がゆがんでいる場合、ゆがんだ部分と軸受11が部分的に金属接触状態となるため、フレッチング摩耗が生じ、軸受11の損傷を引き起こすと共に、荷重方向によって、DDモータ10
の剛性にばらつきが生じてしまう恐れがある。
【0071】
上記した第1実施形態のDDモータ10では、ロータフランジ5は、軸受11の外輪23の軸方向一端面23a側に延在する鍔部51と、外輪23の軸方向他端面23b側に配置されるC型止め輪53とを備え、鍔部51と外輪23の軸方向一端面23aとの隙間に樹脂材料で形成された押し輪55を配置した。この構成によれば、押し輪55がC型止め輪53及び軸受11の軸方向の幅寸法公差を吸収することにより、軸受11の軸方向への移動を簡単な構成で防止することができる。
【0072】
しかし、上記した構成においても、軸受11のハウジング7(ハウジングインナ3及びロータフランジ5)との間に径方向の隙間が生じる場合には、軸受11の径方向への移動量が大きくなり、押し輪55には、せん断方向力や剥離方向の荷重が加わることになる。押し輪55は、高分子樹脂材料で形成されているため、押し輪55に軸方向への圧縮荷重以外を加えるのは、DDモータ10の許容荷重が制限されることに加え、選択可能な樹脂材料も限定されてしまうこととなる。
【0073】
第3実施形態では、ハウジング7の加工の簡素化を図ると共に、軸受11の径方向(ラジアル方向)への移動を抑制することを目的としている。
【0074】
図8は、第3実施形態に係るダイレクトドライブモータの軸受の支持構造を示す部分断面図である。なお、第3実施形態では、重複した記載を避けるべく、第1実施形態と異なる部分について説明し、第1実施形態と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明を省略する。また、上記した第2実施形態のC型止め輪53の構成を第3実施形態と組み合わせてもよい。
【0075】
DDモータ10Bは、
図8に示すように、ハウジングインナ3及びロータフランジ5からなるハウジング7を備える。第3実施形態では、ハウジングインナ3の内輪保持部30の外周面30a、及び、ロータフランジ5の外輪保持部50の内周面50aを加工工程や手間を軽減して形成している。これにより、内輪保持部30の外周面30a、及び、外輪保持部50の内周面50aの真円度が十分でない。また、内輪保持部30の外周面30aと軸受11の内輪21の内周面21cとの間、外輪保持部50の内周面50aと軸受11の外輪23の外周面23cとの間には、それぞれ隙間が設けられている。その隙間は、旋削2工程で円柱部品を製作する場合の実力値として、概ね直径隙間(半径隙間はこの半分;隙間の絶対値はこの半分)では、17μm〜23μm程度、最も大きい場合で34μm〜46μm程度に設定される。軸受11とハウジングインナ3及びロータフランジ5を「しまりばめ」した場合、内輪保持部30の外周面30a、及び、外輪保持部50の内周面50aの旋盤加工によるひずみが軸受軌道面に伝達され、軸受11の精密な回転を阻害してしまい、高精度な軸受装置を構成することが困難になる恐れがある。このため、本実施形態では、内輪保持部30の外周面30aと軸受11の内輪21の内周面21cとの間、外輪保持部50の内周面50aと軸受11の外輪23の外周面23cとの間には、それぞれ隙間を設け、軸受11の精密な回転を可能としている。
【0076】
このため、DDモータ10Bは、
図8に示すように、外輪保持部50(ロータフランジ5)の内周面50aと外輪23(軸受11)の外周面23cとの隙間、及び、内輪保持部30(ハウジングインナ3)の外周面30aと内輪21(軸受11)の内周面21cとの隙間に、それぞれ高分子樹脂材料で形成された第2隙間封止部材66が配置されている。この第2隙間封止部材66は、熱硬化性樹脂製の接着剤であり、加工時に生じた上記隙間を埋める(封止する)機能を有する。
【0077】
熱硬化性樹脂製の接着剤は、高温時の特性で分類すると、構造用接着剤と非構造用接着剤が存在するが、構造用接着剤を用いることがより望ましい。また、温度条件を調整し所望の特性を得ている、
変性構造用接着剤や複合熱硬化性樹脂接着剤などを使用することもできる。この種の接着剤は、(1)塗布作業性(流動性)、(2)表面(界面)張力(ぬれ性)、(3)高分子材料の凝集力(分子間力、結合力)と硬化後の機械的物性について優れている。
【0078】
接着剤を隙間に配置するためには、軸受11やハウジング7(ハウジングインナ3及びロータフランジ5)の内外周面に接着剤を塗布する必要がある。そして、接着剤を塗布した後に軸受11をハウジング7に組み込むため、接着剤を塗布してから組み込まれるまである程度の時間が必要である。熱硬化性樹脂製の接着剤は、硬化前の粘度が、80Pa・s(主剤と硬化剤との混合物)、或いはその半分程度となっており、軸受11やハウジング7(ハウジングインナ3及びロータフランジ5)の内外周面に接着剤を塗布する作業を容易に行うことができる。
【0079】
次に、表面(界面)張力(ぬれ性)とは、軸受11及びハウジング7の内外周面に高分子材料が引き寄せられる力である。軸受11及びハウジング7(ハウジングインナ3及びロータフランジ5)はいずれも金属で形成されており、この金属表面に接着剤を塗布すると、表面(界面)張力が働くことによって、ひずみやうねりが生じる。これにより、軸受11及びハウジング7(ハウジングインナ3及びロータフランジ5)との隙間のあらゆる箇所において、張力の均衡化が図られるため、結果的に軸受11の回転中心とハウジング7(ハウジングインナ3及びロータフランジ5)の軸芯を調整(調芯)する作用が生じる。具体的には、接着剤の充填前に、軸受11の外輪23の外周面23cとロータフランジ5の外輪保持部50の内周面50aとの隙間が45μm程度あったとしても、接着剤を隙間に充填した際の調芯作用により、ロータフランジ5(出力軸)の径方向(ラジアル方向)回転振れは30μm以下に調整される。
【0080】
なお、第3実施形態においても、C型止め輪53と押し輪55とが、軸受11の軸方向端面にそれぞれ配置されている。これらC型止め輪53及び押し輪55は、軸受11の軸方向への移動を規制するものの、軸受11の径方向への規制力(接触力、接触摩擦力)は低い。このため、C型止め輪53及び押し輪55が接着剤による調芯作用を阻害することはない。
【0081】
また、上記した調芯作用に働く力(調芯力)自体を測定することは不可能ではないが煩雑である。このため、接着剤の硬化後に、ハウジング7(ハウジングインナ3及びロータフランジ5)から軸受11を引き抜く際の、接着界面強度の測定値が調芯力の目安となる。接着界面強度の測定値としては、12N/mm
2程度が理想であるが、3.7N/mm
2以上であっても上記した調芯作用の効果を奏する。
【0082】
また、この調芯力は、接着剤が塗布される外輪保持部50の内周面50a、及び、内輪保持部30の外周面30aの表面状態や表面処理の種別に影響される傾向にある。この第3実施形態では、外輪保持部50の内周面50a、及び、内輪保持部30の外周面30aにそれぞれ無電解ニッケル−リンめっきによる被膜67が形成されている。ハウジングインナ3及びロータフランジ5が鉄(磁性体)で形成される場合、無電解ニッケル−リンめっきによる被膜67を設けた構成は、内周面50a及び外周面30aに鉄面が露出したものや、内周面50a及び外周面30aに低温クロムめっきによる被膜を施したものに比べて、表面が活性化されているため、調芯力が高いことが判明している。また、無電解ニッケル−リンめっき処理では、リン濃度が高いほうが接着性が高く、調芯力を高めることができる。また、無電解ニッケル−リンめっき処理を施すことで耐食性が高まり、経時的にもDDモータ10Bの回転精度を高く保つことができる。
【0083】
さらに、無電解ニッケル−リンめっき処理では、リン濃度が高いほうが、被膜67は非結晶質となり非磁性となる。このため、ハウジング7(ハウジングインナ3及びロータフランジ5)にレゾルバ27を設けた構成では、レゾルバ27に対する磁力の影響を低減することができ、DDモータ10Bの回転精度を電気的な面においても高めることができる。
【0084】
最後に、高分子材料の凝集力と硬化後の機械的物性は、DDモータ10Bが実際に使用される際の、機械剛性に影響を与える特性であり、またC型止め輪53と押し輪55を備えた構造の信頼性に影響する特性である。熱硬化性樹脂製の接着剤(より具体的にはエポキシ樹脂系接着剤)は、硬化後の内部ひずみの発生も少なく、また樹脂材自体の機械強度が高い。このため、DDモータ10Bの機械剛性も十分満足させることができる。また、接着剤の樹脂材料の配合によって、界面破壊強度と凝集破壊強度の調整を任意に行うことができるが、上記した調芯力と機械剛性とをバランスよく満足するように、接着剤の樹脂配合を決定することが好ましい。具体的な例としては、室温硬化型エポキシ樹脂接着剤や一液性エポキシ接着剤があるが、軸受11に用いるため軸受11のグリス耐熱温度以下で使用する必要があり、より望ましいのは室温硬化型エポキシ樹脂接着剤である。接着剤の特性は、引張せん断、圧縮せん断、引張強さ、剥離強さで示されることが多いが、本構成で重要な特性は、樹脂の圧縮強度である。圧縮強度の値は、通常、接着剤のメーカから開示されることは少ないが、一般に、圧縮強度は、凝集破壊の特性を示すせん断強度よりも4倍程度高いため、せん断強度が接着剤選定の指標として活用できる。
【0085】
このように、エポキシ樹脂系接着剤を、外輪保持部50の内周面50aと外輪23の外周面23cとの隙間、及び、内輪保持部30の外周面30aと内輪21の内周面21cとの隙間に充填することにより、この隙間が封止される。これにより、DDモータ10
Bにモーメント荷重が加わった場合であっても、軸受11やハウジング7(ハウジングインナ3及びロータフランジ5)の径方向の移動が防止される。このため、軸受11の機械剛性を十分満足させたDDモータ10Bを実現すると共に、DDモータ10Bの高精度な回転を実現し、レゾルバ27での誤検出を防止できる。
【0086】
また、上記隙間に接着剤を充填した際の調芯作用により、軸受11を支持するハウジング7(ハウジングインナ3及びロータフランジ5)の内周面50a及び外周面30aの真円度や、表面粗さ、寸法誤差が生じていても、軸受11の回転中心とハウジング7(ハウジングインナ3及びロータフランジ5)の軸芯とを調芯することができる。
【0087】
第3実施形態では、外輪保持部50(ロータフランジ5)の内周面50aと外輪23(軸受11)の外周面23cとの隙間、及び、内輪保持部30(ハウジングインナ3)の外周面30aと内輪21(軸受11)の内周面21cとの隙間に、それぞれ接着
剤が充填されることにより、軸受11やハウジング7(ハウジングインナ3及びロータフランジ5)の径方向の移動が防止されると共に、軸受11とハウジング7との調芯作用が働く。このため、内輪保持部30(ハウジングインナ3)の外周面30a、及び、外輪保持部50(ロータフランジ5)の内周面50aを製作する加工工程において、工程の簡略化を図ることができ、より簡単でシンプルにコストを掛けずに、高精度なDDモータ10Bを実現できる。
【0088】
さらに、上記した加工工程を簡素化した場合であっても、外輪保持部50(ロータフランジ5)の内周面50aと外輪23(軸受11)の外周面23cとの隙間、及び、内輪保持部30(ハウジングインナ3)の外周面30aと内輪21(軸受11)の内周面21cとの隙間に、それぞれ接着
剤を充填することにより、以下の作用、効果を奏する。(A)軸受11の内輪21及び外輪23と、ハウジングインナ3及びロータフランジ5との不均一な金属接触を避けることができる。(B)軸受11の転動体軌道輪を歪ませるような、不均一で過剰なはめ込みを防ぐことができる。(C)DDモータ10Bの外部からラジアル荷重が加わっても、軸受11を径方向にずらさないように支持することができる。(D)DDモータ10Bにモーメント荷重が加わった時、C型止め輪53と押し輪55に対して、全周で不均一な圧縮荷重以外の引っ張り荷重や、剥離方向の荷重が加わらないようにできる。
【0089】
[第4実施形態]
図9は、第4実施形態に係るダイレクトドライブモータの構成を示す断面図である。なお、第4実施形態では、重複した記載を避けるべく、第1実施形態と異なる部分について説明し、第1実施形態と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明を省略する。また、上記した第2実施形態及び第3実施形態の各構成を第4実施形態と組み合わせてもよい。
【0090】
第4実施形態に係るDDモータ10Cは、第1実施形態に係るDDモータ10と同様に、軸方向への寸法の増大を抑制するために、ハウジング7内に、ステータ13に対するロータ15の相対変位を検出するインクリメンタルレゾルバである単一のレゾルバ27を配置している。レゾルバ27は、円環状のレゾルバロータ33と、レゾルバロータ33と所定間隔をもって対向して配置されるレゾルバステータ35とを備える。上述したように、レゾルバロータ33は、ボルト33aによりロータフランジ5の内周面に形成されたレゾルバロータ固定部5aに一体に取り付けられている。また、レゾルバステータ35は、ボルト35aにより内輪押え29の外周面に形成されたレゾルバステータ固定部29aに一体に取り付けられている。
【0091】
さて、一般に、レゾルバは、自己リアクタンスの変化により回転位置を検出するものであり、周囲の構造物の影響を受けやすい。このため、例えば、レゾルバの外径側に近接してハウジングが配置される構成では、レゾルバの検出信号が安定せず、高精度な回転状態の検出が困難になる恐れがある。
【0092】
このため、第4実施形態では、
図9に示すように、ロータフランジ5のレゾルバロータ固定部5aには、該レゾルバロータ固定部5aに固定されたレゾルバロータ33との対向面側(
図1におけるレゾルバロータ33の外径面側)に、空間Cを設けるための逃げ溝5bが形成されている。逃げ溝5bは、レゾルバロータ固定部5aの内周面5a1と、この内周面5a1に対向するレゾルバロータ33の径方向外側の面33bとの間の距離を広げるものであり、レゾルバロータ固定部5aの内周面5a1の全周に亘り、径方向外側に向けて拡径して設けられている。このように、レゾルバロータ33は、レゾルバステータ35との対向面と反対側の面33bとレゾルバロータ固定部5aの内周面5a1との間に空間Cを有するようにロータフランジ5に固定されている。
【0093】
この構成では、レゾルバロータ固定部5aの内周面5a1に全周に亘って逃げ溝5bを設けることにより、この内周面5a1とレゾルバロータ33の径方向外側の面33bとの間に空間Cを設けることができるため、この空間Cによって、レゾルバ27が外部磁束の影響を受けにくくなり、リラクタンス変化を精度良く検出できる。従って、DDモータ10Cの回転状態を高精度に検出することができる。
【0094】
図10は、上記実施形態のDDモータ10(10A,10B,10C)を用いた検査装置100の概略構成図である。DDモータ10のロータフランジ5の上端には、円板
状のテーブル80が連結され、ロータフランジ5の動作によって、テーブル80が回転する。このテーブル80の縁部には、等間隔をあけて検査対象物(搬送物、対象物)81が配置される。この構成では、検査対象物81は、DDモータ10の運転により、テーブル80と共に回転して搬送されるため、DDモータ10とテーブル80とを備えて搬送装置を構成する。また、テーブル80の縁部の上方には、テーブル80と共に回転(搬送)される検査対象物81を個々に観察するカメラ(検査部)82が配置されている。そして、このカメラ82で撮影することにより、撮影画像に基づき、検査対象物81の検査を行うことができる。この構成によれば、検査対象物81をカメラ82の下方に移動する際の位置精度を高めると共に、検査装置100の小型化を実現できる。
【0095】
図11は、上記実施形態のDDモータ10(10A,10B,10C)を用いた工作機械101の概略構成図である。DDモータ10のロータフランジ5の上端には、円板
状のテーブル80が連結され、ロータフランジ5の動作によって、テーブル80が回転する。このテーブル80の縁部には、等間隔をあけて加工対象物(対象物)91が配置される。また、テーブル80の縁部には、例えば、加工対象物91に新たな部品92,93を積載する加工を施す積載ロボット(加工部)が配置され、テーブル80の回転に合わせて、加工対象物91に加工を施すことができる。この構成によれば、加工対象物91を積載ロボットの位置まで移動する際の位置精度を高めると共に、工作機械101の小型化を実現できる。
【0096】
以上、説明したように、上記実施形態によれば、
DDモータ10は、転動体25を挟んで対向配置された内輪21及び外輪23を有する軸受11と、内輪21に支持されるハウジングインナ3と外輪23に支持されるロータフランジ5とを有するハウジング7とを備え、ロータフランジ5は、外輪23の軸方向一端面23a側に延在する鍔部51と、外輪23の軸方向他端面23b側に配置されるC型止め輪53とを備え、鍔部51と軸方向一端面23aとの隙間に、樹脂材料で形成された押し輪55を設けたため、簡単な構成で、軸受11の軸方向の幅寸法公差を吸収可能とすると共に、軸受11が軸方向に移動されることを完全に防止することができる。
【0097】
また、上記実施形態によれば、鍔部51が形成されたロータフランジ5は、周方向に延びる溝部52を備え、この溝部52にC型止め輪53が装着されたため、C型止め輪53を簡単に取り付けることができ、軸受11の支持構造の簡素化を実現できる。
【0098】
また、上記実施形態によれば、ハウジングインナ3及びロータフランジ5は、それぞれ円筒形状に形成され、鍔部51が形成されたロータフランジ5は、該円筒の延出方向に対して切れ目なく一体をなして成形されているため、ロータフランジ5が軸方向に大型化することを抑制しつつ、軸受11を支持することができ、DDモータ10の小型化を図ることができる。
【0099】
また、上記実施形態によれば、押し輪55は、鍔部51の支持面51aと接触する第1接触面55aと、外輪23の軸方向一端面23aと接触する第2接触面55bとを備え、これら第1接触面55aと第2接触面55bとを該押し輪55の径方向にずれた位置に形成したため、押し輪55に荷重をかけた場合に、押し輪55と鍔部51の支持面51aまたは外輪23の軸方向一端面23aとの隙間を利用して、押し輪55がひずむため、押し輪55のひずみ量(たわみ量)を大きく確保することができ、効果的に変形させることができる。
【0100】
また、上記実施形態によれば、
DDモータ10は、ハウジングインナ3に固定されるステータ13と、ロータフランジ5に固定されて、ステータ13に対して回転可能なロータ15とを有するモータ部9と、モータ部9の回転状態を検出するためのレゾルバ27とを備え、レゾルバ27は、ステータ13に対するロータ15の相対変位を検出するインクリメンタル方式の単一のレゾルバであるため、ハウジング7の軸方向の高さの増大を抑制でき、DDモータ10の小型化を図ることができる。
【0101】
また、上記実施形態によれば、
DDモータ10は、モータ部9への電源投入時に力率が0となる位置を検出する力率検出部41と、力率が0となる位置とレゾルバ27から出力されるレゾルバ信号とにより、該モータ部9の転流を制御する転流制御部43とを備えるため、モータ電流の転流タイミングを検出する際にアブソリュートレゾルバが不要となる。このため、従来の構成のように、アブソリュートレゾルバとインクリメンタルレゾルバの2種類の回転検出器を搭載させる必要がなく、単一のレゾルバ構成とすることができる。したがって、モータ部9の回転状態を高精度に検出できると共に、DDモータ10の軸方向の高さを抑えることができる。
【0102】
また、上記実施形態によれば、ロータフランジ5のレゾルバロータ固定部5aには、該レゾルバロータ固定部5aに固定されたレゾルバロータ33との対向面側(
図1におけるレゾルバロータ33の外径面側)に、空間Cを設けるための逃げ溝5bが形成されているため、レゾルバ27が外部磁束の影響を受けにくくなり、リラクタンス変化を精度良く検出できる。
【0103】
また、上記実施形態によれば、モータ部9、軸受11、及び、レゾルバ27は、軸受11の軸方向に並んで配置されるため、回転軸Sを中心とした径方向への大型化が抑制されるため、DDモータ10の設置面積(いわゆるフットプリント)の低減を図ることができる。
【0104】
また、上記実施形態によれば、押し輪55は、鍔部51と軸受11の軸方向一端面23aとの隙間に設けられると共に、C型止め輪53と軸受11の軸方向他端面23bとの隙間、及び、C型止め輪53と溝部52との隙間に第1隙間封止部材65を配置したため、この第1隙間封止部材65が、C型止め輪53や溝部52のうねりやゆがみによって生じる隙間を封止することにより、DDモータ10Aの剛性低下を抑制できる。
【0105】
また、上記実施形態によれば、第1隙間封止部材65は、C型止め輪53に貼着される樹脂フィルムであるため、第1隙間封止部材65を、C型止め輪53と軸受11の軸方向他端面23bとの隙間、及び、C型止め輪53と溝部52との隙間に簡単に配置できる。
【0106】
また、上記実施形態によれば、第1隙間封止部材65は、主剤と、主剤と混合されて該主剤を硬化させる硬化剤とを有する接着剤であるため、C型止め輪53を溝部52に装着した後に接着剤が硬化することで、C型止め輪53や溝部52のうねりやゆがみによって生じる隙間を簡単に封止できる。
【0107】
また、上記実施形態によれば、主剤及び硬化剤の一方は、軸受11の軸方向他端面23b及び溝部52に塗布され、主剤及び硬化剤の他方は、C型止め輪53に塗布された状態で、C型止め輪53が溝部52に装着される。このため、接着剤の事前混合が不要となり、軸受11の軸方向他端面23bと溝部52とに、主剤、または、硬化剤を塗布した状態で放置することが可能となり、軸受11の組み付け工程の柔軟性が向上する。
【0108】
また、上記実施形態によれば、接着剤は、マイクロカプセルに封入された硬化剤を主剤に混入して構成され、外力によりマイクロカプセルが破壊されることで硬化剤と主剤とが混合されて硬化する構成としたため、例えば、C型止め輪53に接着剤を事前に塗布しておくことで、該C型止め輪53を溝部52に装着した後に接着剤を硬化させることができ、接着剤の取り扱いが容易となる。
【0109】
また、上記実施形態によれば、内輪21の内周面21cと内輪保持部30(ハウジングインナ3)の外周面30aとの隙間、及び、外輪23の外周面23cと外輪保持部50(ロータフランジ5)の内周面50aとの隙間の少なくとも一方に第2隙間封止部材66が配置されているため、この第2隙間封止部材66が隙間を封止することにより、ハウジング7(ハウジングインナ3及びロータフランジ5)の加工の簡素化を図ると共に、軸受11の径方向への移動を抑制できる。
【0110】
また、上記実施形態によれば、第2隙間封止部材66は、内輪21の内周面21cと内輪保持部30(ハウジングインナ3)の外周面30aとの隙間、及び、外輪23の外周面23cと外輪保持部50(ロータフランジ5)の内周面50aとの隙間に充填された後に硬化する接着剤であるため、これら隙間に充填された接着剤による張力の均衡化によって、軸受11の中心とハウジング7(ハウジングインナ3及びロータフランジ5)の中心との調芯が実現される。
【0111】
また、上記実施形態によれば、ハウジングインナ3及びロータフランジ5は磁性体で形成され、第2隙間封止部材66が配置される内輪保持部30(ハウジングインナ3)の外周面30a及び外輪保持部50(ロータフランジ5)の内周面50aには、無電解ニッケル−リンめっき処理が施されているため、無電解ニッケル−リンめっき処理を施さないものに比べて、調芯力を高めることができる。
【0112】
以上、実施形態を説明したが、前述した内容により実施形態が限定されるものではない。上記実施形態では軸受装置の一例としてDDモータ10を説明したが、上記した軸受の支持構造を備えるものであれば、電動機に限るものではない。また、本実施形態のDDモータ10は、アウターロータ型としたが、インナーロータ型としてもよいことは勿論である。また、上記実施形態では、軸受11の支持構造をロータフランジ5側に設けたが、これに限るものではなく、ハウジングインナ3側、もしくは、双方に設けてもよい。また、押し輪55は、鍔部51と軸受11(外輪23)の軸方向一端面23aとの間に設置することが最も望ましいが、C型止め輪53と軸受11(外輪23)の軸方向他端面23bの間に設置してもよい。また、高分子材料の特性によっては、軸受11(外輪23)の軸方向端面の両側(鍔部51側とC型止め輪53側)にそれぞれ設置してもよい。また、本実施形態では、単一の軸受11を備える構成を説明しているが、複数の軸受を組み合わせて使用する構成(軸受と軸受の間に間座を設けるような場合も含む)でも同様の効果を得ることができる。また、上記実施形態では、軸受11の内輪21は、ハウジングインナ3と内輪押え29とで挟持する構成としたが、外輪23が軸方向に強固に支持されているため、ハウジングインナ3をロータフランジ5と同様に上端まで延ばし、ハウジングインナ3の外周面に接着剤や焼嵌めなどで固定してもよい。