特許第6183549号(P6183549)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183549
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】作業工具
(51)【国際特許分類】
   B25D 17/24 20060101AFI20170814BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   B25D17/24
   B25F5/00 Z
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-516411(P2016-516411)
(86)(22)【出願日】2015年4月30日
(86)【国際出願番号】JP2015063010
(87)【国際公開番号】WO2015166995
(87)【国際公開日】20151105
【審査請求日】2016年9月6日
(31)【優先権主張番号】特願2014-93640(P2014-93640)
(32)【優先日】2014年4月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-93641(P2014-93641)
(32)【優先日】2014年4月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】日立工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194146
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 大勇
(72)【発明者】
【氏名】田辺 大治郎
(72)【発明者】
【氏名】藤本 剛也
(72)【発明者】
【氏名】小林 隆介
(72)【発明者】
【氏名】神戸 邦彰
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慎一郎
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0125649(US,A1)
【文献】 特開2013−49124(JP,A)
【文献】 特開2014−69293(JP,A)
【文献】 特開2009−142985(JP,A)
【文献】 特開2007−1005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25D 17/24
B25F 5/00
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】

モータと、

該モータの動力を受けて先端工具に伝達する動力伝達手段と、

少なくとも前記動力伝達手段の一部を収容するハウジングと、

該ハウジングに揺動可能に支持されたウェイトと、

該ウェイトが初期中立位置に位置するように前記ウェイトを付勢する付勢手段と、を有する作業工具であって、

前記ウェイト及び前記付勢手段は、前記動力伝達手段を挟むように、前記ハウジングの両側にそれぞれ設けられ、

前記ハウジングの両側にそれぞれ設けられた前記ウェイトを連結して一体的に揺動させる連結手段を具備することを特徴とする作業工具。
【請求項2】

前記連結手段は、前記ハウジングの両側面にそれぞれ設けられた前記ウェイトを揺動可能に支持する軸部材であることを特徴とする請求項1記載の作業工具。
【請求項3】

前記軸部材は、前記ハウジングに形成された貫通孔に回動可能に支持され、前記軸部材と前記ウェイトとは揺動方向において回動不能に支持されていることを特徴とする請求項2記載の作業工具。
【請求項4】

前記動力伝達手段として、前記先端工具に往復運動を伝達する運動変換機構と、前記先端工具に回転駆動力を伝達する回転伝達機構とを備え、前記軸部材は、側面視において、前記運動変換機構と前記回転伝達機構との間に配置されていることを特徴とする請求項2又は3記載の作業工具。
【請求項5】

前記付勢手段の変化量は、前記ウェイトが前記初期中立位置から離れるほど大きくなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の作業工具。
【請求項6】

前記付勢手段は、コイルスプリングであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の作業工具。
【請求項7】

前記コイルスプリングは、両側に折り曲げ部を有し、該折り曲げ部が、前記ハウジングに設けられたハウジング係止部と、前記ウェイトに設けられたウェイト係止部とに係合されていることを特徴とする請求項6記載の作業工具。
【請求項8】

前記コイルスプリング及び前記ウェイト係止部は、前記先端工具の軸方向において前記ウェイトの一方側と他方側に2つ設けられていることを特徴とする請求項7記載の作業工具。
【請求項9】

前記2つのコイルスプリングは、前記ウェイトが揺動した際に伸びるように配置されていることを特徴とする請求項8記載の作業工具。
【請求項10】

前記ウェイトが前記初期中立位置に位置しているとき、前記2つの前記コイルスプリング及び前記ウェイト係止部は、前記軸部材と前記ウェイトの重心を結ぶ線を対称軸として線対称に配置されることを特徴とする請求項8又は9に記載の作業工具。
【請求項11】

前記ウェイトは、一端部が前記連結手段によって揺動可能に支持された支持部と、当該支持部の他端側に設けられた扇紙状の錘部とが一体化され、前記錘部に形成された減肉部に前記ウェイト係止部が設けられていることを特徴とする請求項7から10のいずれか一項に記載の作業工具。
【請求項12】

前記ハウジング係止部は前記先端工具の軸方向において前記ウェイトの一方側と他方側に2つ設けられ、前記ウェイトが前記初期中立位置に位置しているとき、前記ウェイト係止部と前記ハウジング係止部は、前記軸部材の法線上に位置することを特徴とする請求項7から11のいずれか一項に記載の作業工具。
【請求項13】

前軸部材の軸方向において、前記ウェイトの厚み内に前記コイルスプリングが位置していることを特徴とする請求項6乃至12のいずれか一項に記載の作業工具。
【請求項14】

前記ウェイトの揺動方向において、前記ウェイトの厚み内に前記コイルスプリングの一部が位置していることを特徴とする請求項6乃至13のいずれか一項に記載の作業工具。
【請求項15】

前記ハウジングは、少なくとも前記動力伝達手段の一部を収容する内側ハウジングと、該内側ハウジングを覆う外側ハウジングとを有し、前記ウェイト及び前記付勢手段は、前記内側ハウジングと前記外側ハウジングとの間に配置されていることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の作業工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、作業工具に関し、特にモータの動力を受けて先端工具に伝達する動力伝達機構を備えた作業工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】

従来、ハウジング内に往復運動変換機構や回転伝達機構等の動力伝達機構を備えると共に、動力伝達機構によって発生する振動を制振する振動低減機構を備えた作業工具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。振動低減機構は、揺動可能に支持されたウェイト部と、ウェイト部を初期中立位置に戻すように付勢する板バネやスプリング等からなる付勢手段とからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】

【特許文献1】特開2008−272897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】

しかしながら、従来技術おいては、振動低減機構が、先端工具の中心軸上であって、ハウジング内の打撃機構とハンドルとの間に配置されているため、全長が長くなってしまう。そこで、特許文献1には、ハウジングの左右両側や上面にウェイト部及び付勢手段からなる振動低減機構を配置することも提案されているが、振動が発生する方向に応じて、左右両側や上面に配置されたウェイト部がバラバラに揺動されてしまうため、制振効果が低下してしまうという問題点があった。
【0005】

本発明は以上のような状況に鑑みなされたものであって、上記課題を解決し、振動低減機構をハウジングの側面に配置させて製品全長を小型化しても制振効果を確保することができる作業工具を提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、振動の強弱に拘わらず効率良く制振することができる作業工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】

このような課題を解決するために、本発明の作業工具は、モータと、該モータの動力を受けて先端工具に伝達する動力伝達手段と、少なくとも前記動力伝達手段の一部を収容するハウジングと、該ハウジングに揺動可能に支持されたウェイトと、該ウェイトが初期中立位置に位置するように前記ウェイトを付勢する付勢手段と、を有する作業工具であって、前記ウェイト及び前記付勢手段は、前記動力伝達手段を挟むように、前記ハウジングの両側にそれぞれ設けられ、前記ハウジングの両側にそれぞれ設けられた前記ウェイトを連結して一体的に揺動させる連結手段を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】

本発明によれば、振動低減機構をハウジングの側面に配置させて製品全長を小型化しても、連結手段によってハウジングの両側に設けたウェイトが一体となって揺動されるため、制振効果を確保することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】

図1】本発明に係る作業工具の第1の実施の形態の全体構成を示す側面図である。
図2】本発明に係る作業工具の第1の実施の形態の全体構成を示す縦断面図である。
図3】第1の実施の形態の作業工具が備えている振動低減機構の構成を示す側面図である。
図4】第1の実施の形態の作業工具が備えている振動低減機構の構成を示す上面図である。
図5図2に示すギヤハウジングの構成を示す上面図及び側面図である。
図6図3及び図4に示す振動低減機構の構成を示す拡大上面図である。
図7図3及び図4に示すウェイトの構成を示す斜視図である。
図8図3及び図4に示す振動低減機構の動作を説明するための説明図である。
図9図3に示すハウジング係止部を他の位置に設けた場合の振動低減機構の動作を説明するための説明図である。
図10図3に示すコイルスプリングの揺動角度に応じた合計長さを示すグラフである。
図11図3及び図4に示すウェイトに作用するモーメント及びその変化量を示すグラフである。
図12】本発明に係る作業工具の第1の実施の形態における制振の周波数帯域を説明するためのグラフである。
図13図3及び図4に示すウェイトを付勢する付勢手段として押しバネを用いた第1の例を示す図である。
図14図3及び図4に示すウェイトを付勢する付勢手段として押しバネを用いた第2の例を示す図である。
図15】本発明に係る作業工具の第2の実施の形態の全体構成を示す縦断面図である。
図16】第2の実施の形態の作業工具が備えている振動低減機構の構成を示す側面図である。
図17】第3の実施の形態の作業工具が備えている振動低減機構の構成を示す側面図である。
図18】第3の実施の形態の作業工具が備えている振動低減機構の構成を示す後面図である。
図19】本発明に係る作業工具の第4の実施の形態の全体構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】

次に、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、本明細書において上下方向は各図に示す方向であるとして説明する。
【0010】

(第1の実施の形態)

第1の実施の形態の作業工具1は、先端工具に前後の強い打撃が加えながら作業を行う打撃工具であり、より具体的には、図示しない先端工具としてドリルを装着し、ドリルに前後の強い打撃が加えながら穴開けを行うハンマドリルである。作業工具1は、図1及び図2を参照すると、互いに接続されたメインハンドル部10と、モータハウジング20と、ギヤハウジング30と、打撃ハウジング40と、モータハウジング20、ギヤハウジング30及び打撃ハウジング40を覆う外殻ハウジング50と、サブハンドル部60とを備えている。なお、本実施の形態では、図1及び図2における左側を先端工具が装着される先端側、右側を作業工具1の後端側として以下説明する。
【0011】

メインハンドル部10は、作業工具1の後端に、作業工具1の先端側に取り付けられる先端工具の軸方向に対して略直交する方向に延伸して配置されている。メインハンドル部10には、電源ケーブル11が取付けられていると共に、スイッチ機構12が内蔵されている。また、メインハンドル部10には、使用者により操作可能なトリガ13が設けられており、トリガ13とスイッチ機構12が機械的に接続されている。これにより、電源ケーブル11を図示せぬ外部電源に接続し、トリガ13を操作することにより、作業工具1が駆動される。
【0012】

モータハウジング20は、メインハンドル部10の先端側下部に設けられ、動力源たる電動モータ21が収容されている。電動モータ21は、その回転駆動力を出力する出力軸22を備えている。出力軸22は、ギヤハウジング30内まで延伸しており、その先端には、ピニオンギヤ23が設けられている。
【0013】

ギヤハウジング30内には、ピニオンギヤ23の後端側において、出力軸22と平行に延びるクランク軸31が回動可能に支承されている。クランク軸31の下端寄りには、ピニオンギヤ23と噛合する第1ギヤ32が同軸固定されている。クランク軸31の上端部には、運動変換機構33が設けられている。運動変換機構33は、クランクウェイト34と、クランクピン35と、コンロッド36とを備えている。クランクウェイト34は、クランク軸31の上端に固定され、クランクウェイト34の端部にはクランクピン35がクランク軸31と偏心して立設されている。そして、クランクピン35がコンロッド36の後端に挿入されている。これにより、クランク軸31が回転駆動されると、コンロッド36が作業工具1の先端側に取り付けられる先端工具の軸方向に往復運動することになる。クランク軸31及び運動変換機構33は、電動モータ21の動力を受けて先端工具に伝達する動力伝達手段であり、電動モータ21による回転駆動力を往復運動に変換する。
【0014】

また、ギヤハウジング30内には、ピニオンギヤ23の先端側において、出力軸22と平行に延びる回転伝達軸37が回転可能に支承されている。回転伝達軸37の下端には、ピニオンギヤ23と噛合する第2ギヤ38が同軸固定されている。回転伝達軸37の上端には、第1ベベルギヤ39が同軸固定されている。
【0015】

打撃ハウジング40は、ギヤハウジング30の先端側に設けられ、出力軸22と略直交する方向に延び、且つ出力軸22と同一平面上に位置しているシリンダ41が設けられている。シリンダ41内には、その内周に摺動可能にピストン42が設けられている。ピストン42には、ピストンピン42aが設けられており、そのピストンピン42aがコンロッド36の先端に挿入されている。シリンダ41内の先端側には打撃子43が、シリンダ41の内周に摺動可能に設けられている。シリンダ41内であってピストン42と打撃子43との間には空気室44が画成されている。
【0016】

また、打撃ハウジング40内には、シリンダ41の外周を覆うように回転シリンダ45が回転可能に支承されている。回転シリンダ45は、シリンダ41よりも先端側に延び、その先端部には先端工具が着脱自在に装着される工具保持部46が設けられている。回転シリンダ41の後端部には、第1ベベルギヤ39と噛合する第2ベベルギヤ47が設けられている。回転シリンダ45の中心軸と出力軸22とは同一平面上に位置している。また、回転シリンダ45内の打撃子44の先端側には、前後方向に摺動可能な中間子48が設けられている。ピストン42、打撃子43及び中間子48は、電動モータ21の動力を受けて先端工具に伝達する動力伝達手段であり、工具保持部46に装着された先端工具に打撃力を伝達する打撃機構として機能する。また、回転伝達軸37及び回転シリンダ45も、電動モータ21の動力を受けて先端工具に伝達する動力伝達手段であり、工具保持部46に装着された先端工具に回動駆動力を伝達する回転伝達機構として機能する。
【0017】

図3及び図4を参照すると、ギヤハウジング30と外殻ハウジング50との間には、作業工具1の駆動によって発生する振動を低減させる振動低減機構70が配置されている。振動低減機構70は、ウェイト80と、コイルスプリング71とを備えている。ウェイト80及びコイルスプリング71は、シリンダ41の軸心を挟むように、ギヤハウジング30の両側の対向する位置にそれぞれ設けられている。なお、図3及び図4には、外殻ハウジング50の一部を取り除き、ギヤハウジング30に設けられている振動低減機構70を露出させた状態が示されている。
【0018】

図2及び図5(b)に示すように、ギヤハウジング30には、回転シリンダ45の軸心に対して略直交する方向に、両側面間を貫通する貫通孔30aが形成されている。なお、図5において、(a)はギヤハウジング30の上面図であり、(b)はギヤハウジング30の側面図である。本実施の形態では、貫通孔30aは、電動モータ21の出力軸22とも略直交する方向に延びており、ギヤハウジング30左右側面間を貫通するように形成されている。そして、貫通孔30aは、図2に示すように、電動モータ21の上方の、運動変換機構33の一部であるクランク軸31と、回転伝達機構の一部である回転伝達軸37と、回転シリンダ45の軸心とに囲まれた領域に形成されている。
【0019】

貫通孔30aには、図3及び図4に示すように、回動支持軸72が回動可能に挿入されている。回動支持軸72の両端は、ギヤハウジング30の左右両側からそれぞれ突出し、図6に示すように、突出して回動支持軸72の両端にウェイト80がそれぞれ固定されている。これにより、ギヤハウジング30の両側にそれぞれ設けられているウェイト80は、回動支持軸72によって連結されて一体化され、回動支持軸72を中心に回動可能に支承される。なお、図6は、回動支持軸72の両端にそれぞれ固定されたウェイト80を上面側から見た図である。
【0020】

ウェイト80は、図7を参照すると、回動支持軸72の端部が挿入され固定される固定穴81が一端部に形成された支持部82と、支持部82の他端側(解放端側)に設けられた錘部83とからなり、支持部82と錘部83とが一体化されている。固定穴81には、固定穴81の軸心と平行なキー溝81aが形成され、回動支持軸72の両端部には、回動支持軸72の軸心と平行なキー溝72aがそれぞれ形成されている。回動支持軸72の端部を固定穴81に挿入し、固定穴81のキー溝81aと回動支持軸72のキー溝72aとに係合するにキー73を挿入することで、回動支持軸72と支持部82(ウェイト80)とが回動方向において一体化されている。これにより、回動支持軸72が連結手段として機能し、ギヤハウジング30の両側の位置に設けられたウェイト80が互いに連結して回動方向において一体化される。
【0021】

錘部83は、固定穴81の軸心と略垂直な、固定穴81を中心(要)とする扇紙状の平板である。そして、錘部83には、ウェイト80の重心Gと固定穴81の軸心とを結ぶ直線に対して線対称な位置に、固定穴81の軸心と平行な棒状のウェイト係止部84がそれぞれ立設されている。ウェイト係止部84には、コイルスプリング71の一端に形成されている折り曲げ部が係止される。錘部83において、ウェイト係止部84が立設されている箇所には、厚みが薄い減肉部85が形成されている。減肉部85によって減肉された厚みは、コイルスプリング71の直径よりも大きく設定されている。
【0022】

図3及び図5に示すように、ギヤハウジング30には、ウェイト80のウェイト係止部84にそれぞれ対応して設けられ、コイルスプリング71の他端に形成されている折り曲げ部が係止されるハウジング係止部30bが側面から突出して形成されている。コイルスプリング71は、引きバネであり、コイルスプリング71がウェイト係止部84とハウジング係止部30bとの間に掛け渡され、外力が作用しない状態では、図3に示すように、ウェイト80の重心Gと固定穴81の軸心とを結ぶ直線が、回転シリンダ45の軸心に対して略直交する初期中立位置に、ウェイト80が位置決めされる。ウェイト80が初期中立位置にある状態では、ハウジング係止部30bとウェイト係止部84とは、固定穴81の軸心、すなわち回動支持軸72の同一法線上に配置されている。従って、初期中立位置では、ハウジング係止部30bもウェイト80の重心Gと固定穴81の軸心とを結ぶ直線に対して線対称な位置にそれぞれ形成されていることになる。これにより、コイルスプリング71が縮む方向の付勢力によって、ウェイト80を初期中立位置に簡単に位置決めすることができる。また、ウェイト80が初期中立位置にある状態では、ウェイト80の重心Gは、図3に示す側面視で、打撃機構の一部として機能するピストン42の軸心の近傍に配置されている。これにより、打撃機構によって生じる振動を効果的に制振することができる。
【0023】

コイルスプリング71がウェイト係止部84とハウジング係止部30bとの間に掛け渡された状態では、ウェイト係止部84が減肉部85に設けられているため、図4及び図6に示すように、ウェイト80の揺動軸である回動支持軸72の軸方向において、ウェイト80の領域内、すなわちウェイト80の厚み内にコイルスプリング71が位置している。これにより、ウェイト80よりもコイルスプリング71が回動支持軸72の軸方向に突出しないため、振動低減機構70を回動支持軸72の軸方向においてコンパクト化することができ、ギヤハウジング30と外殻ハウジング50との間にわずかな空間を形成するだけで振動低減機構70を配置することができる。
【0024】

次に、第1の実施の形態による作業工具1の動作について説明する。

メインハンドル部10及びサブハンドル部60を手で把持した状態で、作業工具1を図示しない被削材に押し当てて、トリガ13を引くことで、電動モータ21に電力を供給して、電動モータ21を回動駆動させる。電動モータ21の回動駆動力は、出力軸22、ピニオンギヤ23及び第1ギヤ32を介してクランク軸31に伝達される。クランク軸31の回動は、運動変換機構33を構成するクランクウェイト34、クランクピン35及びコンロッド36によって、シリンダ41内におけるピストン42の往復運動に変換される。そして、ピストン42の往復運動により空気室44中の空気の圧力が上昇及び低下を繰り返し、打撃子43に打撃力を付与する。打撃子43が前進して中間子48の後端に衝突し、中間子48を介して打撃力が工具保持部46に装着された先端工具に伝達される。なお、工具保持部46に装着された先端工具の中心軸と、打撃機構の一部として機能するピストン42の軸心とは、一致しており、打撃力が打撃機構から先端工具に対して効率的に伝達される。
【0025】

また、電動モータ21の回転駆動力は、出力軸22、ピニオンギヤ23及び第2ギヤ38を介して回転伝達軸37に伝達される。そして、回転伝達軸37の回動は、第1ベベルギヤ39及び第2ベベルギヤ47を介して回転シリンダ45に伝達され、回転シリンダ45は回転する。回転シリンダ45の回転により、工具保持部46に装着された先端工具に回転力が付与される。この回転力と上記の打撃力により、工具保持部46に装着された先端工具には回転力と打撃力とが付与され、被削材は破砕される。
【0026】

また、作業工具1の動作時には、打撃子43の往復動に起因するほぼ一定周期の振動が発生し、打撃子43が収容されているギヤハウジング30に伝達される。ギヤハウジング30に伝達された振動は、ギヤハウジング30に回動可能に支承されている回動支持軸72に伝達される。回動支持軸72に振動が伝達されと、ウェイト80は、回動支持軸72を中心として揺動される。
【0027】

図8には、図8(a)に示すように初期中立位置において、先端側及び後端側のウェイト係止部84のそれぞれ上方に先端側及び後端側のハウジング係止部30bを設け、ウェイト係止部84とハウジング係止部30bとの間に引きバネであるコイルスプリング71をそれぞれ掛け渡した例が示されている。本実施の形態では、外力が作用しない初期中立位置において、ハウジング係止部30bとウェイト係止部84とが、回動支持軸72の同一法線上に配置されている。さらに初期中立位置において、先端側及び後端側のハウジング係止部30b及びウェイト係止部84は、重心Gと回動支持軸72の軸心とを結ぶ直線に対して線対称な配置となっている。図8(a)に示す初期中立位置から、図8(b)に示すように、ウェイト80が先端方向に揺動した場合には、先端側と後端側のコイルスプリング71が伸長される。その結果、ウェイト80には先端側と後端側のコイルスプリング71両方から初期中立位置に戻る方向の付勢力が働く。また、図8(c)に示すように、ウェイト80が後端方向に揺動した場合も同様である。この様な構成によれば、図8(d)に示すように、ウェイト80が初期中立位置から離れるほどコイルスプリング71の変化量(伸縮率)が増加する。また、ウェイト80の揺動に伴う先端側及び後端側のコイルスプリング71の長さの変化は、揺動範囲において常に同じであり、先端側と後端側のどちらに揺動しても単位角度あたりのコイルスプリング71の伸び量を同じにすることができる。従って、コイルスプリング71にかかる荷重の最大値と最小値の差(長さの差)が小さくなり、コイルスプリング71の寿命を延ばすことができる。また、本実施の形態では、先端側及び後端側の2本のコイルスプリング71を設けたが、コイルスプリング71は、1本であっても、3本以上であっても良く、吸収したい振動の強さや周波数に応じて本数を適宜決定することができる。さらに、本実施の形態では、初期中立位置では、重心Gと固定穴81の軸心とを結ぶ直線に対して線対称な位置にハウジング係止部30b及びウェイト係止部84を設けるように構成したが、ハウジング係止部30bとウェイト係止部84とが、回動支持軸72の同一法線上に配置されていれば、線対称な位置に限らず、どの位置にハウジング係止部30b及びウェイト係止部84を設けても、単位角度あたりのコイルスプリング71の伸び量を同じにすることができる。従って、設計の自由度を確保することができる。
【0028】

また、図8(a)〜(c)を参照すると、ウェイト80の揺動方向において、ウェイト80の領域内にコイルスプリング71の一部が位置する構造になっている。これにより、ウェイト80の揺動方向において、振動低減機構70をコンパクト化することができ、ギヤハウジング30と外殻ハウジング50との間にわずかな空間を形成するだけで振動低減機構70を配置することができる。
【0029】

図9図8の例とは異なった位置にハウジング係止部30bを設けた例であり、ハウジング係止部30bとウェイト係止部84とが、回動支持軸72の同一法線上に配置されておらず、2つあるハウジング係止部30b間の間隔が狭くなっている。この場合には、外力が作用しない初期中立位置において、ウェイト80dの重心と回動支持軸72の軸心とを結ぶ直線の方向と、コイルスプリング71の付勢方向が略同じである。この様な構成によれば、揺動したときに先端側と後端側のコイルスプリング71の両方によってウェイト80に初期中立位置に戻る方向の付勢力が働く点と、ウェイト80が初期中立位置から離れるほどコイルスプリング71の変化量が増加する点は図8の例と同様であるが、図8の構成よりも、ハウジング係止部30bの間隔が狭くなったため、振動低減機構70をコンパクト化することができる。なお、図9(b)に示すように、ウェイト80が先端方向に揺動した場合には、先端側のコイルスプリング71が後端側のコイルスプリング71に比べて大きく伸び、図9(c)に示すように、ウェイト80が後端方向に揺動した場合には、後端側のコイルスプリング71が先端側のコイルスプリング71に比べて大きく伸びるため、ハウジング係止部30bとウェイト係止部84とを回動支持軸72の同一法線上に配置した図8の例と比べて、図9(d)に示すように、コイルスプリング71にかかる荷重の最大値と最小値の差(長さの差)が大きくなり、コイルスプリング71に負荷をかけることにはなる。図9(d)において、初期中立位置が揺動角度=0°である。初期中立位置では、重心Gと固定穴81の軸心とを結ぶ直線に対して線対称な位置にハウジング係止部30b及びウェイト係止部84がそれぞれ配置されているため、先端側及び後端側のコイルスプリング71の合計の長さは、図10に一点鎖線で示すように、先端側と後端側のどちらに揺動しても単位角度あたりのコイルスプリング71の伸び量が同じになる。なお、図10において、初期中立位置が揺動角度=0°である。また、図10に示す実線は、図8に示す本実施の形態における先端側及び後端側のコイルスプリング71の合計の長さであり、両者はほぼ同一のカーブを有している。
【0030】

本実施の形態のように引きバネであるコイルスプリング71を用いた場合には、図10に示すように、コイルスプリング71の変化量は、ウェイト80の揺動方向と、付勢手段であるコイルスプリング71の伸縮方向とが異なっているため、ウェイト80が初期中立位置から離れ、揺動角度が大きくなるほど大きくなる。従って、コイルスプリング71の付勢力によってウェイト80に作用するモーメント[N・m]は、図11(a)に実線で示すように、ウェイト80の揺動角度に対して非線形になり、コイルスプリング71の付勢力によってウェイト80に作用するモーメントの変化量も、図11(b)に実線で示すように、ウェイト80の揺動角度に対して非線形になる。
【0031】

図11(a)及び(b)に示す点線は、図11(c)に示すように、ウェイト80aを付勢する付勢手段として押しバネ71aを用いた場合の、揺動角度に対するモーメント[N・m]及びその変化量を示している。押しばね71aを用いた場合には、押しばね71aの付勢力によってウェイト80aに作用するモーメントは、図11(a)に点線で示すように、ウェイト80aの揺動角度に対して線形になり、押しばね71aの付勢力によってウェイト80aに作用するモーメントの変化量は、図11(b)に点線で示すように、ウェイト80aの揺動角度にかかわらず一定になる。従って、押しバネ71aによって決定される共振周波数も一定になる。このため、制振が行われる振動は、図12(b)に示すように、押しバネ71aによって決定される一定の共振周波数を中心とした一定の幅を有する周波数帯のみとなり、例えば、回転数制御を加えて振動の周波数が異なってしまうと、防振効果が弱まってしまう。これに対し、引きバネであるコイルスプリング71を用いた場合には、単位角度あたりのモーメントの変化量が一定でなく、揺動角度が大きくなるにつれ共振周波数も大きくなる。従って、制振が行われる振動は、図12(a)に示すように、変化する共振周波数を中心とした一定の幅を有するそれぞれ周波数帯に対応することができ、回転数制御に応じた防振効果を得ることができる。
【0032】

なお、本実施の形態では、ギヤハウジング30の両側の位置に設けられたウェイト80を回動支持軸72によって連結して一体化するように構成しているため、ウェイト80を初期中立位置に戻すように付勢する付勢手段として、引きバネであるコイルスプリング71の代わりに押しバネ71aを採用しても一定の効果を奏する。図13(a)には、ウェイト80bの支持部82に円弧上の当接端を有するピン74を押しバネ71aによって先端側及び後端側からそれぞれ押し当てて付勢する例が示されている。押しバネ71aによる付勢方向は、打撃機構の一部として機能するピストン42の軸心方向である。図13(b)に示すように、ウェイト80bが先端方向に揺動した場合には、先端側の押しバネ71aが押し縮められ、ウェイト80bを初期中立位置に戻すように付勢し、図13(c)に示すように、ウェイト80bが後端方向に揺動した場合には、後端側の押しバネ71aが押し縮められ、ウェイト80bを初期中立位置に戻すように付勢する。図14(a)には、ウェイト80bの錘部83に円弧上の当接端を有するピン74を押しバネ71aによって先端側及び後端側からそれぞれ押し当てて付勢する例が示されている。押しバネ71aによる付勢方向は、打撃機構の一部として機能するピストン42の軸心と略直交する方向である。図14(b)に示すように、ウェイト80bが先端方向に揺動した場合には、先端側の押しバネ71aが押し縮められ、ウェイト80bを初期中立位置に戻すように付勢し、図14(c)に示すように、ウェイト80bが後端方向に揺動した場合には、後端側の押しバネ71aが押し縮められ、ウェイト80bを初期中立位置に戻すように付勢する。
【0033】

(第2の実施の形態)

第2の実施の形態の作業工具1aでは、図15に示すように、ギヤハウジング30の上面に回動支持孔30cが形成されており、図16に示すように、この回動支持孔30cに回動支持軸72が回動可能に支持されている。他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0034】

第2の実施の形態によれば、ギヤハウジング30内に貫通孔30aを設ける必要がなくなる。ギヤハウジング30内には、運動変換機構33や回転伝達機構が収容されているため、貫通孔30aを形成する位置は制限される。これに対し、第2の実施の形態で、回動支持孔30cをギヤハウジング30の上面のどの位置に形成しても良いため、設計の自由度を確保することができる。
【0035】

(第3の実施の形態)

第3の実施の形態の作業工具1bでは、図17及び図18に示すように、ギヤハウジング30の両側にそれぞれ設けられているウェイト80cの一端側が、ギヤハウジング30にそれぞれ回動可能に支持されている。そして、ウェイト80cの他端側は、ギヤハウジング30の上面を超えて延出され、両側にそれぞれ設けられているウェイト80cの他端側が連結棒75によって連結されている。
【0036】

第3の実施の形態によれば、ギヤハウジング30を貫通する貫通孔30aを設ける必要がなくなる。ギヤハウジング30内には、運動変換機構33や回転伝達機構が収容されているため、貫通孔30aを形成する位置は制限される。これに対し、第3の実施の形態で、ウェイト80cをギヤハウジング30の側面に設けた軸受けや指示軸によって回動可能に支持すれば良いため、設計の自由度を確保することができる。
【0037】

(第4の実施の形態)

第4の実施の形態の作業工具1cでは、図19を参照すると、ギヤハウジング30内には、ピニオンギヤ23の先端側において、出力軸22と平行に延びるクランク軸31が回動可能に支承されている。そして、ギヤハウジング30内には、クランク軸31の先端側において、出力軸22と平行に延びる回転伝達軸37が回動可能に支承され、回転伝達軸37の下端には、クランク軸31の第1ギヤ32と噛合する第2ギヤ38が同軸固定されている。
【0038】

ギヤハウジング30内のピニオンギヤ23の後端側には、振動低減室90が形成されている。振動低減室90には、シリンダ41の軸心と直交する回動支持軸72に一端部が回動可能に支持されているウェイト80dが収容されている。ウェイト80dの他端側には、ウェイト係止部84が設けられていると共に、振動低減室90には、ウェイト80dの回動範囲外であって、回動支持軸72の鉛直上方にハウジング係止部30bが設けられている。そして、ウェイト係止部84とハウジング係止部30bとの間に引きバネであるコイルスプリング71が架け渡されている。外力が作用しない状態では、図19に示すように、ウェイト80dの重心と回動支持軸72の軸心とを結ぶ直線が、回転シリンダ45の軸心に対して直交する初期中立位置に、ウェイト80が位置決めされる。ウェイト80dが初期中立位置にある状態では、ハウジング係止部30bとウェイト係止部84とは、回動支持軸72の同一法線上に配置されている。
【0039】

以上、説明したように本実施の形態によれば、電動モータ21と、電動モータ21の動力を受けて先端工具に伝達する動力伝達手段(運動変換機構33や回転伝達機構)と、少なくとも動力伝達手段の一部を収容するギヤハウジング30と、ギヤハウジング30に揺動可能に支持されたウェイト80と、ウェイト80が初期中立位置に位置するようにウェイト80を付勢する付勢手段として機能するコイルスプリング71と、を有する作業工具1であって、ウェイト80及びコイルスプリング71は、動力伝達手段を挟むように、ギヤハウジング30の両側にそれぞれ設けられ、ギヤハウジング30の両側にそれぞれ設けられたウェイト80を連結して一体的に揺動させる連結手段として機能する回動支持軸72を備えている。

この構成により、振動低減機構70をギヤハウジング30の側面に配置させて製品全長を小型化しても、回動支持軸72によってギヤハウジング30の両側に設けたウェイト80が一体となって揺動されるため、制振効果を確保することができる。
【0040】

さらに、本実施の形態によれば、回動支持軸72は、ギヤハウジング30の両側面にそれぞれ設けられたウェイト80を揺動可能に支持する軸部材である。この構成により、余分な構成を追加することなく、ウェイト80を揺動可能に支持する軸部材によってギヤハウジング30の両側に設けたウェイト80を一体化させることができる。
【0041】

さらに、本実施の形態によれば、回動支持軸72は、ギヤハウジング30に形成された貫通孔30aに回動可能に支持され、回動支持軸72とウェイト80とは揺動方向において回動不能に支持されている。この構成により、簡単な構成でギヤハウジング30の両側に設けたウェイト80を一体化させることができる。
【0042】

さらに、本実施の形態によれば、動力伝達手段として、先端工具に往復運動を伝達する運動変換機構33と、先端工具に回転駆動力を伝達する回転伝達機構とを備え、回動支持軸72は、側面視において、運動変換機構33と回転伝達機構との間に配置されている。この構成により、ギヤハウジング30内の空隙に回動支持軸72を貫通させることができる。
【0043】

さらに、本実施の形態によれば、ウェイト80を付勢する付勢手段(コイルスプリング71)の変化量は、ウェイト80が初期中立位置から離れるほど大きくなるように構成されている。
【0044】

この構成により、小さな振動発生時にもウェイト80が十分に揺動されて振動を制振することができると共に、大きな振動発生時にもウェイト80の揺動を追従させることができるため、振動の強弱に拘わらず効率良く制振することができる。また、単位角度あたりのモーメントの変化量が一定でなく、揺動角度が大きくなるにつれ共振周波数も大きくなる。従って、制振が行われる振動は、変化する共振周波数を中心とした一定の幅を有するそれぞれ周波数帯に対応することができ、1つのモータ回動速度にのみ対応する低振動機構ではなく、回転数制御を加えても、複数の回動速度に対して防振効果を発揮することができる。
【0045】

さらに、本実施の形態によれば、コイルスプリング71は、両側に折り曲げ部を有し、該折り曲げ部が、ギヤハウジング30に設けられたハウジング係止部30bと、ウェイト80に設けられたウェイト係止部84とに係合されている。
【0046】

さらに、本実施の形態によれば、コイルスプリング71及びウェイト係止部84は、先端工具の軸方向においてウェイト80の一方側と他方側に2つ設けられている。そして、2つのコイルスプリング71は、ウェイト80が揺動した際に伸びるように配置されている。また、ウェイト80が前記初期中立位置に位置しているとき、2つのコイルスプリング71及びウェイト係止部84は、回動支持軸72とウェイト80の重心を結ぶ線を対称軸として線対称に配置されている。
【0047】

さらに、本実施の形態によれば、ウェイト80は、一端部が前記連結手段によって揺動可能に支持された支持部82と、支持部82の他端側に設けられた扇紙状の錘部83とが一体化され、錘部83に形成された減肉部85にウェイト係止部84が設けられている。この構成により、この構成により、振動低減機構70をコンパクト化することができ、ギヤハウジング30と外殻ハウジング50との間にわずかな空間を形成するだけで振動低減機構70を配置することができる。
【0048】

さらに、本実施の形態によれば、ハウジング係止部30bは先端工具の軸方向においてウェイト80の一方側と他方側に2つ設けられ、ウェイト80が初期中立位置に位置しているとき、ウェイト係止部84とハウジング係止部30bは、回動支持軸72の法線上に位置する。
【0049】

さらに、本実施の形態によると、回動支持軸72の軸方向において、ウェイト80の厚み内にコイルスプリング71が位置している。この構成により、ウェイト80よりもコイルスプリング71が回動支持軸72の軸方向に突出しないため、振動低減機構70を回動支持軸72の軸方向においてコンパクト化することができ、ギヤハウジング30と外殻ハウジング50との間にわずかな空間を形成するだけで振動低減機構70を配置することができる。
【0050】

さらに、本実施の形態によると、ウェイト80の揺動方向において、ウェイト80の厚み内にコイルスプリング71の一部が位置している。この構成により、ウェイト80の揺動方向において、振動低減機構70をコンパクト化することができ、ギヤハウジング30と外殻ハウジング50との間にわずかな空間を形成するだけで振動低減機構70を配置することができる。
【0051】

さらに、本実施の形態によれば、ウェイト80及びコイルスプリング71は、ギヤハウジング30と外郭ハウジング50との間に配置されている。この構成により、ギヤハウジング30の両側に設けられたウェイト80及びコイルスプリング71は、外郭ハウジング50によって覆われるため、コイルスプリング71の動作に対する外部からの影響を低減することができる。
【0052】

以上、本発明を上述の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。

例えば、上述の実施の形態では作業工具を打撃工具であるハンマドリルに適用した例について説明したが、先端工具を往復動させる構成を有する工具について応用が可能である。このような工具としては、例えば、ハンマ、セーバーソー、ジグソー等が挙げられる。
また、上述の実施の形態ではウェイト80をギヤハウジング30の左右両側に設ける例について説明したが、ウェイト80は、シリンダ41の軸心を挟むように、ギヤハウジング30の上下両側や、ななめ方向の両側にそれぞれ設けるようにしても良い。

さらに、上述の実施の形態ではウェイト80をギヤハウジング30の左右両側に設ける例について説明したが、シリンダ41の軸心を挟むように、打撃ハウジング40の両側に設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0053】

1、1a、1b、1c…作業工具、10…メインハンドル部、11…電源ケーブル、12…スイッチ機構、13…トリガ、20…モータハウジング、21…電動モータ、22…出力軸、23…ピニオンギヤ、30…ギヤハウジング、30a…貫通孔、30b…ハウジング係止部、30c…回動支持孔、31…クランク軸、32…第1ギヤ、33…運動変換機構、34…クランクウェイト、35…クランクピン、36…コンロッド、37…回転伝達軸、38…第2ギヤ、39…第1ベベルギヤ、40…打撃ハウジング、41…シリンダ、42…ピストン、42a…ピストンピン、43…打撃子、44…空気室、45…回転シリンダ、46…工具保持部、47…第2ベベルギヤ、48…中間子、50…外殻ハウジング、60…サブハンドル部、70…振動低減機構、71…コイルスプリング、71a…押しバネ、72…回動支持軸、72a…キー溝、73…キー、74…ピン、75…連結棒、76…回動支持軸、80、80a、80b、80c、80d…ウェイト、81…固定穴、81a…キー溝、82…支持部、83…錘部、84…ウェイト係止部、85…減肉部、90…振動低減室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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