(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記誘電体素体の厚み方向において、前記第2信号導体を基準にして前記第1グランド導体と反対側に一部が配置され、前記誘電体素体の幅方向の略全域に形成された第4グランド導体と、
前記誘電体素体の厚み方向において、前記第1グランド導体と前記第4グランド導体を基準にして前記第1信号導体と反対側に配置された第3信号導体と、
をさらに備え、
前記第4グランド導体における前記第3信号導体に対向する部分は、前記第2信号導体に対向する部分よりも、前記第1信号導体側に配置されている、
請求項1に記載の伝送線路部材。
前記誘電体素体の厚み方向において、前記第3信号導体を基準にして前記第4グランド導体と反対側に一部が配置され、前記誘電体素体の幅方向の略全域に形成された第6グランド導体と、
前記誘電体素体の厚み方向において、前記第4グランド導体と前記第6グランド導体を基準にして前記第2信号導体と反対側に配置された第4信号導体と、
をさらに備え、
前記第6グランド導体における前記第4信号導体に対向する部分は、前記第3信号導体に対向する部分よりも、前記第2信号導体側に配置されている、
請求項3に記載の伝送線路部材。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第1の実施形態に係る伝送線路部材および伝送線路部材の製造方法について、図を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る伝送線路部材の主要部の外観斜視図である。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る伝送線路部材の主要部断面図である。
図2は
図1におけるA−A断面を示す図である。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る伝送線路部材の各誘電体層の構成を示す平面図である。
図4は、本発明の第1の実施形態に係る伝送線路部材の各誘電体層の構成を示す平面図である。
図3は、第5層から第7層を示し、
図4は第1層から第4層を示す。
【0024】
図1に示すように、伝送線路部材10は、平板状で且つ長尺状の誘電体素体90を備える。誘電体素体90において、長さ方向が高周波信号の伝送方向に相当する。誘電体素体90において、平板面に平行で長さ方向に直交する方向が幅方向である。そして、誘電体素体90において、長さ方向および幅方向に直交する方向が厚み方向である。なお、
図1に示す誘電体素体90は、伝送線路部材10の主要部であり、誘電体素体90の長さ方向の両端には、図示しない引き出し部および当該引き出し部に設けられた外部接続端子が備えられている。
【0025】
誘電体素体90には、第1信号導体211、第2信号導体212、第1グランド導体300、第2グランド導体410、第3グランド導体420、および層間接続導体510,520が配置されている。
【0026】
第1信号導体211および第2信号導体212は、誘電体素体90の長さ方向に沿って延びる長尺状で膜状の導体である。第1信号導体211および第2信号導体212は、誘電体素体90の厚み方向の途中位置に配置されている。第1信号導体211と第2信号導体212は、誘電体素体90の幅方向において、間隔を空けて配置されている。
【0027】
第1グランド導体300は、誘電体素体90の長さ方向に沿って延びる長尺状で膜状の導体である。第1グランド導体300は、自身の幅方向において、第1信号導体用グランド部311、第2信号導体用グランド部312、および、中間部320の3つの部分からなる。第1信号導体用グランド部311、第2信号導体用グランド部312、および、中間部320は、一体形成されている。これらの各部は、誘電体素体90の幅方向に沿って第1信号導体211側の側面から第2信号導体212側の側面に向かって、第1信号導体用グランド部311、中間部320、および、第2信号導体用グランド部312の順に配置される。
【0028】
第1グランド導体300の第1信号導体用グランド部311は、第1信号導体211よりも幅広である。第1信号導体用グランド部311は、第1信号導体211に対して、誘電体素体90の厚み方向の一方側(
図2における上面側)に配置されている。より具体的には、第1信号導体用グランド部311は、誘電体素体90の厚み方向における一方端側の平膜面の近傍に配置されている。第1信号導体用グランド部311は、第1信号導体211に対して、誘電体素体90の厚み方向に間隔を空けて配置されている。第1信号導体用グランド部311は、第1信号導体211に対して、互いの膜面が略平行になるように配置されている。
【0029】
第2信号導体用グランド部312は、第2信号導体212よりも幅広である。第2信号導体用グランド部312は、第2信号導体212に対して、誘電体素体90の厚み方向の他方側(
図2における下面側)に配置されている。より具体的には、第2信号導体用グランド部312は、誘電体素体90の厚み方向における他方端側の平膜面の近傍に配置されている。第2信号導体用グランド部312は、第2信号導体212に対して、誘電体素体90の厚み方向に間隔を空けて配置されている。第2信号導体用グランド部312は、第2信号導体212に対して、互いの膜面が略平行になるように配置されている。
【0030】
中間部320は、誘電体素体90の幅方向において、第1信号導体211と第2信号導体212との間に配置されている。中間部320の膜面は、誘電体素体90の厚み方向に対して略平行な構成になっているほど好ましい。言い換えれば、中間部320の膜面は、第1信号導体211と第2信号導体212とが並ぶ方向に対して略直交する構成になっているほど好ましい。
【0031】
第2グランド導体410は、第1信号導体211よりも幅広である。第2グランド導体410は、第1信号導体211に対して、誘電体素体90の厚み方向の他方側(
図2における下面側)に配置されている。より具体的には、第2グランド導体410は、誘電体素体90の厚み方向における他方端側の平膜面の近傍に配置されている。第2グランド導体410は、第1信号導体211に対して、誘電体素体90の厚み方向に間隔を空けて配置されている。第2グランド導体410は、第1信号導体211に対して、互いの膜面が略平行になるように配置されている。
【0032】
第2グランド導体410は、長尺導体411,412およびブリッジ導体413を備える。長尺導体411,412は、誘電体素体90の長さ方向に沿って延びる形状からなる。長尺導体411,412は、誘電体素体90の幅方向において、第1信号導体211を挟むように配置されている。この際、長尺導体411,412は、誘電体素体90を厚み方向に視て、第1信号導体211と重ならないことが好ましい。ブリッジ導体413は、
図4に示すように、複数備えられており、長尺導体411,412を延びる方向に沿って、所定の間隔を空けて接続している。長尺導体411,412は、複数の層間接続導体510によって、第1グランド導体300の第1信号導体用グランド部311に接続されている。
【0033】
第3グランド導体420は、第2信号導体212よりも幅広である。第3グランド導体420は、第2信号導体212に対して、誘電体素体90の厚み方向の一方側(
図2における上面側)に配置されている。より具体的には、第3グランド導体420は、誘電体素体90の厚み方向における一方端側の平膜面の近傍に配置されている。第3グランド導体420は、第2信号導体212に対して、誘電体素体90の厚み方向に間隔を空けて配置されている。第3グランド導体420は、第2信号導体212に対して、互いの膜面が略平行になるように配置されている。
【0034】
第3グランド導体420は、長尺導体421,422およびブリッジ導体423を備える。長尺導体421,422は、誘電体素体90の長さ方向に沿って延びる形状からなる。長尺導体421,422は、誘電体素体90の幅方向において、第2信号導体212を挟むように配置されている。この際、長尺導体421,422は、誘電体素体90を厚み方向に視て、第2信号導体212と重ならないことが好ましい。ブリッジ導体423は、
図3に示すように、複数備えられており、長尺導体421,422を延びる方向に沿って、所定の間隔を空けて接続している。長尺導体421,422は、複数の層間接続導体520によって、第1グランド導体300の第2信号導体用グランド部312に接続されている。
【0035】
このような構成により、
図2に示すように、誘電体素体90内には、次の第1、第2伝送線路101,102が構成される。第1伝送線路101は、第1信号導体211を誘電体素体90の厚み方向に沿って、第1グランド導体300の第1信号導体用グランド部311と、第2グランド導体410で挟み込んだストリップライン型の伝送線路である。第2伝送線路102は、第2信号導体212を誘電体素体90の厚み方向に沿って、第1グランド導体300の第2信号導体用グランド部312と、第3グランド導体420で挟み込んだストリップライン型の伝送線路である。
【0036】
第1伝送線路101と第2伝送線路102は、誘電体素体90の長さ方向に沿って延びる伝送線路であり、誘電体素体90の幅方向に沿って配列されている。第1伝送線路101と第2伝送線路102との間には、第1グランド導体300の中間部320が配置されている。中間部320は、第1信号導体211と第2信号導体212との並ぶ方向に対して、略直交する膜面を備えている。これにより、第1信号導体211と第2信号導体212との電磁界結合を抑制することができる。
【0037】
さらに、本実施形態の構成では、第1信号導体211から第2信号導体212方向に向かって、第2信号導体212が、第1グランド導体300の中間部320および第2信号導体用グランド部312によって囲まれるように配置されている。逆に、第2信号導体212から第1信号導体211方向に向かって、第1信号導体211が、第1グランド導体300の中間部320および第1信号導体用グランド部311によって囲まれるように配置されている。これにより、第1信号導体211と第2信号導体212との電磁界結合をさらに抑制することができる。
【0038】
したがって、第1信号導体211と第2信号導体212とが誘電体素体90の幅方向に近接しても、第1信号導体211と第2信号導体212との電磁界結合を抑制でき、第1伝送線路101と第2伝送線路102との間のアイソレーションを高く確保することができる。
【0039】
また、誘電体素体90の幅は、第1伝送線路101が形成される幅と、第2伝送線路102が形成される幅と、第1グランド導体300の中間部320の膜厚と、当該中間部320を中間部320の厚さ方向に沿って挟む両側の誘電体層の厚みとからなる。したがって、誘電体素体90の幅方向に沿って第1信号導体211と第2信号導体212とを配列し、その間に層間接続導体を形成したり、アイソレーション用のグランド導体を配置したりする態様と比較して、誘電体素体90の幅を狭くすることができる。これにより、第1伝送線路101と第2伝送線路102とのアイソレーションを高く確保した小型の伝送線路部材10を実現することができる。
【0040】
また、本実施形態の構成では、厚み方向に沿った第1伝送線路101の第1信号導体211と第1信号導体用グランド部311との間の第1領域Re1と、厚み方向に沿った第2伝送線路102の第2信号導体212と第2信号導体用グランド部312との間の第2領域Re2とが、誘電体素体90の厚み方向において重なっている。これにより、誘電体素体90を低背化でき、伝送線路部材10を小型に形成することができる。
【0041】
なお、
図2からも分かるように、第1領域Re1の誘電体素体90の厚み方向における一方端側の端部Ed1に対して、第2領域Re2の誘電体素体90の厚み方向における他方端側の端部Ed2は、誘電体素体90の厚み方向の他方側に配置されていれば、伝送線路部材10を小型にすることが可能である。
【0042】
このような伝送線路部材10における第1伝送線路101のインピーダンスは、次のように決定される。第1信号導体211と第1グランド導体300の第1信号導体用グランド部311によって第1伝送線路101のインピーダンスが50Ωよりもやや高めの55Ω程度となるように形状が決定される。そして、第2グランド導体410によって、第1伝送線路101の特性インピーダンスが50Ωとなるように、第2グランド導体410の形状が決定される。この際、第1信号導体211と第1信号導体用グランド部311との間隔を、第1信号導体211と第2グランド導体410との間隔よりも広くすることが好ましい。これにより、導体の対向面積が広い第1信号導体211と第1信号導体用グランド部311との容量性結合を抑制でき、第1伝送線路101に対して所望のインピーダンスを実現し易い。
【0043】
また、第2伝送線路102のインピーダンスは、次のように決定される。第2信号導体212と第1グランド導体300の第2信号導体用グランド部312によって第2伝送線路102のインピーダンスが50Ωよりもやや高めの55Ω程度となるように形状が決定される。そして、第3グランド導体420によって、第2伝送線路102の特性インピーダンスが50Ωとなるように、第3グランド導体420の形状が決定される。この際、第2信号導体212と第2信号導体用グランド部312との間隔を、第2信号導体212と第3グランド導体420との間隔よりも広くすることが好ましい。これにより、導体の対向面積が広い第2信号導体212と第2信号導体用グランド部312との容量性結合を抑制でき、第2伝送線路102に対して所望のインピーダンスを実現し易い。
【0044】
このような構造の伝送線路部材10は、例えば次に示すように製造される。
【0045】
図3、
図4に示すように、誘電体層901,902,903,904,905,906,907を用意する。各誘電体層901−907は、例えば、液晶ポリマを主成分とする材料からなる誘電体フィルムに対して、必要に応じて所定の導体パターンを形成することで得られる。
【0046】
図4に示すように、誘電体層901は、導体が形成されていない誘電体フィルムからなる。誘電体層901の幅W1は、誘電体素体90の幅と略同じである。
【0047】
誘電体層902は、片面に導体(例えば、銅(Cu))が貼り付けられた誘電体フィルムからなる。
図4に示すように、誘電体層902の表面の導体に対してパターニング処理等を施すことによって、誘電体層902の表面には、第2グランド導体410が形成される。誘電体層902の幅W2は、誘電体素体90の幅(誘電体層901の幅W1)の略1/2である。
【0048】
誘電体層903は、片面に導体(例えば、銅(Cu))が貼り付けられた誘電体フィルムからなる。
図4に示すように、誘電体層903の表面の導体に対してパターニング処理等を施すことによって、誘電体層903の表面には、第1信号導体211が形成される。誘電体層903の幅W3は、誘電体素体90の幅(誘電体層901の幅W1)の略1/2であり、誘電体層902の幅W2と略同じである。誘電体層903には、誘電体層902と重ねあわせたときに第2グランド導体410と重なる領域に、厚み方向に貫通する複数の貫通孔が設けられている。誘電体層903における第1信号導体211が形成される面には、貫通孔の形成位置にビア用補助導体511が形成されている。各貫通孔には導電性ペーストが充填されている。この貫通孔に充填された導電性ペーストが、誘電体層901−907の加熱圧着によって、層間接続導体510の一部を構成する。
【0049】
誘電体層904は、片面に導体(例えば、銅(Cu))が貼り付けられた誘電体フィルムからなる。
図4に示すように、誘電体層904の表面の導体に対してパターニング処理等を施すことによって、誘電体層904の表面には、第1グランド導体300が形成される。誘電体層904の幅W4は、誘電体素体90の幅(誘電体層901の幅W1)と略同じである。第1グランド導体300は、誘電体層904の略全面に形成されている。第1グランド導体300は、誘電体層904の幅方向の両端面に達しない方が好ましい。これにより、第1グランド導体300が外部回路に対して不要に短絡することを抑制できる。
【0050】
誘電体層904には、第1グランド導体300の形成領域に、当該第1グランド導体300を除いて厚み方向に貫通する複数の貫通孔が設けられており、各貫通孔には導電性ペーストが充填されている。この貫通孔に充填された導電性ペーストが、誘電体層901−907の加熱圧着によって、層間接続導体510の一部を構成する。
【0051】
誘電体層905は、片面に導体(例えば、銅(Cu))が貼り付けられた誘電体フィルムからなる。
図3に示すように、誘電体層905の表面の導体に対してパターニング処理等を施すことによって、誘電体層905の表面には、第2信号導体212が形成される。誘電体層905の幅W5は、誘電体素体90の幅(誘電体層901の幅W1)の略1/2である。誘電体層905には、厚み方向に貫通する複数の貫通孔が設けられている。誘電体層905における第2信号導体212が形成される面には、貫通孔の形成位置にビア用補助導体521が形成されている。各貫通孔には導電性ペーストが充填されている。この貫通孔に充填された導電性ペーストが、誘電体層901−907の加熱圧着によって、層間接続導体520の一部を構成する。
【0052】
誘電体層906は、片面に導体(例えば、銅(Cu))が貼り付けられた誘電体フィルムからなる。
図3に示すように、誘電体層906の表面の導体に対してパターニング処理等を施すことによって、誘電体層906の表面には、第3グランド導体420が形成される。誘電体層906の幅W6は、誘電体素体90の幅(誘電体層901の幅W1)の略1/2であり、誘電体層905の幅W5と略同じである。誘電体層906には、第3グランド導体420の形成領域に、当該第3グランド導体420を除いて厚み方向に貫通する複数の貫通孔が設けられており、各貫通孔には導電性ペーストが充填されている。この貫通孔に充填された導電性ペーストが、誘電体層901−907の加熱圧着によって、層間接続導体520の一部を構成する。
【0053】
図3に示すように、誘電体層907は、導体が形成されていない誘電体フィルムからなる。誘電体層907の幅W7は、誘電体素体90の幅と略同じである。
【0054】
このような構成からなる誘電体層901−907を、
図5に示すように、誘電体層901、誘電体層902、誘電体層903、誘電体層904、誘電体層905、誘電体層906、および誘電体層907の順に積層する。
図5は、本発明の第1の実施形態に係る伝送線路部材の加熱圧着前の状態を示す断面図である。
【0055】
すなわち、誘電体素体90と略同じ幅の誘電体層901と誘電体層904との間に、誘電体素体90の幅の略1/2の幅からなる誘電体層902,903が積層される。また、誘電体素体90と略同じ幅の誘電体層904と誘電体層907との間に、誘電体素体90の幅の略1/2の幅からなる誘電体層905,906が積層される。
【0056】
誘電体層902と誘電体層903は重なるように積層される。誘電体層905と誘電体層906は重なるように配置される。誘電体層902,903と、誘電体層905,906は重ならないように配置される。
【0057】
誘電体層901−907が積層されると、この積層体は、積層方向の両端から金型で挟み込まれ、所定の条件で加熱圧着される。これにより、第1グランド導体300が形成された誘電体層904は幅方向の途中位置(より具体的には積層体を積層方向に視たときの誘電体層902,903の領域と誘電体層905,906の領域との境界)で曲がる。これにより、第1グランド導体300は、平膜面が積層方向(厚み方向)と略平行な中間部320と、該中間部320でつなげられたそれぞれ平膜面が積層方向に直交する第1信号導体用グランド部311および第2信号導体用グランド部312とに形づけられる。
【0058】
このように、本実施形態の製造方法を用いることで、上述の伝送線路部材10を容易に製造することができる。
【0059】
なお、本実施形態の製造方法では、誘電体層902,903の幅と、誘電体層905,906の幅とを、誘電体素体90の幅の略1/2にする例を示した。しかしながら、誘電体層902,903の幅と誘電体層905,906の幅とを合計した幅が、誘電体素体90の幅以下になるように、誘電体層902,903の幅と誘電体層905,906の幅を決定すればよい。また、本実施形態の製造方法では、誘電体層902の幅と誘電体層903の幅は同じであるが、異なっていてもよい。同様に、誘電体層905の幅と誘電体層906の幅も異なっていてもよい。
【0060】
また、上述の実施形態では、ストリップライン型の伝送線路によって第1、第2伝送線路を構成する例を示したが、マイクロストリップ型の伝送線路によって第1、第2伝送線路を構成してもよい。この場合、第2グランド導体410、第3グランド導体420、および層間接続導体510,520を省略すればよい。但し、ストリップライン型の伝送線路を用いることで、第1、第2伝送線路101,102から外部への電磁波の放射を抑制することができ、外部環境から第1、第2伝送線路101,102に与えられる影響を抑制することができる。
【0061】
また、上述の製造方法では、伝送線路部材10単位で誘電体層901−907を積層する態様を示した。しかしながら、複数の伝送線路部材10を同時に形成することも可能である。この場合、誘電体層の種類毎に誘電体フィルムを用意する。各誘電体フィルムには、それぞれの誘電体フィルムに対応した誘電体層が配列して複数個設けられている。そして、各誘電体層に対応する誘電体フィルムを積層して、加熱圧着する。複数の誘電体フィルムの加熱圧着後に、個別の伝送線路部材に分離する。なお、この製造方法を用いる場合には、誘電体層902が複数形成された誘電体フィルム、および、誘電体層903が複数形成された誘電体フィルムには、誘電体フィルムを積層した状態において、積層方向に視て誘電体層905,906が配置される領域に貫通穴や凹部を設けておけばよい。同様に、誘電体層905が複数形成された誘電体フィルム、および、誘電体層906が複数形成された誘電体フィルムには、誘電体フィルムを積層した状態において、積層方向に視て誘電体層902,903が配置される領域に貫通穴や凹部を設けておけばよい。また、誘電体フィルムを積層した状態において、積層方向に視て第1グランド導体300の中間部320となる部分にも、貫通穴や凹部を設けてもよい。
【0062】
次に、本発明の第2の実施形態に係る伝送線路部材について、図を参照して説明する。
図6は、本発明の第2の実施形態に係る伝送線路部材の主要部の外観斜視図である。
【0063】
本実施形態に係る伝送線路部材10Aは、第1の実施形態に係る伝送線路部材10に対して、層間接続導体510A,520Aの構造が異なる。
【0064】
誘電体素体90における長さ方向に平行な側面には、所定の間隔を置いて、複数の凹部990が形成されている。凹部990は、誘電体素体90における長さ方向に平行な側面から幅方向の中央に向かって凹む形状である。
【0065】
第1信号導体211に近い第1側面に形成された凹部990の壁面には、層間接続導体510Aが形成されている。層間接続導体510Aは、第1グランド導体300と第2グランド導体410とを接続している。
【0066】
第2信号導体212に近い第2側面に形成された凹部990の壁面には、層間接続導体520Aが形成されている。層間接続導体520Aは、第1グランド導体300と第3グランド導体420とを接続している。
【0067】
この構成では、層間接続導体510Aが誘電体素体90の側面に形成されているので、第1信号導体211と層間接続導体510Aとの距離を、第1の実施形態に示した第1信号導体211と層間接続導体510との距離よりも長くすることができる。これにより、第1信号導体211の幅を広くすることができ、第1信号導体211による導体損を低減することができる。
【0068】
また、この構成では、層間接続導体520Aが誘電体素体90の側面に形成されているので、第2信号導体212と層間接続導体520Aとの距離を、第1の実施形態に示した第2信号導体212と層間接続導体520との距離よりも長く設計しやすくすることができる。第2信号導体212と層間接続導体520Aとの距離が大きいので、第2信号導体212の幅を広くすることも可能になり、その場合、第2信号導体212による導体損を低減することができる。
【0069】
また、本実施形態の構成では、層間接続導体510A,520Aは、誘電体素体90の側面に形成された凹部990内に形成されている。したがって、層間接続導体510A,520Aが誘電体素体90の側面よりも突出することを防止できる。これにより、伝送線路部材10Aの幅を誘電体素体90の幅にすることができ、例えば、層間接続導体510A,520Aが不所望な外部の導体に接続してしまう等の不具合を抑制することができる。
【0070】
次に、本発明の第3の実施形態に係る伝送線路部材について、図を参照して説明する。
図7は、本発明の第3の実施形態に係る伝送線路部材の主要部断面図である。
図8は、本発明の第3の実施形態に係る伝送線路部材の加熱圧着前の状態を示す断面図である。
【0071】
第1の実施形態に係る伝送線路部材10が2つの伝送線路(第1伝送線路101、第2伝送線路102)を備えているのに対して、本実施形態に係る伝送線路部材10Bは、3つの伝送線路(第1伝送線路101B、第2伝送線路102B、第3伝送線路103B)を備える。
【0072】
伝送線路部材10Bは、平板状で且つ長尺状の誘電体素体90Bを備える。
【0073】
誘電体素体90Bには、第1信号導体211B、第2信号導体212B、第3信号導体213B、第1グランド導体301B、第2グランド導体410B、第4グランド導体302B、第5グランド導体430B、および層間接続導体510B,520B,530Bが配置されている。
【0074】
第1信号導体211B、第2信号導体212Bおよび第3信号導体213Bは、誘電体素体90Bの長さ方向に沿って延びる長尺状で膜状の導体である。第1信号導体211B、第2信号導体212Bおよび第3信号導体213Bは、誘電体素体90Bの厚み方向の途中位置に配置されている。第1信号導体211Bと第3信号導体213Bは、誘電体素体90Bの幅方向において略同じ位置に配置されている。第1信号導体211Bと第3信号導体213Bは、誘電体素体90Bの厚み方向において間隔を空けて配置されている。第1信号導体211Bおよび第3信号導体213Bと第2信号導体212Bは、誘電体素体90Bの幅方向において、間隔を空けて配置されている。
【0075】
第1グランド導体301Bは、誘電体素体90Bの長さ方向に沿って延びる長尺状で膜状の導体である。第1グランド導体301Bは、自身の幅方向において、第1信号導体用グランド部301B1、第2信号導体用グランド部301B2、および、中間部301B3の3つの部分からなる。第1信号導体用グランド部301B1、第2信号導体用グランド部301B2、および、中間部301B3は、一体形成されている。これらの各部は、誘電体素体90Bの幅方向に沿って第1信号導体211B側の側面から第2信号導体212B側の側面に向かって、第1信号導体用グランド部301B1、中間部301B3、および、第2信号導体用グランド部301B2の順に配置される。
【0076】
第1グランド導体301Bの第1信号導体用グランド部301B1は、第1信号導体211Bよりも幅広である。第1信号導体用グランド部301B1は、第1信号導体211Bに対して、誘電体素体90Bの厚み方向の一方側(
図7における上面側)に配置されている。
【0077】
第1グランド導体301Bの第2信号導体用グランド部301B2は、第2信号導体212Bよりも幅広である。第2信号導体用グランド部301B2は、第2信号導体212Bに対して、誘電体素体90Bの厚み方向の他方側(
図7における下面側)に配置されている。
【0078】
第1グランド導体301Bの中間部301B3は、誘電体素体90Bの幅方向において、第1信号導体211Bと第2信号導体212Bとの間に配置されている。中間部301B3の膜面は、誘電体素体90Bの厚み方向に対して略平行な構成になっているほど好ましい。言い換えれば、中間部301B3の膜面は、第1信号導体211Bと第2信号導体212Bとが並ぶ方向に対して略直交する構成になっているほど好ましい。
【0079】
第2グランド導体410Bは、第1信号導体211Bよりも幅広である。第2グランド導体410Bは、第1信号導体211Bに対して、誘電体素体90Bの厚み方向の他方側(
図7における下面側)に配置されている。
【0080】
第2グランド導体410Bは、長尺導体411B,412Bおよびブリッジ導体413Bを備える。長尺導体411B,412Bは、誘電体素体90Bの長さ方向に沿って延びる形状からなる。長尺導体411B,412Bは、誘電体素体90Bの幅方向において、第1信号導体211Bを挟むように配置されている。この際、長尺導体411B,412Bは、誘電体素体90Bを厚み方向に視て、第1信号導体211Bと重ならないことが好ましい。ブリッジ導体413Bは、複数備えられており、長尺導体411B,412Bを延びる方向に沿って間隔を空けて接続している。長尺導体411B,412Bは、複数の層間接続導体510Bによって、第1グランド導体301Bの第1信号導体用グランド部301B1に接続されている。
【0081】
第4グランド導体302Bは、誘電体素体90Bの長さ方向に沿って延びる長尺状で膜状の導体である。第4グランド導体302Bは、自身の幅方向において、第3信号導体用グランド部302B1、第2信号導体用グランド部302B2、および、中間部302B3の3つの部分からなる。第3信号導体用グランド部302B1、第2信号導体用グランド部302B2、および、中間部302B3は、一体形成されている。これらの各部は、誘電体素体90Bの幅方向に沿って第1信号導体211B側の側面から第2信号導体212B側の側面に向かって、第3信号導体用グランド部302B1、中間部302B3、および、第2信号導体用グランド部302B2の順に配置される。
【0082】
第4グランド導体302Bの第3信号導体用グランド部302B1は、第3信号導体213Bよりも幅広である。第3信号導体用グランド部302B1は、第3信号導体213Bに対して、誘電体素体90Bの厚み方向の他方側(
図7における下面側)に配置されている。
【0083】
第4グランド導体302Bの第2信号導体用グランド部302B2は、第2信号導体212Bよりも幅広である。第2信号導体用グランド部302B2は、第2信号導体212Bに対して、誘電体素体90Bの厚み方向の一方側(
図7における上面側)に配置されている。第2信号導体用グランド部302B2と、第2信号導体用グランド部301B2とは、層間接続導体520Bによって接続されている。
【0084】
第4グランド導体302Bの中間部302B3は、誘電体素体90Bの幅方向において、第3信号導体213Bと第2信号導体212とBの間に配置されている。中間部302B3の膜面は、誘電体素体90Bの厚み方向に対して略平行な構成になっているほど好ましい。言い換えれば、中間部302B3の膜面は、第3信号導体213Bと第2信号導体212Bとが並ぶ方向に対して略直交する構成になっているほど好ましい。
【0085】
第5グランド導体430Bは、第3信号導体213Bよりも幅広である。第5グランド導体430Bは、第3信号導体213Bに対して、誘電体素体90Bの厚み方向の一方側(
図7における上面側)に配置されている。
【0086】
第5グランド導体430Bは、長尺導体431B,432Bおよびブリッジ導体433Bを備える。長尺導体431B,432Bは、誘電体素体90Bの長さ方向に沿って延びる形状からなる。長尺導体431B,432Bは、誘電体素体90Bの幅方向において、第3信号導体213Bを挟むように配置されている。この際、長尺導体431B,432Bは、誘電体素体90Bを厚み方向に視て、第3信号導体213Bと重ならないことが好ましい。ブリッジ導体433Bは、複数備えられており、長尺導体431B,432Bを延びる方向に沿って間隔を空けて接続している。長尺導体431B,432Bは、複数の層間接続導体530Bによって、第4グランド導体302Bの第3信号導体用グランド部302B1に接続されている。
【0087】
このような構成により、
図7に示すように、誘電体素体90B内には、次の第1、第2、第3伝送線路101B,102B,103Bが構成される。第1伝送線路101Bは、誘電体素体90Bの厚み方向に沿って、第1信号導体211Bを第1グランド導体301Bの第1信号導体用グランド部301B1と、第2グランド導体410Bで挟み込んだストリップライン型の伝送線路である。第2伝送線路102Bは、誘電体素体90Bの厚み方向に沿って、第2信号導体212Bを第1グランド導体301Bの第2信号導体用グランド部301B2と、第4グランド導体302Bの第2信号導体用グランド部302B2で挟み込んだストリップライン型の伝送線路である。第3伝送線路103Bは、誘電体素体90Bの厚み方向に沿って、第3信号導体213Bを第4グランド導体302Bの第3信号導体用グランド部302B1と、第5グランド導体430Bで挟みこんだストリップライン型の伝送線路である。
【0088】
第1、第2、第3伝送線路101B,102B,103Bは、誘電体素体90Bの長さ方向に沿って延びる伝送線路である。第1伝送線路101Bと第2伝送線路102Bは、誘電体素体90Bの幅方向に沿って配列されている。第1伝送線路101Bと第3伝送線路103Bは、誘電体素体90Bの厚み方向に沿って配列されている。誘電体素体90Bを平面視して、第1伝送線路101Bと第3伝送線路103Bは重なっている。
【0089】
第1伝送線路101Bと第2伝送線路102Bとの間には、第1グランド導体301Bの中間部301B3が配置されている。中間部301B3は、第1信号導体211Bと第2信号導体212Bとの並ぶ方向に対して、略直交する膜面を備えている。これにより、第1信号導体211Bと第2信号導体212Bとの電磁界結合を抑制することができる。
【0090】
第3伝送線路103Bと第2伝送線路102Bとの間には、第4グランド導体302Bの中間部302B3が配置されている。中間部302B3は、第3信号導体213Bと第2信号導体212Bとの並ぶ方向に対して、略直交する膜面を備えている。これにより、第3信号導体213Bと第2信号導体212Bとの電磁界結合を抑制することができる。
【0091】
第1信号導体211Bと第3信号導体213Bとの間には、第1グランド導体301Bの第1信号導体用グランド部301B1と、第4グランド導体302Bの第3信号導体用グランド部302B1とが配置されている。これにより、第1信号導体211Bと第3信号導体213Bとの電磁界結合を抑制することができる。
【0092】
このような構成によって、第1信号導体211Bと第2信号導体212Bとが誘電体素体90Bの幅方向に近接し、第1信号導体211Bと第3信号導体213Bとが誘電体素体90Bの厚み方向に近接していても、第1信号導体211B、第2信号導体212B、および第3信号導体213Bの相互の電磁界結合を抑制できる。したがって、第1伝送線路101B、第2伝送線路102B、および第3伝送線路103Bの相互のアイソレーションを高く確保することができる。
【0093】
また、第1の実施形態と同様に、誘電体素体90Bの幅を狭くすることができる。これにより、第1伝送線路101B、第2伝送線路102B、および第3伝送線路103Bの相互のアイソレーションを高く確保した小型の伝送線路部材10Bを実現することができる。
【0094】
また、本実施形態の構成では、厚み方向に沿った第1伝送線路101Bの第1信号導体211Bと第1信号導体用グランド部301B1との間の領域と、厚み方向に沿った第2伝送線路102Bの第2信号導体212Bと第2信号導体用グランド部301B2との間の領域とが、誘電体素体90Bの厚み方向において重なっている。これにより、誘電体素体90Bを低背化でき、伝送線路部材10Bを小型に形成することができる。
【0095】
また、本実施形態の構成では、厚み方向に沿った第3伝送線路103Bの第3信号導体213Bと第3信号導体用グランド部302B1との間の領域と、厚み方向に沿った第2伝送線路102Bの第2信号導体212Bと第2信号導体用グランド部302B2との間の領域とが、誘電体素体90Bの厚み方向において重なっている。これにより、誘電体素体90Bを低背化でき、伝送線路部材10Bを小型に形成することができる。
【0096】
このように、誘電体素体90Bに3つの伝送線路を内蔵しても、狭幅で低背な伝送線路部材10Bを実現することができる。
【0097】
なお、伝送線路部材10Bにおける第1伝送線路101Bおよび第3伝送線路103Bのインピーダンスは、第1の実施形態に示した第1、第2伝送線路101,102のインピーダンスと同様に決定することができる。
【0098】
伝送線路部材10Bでは、第2信号導体212Bを挟む第2信号導体用グランド部301B2,302B2は、ともにベタ導体(開口が無い導体または開口が殆ど無い導体)である。したがって、第2伝送線路102Bのインピーダンスは、一般的なストリップライン型の伝送線路のインピーダンスと同様に決定することができる。この際、第2信号導体212Bと第2信号導体用グランド部301B2との距離、第2信号導体212Bと第2信号導体用グランド部302B2との距離は、第1伝送線路101Bおよび第3伝送線路103Bにおける信号導体とグランド導体との距離よりも長くすることが好ましい。これにより、第2信号導体212Bと第2信号導体用グランド部301B2との間の容量性結合を抑えることができ、所望とするインピーダンスを実現し易い。
【0099】
また、伝送線路部材10Bでは、第1グランド導体301Bの第1信号導体用グランド部301B1と、第4グランド導体302Bの第3信号導体用グランド部302B1とは、誘電体素体90Bの厚み方向において、近接している。また、第1信号導体用グランド部301B1と第3信号導体用グランド部302B1は複数の層間接続導体590によって接続されている。これにより、グランド導体間の電位差を抑制できる。
【0100】
誘電体素体90Bを平面視して、層間接続導体590は、層間接続導体510,530に重なる位置に配置されている。これにより、第1グランド導体301Bの第1信号導体用グランド部301B1と、第4グランド導体302Bの第3信号導体用グランド部302B1が、誘電体素体90Bの成型時に変形することを抑制できる。これにより、成型によって信号導体とグランド導体との位置関係が変化することを抑制でき、所望とするインピーダンスを実現することができる。
【0101】
このような構造の伝送線路部材10Bは、例えば次に示すように製造される。
【0102】
図8に示すように、誘電体層901B,902B,903B,904B,905B,906B,907B,908B,909Bを用意する。各誘電体層901B−909Bは、例えば、液晶ポリマを主成分とする材料からなる誘電体フィルムに対して、必要に応じて所定の導体パターンを形成することで得られる。
【0103】
誘電体層901Bは、片面に導体(例えば、銅(Cu))が貼り付けられた誘電体フィルムからなる。
図8に示すように、誘電体層901Bの表面の導体に対してパターニング処理等を施すことによって、誘電体層901Bの表面には第2グランド導体410Bが形成されている。誘電体層901Bの幅は、誘電体素体90Bの幅と同じである。第2グランド導体410Bは、誘電体層901Bの幅方向における一方端側の半面に形成されている。
【0104】
誘電体層902Bは、片面に導体(例えば、銅(Cu))が貼り付けられた誘電体フィルムからなる。
図8に示すように、誘電体層902Bの表面の導体に対してパターニング処理等を施すことによって、誘電体層902Bの表面には第1信号導体211Bおよびビア用補助導体511が形成されている。誘電体層902Bの幅は、誘電体素体90Bの幅の略半分(1/2)である。誘電体層902Bは、誘電体素体90Bにおける幅方向の一方端側の半分の位置に配置されている。
【0105】
ビア用補助導体511は、誘電体層902Bを誘電体層901Bに重ねあわせたとき、第2グランド導体410Bの長尺導体411B,412Bと重なる領域に設けられている。誘電体層902Bには、誘電体層901Bと重ねあわせたときに第2グランド導体410Bの長尺導体411B,412Bと重なる領域(ビア用補助導体511と重なる領域)に、厚み方向に貫通する複数の貫通孔が設けられている。各貫通孔には導電性ペーストが充填されている。この貫通孔に充填された導電性ペーストが、誘電体層901B−909Bの加熱圧着によって、ビア用補助導体511とともに層間接続導体510Bの一部を構成する。
【0106】
誘電体層903Bは、片面に導体(例えば、銅(Cu))が貼り付けられた誘電体フィルムからなる。
図8に示すように、誘電体層903Bの表面の導体に対してパターニング処理等を施すことによって、誘電体層903Bの表面には、第1グランド導体301Bが形成される。誘電体層903Bの幅は、誘電体素体90Bの幅と略同じである。第1グランド導体301Bは、誘電体層903Bの略全面に形成されている。第1グランド導体301Bは、誘電体層903Bの幅方向の両端面に達しない方が好ましい。これにより、第1グランド導体301Bが外部回路に対して不要に短絡することを抑制できる。
【0107】
誘電体層903Bには、第1グランド導体301Bの形成領域に、当該第1グランド導体301Bを除いて厚み方向に貫通する複数の貫通孔が設けられており、各貫通孔には導電性ペーストが充填されている。この貫通孔に充填された導電性ペーストが、誘電体層901B−909Bの加熱圧着によって、層間接続導体510Bの一部を構成する。
【0108】
誘電体層904Bは、片面に導体(例えば、銅(Cu))が貼り付けられた誘電体フィルムからなる。
図8に示すように、誘電体層904Bの表面の導体に対してパターニング処理等を施すことによって、誘電体層904Bの表面には、第2信号導体212Bおよびビア用補助導体521が形成されている。誘電体層904Bの幅は、誘電体素体90Bの幅の略1/2である。誘電体層904Bは、誘電体素体90Bにおける幅方向の他方端側の半分の位置に配置されている。ビア用補助導体521は、誘電体層904Bの幅方向において第2信号導体212Bを挟むように設けられている。誘電体層904Bには、ビア用補助導体521と重なる領域に、厚み方向に貫通する貫通孔が設けられている。各貫通孔には導電性ペーストが充填されている。この貫通孔に充填された導電性ペーストが、誘電体層901B−909Bの加熱圧着によって、ビア用補助導体521とともに層間接続導体520Bの一部を構成する。
【0109】
誘電体層905Bは、片面に導体(例えば、銅(Cu))が貼り付けられた誘電体フィルムからなる。
図8に示すように、誘電体層905Bの表面の導体に対してパターニング処理等を施すことによって、誘電体層905Bの表面には、ビア用補助導体521が形成されている。誘電体層905Bの幅は、誘電体素体90Bの幅の略1/2である。誘電体層905Bは、誘電体素体90Bにおける幅方向の他方端側の半分の位置に配置されている。ビア用補助導体521は、誘電体層905Bを誘電体層904Bに重ねあわせた状態において、誘電体層904Bのビア用補助導体521と重なる位置に設けられている。誘電体層905Bには、ビア用補助導体521と重なる領域に、厚み方向に貫通する貫通孔が設けられている。各貫通孔には導電性ペーストが充填されている。この貫通孔に充填された導電性ペーストが、誘電体層901B−909Bの加熱圧着によって、ビア用補助導体521とともに層間接続導体520Bの一部を構成する。誘電体層905Bは、第2信号導体212Bと第4グランド導体302Bとの距離を所定値にして第2伝送線路102Bのインピーダンスを調整するための誘電体層である。
【0110】
誘電体層906Bは、片面に導体(例えば、銅(Cu))が貼り付けられた誘電体フィルムからなる。
図8に示すように、誘電体層906Bの表面の導体に対してパターニング処理等を施すことによって、誘電体層906Bの表面には、第4グランド導体302Bが形成される。誘電体層906Bの幅は、誘電体素体90Bの幅と略同じである。第4グランド導体302Bは、誘電体層906Bの略全面に形成されている。第4グランド導体302Bは、誘電体層906Bの幅方向の両端面に達しない方が好ましい。これにより、第4グランド導体302Bが外部回路に対して不要に短絡することを抑制できる。
【0111】
誘電体層906Bには、第4グランド導体302Bの形成領域に、当該第4グランド導体302Bを除いて厚み方向に貫通する複数の貫通孔が設けられており、各貫通孔には導電性ペーストが充填されている。誘電体層906Bにおける幅方向の他方端側の半分の領域に形成された貫通孔に充填された導電性ペーストが、誘電体層901B−909Bの加熱圧着によって、層間接続導体520Bの一部を構成する。誘電体層906Bにおける幅方向の一方端側の半分の領域に形成された貫通孔に充填された導電性ペーストが、誘電体層901B−909Bの加熱圧着によって、層間接続導体590の一部を構成する。
【0112】
誘電体層907Bは、片面に導体(例えば、銅(Cu))が貼り付けられた誘電体フィルムからなる。
図8に示すように、誘電体層907Bの表面の導体に対してパターニング処理等を施すことによって、誘電体層907Bの表面には、第3信号導体213Bおよびビア用補助導体531が形成されている。誘電体層907Bの幅は、誘電体素体90Bの幅の略1/2である。誘電体層907Bは、誘電体素体90Bにおける幅方向の一方端側の半分の位置に配置されている。ビア用補助導体531は、誘電体層907Bの幅方向において第3信号導体213Bを挟むように設けられている。誘電体層907Bには、ビア用補助導体531と重なる領域に、厚み方向に貫通する貫通孔が設けられている。各貫通孔には導電性ペーストが充填されている。この貫通孔に充填された導電性ペーストが、誘電体層901B−909Bの加熱圧着によって、ビア用補助導体531とともに層間接続導体530Bの一部を構成する。
【0113】
誘電体層908Bは、片面に導体(例えば、銅(Cu))が貼り付けられた誘電体フィルムからなる。
図8に示すように、誘電体層908Bの表面の導体に対してパターニング処理等を施すことによって、誘電体層908Bの表面には第5グランド導体430Bが形成されている。誘電体層908Bの幅は、誘電体素体90Bの幅と同じである。第5グランド導体430Bは、誘電体層908Bの幅方向における一方端側の半面に形成されている。誘電体層908Bの幅方向における他方端側の半分の部分は導体が形成されていない。しかしながら、この部分を設けることによって、誘電体素体90Bの厚みを均一にすることができる。
【0114】
誘電体層909Bは、導体が形成されていない誘電体フィルムからなる。誘電体層909Bの幅は、誘電体素体90Bの幅と略同じである。
【0115】
このような構成からなる誘電体層901B−909Bを、
図8に示すように、誘電体層901B、誘電体層902B、誘電体層903B、誘電体層904B、誘電体層905B、誘電体層906B、誘電体層907B、誘電体層908B、および誘電体層909Bの順に積層する。
【0116】
誘電体層901B−909Bが積層されると、この積層体は、積層方向の両端から金型で挟み込まれ、所定の条件で加熱圧着される。これにより、第1グランド導体301Bが形成された誘電体層903Bは幅方向の途中位置(より具体的には積層体を積層方向に視たときの誘電体層902Bの領域と誘電体層904B,905Bの領域との境界)で曲がる。これにより、第1グランド導体301Bは、平膜面が積層方向(厚み方向)と略平行な中間部301B3と、該中間部301B3でつなげられたそれぞれ平膜面が積層方向に直交する第1信号導体用グランド部301B1および第2信号導体用グランド部301B2とに形づけられる。また、第4グランド導体302Bが形成された誘電体層906Bは幅方向の途中位置(より具体的には積層体を積層方向に視たときの誘電体層904B,905Bの領域と誘電体層908Bの領域との境界)で曲がる。これにより、第4グランド導体302Bは、平膜面が積層方向(厚み方向)と略平行な中間部302B3と、該中間部302B3でつなげられたそれぞれ平膜面が積層方向に直交する第3信号導体用グランド部302B1および第2信号導体用グランド部302B2とに形づけられる。
【0117】
このように、本実施形態の製造方法を用いることで、上述の伝送線路部材10Bを容易に製造することができる。
【0118】
次に、本発明の第4の実施形態に係る伝送線路部材について、図を参照して説明する。
図9は、本発明の第4の実施形態に係る伝送線路部材の主要部断面図である。
図10は、本発明の第4の実施形態に係る伝送線路部材の加熱圧着前の状態を示す断面図である。
【0119】
第1の実施形態に係る伝送線路部材10が2つの伝送線路(第1伝送線路101、第2伝送線路102)を備えているのに対して、本実施形態に係る伝送線路部材10Cは、4つの伝送線路(第1伝送線路101C、第2伝送線路102C、第3伝送線路103C、第4伝送線路104C)を備える。
【0120】
伝送線路部材10Cは、平板状で且つ長尺状の誘電体素体90Cを備える。
【0121】
誘電体素体90Cには、第1信号導体211C、第2信号導体212C、第3信号導体213C、第4信号導体214C、第1グランド導体301C、第2グランド導体410C、第4グランド導体302C、第6グランド導体303C、第7グランド導体440Cおよび層間接続導体510C,520C,530C,540Cが配置されている。
【0122】
第1信号導体211C、第2信号導体212C、第3信号導体213Cおよび第4信号導体214Cは、誘電体素体90Cの長さ方向に沿って延びる長尺状で膜状の導体である。第1信号導体211C、第2信号導体212C、第3信号導体213Cおよび第4信号導体214Cは、誘電体素体90Cの厚み方向の途中位置に配置されている。第1信号導体211Cと第3信号導体213Cは、誘電体素体90Cの幅方向において略同じ位置に配置されている。第1信号導体211Cと第3信号導体213Cは、誘電体素体90Cの厚み方向において間隔を空けて配置されている。第2信号導体212Cと第4信号導体214Cは、誘電体素体90Cの幅方向において略同じ位置に配置されている。第2信号導体212Cと第4信号導体214Cは、誘電体素体90Cの厚み方向において間隔を空けて配置されている。第1信号導体211Cおよび第3信号導体213Cと第2信号導体212Cおよび第4信号導体214Cは、誘電体素体90Cの幅方向において、間隔を空けて配置されている。
【0123】
第1グランド導体301Cは、誘電体素体90Cの長さ方向に沿って延びる長尺状で膜状の導体である。第1グランド導体301Cは、自身の幅方向において、第1信号導体用グランド部301C1、第2信号導体用グランド部301C2、および、中間部301C3の3つの部分からなる。第1信号導体用グランド部301C1、第2信号導体用グランド部301C2、および、中間部301C3は、一体形成されている。これらの各部は、誘電体素体90Cの幅方向に沿って第1信号導体211C側の側面から第2信号導体212C側の側面に向かって、第1信号導体用グランド部301C1、中間部301C3、および、第2信号導体用グランド部301C2の順に配置される。
【0124】
第1グランド導体301Cの第1信号導体用グランド部301C1は、第1信号導体211Cよりも幅広である。第1信号導体用グランド部301C1は、第1信号導体211Cに対して、誘電体素体90Cの厚み方向の一方側(
図9における上面側)に配置されている。
【0125】
第1グランド導体301Cの第2信号導体用グランド部301C2は、第2信号導体212Cよりも幅広である。第2信号導体用グランド部301C2は、第2信号導体212Cに対して、誘電体素体90Cの厚み方向の他方側(
図9における下面側)に配置されている。
【0126】
第1グランド導体301Cの中間部301C3は、誘電体素体90Cの幅方向において、第1信号導体211Cと第2信号導体212Cとの間に配置されている。中間部301C3の膜面は、誘電体素体90Cの厚み方向に対して略平行な構成になっているほど好ましい。言い換えれば、中間部301C3の膜面は、第1信号導体211Cと第2信号導体212Cとが並ぶ方向に対して略直交する構成になっているほど好ましい。
【0127】
第2グランド導体410Cは、第1信号導体211Cよりも幅広である。第2グランド導体410Cは、第1信号導体211Cに対して、誘電体素体90Cの厚み方向の他方側(
図9における下面側)に配置されている。
【0128】
第2グランド導体410Cは、長尺導体411C,412Cおよびブリッジ導体413Cを備える。長尺導体411C,412Cは、誘電体素体90Cの長さ方向に沿って延びる形状からなる。長尺導体411C,412Cは、誘電体素体90Cの幅方向において、第1信号導体211Cを挟むように配置されている。この際、長尺導体411C,412Cは、誘電体素体90Cを厚み方向に視て、第1信号導体211Cと重ならないことが好ましい。ブリッジ導体413Cは、複数備えられており、長尺導体411C,412Cを延びる方向に沿って間隔を空けて接続している。長尺導体411C,412Cは、複数の層間接続導体510Cによって、第1グランド導体301Cの第1信号導体用グランド部301C1に接続されている。
【0129】
第4グランド導体302Cは、誘電体素体90Cの長さ方向に沿って延びる長尺状で膜状の導体である。第4グランド導体302Cは、自身の幅方向において、第3信号導体用グランド部302C1、第2信号導体用グランド部302C2、および、中間部302C3の3つの部分からなる。第3信号導体用グランド部302C1、第2信号導体用グランド部302C2、および、中間部302C3は、一体形成されている。これらの各部は、誘電体素体90Cの幅方向に沿って第3信号導体213C側の側面から第2信号導体212C側の側面に向かって、第3信号導体用グランド部302C1、中間部302C3、および、第2信号導体用グランド部302C2の順に配置される。
【0130】
第4グランド導体302Cの第3信号導体用グランド部302C1は、第3信号導体213Cよりも幅広である。第3信号導体用グランド部302C1は、第3信号導体213Cに対して、誘電体素体90Cの厚み方向の他方側(
図9における下面側)に配置されている。
【0131】
第4グランド導体302Cの第2信号導体用グランド部302C2は、第2信号導体212Cよりも幅広である。第2信号導体用グランド部302C2は、第2信号導体212Cに対して、誘電体素体90Cの厚み方向の一方側(
図9における上面側)に配置されている。
【0132】
第4グランド導体302Cの中間部302C3は、誘電体素体90Cの幅方向において、第3信号導体213Cと第2信号導体212とCの間に配置されている。第4グランド導体302Cは、全体として誘電体素体90Cの厚み方向に直交する方向に平坦な形状である。すなわち、第3信号導体用グランド部302C1、中間部302C3、および、第2信号導体用グランド部302C3は、誘電体素体90Cの厚み方向において同じ位置に配置されている。
【0133】
第6グランド導体303Cは、誘電体素体90Cの長さ方向に沿って延びる長尺状で膜状の導体である。第6グランド導体303Cは、自身の幅方向において、第3信号導体用グランド部303C1、第4信号導体用グランド部303C2、および、中間部303C3の3つの部分からなる。第3信号導体用グランド部303C1、第4信号導体用グランド部303C2、および、中間部303C3は、一体形成されている。これらの各部は、誘電体素体90Cの幅方向に沿って第3信号導体213C側の側面から第4信号導体214C側の側面に向かって、第3信号導体用グランド部303C1、中間部303C3、および、第4信号導体用グランド部303C2の順に配置される。
【0134】
第6グランド導体303Cの第3信号導体用グランド部303C1は、第3信号導体213Cよりも幅広である。第3信号導体用グランド部303C1は、第3信号導体213Cに対して、誘電体素体90Cの厚み方向の一方側(
図9における上面側)に配置されている。
【0135】
第6グランド導体303Cの第4信号導体用グランド部303C2は、第4信号導体214Cよりも幅広である。第4信号導体用グランド部303C2は、第4信号導体214Cに対して、誘電体素体90Cの厚み方向の他方側(
図9における下面側)に配置されている。
【0136】
第6グランド導体303Cの中間部303C3は、誘電体素体90Cの幅方向において、第3信号導体213Cと第4信号導体214Cとの間に配置されている。中間部303C3の膜面は、誘電体素体90Cの厚み方向に対して略平行な構成になっているほど好ましい。言い換えれば、中間部303C3の膜面は、第3信号導体213Cと第4信号導体214Cとが並ぶ方向に対して略直交する構成になっているほど好ましい。
【0137】
第7グランド導体440Cは、第4信号導体214Cよりも幅広である。第7グランド導体440Cは、第4信号導体214Cに対して、誘電体素体90Cの厚み方向の一方側(
図9における上面側)に配置されている。
【0138】
第7グランド導体440Cは、長尺導体441C,442Cおよびブリッジ導体443Cを備える。長尺導体441C,442Cは、誘電体素体90Cの長さ方向に沿って延びる形状からなる。長尺導体441C,442Cは、誘電体素体90Cの幅方向において、第4信号導体214Cを挟むように配置されている。この際、長尺導体441C,442Cは、誘電体素体90Cを厚み方向に視て、第4信号導体214Cと重ならないことが好ましい。ブリッジ導体443Cは、複数備えられており、長尺導体441C,442Cを延びる方向に沿って間隔を空けて接続している。長尺導体441C,442Cは、複数の層間接続導体540Cによって、第6グランド導体303Cの第4信号導体用グランド部303C2に接続されている。
【0139】
このような構成により、
図9に示すように、誘電体素体90C内には、第1、第2、第3、第4伝送線路101C,102C,103C,104Cが構成される。第1伝送線路101Cは、誘電体素体90Cの厚み方向に沿って、第1信号導体211Cを、第1グランド導体301Cの第1信号導体用グランド部301C1と、第2グランド導体410Cで挟み込んだストリップライン型の伝送線路である。第2伝送線路102Cは、誘電体素体90Cの厚み方向に沿って、第2信号導体212Cを、第1グランド導体301Cの第2信号導体用グランド部301C2と、第4グランド導体302Cの第2信号導体用グランド部302C2で挟み込んだストリップライン型の伝送線路である。第3伝送線路103Cは、誘電体素体90Cの厚み方向に沿って、第3信号導体213Cを、第4グランド導体302Cの第3信号導体用グランド部302C1と、第6グランド導体303Cの第3信号導体用グランド部303C1で挟み込んだストリップライン型の伝送線路である。第4伝送線路104Cは、誘電体素体90Cの厚み方向に沿って、第4信号導体214Cを第6グランド導体303Cの第4信号導体用グランド部303C2と、第7グランド導体440Cで挟みこんだストリップライン型の伝送線路である。
【0140】
第1、第2、第3、第4伝送線路101C,102C,103C,104Cは、誘電体素体90Cの長さ方向に沿って延びる伝送線路である。第1伝送線路101Cと第2伝送線路102Cは、誘電体素体90Cの幅方向に沿って配列されている。第1伝送線路101Cと第3伝送線路103Cは、誘電体素体90Cの厚み方向に沿って配列されている。誘電体素体90Cを平面視して、第1伝送線路101Cと第3伝送線路103Cは重なっている。第2伝送線路102Cと第4伝送線路104Cは、誘電体素体90Cの厚み方向に沿って配列されている。誘電体素体90Cを平面視して、第2伝送線路102Cと第4伝送線路104Cは重なっている。第3伝送線路103Cと第4伝送線路104Cは、誘電体素体90Cの幅方向に沿って配列されている。
【0141】
第1伝送線路101Cと第2伝送線路102Cとの間には、第1グランド導体301Cの中間部301C3が配置されている。中間部301C3は、第1信号導体211Cと第2信号導体212Cとの並ぶ方向に対して、略直交する膜面を備えている。これにより、第1信号導体211Cと第2信号導体212Cとの電磁界結合を抑制することができる。
【0142】
第3伝送線路103Cと第4伝送線路104Cとの間には、第6グランド導体303Cの中間部303C3が配置されている。中間部303C3は、第3信号導体213Cと第4信号導体214Cとの並ぶ方向に対して、略直交する膜面を備えている。これにより、第3信号導体213Cと第4信号導体214Cとの電磁界結合を抑制することができる。
【0143】
第1信号導体211Cと第3信号導体213Cとの間には、第1グランド導体301Cの第1信号導体用グランド部301C1と、第4グランド導体302Cの第3信号導体用グランド部302C1とが配置されている。これにより、第1信号導体211Cと第3信号導体213Cとの電磁界結合を抑制することができる。
【0144】
第2信号導体212Cと第4信号導体214Cとの間には、第4グランド導体302Cの第2信号導体用グランド部302C2と、第6グランド導体303Cの第4信号導体用グランド部303C2とが配置されている。これにより、第2信号導体212Cと第4信号導体214Cとの電磁界結合を抑制することができる。
【0145】
このような構成によって、第1信号導体211Cと第2信号導体212Cとが誘電体素体90Cの幅方向に近接し、第3信号導体213Cと第4信号導体214Cとが誘電体素体90Cの幅方向に近接し、第1信号導体211Cと第3信号導体213Cとが誘電体素体90Cの厚み方向に近接し、第2信号導体212Cと第4信号導体214Cとが誘電体素体90Cの厚み方向に近接していても、第1信号導体211C、第2信号導体212C、第3信号導体213C、および第4信号導体214Cの相互の電磁界結合を抑制できる。したがって、第1伝送線路101C、第2伝送線路102C、第3伝送線路103C、および第4伝送線路104Cの相互のアイソレーションを高く確保することができる。
【0146】
また、上述の各実施形態と同様に、誘電体素体90Cの幅を狭くすることができる。これにより、第1伝送線路101C、第2伝送線路102C、第3伝送線路103C、および第4伝送線路104Cの相互のアイソレーションを高く確保した小型の伝送線路部材10Cを実現することができる。
【0147】
また、本実施形態の構成では、厚み方向に沿った第1伝送線路101Cの第1信号導体211Cと第1信号導体用グランド部301C1との間の領域と、厚み方向に沿った第2伝送線路102Cの第2信号導体212Cと第2信号導体用グランド部301C2との間の領域とが、誘電体素体90Cの厚み方向において重なっている。厚み方向に沿った第3伝送線路103Cの第3信号導体213Cと第3信号導体用グランド部303C1との間の領域と、厚み方向に沿った第4伝送線路104Cの第4信号導体214Cと第4信号導体用グランド部303C2との間の領域とが、誘電体素体90Cの厚み方向において重なっている。これにより、誘電体素体90Cを低背化でき、伝送線路部材10Cを小型に形成することができる。
【0148】
このように、誘電体素体90Cに4つの伝送線路を内蔵しても、狭幅で低背な伝送線路部材10Cを実現することができる。
【0149】
なお、伝送線路部材10Cにおける第1伝送線路101Cおよび第3伝送線路103Cのインピーダンスは、第1の実施形態に示した第1、第2伝送線路101,102のインピーダンスと同様に決定することができる。伝送線路部材10Cにおける第2伝送線路102Cおよび第4伝送線路104Cのインピーダンスは、第2の実施形態に係る第2伝送線路102Bと同様に決定することができる。
【0150】
また、伝送線路部材10Cでは、第1グランド導体301Cの第1信号導体用グランド部301C1と、第4グランド導体302Cの第3信号導体用グランド部302C1とは、誘電体素体90Cの厚み方向において、近接している。また、第1信号導体用グランド部301C1と第3信号導体用グランド部302C1は複数の層間接続導体591によって接続されている。第4グランド導体302Cの第2信号導体用グランド部302C2と、第6グランド導体303Cの第4信号導体用グランド部303C2とは、誘電体素体90Cの厚み方向において、近接している。また、第2信号導体用グランド部302C2と第4信号導体用グランド部303C2は複数の層間接続導体592によって接続されている。これにより、グランド導体間の電位差を抑制できる。
【0151】
誘電体素体90Bを平面視して、層間接続導体591は、層間接続導体510,530に重なる位置に配置されている。これにより、第1グランド導体301Cの第1信号導体用グランド部301C1と、第4グランド導体302Cの第3信号導体用グランド部302C1が、誘電体素体90Cの成型時に変形することを抑制できる。層間接続導体592は、層間接続導体520,540に重なる位置に配置されている。これにより、第4グランド導体302Cの第2信号導体用グランド部302C2と、第6グランド導体303Cの第4信号導体用グランド部303C2が、誘電体素体90Cの成型時に変形することを抑制できる。これにより、成型によって信号導体とグランド導体との位置関係が変化することを抑制でき、所望とするインピーダンスを実現することができる。
【0152】
このような構造の伝送線路部材10Cは、例えば次に示すように製造される。
【0153】
図10に示すように、誘電体層901C,902C,903C,904C,905C,906C,907C,908C,909C,910C,911C,912C,913Cを用意する。各誘電体層901C−913Cは、例えば、液晶ポリマを主成分とする材料からなる誘電体フィルムに対して、必要に応じて所定の導体パターンを形成することで得られる。
【0154】
誘電体層901Cは、導体が形成されていない誘電体フィルムからなる。誘電体層901Cの幅は、誘電体素体90Cの幅と略同じである。
【0155】
誘電体層902Cは、片面に導体(例えば、銅(Cu))が貼り付けられた誘電体フィルムからなる。
図10に示すように、誘電体層902Cの表面の導体に対してパターニング処理等を施すことによって、誘電体層902Cの表面には第2グランド導体410Cが形成されている。誘電体層902Cの幅は、誘電体素体90Cの幅の略半分(1/2)である。誘電体層902Cは、誘電体素体90Cにおける幅方向の一方端側の半分の位置に配置されている。
【0156】
誘電体層903Cは、片面に導体(例えば、銅(Cu))が貼り付けられた誘電体フィルムからなる。
図10に示すように、誘電体層903Cの表面の導体に対してパターニング処理等を施すことによって、誘電体層903Cの表面には第1信号導体211Cおよびビア用補助導体511が形成されている。誘電体層903Cの幅は、誘電体素体90Cの幅の略半分(1/2)である。誘電体層902Cは、誘電体素体90Cにおける幅方向の一方端側の半分の位置に、誘電体層902Cに重なるように配置されている。
【0157】
ビア用補助導体511は、誘電体層902Cを誘電体層903Cに重ねあわせたとき、第2グランド導体410Cの長尺導体411C,412Cと重なる領域に設けられている。誘電体層903Cには、誘電体層902Cと重ねあわせたときに第2グランド導体410Cの長尺導体411C,412Cと重なる領域(ビア用補助導体511と重なる領域)に、厚み方向に貫通する複数の貫通孔が設けられている。各貫通孔には導電性ペーストが充填されている。この貫通孔に充填された導電性ペーストが、誘電体層901C−913Cの加熱圧着によって、ビア用補助導体511とともに層間接続導体510Cの一部を構成する。
【0158】
誘電体層904Cは、片面に導体(例えば、銅(Cu))が貼り付けられた誘電体フィルムからなる。
図10に示すように、誘電体層904Cの表面の導体に対してパターニング処理等を施すことによって、誘電体層904Cの表面には、第1グランド導体301Cが形成される。誘電体層904Cの幅は、誘電体素体90Cの幅と略同じである。第1グランド導体301Cは、誘電体層904Cの略全面に形成されている。第1グランド導体301Cは、誘電体層904Cの幅方向の両端面に達しない方が好ましい。これにより、第1グランド導体301Cが外部回路に対して不要に短絡することを抑制できる。
【0159】
誘電体層904Cには、誘電体層903Cと重ね合わせた状態で誘電体層903Cのビア用補助導体511と重なり合う位置に複数の貫通孔が設けられており、各貫通孔には導電性ペーストが充填されている。この貫通孔に充填された導電性ペーストが、誘電体層901C−913Cの加熱圧着によって、層間接続導体510の一部を構成する。
【0160】
誘電体層905Cは、片面に導体(例えば、銅(Cu))が貼り付けられた誘電体フィルムからなる。
図10に示すように、誘電体層905Cの表面の導体に対してパターニング処理等を施すことによって、誘電体層905Cの表面には、第2信号導体212Cおよびビア用補助導体521が形成されている。誘電体層905Cの幅は、誘電体素体90Cの幅の略1/2である。誘電体層905Cは、誘電体素体90Cにおける幅方向の他方端側の半分の位置に配置されている。ビア用補助導体521は、誘電体層905Cの幅方向において第2信号導体212Cを挟むように設けられている。誘電体層905Cには、ビア用補助導体521と重なる領域に貫通孔が設けられている。各貫通孔には導電性ペーストが充填されている。この貫通孔に充填された導電性ペーストが、誘電体層901C−913Cの加熱圧着によって、ビア用補助導体521とともに層間接続導体520Cの一部を構成する。
【0161】
誘電体層906Cは、片面に導体(例えば、銅(Cu))が貼り付けられた誘電体フィルムからなる。
図10に示すように、誘電体層906Cの表面の導体に対してパターニング処理等を施すことによって、誘電体層906Cの表面には、ビア用補助導体521が形成されている。誘電体層906Cの幅は、誘電体素体90Cの幅の略1/2である。誘電体層906Cは、誘電体素体90Cにおける幅方向の他方端側の半分の位置に配置されている。ビア用補助導体521は、誘電体層906Cを誘電体層905Cに重ねあわせた状態において、誘電体層905Cのビア用補助導体521と重なる位置に設けられている。誘電体層906Cには、ビア用補助導体521と重なる領域に貫通孔が設けられている。各貫通孔には導電性ペーストが充填されている。この貫通孔に充填された導電性ペーストが、誘電体層901C−913Cの加熱圧着によって、ビア用補助導体521とともに層間接続導体520の一部を構成する。誘電体層906Cは、第2信号導体212Cと第4グランド導体302Cとの距離を所定値にして第2伝送線路102Cのインピーダンスを調整するための誘電体層である。
【0162】
誘電体層907Cは、片面に導体(例えば、銅(Cu))が貼り付けられた誘電体フィルムからなる。
図10に示すように、誘電体層907Cの表面の導体に対してパターニング処理等を施すことによって、誘電体層907Cの表面には、第4グランド導体302Cが形成される。誘電体層907Cの幅は、誘電体素体90Cの幅と略同じである。第4グランド導体302Cは、誘電体層907Cの略全面に形成されている。第4グランド導体302Cは、誘電体層907Cの幅方向の両端面に達しない方が好ましい。これにより、第4グランド導体302Cが外部回路に対して不要に短絡することを抑制できる。
【0163】
誘電体層907Cには、幅方向の一方端側の半分の領域に、複数の貫通孔が設けられており、各貫通孔には導電性ペーストが充填されている。幅方向の一方端側の半分の領域に形成された貫通孔に充填された導電性ペーストが、誘電体層901C−913Cの加熱圧着によって、層間接続導体591を構成する。
【0164】
誘電体層908Cは、片面に導体(例えば、銅(Cu))が貼り付けられた誘電体フィルムからなる。
図10に示すように、誘電体層908Cの表面の導体に対してパターニング処理等を施すことによって、誘電体層908Cの表面には、第3信号導体213Cおよびビア用補助導体531が形成されている。誘電体層908Cの幅は、誘電体素体90Cの幅の略1/2である。誘電体層908Cは、誘電体素体90Cにおける幅方向の一方端側の半分の位置に配置されている。ビア用補助導体531は、誘電体層908Cの幅方向において第3信号導体213Cを挟むように設けられている。誘電体層908Cには、ビア用補助導体531と重なる領域に貫通孔が設けられている。各貫通孔には導電性ペーストが充填されている。この貫通孔に充填された導電性ペーストが、誘電体層901C−913Cの加熱圧着によって、ビア用補助導体531とともに層間接続導体530Cの一部を構成する。
【0165】
誘電体層909Cは、片面に導体(例えば、銅(Cu))が貼り付けられた誘電体フィルムからなる。
図10に示すように、誘電体層909Cの表面の導体に対してパターニング処理等を施すことによって、誘電体層909Cの表面には、ビア用補助導体531が形成されている。誘電体層909Cの幅は、誘電体素体90Cの幅の略1/2である。誘電体層909Cは、誘電体素体90Cにおける幅方向の一方端側の半分の位置に配置されている。ビア用補助導体531は、誘電体層909Cを誘電体層908Cに重ねあわせた状態において、誘電体層908Cのビア用補助導体531と重なる位置に設けられている。誘電体層908Cには、ビア用補助導体531と重なる領域に貫通孔が設けられている。各貫通孔には導電性ペーストが充填されている。この貫通孔に充填された導電性ペーストが、誘電体層901C−913Cの加熱圧着によって、ビア用補助導体531とともに層間接続導体530Cの一部を構成する。誘電体層909Cは、第3信号導体213Cと第6グランド導体303Cとの距離を所定値にして第3伝送線路103Cのインピーダンスを調整するための誘電体層である。
【0166】
誘電体層910Cは、片面に導体(例えば、銅(Cu))が貼り付けられた誘電体フィルムからなる。
図10に示すように、誘電体層910Cの表面の導体に対してパターニング処理等を施すことによって、誘電体層910Cの表面には、第6グランド導体303Cが形成される。誘電体層910Cの幅は、誘電体素体90Cの幅と略同じである。第6グランド導体303Cは、誘電体層910Cの略全面に形成されている。第6グランド導体303Cは、誘電体層910Cの幅方向の両端面に達しない方が好ましい。これにより、第6グランド導体303Cが外部回路に対して不要に短絡することを抑制できる。
【0167】
誘電体層910Cには、幅方向の他方端側の半分の領域に、複数の貫通孔が設けられており、各貫通孔には導電性ペーストが充填されている。幅方向の一方端側の半分の領域に形成された貫通孔に充填された導電性ペーストが、誘電体層901C−913Cの加熱圧着によって、層間接続導体592を構成する。
【0168】
誘電体層911Cは、片面に導体(例えば、銅(Cu))が貼り付けられた誘電体フィルムからなる。
図10に示すように、誘電体層911Cの表面の導体に対してパターニング処理等を施すことによって、誘電体層911Cの表面には、第4信号導体214Cおよびビア用補助導体541が形成されている。誘電体層911Cの幅は、誘電体素体90Cの幅の略1/2である。誘電体層911Cは、誘電体素体90Cにおける幅方向の他方端側の半分の位置に配置されている。ビア用補助導体541は、誘電体層911Cの幅方向において第4信号導体214Cを挟むように設けられている。誘電体層911Cには、ビア用補助導体541と重なる領域に貫通孔が設けられている。各貫通孔には導電性ペーストが充填されている。この貫通孔に充填された導電性ペーストが、誘電体層901C−913Cの加熱圧着によって、ビア用補助導体541とともに層間接続導体540Cの一部を構成する。
【0169】
誘電体層912Cは、片面に導体(例えば、銅(Cu))が貼り付けられた誘電体フィルムからなる。
図10に示すように、誘電体層912Cの表面の導体に対してパターニング処理等を施すことによって、誘電体層912Cの表面には第7グランド導体440Cが形成されている。誘電体層912Cの幅は、誘電体素体90Cの幅の略半分(1/2)である。誘電体層912Cは、誘電体素体90Cにおける幅方向の他方端側の半分の位置に配置されている。
【0170】
誘電体層913Cは、導体が形成されていない誘電体フィルムからなる。誘電体層913Cの幅は、誘電体素体90Cの幅と略同じである。
【0171】
このような構成からなる誘電体層901C−913Cを、
図10に示すように、誘電体層901C、誘電体層902C、誘電体層903C、誘電体層904C、誘電体層905C、誘電体層906C、誘電体層907C、誘電体層908C、誘電体層909C、誘電体層910C、誘電体層911C、誘電体層912C、および誘電体層913Cの順に積層する。
【0172】
誘電体層901C−913Cが積層されると、この積層体は、積層方向の両端から金型で挟み込まれ、所定の条件で加熱圧着される。これにより、第1グランド導体301Cが形成された誘電体層904Cは幅方向の途中位置(より具体的には積層体を積層方向に視たときの誘電体層903Cの領域と誘電体層905Cの領域との境界)で曲がる。これにより、第1グランド導体301Cは、平膜面が積層方向(厚み方向)と略平行な中間部301C3と、該中間部301C3でつなげられたそれぞれ平膜面が積層方向に直交する第1信号導体用グランド部301C1および第2信号導体用グランド部301C2とに形づけられる。第6グランド導体303Cが形成された誘電体層910Cは幅方向の途中位置(より具体的には積層体を積層方向に視たときの誘電体層909Cの領域と誘電体層911Cの領域との境界)で曲がる。これにより、第6グランド導体303Cは、平膜面が積層方向(厚み方向)と略平行な中間部303C3と、該中間部303C3でつなげられたそれぞれ平膜面が積層方向に直交する第3信号導体用グランド部303C1および第4信号導体用グランド部303C2とに形づけられる。なお、第4グランド導体302Cは、幅方向の一方端側の半分に積層される誘電体層の厚みと他方端側の半分に積層される誘電体層の厚みが同じであるので、平坦である。
【0173】
このように、本実施形態の製造方法を用いることで、上述の伝送線路部材10Cを容易に製造することができる。
【0174】
なお、第3、第4の実施形態に係る構成の層間接続導体に対して、第2の実施形態に係る構成の層間接続導体を適用することも可能である。