(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記部品の高さをH、前記柔軟性離型シートまたは離型性発泡基材と、前記熱溶融性部材との合計の厚みをT3としたときに、T3/Hが0.2以上である請求項2に記載の部品搭載基板の製造方法。
前記部品が前記基板上に配列され、当該部品間の幅をW、前記柔軟性離型シートまたは前記離型性発泡基材と、前記熱溶融性部材との合計の厚みをT3としたときに、T3/Wが0.1〜6である請求項2又は3に記載の部品搭載基板の製造方法。
前記基板上には、前記部品が複数形成され、複数の前記部品上および前記部品間に亘って前記電磁波遮蔽層を形成する請求項1〜4のいずれかに記載の部品搭載基板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。なお、本明細書において特定する数値は、実施形態または実施例に開示した方法により求められる値である。また、本明細書で特定する数値「A〜B」は、数値Aと数値Aより大きい値および数値Bと数値Bより小さい値を満たす範囲をいう。また、本明細書における「シート」とは、JISにおいて定義される「シート」のみならず、「フィルム」も含むものとする。説明を明確にするため、以下の記載および図面は、適宜、簡略化されている。また、同一の要素部材は、異なる実施形態においても同一符号で示す。本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0012】
[部品搭載基板]
図1に本実施形態に係る部品搭載基板の模式的斜視図を、
図2に
図1のII−II切断部断面図を示す。部品搭載基板101は、基板20、部品の一例である電子部品30および電磁波遮蔽層1等を有する。
【0013】
基板20は、電子部品30を搭載可能であり、且つ後述する加熱圧着工程に耐え得る基板であればよく、任意に選択できる。例えば銅箔等からなる導電パターンが表面又は内部に形成されたワークボード、実装モジュール基板、プリント配線板またはビルドアップ法等により形成されたビルドアップ基板が挙げられる。また、フィルムやシート状のフレキシブル基板を用いてもよい。前記導電パターンは、例えば、電子部品30と電気的に接続するための電極・配線パターン(不図示)、電磁波遮蔽層1と電気的に接続するためのグランドパターン22である。基板20内部には、通常、電極・配線パターン、ビア(不図示)等を任意に設けることができる。基板20は、リジッド基板のみならず、フレキシブル基板であってもよい。
【0014】
電子部品30は、
図1の例においては基板20上に5×4個アレイ状に配置されている。そして、基板20および電子部品30の露出面を被覆するように電磁波遮蔽層1が設けられている。即ち、電磁波遮蔽層1は、電子部品30により形成される凹凸に追従するように被覆されている。電磁波遮蔽層1により、電子部品30および/または基板20に内蔵された信号配線等から発生する不要輻射を遮蔽し、また、外部からの磁場や電波による誤動作を防止できる。
【0015】
電子部品30の個数、配置、形状および種類は任意である。アレイ状に電子部品30を配置する態様に代えて、電子部品30を任意の位置に配置してもよい。部品搭載基板101を単位モジュールに個片化する場合、
図2に示すように、基板上面から基板の厚み方向に単位モジュールを区画するようにハーフダイシング溝25を設けてもよい。なお、本実施形態に係る部品搭載基板は、単位モジュールに個片化する前の基板、および単位モジュールに個片化した後の基板の両方を含む。即ち、
図1、2のような複数の単位モジュール(電子部品30)が搭載された部品搭載基板101の他、
図3のような単位モジュールに個片化した後の部品搭載基板102も含む。無論、個片化工程を経ずに、基板20上に1つの電子部品30を搭載し、電磁波遮蔽層で被覆した部品搭載基板も含まれる。即ち、本実施形態に係る部品搭載基板は、基板上に少なくとも1つの電子部品が搭載されており、電子部品の搭載により形成された段差部の少なくとも一部に電磁波遮蔽層が被覆された構造を包括する。
【0016】
電子部品30は、半導体集積回路等の電子素子が絶縁体により一体的に被覆された部品全般を含む。例えば、集積回路(不図示)が形成された半導体チップ31(
図3参照)が封止材によりモールド成型されている態様がある。基板20と半導体チップ31は、これらの当接領域を介して、又はボンディングワイヤ33、はんだボール(不図示)等を介して基板20に形成された配線又は電極21と電気的に接続される。電子部品は、半導体チップの他、インダクタ、サーミスタ、キャパシタおよび抵抗等が例示できる。
【0017】
本実施形態に係る電子部品30および基板20は、公知の態様に対して広く適用できる。
図3の例においては、半導体チップ31は、インナービア23を介して基板20の裏面のはんだボール24に接続されている。また、基板20内には、電磁波遮蔽層1と電気的に接続するためのグランドパターン22が形成されている。また、個片化後の部品搭載基板に、複数の電子部品30が搭載されていてもよい。また、電子部品30内には、単数又は複数の電子素子等を搭載できる。
【0018】
<電磁波遮蔽層>
電磁波遮蔽層1は、電子部品30が搭載された基板20上に、後述する電磁波遮蔽シートを載置して加熱圧着することにより得られる。電磁波遮蔽層1は、熱硬化性樹脂と硬化性化合物との硬化物または/および熱可塑性樹脂をバインダー成分とし、更に鱗片状粒子(フレーク状粒子)を含む導電性フィラーを含有する鱗片状粒子含有層を有し、異方導電層を含まない。そして、電子部品30の上面を被覆する電磁波遮蔽層1の厚みをT1,電子部品30の側面を被覆する電磁波遮蔽層1の厚みをT2としたときに、T1/T2が1.1〜10とする。鱗片状粒子の平均厚さを0.05〜2μmの範囲とし、鱗片状粒子含有層の切断部断面の導電性フィラーの専有面積を20〜50%とする。導電性フィラーの専有面積は、好ましくは25〜45%であり、より好ましくは30〜40%である。20〜50%の範囲にあることで、ひっかき試験およびグランド接続性を向上させることができる。導電性フィラーは、鱗片状粒子含有層において連続的に接触されており、等方導電性を示す。
【0019】
電磁波遮蔽層1の被覆領域は、電子部品30の搭載により形成された段差部(凹凸部)の少なくとも一部を含んでいればよく、電子部品30が搭載された面全体を被覆していることは必須ではない。電磁波遮蔽層1は、シールド効果を充分に発揮させるために、基板20の側面または上面に露出するグランドパターン22または/および電子部品の接続用配線等のグランドパターン(不図示)に接続する構成が好ましい。
【0020】
電磁波遮蔽層に異方導電層を含むと、特にコーナー部において電磁波遮蔽層に割れや罅が入る場合があり、被覆性において問題があった。また、加熱圧着前である電磁波遮蔽シートの引張破断歪が低くなるという問題があった。これに対し、本実施形態においては電磁波遮蔽層に異方導電層を含まないので、前記問題がない。そして、鱗片状粒子含有層は等方導電層であるので、シールド性および被覆性を兼ね備えた電磁波遮蔽層を提供できる。また、加熱硬化処理前の電磁波遮蔽シートにおける引張破断歪を高めることができる。
【0021】
電磁波遮蔽層は、単層または複層とする。複層の場合、等方導電層を2層積層する態様が好ましい。好ましい複層の例として、鱗片状粒子含有層単独の層、鱗片状粒子含有層と繊維状(ワイヤー状)導電層(等方導電層)の積層体が例示できる。また、鱗片状粒子含有層と、鱗片状粒子含有層に分類されない等方導電層として機能する導電性フィラー含有層(例えば、樹枝状粒子と球状粒子が混合された導電性フィラー含有層、球状粒子を含む導電性フィラー含有層、樹枝状粒子を含む導電性フィラー含有層等)との積層体が例示できる。複層とする場合、耐スクラッチ性を高める観点から、表層側を鱗片状粒子含有層とすることが好ましい。等方導電層として機能する電磁波反射層と電磁波吸収層の積層体とする態様も好ましい。また、電磁波遮蔽層は、用途に応じて絶縁層等の保護層を有していてもよい。
【0022】
電磁波遮蔽層1の厚みの比T1/T2を前記範囲とし、且つ前述の等方導電性を示す切断部断面の導電性フィラーの専有面積を前述した範囲とする鱗片状粒子含有層を有し、異方導電性を含まない電磁波遮蔽層を用い、更に、鱗片状粒子の平均厚さを前述の範囲とすることにより、高品質で被覆性が高い電磁波遮蔽層を提供できる。また、テープ密着性に優れる電磁波遮蔽層を提供できる。ここでテープ密着性とは、後述する実施例において評価する特性であり、電子部品との接着性の指標となる。
【0023】
T1/T2は1.3〜7が好ましく、1.5〜4がより好ましく、1.8〜3.8が更に好ましい。T1/T2は、加熱プレス工程の部品の高さおよび溝の幅の条件を制御することにより調整できる。なお、電子部品30の外面が曲面形状などで上面と側面が明確に定義できない場合には、基板20から高さ方向に最も離間した位置の電磁波遮蔽層1の厚みをT1とし、そのT1の面方向と最も角度のある面方向の電磁波遮蔽層1の膜厚をT2とする。その他の条件は、実施例に記載の方法に従う。
【0024】
電磁波遮蔽層1のマルテンス硬さは3〜100N/mm
2の範囲が好ましい。係る範囲にすることにより、耐スクラッチ性およびテープ密着特性に優れたものとなる。ここでテープ密着性とは、後述する実施例において評価する特性であり、電子部品との接着性の指標となる。マルテンス硬さは、耐スクラッチ性の観点から、5N/mm
2以上が好ましく、7N/mm
2以上がより好ましく、10N/mm
2以上が更に好ましい。テープ密着の観点からは、98N/mm
2以下が好ましく、90N/mm
2以下がより好ましく、80N/mm
2以下が更に好ましく、70N/mm
2以下が特に好ましい。マルテンス硬さは、導電性フィラーおよびバインダー成分の硬さにより調整できる。バインダー成分の硬さは、主として熱可塑性樹脂または/および熱硬化性樹脂と硬化性化合物の硬化物の硬さによる。具体的には、鱗片状粒子はマルテンス硬さが大きくなる傾向にあり、球状、樹枝状粒子はマルテンス硬さが低くなる傾向にある。また、導電性フィラー量が多くなるとマルテンス硬さは大きくなる傾向にある。また、バインダー成分の硬さが高いほど、マルテンス硬さも硬くなる。
【0025】
鱗片状粒子の平均比表面積は、1.40〜2.50が好ましく、1.60〜2.30がより好ましく、特に好ましくは1.80〜1.90である。また、鱗片状粒子のタップ密度は、0.50〜0.80が好ましく、0.60〜0.70がより好ましく、特に好ましくは0.66〜0.69である。
【0026】
鱗片状粒子を含む導電性フィラーは、金属フィラー、導電性セラミックス粒子およびそれらの混合物が例示できる。金属フィラーは、金、銀、銅、ニッケル等の金属粉、ハンダ等の合金粉、銀コート銅粉、金コート銅粉、銀コートニッケル粉、金コートニッケル粉のコアシェル型粒子が例示できる。優れた導電特性を得る観点から、銀を含有する導電性フィラーが好ましい。コストの観点からは、銀コート銅粉が特に好ましい。銀コート銅における銀の含有量は、6〜20質量%が好ましく、より好ましくは8〜17質量%であり、更に好ましくは10〜15質量%である。コアシェル型粒子の場合、コア部に対するコート層の被覆率は、平均で60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。コア部は非金属でもよいが、導電性の観点からは導電性物質が好ましく、金属粒子がより好ましい。
【0027】
導電性フィラーとして、電磁波吸収フィラーを用いてもよい。例えば、鉄、Fe−Ni合金、Fe−Co合金、Fe−Cr合金、Fe−Si合金、Fe−Al合金、Fe−Cr−Si合金、Fe−Cr−Al合金、Fe−Si−Al合金等の鉄合金、Mg−Znフェライト、Mn−Znフェライト、Mn−Mgフェライト、Cu−Znフェライト、Mg−Mn−Srフェライト、Ni−Znフェライト等のフェライト系物質並びに、カーボンフィラーなどが挙げられる。カーボンフィラーは、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノナノチューブからなる粒子、グラフェン粒子、グラファイト粒子およびカーボンナノウォールが例示できる。
【0028】
導電性フィラーとして、専ら鱗片状粒子を用いてもよいが、鱗片状粒子と他の形状の粒子を併用してもよい。併用する粒子形状は特に限定されないが、樹枝(デンドライト)状粒子、繊維状粒子、針状粒子および球状粒子からなる群から選択される粒子が好ましい。併用する粒子は、単独または混合して用いられる。併用する場合、鱗片状粒子および樹枝状粒子の組み合わせ、鱗片状粒子、樹枝状粒子および球状粒子の組み合わせ、鱗片状粒子および球状粒子の組み合わせが例示できる。これらのうち、電磁波遮蔽層の被覆性を高め、且つシールド性を高める観点から、鱗片状粒子単独または鱗片状粒子と樹枝状粒子を組み合わせがより好ましい。
【0029】
鱗片状粒子含有層において鱗片状粒子と樹枝状粒子の混合する場合の質量比は、9:1〜1:9が好ましく、8:2〜2:8がより好ましい。上記の混合質量比とすることで、グランド接続性と段差追従性がより向上する。鱗片状粒子の平均粒子径D50は2〜100μmが好ましく、2〜80μmがより好ましい。更に好ましくは3〜50μmであり、特に好ましくは5〜20μmである。樹枝状粒子の平均粒子径D50の好ましい範囲も同様に、2〜100μmが好ましく、2〜80μmがより好ましい。更に好ましくは3〜50μmであり、特に好ましくは5〜20μmである。鱗片状粒子と樹枝状粒子を併用することにより、表面光沢度を最適化し、電磁波遮蔽層に文字を直接印刷した場合に、印字視認性を高めることができる。
【0030】
また、樹枝状粒子を併用することによって、導電性フィラー同士の接触点を多くし、シールド特性を向上させることができる。また、樹枝状粒子の併用によって、バインダー成分との接触面積を増加させることができるので引張破断歪を効果的に向上させ、電磁波遮蔽シートを面方向に延伸させ、電子部品に追従させる際に、割れや罅を効果的に抑制できるというメリットも有する。マイクロサイズの鱗片状粒子とナノサイズの球状粒子の混合系を用いる態様も好適である。なお、導電性フィラーは、特に粒子サイズが小さい場合などにおいて、加熱圧着により溶融して他の導電性フィラーと溶融する場合がある。
【0031】
電磁波遮蔽層1の厚みは、用途により適宜設計し得る。薄型化が求められている用途には、電子部品の上面を被覆する電磁波遮蔽層1の厚みT1は、1.1〜75μmの範囲が好ましく、1.5〜65μmがより好ましく、5〜55μmが特に好ましい。このときの電子部品の側面を被覆する電磁波遮蔽層1の厚みT2は、1〜68μmが好ましく、1.1〜59μmがより好ましく、特に好ましくは1.5〜59μmである。高周波ノイズを精度高くシールドする用途には、厚みT1を、例えば75〜200μm程度にすることができる。
【0032】
電磁波遮蔽層1の20°表面光沢度は、電磁波遮蔽層1の最表面に印字した製品番号やロット番号の印字視認性を高める観点から、0.1〜20%の範囲が好ましい。係る範囲とすることにより、光沢感を適度に抑制し、様々な角度から見やすくなる。20°表面光沢度をこの範囲とし、且つマルテンス硬さを3〜100N/mm
2以上にすることにより、印字視認性、耐スクラッチ性およびグランド接続性を兼ね備える優れた電磁波遮蔽層を提供できる。20°表面光沢度のより好ましい範囲は0.3〜15%であり、更に好ましい範囲は0.5〜10%である。20°表面光沢度は、鱗片状粒子を用いることにより容易に制御できる。
【0033】
電磁波遮蔽層1のJIS K5600−5−4に準拠した鉛筆硬度試験による鉛筆硬度(以下、単に鉛筆硬度ともいう)は、擦れやひっかきに対して電磁波遮蔽層が破れにくい部品搭載基板を提供する観点から、B以上が好ましい。より好ましくは、HB以上である。マルテンス硬さを3〜100N/mm
2、T1/T2を1.1〜10とし、且つ鉛筆硬度試験をB以上にすることにより、より優れた耐スクラッチ性およびエッジ部破れ耐性が得られる。B以上の鉛筆硬度は、鱗片状粒子、熱硬化性樹脂および硬化性化合物を組み合わせることにより容易に得られる。
【0034】
鱗片状粒子含有層における導電性フィラーの含有量は、優れた電磁波遮蔽特性を得る観点から、鱗片状粒子含有層全体に対して50〜95質量%含むことが好ましい。より好ましくは55〜90質量%であり、さらに好ましくは60〜85質量%であり、特に好ましくは65〜80質量%である。
【0035】
電磁波遮蔽層1の割れが生じやすい場所は、電子部品30のエッジ部を被覆する箇所である。電子部品のエッジ部において電磁波遮蔽層1の割れが生じると、電磁波遮蔽効果の低下を招来するので、凹凸部の被覆性は特に重要となる。電磁波遮蔽層1の凹凸部において、導電性フィラーの含有率が40質量%以上、95質量%以下であることが好ましい。測定は、
図4の電磁波遮蔽層の部分拡大上面図、
図4のV−V切断部断面図である
図5に示すように、電子部品30のエッジを構成する上面の辺の長手方向のラインから電子部品30の表面内側に向かって0.5mmまでの領域の上方に存在する電磁波遮蔽層であって、且つ電子部品30の当該辺の中央から長さ方向70%の範囲を測定した値とする。
【0036】
部品搭載基板101には、耐擦傷性、水蒸気バリア性、酸素バリア性を示すフィルム等の他の層や、磁界カットを強化するフィルム等がさらに積層されていてもよい。
【0037】
[電子機器]
本実施形態に係る部品搭載基板は、例えば、基板20の裏面に形成されたはんだボール等を介して実装基板に実装することができ、電子機器に搭載できる。例えば、本実施形態に係る部品搭載基板は、パソコン、ダブレット端末、スマートホン等をはじめとする種々の電子機器に用いることができる。
【0038】
[電磁波遮蔽シート]
本実施形態に係る電磁波遮蔽シートは、電磁波遮蔽層1の加熱圧着前のシートである。即ち、電磁波遮蔽シートを加熱圧着することにより電磁波遮蔽層1が得られる。電磁波遮蔽シートは、常温・常圧における引張破断歪が50〜1500%であり、熱硬化性樹脂、硬化性化合物および鱗片状粒子を含む導電性フィラーを含有する等方導電性を示す鱗片状粒子含有層を有する。電磁波遮蔽シートは、異方導電層を含まない。電磁波遮蔽シートを160℃、2MPaで20分加熱硬化したときのマルテンス硬さが3〜100N/mm
2の範囲であり、電磁波遮蔽シートを160℃、2MPaで20分加熱硬化したときの前記鱗片状粒子含有層の厚み方向の切断部断面の前記導電性フィラーの専有面積(A’)を20〜50%とする。用いる鱗片状粒子の平均厚さは0.05〜2μmの範囲とする。なお、加熱圧着前の電磁波遮蔽シートの鱗片状粒子の厚みと、加熱圧着後の電磁波遮蔽層の厚みは実質的に同一である。また、電磁波遮蔽シートの鱗片状粒子含有層は、硬化前の層である。この硬化前の層には、磁波遮蔽シートの段階で、熱硬化性樹脂と硬化性化合物の一部が反応してBステージ(半硬化した状態)にある層を含むものとする。
【0039】
また、電磁波遮蔽シートの鱗片状粒子含有層の厚み方向の切断部断面の前記導電性フィラーの専有面積(B)%と、2枚のポリイミドフィルム(カプトン200EN)で挟持し、160℃、2MPaで20分間加熱圧着した場合の専有面積(A’)%との差((B)−(A’))は1〜5%とすることが好ましい。より好ましくは、2〜4%である。なお、前記加熱圧着条件は、専有面積(A’)および専有面積の差((B)−(A’))の差を求めるための条件であって、本実施形態の加熱圧着条件はこれに限定されない。
【0040】
電磁波遮蔽シート2の引張破断歪を前記範囲とし、且つ前述の鱗片状粒子含有層を有し、且つ異方導電層を含まず、切断部断面の導電性フィラーの専有面積を前述した範囲とする鱗片状粒子含有層を有し、更に鱗片状粒子の平均厚さを前述の範囲とすることにより、高品質で被覆性が高く、生産性に優れた電磁波遮蔽層を形成できる電磁波遮蔽シートを提供できる。
【0041】
電磁波遮蔽シート2の引張破断歪を50〜1500%とすることにより、加熱圧着時の凹凸形状追従性を高め、段差による電磁波遮蔽シート2の破断を効果的に防止し、且つ段差部分での電磁波遮蔽シート2の伸びを良好にすることができる。また、鱗片状粒子を用いることで、導電性フィラー同士の接触を良好とし、電子部品等の段差における抵抗値を良好にすることができる。その結果、被覆性を良好にし、シールド性を高めることができる。引張破断歪のより好ましい範囲は100〜1400%であり、さらに好ましい範囲は150〜1300%であり、特に好ましい範囲は200〜1000%である。
【0042】
電磁波遮蔽シートの好ましい層構成は、電磁波遮蔽層において述べたとおりである。
【0043】
加熱硬化前の熱硬化性樹脂は、電磁波遮蔽シートにおいてバインダーとして機能する樹脂である。
図6に示すように、電磁波遮蔽シート2は、使用前まで、離型性基材3の一主面上に形成された離型性基材付多層体4としておくことが好ましい。
【0044】
電磁波遮蔽シート2の25〜150℃での線膨張係数は、100〜700ppm/℃の範囲とすることが好ましい。この範囲とすることにより、段差でのクラックを効果的に防止し、且つ熱収縮差による搭載後の基板における反りの問題を解消できる。より好ましい範囲は125〜650ppm/℃であり、さらに好ましい範囲は150〜600ppm/℃であり、特に好ましい範囲は175〜550ppm/℃である。
【0045】
熱硬化性樹脂は、硬化性化合物反応タイプが使用できる。更に、熱硬化性樹脂が自己架橋してもよい。熱硬化性樹脂は、硬化性化合物と反応可能な反応性官能基を有する。
【0046】
熱硬化性樹脂の好適な例は、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエステルアミド、ポリエステル樹脂、ポリエーテルエステル、ウレタンウレア系樹脂およびポリイミドがある。熱硬化性樹脂は、自己架橋可能な官能基を有していてもよい。例えば、リフロー時における過酷な条件で使用する場合の熱硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂、エポキシエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレタンウレア系樹脂、およびポリアミドのうちの少なくとも1つを含んでいることが好ましい。また、加熱工程に耐え得る範囲であれば、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を併用できる。
【0047】
熱硬化性樹脂の反応性官能基としては、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基等がある。熱硬化性樹脂の酸価は、3〜30であることが好ましい。酸価を前記範囲とすることにより、エッジ部破れ耐性が向上するという効果が得られる。酸価のより好ましい範囲は、4〜20であり、更に好ましい範囲は5〜10である。
熱硬化性樹脂の重量平均分子量は、20,000〜150,000であることが好ましい。20,000以上とすることにより、耐スクラッチ性を効果的に高めることができる。また、150,000以下とすることにより段差追従性が向上するという効果が得られる。
【0048】
硬化性化合物は、熱硬化性樹脂の反応性官能基と架橋可能な官能基を有している。硬化性化合物は、エポキシ化合物、酸無水物基含有化合物、イソシアネート化合物、ポリカルボジイミド化合物、アジリジン化合物、ジシアンジアミド化合物、芳香族ジアミン化合物等のアミン化合物、フェノールノボラック樹脂等のフェノール化合物、有機金属化合物等が好ましい。硬化性化合物は、樹脂であってもよい。この場合、熱硬化性樹脂と硬化性化合物の区別は、含有量の多い方を熱硬化性樹脂とし、含有量の少ない方を硬化性化合物として区別する。
【0049】
硬化性化合物の構造、分子量は用途に応じて適宜設計できる。引張破断歪を効果的に高める観点からは、分子量の異なる2種類以上の硬化性化合物を用いることが好ましい。例えば、分子量が2,000〜25,000の第一硬化性化合物と、分子量が100〜1,500の第二硬化性化合物を組み合わせることができる。第一硬化性化合物と第二硬化性化合物を用いることにより、電磁波遮蔽シートの引張破断歪を高めることができる。被覆性をより効果的に高める観点から、第一硬化性化合物の反応性官能基当量が500〜3000であることが好ましく、第二硬化性化合物の反応性官能基当量が100〜400であることが好ましい。
【0050】
硬化性化合物は、熱硬化性樹脂100質量部に対して1〜70質量部含むことが好ましく、3〜65質量部がより好ましく、3〜60質量部が更に好ましい。第一硬化性化合物と第二硬化性化合物を併用する場合には、第一硬化性化合物を熱硬化性樹脂100質量部に対して5〜50質量部含むことが好ましく、10〜40質量部含むことがより好ましく、20〜30質量部含むことが更に好ましい。一方、第二硬化性化合物を熱硬化性樹脂100質量部に対して0〜40質量部含むことが好ましく、5〜30質量部含むことがより好ましく、10〜20質量部含むことが更に好ましい。
【0051】
前記エポキシ化合物は、エポキシ基を有していれば特に制限はないが、多官能のエポキシ化合物であることが好ましい。引張破断歪を効果的に高める観点からは2官能とすることが特に好ましい。加熱圧着等において、エポキシ化合物のエポキシ基が、熱硬化性樹脂のカルボキシル基や水酸基と熱架橋することにより、架橋構造を得ることができる。エポキシ化合物として、常温・常圧で液状を示すエポキシ化合物も好適である。
前記エポキシ化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン等が挙げられる。エポキシ化合物の好適な例として、DIC社製のEXA4850−150(エポキシ当量450、分子量900)、EPICLON830、840、850、860、1050、2050、3050、4050、7050、HM−091、101、ナガセケムテックス製デナコールEX−211、212、252、711、721、三菱化学社製のJER828、806、807、1750、ダイセル化学工業社製の高分子脂環族主鎖エポキシ樹脂であるEHPE3150などが挙げられる。
【0052】
また、下記化合物が例示できる。
【化1】
【0053】
前記イソシアネート化合物は、例えばトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物およびこれらポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらポリイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体、更にはこれらポリイソシアネート化合物と公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等とのアダクト体等が挙げられる。
【0054】
前記ポリカルボジイミドは、日清紡績社製のカルボジライトシリーズが挙げられる。その中でもカルボジライトV−01、03、05、07、09は、有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。
【0055】
前記アジリジン化合物は、例えば、2,2’−ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、4,4’−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等が挙げられる。
【0056】
樹脂として、上記以外に粘着付与樹脂や熱可塑性樹脂を用いてもよい。熱可塑性樹脂の好適な例は、ポリエステル、アクリル系樹脂、ポリエーテル、ウレタン系樹脂、スチレンエラストマー、ポリカーボネート、ブタジエンゴム、ポリアミド、エステルアミド系樹脂、ポリイソプレン、およびセルロースが例示できる。粘着付与樹脂としては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂環式系石油樹脂、および芳香族系石油樹脂等が例示できる。また、導電性ポリマーを用いることができる。導電性ポリマーとしては、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンが例示できる。熱可塑性樹脂の好適な例は、ポリエステル、アクリル系樹脂、ポリエーテル、ウレタン系樹脂、スチレンエラストマー、ポリカーボネート、ブタジエンゴム、ポリアミド、エステルアミド系樹脂、ポリイソプレン、およびセルロースが例示できる。
【0057】
電磁波遮蔽シート2を構成する熱硬化性樹脂または/および熱可塑性樹脂(以下、バインダー樹脂ともいう)のTgは、−30〜100℃が好ましく、−10〜80℃がより好ましい。バインダー樹脂は、1種類を用いても複数種類を併用してもよい。複数種類を用いる場合は、混合前のTgが上記範囲に含まれているものを主成分(バインダー樹脂のうちの60質量%以上の成分)とすることが好ましい。電磁波遮蔽シート2の材料は、加熱圧着時に電子部品30および露出する基板20の表面に追従する柔軟性があり、電磁波シールド性を発揮できる導電特性を有していればよく、特に限定されない。
【0058】
シールド性および被覆性を向上させる観点から、異なる平均粒子径D50を併用することもできる。被覆性を効果的に高める観点から、好ましい例として、平均粒子径D50が3〜8μmの鱗片状粒子(A)と、平均粒子径D50が12〜20μmの鱗片状粒子(B)を(A):(B)の質量比で20:80〜80:20の範囲で用いることが好ましい。
【0059】
鱗片状粒子の好ましい例として、樹枝状粒子を扁平化させた粒子を例示できる。例えば、樹枝状粒子の樹枝の形跡の少なくとも一部が残るように扁平化した粒子が例示できる。ここで、樹脂の形跡とは、扁平化された粒子の外縁に樹枝の形跡を残す突起または切れ込みが形成されている形状をいう。係る粒子を用いることにより、扁平化した面の外縁の周囲長を長くすることができる。扁平化された粒子の外縁の全体に亘ってこのような形状を有する粒子がより好ましい。また、熱硬化性樹脂等の成分と導電性フィラーとの接触面積を大きくすることができる。そのため、効果的に引張破断歪を高めることができる。また、熱硬化処理後の被覆性を効果的に高めることができる。特にコーナー部における割れや罅を効果的に抑制できる。樹枝状粒子を扁平化した例を説明したが、これに限定されない。
【0060】
鱗片状粒子の扁平化した面の外縁の周囲長が、下記数式(1)をから求められる円径度係数が0.15以上、0.4以下である導電性フィラーを好適に用いることができる。このような導電性フィラーとしては、例えば、国際公開WO2013/001351号に記載の粒子が例示できる。
【数1】
ここでいう円径度係数は、Mac-View Ver.4(マウンテック社)の解析ソフトを用いて、導電性フィラーの電子顕微鏡画像(千倍〜1万倍程度)を読み込み、手動認識モードで導電性粒子を約20個選択する。葉状や鱗片状の粒子を選択する際は、粒子同士が重なっていない粒子形状全体が確認できるものであって、観察視点から平面板が垂直になる角度のものを抽出して選択する。粒子基準データは、投影面積円相当径、分布は体積分布の設定として、円径度係数と円形係数を算出し、20個の平均値を求める。上記数式(1)において面積は、二次元に投影した時の外周を形成する線の内部の面積を平板面とし、この平板面を二次元に投影したときの導電性フィラーの外周長さを周囲長とする。
【0061】
このような粒子を用いることにより、導電特性をより優れたものとし、且つ薄膜化が可能となる。更に、熱硬化性樹脂、硬化性化合物等のバインダー成分との接触面積が大きくなるので、引張破断歪を効果的に向上できるというメリットを有する。また、コアシェル型の導電性フィラーを用いることによりコストダウンを図ることができる。上記数式(1)から求められる円径度係数の平均値は、0.15以上、0.3未満がより好ましい。
【0062】
なお、上記数式(1)を満たす粒子を用いる場合の平均粒子径D50は、後述する実施例の方法により求めた値を言う。ここで、粒子の体積平均粒子径とは、レーザー回折法で測定された粒子径分布において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を表す。
【0063】
鱗片状粒子の平均粒子径D50は、2〜100μmが好ましい。前記鱗片状粒子に、ナノサイズの導電性フィラーを混合してもよい。ナノサイズの粒子を混合することにより、ナノ粒子の融点降下現象を利用して加熱圧着時に金属間結合を形成させ、シールド性を向上させる効果がある。
【0064】
鱗片状粒子の外縁の周囲長が長い鱗片状粒子を用いることにより、バインダー樹脂とのアンカー効果が働き、被覆性が高まると考えられる。好ましい鱗片状粒子として、例えば、平均粒子径D50が15〜18μm、D90が30〜34μmおよびD100が49〜53μmを満たす粒子が挙げられる。鱗片状粒子はバインダー樹脂100質量部に対して、100〜900質量部が好ましく、150〜800質量部がより好ましく、180〜400質量部がさらに好ましい。樹枝状粒子はバインダー樹脂100質量部に対して、0〜200質量部が好ましく、70〜190質量部がより好ましく、90〜185質量部がさらに好ましい。
【0065】
さらに、電磁波遮蔽シートを構成する組成物には、着色剤、難燃剤、無機添加剤、滑剤、ブロッキング防止剤等を含んでいてもよい。
着色剤としては、例えば、有機顔料、カーボンブラック、群青、弁柄、亜鉛華、酸化チタン、黒鉛等が挙げられる。この中でも黒色系の着色剤を含むことでシールド層の印字視認性が向上する。
難燃剤としては、例えば、ハロゲン含有難燃剤、りん含有難燃剤、窒素含有難燃剤、無機難燃剤等が挙げられる。
無機添加剤としては、例えば、ガラス繊維、シリカ、タルク、セラミック等が挙げられる。
滑剤としては、例えば、脂肪酸エステル、炭化水素樹脂、パラフィン、高級脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪族アルコール、金属石鹸、変性シリコーン等が挙げられる。
ブロッキング防止剤としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、ポリメチルシルセスキオサン、ケイ酸アルミニウム塩等が挙げられる。
【0066】
図6に示す離型性基材3は、片面あるいは両面に離型処理した基材であり、150℃における引張破断歪が50%未満のシートである。なお、離型性基材の引張破断歪は、後述する実施例で説明する電磁波遮蔽シートの引張破断歪と同様の方法(但し、温度は150℃とする)により求められる値である。離型性基材3は、離型性基材付多層体4における支持体としても機能する。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、硬質ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリイミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリブテン、軟質ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル等のプラスチックシート等、グラシン紙、上質紙、クラフト紙、コート紙等の紙類、各種の不織布、合成紙、金属箔や、これらを組み合わせた複合フィルムなどが挙げられる。
【0067】
離型性基材3と電磁波遮蔽シート2の離型性基材付多層体4の形成方法は特に限定されないが、これらのシートをラミネートする方法、離型性基材3上に電磁波遮蔽シート2形成用組成物を塗工、印刷する方法が挙げられる。離型性基材3は、最終的には剥離するので、離型性の優れた材料が好ましい。好適な例としては、アルキッド、シリコーンまたはフッ素の離型層等を備えたポリエステルフィルム等が例示できる。離型性基材3の厚みは、例えば5〜300μm程度であり、25〜200μm程度がより好ましい。離型性基材付多層体4から離型性基材3を剥離する方法は、特に限定されず、機械でも人手でもよい。
【0068】
[積層体]
本実施形態に係る積層体10は、
図7に示すように、電磁波遮蔽シート2と、電磁波遮蔽シート2の一主面上に形成された粘着性樹脂層9と、粘着性樹脂層9上に形成された柔軟性離型シート5を備える。電磁波遮蔽シート2の他主面上には、離型性基材(不図示)を積層してもよい。
【0069】
粘着性樹脂層9は、タック性を有し、柔軟性離型シート5と電磁波遮蔽シート2を接合する役割を担う。熱プレス後に、硬化し柔軟性離型シート5から剥離する、又は凝集破壊することを特徴とする。即ち、部品搭載基板において、粘着性樹脂層9が電磁波遮蔽層1の保護層として機能する。粘着性樹脂層9は電磁波遮蔽シート2で説明したバインダー樹脂および硬化性化合物を使用することができる。この中でもバインダー樹脂は熱硬化性樹脂が好ましい。硬化性化合物はタック性を付与する観点から液状のエポキシ化合物が好ましい。粘着性樹脂層9の厚みは1〜30μmが好ましく3〜20μmがより好ましい。粘着性樹脂層9は、バインダー樹脂と液状エポキシ化合物を併用することが好ましい。バインダー樹脂と液状エポキシ化合物の比率(質量部)は、100:50〜100:5が好ましい。液状エポキシ化合物をエポキシ樹脂100質量部に対して5質量部以上加えることにより、膜に良好なタック性を付与できる。粘着性樹脂層9には、タッキファイヤー等の粘着性付与材が添加されていてもよい。
【0070】
柔軟性離型シート5は、150℃における引張破断歪が50%以上で、電磁波遮蔽シート2の加熱圧着時の軟化および変形に伴ってフレキシブルに形状を変形できるシートであって、且つ離型性があるシートである。つまり、電磁波遮蔽シート2と接合することなく、加熱圧着工程後に電磁波遮蔽シート2から剥離可能な層とする。なお、柔軟性離型シートの引張破断歪は、後述する実施例で説明する電磁波遮蔽シートの引張破断歪と同様の方法(但し、温度は150℃とする)により求められる値である。
【0071】
柔軟性離型シート5としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、ポリブチレンテレフタレート、環状オレフィンポリマー、シリコーンが好ましい。この中でもポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブチレンテレフタレート、シリコーンがさらに好ましい。柔軟性離型シートは、単層で用いても複層で用いてもよい。複層とする場合、同一または異なる種類のシートを積層できる。
【0072】
積層体10を加熱圧着処理し、柔軟性離型シート5を剥離させることにより、本実施形態の部品搭載基板を簡便に提供できる。粘着性樹脂層9は、絶縁性の保護層として好適に用いられる。積層体10は、凹凸構造体に電磁波遮蔽層を形成するために好適に用いられる。特に、上記実施形態に係る部品搭載基板101の電磁波遮蔽層1を形成するために好適に用いられる。
【0073】
[部品搭載基板の製造方法]
本実施形態に係る部品搭載基板は、基板に部品を搭載する工程(a)と、部品が搭載された基板上に電磁波遮蔽シートを設置する載置工程と、部品の搭載により形成された段差部の少なくとも一部を含む基板の露出面に電磁波遮蔽シートが追従するように、加熱圧着によって接合して電磁波遮蔽層を得る工程(b)とを備える。以下、本実施形態に係る部品搭載基板の製造方法の一例について
図6〜
図14を用いつつ説明する。但し、本発明の部品搭載基板の製造方法は、以下の製造方法に限定されるものではない。
【0074】
<工程(a)>
まず、基板20に電子部品30を搭載する。
図8は、工程(a)により得られる、本実施形態に係る部品搭載基板の製造工程段階の基板の一例である。同図に示すように、基板20上に半導体チップ(不図示)を搭載し、半導体チップが形成されている基板20上を封止樹脂によりモールド成形し、電子部品間の上方から基板20内部まで到達するように、モールド樹脂および基板20をダイシング等によりハーフカットする。予めハーフカットされた基板上に電子部品をアレイ状に配置する方法でもよい。なお、電子部品とは、
図8の例においては半導体チップをモールド成形した一体物をいい、絶縁体により保護された電子素子全般をいう。ハーフカットは、基板内部まで到達させる態様の他、基板面までカットする態様がある。また、基板全体をこの段階でカットしてもよい。この場合には、粘着テープ付き基体状に基板を載置して位置ずれが生じないようにしておくことが好ましい。
【0075】
モールド成形する場合の封止樹脂の材料は特に限定されないが、熱硬化性樹脂が通常用いられる。封止樹脂の形成方法は特に限定されず、印刷、ラミネート、トランスファー成形、コンプレッション、注型等が挙げられる。モールド成形は任意であり、電子部品の搭載方法も任意に変更できる。
【0076】
<工程(b)>
工程(a)の後、バインダー樹脂および導電性フィラーを含有する電磁波遮蔽シート2を電子部品30が搭載された基板20上に設置する。工程(b)の好適例として、後述する載置工程(i)〜(iii)のいずれかの方法が例示できる。電磁波遮蔽シート2は、後述する加熱圧着後に電磁波遮蔽層になる。
【0077】
(載置工程(i))
載置工程(i)は、少なくとも上層と接合されていない電磁波遮蔽シート2を用いる点に特徴を有する。電磁波遮蔽シート2と、電磁波遮蔽シート2の一方の面に積層された離型性基材3との離型性基材付多層体4を用意する。電磁波遮蔽シートの他方面は、使用直前まで保護フィルムを積層しておいてもよい。また、ロール状の離型性基材付多層体4を用いてもよい。離型性基材付多層体4を基板20の電磁波遮蔽シート2との接合領域に電磁波遮蔽シート2が対向配置するように仮貼付する(
図9参照)。
【0078】
仮貼付とは、電子部品30の少なくとも一部の上面と接触するように仮接合するものであり、電磁波遮蔽シート2がBステージで被着体に固定されている状態をいう。剥離力としては、90℃ピール試験で、カプトン200に対する剥離力が1〜5N/cm程度が好ましい。ダイシングした基板に仮貼りする手法として、離型性基材付きの電磁波遮蔽シートを基板上に載せ、アイロン等の熱源で軽く全面または端部を加熱圧着して仮貼りし、離型性基材を剥がす方法が例示できる。離型性基材を剥がす際の浮きを防ぐためには、全面に加熱圧着することが好ましい。例えば、リジット基板用の熱ロールラミネーターのような装置が利用できる。離型性基材の剥離面はタック性が無いので、加熱圧着工程において、後述する柔軟性離形シートに引っ張られずに、段差追従性を向上させることができる。製造設備あるいは基板20のサイズ等に応じて、基板20の領域毎に複数の離型性基材付多層体4を用いたり、電子部品30毎に離型性基材付多層体4を用いてもよいが、製造工程の簡略化の観点からは、基板20上に搭載された複数の電子部品30全体に1枚の電磁波遮蔽シート2を用いることが好ましい。
【0079】
続いて離型性基材3を剥離する(
図9参照)。その後、電磁波遮蔽シート2上に柔軟性離型シート5を載置し、さらに、柔軟性離型シート5上に熱により軟化する熱溶融性部材6を少なくとも載置する(
図9参照)。熱溶融性部材6の積層数は1層でも複数でもよい。
図9等の例においては3層積層した例を示している。本実施形態においては、さらに、クッション紙11を2枚積層した例を示している。クッション紙11を用いることにより、プレス圧を均一にすることができる。
【0080】
熱溶融性部材6は、加熱圧着時に溶融する層であり、電磁波遮蔽シート2の電子部品30への追従性を促すクッション材として機能する。熱溶融性部材6は、熱可塑性を有する素材であれば特に限定されないが、加熱時に伸び率の高い樹脂であることが好ましい。好適な例として、メチルペンテンポリマーフィルム、ポリブチレンテレフタレート樹脂フィルム、ポリオレフィン系フィルム、塩化ビニルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、PVAフィルムが例示できる。熱溶融性部材6の厚みは、埋め込む溝の深さによるが通常、100μm〜1mm程度である。熱溶融性部材6を複数積層する場合には、合計の厚みをこの範囲とすることが好ましい。
【0081】
加熱圧着時にプレス器具に熱溶融性部材6が付着しないように、熱溶融性部材6の上にさらに保護層を設けることが好ましい。
【0082】
本実施形態の方法とは異なり、電磁波遮蔽シート2、柔軟性離型シート5および/または熱溶融性部材6を接合した多層体を用いる場合、後述する熱圧着工程において、電磁波遮蔽シート2、柔軟性離型シート5および熱溶融性部材6の線膨張係数差に起因して加熱圧着時の多層体に反りや歪が発生しやすい。その結果、被覆工程において、電子部品との接合が不充分になったり、割れや罅(クラック)が入りやすい。特に電子部品の凹凸部を構成するコーナー部(エッジ部)において、電磁波遮蔽層に割れが発生したり、破れが発生しやすい。
【0083】
一方、(i)の製造方法によれば、電磁波遮蔽シート2、柔軟性離型シート5および熱溶融性部材6は、互いに接合されておらず、別体のシートを重ねたものである。電磁波遮蔽シート2、柔軟性離型シート5および熱溶融性部材6を互いに重ね合せるのみとし、これらを互いに接合していないので、後述する工程(c)の加熱圧着工程において、各シート間の線膨張係数差による反りや歪等の発生を効果的に防止できる。その結果、電磁波遮蔽層1の割れや破れを効果的に防止し、優れた被覆性を実現できる。特に、電子部品のコーナー部における電磁波遮蔽層1の割れ等を効果的に防止し、シールド特性に優れた電磁波遮蔽層を形成できる。
【0084】
(載置工程(ii))
載置工程(ii)は、電磁波遮蔽シートと離型性発泡基材とが積層された離型性発泡基付多層体を用いている点において、上述の載置工程(i)と相違する。離型性発泡基材とは、離型性を有し、且つ少なくとも電磁波遮蔽シートとの接合面において発泡している(空孔を有する)基材である。全体に発泡している離型性発泡基材がより好ましい。離型性発泡基材7は、基材が空孔を有し、比重0.3〜1.2、25%圧縮応力(JISK6767)が10〜140kPaである基材をいう。電磁波遮蔽シート2の他方面は使用直前まで保護フィルムを積層しておいてもよい。まず、電磁波遮蔽シート2と、その一主面に積層された離型性発泡基材7とが積層された離型性発泡基材付多層体8を用意する。そして、離型性発泡基材付多層体8を、基板20と電磁波遮蔽シート2とが対向配置するように仮貼付する(
図10参照)。続いて、離型性発泡基材7上に熱により軟化する熱溶融性部材6を少なくとも載置する(
図10参照)。以下、上述の載置工程(i)と重複する説明は、適宜省略する(以下同様)。
【0085】
離型性発泡基材の加熱圧着前の発泡密度の好ましい範囲は200〜600kg/m
3であり、離型性発泡基材の加熱圧着前の圧縮硬さの好ましい範囲は40〜140kPaである。離型性発泡基材7の厚みは、溝Wにより適宜設計すればよい。例えば、溝Wが100〜750mmのときは、厚みが50〜1000μm程度である。離型性発泡基材7の材料は、発泡ポリエチレンテレフタレートフィルム、発泡ポリエチレンフィルム、発泡シリコンフィルム、発泡ポリスチレンフィルム、発泡ポリプロピレンフィルム、発泡ゴムシート等が例示できる。これらのうち、発泡PET、発泡ウレタンフィルム、発泡ポリプロピレンフィルムがより好ましい。離型性発泡基材は、離型性発泡基材形成用組成物を発泡させ、且つシート化することにより得られる。ここで、好ましい発泡倍率は、発泡前の離型性発泡基材形成用組成物の100ccあたりの質量をM1、発泡後の離型性発泡基材形成用組成物の100ccあたりの質量をM2としたときに、M1/M2が1.1〜10である。より好ましくは、M1/M2が2〜7である。
【0086】
電磁波遮蔽シート2と離型性発泡基材7は、互いに接合された離型性発泡基材付多層体8である。一方、離型性発泡基材7とこの上に載置する熱溶融性部材6は、互いに接合されていない別のシートを重ねたものである。離型性発泡基材7は、気泡を内包していることにより未発泡の離型性基材に比して優れた弾力性を示す。このため、後述する工程(c)の加熱圧着工程において、電磁波遮蔽シート2の延伸を促し、また、電磁波遮蔽シート2と離型性発泡基材7の間に発生する線膨張係数差を吸収できる。その結果、反りや歪の発生を効果的に抑制し、電磁波遮蔽層1の被覆性が優れたものとなる。特に、電子部品のコーナー部における電磁波遮蔽層1の割れ等を効果的に防止し、シールド特性に優れた電磁波遮蔽層を形成できる。
【0087】
(載置工程(iii))
載置工程(iii)は、電磁波遮蔽シート、粘着性付与樹脂層、柔軟性離型シートがこの順に形成された積層体を用いる点において、上述の載置工程(i)、(ii)と相違する。粘着性付与樹脂は、常温でタック性を示し、加熱圧着時には熱硬化性を示す。
【0088】
電磁波遮蔽シート2と、電磁波遮蔽シート2の一方の面に積層された離型性基材3との離型性基材付多層体4を用意する。そして、離型性基材付多層体4における電磁波遮蔽シート2の離型性基材3が貼り合されていない面上に粘着性樹脂層9を介して柔軟性離型シート5を積層し(
図11参照)、その後、離型性基材3を剥離し、積層体10を得る(
図7参照)。そして、基板20の電磁波遮蔽シート2との接合領域に電磁波遮蔽シート2が対向配置するように積層体10を仮貼付する(
図12参照)。続いて柔軟性離型シート5上に熱により軟化する熱溶融性部材6を少なくとも載置する(
図12参照)。柔軟性離型シート5とこの上に載置する熱溶融性部材6は、互いに接合されていない別のシートを重ねたものである。積層体は使用時までロール状に巻き取っておいてもよい。
【0089】
これにより、後述する工程(c)の加熱圧着工程において、積層体の反りの発生や歪を効果的に防止できる。また、電磁波遮蔽シート2は、柔軟性離型シート5と粘着性樹脂層9を介して接合されているが、これらの間に粘着性樹脂層9を用いることにより、後述する工程(c)の加熱圧着工程において、電磁波遮蔽シート2と柔軟性離型シート5の間に発生する線膨張係数を吸収し、反りの発生を効果的に抑制できる。その結果、電磁波遮蔽層1の被覆性が優れたものとなる。特に、電子部品のコーナー部における電磁波遮蔽層1の割れ等を効果的に防止し、シールド特性に優れた電磁波遮蔽層を形成できる。
【0090】
(工程(b)の好適例)
電子部品30の高さをH、柔軟性離型シート5または離型性発泡基材7と、熱溶融性部材6の合計の厚みをT3(
図10参照)としたときに、T3/Hを0.2以上とすることが好ましい。この範囲にすることにより、後述する工程(c)の加熱圧着工程において基板凹凸形状追従特性をより効果的に発揮できる。T3/Hのより好ましい範囲は0.5以上であり、さらに好ましい範囲は0.7以上である。熱プレスできればよく、T3/Hの上限値は特にないが、熱プレス時に側面から溶融して装置を汚さない観点から、7以下とすることが好ましく6以下がより好ましく、さらに好ましくは5以下、特に好ましくは4以下である。
【0091】
電子部品30が基板20上に配列され、電子部品30間の幅をW、柔軟性離型シート5または離型性発泡基材7と、熱溶融性部材6との合計の厚みをT3(
図10参照)としたときに、T3/Wは0.1〜6とすることが好ましい。この範囲にすることにより、後述する工程(c)の加熱圧着工程において基板凹凸形状追従特性をより効果的に発揮できる。T3/Wのより好ましい範囲は0.2〜5であり、さらに好ましい範囲は0.5〜4である。なお、Wの値は一定である必要は無く、場所により変更可能である。その場合もT3/Wが0.1〜6の範囲にあることが好ましい。
【0092】
<工程(c)>
工程(b)後、工程(b)により得られた製造基板を、
図13に示すように一対のプレス基板40間に挟持し、加熱圧着する。電磁波遮蔽シート2は、熱溶融性部材6等の押圧により、製造基板に設けられたハーフカット溝に沿うように延伸され、電子部品30および基板20に追従して被覆され、電磁波遮蔽層が形成される。プレス基板40をリリースすることにより
図14に示すような製造基板が得られる。次いで、電磁波遮蔽層1より上層に被覆されている層を剥離する。これにより、電子部品30を被覆する電磁波遮蔽層1を有する部品搭載基板101を得る(
図1、2参照)。加熱圧着工程の温度および圧力は、電子部品30の耐熱性、耐久性、製造設備あるいはニーズに応じて、電磁波遮蔽シート2の被覆性が確保できる範囲においてそれぞれ独立に任意に設定できる。圧力範囲としては限定されないが、0.1〜5.0MPa程度が好ましく、0.5〜2.0MPaの範囲がより好ましい。なお、必要に応じて電磁波遮蔽層上に保護層等を設けてもよい。
【0093】
加熱圧着工程の加熱温度は、100℃以上であることが好ましく、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上である。また、上限値としては、電子部品30の耐熱性に依存するが、220℃であることが好ましく、200℃であることがより好ましく、180℃であることがさらに好ましい。
【0094】
加熱圧着時間は、電子部品の耐熱性、電磁波遮蔽シートに用いるバインダー樹脂、および生産工程等に応じて設定できる。バインダー樹脂として熱硬化性樹脂を用いる場合には、1分〜2時間程度の範囲が好適である。なお加熱圧着時間は、1分〜1時間程度がより好ましい。この加熱圧着により熱硬化性樹脂は、硬化する。但し、熱硬化性樹脂は、流動が可能であれば加熱圧着前に部分的に硬化あるいは実質的に硬化が完了していてもよい。
【0095】
電磁波遮蔽シート2の加熱圧着前の厚みは、電子部品30の天面および側面および基板20の露出面に被覆することが可能な厚みとする。用いるバインダー樹脂の流動性や、電子部品間の距離Wのサイズにより変動し得るが、通常、1〜200μm程度が好ましく、5〜100μm程度がより好ましく、10〜70μm程度がさらに好ましい。これにより、封止樹脂への被覆性を良好にしつつ、電磁波シールド性を効果的に発揮することができる。
【0096】
載置工程として(i)〜(iii)のいずれかを用い、且つクッション材として機能する熱溶融性部材を用いて上方側から加熱圧着することにより、熱溶融性部材6が軟化して電磁波遮蔽シート2を被覆させ、電子部品30の天面および側面並びに基板20の露出面を被覆することができる。そして、基板20内に形成されたグランドパターン22が、電磁波遮蔽層1と電気的に接続される。
【0097】
工程(c)の後、ダイシングブレード等を用いて、基板20における部品搭載基板101の個品の製品エリアに対応する位置でXY方向にダイシングする。これにより、電子部品30が電磁波遮蔽層1で被覆され、且つ基板20に形成されたグランドパターン22と電磁波遮蔽層1が電気的に接続され、個片化された部品搭載基板が得られる。
【0098】
本実施形態に係る製造方法によれば、引張破断歪が50〜1500%の電磁波遮蔽シートを用いて工程(a)〜工程(c)を経て電磁波遮蔽層を形成し、得られる電磁波遮蔽層の切断面における鱗片状フィラーの平均厚さが0.05〜2μmであり、鱗片状粒子含有層の厚み方向の切断部断面の前記導電性フィラーの専有面積を20〜50%とすることにより、被覆性の高い電磁波遮蔽層を有する部品搭載基板を製造できる。また、スパッタ等の設備投資も不要であるというメリットを有する。スパッタ装置の場合、側面をスパッタする場合、台座の角度を変更したりする必要があった。また、スパッタにより電磁波遮蔽層を形成する場合、欠陥を抑制するためには電子部品の形状やサイズにより最適な条件を見つけ、条件変更する必要があった。本実施形態によれば、これらの工程を必要としないので生産性に優れている。また、引張破断歪が50〜1500%の電磁波遮蔽シートを用いているので、電子部品の凹凸部に対する被覆性に優れる。また、凹凸のある複数の電子部品を一括して被覆できるので、生産性に優れる。また、部品の配置位置や形状等によらずに電磁波遮蔽層を形成できるので、汎用性が高い。製造基板のサイズに応じて、最適なサイズに裁断することも容易である。また、本実施形態に係る電磁波遮蔽シートを用いることにより、形状追従性の優れた電磁波遮蔽層を有する部品搭載基板を提供できる。
【0099】
また、電磁波遮蔽シートを基板の面方向に押圧して圧着させているので、電子部品の天面の電磁波遮蔽層の平滑性に優れる。このため、製品名あるいはロット番号をインクジェット方式やレーザーマーキング方式で印字した際、文字の視認性が向上した高品質な部品搭載基板を提供できる。また、加熱圧着時の条件を制御することにより厚みを制御しやすく、薄型化も容易であるというメリットを有する。
【0100】
<変形例>
次に、本実施形態に係る部品搭載基板等の変形例について説明する。但し、本発明は、上記実施形態および変形例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。また、各実施形態および変形例は、互いに好適に組み合わせられる。
【0101】
上記実施形態においては、部品の一例として電子部品を例として説明したが、電磁波から遮蔽したい部品全般に対して本発明を適用できる。即ち、部品搭載基板に搭載する部品は電子部品に限定されない。また、部品の形状は矩形状に限定されず、角部がR形状である部品、部品の上面と側面の成す角度が鋭角の部品、鈍角の部品も含む。また、上面に凹凸形状がある部品、電子部品の外面が球状等の曲面になっている場合も含む。また、上記実施形態においては、基板20にハーフダイシング溝25(
図2参照)が形成されていたが、ハーフダイシング溝25は必須ではなくフラットな基板に電磁波遮蔽シートを載置して被覆させてもよい。加えて、本発明の部品搭載基板には、例えば基板20をオールダイシングして個片化した電子部品が搭載された部品搭載基板が別の保持基材等に載置されている場合も含む。
【0102】
電磁波遮蔽層1は、基板20の上面視において露出する面を全て被覆する例を説明したが、部品の搭載により形成された段差部の少なくとも一部を含む、基板の露出面の必要箇所を被覆していればよく、部分的に被覆する態様、被覆層の一部に開口部等を設けた態様も含む。また、
図15に示すように、基板20の両主面に部品を形成する態様も好適に用いられる。
【0103】
本実施形態に係る部品搭載基板によれば、凹凸構造に対する被覆性に優れることから、パーソナルコンピュータ、モバイル機器或いはデジタルカメラ等に内蔵されるハードディスク、ケーブルおよびプリント配線板等にも好適である。また、本発明の電磁波遮蔽シートおよび積層体は、部品を搭載していない凹凸形状面に対しても適用可能である。
【0104】
≪実施例≫
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、実施例中の「部」とあるのは「質量部」を、「%」とあるのは「質量%」をそれぞれ表すものとする。
【0105】
(1)試験基板の作製
ガラスエポキシからなる基板上に、モールド封止された電子部品をアレイ状に搭載した基板を用意した。基板の厚みは0.3mmであり、モールド封止厚、即ち基板上面からモールド封止材の頂面までの高さ(部品高さ)Hは0.4mmである。その後、部品同士の間隙である溝に添ってハーフダイシングを行い、試験基板を得た(
図16参照)。ハーフカット溝深さは0.5mm(基板20のカット溝深さは0.1mm)、ハーフカット溝幅は実施例の表に示した通り100〜750μmに変更したものを作成した。
【0106】
以下、実施例で使用した材料を示す。
導電性フィラー1:「核体に銅、被覆層に銀を使用した鱗片状粒子平均粒子径D50=11.0μm、厚み1.1μm、円形度係数=0.23」(福田金属箔粉工業社製)
導電性フィラー2:「核体に銅、被覆層に銀を使用した樹枝状粒子平均粒子径D50=9.0μm、円形度係数=0.12」(福田金属箔粉工業社製)
導電性フィラー3:「核体に銅、被覆層に銀を使用した鱗片状粒子平均粒子径D50=6.0μm、厚み0.8μm、円形度係数=0.19」(福田金属箔粉工業社製)
導電性フィラー4:「核体に銅、被覆層に銀を使用した鱗片状粒子平均粒子径D50= 19.0μm、厚み1.0μm、円形度係数=0.24」(福田金属箔粉工業社製)
導電性フィラー5:Fe−Si−Cr系鱗片状磁性粒子(平均粒子径D50:9.8μm、厚み0.5μm、円形度係数0.43)
導電性フィラー6:Fe−Co系鱗片状磁性粒子(平均粒子径D50:13μm、厚み0.6μm、円形度係数0.69)
導電性フィラー7:Mn−Zn系鱗片状磁性粒子(平均粒子径D50:15μm、厚み0.9μm、円形度係数0.56)
熱硬化性樹脂:ウレタンウレア樹脂 酸価5[mgKOH/g](トーヨーケム社製)
硬化性化合物1:エポキシ樹脂、「JER828」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂 エポキシ当量=189g/eq)三菱化学社製
硬化性化合物2:エポキシ樹脂、「デナコールEX212」(2官能エポキシ樹脂 エポキシ当量=151g/eq)ナガセケムテックス社製
離型性基材:表面にシリコン離型剤をコーティングした厚みが50μmのPETフィルム
離形性発泡基材A:表面にアルキッド樹脂をコーティングした厚みが50μm発泡密度110kg/m
3、比重1.1、25%圧縮応力0.09MPaの発泡PETフィルム
離形性発泡基材B:表面にアルキッド樹脂をコーティングした厚みが100μm、発泡密度240kg/m
3、比重0.5、25%圧縮応力0.05MPaの発泡ウレタンフィルム
離形性発泡基材C:表面にアルキッド樹脂をコーティングした厚みが100μm、発泡密度220kg/m
3、比重0.6、25%圧縮応力0.04MPaの発泡ポリプロピレンフィルム
柔軟性離形シート:「X−44B」(厚み50μmの単層TPXフィルム)三井化学東セロ社製
熱溶融性部材:厚みが80μmの軟質塩化ビニルシート
<厚み測定>
電磁波遮蔽層の厚みT1,T2を測定するために、研磨法によって断面出しを行い、レーザー顕微鏡で電磁波遮蔽層の断面を画像処理した。そして、厚みT1,T2其々の領域における最も厚みのある箇所の膜厚を測定した。異なる断面出しのサンプル5つについて同様に測定し、その平均値を厚みT1,T2とした。
【0107】
<鱗片状粒子含有層の導電性フィラーの専有面積>
電磁波遮蔽層の鱗片状粒子含有層中の鱗片状粒子の専有面積を測定するために、クロスセクションポリッシャー(日本電子社製、SM−09010)を用いて電磁波遮蔽層を切断加工して、切断面を得た。得られた切断面をレーザーマイクロスコープ(キーエンス社製、VK−X100)を使用し、倍率が2000倍の拡大画面を取得した。得られた拡大画像についてフリーソフトの「GIMP2.6.11」を使用し画像データを読み込み、厚み10μm、上面視100μmの鱗片状粒子含有層における切断面を範囲指定し、しきい値を自動調整して導電性微粒子を白、導電性微粒子以外の成分を黒に変換した。その後ヒストグラムで黒領域(0〜254)を選択することで白色のピクセル数のパーセンテージ即ち厚み10μm、上面視100μmにおける導電性フィラーの専有面積の割合を算出した。同様の測定を異なる3箇所で行い、平均値を導電性フィラーの専有面積(A)(%)とした。切断面の切り出し箇所は、電子部品の
図17に示すeの位置で行った。
【0108】
電磁波遮蔽シートの切断面を形成し、加熱プレス前の鱗片状粒子含有層の専有面積(B)(%)を求めた。また、電磁波遮蔽シートを2枚のポリイミドフィルム(カプトン200EN)で挟持し、160℃、2MPaで20分間加熱圧着した場合の専有面積(A’)%を求めた。測定方法は上記と同様とした。そして、専有面積(B)(%)と専有面積(A’)(%)の差((B)−(A’))を加熱プレス前後の膜厚差(%)とした。
【0109】
<導電性フィラーの平均厚さ>
上記の切断面画像を、電子顕微鏡で千倍〜5万倍程度に拡大した画像を元に異なる粒子を約10〜20個を測定し、その平均値を使用した。
【0110】
<マルテンス硬さの測定>
マルテンス硬さは、ISO14577−1に準拠して、フィッシャースコープH100C(フィッシャー・インストルメンツ社製)型硬度計にて測定した。測定は、電子部品30上のサンプルのe面(
図17参照)に対して、ビッカース圧子(100φの先端が球形のダイアモンド圧子)を用い、25℃の恒温室にて試験力0.3N、試験力の保持時間20秒、試験力の付加所要時間5秒の条件で行った。同一硬化膜面をランダムに10箇所繰り返し測定して得た値の平均値をマルテンス硬さとした。なお、試験力は電磁波遮蔽層の厚みに応じて調整する。具体的には最大押し込み深さが電磁波遮蔽層の厚みの10分の1程度になるように試験力を調整した。
【0111】
<20°表面光沢度>
電磁波遮蔽層の表面の20°表面光沢度を、JIS Z8741に準じてBYK.GARDNER社のmicro−TRI−gloss表面光沢度計を用いて20°の測定角度で測定した。
【0112】
<鉛筆硬度試験(ひっかき試験)>
電磁波遮蔽層の表面の鉛筆硬度をJIS K5600−5−4に準拠して荷重750gにて鉛筆硬度試験を実施した。評価基準は以下の通りである。
+ + : HB以上 良好な結果である。
+ : B 実用上問題ない。
NG : B未満 実用不可。
【0113】
<引張破断歪の測定>
以下の方法によって求めた引張破断歪(%)を引張破断歪とした。電磁波遮蔽シートを幅200mm×長さ600mmの大きさに切断した後、電磁波遮蔽シートから剥離性シートを剥がして測定試料とした。測定試料について小型卓上試験機EZ−TEST(島津製作所社製)を用いて、温度25℃、相対湿度50%の条件下で引っ張り試験(試験速度50mm/min)を実施した。得られたS−S曲線(Stress−Strain曲線)から電磁波遮蔽シートの引張破断歪(%)を算出した。
【0114】
<線膨張係数>
本発明の線膨張係数は、JIS−K7197に記載のプラスチックの熱機械分析による線膨張率試験方法により測定された値を用いる。
【0115】
<電磁波遮蔽層における導電性フィラーの含有量の測定>
図4,5に示すように、上面のエッジ部から電子部品30の表面を内側に向かって0.5mmの領域の上方に区画される領域にあって、且つ電子部品30の当該辺の中央から70%の範囲を測定した値とする電磁波遮蔽層を削り取った。削り取った電磁波遮蔽層の全質量に対する当該電磁波遮蔽層中の導電性フィラーの質量をTG-DTAにより求めた。
【0116】
<平均粒子径D50>
平均粒子径は、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置LS13320(ベックマン・コールター社製)を使用し、トルネードドライパウダーサンプルモジュールにて、導電性複合微粒子を測定して得た平均粒子径D50の数値であり、粒子径累積分布における累積値が50%の粒子径である。分布は体積分布、屈折率の設定は1.6とした。当該粒子径であればよく、一次粒子でも二次粒子でもよい。
【0117】
<酸価の測定>
共栓付き三角フラスコ中にバインダー樹脂を約1g精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液50mLを加えて溶解する。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1mol/Lアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。酸価は次式により求めた。酸価は樹脂の乾燥状態の数値とした。
酸価(mgKOH/g)=(a×F×56.1×0.1)/S
S:試料の採取量×(試料の固形分/100)(g)
a:0.1mol/Lアルコール性水酸化カリウム溶液の滴定量(mL)
F:0.1mol/Lアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0118】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
Mwの測定は東ソ−社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)「HPC−8020」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィ−である。測定は、カラムに「LF−604」(昭和電工社製:迅速分析用GPCカラム:6mmID×150mmサイズ)を直列に2本接続して用い、流量0.6mL/min、カラム温度40℃の条件で行い、重量平均分子量(Mw)の決定はポリスチレン換算で行った。
【0119】
[実施例1](製法(i))
熱硬化性樹脂(固形分)100部と、エポキシ樹脂1を25部と、エポキシ樹脂2を25部と、導電性フィラー1を185部と、導電性フィラー2を185部と、を容器に仕込み、不揮発分濃度が45質量%になるようトルエン:イソプロピルアルコール(質量比2:1)の混合溶剤を加えディスパーで10分攪拌することで樹脂組成物を得た。
この樹脂組成物を乾燥厚みが60μmになるようにドクターブレードを使用して離型性基材に塗工した。そして、100℃で2分間乾燥することで離型性基材と電磁波遮蔽シートとが積層された離型性基材付多層体を得た。
係る離型性基材付多層体を10×10cmにカットし、
図16に示す試験基板に載置し仮貼付した。その後、離形性基材を剥離し、除去した面に柔軟性離形シートを載置し、さらにその上に熱溶融性部材を8枚重ねて載置することで、熱プレス用のクッション積層体を得た。前記クッション積層体の上方から基板面に対し2MPa、160℃の条件で20分熱プレスした。熱プレス後、柔軟性離形シートと熱溶融性部材を取り除くことで、電磁波遮蔽層が被覆された部品搭載基板を得た。
【0120】
[実施例2〜16、19〜21、25〜28および比較例1〜4]
各成分およびその配合量(質量部)、電子部品の搭載間隔、T3の厚みを表1、2に、載置工程プロセス等を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、部品搭載基板を作製した。表1に示す樹脂の配合量は固形分質量である。
【0121】
[実施例17](製法(ii))
熱硬化性樹脂(固形分)100部と、エポキシ樹脂1を25部と、エポキシ樹脂2を25部と、導電性フィラー1を185部と、導電性フィラー2を185部と、を容器に仕込み、不揮発分濃度が45質量%になるようトルエン:イソプロピルアルコール(質量比2:1)の混合溶剤を加えディスパーで10分攪拌することで樹脂組成物を得た。
この樹脂組成物を乾燥厚みが60μmになるようにドクターブレードを使用して離形性発泡基材Aに塗工し、100℃で2分間乾燥することで電磁波遮蔽シートと離形性発泡基材Aとの離型性発泡基材付多層体を得た。
係る離型性泡基材付多層体を10×10cmにカットし、電磁波遮蔽シートの面が
図16に示す試験基板(電子部品30上面)に接するように載置し仮貼付した。その後、離形性発泡基材Aの上に熱溶融性部材を8枚重ねて載置した。前記クッション積層体の上方から基板面に対し2MPa、160℃の条件で20分熱プレスした。熱プレス後、離形性発泡基材Aと熱溶融性部材を取り除くことで、電磁波遮蔽層が被覆された部品搭載基板を得た。
【0122】
[実施例22〜24](製法(ii))
離形性発泡基材Aを離型性基材、離形性発泡基材B、離形性発泡基材Cに変えた以外は実施例17と同様の方法で部品搭載基板を得た。
【0123】
[実施例18](製法(iii))
熱硬化性樹脂(固形分)100部と、エポキシ樹脂1を25部と、エポキシ樹脂2を25部と、導電性フィラー1を185部と、導電性フィラー2を185部と、を容器に仕込み、不揮発分濃度が45質量%になるようトルエン:イソプロピルアルコール(質量比2:1)の混合溶剤を加えディスパーで10分攪拌することで樹脂組成物を得た。
この樹脂組成物を乾燥厚みが60μmになるようにドクターブレードを使用して離形性基材に塗工した。そして、100℃で2分間乾燥することで、離型性基材の一方の面上に電磁波遮蔽シートが積層された離型性基材付多層体を得た。
別途、熱硬化性樹脂(固形分)100部と、エポキシ樹脂(jER828:三菱化学社製)を25部と、テルペン樹脂(YSレジンPX1250:ヤスハラケミカル社製)を1部と、を容器に仕込み、不揮発分濃度が45質量%になるようトルエン:イソプロピルアルコール(質量比2:1)の混合溶剤を加えディスパーで10分攪拌することで粘着剤樹脂組成物を得た。
次いで、柔軟性離形シートの一方の面に、乾燥後の厚みが10μmになるようドクターブレードで粘着剤組成物を塗工し、100℃で2分乾燥することで粘着性樹脂層が一方に形成された粘着性樹脂層付き柔軟性離形シートを得た。
前記離型性基材付多層体の電磁波遮蔽シート面と前記粘着性樹脂層付き柔軟性離形シートの粘着性樹脂層をラミネーターで貼り合わせ、電磁波遮蔽シート側の離形性基材を剥離することにより積層体を得た。
係る積層体を10×10cmにカットし、電磁波遮蔽シートの面が試験基板に接するように載置し、仮貼付した。その後、柔軟性離型シート上に熱溶融性部材を8枚重ねて載置することで、熱プレス用のクッション積層体を得た。前記クッション積層体を上方から面全体に対し2MPa、160℃の条件で20分熱プレスした。熱プレス後、柔軟性離形シートと熱溶融性部材を取り除くことで、電磁波遮蔽層が被覆された部品搭載基板を得た。
【0124】
上記実施例および比較例について、以下の測定方法および評価基準にて評価した。
【0125】
<電磁波遮蔽層の被覆前後の反り量評価>
厚み125μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製のカプトン500H)を11cm×11cmにカットし、厚みが50μmの電磁波遮蔽シートを10cm×10cmにカットし、上記ポリイミドフィルムの中央部に160℃、2MPaで熱プレスした後、端辺を固定し、その反対の端辺の反り量を測定した。
+ + : 反り量が2mm未満 良好な結果である。
+ : 反り量が2mm以上、5mm未満 実用上問題ない。
NG : 反り量が5mm以上 実用不可。
【0126】
<段差追従性評価>
実施例1〜16、19〜21、比較例1〜4で得た、部品搭載基板を、
図17の断面図に示す底部のグランド端子a‐b間の接続抵抗値をHIOKI社製RM3544とピン型リードプローブを用いて測定することにより、段差追従性を評価した。
評価基準は以下の通りである。
+ +:接続抵抗値が200mΩ未満。良好な結果である。
+ :接続抵抗値が200mΩ以上、1000mΩ未満。実用上問題ない。
NG:接続抵抗値が1000mΩ以上。実用不可。
【0127】
<エッジ部破れ耐性>
図17に示す部品搭載基板のエッジ部の破れを顕微鏡によって観察し評価した。観察は異なる4カ所のエッジ部を評価した。
評価基準は以下の通りである。
+ +:破れ無し。良好な結果である。
+:一部破れ電子部品が露出しているが、実用上問題ない。
NG:上記+の評価未満、若しくはエッジ全体で破れ発生し電子部品が全域露出。実用不可。
【0128】
<グランド接続評価>
実施例1〜21、比較例1〜4で得た、部品搭載基板を、
図17の断面図に示す底部のグランド端子b‐c間の接続抵抗値をHIOKI社製RM3544とピン型リードプローブを用いて測定することにより、グランド接続性を評価した。
評価基準は以下の通りである。
+ +:接続抵抗値が200mΩ未満。良好な結果である。
+ :接続抵抗値が200mΩ以上、1000mΩ未満。実用上問題ない。
NG :接続抵抗値が1000mΩ以上。実用不可。
【0129】
<テープ密着性>
得られた部品搭載基板のe面(
図17参照)に、JISK5400に準じてクロスカットガイドを使用し、間隔が1mmの碁盤目を25個作成した。その後、碁盤目部に粘着テープを強く圧着させ、テープの端を45°の角度で一気に引き剥がし、碁盤目の状態を下記の基準で判断した。
+ +:どの格子の目も剥がれない。
+:塗膜がカットの線に沿って部分的に剥がれている。剥がれ率15%以上35%未満。
NG:塗膜がカットの線に沿って部分的に若しくは全面的に剥がれている。剥がれ率35%以上。
【0130】
<印字視認性>
得られた部品搭載基板のe面(
図17参照)に、白色インキ(東洋インキ社製)を用いてスクリーン印刷で印字した。印字のサイズは5ポイントとした。暗室内にて印字部に60WのLEDライトを照射し、水平面を基準として20°、45°、90°の角度から印字から50cmの距離を開けて目視で印字が視認可能かを確認した。なお評価基準は以下の通りである。
+ + +:20°、45°、90°すべて視認可能 非常に良好な結果である。
+ + :45°、90°で視認可能 良好な結果である。
+ :90°で視認可能 実用上問題ない。
NG:すべての角度で視認不可能 実用不可。
【0131】
実施例および比較例に係る部品搭載基板の評価結果を表3、4に示す。また、電磁波遮蔽シートの線膨張係数、引張破断歪、貯蔵弾性率を表1に示す。
【0136】
T1/T2が0.9の比較例1は、グランド接続性が実用範囲外であった。また、T1/T2が12.0の比較例2は、段差追従性、エッジ部割れ耐性、ひっかき試験が実用範囲外であった。また、引張破断歪が39%の比較例3は、段差追従性が実用範囲外であり、グランド接続性、ひっかき試験、密着性も実用範囲外であった。更に、導電性フィラーの専有面積が19%の比較例4は、エッジ部破れ耐性、グランド接続性、ひっかき試験、反り量等において課題があった。一方、本実施例によれば、段差追従性、エッジ部破れ耐性、グランド接続性、テープ密着および印字視認性において優れた結果が得られ、更にひっかき試験の結果も良好であった。
【解決手段】部品搭載基板の製造方法は、基板20に部品30を搭載する工程と、電磁波遮蔽シート2を基板20上に載置する工程と、段差部の少なくとも一部を含む基板20の露出面に加熱圧着して電磁波遮蔽層1を得る工程とを含む。電磁波遮蔽シート2は、引張破断歪が50〜1500%であり、バインダー成分および鱗片状粒子を含む導電性フィラーを含有する等方導電性を示す鱗片状粒子含有層を有し、且つ、異方導電層を含まないシートを用い、部品30の上面を被覆する電磁波遮蔽層の厚みをT1,側面を被覆する厚みをT2としたときに、T1/T2を1.1〜10とし、鱗片状粒子の平均厚さを0.05〜2μmとし、鱗片状粒子含有層の厚み方向の切断部断面の導電性フィラーの専有面積を20〜50%とする。